特許第6927407号(P6927407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927407
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】生体信号センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20210812BHJP
   H01L 31/12 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   A61B5/02 310B
   H01L31/12 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-502015(P2020-502015)
(86)(22)【出願日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2018038791
(87)【国際公開番号】WO2019163198
(87)【国際公開日】20190829
【審査請求日】2020年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2018-30714(P2018-30714)
(32)【優先日】2018年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 力
(72)【発明者】
【氏名】花田 要
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第204394527(CN,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0374245(US,A1)
【文献】 特開2017−189415(JP,A)
【文献】 特開2013−121420(JP,A)
【文献】 特開2010−136921(JP,A)
【文献】 特表2018−502623(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/129025(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0206251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するX方向とY方向に広がる基板と、
前記基板の一側主面に設けられ、被測定物に対して第1波長の光を発する2つ以上の第1発光素子と、
前記第1発光素子と隣接した位置で前記基板の一側主面に設けられ、被測定物に対して前記第1波長と異なる第2波長の光を発する2つ以上の第2発光素子と、
前記基板の一側主面で前記第1発光素子および前記第2発光素子からの距離がそれぞれ異なる位置に配置され、前記第1発光素子および前記第2発光素子からの光を受光する3つ以上の受光素子と、を備え、
3つ以上の前記受光素子は、X方向に1列に並んで配置され、
2つ以上の前記第1発光素子および2つ以上の前記第2発光素子は、3つ以上の前記受光素子とY方向の異なる位置であって、X方向に1列に並んで配置されており、
3つ以上の前記受光素子と2つ以上の前記第1発光素子および2つ以上の前記第2発光素子との間には、X方向に延びる壁部が配置されており、
2つ以上の前記第1発光素子は、3つ以上の前記受光素子が並ぶ直線と直交した中心軸Oに関して略線対称となる位置に配置されており、
2つ以上の前記第2発光素子は、3つ以上の前記受光素子が並ぶ直線と直交した中心軸Oに関して略線対称となる位置に配置されていることを特徴とする生体信号センサ。
【請求項2】
3つ以上の前記受光素子は、X方向に所定の長さ寸法の範囲に配置され、
2つの前記第1発光素子および2つの前記第2発光素子は、X方向に対して3つ以上の前記受光素子が配置された前記所定の長さ寸法の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項に記載の生体信号センサ。
【請求項3】
2つの前記第1発光素子は、3つ以上の前記受光素子が並ぶX方向の両端側にそれぞれ配置され、
2つの前記第2発光素子は、3つ以上の前記受光素子が並ぶX方向の両端側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項に記載の生体信号センサ。
【請求項4】
3つ以上の前記受光素子は、それぞれの前記受光素子と対向した位置に配置された3つ以上のレンズを有するレンズアレイによって覆われたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の生体信号センサ。
【請求項5】
前記レンズアレイは、3つ以上の前記受光素子に一体化されていることを特徴とする請求項に記載の生体信号センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて生体信号を検出する生体信号センサに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に発光素子と受光素子とが搭載された生体信号センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された生体信号センサは、基板に設けられ被測定物に対して光を発する発光素子と、基板に設けられ前記発光素子からの距離がそれぞれ異なる3つ以上の受光素子とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−169690号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された生体信号センサは、単一の発光素子を用いて生体信号を検出している。このため、発光素子からの光の強度が不足して、十分な信号強度の生体信号を検出できず、測定が不安定になる可能性がある。また、発光素子と3つ以上の受光素子との距離がそれぞれ異なるため、距離に応じて被測定物の測定深度を異ならせることができる。しかしながら、単一波長の光を出力する1つの発光素子を用いているため、複数の波長の光を用いた場合に比べて、生体信号の情報量が低下して、生体信号のS/Nが低下することがある。これに加えて、発光素子と、3つ以上の受光素子とが直線状に並んでいるから、これらが並んだ方向に対してセンサが大型化する傾向がある。
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、生体信号のS/Nを向上させることができると共に、小型化が可能な生体信号センサを提供することにある。
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の生体信号センサは、互いに直交するX方向とY方向に広がる基板と、前記基板の一側主面に設けられ、被測定物に対して第1波長の光を発する2つ以上の第1発光素子と、前記第1発光素子と隣接した位置で前記基板の一側主面に設けられ、被測定物に対して前記第1波長と異なる第2波長の光を発する2つ以上の第2発光素子と、前記基板の一側主面で前記第1発光素子および前記第2発光素子からの距離がそれぞれ異なる位置に配置され、前記第1発光素子および前記第2発光素子からの光を受光する3つ以上の受光素子と、を備え、3つ以上の前記受光素子は、X方向に1列に並んで配置され、2つ以上の前記第1発光素子および2つ以上の前記第2発光素子は、3つ以上の前記受光素子とY方向の異なる位置であって、X方向に1列に並んで配置されており、3つ以上の前記受光素子と2つ以上の前記第1発光素子および2つ以上の前記第2発光素子との間には、X方向に延びる壁部が配置されており、2つ以上の前記第1発光素子は、3つ以上の前記受光素子が並ぶ直線と直交した中心軸Oに関して略線対称となる位置に配置されており、2つ以上の前記第2発光素子は、3つ以上の前記受光素子が並ぶ直線と直交した中心軸Oに関して略線対称となる位置に配置されていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、生体信号のS/Nを向上させることができると共に、生体信号センサを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施の形態による生体信号センサを示す斜視図である。
図2】生体信号センサを示す平面図である。
図3】生体信号センサを図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
図4】生体信号センサを示す底面図である。
図5】電子部品の内部構成を示すブロック図である。
図6】第1発光素子および第2発光素子と受光素子との距離が最小となる場合について、生体からの反射光を示す説明図である。
図7】第1発光素子および第2発光素子と受光素子との距離が最小と最大の中間となる場合について、生体からの反射光を示す説明図である。
図8】第1発光素子および第2発光素子と受光素子との距離が最大となる場合について、生体からの反射光を示す説明図である。
図9】本発明の第2の実施の形態による生体信号センサを示す平面図である。
図10】生体信号センサを図9中の矢示X−X方向からみた断面図である。
図11】本発明の第3の実施の形態による生体信号センサを示す平面図である。
図12】生体信号センサを図11中の矢示XII−XII方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態による生体信号センサを、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態による生体信号センサ1を示している。生体信号センサ1は、例えば被測定物としての生体から脈拍に応じた光電脈波信号(脈波信号)を検出する。生体信号センサ1は、基板2、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4B、受光素子5A〜5C等を備えている。
【0011】
基板2は、絶縁材料を用いて形成された平板である。基板2は、互いに直交するX方向とY方向に広がっている。このとき、基板2の厚さ方向は、X方向およびY方向と直交するZ方向となっている。基板2は、例えばプリント配線基板やセラミック基板が用いられる。基板2は、複数の電極層と絶縁層とが交互に積層された多層基板でもよい。基板2の表面2A(一側主面)には、光部品として、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bと受光素子5A〜5Cが実装されている。基板2の裏面2B(他側主面)には、電子部品9が実装されている。このため、基板2は、両面実装基板となっている。基板2の表面2Aには、光部品(第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4B、受光素子5A〜5C)および電子部品9のうち、光部品のみが実装されている。
【0012】
第1発光素子3A,3Bは、例えば発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、共振器型LED等によって形成されている。第1発光素子3A,3Bは、第1波長の光L1として、例えば600nm〜1000nm帯の赤色光または赤外光を発光する。第1発光素子3A,3Bは、例えばダイボンディング、ワイヤボンディング等の接合方法を用いて、基板2の表面2Aに取り付けられている。第1発光素子3A,3Bは、X方向に並んで配置されている。第1発光素子3A,3Bは、X方向に離間している。第1発光素子3A,3Bは、電子部品9に電気的に接続されている。
【0013】
第2発光素子4A,4Bは、第1発光素子3A,3Bと同様に、例えば発光ダイオード(LED)等によって形成されている。第2発光素子4A,4Bは、第1波長と異なる第2波長の光L2として、例えば495nm〜570nm帯の緑色光を発光する。即ち、第2発光素子4A,4Bは、第1発光素子3A,3Bの光L1に比べて、短波長の光L2を発光する。第2発光素子4A,4Bは、例えばダイボンディング、ワイヤボンディング等の接合方法を用いて、基板2の表面2Aに取り付けられている。第2発光素子4A,4Bは、電子部品9に電気的に接続されている。
【0014】
受光素子5A〜5Cは、例えばフォトダイオード(PD)等によって形成されている。受光素子5A〜5Cは、基板2の表面2A(一側主面)のうち、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bとは異なる位置に配置されている。受光素子5A〜5Cは、電子部品9に電気的に接続されている。
【0015】
3つの受光素子5A〜5Cは、基板2の表面2Aで第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの距離がそれぞれ異なる位置に配置されている。このため、第1発光素子3Aと受光素子5Aとの間の距離と、第1発光素子3Aと受光素子5Bとの間の距離と、第1発光素子3Aと受光素子5Cとの間の距離とは互いに異なっている。このとき、第1発光素子3Aと受光素子5Aとの間の距離が最も短い。第1発光素子3Aと受光素子5Cとの間の距離が最も長い。第1発光素子3Aと受光素子5Bとの間の距離は、これらの中間となっている。
【0016】
また、第1発光素子3Bと受光素子5Aとの間の距離と、第1発光素子3Bと受光素子5Bとの間の距離と、第1発光素子3Bと受光素子5Cとの間の距離とは互いに異なっている。このとき、第1発光素子3Bと受光素子5Aとの間の距離が最も長い。第1発光素子3Bと受光素子5Cとの間の距離が最も短い。第1発光素子3Bと受光素子5Bとの間の距離は、これらの中間となっている。同様に、第2発光素子4Aと受光素子5A〜5Cとの間の距離は互いに異なっている。第2発光素子4Bと受光素子5A〜5Cとの間の距離は互いに異なっている。3つの受光素子5A〜5Cは、X方向に1列に並んで配置されている。
【0017】
3つの受光素子5A〜5Cは、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの光L1,L2を受光する。受光素子5A〜5Cは、受光した光信号を例えば電流信号のような電気信号に変換(光電変換)して出力する。具体的には、受光素子5A〜5Cは、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bから照射されて生体で反射した光L1,L2を受光し、この受光した光L1,L2を電気信号からなる検出信号Sに変換する。このとき、第1発光素子3A,3Bに基づく検出信号Sと、第2発光素子4A,4Bに基づく検出信号Sとは、互いに分離可能となっている。受光素子5A〜5Cは、検出信号Sを電子部品9に向けて出力する。受光素子5A〜5Cは、例えばダイボンディング、ワイヤボンディング等の接合方法を用いて、基板2の表面2Aに取り付けられている。なお、受光素子5A〜5Cは、例えばフォトトランジスタを用いて形成してもよい。
【0018】
ここで、第1発光素子3A,3Bは、3つの受光素子5A〜5CとY方向の異なる位置に配置されている。同様に、第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5CとY方向の異なる位置に配置されている。第2発光素子4Aは、第1発光素子3Aに隣接した位置に配置されている。第2発光素子4Bは、第1発光素子3Bに隣接した位置に配置されている。第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5Cに対してY方向の一側(図2中の上側)にオフセットした位置に配置されている。
【0019】
3つの受光素子5A〜5Cは、X方向に所定の長さ寸法Lxの範囲に配置されている。第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bは、X方向に対して3つの受光素子5A〜5Cが配置された所定の長さ寸法Lxの範囲内に配置されている。また、2つの第1発光素子3A,3Bは、3つの受光素子5A〜5Cが並ぶX方向の両端側に配置されている。2つの第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5Cが並ぶX方向の両端側に配置されている。具体的には、第1発光素子3Aおよび第2発光素子4Aと受光素子5AとをY方向で同じ位置に配置したときに、第1発光素子3Aおよび第2発光素子4Aは、受光素子5Aと重なり合う位置に配置されている。第1発光素子3Bおよび第2発光素子4Bと受光素子5CとをY方向で同じ位置に配置したときに、第1発光素子3Bおよび第2発光素子4Bは、受光素子5Cと重なり合う位置に配置されている。
【0020】
2つの第1発光素子3A,3Bは、3つの受光素子5A〜5Cが並ぶ直線と直交した中心軸Oに関して線対称となる位置に配置されている。2つの第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5Cが並ぶ直線と直交した中心軸Oに関して線対称となる位置に配置されている。2つの第2発光素子4A,4Bは、X方向に対して2つの第1発光素子3A,3Bよりも外側に配置されている。なお、2つの第2発光素子4A,4Bは、X方向に対して2つの第1発光素子3A,3Bよりも内側に配置されてもよい
【0021】
壁部6は、基板2の表面2A側に設けられ、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bと受光素子5A〜5Cとの間を遮光している。壁部6は、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの光L1,L2を遮断するために、例えば黒色等に非透明の樹脂材料によって形成されている。
【0022】
壁部6は、1列に並んだ受光素子5A〜5Cと平行な状態で、X方向に延びている。壁部6は、Y方向に対して、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bと、受光素子5A〜5Cとの間に配置されている。壁部6は、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bからの光L1,L2が直接的に受光素子5A〜5Cに入射するのを防止している。
【0023】
透明樹脂部7は、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bを覆っている。透明樹脂部8は、受光素子5A〜5Cを覆っている。透明樹脂部7,8は、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bからの光L1,L2や被測定物からの反射光が透過可能な樹脂材料(透明な樹脂材料)を用いて形成されている。透明樹脂部7,8は、ポッティングまたはトランスファーモールドによって基板2の表面2Aに成型されている。
【0024】
電子部品9は、集積回路部品(IC部品)によって形成されている。図5に示すように、電子部品9は、例えば駆動部9A、増幅部9B、信号処理部9Cを備えている。電子部品9は、基板2の裏面2B(他側主面)に実装され、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bおよび受光素子5A〜5Cと重なり合う位置に配置されている。このため、電子部品9と、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bおよび受光素子5A〜5Cとは、基板2を挟んで高さ方向(基板2の厚さ方向)に積層されている。
【0025】
駆動部9Aの入力側は、信号処理部9Cに接続されている。駆動部9Aの出力側は、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bに接続されている。駆動部9Aは、信号処理部9Cからの駆動信号に基づいて、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bに駆動電流I1,I2を供給する。駆動電流I1,I2は、信号処理部9Cからの駆動信号に基づいて、例えば予め決められた所定周波数でパルス変調される。これにより、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4Bは、点滅発光する。このとき、第1発光素子3A,3Bと第2発光素子4A,4Bは、互いに異なるタイミングで発光する。
【0026】
増幅部9Bの入力側は、受光素子5A〜5Cに接続されている。増幅部9Bの出力側は、信号処理部9Cに接続されている。増幅部9Bは、例えばトランスインピーダンス・アンプ(TIA)によって構成され、受光素子5A〜5Cからの電流信号からなる検出信号Sを、電圧信号に変換して増幅する。なお、増幅部9Bと信号処理部9Cとの間には、ノイズの除去等を行うフィルタを設けてもよい。
【0027】
信号処理部9Cの出力側は、駆動部9Aに接続されている。信号処理部9Cの入力側は、増幅部9Bに接続されている。これに加え、信号処理部9Cは、実装基板(図示せず)を介して外部に接続されている。
【0028】
信号処理部9Cは、例えばDAコンバータ(DAC)およびADコンバータ(ADC)を含んで構成されている。信号処理部9Cは、DAコンバータによって、外部から入力される駆動信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。信号処理部9Cは、ADコンバータによって、受光素子5A〜5Cから増幅部9Bを介して入力される検出信号Sを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。なお、電子部品9は、単一の部品である必要はない。このため、例えば、駆動部9A、増幅部9B、信号処理部9Cが、個別の電子部品を構成してもよい。
【0029】
底部10は、基板2の裏面2B側に設けられ、電子部品9を覆っている。底部10は、絶縁性の樹脂材料によって形成されている。底部10は、平坦面となった裏面10A(底面)を有している。裏面10Aには、複数個の電極端子11が設けられている。底部10を形成するときには、基板2の裏面2Bに電子部品9および導体ピンが取り付けられた状態で、電子部品9を覆うように、流動性を有する樹脂材料を充填する。この樹脂材料を硬化させることによって、底部10が形成されている。
【0030】
電極端子11は、底部10の裏面10Aに露出して設けられている。電極端子11は、例えば電子部品9の信号処理部9Cに電気的に接続されている。具体的には、基板2の裏面2Bには、柱状の導体として、例えば導電性金属からなる導体ピンが取り付けられている。導体ピンの基端側は、基板2に固定されると共に、電子部品9に電気的に接続されている。導体ピンの先端面は、底部10の裏面10Aに露出し、電極端子11を形成している。これにより、電極端子11は、外部からの駆動信号を信号処理部9Cに入力すると共に、信号処理部9Cからの検出信号を外部に出力する。
【0031】
本発明の第1の実施の形態による生体信号センサ1は以上のような構成を有するものであり、次にその動作を説明する。
【0032】
まず、生体信号センサ1は、底部10の裏面10Aに電極端子11を備えた表面実装部品となっている。このため、生体信号センサ1は、表面に電極が設けられた実装基板(図示せず)に表面実装される。このとき、生体信号センサ1の電極端子11は、実装基板の電極に接合される。これにより、生体信号センサ1の電子部品9は、実装基板に形成された外部の処理回路に接続される。
【0033】
電子部品9は、外部の処理回路からの駆動信号に基づいて、駆動電流I1,I2を第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bに供給する。第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bは、駆動電流I1,I2に応じて被測定物としての生体に光L1,L2を照射する。受光素子5A〜5Cは、この光L1,L2に基づく生体からの反射光を受光し、検出信号Sを出力する。電子部品9は、検出信号Sをデジタル信号に変換して、外部の処理回路に出力する。
【0034】
このとき、生体からの反射光は、ヘモグロビン濃度に応じて減衰する。このため、外部の処理回路は、反射光による検出信号Sに基づいて、生体の脈拍に応じた光電脈波信号を抽出することができる。
【0035】
ところで、3つの受光素子5A〜5Cは、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの距離がそれぞれ異なる位置に配置されている。このとき、生体信号センサ1は、1つの光源(第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bのいずれか)に対して、3つの受光素子5A〜5Cを備えている。
【0036】
図6ないし図8に示すように、例えば発光源である1つの第1発光素子3Aに着目すると、受光素子5Aは、第1発光素子3Aからの距離が最も短い位置に配置されている。受光素子5Cは、第1発光素子3Aからの距離が最も長い位置に配置されている。受光素子5Bは、第1発光素子3Aからの距離が受光素子5Aと受光素子5Cとの中間となる位置に配置されている。このとき、受光素子5Aは、生体組織の測定深度が小さくなり、例えば表皮付近の生体信号を受光する。受光素子5Cは、生体組織の測定深度が大きくなり、例えば皮下組織付近の生体信号を受光する。受光素子5Bは、生体組織の測定深度が受光素子5Aと受光素子5Cとの中間となり、例えば真皮付近の生体信号を受光する。同様に、第2発光素子4Bに着目すると、生体組織の測定深度は、受光素子5A,5B,5Cの順序で深くなる。第1発光素子3Bおよび第2発光素子4Bに着目すると、生体組織の測定深度は、受光素子5A,5B,5Cの順序で浅くなる。このように、受光素子5A〜5C毎に、生体組織の測定深度が異なる。
【0037】
この結果、複数の被測定物で生体信号を測定するときでも、受光素子5A〜5Cによって被測定物毎に適切な検出位置である測定深度で生体信号を検出できるようになる。このため、生体信号のS/Nが向上する。特に、受光素子5A〜5C毎に生体組織の測定深度が異なるため、受光素子5A〜5Cのいずれかを選択することによって、ノイズ源となる脂肪が多い皮下組織を避けて、ノイズが少ない真皮に光を放射するように狙いを定めることも可能となる。
【0038】
また、生体信号センサ1は、同色の光源として、2つの第1発光素子3A,3Bと、2つの第2発光素子4A,4Bとを備えている。このため、発光強度を高めることができると共に、生体の測定面積を広げることができるから、弱い光を微小な範囲に照射した場合に比べて、安定した生体信号の測定が可能になる。これに加え、第1発光素子3A,3Bと第2発光素子4A,4Bとは、発する光L1,L2の波長が異なるから、第1発光素子3A,3Bからの光L1と、第2発光素子4A,4Bからの光L2とで、生体組織の測定深度を変えることができる。このため、2つの波長の光L1,L2を用いることによって、測定深度の異なる部位からの生体信号を検出することができ、適切な検出位置からの生体信号を取得することができる。
【0039】
かくして、本実施の形態による生体信号センサ1では、3つの受光素子5A〜5Cは、X方向に1列に並んで配置され、2つの第1発光素子3A,3Bと、2つの第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5CとY方向の異なる位置に配置されている。
【0040】
このとき、3つの受光素子5A〜5Cは、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの距離がそれぞれ異なる位置に配置され、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの光L1,L2を受光する。このため、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの距離に応じて、受光素子5A〜5C毎に被測定物の測定深度を異ならせることができる。これに加え、波長の異なる光を発する第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bを備えるから、光の波長に応じて被測定物の測定深度を異ならせることができる。これにより、所望の測定深度で被測定物の生体信号を検出することができ、生体信号のS/Nが向上する。
【0041】
また、2つの第1発光素子3A,3Bおよび2つの第2発光素子4A,4Bが基板2に設けられているから、単一の発光素子を用いた場合に比べて、光の発光強度を強めることができるのに加え、被測定物の測定面積を広げることができ、安定した測定が可能になる。さらに、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5CとY方向の異なる位置に配置されている。このため、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bと、3つの受光素子5A〜5Cとが直線状に並ぶことがなく、互いに並行な位置に配置することができる。この結果、X方向に対する生体信号センサ1の外形寸法を小さくすることができる。
【0042】
3つの受光素子5A〜5Cは、X方向に所定の長さ寸法Lxの範囲に配置され、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bは、X方向に対して3つの受光素子5A〜5Cが配置された所定の長さ寸法Lxの範囲内に配置されている。これにより、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bと、3つの受光素子5A〜5Cとが直線状に並んだ場合に比べて、生体信号センサ1のX方向の長さ寸法を小さくすることができ、生体信号センサ1を小型化することができる。これに加え、生体信号センサ1は、高感度でありながら、1パッケージに小型化されている。このため、実装基板側の設計自由度が高められる。
【0043】
2つの第1発光素子3A,3Bは、3つの受光素子5A〜5Cが並ぶX方向の両端側に配置され、2つの第2発光素子4A,4Bは、3つの受光素子5A〜5Cが並ぶX方向の両端側に配置されている。これにより、被測定物には、X方向の両側から第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bからの光を照射することができる。即ち、被測定物のうち2つの第1発光素子3A,3Bに挟まれた部位には、2つの第1発光素子3A,3Bからの光を照射することができる。同様に、被測定物のうち2つの第2発光素子4A,4Bに挟まれた部位には、2つの第2発光素子4A,4Bからの光を照射することができる。従って、2つの第1発光素子3A,3Bおよび2つの第2発光素子4A,4Bから発する強い光を用いて、被測定物の生体信号を検出することができ、生体信号のS/Nを向上させることができる。
【0044】
次に、図9および図10を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の特徴は、3つの受光素子は、それぞれの受光素子と対向した位置に配置された3つ以上のレンズを有するレンズアレイによって覆われたことにある。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
第2の実施の形態による生体信号センサ21は、第1の実施の形態と同様に、基板2、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4B、受光素子5A〜5C等を備えている。これに加えて、生体信号センサ21は、3つの受光素子5A〜5Cは、それぞれの受光素子5A〜5Cと対向した位置に配置された3つのレンズ22A〜22Cを有するレンズアレイ22によって覆われている。レンズアレイ22は、透明な樹脂材料によって形成され、受光素子5A〜5Cとは別個の光学部品となっている。このため、レンズアレイ22は、接着等に接合手段によって、受光素子5A〜5Cの受光面側に取り付けられている。
【0046】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、3つの受光素子5A〜5Cはレンズアレイ22によって覆われている。これにより、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bが発した光を被測定物が反射したときに、このときの反射光をレンズアレイ22のレンズ22A〜22Cによって受光素子5A〜5Cに集光することができる。このため、レンズアレイを省いた場合に比べて、受光感度を高めることができ、生体信号のS/Nをさらに高めることができる。これに加え、生体信号センサ21は、光学素子であるレンズアレイ22が実装されているため、実装基板に生体信号センサ21を取り付けるときに、別途光学部品を取り付ける必要がなく、組み立て作業を簡易化することができる。
【0047】
次に、図11および図12を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の特徴は、レンズアレイが受光素子に一体化されていることにある。なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
第3の実施の形態による生体信号センサ31は、第1の実施の形態と同様に、基板2、第1発光素子3A,3B、第2発光素子4A,4B、受光素子5A〜5C等を備えている。これに加えて、生体信号センサ31は、3つの受光素子5A〜5Cは、それぞれの受光素子5A〜5Cと対向した位置に配置された3つのレンズ32A〜32Cを有するレンズアレイ32によって覆われている。レンズアレイ32は、例えばトランスファーモールドによって透明樹脂部8を成型するときに、透明樹脂部8と一緒に形成されている。これにより、レンズアレイ32が受光素子5A〜5Cに一体化されている。
【0049】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、レンズアレイ32は、受光素子5A〜5Cに一体化されているから、レンズアレイ32と受光素子5A〜5Cとの位置合わせ精度を高めることができる。
【0050】
なお、前記各実施の形態では、生体信号センサ1,21,31は、2つの第1発光素子3A,3Bと、2つの第2発光素子4A,4Bとを備えるものとした。本発明はこれに限らず、生体信号センサは、3つ以上の第1発光素子と、3つ以上の第2発光素子とを備えてもよい。また、生体信号センサは、第1発光素子3A,3Bおよび第2発光素子4A,4Bと異なる波長の光を発する第3発光素子を備えてもよい。前記各実施の形態では、生体信号センサは、3つの受光素子5A〜5Cを備えるものとしたが、4つ以上の受光素子を備えてもよい。
【0052】
前記各実施の形態では、第1発光素子3A,3Bが発する光の波長は、第2発光素子4A,4Bが発する光の波長よりも長いものとした。本発明はこれに限らず、第1発光素子が発する光の波長は、第2発光素子が発する光の波長よりも短くてもよい。
【0053】
また、前記各実施の形態で記載した具体的な数値は、一例を示したものであり、例示した値に限らない。これらの数値は、例えば適用対象の仕様に応じて適宜設定される。
【0054】
前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0055】
次に、上記の実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明の生体信号センサは、互いに直交するX方向とY方向に広がる基板と、前記基板の一側主面に設けられ、被測定物に対して第1波長の光を発する第1発光素子と、前記第1発光素子と隣接した位置で前記基板の一側主面に設けられ、被測定物に対して前記第1波長と異なる第2波長の光を発する第2発光素子と、前記基板の一側主面で前記第1発光素子および前記第2発光素子からの距離がそれぞれ異なる位置に配置され、前記第1発光素子および前記第2発光素子からの光を受光する複数の受光素子と、を備え、複数の前記受光素子は、X方向に1列に並んで配置され、前記第1発光素子および前記第2発光素子は、複数の前記受光素子とY方向の異なる位置に配置されていることを特徴としている。
【0056】
このとき、複数の受光素子は、第1発光素子および第2発光素子からの距離がそれぞれ異なる位置に配置され、第1発光素子および第2発光素子からの光を受光する。このため、第1発光素子および第2発光素子からの距離に応じて、受光素子毎に被測定物の測定深度を異ならせることができる。これに加え、波長の異なる光を発する第1発光素子および第2発光素子を備えるから、光の波長に応じて被測定物の測定深度を異ならせることができる。これにより、所望の測定深度で被測定物の生体信号を検出することができ、信号のS/Nが向上する。また、第1発光素子および第2発光素子は、複数の受光素子とY方向の異なる位置に配置されている。このため、第1発光素子および第2発光素子と、複数の受光素子とが直線状に並ぶことがなく、互いに並行な位置に配置することができる。この結果、X方向に対する生体信号センサの外形寸法を小さくすることができる。
【0057】
本発明では、前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記基板にそれぞれ複数設けられている。このため、単一の発光素子を用いた場合に比べて、光の発光強度を強めることができるのに加え、被測定物の測定面積を広げることができ、安定した測定が可能になる。
【0058】
本発明では、複数の前記受光素子は、X方向に所定の長さ寸法の範囲に配置され、前記第1発光素子および前記第2発光素子は、X方向に対して複数の前記受光素子が配置された前記所定の長さ寸法の範囲内に配置されている。これにより、第1発光素子および第2発光素子と、複数の受光素子とが直線状に並んだ場合に比べて、生体信号センサのX方向の長さ寸法を小さくすることができ、生体信号センサを小型化することができる。
【0059】
本発明では、前記第1発光素子は、複数の前記受光素子が並ぶX方向の両端側にそれぞれ配置され、前記第2発光素子は、複数の前記受光素子が並ぶX方向の両端側にそれぞれ配置されている。これにより、被測定物には、X方向の両側から第1発光素子および第2発光素子からの光を照射することができる。従って、複数の第1発光素子および複数の第2発光素子が発する強い光を用いて、被測定物の生体信号を検出することができる。
【0060】
本発明では、複数の前記受光素子は、それぞれの前記受光素子と対向した位置に配置された複数のレンズを有するレンズアレイによって覆われている。これにより、第1発光素子および第2発光素子が発した光を被測定物が反射したときに、このときの反射光をレンズアレイのレンズによって受光素子に集光することができる。このため、レンズアレイを省いた場合に比べて、受光感度を高めることができる。
【0061】
本発明では、前記レンズアレイは、前記受光素子に一体化されている。これにより、レンズアレイと受光素子との位置合わせ精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
1,21,31 生体信号センサ
2 基板
3A,3B 第1発光素子
4A,4B 第2発光素子
5A〜5C 受光素子
22,32 レンズアレイ
22A〜22C,32A〜32C レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12