(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(2)で表される構造単位が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構造単位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
前記末端停止剤溶液が、メチレンクロライド、テトラクロロエタン、クロロホルム、1,2−ジクロルエチレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、アセトフェノン、シクロヘキサンおよびアニソールからなる群から選択される溶媒を含む、請求項5または6に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂を用いて複雑化及び薄肉化した製品を製造する場合には、特許文献1のような光学情報記録材料を製造する場合よりも高い金型汚れ防止性が求められる。具体的には、光学情報材料を製造する際には、スタンパーを用いてポリカーボネート樹脂にパターンを転写するため、加圧時のスタンパーとの接触面(上面)における金型汚れ防止性が高いことが求められる。一方で、複雑化及び薄肉化した製品を製造する場合は金型との接触面だけでなく、流動末端である側面にも高い金型汚れ防止性が求められる。
【0007】
さらに、熱可塑性樹脂を使用して大型・薄型の成形体を射出成形法によって製造する際には、高い転写性を確保するために樹脂の流動性を高める必要がある。このことから、複雑化及び薄肉化した製品の製造に用いるポリカーボネート樹脂には、上記のような金型汚れ防止性だけでなく、高い流動性も求められる。特許文献2および3に記載されたポリカーボネートは流動性に優れるポリカーボネートであるが、ポリカーボネート樹脂中の低分子量カーボネート化合物の量については何ら記載が無く、複雑化及び薄肉化した製品を製造する場合に求められる金型汚れ防止性が十分でない恐れがあった。
【0008】
一方、特許文献4および5には、ポリカーボネート樹脂中の低分子量カーボネート化合物の量を低減する方法が記載されているものの、特許文献4に記載の方法は反応後に水相の一部を除去する必要があり、非常に工程が多く煩雑である。また、特許文献5に記載されている方法は、ホスゲンの吹込み終了後に第四級アンモニウム塩を添加し、所定の分子量まで重合した後に分子量調節剤、即ち末端停止剤を添加する必要があるため、分子量調節剤、即ち末端停止剤を添加するタイミングの調整が難しいという課題がある。
【0009】
ポリカーボネート樹脂に対する上記の課題に対して、今般、本発明者らは、特定の末端構造と特定の粘度平均分子量を有し、かつ、低分子量カーボネート化合物の含有量が1質量%未満であるポリカーボネート樹脂であれば、流動性が高く、さらにモールドデポジットなどの金型汚れを低減することができるとの知見を得た。
【0010】
さらにポリカーボネート樹脂の製造方法に関する上記の課題に対して、今般、本発明者らは、特定の構造を有する末端停止剤を所定の濃度で含む末端停止剤溶液を用いて界面重合反応を行うことで、ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であり、流動性が高く、かつ、モールドデポジットなどの金型汚れを低減することができるポリカーボネート樹脂を簡便に製造することができるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に記載する特徴を有するものである。
[1]下記一般式(1)に示す末端構造を有し、かつ、粘度平均分子量が10,000〜18,000であるポリカーボネート樹脂であって、
該ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満である、ポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式中、
R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、
rは1〜5の整数を表す。)
[2]前記ポリカーボネート樹指が、下記一般式(2)で表される構造単位を含有するものである、[1]に記載のポリカーボネート樹脂。
【化2】
(式中、
R
6〜R
13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造を表す。)
【化3】
(式中、
R
14及びR
15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、
cは1〜20の整数を表す。)
【化4】
(式中、R
16及びR
17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表すか、又は、R
16及びR
17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環若しくは複素環を形成し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
【化5】
(式中、R
18〜R
21はそれぞれ独立に水素、ハ口ゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表すか、又は、R
18及びR
19並びにR
20及びR
21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環若しくは複素環を形成し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
【化6】
(式中、R
22〜R
31はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
[3]前記一般式(2)におけるXが、前記一般式(3)に示す構造を有する、[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[4]前記一般式(2)で表される構造単位が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構造単位である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[5]前記一般式(1)で表される末端構造が、下記一般式(7)、(8)又は(9)で示される構造を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
【化7】
(式中、R
33は、炭素数5〜14のアルキル基である。)
【化8】
(式中、R
32は、炭素数1〜22のアルキル基である。)
【化9】
(式中、R
34は、炭素数1〜23のアルキル基である。)
[6]前記一般式(7)におけるR
33が、n−オクチル基、イソ−オクチル基、t−オクチル基及びドデシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である、[5]に記載のポリカーボネート樹脂。
[7]2価フェノールと下記一般式(1a)で表される末端停止剤とを用いて界面重合反応によってポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
【化10】
(式中、
R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、
rは1〜5の整数を表す。)
前記界面重合反応において、
前記2価フェノールを含む溶液に前記末端停止剤を10質量%未満の濃度で含む末端停止剤溶液を添加する工程を含む、ポリカーボネート樹脂を製造する方法。
[8]前記末端停止剤溶液を添加する工程の前に、前記2価フェノールを含む溶液にホスゲンを吹き込む工程を含む、[7]に記載の方法。
[9]前記末端停止剤溶液が、メチレンクロライド、テトラクロロエタン、クロロホルム、1,2−ジクロルエチレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、アセトフェノン、シクロヘキサンおよびアニソールからなる群から選択される溶媒を含む、[7]または[8]に記載の方法。
[10]前記末端停止剤溶液が、メチレンクロライドを含む、[7]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記2価フェノールが、下記一般式(2a)で表される化合物である、[7]〜[10]のいずれかに記載の方法。
【化11】
(式中、
R
6〜R
13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造を表す。)
【化12】
(式中、
R
14及びR
15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、
cは1〜20の整数を表す。)
【化13】
(式中、R
16及びR
17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表すか、又はR
16及びR
17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環若しくは複素環を形成し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
【化14】
(式中、R
18〜R
21はそれぞれ独立に水素、ハ口ゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表すか、又は、R
18及びR
19並びにR
20及びR
21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環若しくは複素環を形成し、
前記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
【化15】
(式中、R
22〜R
31はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
[12]前記一般式(2a)におけるXが、前記一般式(3)に示す構造を有する、[11]に記載の方法。
[13]前記一般式(2a)で表される化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである、[11]または[12]に記載の方法。
[14]前記末端停止剤が、下記一般式(7a)、(8a)又は(9a)で示される化合物である、[7]〜[13]のいずれか一項に記載の方法。
【化16】
(式中、R
33は、炭素数5〜14のアルキル基である。)
【化17】
(式中、R
32は、炭素数1〜22のアルキル基である。)
【化18】
(式中、R
34は、炭素数1〜23のアルキル基である。)
[15]前記末端停止剤が、前記一般式(7a)で示される化合物である、[14]に記載の方法。
[16]前記一般式(7a)におけるR
33が、n−オクチル基、イソ−オクチル基、t−オクチル基及びドデシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である、[15]に記載の方法。
[17]前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000〜18,000である、[7]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満である、[7]〜[17]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるポリカーボネート樹脂は、流動性が高く、さらにモールドデポジットなどの金型汚れを低減することができる。また、本発明によるポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であり、流動性が高く、かつ、モールドデポジットなどの金型汚れを低減することができるポリカーボネート樹脂を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<第1の態様>
第1の態様は、例えば以下の発明を含む。
下記一般式(1)に示す末端構造を有し、かつ、粘度平均分子量が10,000〜18,000であるポリカーボネート樹脂であって、
該ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満である、ポリカーボネート樹脂。
【化19】
(式中、
R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、
rは1〜5の整数を表す。)
【0015】
以下、上記発明について詳細に説明する。
〔ポリカーボネート樹脂〕
本発明によるポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される末端構造を有し、かつ、粘度平均分子量が10,000〜18,000である。さらに、ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であるという特徴を有する。
【化20】
(式中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、rは1〜5の整数を表す。)
【0016】
好ましい態様としては、上記一般式(1)で表される末端構造が、下記一般式(7)、(8)又は(9)で示される構造を有する。
【化21】
(式中、R
33は、炭素数5〜14のアルキル基である。)
【化22】
(式中、R
32は、炭素数1〜22のアルキル基である。)
【化23】
(式中、R
34は、炭素数1〜23のアルキル基である。)
【0017】
より好ましい態様としては、上記一般式(7)、(8)および(9)におけるR
32、R
33およびR
34がそれぞれn−オクチル基、イソ−オクチル基、t−オクチル基及びドデシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である。
【0018】
本発明によるポリカーボネート樹脂の構造単位としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化24】
(式中、R
6〜R
13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造を表す。好ましくは、Xは、下記一般式(3)に示す構造を有する。)
【化25】
(式中、R
14及びR
15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、
cは1〜20の整数を表す。)
【化26】
(式中、R
16及びR
17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表すか、又は、R
16及びR
17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環若しくは複素環を形成し、置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
【化27】
(式中、R
18〜R
21はそれぞれ独立に水素、ハ口ゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表すか、又は、R
18及びR
19並びにR
20及びR
21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環若しくは複素環を形成し、置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
【化28】
(式中、R
22〜R
31はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0019】
本発明によるポリカーボネート樹脂に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量は1質量%未満である。分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物には、例えば、2価フェノールのホスゲン化反応で生成した2価フェノールのジクロロホルメートと末端停止剤との縮合反応物であるジカーボネート化合物などが含まれる。
【0020】
分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物が多く含まれるポリカーボネート樹脂は、ディスクや複雑化及び薄肉化した製品の射出成形等を連続的に行った際に、比較的早い段階で金型(モールド)が微量の付着物(モールドデポジット)によって汚染される傾向がある。この点、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であれば、金型の汚染は効果的に防止される。また、ポリカーボネート樹脂に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量の下限値は、精製コストとの兼ね合いから、0.01質量%程度とすることが好ましい。
【0021】
本発明によるポリカーボネート樹脂は、2価フェノールおよび炭酸エステル形成化合物を用いて重合を行い、末端停止剤により反応を停止させて得られる。各原料について以下に説明する。
【0022】
<2価フェノール>
本発明のポリカーボネート樹脂を製造するのに用いられる2価フェノールは、分子中に二つの水酸基を有するフェノール系化合物であれば特に限定されないが、得られる成形体の耐衝撃性と、純度が高く、流通量が多いという観点から下記一般式(2a)で表される2価フェノールが好ましい。このような2価フェノールを用いることで、得られるポリカーボネート樹脂が一般式(2)で表される構造単位を有することとなる。
【化29】
(式中、R
6〜R
13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−及び上記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造を表す。好ましくは、Xは、上記一般式(3)に示す構造を有する。)
【0023】
一般式(2a)で示される2価フェノールの例としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。その中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンがより好ましく、モノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物量が少ないものの入手が容易である等の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)が特に好ましい。
【0024】
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じて分岐構造を有しても良い。分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で表されるポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等で表される多官能化合物を上述した2価フェノールの一部として置き換えて用いればよい。
【0025】
<炭酸エステル形成化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に用いる炭酸エステル形成化合物は、ホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエステル、及び、カルボニル化合物が例示される。炭酸エステル形成化合物の中でも、特にホスゲンが、得られる樹脂の色相や安定性などの品質、更にはコストの観点から好ましい。
【0026】
カルボニル化合物としては、例えば一酸化炭素、二酸化炭素が挙げられる。
【0027】
炭酸ジエステルとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、およびジ−p−クロロフェニルカーボネート等の炭酸ジアリール化合物が挙げられる。これらの中でも、ジフェニルカーボネート、ならびにジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、およびジ−p−クロロフェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートが、反応性、得られる樹脂の色相、更にはコストの観点から好ましく、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
<末端停止剤>
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に用いる末端停止剤は、下記一般式(1a)で表される1価フェノールである。
【化30】
【0029】
一般式(1a)中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、rは1〜5の整数を表す。
【0030】
一般式(1a)で表される末端停止剤の具体例としては、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、n−オクチルフェノール、イソ−オクチルフェノール、t−オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノールなどのアルキルフェノール、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、ヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、およびヒドロキシ安息香酸ドコシルエステルなどのヒドロキシ安息香酸エステル、ならびにエトキシフェノール、ヘキシルオキシフェノール、n−オクチルオキシフェノール、イソ−オクチルオキシフェノール、t−オクチルオキシフェノール、ドデシルオキシフェノール、ドコシルオキシフェノールなどのアルコキシフェノールのいずれかもしくは複数を末端停止剤として使用することができる。
【0031】
また、一般式(1a)で表される末端停止剤は、一般式(7a)、(8a)又は(9a)で表されるものであることがさらに好ましい。
【化31】
(式中、R
33は、炭素数5〜14のアルキル基である。)
【化32】
(式中、R
32は、炭素数1〜22のアルキル基である。)
【化33】
(式中、R
34は、炭素数1〜23のアルキル基である。)
【0032】
一般式(7a)、(8a)又は(9a)で表される末端停止剤の具体例としては、パラペンチルフェノール、パラヘキシルフェノール、パラヘプチルフェノール、パラ−n−オクチルフェノール、パラ−イソ−オクチルフェノール、パラ−t−オクチルフェノール、パラノニルフェノール、パラデシルフェノール、パラドデシルフェノール、およびパラテトラデシルフェノールなどのアルキルフェノール、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、およびパラヒドロキシ安息香酸ドコシルエステルなどのヒドロキシ安息香酸エステル、ならびにパラ−エトキシフェノール、パラ−ヘキシルオキシフェノール、パラ−n−オクチルオキシフェノール、パラ−イソ−オクチルオキシフェノール、パラ−t−オクチルオキシフェノール、パラ−ドデシルオキシフェノール、パラ−ドコシルオキシフェノールなどのアルコキシフェノールのいずれかもしくは複数を末端停止剤として使用することが、流動性、成形体の強度および耐熱性の観点から好ましい。
さらに、パラ−t−オクチルフェノール、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、パラ−n−オクチルオキシフェノールのいずれかもしくは複数を末端停止剤として使用することが、流動性、成形体の強度および耐熱性に加え、入手のし易さの観点からより好ましい。
【0033】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造条件によっては、末端停止剤と反応しないフェノール性OH基のままの末端基が形成され得る。このフェノール性OH基は、耐加水分解性の観点から、少ないほど好ましい。具体的には、全末端中の80mol%以上が一般式(1)で表される構造で封止されていることが好ましく、全末端中の90mol%以上が一般式(1)で表される構造で封止されていることが特に好ましい。
【0034】
本発明に用いる末端停止剤は、材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で2種類以上併用してもよく、一般式(1a)で示される構造以外の構造のものと併用することは許容される。併用してもよい末端停止剤としては、フェノール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,4−キシレノール、p−t−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−プロピルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、p−トリフルオロメチルフェノール、オイゲノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノール、ベヘニルフェノール等のアルキルフェノール及びパラヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アミルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル等のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが挙げられる。また、上記末端停止剤を2種類以上併用して使用することも可能である。特に併用してもよい末端停止剤は、純度やコストの観点から、p−t−ブチルフェノールである。
他の末端停止剤を使用する場合は、全末端停止剤中の20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。
【0035】
<末端停止剤(1価フェノール)の使用量>
本発明のポリカーボネート樹脂は、末端停止剤の使用量によって分子量が制御される。 主骨格のために使用する2価フェノールの重合度と、末端停止剤の使用量は下記数式(I)に示される。
【数1】
【0036】
この式に基づいて末端停止剤(1価フェノール)と2価フェノールの使用量が定められるが、2価フェノールの使用量(モル):末端停止剤の使用量(モル)の好ましい範囲は、50:1〜4:1であり、より好ましくは40:1〜4:1の範囲であり、さらに好ましくは23:1〜4:1であり、さらに好ましくは20:1〜6:1であり、さらに好ましくは16:1〜6:1であり、特に好ましくは15:1〜8:1ある。
【0037】
本発明のポリカーボネート樹脂は、材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、他の樹脂や、種々の添加剤と混合したりすることは許容される。
【0038】
[混合できる他の樹脂]
本発明のポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、他の樹脂が含まれていてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、本発明で用いるポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン等を挙げることができる。特に好ましい混合樹脂としては、PS樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂中における、他の樹脂の成分割合は、全樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。他の樹脂の成分割合を10質量%以下とすることで、諸物性を維持することができる。
【0039】
[添加剤]
本発明のポリカーボネート樹脂には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が例示される。
また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0040】
熱安定剤としては、フェノール系やリン系、硫黄系の熱安定剤を挙げることができる。具体的には、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸; 酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等の酸性ピロリン酸金属塩; リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等、第1族又は第10族金属のリン酸塩; 有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物等を挙げることができる。あるいは、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸(b)及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(c)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。亜リン酸エステル化合物(a)の具体例として、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、「アデカスタブPEP−36」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等を挙げることができる。
【0042】
また、リン酸系安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0043】
熱安定剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0044】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3 −(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4− ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等を挙げることができる。 フェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等を挙げることができる。なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0045】
酸化防止剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の添加割合が少なすぎると、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の添加割合が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0046】
難燃剤としては、有機スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、金属塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましい。アルカリ金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。アルカリ土類金属として、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。本発明で用いる有機スルホン酸金属塩の好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属であり、より好ましくはナトリウム、カリウムである。このような金属を採用することにより、燃焼時の炭化層形成を効果的に促進し、高い透明性も維持できるという効果が得られる。
【0047】
脂肪族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩を挙げることができる。
また、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができ、その中でもアルカリ金属塩が好ましい。フルオロアルカンスルホン酸金属塩の炭素数としては、1〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。このような範囲とすることにより、高い透明性を維持できるという効果が得られる。好ましいフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例として、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸カリウム、等を挙げることができる。
【0048】
芳香族スルホン酸金属塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を挙げることができ、アルカリ金属塩が好ましい。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩等を挙げることができる。
【0049】
本発明によるポリカーボネート樹脂に用いることができる有機スルホン酸金属塩は、特に、成形体の透明性を向上させる観点から、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩が好ましく、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩がより好ましい。尚、ポリカーボネート樹脂100質量部に対する、有機スルホン酸金属塩の添加質量は、0.005質量部〜0.1質量部であるが、好ましくは0.01質量部〜0.1質量部、より好ましくは0.03質量部〜0.09質量部である。また、本発明では、有機スルホン酸金属塩以外の難燃剤を配合してもよい。
【0050】
難燃助剤として、例えばシリコーン化合物を加えることができる。シリコーン化合物としては、分子中にフェニル基を有するものが好ましい。フェニル基を有することによりシリコーン化合物のポリカーボネート中への分散性が向上し、透明性と難燃性に優れる。シリコーン化合物の好ましい質量平均分子量は450〜5,000であり、中でも750〜4,000、更には1,000〜3,000、特に1,500〜2,500であることが好ましい。質量平均分子量を450以上とすることにより、製造が容易になり、工業的生産への適応が容易となり、シリコーン化合物の耐熱性も低下しにくくなる。逆にシリコーン化合物の質量平均分子量を5,000以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂中での分散性が低下しにくく、その結果、成形体の難燃性の低下や、機械物性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0051】
難燃助剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上であり、また、7.5質量部以下、好ましくは5質量部以下である。難燃助剤の添加割合が少なすぎると、難燃性が不十分となる可能性があり、難燃助剤の添加割合が多すぎると、デラミ等外観不良が発生し透明性が低下すると共に、難燃性が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0052】
紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物、サリチル酸フェニル系化合物等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物の具体例として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]、[メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。これらの2種以上を併用してもよい。上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等を挙げることができる。また、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例として、フェニルサリシレート、4−tert−ブチル−フェニルサリシレート等を挙げることができる。更には、トリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等を挙げることができる。また、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等を挙げることができる。
【0053】
紫外線吸収剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の添加割合が少なすぎると、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の添加割合が多すぎると、成形体にモールドデボジット等が生じ、成形時に金型汚染を引き起こす可能性がある。
【0054】
離型剤としては、カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス(ポリオレフィン系)等の離型剤を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。脂肪族カルボン酸として、飽和または不飽和の脂肪族1価、2価または3価カルボン酸を挙げることができる。ここで、脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中でも、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価または2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。脂肪族カルボン酸の具体例として、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸として、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとして、飽和または不飽和の1価または多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが更に好ましい。ここで、脂肪族には脂環式化合物も包含される。アルコールの具体例として、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。尚、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例として、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素として、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。ここで、脂肪族炭化水素には脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜5,000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であってもよく、主成分が上記の範囲内であればよい。ポリシロキサン系シリコーンオイルとして、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等を挙げることができる。これらの2種類以上を併用してもよい。
離型剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。離型剤の添加割合が少なすぎると、成形時の離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の添加割合が多すぎると、成形体の耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等が生じる可能性がある。
【0055】
着色剤としての染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等を挙げることができる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等を挙げることができる。また、着色剤としての有機顔料および有機染料として、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等を挙げることができる。そして、これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。尚、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。着色剤の添加割合が多すぎると成形体の耐衝撃性が十分で無くなる可能性がある。
【0056】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂は、公知の方法に基づき合成することができるが、追加の精製工程を用いずに分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量を1質量%未満に抑える観点から、界面重合法によって合成するのが好ましい。あるいは、本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明の第2の態様に記載の方法で合成してもよい。第2の態様については、本明細書において後述する。
【0057】
本発明のポリカーボネート樹脂の界面重合法による製造方法について、以下に詳細に説明する。反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、2価フェノールをアルカリ水溶液に溶解させる。その溶液にホスゲンを吹き込みながら、ホスゲンと2価フェノールとのホスゲン化反応によって生成するポリカーボネート前駆体を形成する。ホスゲンの吹込み終了後、末端停止剤を添加し、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加することで重縮合反応を行う。その際、末端停止剤を溶媒に溶解し、末端停止剤溶液として添加することで、得られるポリカーボネート樹脂中の分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量を低減することができる。具体的には、末端停止剤溶液中の末端停止剤濃度が10質量%未満であれば、得られるポリカーボネート樹脂中の分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量を1質量%未満とすることができるため好ましい。末端停止剤溶液中の末端停止剤濃度は、7質量%未満であることがより好ましく、5質量%未満であることがさらに好ましい。
【0058】
このようにして得られるポリカーボネート樹脂中には、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物が1質量%未満と少なく、該ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は10,000〜18,000である。したがって、流動性が高く、モールドデポジットなどの金型汚れを低減することができるポリカーボネート樹脂である。
【0059】
ホスゲンは上記2価フェノール100モルに対して、通常100〜120モル、好ましくは105〜115モルの範囲で使用される。本発明においてホスゲンと呼ばれる塩化カルボニルが好ましく使用されるが、塩素以外のハロゲン化カルボニルでもなんら差し支えなく使用できる。また、ホスゲンの吹き込み時間は、通常10〜120分、好ましくは15〜60分である。
【0060】
また2価フェノールとホスゲンとの反応には、通常塩基が用いられ、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物が使用される。2価フェノールと上記のような塩基との当量比は1:1.1〜1.6が好ましい。このような塩基は、通常水溶液の形で用いられ、この水溶液中の塩基濃度は通常6〜20質量%で使用される。ここで使用される水は蒸留水、イオン交換水、またはポリカーボネートを製造する際に回収される水等である。また反応に際しては2価フェノールの酸化着色を防ぐために亜硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイトあるいはナトリウムボロハイドライド等を使用することができる。
【0061】
さらにホスゲン化反応や重合反応を容易に行うため、有機溶媒が用いられる。使用される有機溶媒は、水に対して不溶で且つ反応に対して不活性であり、しかも反応により生成するポリカーボネートを溶解することができる有機溶媒である。このような有機溶媒としてはメチレンクロライド、テトラクロロエタン、クロロホルム、1,2−ジクロルエチレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等の塩素化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素、アセトフェノン、シクロヘキサン、アニソール等の単独あるいは混合物が好ましく使用される。これらのうちメチレンクロライドが最も好ましく使用される。上記の有機溶媒は、2価フェノール1モルに対して0.1〜5リットル使用される。
【0062】
本発明において末端停止剤溶液の添加時期は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されないが、ホスゲン吹込み工程に続いて添加するのが好ましい。
【0063】
本発明において末端停止剤と共に再び添加される塩基は、末端停止剤と樹脂末端Cl基との縮合反応を完全に行うために必要である。末端停止剤の添加前に反応液中のアルカリ濃度が高くなりすぎると樹脂末端Cl基と塩基の反応が多発し、樹脂末端がOH基となるため、分子量を制御することが困難となり所望の重合体が得られない恐れがある。また末端停止剤と共に塩基が添加されない場合には、末端停止剤との反応が遅れ、重合体の分子量が上がりすぎてしまうといった不都合が生じる恐れがある。
【0064】
上記末端停止剤の添加に際し、塩基を添加した後に重合促進触媒を添加することが好ましい。また、末端停止剤を反応混合物に添加した後、30〜120分間撹拌しながら重合を完結させる。
【0065】
本発明で用いられる重合促進触媒は、トリエチルアミンのような三級アミン、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテル及びその塩、あるいはアミド基を有する化合物等が使用される。その中で、トリエチルアミンのような三級アミンが好ましい。重合促進触媒の添加量は、仕込み2価フェノール1モルに対して、0.1〜10ミリモルである。
【0066】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造は、通常バッチ法で製造される。このバッチ法の製造装置としては、撹拌装置、ガス吹き込み管および凝縮器を備えたジャケット付きの反応釜が使用される。撹拌装置としては、特に限定はないが、反転式撹拌機が好ましい。反転速度は、ホスゲン吹き込み時は70〜200回/分、末端停止剤添加から反応終了までは70〜230回/分である。また、反応温度は、ホスゲン吹き込み時は10〜25℃、末端停止剤添加から反応終了までは20〜35℃が好ましい。
【0067】
[評価方法]
<分子量>
本発明の成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の分子量はウベローデ粘度計を用い、以下に示す条件にて測定した粘度平均分子量(Mv)にて評価する。
【0068】
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、下記数式(II)により算出する。
【数2】
【0069】
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000〜18,000である。好ましくは粘度平均分子量(Mv)が11,000〜15,000であり、より好ましくは粘度平均分子量(Mv)が12,000以上14,500である。粘度平均分子量(Mv)が10,000以上の場合は機械的強度が向上し、18,000以下の場合は、溶融粘度が低くなり流動性が向上し、薄肉・大型の成型品の成形が容易になる。
【0070】
<低分子量カーボネート化合物の量の測定>
本発明のポリカーボネート樹脂に含まれる分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量は、以下に示す条件にて行うゲル浸透クロマトグラフ分析にて評価する。
【0071】
<ゲル浸透クロマトグラフ分析測定条件>
測定機種:東ソー社製 HLC−8320GPC
カラム:Shodex K−G+K−805Lx2本+K−800D
溶離液:クロロホルム
温度:カラム恒温槽40℃
流速:1.0 ml/min
濃度:0.lwt/vol%
注入量:100μl
前処理:0.45μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
上記条件で測定し、試料のポリスチレン換算分子量分布を求め、その結果から分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物の量[質量%]を算出することができる。
【0072】
<容量流速(Q値)>
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融流動性は高化式フローテスターを用い、以下に示す条件にて測定した容量流速(Q値)にて評価する。Q値が高いと溶融流動性が高いことを示し、Q値が低いと溶融流動性が低いことを示す。
【0073】
<Q値測定条件>
測定機器:高化式フローテスター
荷重:160kgf/cm
2
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:240℃
試験には例えば、株式会社島津製作所製CFT−500Dを使用することができる。
【0074】
上記測定条件で測定した本発明のポリカーボネート樹脂のQ値は、測定温度240℃において、10×10
-2cc/sec以上であり、好ましくは13×10
-2cc/sec以上であり、特に好ましくは15×10
-2cc/sec以上であり、最も好ましくは19×10
-2cc/sec以上である。また、Q値は100×10
-2cc/sec以下であることが好ましく、80×10
-2cc/sec以下であることがより好ましい。Q値が100×10
-2cc/sec以下の場合、スプルー折れや空洞の発生等の成形不良を防止できる傾向がある。このような範囲とすることにより、薄肉・大型の成形体の成形が可能となる。
【0075】
<金型汚れ>
射出成形機(ソディック社製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で3.5インチ、厚み0.4mmの薄肉試験片を成形し連続350ショット成形した後、成形後の金型付着物を観察することで評価することができる。
【0076】
〔用途〕
本発明のポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂に比べて、流動性が高く、さらにモールドデポジットなどの金型汚れを低減することができることから、自動車用照明装置に内蔵される導光部材、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野の導光板用に適している。このような導光板を用いる装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。本発明の一態様によれば、本発明のポリカーボネート樹脂を含む導光板が提供される。
【0077】
<第2の態様>
第2の態様は、例えば以下の発明を含む。
2価フェノールと下記一般式(1a)で表される末端停止剤とを用いて界面重合反応によってポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
【化34】
(式中、
R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、
rは1〜5の整数を表す。)
前記界面重合反応において、
前記2価フェノールを含む溶液に前記末端停止剤を10質量%未満の濃度で含む末端停止剤溶液を添加する工程を含む、ポリカーボネート樹脂を製造する方法。
【0078】
以下、上記発明について詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明の1つの実施形態によると、2価フェノールと下記一般式(1a)で表される末端停止剤とを用いて界面重合反応によってポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
【化35】
(式中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、rは1〜5の整数を表す。)
界面重合反応において、2価フェノールを含む溶液に末端停止剤を10質量%未満の濃度で含む末端停止剤溶液を添加する工程を含む、ポリカーボネート樹脂を製造する方法が提供される。
【0079】
従来のポリカーボネート樹脂の製造方法としては、界面重合反応において、2価フェノールを含む溶液に末端停止剤を加える際に末端停止剤を固体状態のまま直接投入し、2価フェノールを含む溶液の中で溶解させながら反応を行っていた(特許文献1〜3)。これに対して本発明による製造方法では、一般式(1a)で表される末端停止剤を予め溶媒に溶解させたうえで、2価フェノールを含む溶液に投入することで重合を行っている。このような所定濃度の末端停止剤溶液を用いることで、特許文献4および5に記載されたような特殊な操作を行うことなく、ポリカーボネート樹脂中に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であるポリカーボネート樹脂が得られる。
【0080】
次に本発明の製造方法の一態様について説明するが、本発明がこの方法に限定されるものではない。まず、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、2価フェノールをアルカリ水溶液に溶解させる。その溶液にホスゲン(炭酸エステル形成化合物)を吹き込みながら、ホスゲンと2価フェノールとのホスゲン化反応によって生成するポリカーボネート前駆体を形成する。ホスゲンの吹込み終了後、末端停止剤溶液を添加し、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加することで重縮合反応を行う。その際、末端停止剤を10質量%未満の濃度で含む末端停止剤溶液を添加することで、得られるポリカーボネート樹脂中の分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量を1質量%未満に抑えることができる。末端停止剤溶液中の末端停止剤濃度は7質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。また、ポリカーボネート樹脂に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量の下限値は、精製コストとの兼ね合いから、0.01質量%程度とすることが好ましい。
【0081】
ホスゲンは上記2価フェノール100モルに対して、通常100〜140モル、好ましくは100〜120モル、より好ましくは105〜115モルの範囲で使用される。本発明においてホスゲンと呼ばれる塩化カルボニルが炭酸エステル形成化合物として好ましく使用されるが、ホスゲン以外の後述の炭酸エステル形成化合物も好適に使用することができる。また、ホスゲンの吹き込み時間は、通常10〜120分、好ましくは15〜60分である。
【0082】
また2価フェノールとホスゲンとの反応には、通常塩基が用いられ、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物が使用される。2価フェノールと上記のような塩基との当量比は1:1.1〜2.0が好ましく、1:1.1〜1.6がより好ましい。このような塩基は、通常水溶液の形で用いられ、この水溶液中の塩基濃度は通常6〜20質量%で使用される。ここで使用される水は蒸留水、イオン交換水、またはポリカーボネートを製造する際に回収される水等である。また反応に際しては2価フェノールの酸化着色を防ぐために亜硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイトあるいはナトリウムボロハイドライド等を使用することができる。
【0083】
さらにホスゲン化反応や重合反応を容易に行うため、有機溶媒が用いられる。使用される有機溶媒は、水に対して不溶で且つ反応に対して不活性であり、しかも反応により生成するポリカーボネートを溶解することができる有機溶媒である。このような有機溶媒としてはメチレンクロライド、テトラクロロエタン、クロロホルム、1,2−ジクロルエチレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等の塩素化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素、アセトフェノン、シクロヘキサン、アニソール等の単独あるいは混合物が好ましく使用される。これらのうちメチレンクロライドが最も好ましく使用される。上記の有機溶媒は、2価フェノール1モルに対して0.1〜5リットル使用される。
【0084】
本発明において末端停止剤溶液の添加時期は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されないが、ホスゲン吹込み工程に続いて添加するのが好ましい。
【0085】
本発明において末端停止剤と共に再び添加される塩基は、末端停止剤と樹脂末端Cl基との縮合反応を完全に行うために必要である。末端停止剤の添加前に反応液中のアルカリ濃度が高くなりすぎると樹脂末端Cl基と塩基の反応が多発し、樹脂末端がOH基となるため、分子量を制御することが困難となり所望の重合体が得られない恐れがある。また末端停止剤と共に塩基が添加されない場合には、末端停止剤との反応が遅れ、重合体の分子量が上がりすぎてしまうといった不都合が生じる恐れがある。
【0086】
上記末端停止剤の添加に際し、塩基を添加した後に重合促進触媒を添加することが好ましい。また、末端停止剤を反応混合物に添加した後、30〜120分間撹拌しながら重合を完結させる。
【0087】
本発明で用いられる重合促進触媒は、トリエチルアミンのような三級アミン、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテル及びその塩、あるいはアミド基を有する化合物等が使用される。その中で、トリエチルアミンのような三級アミンが好ましい。重合促進触媒の添加量は、仕込み2価フェノール1モルに対して、0.1〜10ミリモルである。
【0088】
本発明の製造方法は、通常バッチ法で行われる。このバッチ法の製造装置としては、撹拌装置、ガス吹き込み管および凝縮器を備えたジャケット付きの反応釜が使用される。撹拌装置としては、特に限定はないが、反転式撹拌機が好ましい。反転速度は、ホスゲン吹き込み時は70〜200回/分、末端停止剤添加から反応終了までは70〜230回/分である。また、反応温度は、ホスゲン吹き込み時は10〜25℃、末端停止剤添加から反応終了までは20〜35℃が好ましい。
【0089】
本発明の製造方法に用いられる原料について以下にさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0090】
<2価フェノール及び炭酸エステル形成化合物>
本発明の製造方法に用いられる2価フェノール及び炭酸エステル形成化合物は、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【0091】
<末端停止剤>
本発明の製造方法に用いられる末端停止剤についても、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。なお、本発明の製造方法の好ましい態様において、一般式(7a)、(8a)および(9a)におけるR
32、R
33およびR
34はそれぞれn−オクチル基、イソ−オクチル基、t−オクチル基及びドデシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である。
【0092】
<末端停止剤(1価フェノール)の使用量>
本発明の製造方法に用いられる末端停止剤(1価フェノール)の使用量は、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【0093】
[混合できる他の樹脂]
本発明の製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂に必要に応じて混合できる他の樹脂は、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【0094】
[添加剤]
本発明の製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂に、本発明の主旨を逸脱しない範囲で配合可能な種々の添加剤は、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【0095】
〔ポリカーボネート樹脂〕
本発明による製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される末端構造を有し、かつ、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であるという特徴を有する。
【化36】
(式中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数5〜14のアルキル基、炭素数1〜23のアルキルオキシ基、又は炭素数2〜23のアルキルエステル基を表し、rは1〜5の整数を表す。)
【0096】
好ましい態様としては、上記一般式(1)で表される末端構造が、下記一般式(7)、(8)又は(9)で示される構造を有する。
【化37】
(式中、R
33は、炭素数5〜14のアルキル基である。)
【化38】
(式中、R
32は、炭素数1〜22のアルキル基である。)
【化39】
(式中、R
34は、炭素数1〜23のアルキル基である。)
【0097】
より好ましい態様としては、上記一般式(7)、(8)および(9)におけるR
32、R
33およびR
34がそれぞれn−オクチル基、イソ−オクチル基、t−オクチル基及びドデシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である。
【0098】
本発明による方法で製造されるポリカーボネート樹脂の構造単位としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化40】
(式中、R
6〜R
13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−及び上記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造を表す。好ましくは、Xは、上記一般式(3)に示す構造を有する。)
【0099】
本発明による製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂に含まれる、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量は1質量%未満である。分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物には、例えば、2価フェノールのホスゲン化反応で生成した2価フェノールのジクロロホルメートと末端停止剤との縮合反応物であるジカーボネート化合物などが含まれる。
【0100】
分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物が多く含まれるポリカーボネート樹脂は、ディスクや複雑化及び薄肉化した製品の射出成形等を連続的に行った際に、比較的早い段階で金型(モールド)が微量の付着物(モールドデポジット)によって汚染される傾向がある。この点、分子量が1,000以下の低分子量カーボネート化合物の量が1質量%未満であれば、金型の汚染は効果的に防止されるため好ましい。
【0101】
本発明の製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは10,000〜18,000である。より好ましくは粘度平均分子量(Mv)が11,000〜15,000であり、さらにより好ましくは粘度平均分子量(Mv)が12,000以上14,500である。粘度平均分子量(Mv)が10,000以上の場合は機械的強度が向上し、18,000以下の場合は、溶融粘度が低くなり流動性が向上し、薄肉・大型の成型品の成形が容易になる。
【0102】
[評価方法]
本発明の製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂の種々の物性に関する評価方法は、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【0103】
〔用途〕
本発明の製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂の用途は、第1の態様において記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】
<分子量の測定>
本実施例において得られた成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の分子量は、ウベローデ粘度計を用い、以下に示す条件にて測定した粘度平均分子量(Mv)にて評価した。
【0106】
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、下記数式(II)により算出した。
【数3】
【0107】
<ゲル浸透クロマトグラフ分析測定条件>
測定機種:東ソー社製 HLC−8320GPC
カラム:Shodex K−G+K−805Lx2本+K−800D
溶離液:クロロホルム
温度:カラム恒温槽40℃
流速:1.0 ml/min
濃度:0.lwt/vol%
注入量:100μl
前処理:0.45μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
上記条件で測定し、試料のポリスチレン換算分子量分布を求め、その結果から分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物の量[質量%]を算出した。
【0108】
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター
荷重:160kgf/cm
2
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:240℃
測定機器:株式会社島津製作所製CFT−500D
【0109】
<金型汚れ>
射出成形機(ソディック社製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で3.5インチ、厚み0.4mmの薄肉試験片を成形し連続350ショット成形した後、成形後の金型付着物(モールドデポジット)を観察することで評価した。その際、問題なく良好であった場合を「○」(すなわち、合格)とし、汚れが発生し不良だった場合を「×」(すなわち、不合格)と評価した。
【0110】
〔末端停止剤の製造〕
<製造例1>
有機化学ハンドブック(第3版:有機合成化学協会編:技術堂発行)の第210頁〜212頁の記載に基づき、東京化成工業株式会社製のフェノールと東京化成工業株式会社製の2,4,4−トリメチル−1−ペンテンを用いてアルキル化を行い、下記化学式のパラ−t−オクチルフェノール(末端停止剤1)を得た。
【化41】
【0111】
<製造例2>
有機化学ハンドブック(第3版:有機合成化学協会編:技術堂発行)の第143頁〜150頁の記載に基づき、東京化成工業株式会社製の4−ヒドロキシ安息香酸と三菱化学株式会社製の2−エチルヘキサノールを用いて脱水反応によるエステル化を行い、下記化学式のパラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル(末端停止剤2)を得た。
【化42】
【0112】
<製造例3>
有機化学ハンドブック(第3版:有機合成化学協会編:技術堂発行)の第138頁〜140頁の記載に基づき、東京化成工業株式会社製のヒドロキノンと東京化成工業株式会社製のオクタノールを用いてエーテル化を行い、下記化学式のパラ−n−オクチルオキシフェノール(末端停止剤3)を得た。
【化43】
【0113】
〔ポリカーボネート樹脂の製造〕
<実施例1>
9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液43.5kgに、新日鉄住金化学株式会社製のビスフェノールA(BPA)7kgとハイドロサルファイト35gを加えて溶解した。これにジクロロメタン17.2kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15℃〜25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.1kgを30分かけて吹き込んだ。
【0114】
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン70.7kgに上記の末端停止剤1を714g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度(ST濃度):1質量%)を加え、激しく撹拌して乳化させた後、重合触媒として13.7gのトリエチルアミンを加え約40分間重合させた。
【0115】
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸発留去することによりポリカーボネート樹脂粉末を得た。
【0116】
得られたポリカーボネート樹脂粉末をスクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0117】
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを用いて、粘度平均分子量、ゲル浸透クロマトグラフ分析測定、Q値測定を実施した結果、粘度平均分子量は11,000、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.85質量%、Q値は69×10
−2cc/secであった。
【0118】
得られたペレットを120℃で4〜6時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(ソディック社製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で3.5インチ、厚み0.4mmの薄肉試験片を連続成形した。金型汚れは、良好であった。
【0119】
<実施例2>
ジクロロメタン21.6kgに末端停止剤1を669g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:3%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0120】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は12,000、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.94質量%、Q値は56×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0121】
<実施例3>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン3.4kg及びジクロロメタン13.8kgに末端停止剤1を574g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:4%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0122】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,500、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.83質量%、Q値は20×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0123】
<実施例4>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン11.4kg及びジクロロメタン9kgに末端停止剤1を574g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:6%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0124】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,500、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.93質量%、Q値は19×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0125】
<実施例5>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン9kg及びジクロロメタン7.6kgに末端停止剤1を487g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:6%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0126】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は14,500、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.62質量%、Q値は13×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0127】
<実施例6>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン10.3kg及びジクロロメタン6.2kgに末端停止剤1を396g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:6%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0128】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16,000、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.58質量%、Q値は10×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0129】
<実施例7>
末端停止剤1の代わりに末端停止剤2を用いて、ジクロロメタン10.9kgに末端停止剤2を693g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:6%)を用いた以外は実施例6と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0130】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は14,500、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.09質量%、Q値は38×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0131】
<実施例8>
末端停止剤1の代わりに末端停止剤3を用いて、ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン1.9kg及びジクロロメタン14.8kgに末端停止剤3を616g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:4%)を用いた以外は実施例3と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0132】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は14,400、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.48質量%、Q値は34×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0133】
<実施例9>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン7.2kg及びジクロロメタン9.7kgに末端停止剤3を616g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:6%)を用いた以外は、実施例8と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0134】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は14,400、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.56質量%、Q値は34×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0135】
<比較例1>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン8.4kg及びジクロロメタン8.1kgに末端停止剤1を910g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:10%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0136】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は9,000、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は2.51質量%、Q値は99×10
−2cc/secであり、金型汚れは不良であった。
【0137】
<比較例2>
ジクロロメタン5.1kgに末端停止剤1を574g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:10%)を用いた以外は、実施例4と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0138】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,600、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は1.2質量%、Q値は18×10
−2cc/secであり、金型汚れは不良であった。
【0139】
<比較例3>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン13.8kg及びジクロロメタン2.8kgに末端停止剤1を487g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:15%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0140】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は14,500、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は1.23質量%、Q値は13×10
−2cc/secであり、金型汚れは不良であった。
【0141】
<比較例4>
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液5kg、ジクロロメタン14.2kg及びジクロロメタン2.3kgに末端停止剤1を264g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:10%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0142】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20,000、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は0.67質量%、Q値は1×10
−2cc/secであり、金型汚れは良好であった。
【0143】
<比較例5>
末端停止剤1の代わりに末端停止剤4(東京化成工業株式会社製のパラ−t−ブチルフェノール)を用いて、ジクロロメタン51.6kgに末端停止剤4を522g溶解させた溶液(溶液中の末端停止剤濃度:1%)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0144】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は11,000、分子量1,000未満の低分子量カーボネート化合物量は1.13質量%、Q値は62×10
−2cc/secであり、金型汚れは不良であった。
【0145】
実施例1〜9および比較例1〜5で得られた結果を下表に示す。
【表1】