特許第6927271号(P6927271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927271
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】電子部品および電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20210812BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20210812BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   H01F27/29 123
   H01F17/04 F
   H01F41/10 C
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-200813(P2019-200813)
(22)【出願日】2019年11月5日
(62)【分割の表示】特願2015-237751(P2015-237751)の分割
【原出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2020-36035(P2020-36035A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎士
(72)【発明者】
【氏名】堤 正紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳功
(72)【発明者】
【氏名】工藤 敬実
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/115180(WO,A1)
【文献】 特開2002−141226(JP,A)
【文献】 特開昭58−068913(JP,A)
【文献】 特開昭62−213213(JP,A)
【文献】 特開昭53−120173(JP,A)
【文献】 特開2010−186909(JP,A)
【文献】 特開2000−145780(JP,A)
【文献】 特開平04−259351(JP,A)
【文献】 特開平07−310102(JP,A)
【文献】 特開2005−194327(JP,A)
【文献】 特開2001−052937(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043740(WO,A1)
【文献】 特開2016−032050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0293334(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−19/08、27/29
H01F 41/00−41/04、41/10
H01C 1/00−1/16、7/00−7/22
H01C 17/00−17/30
H01G 4/00−4/40、9/004−9/012
H01G 9/04−9/06、13/00−17/00
C23C 18/00−20/08
H05K 1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料および金属粉のコンポジット材料からなるコンポジット体と、
前記コンポジット体の研削された上面上に配置された金属膜と
を備え、
前記金属膜が、前記コンポジット体の前記樹脂材料および前記金属粉に接触しており、
前記樹脂材料と接する前記金属膜の結晶における平均粒径は、前記金属粉と接する前記金属膜の結晶における平均粒径に対し、60%以上120%以下であり、
前記金属粉がFeを含む金属又は合金からなり、
前記金属粉の平均粒径が、0.1μm以上5μm以下であり、
前記金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなる、電子部品。
【請求項2】
前記金属粉上の前記金属膜の膜厚の一部は、前記樹脂材料上の前記金属膜の膜厚以下となる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記コンポジット体に埋め込まれた内部電極を備え、
前記金属膜が、前記内部電極と接触している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記金属膜と前記内部電極とが同一材料からなる、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記コンポジット体の外面は、主面を有し、
前記主面において、前記樹脂材料から前記金属粉が露出するとともに、前記金属膜が配置されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記樹脂材料から露出する前記金属粉の形状は、楕円体の一部を切断した形状を含む、請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記金属膜が配置されていない前記主面上に配置された樹脂膜を有し、
前記樹脂膜は、前記樹脂材料から露出する前記金属粉を覆う、請求項5に記載の電子部品。
【請求項8】
前記金属膜の一部は、前記樹脂膜上に配置されている、請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記金属粉上の前記金属膜の膜厚が、前記樹脂材料上の前記金属膜の膜厚の60%以上120%以下である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項10】
前記金属粉と前記金属膜との界面及び前記樹脂材料と前記金属膜との界面のいずれにおいても、Pdが存在しない、請求項1に記載の電子部品。
【請求項11】
前記金属膜の一部は、前記金属粉の外面に沿って前記コンポジット体の内部側に回り込んでいる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項12】
前記コンポジット体の外面が一部に凹部を有し、前記金属膜が前記凹部内に充填されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項13】
前記金属膜の結晶粒径は、前記コンポジット体と接触する側からその反対側にかけて、大きくなっている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項14】
樹脂材料および金属粉のコンポジット材料からなるコンポジット体の上面の一部を研削して、前記コンポジット体の研削面から金属粉を露出させる研削工程と、
前記コンポジット体の研削面の前記樹脂材料上および前記金属粉上に無電解めっきを用いて金属膜を形成する金属膜形成工程と
を備え、
前記金属粉がFeを含む金属又は合金からなり、
前記金属粉の平均粒径が、0.1μm以上5μm以下であり、
前記金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなる、電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記金属膜形成工程において、無電解めっきを用いて前記金属膜を前記樹脂材料上および前記金属粉上に形成する、請求項14に記載の電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記金属膜形成工程では、無電解めっきを用いた置換析出反応を用いて前記研削面から露出させた前記金属粉上に前記金属膜を析出させ、前記析出させた前記金属膜を成長させることにより、前記金属膜を形成する、請求項14に記載の電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記金属膜形成工程では、触媒付与を行わないで無電解めっきを行う、請求項14の電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記研削工程後、前記コンポジット体の研削面の一部の領域上に樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程を有し、
前記金属膜形成工程では、前記樹脂膜をマスクとして、金属膜を形成する、請求項14の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品および電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としては、WO2015/115180A1(特許文献1)に記載されたものがある。この電子部品は、樹脂材料および金属粉のコンポジット材料からなるコンポジット体と、コンポジット体に設けられる外部電極とを有する。外部電極は、電解めっきにより形成される。これにより、外部電極と金属粉とが金属結合し、外部電極がコンポジット体に対して強く密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2015/115180A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者は、以下の理由により、外部電極と金属粉との結合による密着性の向上だけではなく、外部電極と樹脂材料との密着性も向上させることを想到した。
【0005】
近年、電子部品を使用する回路では、信号をより高周波にすることにより、特性や機能を向上させる試みが行われている。今後、更なる高周波信号への対応を行うにつれ、電子部品が有する金属粉で発生する磁気損失はより大きくなると考えられる。そこで、磁気損失を低減するために、金属粉の粒子の粒径を従来よりもさらに小さくすることが考えられる。
【0006】
金属粉の粒径が小さくなると、コンポジット体の外部電極を配置する面において、表面粗さが低減してより平坦性が高まるため、アンカー効果が得られにくくなり、外部電極のコンポジット体に対する密着性が低減する。また、金属粉の粒径が小さくなると、コンポジット体から金属粉が脱粒する可能性も高くなり、コンポジット体の外部電極との接触部分において、金属粉の占める割合が減り、その分樹脂材料の占める割合が増える。すなわち、接合力の強い外部電極と金属粉との接触部分の割合が減り、接合力の弱い外部電極と樹脂材料との接触部分の割合が増え、外部電極のコンポジット体に対する密着性が低減する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、外部電極のコンポジット体に対する密着性が向上する電子部品および電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の電子部品は、
樹脂材料および金属粉のコンポジット材料からなるコンポジット体と、
前記コンポジット体の外面上に配置された金属膜と
を備え、
前記金属膜が、前記コンポジット体の前記樹脂材料および前記金属粉に接触しており、
前記樹脂材料と接する前記金属膜の結晶における平均粒径は、前記金属粉と接する前記金属膜の結晶における平均粒径に対し、60%以上120%以下である。
【0009】
本発明の電子部品によれば、金属膜が、コンポジット体の樹脂材料および金属粉に接触し、樹脂材料と接する金属膜の結晶における平均粒径は、金属粉と接する金属膜の結晶における平均粒径に対し、60%以上120%以下である。このように、金属粉上と樹脂材料上との間で金属膜の結晶の平均粒径の差が小さい状態は、樹脂材料上に比較的粒径の小さい金属膜を形成できている状態に相当する。よって、金属膜と樹脂材料との間におけるアンカー効果を得やすく、樹脂材料と金属膜との密着性を向上できる。よって、樹脂材料上の密着性も確保することで、金属膜全体の密着性を向上できる。
【0010】
また、電子部品の一実施形態では、前記コンポジット体の外面が一部に凹部を有し、前記金属膜が前記凹部内に充填されている。
【0011】
前記実施形態によれば、金属膜が凹部内に充填されているので、金属膜とコンポジット体との密着性をさらに向上できる。
【0012】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属粉上の前記金属膜の膜厚の一部は、前記樹脂材料上の前記金属膜の膜厚以下となる。
【0013】
前記実施形態によれば、金属粉上の金属膜の膜厚の一部は、樹脂材料上の金属膜の膜厚以下となるので、電子部品における凹凸を低減させることができる。特に、金属膜が外部電極であるとき、実装安定性と信頼性が向上し、金属膜が内部電極であるとき、積層時の安定性が向上する。
【0014】
また、電子部品の一実施形態では、
前記コンポジット体に埋め込まれた内部電極を備え、
前記金属膜が、前記内部電極と接触している。
【0015】
前記実施形態によれば、金属膜が、内部電極と接触しているので、金属膜と内部電極とが立体配置されることにより、金属膜の配置領域の影響を受けることなく、内部部材を配置することができる。
【0016】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜と前記内部電極とが同一材料からなる。
【0017】
前記実施形態によれば、金属膜と内部電極とが同一材料からなるので、金属膜と内部電極の密着性が向上する。
【0018】
また、電子部品の一実施形態では、
前記コンポジット体の外面は、主面を有し、
前記主面において、前記樹脂材料から前記金属粉が露出するとともに、前記金属膜が配置されている。
【0019】
前記実施形態によれば、コンポジット体の主面において、樹脂材料から金属粉が露出するとともに、金属膜が配置されているので、コンポジット体の主面に金属膜を形成する際に、露出する金属粉を用いることができ、製造効率が向上する。
【0020】
また、電子部品の一実施形態では、前記樹脂材料から露出する前記金属粉の形状は、楕円体の一部を切断した形状を含む。
【0021】
前記実施形態によれば、樹脂材料から露出する金属粉の形状は、楕円体の一部を切断した形状を含むので、このような金属粉上に形成された金属膜のコンポジット体との密着性を向上できる。
【0022】
また、電子部品の一実施形態では、
前記金属膜が配置されていない前記主面上に配置された樹脂膜を有し、
前記樹脂膜は、前記樹脂材料から露出する前記金属粉を覆う。
【0023】
前記実施形態によれば、樹脂膜は、金属膜が配置されていない主面上に配置されており、樹脂膜は、樹脂材料から露出する金属粉を覆うので、金属粉の外部への露出を防止することができる。
【0024】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜の一部は、前記樹脂膜上に配置されている。
【0025】
前記実施形態によれば、金属膜の一部は、樹脂膜上に配置されているので、樹脂膜を金属膜のパターン形成時のマスク代わりとすることができ、金属膜の形成における製造効率が向上する。
【0026】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属粉は、Feを含む金属又は合金からなり、前記金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなる。
【0027】
前記実施形態によれば、金属粉は、Feを含む金属又は合金からなり、金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなるので、触媒を用いずに、金属膜を無電解めっきにより形成することができる。また、金属粉は、Feを含む金属又は合金からなるので、透磁率を向上でき、金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなるので、導電性を向上できる。
【0028】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属粉上の前記金属膜の膜厚が、前記樹脂材料上の前記金属膜の膜厚の60%以上160%以下である。
【0029】
前記実施形態によれば、金属粉上の金属膜の膜厚が、樹脂材料上の金属膜の膜厚の60%以上160%以下であるので、金属膜の膜厚は、均一となる。これにより、電子部品における凹凸を低減できる。特に、金属膜が外部電極であるとき、実装安定性と信頼性が向上し、金属膜が内部電極であるとき、積層時の安定性が向上する。
【0030】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属粉と前記金属膜との界面及び前記樹脂材料と前記金属膜との界面のいずれにおいても、Pdが存在しない。
【0031】
前記実施形態によれば、金属粉と金属膜との界面及び樹脂材料と金属膜との界面のいずれにおいても、Pdが存在しない。触媒付与せずに金属膜が形成されており、金属膜の形成における製造効率が向上する。
【0032】
また、電子部品の一実施形態では、
前記樹脂材料と前記金属膜との界面においては、Pdが存在しないが、
前記金属粉と前記金属膜との界面においては、Pdが存在する。
【0033】
前記実施形態によれば、樹脂材料と金属膜との界面においては、Pdが存在しないが、金属粉と金属膜との界面においては、Pdが存在するので、触媒Pdを用いて、金属膜を無電解めっきにより形成することができる。つまり、金属粉よりも金属膜の方が卑である場合であっても、置換Pd触媒処理を行うことにより、金属膜を形成することができる。したがって、金属粉と金属膜の材料選択の自由度が向上する。
【0034】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜の一部は、前記金属粉の外面に沿って前記コンポジット体の内部側に回り込んでいる。
【0035】
前記実施形態によれば、金属膜の一部は、金属粉の外面に沿ってコンポジット体の内部側に回り込んでいるので、金属粉と接触する面積が増えることにより金属粉との接合力が向上するとともに、樹脂材料と金属粉との間の隙間の形状に沿ってコンポジット体と接触することによりコンポジット体とのアンカー効果が向上する。
【0036】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜の結晶粒径は、前記コンポジット体と接触する側からその反対側にかけて、大きくなっている。
【0037】
前記実施形態によれば、金属膜の結晶粒径は、コンポジット体と接触する側からその反対側にかけて、大きくなっているので、金属膜は、コンポジット体と接触する側で相対的に結晶粒径が小さくなっており、樹脂材料との間でアンカー効果を得やすく、金属膜とコンポジット体との密着性を向上できる。
【0038】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、
樹脂材料および金属粉のコンポジット材料からなるコンポジット体の一部を研削して、前記コンポジット体の研削面から金属粉を露出させる研削工程と、
前記コンポジット体の研削面に無電解めっきを用いて金属膜を形成する金属膜形成工程と
を備える。
【0039】
前記実施形態によれば、コンポジット体の一部を研削して、コンポジット体の研削面から金属粉を露出させ、コンポジット体の研削面に無電解めっきを用いて金属膜を形成する。これにより、金属膜とコンポジット体との密着性、金属膜自身の膜強度及び導電性を向上することができる。また、これにより、所望の厚みをばらつきが少なく得ることができるとともに、簡便な方法かつ高い製造効率で金属膜を形成することができる。
【0040】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、前記金属膜形成工程において、無電解めっきを用いて前記金属膜を前記樹脂材料上および前記金属粉上に形成する。
【0041】
前記実施形態によれば、金属膜形成工程において、無電解めっきを用いて金属膜を樹脂材料上および金属粉上に形成するので、金属膜と金属粉との接合力が向上するとともに、樹脂材料上の凹凸がわずかな場合であっても当該凹凸に沿って金属膜を形成でき、金属膜と樹脂材料との密着性を確保できる。
【0042】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、前記金属膜形成工程では、置換析出反応を用いて前記研削面から露出させた前記金属粉上に前記金属膜を析出させ、無電解めっきを用いて前記析出させた前記金属膜を成長させることにより、前記金属膜を形成する。
【0043】
前記実施形態によれば、金属膜形成工程では、置換析出反応を用いて研削面から露出させた金属粉上に金属膜を析出させ、無電解めっきを用いて析出させた金属膜を成長させることにより、金属膜を形成するので、簡便なプロセスで金属膜を形成できる。
【0044】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、前記金属膜形成工程では、触媒付与を行わないで無電解めっきを行う。
【0045】
前記実施形態によれば、金属膜形成工程では、触媒付与を行わないで無電解めっきを行うので、簡便なプロセスで金属膜を形成できる。
【0046】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、
前記金属粉は、Feを含む金属又は合金からなり、
前記金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなる。
【0047】
前記実施形態によれば、金属粉は、Feを含む金属又は合金からなり、金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなるので、触媒を用いずに、金属膜を無電解めっきにより形成することができる。また、金属粉は、Feを含む金属又は合金からなるので、透磁率を向上でき、金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなるので、導電性を向上できる。
【0048】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、
前記研削工程後、前記コンポジット体の研削面の一部の領域上に樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程を有し、
前記金属膜形成工程では、前記樹脂膜をマスクとして、金属膜を形成する。
【0049】
前記実施形態によれば、研削工程後、コンポジット体の研削面の一部の領域上に樹脂膜を形成し、樹脂膜をマスクとして、金属膜を形成するので、金属膜をエッチングしないでパターン形成でき、製造効率が向上する。
【発明の効果】
【0050】
本発明の電子部品および電子部品の製造方法によれば、金属膜のコンポジット体に対する密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の電子部品の一実施形態を示す断面図である。
図2図1のA部の拡大図である。
図3図2に対応し、無電解めっきを用いて形成した金属膜とコンポジット体との界面を示す断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0053】
図1は、本発明の電子部品の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、電子部品1は、コイル部品を示す。電子部品1は、基板10と、基板10の上下面に設けられた第1、第2コイル導体21,22と、基板10および第1、第2コイル導体21,22を覆う絶縁体30と、絶縁体30を覆うコンポジット体40と、コンポジット体40の上面に設けられた第1、第2外部電極51,52とを有する。
【0054】
基板10は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたプリント配線基板である。基板10の材料は、ベンゾジクロブテン等の絶縁性樹脂や、ガラスセラミックス等の絶縁性無機材料でもよい。基板10の厚みは、例えば80μm程度である。なお、本願において、厚みと記載する場合は基板10の厚み方向(図1の紙面上下方向)に沿った厚みのことを意味する。
【0055】
第1、第2コイル導体21,22は、Au,Ag,Cu,Pd,Ni等の導電性材料からなる。第1コイル導体21は、基板10の下面に設けられている。第1コイル導体21は、例えば、上方からみて、時計回りに旋回しながら中心から遠ざかる渦巻き状に形成される。第2コイル導体22は、基板10の上面に設けられている。第2コイル導体22は、例えば、上方からみて、反時計回りに旋回しながら中心から遠ざかる渦巻き状に形成される。第1、第2コイル導体21,22の厚みは、例えば40μm以上120μm以下である。
【0056】
第1コイル導体21の外周端は、基板10の下面に設けられた引出電極25aに接続される。引出電極25aは、基板10を貫通するスルーホール電極25bに接続される。スルーホール電極25bは、基板10の上面に設けられた引出電極25cに接続される。引出電極25cは、コンポジット体40に埋め込まれた内部電極26aに接続される。内部電極26aは、第1外部電極51に接続される。
【0057】
第2コイル導体22の外周端は、基板10の上面に設けられた引出電極25dに接続される。引出電極25dは、コンポジット体40に埋め込まれた内部電極26bに接続される。内部電極26aは、第2外部電極52に接続される。
【0058】
第1コイル導体21の内周端は、基板10を貫通するビアホール電極(不図示)を介して、第2コイル導体22の内周端に接続される。これにより、第1外部電極51から入力された信号が、第1コイル導体21と第2コイル導体22とを順に経由して、第2外部電極52から出力される。
【0059】
絶縁体30は、エポキシ樹脂等からなる。なお、絶縁体30の材料は、ベンゾジクロブテン等の絶縁性樹脂や、ガラスセラミックス等の絶縁性無機材料でもよい。絶縁体30の厚みは、第1、第2コイル導体21,22を覆うことができる程度であればよく、例えば、45μm以上150μm以下である。
【0060】
コンポジット体40は、樹脂材料41および金属粉42のコンポジット材料からなる。樹脂材料41として、例えば、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などの有機材料がある。金属粉42として、例えば、Fe,Si,Cr,Ni等などの金属材料やこれらを含む合金材料などからなる粉体がある。なお、金属粉42は複数種類の材料からなる粉体であってもよい。また、金属粉42の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下であり、このように金属粉42の粒径が小さい場合、後述するように、電子部品1の構成における効果は顕著に発揮される。なお、金属粉42の平均粒径は、後述する金属膜の結晶の平均粒径と同様にして算出される。また、電子部品1の製造段階においては、金属粉42の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径として算出することができる。
【0061】
コンポジット体40は、内磁路40aと外磁路40bを有する。内磁路40aは、第1、第2コイル導体21,22の内径に位置する。外磁路40bは、第1、第2コイル導体21,22の上下に位置する。外磁路40bの厚みは、例えば10μm以上50μm以下である。
【0062】
第1、第2外部電極51,52は、コンポジット体40の外面の主面45上に配置された金属膜であって、無電解めっきを用いて形成された膜である。金属膜として、例えば、Au,Ag,Pd,Ni,Cuなどの金属材料やこれらの合金材料、さらにこれらにPやBを含有させた材料からなる膜がある。また、金属膜の膜厚は、例えば5μmであり、1μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、第1、第2外部電極51,52は、上記金属膜の表面をさらに別のめっき膜で覆った積層構成であってもよい。なお、以下では、第1、第2外部電極51、52は、上記金属膜の単層であるものとして説明する。
【0063】
図2は、図1のA部の拡大図である。図1図2に示すように、コンポジット体40の外面の主面45は、研削により形成された研削面である。主面45において、樹脂材料41から金属粉42が露出している。ここで、露出とは、電子部品1の外部への露出だけではなく、他の部材への露出、つまり、他の部材との境界面での露出も含むものとする。
【0064】
金属膜(第1、第2外部電極51,52)は、コンポジット体40の樹脂材料41および金属粉42に接触している。樹脂材料41と接する金属膜の結晶における平均粒径(図2のB部分)は、金属粉42と接する金属膜の結晶における平均粒径(図2のC部分)に対し、60%以上120%以下である。このように、金属粉42上と樹脂材料41上との間で金属膜の結晶の平均粒径の差が小さい状態は、樹脂材料41上に比較的粒径の小さい金属膜を形成できている状態に相当する。
【0065】
具体的に説明すると、一般的にコンポジット体40上にめっきで形成された金属膜は、まず金属粉42上から析出し、徐々に樹脂材料41上を含めた金属粉42の周囲に析出する。ここで、後述するようにめっき形成された金属膜の結晶の平均粒径は、初期に析出した領域より後で析出した領域で大きくなる。よって、上記金属膜のように、初期に析出した金属膜である金属粉42と接する金属膜と、樹脂材料41と接する金属膜との間で、結晶の平均粒径の差が小さいということは、比較的早い段階で樹脂材料41上に金属膜が形成できており、樹脂材料41上に比較的粒径の小さい金属膜が形成できていることに相当する。
【0066】
また、材料が異なる金属膜と樹脂材料41と密着性については、界面の凹凸に沿って金属膜と樹脂材料41とが接触することによるアンカー効果の影響が大きい。上記金属膜では、粒径が小さいことにより、樹脂材料41のわずかな凹凸であっても、当該凹凸に沿って金属膜を形成することができる。すなわち、上記金属膜では、金属膜と樹脂材料41との間におけるアンカー効果を得やすく、樹脂材料41と金属膜との密着性を向上できる。よって、樹脂材料41上の密着性も確保することで、金属膜全体としてコンポジット体40との密着性を向上できる。特にこの効果は、金属粉42の粒径が小さくなった場合、すなわちコンポジット体40の主面45の表面粗さが低減した場合や、主面45において金属粉42が脱粒して樹脂材料41の占める割合が増えた場合において、顕著に発揮される。
【0067】
なお、上記のように金属粉42上と樹脂材料41上との間で金属膜の結晶の平均粒径の差を小さくする方法としては、無電解めっきを用いて金属膜を形成すればよい。特に、電解めっきと比較して、無電解めっきでは、金属粉42上と樹脂材料41上とにおける、金属膜が析出するタイミングを近づけることができ、上記平均粒径の差を小さくできる。具体的には、電子部品1などの小型で大量に生産される製品においては、電解めっきを行う際、製造効率の観点からバレルめっきが採用されることが一般的であるが、この場合、金属粉42ごとに通電されるタイミングがばらつくことにより、樹脂材料41上を含め形成した金属膜の各部分では、析出タイミングのばらつきが大きくなる。一方、無電解めっきでは、めっき液に触れた金属粉42上から金属膜が析出するが、各金属粉42にめっき液が触れるタイミングは比較的均一であり、形成した金属膜の各部分に渡って、析出タイミングを比較的均一にすることができる。このように無電解めっきでは、金属膜の各部分の析出タイミングが近づくことにより、上記のように金属粉42上と樹脂材料41上との間で金属膜の結晶の平均粒径の差を小さくすることができる。なお、金属粉42の粒径が小さくなり、主面45における樹脂材料41の占める割合が増えた場合において、電解めっきの析出タイミングのばらつきはより大きくなるため、このような場合、無電解めっきとの差異は顕著に表れる。
【0068】
なお、スパッタリングや蒸着によって形成した膜では、めっきのような形成タイミングによる結晶の平均粒径の差自体が少ないと考えられ、同様の効果を得ることは難しいと考えられる。また、スパッタリングや蒸着と比較して、めっきを用いて形成した金属膜では、金属粉42との密着性が高いため、金属膜全体のコンポジット体40との密着性の観点からは、めっきを用いることが好ましい。また、設備、工程、形成時間、処理数などの製造効率の高さ、金属膜の電気抵抗率の低さの観点からも、スパッタリングや蒸着と比較してめっきを用いることが好ましい。さらに、金属膜に代わって、樹脂材料中に金属粉を含有させた樹脂電極膜を用いる技術も存在するが、樹脂電極膜は、コンポジット体との密着性、樹脂電極膜自身の膜強度及び導電性を確保するためには、樹脂電極膜の膜厚をある程度大きくする必要がある。しかし、電子部品1では、低背、小型化の観点から、外部電極51,52の厚みに制限が課せられる場合が多い。これにより、樹脂電極膜では、十分な密着性、膜強度及び導電性を確保することができない可能性がある。一方、電子部品1では、樹脂電極膜と比較して、膜厚を小さくしてもコンポジット体40との密着性や、金属膜自身の膜強度及び導電性の低下率は低い。したがって、電子部品1では、樹脂電極膜と比較して、低背化を実現しつつ、密着性、膜強度及び導電性に優れた金属膜を備えることができる。
【0069】
ここで、本願における平均粒径の比は、金属膜の断面のFIB−SIM像から金属膜の結晶(粒塊)の平均粒径を算出することにより求められるものである。FIB−SIM像とは、FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)を用いて観測したSIM(Scanning Ion Microscope:走査イオン顕微鏡)による断面画像である。なお、平均粒径の算出方法としては、FIB−SIM像を画像解析して粒度分布を求め、その積算値が50%となる粒径(D50、メディアン径)を平均粒径とする方法を用いることができる。ただし、重要なのは平均粒径の絶対値ではなく比(相対値)であるため、上記画像解析が困難な場合などは、FIB−SIM像において、金属膜の各結晶の最大径を粒径として複数個測定し、その算術平均値を平均粒径として求める方法を用いてもよい。
【0070】
また、算出に当たり、粒径を測定する金属粉の個数は、20〜50個程度であればよい。さらに、算出する際に対象とする「樹脂材料41と接する金属膜の結晶」及び「金属粉42と接する金属膜の結晶」は、厳密に樹脂材料41又は金属粉42と直接接する結晶のみに限られず、金属膜と樹脂材料41との界面又は金属膜と金属粉42との界面から、それぞれ金属膜の膜厚方向に向かって1μm程度の範囲に存在する結晶を対象とする。なお、上記平均粒径の比の関係は、金属膜全体で成立していることが好ましいが、金属膜の一部で成立していても効果は発揮される。したがって、平均粒径の算出においては、金属膜の一部のFIB−SIM像から算出してもよく、例えば主面45に沿った方向において、5μm程度の範囲のFIB−SIM像から算出してもよい。
【0071】
また、無電解めっきでは、前述の析出タイミングの点から、金属膜の膜厚の凹凸も低減できる。これに対して、電解めっきでは、樹脂材料上の金属膜の膜厚が、金属粉上の金属膜の膜厚より小さくなる。
【0072】
好ましくは、コンポジット体40の主面45が一部に凹部を有し、金属膜が凹部内に充填されている。図3は、図2に対応し、無電解めっきを用いて形成した金属膜(第2外部端子52)とコンポジット体40との界面を示す断面画像(FIB−SIM像)である。なお、第1外部端子51とコンポジット体40との界面も同様の画像である。図3に示すように、コンポジット体40の主面45は、例えば、研削の際の金属粉42の脱粒により形成された凹部45aを一部に有する場合がある。この場合、図3のように、当該凹部45aに金属膜が充填されていると、金属膜と樹脂材料41との間におけるアンカー効果がより向上し、金属膜とコンポジット体40との密着性をさらに向上できる。なお、凹部45aは図3に示すように、金属粉42の一部が脱粒することにより形成されたものであってもよいし、金属粉42全体が脱粒することにより形成されたものであってもよい。また、図3に示すように、金属膜は凹部45aの全体に充填されている場合だけに限られず、凹部45aの一部に充填されていてもよい。
【0073】
好ましくは、金属粉42上の金属膜の膜厚の一部は、樹脂材料41上の金属膜の膜厚以下となる。これにより、電子部品1における凹凸を低減させることができる。特に、金属膜が外部電極51,52であるとき、実装安定性と信頼性が向上する。なお、金属膜が内部電極であるとき、積層時の安定性が向上する。
【0074】
金属膜は、内部電極26a,26bと接触している。これにより、金属膜と内部電極26a,26bとが立体配置される。この場合、図1に示すように、金属膜が内部電極26a,26bを介して接する電子部品1の内部部材(例えば第1、第2コイル導体21,22など)とは別の層に配置される。これにより、電子部品1では金属膜の配置領域の影響を受けることなく、内部部材を配置できる。例えば、電子部品1では、主面45と平行な平面方向において、内部電極26a,26bの幅を小さくし、その分コンポジット体40の占める割合を増加させることで、インダクタンス値を向上させることができる。あるいは、電子部品1では、同様に上記平面方向において、内部電極26a,26bの幅を小さくし、その分外形サイズを小さくすることで、実装面積を低減することができる。一方、例えば、コンポジット体40に埋め込まれた柱状の外部電極のように、外部電極51,52と内部電極26a,26bが一体化されている場合は、上記のように内部電極26a,26bの幅を小さくすると、外部電極51,52のコンポジット体40から露出する面積が小さくなり、実装安定性が低下する場合がある。
【0075】
好ましくは、金属膜と内部電極26a,26bとは、同一材料からなる。これにより、金属膜と内部電極26a,26bの密着性が向上する。
【0076】
主面45において、樹脂材料41から金属粉42が露出するとともに、金属膜が配置されている。これにより、後述するように主面45に金属膜を形成する際に、露出する金属粉42を用いることができ、製造効率が向上する。
【0077】
樹脂材料41から露出する金属粉42の形状は、楕円体の一部を切断した形状を含む。なお、楕円体には、球形を含む。金属粉42は、例えば、主面45の研削の際に一部が切断される場合がある。この場合、図2に示すように、金属粉42の切断面は主面45と平行となり、当該平坦面に沿って金属膜を析出させることができるため、このような金属粉42上に形成された金属膜のコンポジット体40との密着性を向上できる。
【0078】
金属膜が配置されていない主面45上には、樹脂膜60が配置され、樹脂膜60は、樹脂材料41から露出する金属粉42を覆う。樹脂膜60は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド等の電気絶縁性が高い樹脂材料から構成される。これにより、樹脂膜60は、樹脂材料41から露出する金属粉42を覆うので、金属粉42の外部への露出を防止することができる。樹脂膜60の厚みは、例えば1μm以上10μm以下であり、実装安定性を考慮し、第1、第2外部端子51,52の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0079】
金属膜の一部は、樹脂膜60上に配置されている。これにより、後述するように、樹脂膜60を金属膜のパターン形成時のマスク代わりとすることができ、金属膜の形成における製造効率が向上する。
【0080】
好ましくは、金属粉42は、Feを含む金属又は合金からなり、金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなる。これにより、触媒を用いずに、金属膜を無電解めっきにより形成することができる。また、金属粉42は、Feを含む金属又は合金からなるので、コンポジット体40の透磁率を向上でき、金属膜は、Cuを含む金属又は合金からなるので、第1、第2外部電極51,52の導電性を向上できる。
【0081】
好ましくは、金属粉42上の金属膜の膜厚は、樹脂材料41上の金属膜の膜厚の60%以上160%以下である。これにより、金属膜の膜厚は、均一となる。したがって、電子部品における凹凸を低減できる。特に、金属膜が外部電極51,52であるとき、実装安定性と信頼性が向上する。なお、膜厚は例えば図3のFIB−SIM像において、画像解析により算出してもよいし、直接測定してもよい。また、上記膜厚の比の関係は、金属膜全体で成立していることが好ましいが、金属膜の一部で成立していても効果は発揮される。したがって、膜厚の算出においては、金属膜の一部のFIB−SIM像から算出してもよく、例えば主面45に沿った方向において、5μm程度の範囲のFIB−SIM像から算出してもよいし、樹脂材料41上、金属粉42上のそれぞれから数箇所(例えば5箇所など)測定した膜厚を比較してもよい。膜厚の比較においては、樹脂材料41上、金属粉42上のそれぞれの膜厚の平均値同士を比較することが好ましい。
【0082】
金属粉42と金属膜との界面及び樹脂材料41と金属膜との界面のいずれにおいても、Pdが存在しない。これにより、触媒付与せずに金属膜が形成されており、金属膜の形成における製造効率が向上する。これに対して、ガラスエポキシ基板にめっきする場合、基板の全面に触媒を付与する必要があり、工程数が増加する。
【0083】
なお、樹脂材料41と金属膜との界面においては、Pdが存在しないが、金属粉42と金属膜との界面においては、Pdが存在するようにしてもよい。このとき、触媒Pdを用いて、金属膜を無電解めっきにより形成することができる。つまり、金属粉42よりも金属膜の方が卑である場合、例えば、金属粉42がCuを含む金属又は合金からなり、金属膜がNiを含む金属又は合金からなる場合であっても、置換Pd触媒の処理を行うことにより、無電解めっきを用いて金属膜を形成することができる。したがって、金属粉42と金属膜の材料選択の自由度が向上する。
【0084】
図3に示すように、無電解めっきを用いて形成した金属膜の一部は、金属粉42の外面に沿ってコンポジット体40の内部側に回り込んでいる。具体的に述べると、外部電極52としての金属膜は、図3の金属粉42の外面に沿った色の薄い部分が示すように、金属粉42の外面に沿って、樹脂材料41と金属粉42との間の隙間に入り込んでいる。このように、金属膜は、金属粉42の樹脂材料41から露出している露出面42aに加えて、金属粉42の樹脂材料41に内包されている内包面42bに、析出している。したがって、金属膜の一部は、金属粉42の外面に沿ってコンポジット体40の内部側に回り込んでいるので、金属粉42と接触する面積が増えることにより金属粉42との接合力が向上するとともに、樹脂材料41と金属粉42との間の隙間の形状に沿ってコンポジット体40と接触することにより、コンポジット体40とのアンカー効果が向上する。なお、上記構造は、樹脂材料41と金属粉42との間に無電解めっき液が浸漬することにより形成されたものであると考えられる。
【0085】
また、図3に示すように、無電解めっきを用いて形成した金属膜の結晶粒径は、コンポジット体40と接触する側からその反対側にかけて(矢印D方向)、大きくなっている。すなわち、無電解めっきを用いて形成された金属膜の結晶の平均粒径は、初期に析出した領域より後で析出した領域で大きくなる。また、このとき、コンポジット体40と接触する側の金属膜の結晶粒径(図3のE部分)は、コンポジット体40から離れた側の金属膜の結晶粒径(図3のF部分)よりも、相対的に小さくなっている。これにより、金属膜は、樹脂材料41との間でアンカー効果を得やすく、金属膜とコンポジット体40との密着性を向上できる。
【0086】
次に、図1図2を参照して、電子部品1の製造方法について説明する。
【0087】
まず、樹脂材料41および金属粉42のコンポジット材料からなるコンポジット体40の一部を研削して、コンポジット体40の研削面(主面45)から金属粉42を露出させる(以下、研削工程という)。
【0088】
その後、コンポジット体40の研削面に無電解めっきを用いて金属膜(外部電極51,52)を形成する(以下、金属膜形成工程という)。具体的に述べると、金属粉42が、Feを含む金属又は合金からなり、金属膜が、Cuを含む金属又は合金からなるとき、コンポジット体40を無電解めっき液に浸漬することで、Feと置換してCuが析出し、その後は無電解めっき液に含まれている還元剤の効果で、めっきが成長する。
【0089】
これにより、前述のとおり、金属膜とコンポジット体40との密着性、金属膜自身の膜強度及び導電性を向上することができる。また、これにより、所望の厚みをばらつきが少なく得ることができるとともに、簡便な方法かつ高い製造効率で金属膜を形成することができる。
【0090】
金属膜形成工程において、無電解めっきを用いて金属膜を樹脂材料41上および金属粉42上に形成する。これにより、前述のとおり、金属膜と樹脂材料41との密着性を確保できる。
【0091】
金属膜形成工程では、置換析出反応を用いて研削面から露出させた金属粉42上に金属膜を析出させ、無電解めっきを用いて析出させた金属膜を成長させることにより、金属膜を形成する。これにより、簡便なプロセスで金属膜を形成できる。金属膜形成工程では、触媒付与を行わないで無電解めっきを行う。これにより、簡便なプロセスで金属膜を形成できる。
【0092】
研削工程後、コンポジット体40の研削面の一部の領域上に樹脂膜60を形成し(樹脂膜形成工程という)、金属膜形成工程では、樹脂膜60をマスクとして、金属膜を形成する。これにより、金属膜をエッチングしないでパターン形成でき、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などに比べても、製造効率が向上する。なお、この際、金属膜の一部は、樹脂膜60上に配置される。
【0093】
研削工程前の工程は、通常行われる工程であればよく、例えば、中央に孔を有する基板10の上下面に第1、第2コイル導体21,22および電極25a〜25dを形成する工程と、基板10および第1、第2コイル導体21,22を絶縁体30により覆う工程と、絶縁体30をコンポジット体40により覆う工程とを有する。内部電極26a,26bは、絶縁体30およびコンポジット体40に設けられた孔に、導電性ペーストなどを充填して得られる。
【0094】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【0095】
前記実施形態では、金属膜を、外部電極に用いているが、内部電極や、引き回し配線などに用いてもよい。すなわち、コンポジット体40を基板代わりとして、コンポジット体40上に上記金属膜として、無電解めっきを用いて第1、第2コイル導体21,22を形成してもよい。これにより、第1、第2コイル導体21,22として前述の効果を有する金属膜を得ることができ、前述の効果のとおりに金属膜を形成することができる。なお、この場合は金属膜の膜厚は、例えば40μm以上120μm以下とすることができる。
【0096】
前記実施形態では、マスクとしての樹脂膜を残しているが、最終的に樹脂膜を剥離するようにしてもよい。
【0097】
前記実施形態では、電子部品は、コイル部品としているが、コンデンサや、LC複合部品、サーミスタ、圧電センサなどの受動部品であってもよい。この場合、粒子は導電体であればよい。
【0098】
電子部品としてのコイル部品は、薄膜工法のものに限られず、積層工法のものであってもよい。
【0099】
コンポジット体に含まれる粒子は、粒子状であればよく、粒径の限定はない。粒径が小さくなればなるほど、本発明の効果の相対的影響が大きくなるが、粒径が大きい場合であっても、樹脂材料と金属膜との密着性を向上させることにより、金属膜の全体的な密着性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 電子部品
10 基板
21 第1コイル導体
22 第2コイル導体
26a,26b 内部電極
30 絶縁体
40 コンポジット体
41 樹脂材料
42 金属粉
45 主面
45a 凹部
51 第1外部電極(金属膜)
52 第2外部電極(金属膜)
60 樹脂膜
図1
図2
図3