(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方の作動部および前記他方の作動部は、前記部分条クラッチのうち、機体の左端部に配置された植付装置に対応する部分条クラッチおよび機体の右端部に配置された植付装置に対応する部分条クラッチを同時に「入」状態とすることを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
<作業車両1>
まず、
図1および
図2を参照して実施形態に係る作業車両1の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両1の一例を示す左側面図である。
図2は、実施形態に係る作業車両1の一例を示す平面図である。なお、以下では、作業車両1として、圃場内を走行しながら圃場に苗を植え付ける苗移植機を例に説明する。
【0021】
また、以下において、前後方向とは、苗移植機1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。苗移植機1の進行方向とは、直進時において、操縦席28からハンドル32へ向かう方向である(
図1および
図2参照)。
【0022】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(「作業者」ともいう)が操縦席28に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0023】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、苗移植機1を指して「機体」という場合がある。
【0024】
図1および
図2に示すように、苗移植機1は、圃場を走行する走行車体2を備える。走行車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5とを有する。また、苗移植機1は、苗植付部昇降機構50によって昇降可能な苗植付部40を、走行車体2の後部に備える。
【0025】
走行車体2は、メインフレーム7と、メインフレーム7上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の駆動力を前輪4および後輪5(駆動輪)や苗植付部40へ伝達する動力伝達機構15とを備える。すなわち、苗移植機1では、エンジン10の動力によって走行車体2を前後進させるとともに苗植付部40を駆動させる。
【0026】
エンジン10は、機体の左右方向における略中央に配置される。エンジン10は、エンジンカバー11に覆われ、操縦者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方へ突出させた状態でメインフレーム7上に搭載される。
【0027】
フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間にわたって設けられ、メインフレーム7上に取り付けられる。フロアステップ26の一部は、格子状であり(
図2参照)、操縦者の靴に付着した泥などを圃場に落とすことができる。
【0028】
フロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねるリアステップ27が設けられる。リアステップ27は、後方へ向かうにつれて上方へ傾斜した傾斜面を有する。リアステップ27は、エンジン10の左右それぞれの側方に配置される。
【0029】
また、苗移植機1は、操縦席28と、操縦部30とを備える。操縦席28は、エンジンカバー11の上方に配置される。操縦部30は、操縦席28の前方であり機体の左右方向における略中央に配置される。操縦部30は、フロアステップ26から上方へ突出した状態で配置され、フロアステップ26の前部を左右に分断している。
【0030】
なお、操縦部30には、各種操作装置やエンジン燃料の燃料タンクなどが設けられ、操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられる。また、操縦部30の上部パネル33には、操作装置を作動させる操作レバーや各種計器類、操舵用のハンドル32、報知装置などが設けられる。
【0031】
また、操作レバーとしては、たとえば、機体の前進および走行速度を操作する走行操作部材である変速レバー35、苗植付部40の動作状態を少なくとも苗植付部昇降機構50による上昇状態を含んで切り替える植付操作部材である植付昇降レバー36などがある。植付昇降レバー36は、苗植付部40の作動状態を切り替えることができ、たとえば、「上昇」、「下降」、「植付」などの各モードを設定することができる。
【0032】
フロアステップ26における操縦部30の左右の側方のうち、たとえば、右側方には、苗(マット苗)を後方の苗植付部40に向けて送るための苗レール130が設けられ、左側方には、補給用の苗(予備苗)を載せておく予備苗台140が設けられる。予備苗台140は、フロアステップ26から上方へ延びた支持筒141によって回転自在に支持される。
【0033】
また、機体の左右それぞれの側方には、次の植付条の目安になる線を圃場面に形成する線引きマーカが設けられてもよい。なお、線引きマーカは、機体が旋回するごとに、左右の線引きマーカが交互に作動する。
【0034】
動力伝達機構15は、主変速機としての油圧式無段変速機16と、エンジン10からの動力を油圧式無段変速機16へ伝達するベルト式動力伝達機構17とを有する。油圧式無段変速機16は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。油圧式無段変速機16は、エンジン10の前方、フロアステップ26の下方に配置される。
【0035】
ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けられたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けられたプーリと、これらのプーリに巻き付けられたベルトと、ベルトの張力を調整するテンションプーリとを有し、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16へ伝達する。
【0036】
また、動力伝達機構15は、エンジン10からの動力が、ベルト式動力伝達機構17および油圧式無段変速機16を介して伝達されるトランスミッションを収容するミッションケース18を有する。ミッションケース18内のトランスミッションは、ベルト式動力伝達機構17および油圧式無段変速機16を介して伝達された動力を、副変速機で変速して、走行用動力および苗植付部40の駆動用動力に分ける。
【0037】
また、操縦席28の後方には、施肥装置が配置される。施肥装置150は、肥料を貯留する肥料ホッパ151と、肥料ホッパ151内の肥料を一定量ずつ繰り出す肥料繰出部152と、繰り出された肥料を肥料ホース154によって苗植付部40側へ移送するブロア153とを有する。
【0038】
<苗植付部40>
ここで、苗植付部40について説明する。
図1および
図2に示すように、苗植付部40は、苗植付部昇降機構50を介して走行車体2の後部に昇降自在に連結される。
【0039】
苗植付部昇降機構50は、昇降リンク51を有する。昇降リンク51は、走行車体2の後部と苗植付部40とを連結する平行リンク機構であるリンク部材を有する。リンク部材は、前後方向に延在する2つの部材を有する。2つの部材は、上側に位置する上部リンク部材であるアッパーリンク53、アッパーリンク53の下側に位置するロアリンク54である。アッパーリンク53およびロアリンク54は共に、左右一対で設けられる。
【0040】
アッパーリンク53およびロアリンク54は、メインフレーム7の後部に立設された背面視門型の後部フレームであるリンクベースフレーム55に回動自在に連結され、また、アッパーリンク53およびロアリンク54の他端側が苗植付部40に回動自在に連結され、苗植付部40を、走行車体2に対して昇降可能に連結する。
【0041】
苗植付部昇降機構50は、油圧によって伸縮する昇降シリンダ56を有する。苗植付部昇降機構50は、昇降シリンダ56の伸縮動作によって、苗植付部40を昇降させる。苗植付部昇降機構50は、苗植付部40を非作業位置まで上昇させる。また、苗植付部昇降機構50は、苗植付部40を対地作業位置(対地植付位置)まで下降させる。
【0042】
苗植付部40は、苗を植え付ける範囲を複数の条で植え付ける。本実施形態においては、苗植付部40は、苗を8つの条で植え付ける、いわゆる8条植えである。
【0043】
また、苗植付部40は、植付装置41と、積載部45と、圃場面を均す均平装置を構成するセンターフロート61およびサイドフロート62とを有する。植付装置41は、2条ごとに1つずつ配置され、それぞれ2条分の植付爪42を有する。なお、苗植付部40に向けた駆動用動力は、エンジン10からシャフト(図示せず)を介して伝達される。植付装置41においては、機体の左右方向に延在するパイプ内部に配設された駆動軸の回転によって植付爪42が駆動される。
【0044】
積載部45は、機体の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面を有する。積載部45は、それぞれの苗載せ面に土付きのマット状苗が載せられる。これにより、積載部45の苗載せ面に乗せられた苗が植え付けられて無くなるたびに、たとえば、作業者が圃場外に苗を取りに戻る必要がなく、連続的に作業を行うことができ、作業能率が向上する。
【0045】
<部分条クラッチ70>
次に、
図3を参照して部分条クラッチ70について説明する。
図3は、部分条クラッチ70の接続構成の一例を示すブロック図である。なお、
図3は、植付装置41などを上方から見た場合の模式図(模式平面図)である。苗移植機1(
図1および
図2参照)は、植付装置41へ向けた動力を入り切り可能に伝達する複数の部分条クラッチ70を備える。
【0046】
複数の部分条クラッチ70は、少なくとも3つであり、植付装置41に対応する。
図3に示すように、本実施形態においては、部分条クラッチ70は、4つの植付装置41(第1植付装置41a〜第4植付装置41d)に対応して4つ(第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70d)設けられる。
【0047】
苗植付部40(
図1および
図2参照)は、上記したように、8条植えであり、フレームを兼ねる植付伝動ケース46をさらに有する。植付伝動ケース46は、後部が4つに分岐され、分岐したそれぞれの後端部にはロータリケース47が設けられる。ロータリケース47には、上記した植付爪42が取り付けられる。
【0048】
第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dはそれぞれ、各2条分の苗を植え付ける第1植付装置41a〜第4植付装置41dごとの苗の植え付けを個別に制御するように構成される。すなわち、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dによって、第1植付装置41a、第2植付装置41b、第3植付装置41cおよび第4植付装置41dに対する動力の伝達が入り切りされる。
【0049】
また、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dはそれぞれ、クラッチワイヤ71(第1クラッチワイヤ71a〜第4クラッチワイヤ71d)によって、入切機構80に接続されている。そして、第1クラッチワイヤ71a、第2クラッチワイヤ71b、第3クラッチワイヤ71cおよび第4クラッチワイヤ71dが入切機構80に引っ張られることにより、これらに対応する、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dが「切」となり、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dに対応する、第1植付装置41a、第2植付装置41b、第3植付装置41cおよび第4植付装置41dに対する動力の伝達が切れる。
【0050】
入切機構80は、部分条クラッチ70を作動させる作動部81を有する。作動部81は、一方の作動部81aと、他方の作動部81bとを有する。一方の作動部81aは、植付装置41のうち機体の左部(左右方向の中心よりも左方)に配置された第1植付装置41aおよび第2植付装置41bに対応する第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bを作動させる。すなわち、一方の作動部(以下、「左作動部」という)81aは、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bに対する動力伝達を入り切り操作する。
【0051】
他方の作動部81bは、植付装置41のうち機体の右部(左右方向の中心よりも右方)に配置された第3植付装置41cおよび第4植付装置41dに対応する第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dを作動させる。すなわち、他方の作動部(以下、「右作動部」という)81bは、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dに対する動力伝達を入り切り操作する。なお、左右の作動部81a,81bの具体的な構成については、
図4を用いて後述する。
【0052】
このように、左作動部81aおよび右作動部81bは、4つの部分条クラッチ70のうち、互いに隣接しない部分条クラッチ70を同時に作動させることができる。たとえば、左作動部81aによって、機体の左端部に配置された第1植付装置41aに対応する第1部分条クラッチ70a、右作動部81bによって、機体の右端部に配置された第4植付装置41dに対応する第4部分条クラッチ70dを同時に作動させることができる。
【0053】
また、苗移植機1(
図1および
図2参照)は、入切機構80を操作する入切操作部20を備える。入切操作部20は、たとえば、複数の押しボタンスイッチ(以下、「操作ボタン」という)21である。操作ボタン21は、たとえば、操縦部30(
図1および
図2参照)に設けられる。
【0054】
図3に示すように、操作ボタン21は、第1ボタン21a〜第4ボタン21dの4つである。第1ボタン21a〜第4ボタン21dは、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dを入り切りする場合に押され、操縦者によって、第1ボタン21aが押されると第1部分条クラッチ70aが入り切りされ、第2ボタン21bが押されると第2部分条クラッチ70bが入り切りされ、第3ボタン21cが押されると第3部分条クラッチ70cが入り切りされ、第4ボタン21dが押されると第4部分条クラッチ70dが入り切りされる。
【0055】
また、第1ボタン21a〜第4ボタン21dは、操縦者に押されることで、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dを「入」状態とし、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dが「入」状態のときに操縦者に再度押されることで、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dを「切」状態とする。
【0056】
ここで、これまでは、第1ボタン21a〜第4ボタン21dにより第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dを入り切りする場合、たとえば、左端に配置された第1ボタン21aから順に、または、右端に配置された第4ボタン21dから逆順に押さなければ、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dを入り切りすることができなかった。
【0057】
このため、たとえば、第3部分条クラッチ70cを「入」状態とするためには、まず、第1ボタン21aを押し、次に、第2ボタン21bを押して第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bを「入」状態としてから第3ボタン21cを押して第3部分条クラッチ70cを「入」状態とする必要がある。また、第3部分条クラッチ70cを「入」状態とするためには、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bが「入」状態である必要があるため、たとえば、第3部分条クラッチ70cだけを「入」状態とすることができない。すなわち、これまでは、部分条クラッチ70の操作自由度が低いものであった。本実施形態では、入切機構80および作動部81を、部分条クラッチ70の操作自由度を向上可能なように構成している。
【0058】
<入切機構80および作動部81>
次に、
図4、
図5および
図6を参照して入切機構80および作動部81について説明する。
図4は、入切機構80の説明図であり、入切機構80の背面図である。
図5および
図6は、左右の作動部81a,81bの各動作パターンの説明図であり、左右の作動部81a,81bの背面図である。
【0059】
図4に示し、かつ、上記したように、入切機構80は、部分条クラッチ70を作動させる作動部81を有する。作動部81は、回動カム811と、一対のアーム部812,813を有する。回動カム811は、支点814を中心に回動可能な円板カムである。回動カム811は、後述する摺動ピン817が摺動するカム溝815を有する。カム溝815は、回動カム811の外周形状にならって外側に向けて膨らむように湾曲している一対の溝であり、また、一対が対向するように形成される。
【0060】
一対のアーム部812,813はそれぞれ、回動支点816を中心に回動可能であり、基端部にカム溝815に挿入される摺動ピン817を有する。また、一対のアーム部812,813のそれぞれの基端部には、クラッチワイヤ71が接続される。また、一対のアーム部812,813のそれぞれの先端部には、苗植付部40において苗を載せる積載部45(
図1および
図2参照)の苗送りベルト43(
図2参照)の駆動部に接続されたワイヤ72、および施肥装置150(
図1および
図2参照)の駆動部に接続されたワイヤ73が接続される。
【0061】
たとえば、
図4のA部に示すように、作動部81は、回動カム811が回動することで、摺動ピン817が回動するカム溝815内を摺動して変位する。これに伴い、基端部がクラッチワイヤ71を引っ張り、対応する部分条クラッチ70(
図3参照)を「入」状態とする。また、作動部81は、回動カム811がさらに回動することで、摺動ピン817が回動するカム溝815内を摺動して変位し、先端部が引かれてクラッチワイヤ71を緩め、対応する部分条クラッチ70を「切」状態とする。
【0062】
また、作動部81は、アーム部812,813の先端部によってワイヤ72,73が引かれることで、苗送りベルト43の駆動および施肥装置150の駆動を「切」状態とし、ワイヤ72,73が緩められることで、苗送りベルト43の駆動および施肥装置150の駆動を「切」状態とする。苗送りベルト43は、苗を送っても植付爪42(
図1参照)が作動していないため、「切」状態の部分条クラッチ70に対応する苗送りベルト43の駆動を「切」状態とする。また、施肥装置150は、苗の植え付けが行われない場合には肥料を散布する必要がないため、「切」状態の部分条クラッチ70に対応する施肥装置150の駆動を「切」状態とする。
【0063】
このような構成によれば、部分条クラッチ70が「入」状態の場合には苗送りベルト43および施肥装置150の駆動も「入」状態となり、部分条クラッチ70が「切」状態の場合には苗送りベルト43および施肥装置150の駆動も「切」状態となるため、苗が植え付けられた場合には苗送りや肥料の散布を行い、苗が植え付けられない場合には苗送りや肥料の散布を行わないなど、作業内容に適した駆動が可能となる。
【0064】
また、入切機構80は、ベース部82を有する。ベース部82の取付面821には、作動部81が取り付けられ、作動部81である左右の作動部81a,81bが左右方向に対称に並んで配置される。すなわち、左右の作動部81a,81bにおける左右の回動カム811a,811bおよび左右の(一対の)アーム部812a,812b,813a,813bが左右方向に対称に並んで配置される。
【0065】
ここで、
図5および
図6を参照して左右の作動部81a,81bの各動作パターンを説明する。なお、
図5には、第1部分条クラッチ70aから第4部分条クラッチ70dまでを順に切り操作する場合の左右の回動カム811a,811bおよび一対のアーム部812a,812b,813a,813bの動作を示し、
図6には、第4部分条クラッチ70dから第1部分条クラッチ70aまでを逆順に切り操作する場合の左右の回動カム811a,811bおよび一対のアーム部812a,812b,813a,813bの動作を示している。
【0066】
図5(a)に示すように、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dの全てが「入」状態のいわゆる「全条入」状態の場合、左右の一対のアーム部812a,812b,813a,813bは、クラッチワイヤ71(第1クラッチワイヤ71a〜第4クラッチワイヤ71d)を引っ張る。
【0067】
図5(b)に示すように、第1部分条クラッチ70aのみが「切」状態の場合、第1ボタン21a(
図3参照)が押されることで(第1ボタン21aが押されて第1部分条クラッチ70aが「入」状態であるときに、第1ボタン21aが再度押されることで)右回動カム811bが回動し、右アーム部812bは、基端部が変位して第1クラッチワイヤ71aのみを緩める。また、
図5(c)に示すように、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bが「切」状態の場合、第2ボタン21b(
図3参照)が押されることで右回動カム811bがさらに回動し、右アーム部813bは、基端部が変位して第1クラッチワイヤ71aに加えて第2クラッチワイヤ71bを緩める。
【0068】
また、
図5(d)に示すように、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70bおよび第3部分条クラッチ70cが「切」状態の場合、第3ボタン21c(
図3参照)が押されることで左回動カム811aが回動し、左アーム部812aは、基端部が変位して第3クラッチワイヤ71cを緩める。さらに、
図5(e)に示すように、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dが「切」状態のいわゆる「全条切」状態の場合、第4ボタン21d(
図3参照)が押されることで左回動カム811aがさらに回動し、左アーム部813aは、基端部が変位して第4クラッチワイヤ71dを緩める。
【0069】
図6(a)に示すように、「全条入」状態の場合、左右の一対のアーム部812a,812b,813a,813bは、クラッチワイヤ71(第1クラッチワイヤ71a〜第4クラッチワイヤ71d)を引っ張る。
【0070】
図6(b)に示すように、第4部分条クラッチ70dのみが「切」状態の場合、第4ボタン21d(
図3参照)が押されることで(第4ボタン21dが押されて第4部分条クラッチ70dが「入」状態であるときに、第4ボタン21dが再度押されることで)左回動カム811aが回動し、左アーム部813aは、基端部が変位して第4クラッチワイヤ71dのみを緩める。また、
図6(c)に示すように、第4部分条クラッチ70dおよび第3部分条クラッチ70cが「切」状態の場合、第3ボタン21c(
図3参照)が押されることで左回動カム811aがさらに回動し、左アーム部812aは、基端部が変位して第4クラッチワイヤ71dに加えて第3クラッチワイヤ71cを緩める。
【0071】
また、
図6(d)に示すように、第4部分条クラッチ70d、第3部分条クラッチ70cおよび第2部分条クラッチ70bが「切」状態の場合、第2ボタン21b(
図3参照)が押されることで右回動カム811bが回動し、右アーム部812bは、基端部が変位して第2クラッチワイヤ71bを緩める。さらに、
図6(e)に示すように、「全条切」状態の場合、第1ボタン21a(
図3参照)が押されることで右回動カム811bがさらに回動し、右アーム部812bは、基端部が変位して第1クラッチワイヤ71aを緩める。
【0072】
また、左作動部81aおよび右作動部81bは、4つの部分条クラッチ70(第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70d)のうち、機体の一端部側に配置された植付装置41に対応する部分条クラッチ70から機体の他端部側に配置された植付装置41に対応する部分条クラッチ70へ順に作動させた後、他端部側に配置された植付装置41に対応する部分条クラッチ70以外のクラッチから作動させることができる。たとえば、左作動部81aおよび右作動部81bは、機体の左端部側に配置された第1植付装置41aに対応する第1部分条クラッチ70aから機体の右端部側に配置された第4植付装置41dに対応する第4部分条クラッチ70dへ順に作動させた後、第4部分条クラッチ70d以外の部分条クラッチ70である、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70bおよび第3部分条クラッチ70cのいずれかから作動させることができる。
【0073】
以上説明した実施形態によれば、複数の部分条クラッチ70を作動させる入切機構80が一方の作動部(左作動部)81aおよび他方の作動部(右作動部)81bを備えることで、たとえば、機体左部の部分条クラッチ70である第1部分条クラッチ70aや第2部分条クラッチ70b、機体右部の部分条クラッチ70である第3部分条クラッチ70cや第4部分条クラッチ70dを左右でそれぞれ個別に作動させることができる。これにより、複数の部分条クラッチ70の入り切りの順番などの制約が少なくなり、部分条クラッチ70の操作自由度を向上させることができる。
【0074】
また、左作動部81aおよび右作動部81bの2つの作動部81で複数の(4つの)部分条クラッチ70を作動させるため、たとえば、作動部81が1つの場合と比べて、回動カム811の回動量や回動カム811の回動によるクラッチワイヤ71の引っ張り量などのずれが少なくなる。すなわち、作動部81の動作のずれ量が少なくなる。これにより、部分条クラッチ70の動作を安定させることができる。
【0075】
また、たとえば、第1部分条クラッチ70aおよび第4部分条クラッチ70dのような互いに隣接しない部分条クラッチ70を同時に作動させるため、操作時間を短縮することができる。また、たとえば、第1部分条クラッチ70aを「入」、第2部分条クラッチ70bを「切」、第3部分条クラッチ70cを「入」、第4部分条クラッチ70dを「切」のように、左右方向において入り切りを交互に設定するなど、これまでは行えなかった操作が可能となり、部分条クラッチ70の操作自由度を向上させることができる。
【0076】
また、左端部の第1部分条クラッチ70aおよび右端部の第4部分条クラッチ70dを同時に作動させるため、操作時間を短縮することができる。また、たとえば、第1部分条クラッチ70aを「入」、第2部分条クラッチ70bを「切」、第3部分条クラッチ70cを「切」、第4部分条クラッチ70dを「入」のように設定すれば、隙間をあけて苗を植え付けることができるため、風通しや水の流れが良好となり、苗の育成を安定させることができる。また、このように、左右方向における両端部だけを「入」に設定するなど、これまでは行えなかった操作が可能となり、部分条クラッチ70の操作自由度を向上させることができる。
【0077】
また、たとえば、左端部の第1部分条クラッチ70aから右端部の第4部分条クラッチ70dまで順に作動させた(たとえば、「入」状態にした)場合でも、右端部の第4部分条クラッチ70dから逆順に戻す(「切」状態にする)必要がないため、操作時間を短縮することができ、部分条クラッチ70の操作自由度を向上させることができる。
【0078】
なお、上記した実施形態において、操作ボタン21にLEDランプなどの発光部を設けるか、または、操作ボタン21自体を発光可能に設け、部分条クラッチ70(第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70d)が「全条入」または「全条切」で、左右いずれか端部以外の部分条クラッチ70(第1部分条クラッチ70aまたは第4部分条クラッチ70d)に対応する操作ボタン21(第2部分条クラッチ70bに対応する第2ボタン21bまたは第3部分条クラッチ70cに対応する第3ボタン21c)が押された場合、これらの操作ボタン21b,21cは、保留状態を示すために点滅し、再度押されると入り切りする構成としてもよい。このように、保留状態を示すために操作ボタン21を点滅させることで、通常は端部から操作される部分条クラッチ70と混同した操作が行われてもこれを防ぐことができ、誤操作を防止することができる。
【0079】
また、たとえば、第1部分条クラッチ70aが「切」、第2部分条クラッチ70bが「入」、第3部分条クラッチ70cが「入」、第4部分条クラッチ70dが「入」の場合、第3部分条クラッチ70cに対応する第3ボタン21cが押されると保留状態を示すために点滅し、第3ボタン21cが再度押されると第3部分条クラッチ70cが「切」状態となるように構成してもよい。これにより、操作ボタン21(第3ボタン21c)の誤操作を防止することができる。
【0080】
また、上記した実施形態においては、エンジン10(
図1参照)から伝達される動力、すなわち、植付装置41へ伝達される動力の伝動量が低下する位置で部分条クラッチ70を作動させる。苗移植機1(
図1参照)は、動力伝達部と、減速部とをさらに備える。動力伝達部は、植付装置41へ動力を伝達する。動力伝達部は、ベルトによって動力を伝達する。減速部は、植付装置41の動力伝達上流側に設けられ、動力伝達部の動力伝達下流側において伝動量を低下させる。減速部は、プーリ(減速プーリ)であり、動力伝達部の動力伝達下流側においてベルトによる動力の伝達回転数を低下させる。
【0081】
このような構成によれば、伝動量が低くなる位置で部分条クラッチ70を作動させるため、部分条クラッチ70に関係する部品に加わる負荷が低減されて部分条クラッチ70の入り切り動作が安定する。
【0082】
<予備苗台140の手すり142>
図7および
図8を参照して予備苗台140の手すり142について説明する。
図7は、予備苗台140の手すり142の説明図である。
図8(a)は、予備苗台140の手すり142の分解斜視図であり、
図8(b)は、手すり142の回動支点部143の平面図である。上記したように、予備苗台140は、機体前部における機体の左側方に設けられ、予備苗を載せる台である。また、
図7に示し、かつ、上記したように、予備苗台140は、支持筒141によって回転自在に支持される。
【0083】
図7に示すように、予備苗台140には、手すり142が設けられる。なお、
図7に示す例では、予備苗台140が上下に複数(2つ)並んでいるが、予備苗台140が1つであってもよい。手すり142は、たとえば、先端部が予備苗台140の載置面140aの幅方向(左右方向)に屈曲された鉤状に形成される。手すり142は、予備苗台140の前部に配置され、回動支点部143を支点として前後方向に回動可能に設けられる。また、手すり142は、直立させた状態でロックされ手すりとして機能し、
図7中の矢線B1に示すように、後方に向けて回動させることで載置面140aに載置された空箱などの押えとして機能し、
図7中の矢線B2に示すように、前方に向けて回動させることで収納状態となる。
【0084】
回動支点部143は、予備苗台140の載置面140aよりも上方、かつ、載置面140aの左右の幅内に収まるように配置される。
図8(a)に示すように、回動支点部143は、シリンダ144と、付勢部材145と、蓋部材146と、ピン147とを有する。回動支点部143では、シリンダ144内において、シリンダ144に挿入された手すり142の屈曲基端部142aが、圧縮ばねなどの付勢部材145によってシリンダ144の軸L方向に付勢された状態で、シリンダ144に収容される。また、回動支点部143では、手すり142の屈曲基端部142aが、円板状の蓋部材146の中央に形成された孔に挿通され、ピン147によって抜け止めされる。
【0085】
図8(a)および(b)に示すように、回動支点部143は、手すり142の屈曲基端部142aが挿入される側の端面144aがスロープ状に形成される。また、端面144aのうち最も突出している部分には軸L方向に溝144bが形成される。溝144bには手すり142の屈曲基端部142aに突設された凸部142bが挿入され、凸部142bが溝144bに挿入されることで、手すり142がロックされる。
【0086】
このように、予備苗台140に手すり142を設けることで、操縦者は安全に乗り降りすることができる。このとき、手すり142は、回動支点部143によってロックされる。また、手すり142は、載置面140aに載置された、苗が取り外された空箱などの押えとなる。この場合、シリンダ144内の付勢部材145によって手すり142の屈曲基端部142aが付勢されることで、手すり142は空箱を押える向きに付勢される。また、手すり142は、不使用時には前方に回動させることで収納状態となる。この場合も、付勢部材145によって手すり142は収納姿勢となる向きに付勢される。
【0087】
図9は、予備苗台140の手すりの変形例(手すり142A)の説明図である。
図9に示すように、手すり142Aは、環状に形成され、たとえば、予備苗台140の内側フレーム148に取り付けられ、操縦者の搭乗時の手すりとして使用される。これにより、操縦者は安全に乗り降りすることができる。なお、このような手すり142Aは、たとえば、機体前部に広い面積を有するような苗移植機において好適に設けることができる。
【0088】
<苗レール130の手すり131>
また、
図10を参照して苗レール130の手すり131について説明する。
図10は、苗レール130の手すり131の説明図である。上記したように、苗レール130は、機体前部における機体の右側方に設けられ、マット苗を後方の苗植付部40(
図1および
図2参照)に向けて送るレールである。
【0089】
図10に示すように、苗レール130には、苗レール130の内側フレーム132に取り付けられた手すり131が設けられる。手すり131は、矩形ループ状であり、苗レール130の前後にわたって設けられる。また、手すり131は、苗レール130のレール面130aから前方に延出している。これまでは、苗レール130には苗レール130の前部および後部には作業者(操縦者)や作業補助者が苗レールを引き回すために用いるグリップが設けられていたが、このような手すり131を設けることにより、作業者や作業補助者が、苗レール130のグリップとして使用する他、乗り降り時の手すりとして使用することができる。なお、手すり131は、平行リンク状に形成されることで、たとえば、手すり状態や、上下方向につぶれた収納状態のように、形態が変更可能に設けられてもよい。なお、手すり状態の場合には可動部がロックされる。
【0090】
<車体ルーフ90>
また、
図11を参照して車体ルーフ90について説明する。
図11は、車体ルーフ90の説明図である。
図11に示すように、操縦席28および操縦部30の上方に車体ルーフ90が設けられてもよい。車体ルーフ90は、ルーフ部91と、巻取部92とを有する。ルーフ部91は、たとえば、ゴアテックス(登録商標)のような撥水機能を有する生地により形成され、一方の端縁となる先端縁にフック911を有する。また、ルーフ部91は、他方の端縁となる基端縁側が巻取部92に取り付けられる。
【0091】
巻取部92は、ルーフ部91を、巻き取り方向に付勢しつつ収容する。すなわち、車体ルーフ90は、巻取部92に収容されたルーフ部91が、外力により先端縁側となる前方へ引き出され、外力が除去されると、巻取部92により巻き取られることで、基端縁側となる後方へ引き込まれる。また、車体ルーフ90を取り付けるために、走行車体2には、前側フレーム93と、後側フレーム94とが設けられる。
【0092】
前側フレーム93は、走行車体2の前部における左右側部から上方へ延伸し、上部において左右方向に延びた前側梁部931を有し、全体としてコ字状に形成される。上記したルーフ部91は、フック911が前側梁部931に引っ掛けられることで、引き出された状態で保持される。また、前側フレーム93は、たとえば、操縦者が機体前方から乗り降りするときに掴む手すりとして機能するとともに、ドリンクホルダ95や小物入れが取り付けられる取付部としても機能する。
【0093】
後側フレーム94は、走行車体2の後部において左右側部から上方へ延伸し、上部において左右方向に延びた後側梁部941を有し、全体としてコ字状に形成される。上記した巻取部92は、後側梁部941に取り付けられる。また、後側フレーム94は、たとえば、操縦者が機体側方から乗り降りするときに掴む手すりとしても機能する。
【0094】
このような構成によれば、車体ルーフ90が撥水機能を有することで晴天時の日除けや雨天時の雨除けを兼ねるため、快適性および利便性が向上し、シンプル構成で軽量な収納式のルーフとなる。なお、前側フレーム93および後側フレーム94を、たとえば、アルミやカーボン素材を使用することでさらに軽量化することができる。また、車体ルーフ90は、苗移植機1だけでなく、小型トラクタや乗用管理機などの作業車両にも使用可能である。
【0095】
<アゼクラッチスプロケット100>
また、
図12を参照してアゼクラッチスプロケット100について説明する。
図12は、アゼクラッチスプロケット100の説明図であり、アゼクラッチスプロケット100の模式的な斜視図である。
図12に示すように、部分条クラッチ70(
図3参照)において動力を伝達するための部材であるスプロケット(アゼクラッチスプロケット)100は、カム溝(第1カム溝)101にさらに深いカム溝(第2カム溝)102が形成された2段カム構造である。第2カム溝102は、第1カム溝の終端部から前方に向けて50°の範囲に形成される。
【0096】
このような構成によれば、2段カム構造であるため、アゼクラッチスプロケットが逆転してもピン(部分条クラッチ70)が第2カム溝に入り、逆転を防止することができる。これにより、たとえば、苗植付部40を高速で駆動している高速作業の場合でも、植付爪42(
図1および
図2参照)が慣性により逆転しても動力が遮断されているため、異音やシャクリを低減することができるとともに、高速切りが可能となる。
【0097】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。