(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記同等性の前記検定は、前記診断データ群における前記比例関係についての応答曲面と、前記正常データ群における前記比例関係についての応答曲面との同等性の検定である
請求項1に記載のき裂診断装置。
前記演算装置は、前記第1と第2の各ひずみセンサより入力されるデータについて、設定された荷重モードに対応する周波数成分は通過させる一方、それ以外の周波数成分はカットする機能を備えるフィルタ部を有する請求項1または2記載のき裂診断装置。
前記第1の領域の前記ひずみ変化量と前記第2の領域の前記ひずみ変化量の相対的な変化割合が設定された値以上になるという条件を満たすように定められた前記2つの領域は、いずれか一方の領域でのひずみ変化量がひずみの増加であり、他方の領域でのひずみ変化量がひずみの減少である
請求項1記載のき裂診断装置。
前記第1の領域の前記ひずみ変化量と前記第2の領域の前記ひずみ変化量の相対的な変化割合が設定された値以上になるという条件を満たすように定められた前記2つの領域は、いずれか一方の領域でのひずみ変化量がひずみの増加であり、他方の領域でのひずみ変化量が所定の設定値よりも小さいひずみの変化である
請求項1記載のき裂診断装置。
前記第1の領域の前記ひずみ変化量と前記第2の領域の前記ひずみ変化量の相対的な変化割合が設定された値以上になるという条件を満たすように定められた前記2つの領域は、いずれか一方の領域でのひずみ変化量がひずみの減少であり、他方の領域でのひずみ変化量が所定の設定値よりも小さいひずみの変化である
請求項1記載のき裂診断装置。
き裂診断対象における第1の領域に設置された第1のひずみセンサによってき裂検知用データを取得するとともに、前記き裂診断対象における第2の領域に設置された第2のひずみセンサによって比較用データを取得する処理と、
き裂診断対象にき裂が発生していない正常状態のときの前記き裂検知用データと前記比較用データを、正常データ群として蓄積する処理と、
前記き裂診断対象のき裂診断時期の前記き裂検知用データと前記比較用データを、診断データ群に設定する処理と、
前記診断データ群における前記き裂検知用データと前記比較用データとの比例関係について、前記正常データ群における前記き裂検知用データと前記比較用データとの比例関係との同等性を、統計的仮設検定によって検定することによって、前記き裂診断対象におけるき裂の発生の有無を判定する処理とを行い、
前記第1の領域と前記第2の領域は、それぞれの領域において、前記き裂診断対象に対応する構造で且つき裂がない状態の第1の解析モデルにおいて所定の一方向に応力が作用するときの応力解析によるひずみの分布の結果と、前記き裂診断対象に対応する構造で且つき裂がある状態の第2の解析モデルにおいて前記所定の一方向に応力が作用するときの応力解析によるひずみの分布の結果との比較結果であるひずみ変化量により、前記第1の領域の前記ひずみ変化量と前記第2の領域の前記ひずみ変化量の相対的な変化割合が設定された値以上になるという条件を満たすように定められた2つの領域に対応する配置で、前記き裂診断対象に設定された2つの領域とされている、
き裂診断方法。
前記同等性の前記検定は、前記診断データ群における前記比例関係についての応答曲面と、前記正常データ群における前記比例関係についての応答曲面との同等性の検定である
請求項7に記載のき裂診断方法。
前記第1と第2の各ひずみセンサより入力されるデータについて、設定された荷重モードに対応する周波数成分は通過させる一方、それ以外の周波数成分はカットする処理を更に行う
請求項7または8記載のき裂診断方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1はき裂診断装置の第1実施形態を示す概要図である。
図2は、
図1のき裂診断装置におけるひずみセンサ(ひずみゲージ)の配置を説明するための図で、
図2(a)(b)はそれぞれ応力解析用の解析モデルを示す概要図、
図2(c)はひずみ変化率を基に設定される領域を示す概要図である。
【0020】
本実施形態のき裂診断装置は、
図1に符号1で示すもので、一例として、き裂診断対象100に適用した場合が示してある。
【0021】
ここで、先ず、
図1に示したき裂診断対象100について説明する。
【0022】
本実施形態におけるき裂診断対象100は、たとえば、構造物にて、平板状の構造部材101の面に、別の平板状の構造部材102の端部が溶接により接合されて、溶接継手103が形成された部分としてある。更に、構造部材101には、矢印Xで示す方向に、引張、圧縮の単軸荷重が繰り返し作用するものとしてある。
【0023】
この荷重の影響により、き裂診断対象100には、構造部材101における溶接継手103の付近となる個所に、二点鎖線で示すような疲労によるき裂(疲労き裂)104が発生する可能性がある。なお、き裂診断対象100において疲労によりき裂104が発生する個所は、き裂診断対象100の構造、継手形式、作用する荷重の方向などから、経験的に、あるいは、解析により、
図1に示した位置となることが明らかとなっている。
【0024】
そこで、本実施形態のき裂診断装置1は、前記のようなき裂診断対象100に対し、き裂104の発生の有無を診断するために適用するものとする。
【0025】
本実施形態のき裂診断装置1は、き裂診断対象100に対して後述する配置で設置されたひずみセンサ(ひずみゲージ)2、および、ひずみセンサ(ひずみゲージ)3a,3bを備え、更に、各ひずみセンサ2,3a,3bより入力されるデータを処理する演算装置4を備えた構成とされている。
【0026】
き裂診断対象100に設置するひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bの配置は、以下の手法で定められている。
【0027】
すなわち、先ず、
図2(a)に示すように、応力解析(応力・ひずみ解析)用の解析モデルとして、き裂診断対象100(
図1参照)の構造に対応する構造を備えた解析モデル5Aを用意する。
【0028】
この際、解析モデル5Aとしては、き裂診断対象100の構造をそのまま模したものではなく、き裂診断対象100の構造を規格化した構造の解析モデル5Aを用いることが好ましい。
【0029】
この点に鑑みて、解析モデル5Aは、
図1に示したき裂診断対象100の構造部材101と構造部材102と溶接継手103とを備える構造を規格化するための構造として、
図2(a)に示すように、プレート部材6の面に、面外ガセットプレート7の端部がすみ肉溶接または完全溶け込み溶接によって接合された、いわゆる面外ガセット溶接継手の構造を備えるようにしてある。
【0030】
この面外ガセット溶接継手は、構造物の疲労設計基準として広く参考とされている一般社団法人日本鋼構造協会の「構造物の疲労設計指針・同解説」や、公益社団法人日本道路協会の「鋼道路橋の疲労設計指針」に示されている溶接継手のうちの一つとして知られているものである。
【0031】
また、
図2(b)に示すように、
図2(a)に示した解析モデル5Aと同様の構造を備え、更に、
図1のき裂診断対象100におけるき裂104の発生個所に対応する個所にき裂8を備えた構造の解析モデル5Bを用意する。
【0032】
この際、解析モデル5Bに備えるき裂8の長さLは、き裂診断対象100(
図1参照)に実際に生じるき裂104について、そのき裂104がどのような長さになる時点で検知を望むかという点に対応する寸法に設定すればよい。
【0033】
なお、き裂8の長さLは、5mm以上に設定されていることが好ましい。これは、き裂8の長さLが5mm未満に設定される場合は、解析モデル5Bを用いた応力解析の結果と、
図2(a)のき裂がない状態の解析モデル5Aを用いた応力解析の結果との差が小さくなり、よって、後述するひずみ変化量についての情報を得にくくなってしまうためである。
【0034】
また、き裂8の長さLは、50mm以下に設定されることが好ましい。これは、たとえば、「阪神高速道路の鋼製橋脚隅角部損傷 平成14年度調査研究報告書」によれば、鋼製橋脚の隅角部の疲労き裂の損傷判定などでは、長さが100mm未満のき裂は、即時補修ではなく、数年単位での補修の対象とされることに鑑みたものである。よって、
図1に示したき裂診断対象100のき裂104は、本実施形態のき裂診断装置1を用いて長さが5mm〜50mmの段階で発生を検知することができれば、現地確認や補修計画の立案の時間を十分に確保することが可能になる。
【0035】
更に、き裂8の長さLは、30mm未満に設定されていることがより好ましく、10mm〜20mmに設定されることが更に好ましい。これは、一般に、実際の構造物で目視検査により発見できるき裂の長さは30mm以上とされていることに鑑みたものである。したがって、この構成によれば、き裂診断対象100に発生するき裂104について、目視検査では検知できない段階であっても、本実施形態のき裂診断装置1では検知することができるようになる。
【0036】
解析モデル5Aと解析モデル5Bについて行う応力解析の手法としては、有限要素法解析(FEM解析)を用いることが好ましいが、応力解析を行って、解析モデル5Aと解析モデル5Bにおけるひずみの分布についての情報を得ることができれば、有限要素法解析以外の任意の応力解析手法を採用してもよい。したがって、解析モデル5Aと解析モデル5Bは、使用する応力解析手法に応じたモデルとして作成してあればよい。
【0037】
前記のように解析モデル5Aと解析モデル5Bを作成した後は、解析モデル5Aと解析モデル5Bのそれぞれについて、
図2(a)(b)に矢印xで示す方向に応力が作用する場合の応力解析を行い、解析モデル5Aと解析モデル5Bに生じるひずみの分布を求める。
【0038】
次に、き裂8あり状態の解析モデル5B(
図2(b)参照)で得られたひずみの分布の解析結果は、き裂なし状態の解析モデル5A(
図2(a)参照)で得られたひずみの分布の解析結果と比較する。この比較により、き裂8あり状態の解析モデル5Bの各位置におけるひずみが、き裂なし状態の解析モデル5Aの同位置におけるひずみを基準としてどのように変化したかを、ひずみ変化量として求める。よって、このひずみ変化量は、き裂なし状態の解析モデル5Aの各位置におけるひずみが、所定の長さLのき裂8がある状態への変化、すなわち、き裂8の発生に伴って、どのように変化するかを表す指標となる。以下の説明では、ひずみ変化量の値をrで示す。
【0039】
次いで、前記ひずみ変化量rの情報を基に、
図2(c)に示すように、解析モデル5Bについて、以下の条件を満たす2つの領域9と領域10を定める。なお、図示しないが、この領域9と領域10は、解析モデル5Aに定めるようにしてもよいことは勿論である。
【0040】
本実施形態では、2つの領域9と領域10を定めるための条件は、第1の領域9におけるひずみ変化量r
1がひずみの増加であり、第2の領域10におけるひずみ変化量r
2がひずみの減少であり、且つ、ひずみ変化量r
1とひずみ変化量r
2との相対的な変化割合(以下、ひずみ変化率という)が、種々の統計的手法で有意な差が検出できるようなひずみ変化率の差を有するという条件である。この場合、たとえば、有意水準5%ないし1%で同等性が棄却されるという条件を採用すればよいが、この条件に必ずしも限定されるものでないことは勿論である。前記のようにひずみ変化率の差が所定の大きさ以上になるように設定したのは、領域9におけるひずみ変化量r
1と領域10におけるひずみ変化量r
2との差が明確になるようにして、後述するき裂104(
図1参照)の検知精度の向上化を図るためである。
【0041】
解析モデル5Bにおける領域9と領域10が定められた後は、
図1に示すように、実際のき裂診断対象100において、解析モデル5Bの領域9と領域10の配置にそれぞれ対応する配置となる2つの領域11と領域12を定める。なお、
図1では、図示する便宜上、この2つの領域11と領域12が二点鎖線で示してあるが、実際のき裂診断対象100では、領域11と領域12は、その配置が分かればよく、特に表示する必要はない。
【0042】
その後、前記のように設定された2つの領域11と領域12は、いずれか一方が、き裂検知用データ取得領域に設定され、いずれか他方が、比較用データ取得領域に設定される。
【0043】
図1では、領域11がき裂検知用データ取得領域に設定され、領域12が比較用データ取得領域に設定された場合が示してある。
【0044】
き裂検知用データ取得領域とされた領域11には、き裂検知用データaを取得するためのひずみセンサ2が設置されている。また、比較用データ取得領域とされた領域12には、比較用データbを取得するための2つのひずみセンサ3a,3bが、領域内の2個所に配置されて設置されている。
【0045】
なお、き裂診断対象100に設置されたひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bは、環境から受ける光や温度、水分、油分、酸化性のガスなどの影響を抑えて保護するために、図示しない樹脂やカバーで覆うようにしてもよい。
【0046】
演算装置4には、ひずみセンサ2よりき裂検知用データaが入力され、ひずみセンサ3a,3bより比較用データbが入力される。
【0047】
次に、演算装置4の機能について説明する。
【0048】
演算装置4は、き裂診断対象100にき裂が発生していない正常状態のときに、ひずみセンサ2より入力されるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bより入力される比較用データbとを含むデータ群を、正常データ群として蓄積する機能を備えている。
【0049】
また、演算装置4は、正常データ群の蓄積の後、き裂診断対象100におけるき裂104の発生の有無の診断が必要とされるき裂診断時期になると、その時期にひずみセンサ2より入力されるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bより入力される比較用データbとを含むデータ群を、診断データ群に設定する機能を備える。
【0050】
更に、演算装置4は、診断データ群について、正常データ群と、統計処理により相対比較し、その比較結果を基に、き裂診断対象100におけるき裂104の発生の有無を判定する機能を備えている。
【0051】
演算装置4による、診断データ群の正常データ群との相対比較の手法は、たとえば、以下のような手法を用いるようにすればよい。
【0052】
図1に示したように、本実施形態では、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bは、き裂診断対象100に比較的近い配置で設けられている。そのため、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bは、き裂診断対象100における温度変化や荷重変化のような外乱の影響をほぼ同様に受ける。
【0053】
このため、ひずみセンサ2によるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bによる比較用データbとの相対関係(相関関係)、たとえば、比例関係は、前記温度変化や荷重変化のような外乱の影響を受けにくく、ほぼ一定に保持される。
【0054】
これに対し、ひずみセンサ2を設けた領域11と、ひずみセンサ3a,3bを設けた領域12は、解析モデル5A,5B(
図2(a)(b)(c)参照)を用いた応力解析により、き裂8の発生に伴うひずみ変化率が種々の統計的手法で有意な差が検出できるようなひずみ変化率の差を有する2つの領域9と領域10に対応して設定されている。したがって、き裂診断対象100にき裂104が生じた場合は、ひずみセンサ2によるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bによる比較用データbとの相対関係である比例関係には、前記ひずみ変化率と関連する割合で変化が生じると推定される。
【0055】
そこで、演算装置4では、診断データ群におけるき裂検知用データaと比較用データbとの比例関係について、正常データ群におけるき裂検知用データaと比較用データbとの比例関係との同等性を、統計的検定(統計的仮設検定ともいう)の1つであるF検定により検定する処理を行う。この検定処理では、診断データ群における前記比例関係についての応答曲面と、正常データ群における前記比例関係についての応答曲面との同等性検定を行うようにすればよい。
【0056】
その結果、前記同等性が棄却されると、演算装置4は、き裂診断対象100にき裂104が発生していると判定する。
【0057】
一方、前記同等性が棄却されない場合は、演算装置4は、き裂診断対象100にはき裂104が発生していないという判定を行う。
【0058】
この演算装置4によるき裂診断対象100についてのき裂104の有無の判定結果は、必要に応じて、図示しない記録装置へ出力して記録したり、図示しない表示装置や音声出力装置へ出力して監視者に知らせるようにしてもよい。
【0059】
なお、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bから演算装置4へのデータ送信は、有線、無線、電話などの通信回線や、インターネットなどのネットワークを介して行うようにしてもよい。同様に、演算装置4から前記記録装置や表示装置、音声出力装置への出力は、有線、無線、電話などの通信回線や、インターネットなどのネットワークを介して行うようにしてもよい。
【0060】
したがって、本実施形態のき裂診断装置1によれば、き裂診断対象100におけるき裂104の発生の有無を診断することができる。
【0061】
また、き裂診断対象100における領域11内の任意の複数個所では、き裂104からの距離がたとえ異なっていても、き裂104が発生したときには、ひずみが同様の増加傾向を示す。同様に、き裂診断対象100における領域12内の任意の複数個所では、き裂104からの距離がたとえ異なっていても、き裂104が発生したときには、ひずみが同様の減少傾向を示す。
【0062】
したがって、き裂診断対象100に複数のひずみセンサを設けたとしても、それらすべての設置位置が領域11内に含まれていたり、領域12内に含まれていたり、あるいは、き裂104が発生してもひずみの変化が小さい領域に配置されていたりした場合は、各ひずみセンサの検出データを基に、き裂104の発生を精度よく検知することは難しい。
【0063】
これに対し、本実施形態のき裂診断装置1は、解析モデル5A,5Bを用いた解析結果を基に、き裂104の発生に伴うひずみ変化率が前記所定の値になると推定される領域11と領域12に、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bを分けて設置した構成を備えている。このため、本実施形態のき裂診断装置1によれば、き裂診断対象100におけるき裂104の発生の有無の診断について、精度の向上化を図ることができる。なお、領域11と領域12とを定める場合は、ひずみ変化率が正確に把握できるように、ひずみの大きさや分布について予備的なひずみ計測を行い、解析結果と併せて考慮するようにしてもよく、このようにすれば、より高精度な診断を実現するひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bの設置領域を決定することができる。
【0064】
更に、本実施形態では、領域12に2つのひずみセンサ3a,3bを備えて、それぞれで比較用データbを取得することができる。
【0065】
たとえば、比較用データbが1つだけの場合は、その比較用データbとき裂検知用データaが、増加方向または減少方向の同じ方向に変化すると、ひずみ変化率の相対差が統計的に優位な差を持つようにするためには、大きな差を持つ必要があり、よって検知感度が低くなる。
【0066】
これに対し、本実施形態では、比較用データbを2つ取得するようにしてあるので、仮に、2つの比較用データbが共にき裂検知用データaと同じ方向に変化したとしても、比較用データbとき裂検知用データaとのひずみ変化率の相対差は、より小さい段階で検知可能になる。また、2つの比較用データbのうちの1つが、き裂検知用データaとは逆の方向に変化すれば、さらに検知精度を向上させることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、比較用データbを取得するためのひずみセンサとして、2つのひずみセンサ3a,3bを備える構成を例示したが、比較用データbの取得用のひずみセンサを3つ以上備える構成を採用してもよいことは勿論である。
【0068】
[第1実施形態の変形例]
図3は、第1実施形態の変形例を示すものである。なお、
図3において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
前記第1実施形態では、
図1に示したように、領域11がき裂検知用データ取得領域に設定され、領域12が比較用データ取得領域に設定されていたが、
図3に示すように、領域11が比較用データ取得領域に設定され、領域12がき裂検知用データ取得領域に設定された構成としてもよい。
【0070】
この場合は、き裂検知用データaを取得するためのひずみセンサ2が領域12に設置され、比較用データbを取得するためのひずみセンサ3a,3bが領域11に設置された構成とすればよい。
【0071】
かかる構成としてある本変形例においても、第1実施形態と同様に使用することができて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
[第2実施形態]
前記第1実施形態では、
図2(a)(b)(c)に示したように、解析モデル5Aと解析モデル5Bとを用いた解析結果を基に、き裂8の発生に伴ってひずみが増加する領域9と、ひずみが減少する領域10とを、両者のひずみ変化率が種々の統計的手法で有意な差が検出できるようなひずみ変化率の差を有する条件の下で求めていた。
図1に示したき裂診断対象100には、解析モデル5Bについて求めた領域9と領域10に対応する配置で、センサ設置用の領域11と領域12を定めていた。
【0073】
しかし、実際のき裂診断対象100では、構造上の制約などにより、解析モデル5Bにおける領域10に対応する配置となる個所に、センサ設置用の面や空間を確保できない場合がある。
【0074】
この場合、き裂診断装置は、
図4に示す構成とすればよい。
【0075】
図4はき裂診断装置の第2実施形態を示す概要図である。
図5は本実施形態におけるひずみセンサの配置を説明するための図である。なお、
図4、
図5において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態のき裂診断装置は、
図4に符号1Aで示すもので、第1実施形態と同様に、き裂診断対象100に設置されたひずみセンサ2、および、ひずみセンサ3a,3bと、演算装置4を備えた構成を有するが、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bの配置が、第1実施形態とは異なる手法で定められている。
【0077】
すなわち、本実施形態では、第1実施形態と同様に、
図2(a)に示したき裂なし状態の解析モデル5Aと、
図2(b)に示したき裂8あり状態の解析モデル5Bとを用いた解析結果を基に、解析モデル5Bの各位置におけるひずみが、解析モデル5Aの同位置におけるひずみを基準としてどのように変化したかを、ひずみ変化量rとして求める。
【0078】
次いで、前記ひずみ変化量rの情報を基に、
図5に示すように、解析モデル5Bについて、以下の条件を満たす2つの領域13と領域14を定める。なお、図示しないが、この領域13と領域14は、解析モデル5Aに定めるようにしてもよいことは勿論である。
【0079】
この2つの領域13と領域14とを定める条件は、第1の領域13におけるひずみ変化量r
3がひずみの増加であり、第2の領域14におけるひずみ変化量r
4が、設定された値よりも小さいひずみの変化(増減)になるという条件である。且つ、ひずみ変化量r
3とひずみ変化量r
4とのひずみ変化率については、種々の統計的手法で有意な差が検出できるようなひずみ変化率の差を有するという条件が設けられている。このようにひずみ変化率の差が所定の大きさ以上になるように設定した理由は、第1実施形態と同様である。
【0080】
解析モデル5Bにおける領域13と領域14が定められた後は、
図4に示すように、実際のき裂診断対象100において、解析モデル5Bの領域13(
図5参照)の配置に対応する個所に、き裂検知用データaを取得するための領域15を定める。また、き裂診断対象100には、解析モデル5Bの領域14(
図5参照)の配置に対応する個所に、比較用データbを取得するための領域16を定める。
【0081】
なお、
図4では、図示する便宜上、この2つの領域15と領域16が二点鎖線で示してあるが、実際のき裂診断対象100では、領域15と領域16は、その配置が分かればよく、特に表示する必要はない。
【0082】
領域15には、第1実施形態と同様のひずみセンサ2が設置され、領域16には、2つのひずみセンサ3a,3bが、領域内の2個所に配置されて設置されている。なお、本実施形態は、比較用データbの取得用のひずみセンサを3つ以上備える構成を採用してもよいことは第1実施形態と同様である。
【0083】
以上の構成としてある本実施形態のき裂診断装置1Aにおいても、第1実施形態と同様に使用することができて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、き裂診断対象100の構造上の制限などを回避して、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bの設置領域を設定することができる。
【0085】
[第3実施形態]
前記第1実施形態では、
図2(c)に示したように解析モデル5Bについて求めた領域9と領域10に対応する配置で、
図1に示したようにき裂診断対象100におけるセンサ設置用の領域11と領域12を定めていた。
【0086】
しかし、実際のき裂診断対象100では、構造上の制約などにより、解析モデル5Bにおける領域9に対応する配置となる個所に、センサ設置用の面や空間を確保できない場合がある。
【0087】
この場合、き裂診断装置は、
図6に示す構成とすればよい。
【0088】
図6はき裂診断装置の第3実施形態を示す概要図である。
図7は本実施形態におけるひずみセンサの配置を説明するための図である。なお、
図6、
図7において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0089】
本実施形態のき裂診断装置は、
図6に符号1Bで示すもので、第1実施形態と同様に、き裂診断対象100に設置されたひずみセンサ2、および、ひずみセンサ3a,3bと、演算装置4を備えた構成を有するが、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bの配置が、第1実施形態とは異なる手法で定められている。
【0090】
すなわち、本実施形態では、第1実施形態と同様に、
図2(a)に示したき裂なし状態の解析モデル5Aと、
図2(b)に示したき裂8あり状態の解析モデル5Bとを用いた解析結果を基に、解析モデル5Bの各位置におけるひずみが、解析モデル5Aの同位置におけるひずみを基準としてどのように変化したかを、ひずみ変化量rとして求める。
【0091】
次いで、前記ひずみ変化量rの情報を基に、
図7に示すように、解析モデル5Bについて、以下の条件を満たす2つの領域17と領域18を定める。なお、図示しないが、この領域17と領域18は、解析モデル5Aに定めるようにしてもよいことは勿論である。
【0092】
この2つの領域17と領域18とを定める条件は、第1の領域17におけるひずみ変化量r
5がひずみの減少であり、第2の領域18におけるひずみ変化量r
6が、設定された値よりも小さいひずみの変化(増減)になるという条件である。且つ、ひずみ変化量r
5とひずみ変化量r
6とのひずみ変化率については、種々の統計的手法で有意な差が検出できるようなひずみ変化率の差を有するという条件が設けられている。このようにひずみ変化率の差が所定の大きさ以上になるように設定した理由は、第1実施形態と同様である。
【0093】
解析モデル5Bにおける領域17と領域18が定められた後は、
図6に示すように、実際のき裂診断対象100において、解析モデル5Bの領域17(
図7参照)の配置に対応する個所に、き裂検知用データaを取得するための領域19を定める。また、き裂診断対象100には、解析モデル5Bの領域18(
図7参照)の配置に対応する個所に、比較用データbを取得するための領域20を定める。
【0094】
なお、
図6では、図示する便宜上、この2つの領域19と領域20が二点鎖線で示してあるが、実際のき裂診断対象100では、領域19と領域20は、その配置が分かればよく、特に表示する必要はない。
【0095】
領域19には、第1実施形態と同様のひずみセンサ2が設置され、領域20には、2つのひずみセンサ3a,3bが、領域内の2個所に配置されて設置されている。なお、本実施形態は、比較用データbの取得用のひずみセンサを3つ以上備える構成を採用してもよいことは第1実施形態と同様である。
【0096】
以上の構成としてある本実施形態のき裂診断装置1Bにおいても、第1実施形態と同様に使用することができて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、き裂診断対象100の構造上の制限などを回避して、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bの設置領域を設定することができる。
【0098】
[第4実施形態]
図8(a)はき裂診断装置の第4実施形態を示す概要図である。
図8(b)(c)(d)はき裂診断対象の構造部材に働く荷重と応力分布との関係を示す概要図である。
【0099】
なお、
図8(a)(b)(c)(d)において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0100】
実際の構造物においては、
図1に矢印Xで示したような単軸荷重のみが働く場合のほかに、単軸荷重や曲げ荷重などの複数の荷重モードが重畳して働くことがある。
【0101】
図8(b)に示すように、たとえば、平板状の構造部材101について、矢印で示す方向の単軸荷重モードが働く場合は、板幅方向に一様な応力分布が生じる。
【0102】
これに対し、
図8(c)に示すように、構造部材101に、矢印で示すような曲げ荷重モードが働く場合は、板幅方向に一様ではない応力分布が生じる。
【0103】
このように、異なる荷重モードでは応力の分布が異なるため、
図8(d)に示すように、構造部材101に単軸荷重モードと曲げ荷重モードが重畳して働くと、応力分布は不均一になってしまう。更に、一般に、単軸荷重モードと、曲げ荷重モードでは、周波数が異なるため、それぞれの荷重モードが単振動であるとしても、ある位置に作用している応力は、単振動ではなくなってしまう。
【0104】
そのため、
図8(a)の領域11に設置されたひずみセンサ2で取得されるき裂検知用データaと、領域12に設置されたひずみセンサ3a,3bで取得される比較用データbとの相対関係は、単軸荷重モードに関する比例関係と、曲げ荷重モードに関する比例関係を含んだものとなる。
【0105】
この場合、個々の荷重モードの比例関係は、温度変化や荷重変化のような外乱の影響を受けにくく、ほぼ一定に保持されるとしても、2つの比例関係が存在している状態では、き裂診断対象100にき裂104が生じた場合に生じる比例関係の変化を検出することは困難である。
【0106】
そこで、本実施形態のき裂診断装置1Cは、
図8(a)に示すように、第1実施形態と同様の構成において、演算装置4に、フィルタ部21を備えた構成とされている。
【0107】
フィルタ部21は、ひずみセンサ2より入力されるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bより入力される比較用データbについて、設定された荷重モードに対応する周波数成分は通過させる一方、それ以外の周波数成分はカットする機能を備えている。
【0108】
フィルタ部21は、通過させる周波数成分の波長に応じて、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタを適宜選択して用いるようにすればよい。
【0109】
以上の構成としてある本実施形態のき裂診断装置1Cによれば、き裂診断対象100に複数の荷重モードが重畳して働く場合であっても、演算装置4では、フィルタ部21を通過した所定の荷重モードに対応する周波数成分のデータを基に、き裂診断対象100におけるき裂104の発生の有無を診断することができる。
【0110】
したがって、本実施形態のき裂診断装置1Cにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
[ひずみセンサの配置]
前記第2実施形態では、き裂診断対象100について、比較用データbを取得するひずみセンサ3a,3bを設置する領域16は、
図5に示した解析モデル5Bにおける領域14の配置と対応させて定めた。この領域14を求めるための条件の1つとしては、領域14におけるひずみ変化量r
4が、設定された値よりも小さいひずみの変化(増減)になるという条件を備えた。
【0112】
しかし、解析モデル5Bにおいて、領域13のひずみ変化量r
3と領域14のひずみ変化量r
4とのひずみ変化率が設定された値以上になっていれば、領域14のひずみ変化量r
4については、設定された値よりも小さいひずみの変化(増減)になるという条件は、必ずしも必要ない。この場合であっても、き裂診断対象100にき裂104が生じたときには、ひずみセンサ2によるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bによる比較用データbとの比例関係には、第1実施形態の場合と同様の変化が生じる。
【0113】
前記第3実施形態では、き裂診断対象100について、比較用データbを取得するひずみセンサ3a,3bを設置する領域20は、
図7に示した解析モデル5Bにおける領域18の配置と対応させて定めた。この領域18を求めるための条件の1つとしては、領域18におけるひずみ変化量r
6が、設定された値よりも小さいひずみの変化(増減)になるという条件を備えた。
【0114】
しかし、解析モデル5Bにおいて、領域17のひずみ変化量r
5と領域18のひずみ変化量r
6とのひずみ変化率が設定された値以上になっていれば、領域18のひずみ変化量r
6については、設定された値よりも小さいひずみの変化(増減)になるという条件は、必ずしも必要ない。この場合であっても、き裂診断対象100にき裂104が生じたときには、ひずみセンサ2によるき裂検知用データaと、ひずみセンサ3a,3bによる比較用データbとの比例関係には、第1実施形態の場合と同様の変化が生じる。
【0115】
ここで、前記の点、並びに、前述した各実施形態および変形例から、本発明におけるひずみセンサの配置の点についてまとめる。き裂検知用データaを取得するひずみセンサ2を設置する領域と、比較用データbを取得するひずみセンサ3a,3bを設置する領域の配置を、解析モデル5Bにおける2つの領域の配置に対応させて設定するとした場合、この2つの領域を定める基本的な条件は、以下のようになる。
【0116】
これは、第1の領域におけるひずみ変化量r
xと、第2の領域におけるひずみ変化量r
yとのひずみ変化率が、種々の統計的手法で有意な差が検出できるようなひずみ変化率の差以上になるという条件である。
【0117】
この条件を満たしていれば、ひずみ変化量r
xとひずみ変化量r
yについては、一方がひずみの増加で他方がひずみの減少である場合と、双方がひずみの増加である場合と、双方がひずみの減少である場合のいずれであってもよい。
【0118】
[解析モデル]
前記各実施形態および変形例では、解析モデル5A,5Bは、き裂診断対象100の構造をそのまま模したものではなく、き裂診断対象100の構造を規格化した構造を備えるものとした。更に、この規格化された構造としては、一般社団法人日本鋼構造協会の「構造物の疲労設計指針・同解説」や、公益社団法人日本道路協会の「鋼道路橋の疲労設計指針」に示されている溶接継手のうちの一つである面外ガセット溶接継手の構造とした。
【0119】
このため、様々な構造物について、前記のような疲労設計指針を疲労設計基準の参考として面外ガセット溶接継手の構造として作成された部分をき裂診断対象100とする場合は、解析モデル5A,5Bとして共通のものを使用することができる。また、解析モデル5Bについて、
図2(c)に示した領域9と領域10、
図5に示した領域13と領域14、
図7に示した領域17と領域18を予め求めておくこともできる。
【0120】
なお、き裂診断対象の構造に応じて、解析モデルを変更してよいことは勿論である。その場合、き裂診断対象の構造を規格化した構造の解析モデルとしては、たとえば、荷重伝達型十字溶接継手、面内ガセット溶接継手、カバープレートをすみ肉溶接で取り付けた継手など、前記各疲労設計指針に示されている溶接継手の構造を備えたものとしてよいことは勿論である。
【0121】
また、前記各疲労設計指針に示されている溶接継手の構造を備えたき裂なし状態の解析モデルと、き裂あり状態の解析モデルとを用意して、ひずみ変化率が設定された値以上となる複数の領域についての情報を予め求めておくようにすれば、き裂診断装置1,1A,1B,1Cは、様々なき裂診断対象に対して速やかに適用することが可能になる。
【0122】
なお、き裂なし状態の解析モデルと、き裂あり状態の解析モデルとしては、前記したような規格化された構造のものを用いることが好ましいが、き裂診断対象の構造をそのまま模した構造のものを用いるようにしてもよいことは勿論である。この場合であっても、き裂診断装置1,1A,1B,1Cでは、前記各実施形態および変形例と同様の効果を得ることができる。
【0123】
[応用例]
前記各実施形態および変形例では、き裂診断装置1,1A,1B,1Cは、き裂診断対象100におけるき裂104の発生の有無を診断するものとして説明したが、き裂診断対象100に生じたき裂104の進展の検知に応用してもよい。
【0124】
ここで、き裂104の進展という現象について考えると、き裂104の進展は、既に発生しているき裂104の先端側の延長上となる個所に、き裂104が生じる現象であると捉えることができる。
【0125】
したがって、既存のき裂104の先端側の延長となる個所に限定して着目して、該個所についてのき裂104の発生の有無を診断すれば、き裂診断対象100全体では、既存のき裂104の進展の有無を検知できることになる。
【0126】
この点に鑑みて、前記各実施形態および変形例のき裂診断装置1,1A,1B,1Cと同様の構成において、き裂104の発生の有無の診断対象となる個所を、既存のき裂104の先端側の延長上となる個所に設定する。すなわち、前記各実施形態および変形例のき裂診断装置1,1A,1B,1Cと同様の構成において、ひずみセンサ2とひずみセンサ3a,3bを設置する領域11,12、領域15,16、領域19,20は、き裂104の発生の有無の診断対象となる個所を既存のき裂の先端側の延長上となる個所へずらして設定した構成とする。
【0127】
これらのひずみセンサ2、ひずみセンサ3a,3bから出力されるデータは、前記各実施形態および変形例の演算装置4と同様の機能を備えた演算装置で処理すればよい。
【0128】
この構成によれば、演算装置では、き裂診断対象100において、既存のき裂104の進展の有無を検知することができる。
【0129】
なお、本発明は、前記各実施形態および変形例にのみ限定されるものではなく、演算装置4は、診断データ群の正常データ群との相対比較を行うときに、き裂検知用データaと比較用データbとの比例関係以外の相対関係を用いるようにしてもよい。
【0130】
演算装置4で行う診断データ群の正常データ群との相対比較の手法としては、診断データ群におけるき裂検知用データaと比較用データbとの比例関係について、正常データ群におけるき裂検知用データaと比較用データbとの比例関係との同等性を、F検定以外の任意の統計的検定の手法で検定してもよい。
【0131】
更に、演算装置4で行う診断データ群の正常データ群との相対比較の手法としては、正常データ群に対する診断データ群の異常性を、MT法(マハラノビスタグチメソッド)で検証する手法を採用してもよい。この場合、演算装置4は、前記異常性があると判断されると、き裂診断対象100にき裂104が発生していると判定する機能を備えるようにすればよい。
【0132】
第1実施形態の変形例、第2実施形態、および、第3実施形態に、第4実施形態に示したフィルタ部21を備えた演算装置4を用いるようにしてもよい。
【0133】
図1乃至
図8では、領域9,10、領域11,12、領域13,14、領域15,16、領域17,18、領域19,20の形状を、楕円や多角形で示したが、それぞれ任意の形状としてもよいことは勿論である。また、領域9,10、領域11,12、領域13,14、領域15,16、領域17,18、領域19,20のサイズは、図示した以外のサイズであってもよいことは勿論である。
【0134】
き裂診断対象100は、構造物においてき裂の発生する位置が分かっている部分であれば、構造部材同士の溶接継手による接合部以外の任意の部分であってもよい。
【0135】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。