(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、(F)アクリロイルオキシアルキル基またはメタクリロイルオキシアルキル基を1分子中に1個有するオルガノポリシロキサンを、(A)成分100質量部に対して0.1〜1,000質量部含む請求項1記載の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、液晶ディスプレー、車載部品等に代表されるようなエレクトロニクス機器には、高性能化のみならず、省スペース化、省エネルギー化も同時に求められている。そのような社会的要請に応じて搭載される電気電子部品も益々小型化・微細化しており、その組立工程も年々複雑化し、困難になっている。
【0003】
このような微細化した素子や部品を選択的かつ一度に移送可能な技術が近年開発され、注目を浴びている(非特許文献1)。
この技術は、マイクロ・トランスファー・プリンティング技術と呼ばれ、エラストマーの粘着力で微細な部品を一偏にピックアップし、より粘着力の強い所望の場所に移送させるという技術である。
【0004】
この用途に用いる粘着材料としてシリコーンエラストマーが知られており、加熱硬化型の無溶剤型シリコーン系粘着剤が多く提案されている(特許文献1〜3)。
しかしながら、加熱硬化型のシリコーン系粘着剤を用いた場合、加熱工程が必須であるためエネルギーを必要とし、また、材料の加熱および冷却に多くの時間を要する。
【0005】
このような工程を省くため、紫外線にて短時間で硬化可能なシリコーン樹脂の開発も行われている(特許文献4)が、シリコーン素材自体が有する粘着力を利用するものであるため密着力が不十分で、適用可能な素子や部品が限られるという問題があった。
したがって、上記特許文献4の材料では持ち上げられないような素子や部品にも適用可能な、より強力な粘着力を有する紫外線硬化性粘着シリコーン材料が望まれている。
【0006】
しかし、単純に粘着力を増加させるだけでは、移送物から粘着剤を剥がす際の凝集破壊を招き易いうえに、移送した素子や部品に粘着剤が残存するという問題があることから、紫外線硬化が可能で、部材に合わせて弱い粘着力から強い粘着力までを調節可能であり、また、強い粘着力を有していながら剥離時に凝集破壊しない材料の開発が強く望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、(A)下記一般式(1)で示される基を1分子中に2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物および(C)シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物のいずれか一方または双方:1〜500質量部、
(D)(a)R
43SiO
1/2単位(式中、R
4は、炭素原子数1〜10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基を表す。)と(b)SiO
4/2単位からなり、(a)単位と(b)単位とのモル比が0.6〜1.2:1の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン:1〜5000質量部、並びに
(E)光重合開始剤:0.01〜20質量部
を含有してなることを特徴とする。
【0014】
(A)オルガノポリシロキサン
本発明に使用される(A)成分は、本組成物の架橋成分であり、下記一般式(1)で示される基を1分子中に2個有し、主鎖が実質的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなるオルガノポリシロキサンである。
【0016】
式(1)において、R
1は、互いに独立して炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、好ましくは、脂肪族不飽和基を除く、炭素原子数1〜10、より好ましくは1〜8の一価炭化水素基を表し、R
2は、酸素原子または炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5のアルキレン基を表し、R
3は、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表し、pは、0≦p≦10を満たす数を表し、aは、1≦a≦3を満たす数を表す。
【0017】
式(1)において、R
1の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル基等のアルキル基;ビニル、アリル(2−プロペニル)、1−プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、その他の置換基で置換されていてもよく、その具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル、シアノエチル基等のハロゲン置換炭化水素基や、シアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、R
1としては、炭素原子数1〜5のアルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基がより好ましい。
【0018】
また、R
2の炭素原子数1〜20のアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、R
2としては、酸素原子、メチレン、エチレン、プロピレン基が好ましく、酸素原子またはエチレン基がより好ましい。
【0019】
さらに、R
3のアクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基におけるアルキル(アルキレン)基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。これらアルキル基の具体例としては、上記R
1で例示した基のうち、炭素原子数1〜10のものが挙げられる。
R
3の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
【化3】
(式中、bは、1≦b≦4を満たす数を表し、R
5は、炭素原子数1〜10のアルキレン基を表す。)
【0021】
上記pは、0≦p≦10を満たす数を表すが、0または1が好ましく、aは、1≦a≦3を満たす数を表すが、1または2が好ましい。
【0022】
本発明で用いる(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中における上記一般式(1)で示される基の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(すなわち、分子鎖途中または分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよいが、柔軟性の面では末端のみに存在することが望ましい。
【0023】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中において、上記一般式(1)で示される基以外のケイ素原子に結合した有機基は、例えば、上記R
1と同様の基が挙げられ、特に、脂肪族不飽和基を除く炭素数1〜12、好ましくは1〜10の一価炭化水素基が好適である。
これらの具体例としては、上記R
1で例示した基と同様のものが挙げられるが、合成の簡便さから、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基が好ましく、メチル基、フェニル基、トリフロロプロピル基がより好ましい。
【0024】
また、(A)成分の分子構造は、基本的に、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰返しからなる直鎖状または分岐鎖状(主鎖の一部に分岐を有する直鎖状を含む)であり、特に、分子鎖両末端が上記一般式(1)で示される基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。
(A)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物の力学特性をより向上させることを考慮すると、10〜100,000mPa・sが好ましく、10〜50,000mPa・sがより好ましい。この粘度範囲は、通常、直鎖状オルガノポリシロキサンの場合、数平均重合度で、約10〜2,000、好ましくは約50〜1,100程度に相当するものである。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメーター等)により測定できる(以下、同様)。
本発明において、重合度(または分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(または数平均分子量)として求めることができる(以下、同様)。
【0026】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記(2)〜(4)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
【化4】
(式中、R
1、R
5、およびbは、上記と同じ意味を表し、nは、上記オルガノポリシロキサンの粘度を上記値とする数であるが、1〜800が好ましく、50〜600がより好ましい。)
【0028】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法で製造することができる。例えば、上記式(2)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体と3−(1,1,3,3− テトラメチルジシロキサニル)プロピルメタクリラート(CAS No.96474−12−3)とのヒドロシリル化反応物として得られる。
上記式(3)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とクロロジメチルシランとのヒドロシリル化反応物に、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
上記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とジクロロメチルシランとのヒドロシリル化反応物に、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
【0029】
(B)シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物
シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物(B)の具体例としては、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
これらの中でも、特にイソボルニルアクリレートが好ましい。
【0030】
(C)シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物
シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物(C)の具体例としては、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
これらの中でも、特にジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートが好ましい。
【0031】
本発明において、上記(B)成分および(C)成分の(メタ)アクリレート化合物の添加量は、(A)成分100質量部に対して、1〜500質量部の範囲である。(B)成分および(C)成分の添加量が(A)成分100質量部に対して1質量部未満であると、組成物の硬化性、硬化物の強度や粘着性が不足する。一方、(B)成分および(C)成分の添加量を増やすことにより組成物全体の粘度を調整することができるが、添加量が(A)成分100質量部に対して500質量部を超えると、硬化物の硬度が必要以上に高くなり、所望の粘着性が得られなくなる。
特に、(B)成分および(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、10〜200質量部が好ましい。
【0032】
(D)オルガノポリシロキサンレジン
(D)成分は、硬化物に粘着性を付与する成分であり、(a)R
43SiO
1/2単位(式中、R
4は、炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)と(b)SiO
4/2単位からなり、(a)単位と(b)単位のモル比が0.6〜1.2:1の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジンである。
R
4における炭素原子数1〜10の一価炭化水素基の具体例としては、上記R
1で例示した基のうち、炭素原子数1〜10のものが挙げられるが、中でもメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル基等の炭素原子数2〜6のアルキル基;フェニル、トリル基等の炭素原子数6〜10のアリール基、ベンジル基等の炭素原子数7〜10のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素原子数2〜6のアルケニル基等が好ましい。
なお、上記R
4の一価炭化水素基も、R
1と同様に、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、上述したその他の置換基で置換されていてもよい。
【0033】
本発明の(D)成分では、(a)R
43SiO
1/2単位(M単位)と(b)SiO
4/2単位(Q単位)のモル比がM単位:Q単位=0.6〜1.2:1であるが、M単位のモル比が0.6未満になると、硬化物の粘着力やタック性が低下することがあり、1.2を超えると、硬化物の粘着力や保持力が低下することがある。
硬化物の粘着力、保持力およびタック性をより適切な範囲とすることを考慮すると、M単位とQ単位のモル比は、M単位:Q単位=0.7〜1.2:1が好ましい。
【0034】
(E)光重合開始剤
本発明で使用可能な光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF製Irgacure 651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製Irgacure 184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF製Irgacure 1173)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF製Irgacure 127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(BASF製Irgacure MBF)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF製Irgacure 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(BASF製Irgacure 369)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、(A)成分との相溶性の観点から、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF製Irgacure 1173)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)が好ましい。
【0035】
光重合開始剤の添加量は、(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲である。0.1質量部未満であると硬化性が不足し、20質量部を超える量で添加した場合は深部硬化性が悪化する。
【0036】
(F)オルガノポリシロキサン
本発明の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、上記必須成分以外に、必要により、アクリロイルオキシアルキル基、またはメタクリロイルオキシアルキル基を1分子中に1個有するオルガノポリシロキサンを含んでもよい。本成分を組成物中に含有させることで、その硬化物の柔軟性や粘着性を調節することが可能である。
アクリロイルオキシアルキル基の具体例としては、アクリロイルオキシブチル基、アクリロイルオキシプロピル基が挙げられ、メタクリロイルオキシアルキル基の具体例としては、メタクリロイルオキシブチル基、メタクリロイルオキシプロピル基等が挙げられるが、合成のし易さから、メタクリロイルオキシプロピル基またはアクリロイルオキシプロピル基が好ましい。
【0037】
本成分のオルガノポリシロキサン分子中において、アクリロイルオキシアルキル基、またはメタクリロイルオキシアルキル基以外のケイ素原子に結合した有機基は、例えば、上記R
1と同様の基が挙げられ、特に、脂肪族不飽和基を除く炭素数1〜12、好ましくは1〜10の一価炭化水素基が好ましい。
これらの具体例としては、上記R
1で例示した基と同様のものが挙げられるが、合成の簡便さから、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基が好ましく、メチル基、フェニル基、トリフロロプロピル基がより好ましい。
【0038】
(F)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物の力学特性をより向上させることを考慮すると、1〜100,000mPa・sが好ましく、1〜10,000mPa・sがより好ましい。この粘度範囲は、通常、直鎖状オルガノポリシロキサンの場合、数平均重合度で、約5〜1,000、好ましくは約5〜500程度に相当するものである。
【0039】
(F)成分のオルガノポリシロキサン分子中におけるアクリロイルオキシアルキル基、またはメタクリロイルオキシアルキル基の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(すなわち、分子鎖途中または分子鎖側鎖)であってもよいが、合成のし易さ、コストの面から1分子の片末端に1個のアクリロイルオキシアルキル基、またはメタクリロイルオキシアルキル基が存在するものが好ましい。
【0040】
このような(F)成分の具体例としては、下記式(5),(6)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【化5】
(式中、bおよびR
1は上記と同じ意味を表し、mは、上記オルガノポリシロキサンの粘度を上記値とする数であるが、1〜200が好ましく、10〜100がより好ましい。)
【0042】
なお、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、色材(顔料または染料)、シランカップリング剤、接着助剤、重合禁止剤、酸化防止剤、耐光性安定剤である紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を配合することができる。
また、本発明の組成物はその他の樹脂組成物と適宜混合して使用することもできる。
【0043】
本発明の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、上記(A)〜(E)成分、並びに必要に応じて(F)成分およびその他の成分を、任意の順序で混合し、撹拌等して得ることができる。撹拌等の操作に用いる装置は特に限定されないが、擂潰機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これら装置を適宜組み合わせてもよい。
【0044】
本発明の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物の粘度は、特に限定されるものでないが、作業性の観点から、23℃で100,000mPa・s以下が好ましく、50,000mPa・s以下がより好ましい。なお、その下限値は、特に限定されるものではないが、通常100mPa・s程度である。
【0045】
本発明の粘着性紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線を照射することにより速やかに硬化する。
この場合、照射する紫外線の光源としては、例えば、UVLEDランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
紫外線の照射量(積算光量)は、例えば、本発明の組成物を2.0mm程度の厚みに成形したシートに対して、好ましくは1〜10,000mJ/cm
2であり、より好ましくは10〜6,000mJ/cm
2である。すなわち、照度100mW/cm
2の紫外線を用いた場合、0.01〜100秒程度紫外線を照射すればよい。
本発明において、紫外線照射によって得られた硬化物の粘着力は、特に限定されるものではないが、移送物の剥離性と保持性とのバランスを考慮すると、0.01〜100MPaが好ましく、0.02〜50MPaがより好ましい。
【0046】
また、本発明の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、各種基材に塗布して紫外線硬化させることにより、粘着性物品として利用することもできる。
基材としては、プラスチックフィルム、ガラス、金属等、特に制限なく使用できる。
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。
ガラスについても、厚みや種類などについて特に制限はなく、化学強化処理などをしたものでもよい。
なお、基材と粘着剤層の密着性を向上させるために、基材に予めプライマー処理、プラズマ処理等を施したものを用いてもよい。
【0047】
塗工方法は、例えば、スピンコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等の公知の塗工方法から適宜選択して用いることができる。
【0048】
本発明の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、無溶剤型であるため、硬化物の作製方法としては、型を用いたポッティングも可能である。
ポッティングにおける型へ流し込む際に気泡を巻き込むことがあるが、減圧により脱泡することができる。型としては、例えば、シリコンウエハー上にフォトレジストにより所望の凹凸をつけたレジスト型を用いることができる。
硬化後、型から硬化物を取り出したい場合には、組成物を流し込む前に容器に離型剤処理を施す方が好ましい。離型剤としてはフッ素系、シリコーン系等のものが使用可能である。
【0049】
なお、本発明の紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、通常、そのまま使用されるが、ハンドリング性、基材への塗布性などの改善が必要な場合には、本発明の特性を損なわない範囲において有機溶剤により希釈してから使用することも許容される。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した各成分の化合物は以下のとおりである。
(A)成分
【0051】
【化6】
(式(A−1)中、x=30、y=240であり、xおよびyが付された括弧内の繰り返し単位の配列は任意である。)
【0052】
(B)成分
(B−1)
イソボルニルアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートIB−XA)
(B−2)
(アクリロキシメチル)−ペンタメチルジシロキサン
【0053】
【化7】
【0054】
(C)成分
(C−2)
ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A)
(D)成分
(D−1)Me
3SiO
1/2単位およびSiO
2単位を含有し、(Me
3SiO
1/2単位)/(SiO
2単位)のモル比が0.85であるオルガノポリシロキサンレジン(数平均分子量3,500)の60質量%トルエン溶液
(E)成分
(E−1)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製Irgacure 1173)
(F)成分
【0055】
【化8】
【0056】
[実施例1〜4および比較例1〜3]
上記(A)〜(F)成分を表1の組成で混合し、減圧下にて100℃でトルエンを留去し、表1記載の各シリコーン組成物を調製した。なお、表1における組成物の粘度は回転粘度計を用いて23℃で測定した値である。
調製したシリコーン組成物を、アイグラフィック(株)製アイUV電子制御装置(型式UBX0601−01)を用い、窒素雰囲気下、室温(25℃)で、波長365nmの紫外光での照射量が4,000mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、硬化させた。硬化物の硬度は日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準じて測定した。
硬化物の粘着性は、(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ−SXにより測定した。具体的には、1mm厚の硬化物に1mm角SUS製プローブを1MPaで15秒間押し付けた後、200mm/minの速度で引っ張った際にかかる負荷を測定した値である。また、目視にて試験体の表面の凝集破壊の有無についても評価した。それらの結果を併せて表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、実施例1〜4で調製した紫外線硬化型シリコーン粘着剤組成物は、良好な作業性、硬化性を有し、その硬化物は、優れた粘着性を有するとともに、凝集破壊を起こしていないことから優れた強度を有しており、素子等の微小物体を移送するための仮固定材として有用である。
一方、(B)成分および(C)成分を含まない比較例1では、組成物が極めて高粘度となり、作業性が悪いことがわかる。
また、(D)成分の配合量が本発明の範囲を外れて多すぎる比較例2では、組成物が固形化して取り扱いが困難となることがわかる。
さらに、(B)成分にシロキサン構造を含む単官能アクリレート化合物を用いた比較例3では、粘着性は高いが、粘着性試験で凝集破壊を起こし、硬化物の強度が不十分であることがわかる。