(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ部の中心よりも前記枠部に近い位置における前記フィルタ基体部の膜厚は、前記枠部の厚みよりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の濾過フィルタ。
前記フィルタ部の中心における前記フィルタ基体部の膜厚は、前記フィルタ部の中心よりも前記枠部に近い位置における前記フィルタ基体部の膜厚の1.1倍以上1.9倍以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の濾過フィルタ。
前記フィルタ部を前記第1主面側から見て、前記フィルタ部の中心に対して、前記フィルタ部の半径の1/3の半径を有する第1仮想円、前記フィルタ部の半径の2/3の半径を有する第2仮想円で前記フィルタ部を分割したとき、前記フィルタ部は、前記第1仮想円で囲まれた円形状の中央側領域と、前記第1仮想円と前記第2仮想円とで挟まれた円環状の中間領域と、前記第2仮想円と前記フィルタ部の外周で囲われた周縁側領域と、を有し、
前記フィルタ部における前記フィルタ基体部の膜厚は、前記中央側領域>前記中間領域>前記周縁側領域となる、
請求項6に記載の濾過フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至った経緯)
液体に含まれる濾過対象物を、濾過フィルタを用いて濾過する場合、液体が濾過フィルタを通過せず、濾過効率が低下する場合がある。濾過効率の低下を解決する1つの方法として、ピペットを用いて濾過を行う方法がある。
【0011】
この方法では、濾過対象物を含む液体を収容したピペットの先端を濾過フィルタに押し当てた状態で、ピペットの先端から濾過フィルタに対して液体を排出している。
【0012】
この方法において、本発明者らは、濾過フィルタがピペットの先端によって押されることによって、ピペットの先端と接触する部分に応力が集中し、濾過フィルタが破壊されてしまう場合があるという課題を新たに見出した。
【0013】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、濾過フィルタのフィルタ部を凸形状に形成することによって、耐久性を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
【0014】
本発明の一態様の濾過フィルタは、
液体に含まれる濾過対象物が捕捉される第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを貫通する複数の貫通孔を有するフィルタ部と、
前記フィルタ部の外周を囲むように配置された枠部と、
を備え、
前記フィルタ部の中心における膜厚は、前記フィルタ部の中心よりも前記枠部に近い位置における前記フィルタ部の膜厚よりも大きい。
【0015】
このような構成により、耐久性を向上させることができる。
【0016】
前記濾過フィルタにおいて、前記フィルタ部の前記第2主面は、平坦な形状を有していてもよい。
【0017】
このような構成により、液体がフィルタ部の複数の貫通孔から排出されやすくなり、濾過時間を短くすることができる。
【0018】
前記濾過フィルタにおいて、前記フィルタ部の中心における膜厚は、前記枠部の厚みより大きくてもよい。
【0019】
このような構成により、耐久性を更に向上させることができる。
【0020】
前記濾過フィルタにおいて、前記フィルタ部の中心よりも前記枠部に近い位置における前記フィルタ部の膜厚は、前記枠部の厚みよりも大きくてもよい。
【0021】
このような構成により、耐久性を更に向上させることができる。
【0022】
前記濾過フィルタにおいて、前記フィルタ部の中心における膜厚は、前記フィルタ部の中心よりも前記枠部に近い位置における前記フィルタ部の膜厚の1.1倍以上1.9倍以下であってもよい。
【0023】
このような構成により、耐久性を更に向上させることができる。
【0024】
前記濾過フィルタにおいて、
前記フィルタ部は、略円形の形状を有し、
前記枠部は、前記フィルタ部11の外周を囲むリング状の形状を有していてもよい。
【0025】
このような構成により、耐久性を更に向上させることができる。
【0026】
本発明の一態様の濾過装置は、
液体に含まれる濾過対象物を濾過する濾過フィルタと、
前記液体が流れる流路を内部に有し、且つ前記濾過フィルタを前記流路に保持するハウジングと、
を備え、
前記濾過フィルタは、
前記濾過対象物が捕捉される第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを貫通する複数の貫通孔を有するフィルタ部と、
前記フィルタ部の外周を囲むように配置される枠部と、
を有し、
前記フィルタ部の中心における膜厚は、前記フィルタ部の中心よりも前記枠部に近い位置における前記フィルタ部の膜厚よりも大きく、
前記ハウジングは、
前記濾過フィルタの前記フィルタ部の前記第1主面に向かう流路を有する第1ハウジング部と、
前記濾過フィルタの前記フィルタ部の前記第2主面に向かう流路を有する第2ハウジング部と、
を有し、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とは、前記濾過フィルタの前記枠部を間に挟んで嵌合するように構成され、且つ、嵌合された状態で前記枠部を厚み方向に挟持し、
前記濾過フィルタの前記枠部は、前記フィルタ部から前記枠部に向かう方向に連続して延びた状態で、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とによって保持される。
【0027】
このような構成により、耐久性を向上させることができる。
【0028】
前記濾過装置において、前記第1ハウジング部は、前記第2ハウジング部と嵌合する側の端部に、前記第1ハウジング部から前記第2ハウジング部に向かう方向に突出する凸段差部を有し、
前記第2ハウジング部は、前記第1ハウジング部と嵌合する側の端部に、前記第1ハウジング部から前記第2ハウジング部に向かう方向に窪む凹段差部を有し、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とは、前記凸段差部と前記凹段差部とを嵌合し、且つ、前記濾過フィルタの前記枠部を前記凸段差部の凸面と前記凹段差部の凹面とによって厚み方向に挟持してもよい。
【0029】
このような構成により、耐久性を更に向上させることができる。
【0030】
前記濾過装置において、前記第2ハウジング部は、前記第2ハウジング部の側壁から外側に延びるフランジ部を有していてもよい。
【0031】
このような構成により、濾過装置の使い勝手が向上する。
【0032】
前記濾過装置において、前記第1ハウジング部は、前記第1ハウジング部の側壁から外側に延びるフランジ部を有していてもよい。
【0033】
このような構成により、濾過装置の使い勝手が向上する。
【0034】
前記濾過装置において、前記第2ハウジング部は、持ち手を有していてもよい。
【0035】
このような構成により、濾過装置の使い勝手が向上する。
【0036】
本発明の一態様の濾過フィルタは、
液体に含まれる濾過対象物が捕捉される第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを貫通する複数の貫通孔を有するフィルタ部と、
前記フィルタ部の外周を囲むように配置された枠部と、
を備え、
前記フィルタ部は、前記第1主面側に突出する凸形状を有する。
【0037】
このような構成により、耐久性を向上させることができる。
【0038】
前記濾過フィルタにおいて、前記フィルタ部の前記第2主面は、平坦な形状を有していてもよい。
【0039】
このような構成により、液体がフィルタ部の複数の貫通孔から排出されやすくなり、濾過時間を短くすることができる。
【0040】
本発明の一態様の濾過装置は、
液体に含まれる濾過対象物を濾過する濾過フィルタと、
前記液体が流れる流路を内部に有し、且つ前記濾過フィルタを前記流路に保持するハウジングと、
を備え、
前記濾過フィルタは、
前記濾過対象物が捕捉される第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを貫通する複数の貫通孔を有するフィルタ部と、
前記フィルタ部の外周を囲むように配置される枠部と、
を有し、
前記フィルタ部は、前記第1主面側に突出する凸形状を有し、
前記ハウジングは、
前記濾過フィルタの前記フィルタ部の前記第1主面に向かう流路を有する第1ハウジング部と、
前記濾過フィルタの前記フィルタ部の前記第2主面に向かう流路を有する第2ハウジング部と、
を有し、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とは、前記濾過フィルタの前記枠部を間に挟んで嵌合するように構成され、且つ、嵌合された状態で前記枠部を厚み方向に挟持し、
前記濾過フィルタの前記枠部は、前記フィルタ部から前記枠部に向かう方向に連続して延びた状態で、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とによって保持される。
【0041】
このような構成により、耐久性を向上させることができる。
【0042】
以下、本発明に係る実施の形態1について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0043】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、本発明に係る実施の形態1の濾過フィルタ10の一例の概略構成図である。
図1の濾過フィルタの構造を示す模式平面図及び模式断面図である。
図2(A)は濾過フィルタ10の模式平面図であり、
図2(B)は、
図1の濾過フィルタ10をA−A線で切断した模式断面図である。図中のX、Y、Z方向は、それぞれ濾過フィルタ10の横方向、縦方向、厚み方向を示している。
【0044】
[全体構成]
図1及び
図2に示すように、濾過フィルタ10は、フィルタ部11と、フィルタ部11の外周を囲むように配置された枠部12と、を備える。実施の形態1では、濾過フィルタ10は、金属製フィルタである。
【0045】
<フィルタ部>
フィルタ部11は、液体に含まれる濾過対象物が捕捉される第1主面PS1と、第1主面PS1に対向する第2主面PS2とを有する板状構造体である。フィルタ部11には、第1主面PS1と第2主面PS2とを貫通する複数の貫通孔13が形成されている。具体的には、フィルタ部11を構成するフィルタ基体部14に、複数の貫通孔13が形成されている。
【0046】
フィルタ部11は、第1主面PS1側に突出する凸形状を有する。フィルタ部11は、均一な膜厚を有しているのではなく、中央側の膜厚が周縁側の膜厚に比べて大きくなるように形成されている。言い換えると、フィルタ部11は、中央から周縁側に向かって膜厚が小さくなるように形成されている。
【0047】
濾過フィルタ10のより具体的な構造について、
図2を用いて説明する。
図2(A)に示すように、フィルタ部11の全体は、中心P1とする半径D3の円形状の領域となる。フィルタ部11において、中心P1に対して、半径D3より小さい半径D1、半径D3より小さく半径D1より大きい半径D2の仮想円C1、C2を描画する。ここで、半径D1は半径D3×1/3であり、半径D2は半径D3×2/3である。フィルタ部11において、仮想円C1にて囲まれた円形状の領域を中央側領域R11とし、仮想円C1と仮想円C2とで挟まれた円環状の領域を中間領域R12とし、仮想円C2と外周側の円環状の領域を周縁側領域R13とする。さらに、フィルタ部11の平面視において、フィルタ部11の中心P1を通る仮想直線CL1を描画したとき、仮想直線CL1と仮想円C1との交点(第1の位置)をP2、仮想直線CL1と仮想円C2との交点(第2の位置)をP3とする。
【0048】
次に、フィルタ部11の膜厚について説明する。フィルタ部の膜厚は、SEMを用いて測定することができる。例えば、測定時は、加速電圧1kV、倍率は1000倍に設定する。濾過フィルタを載せた試料台を40°傾け、フィルタ部11の格子側面、つまり濾過フィルタ10の上面に対し、垂直方向にはしる格子の幅を測定する。格子の両端の境界については、SEM測定時の画像上の光量の推移で判断する。格子内と格子外では、発生する2次電子量が変化する。その変化点を境界と定め、格子の幅を測定し、フィルタ部の膜厚とする。
【0049】
図2(B)に示すように、フィルタ部11内において、周縁側領域R13よりも枠部12から離れた中央側領域R11におけるフィルタ部11の膜厚T1は、中央側領域R11よりも枠部12に近い周縁側領域R13におけるフィルタ部の膜厚T3よりも大きく形成されている。さらに、フィルタ部11内において、中央側領域R11と周縁側領域R13との間に位置する中間領域R12における膜厚T2は、中央側領域R11の膜厚T1よりも小さく、周縁側領域R13の膜厚T3よりも大きく形成されている。
【0050】
具体的には、フィルタ部11の中心P1における膜厚をT1、交点P2における膜厚膜厚をT2、交点P3における膜厚をT3とした場合、それぞれ膜厚は、T1>T2>T3の関係を満たしている。このように、フィルタ部11内において、フィルタ部11の周縁側から中心側に向かって膜厚が大きくなるように、膜厚が設定されている。言い換えると、フィルタ部11内において、フィルタ部11の中心P1から放射方向(半径方向外向き)に向かって膜厚が小さくなるように、膜厚が設定されている。また、膜厚は、連続的または小さくなるようにしてもよい。
【0051】
例えば、フィルタ部11の中心P1における膜厚T1は、フィルタ部11の中心P1よりも枠部12に近い位置におけるフィルタ部11の膜厚T3の1.1倍以上1.9倍以下である。
【0052】
実施の形態1では、フィルタ部11の膜厚は、連続的に変化している。具体的には、フィルタ部11の第1主面PS1がフィルタ部11の中心P1から枠部12に向かって、第2主面PS2側に傾斜することによって、フィルタ部11の膜厚がフィルタ部11の中心P1から枠部12に向かって小さくなっている。また、フィルタ部11の膜厚T1,T2,T3は、それぞれ、枠部12の厚みT0より小さい。
【0053】
また、フィルタ部11の第2主面PS2は、平坦な形状を有している。本明細書では、「平坦な形状」とは、第2主面PS2側を水平面に載置したときに第2主面PS2の全面が該水平面に接触する形状を意味する。
【0054】
図1に戻って、フィルタ部11の形状は、濾過フィルタ10の厚み方向(Z方向)から見て、例えば、円形、長方形、楕円形である。実施の形態1では、フィルタ部11の形状は、略円形である。なお、本明細書において、「略円形」とは、短径の長さに対する長径の長さの比が1.0以上1.2以下であることをいう。
【0055】
本明細書において、「濾過対象物」とは、液体に含まれる対象物のうち濾過されるべき対象物を意味している。例えば、濾過対象物は、液体に含まれる生物由来物質であってもよい。「生物由来物質」とは、細胞(真核生物)、細菌(真性細菌)、ウィルス等の生物に由来する物質を意味する。細胞(真核生物)としては、例えば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、ES細胞、幹細胞、間葉系幹細胞、単核球細胞、単細胞、細胞塊、浮遊性細胞、接着性細胞、神経細胞、白血球、再生医療用細胞、自己細胞、がん細胞、血中循環がん細胞(CTC)、HL−60、HELA、菌類を含む。細菌(真性細菌)としては、例えば、大腸菌、結核菌を含む。
【0056】
実施の形態1では、1つの例として、液体は細胞懸濁液であり、濾過対象物は細胞である。
【0057】
図3は、例示的なフィルタ部11の一部の拡大斜視図である。
図4は、
図3のフィルタ部11の一部を厚み方向から見た概略図である。
【0058】
図3及び
図4に示すように、複数の貫通孔13は、フィルタ部11の第1主面PS1及び第2主面PS2上に周期的に配置されている。具体的には、複数の貫通孔13は、フィルタ部11においてマトリクス状に等間隔で設けられている。
【0059】
実施の形態1では、貫通孔13は、フィルタ部11の第1主面PS1側、即ちZ方向から見て、正方形の形状を有する。なお、貫通孔13は、Z方向から見た形状が正方形に限定されず、例えば長方形、六角形などの多角形、円形、又は楕円などの形状であってもよい。
【0060】
実施の形態1では、フィルタ部11の第1主面PS1に対して垂直な面に投影した貫通孔13の形状(断面形状)は、長方形である。具体的には、貫通孔13の断面形状は、濾過フィルタ10の半径方向の一辺の長さが濾過フィルタ10の厚み方向の一辺の長さより長い長方形である。なお、貫通孔13の断面形状は、長方形に限定されず、例えば、平行四辺形又は台形等のテーパー形状であってもよいし、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。
【0061】
実施の形態1では、複数の貫通孔13は、フィルタ部11の第1主面PS1側(Z方向)から見て正方形の各辺と平行な2つの配列方向、即ち
図4中のX方向とY方向に等しい間隔で設けられている。このように、複数の貫通孔13を正方格子配列で設けることによって、開口率を高めることが可能であり、濾過フィルタ10に対する液体の通過抵抗を低減することができる。このような構成により、濾過の時間を短くし、濾過対象物へのストレスを低減することができる。
【0062】
なお、複数の貫通孔13の配列は、正方格子配列に限定されず、例えば、準周期配列、又は周期配列であってもよい。周期配列の例としては、方形配列であれば、2つの配列方向の間隔が等しくない長方形配列でもよく、三角格子配列又は正三角格子配列などであってもよい。なお、貫通孔13は、フィルタ部11に複数設けられていればよく、配列は限定されない。
【0063】
複数の貫通孔13の間隔bは、分離する細胞の種類(大きさ、形態、性質、弾性)又は量に応じて適宜設計されるものである。ここで、貫通孔13の間隔bとは、
図4に示すように、貫通孔13をフィルタ部11の第1主面PS1側から見て、任意の貫通孔13の中心と隣接する貫通孔13の中心との距離を意味する。周期配列の構造体の場合、貫通孔13の間隔bは、例えば、貫通孔13の一辺dの1倍より大きく10倍以下であり、好ましくは貫通孔13の一辺dの3倍以下である。あるいは、例えば、フィルタ部11の開口率は、10%以上であり、好ましくは開口率は、25%以上で75%以下ある。このような構成により、フィルタ部11に対する液体の通過抵抗を低減することができる。そのため、処理時間を短くすることができ、細胞へのストレスを低減することができる。なお、開口率とは、(貫通孔13が占める面積)/(貫通孔13が空いていないと仮定したときの第1主面PS1の投影面積)で計算される。
【0064】
フィルタ部11の厚みは、貫通孔13の大きさ(一辺d)の0.1倍より大きく100倍以下が好ましい。より好ましくは、フィルタ部11の厚みは、貫通孔13の大きさ(一辺d)の0.5倍より大きく10倍以下である。このような構成により、液体に対する濾過フィルタ10の抵抗を低減することができ、濾過の時間を短くすることができる。その結果、濾過対象物へのストレスを低減することができる。
【0065】
フィルタ部11において、濾過対象物を含む液体が接触する第1主面PS1は、表面粗さが小さいことが好ましい。ここで、表面粗さとは、第1主面PS1の任意の5箇所において触針式段差計で測定された最大値と最小値の差の平均値を意味する。濾過フィルタ10においては、中央側領域R11内で1箇所、中間領域R12内で2箇所、周縁側領域R13内で2箇所の計5箇所で、第1主面PS1の表面粗さを測定する。
【0066】
実施の形態1では、表面粗さは、濾過対象物の大きさより小さいことが好ましく、濾過対象物の大きさの半分より小さいことがより好ましい。ここで、濾過対象物の大きさについては、光学顕微鏡で観察された画像から定義することができる。例えば、濾過対象物が細胞の場合、流体が通過する方向と平行な向きから、倍率を100倍以上1000倍以下に設定した光学顕微鏡を用いて観察する。観察画像上、水平方向の直線と垂直方向の直線で、細胞の各方向の長さが最も長くなる線を設定し、細胞の各方向の長さを測定する。2方向の直線に関し、一方の長さがもう一方の長さの2倍以上となる場合は、短い方の長さを濾過対象物の大きさとみなす。それ以外の場合は2直線を長径と短径とした楕円と見なし、面積を求めた後、円形に近似し、円形の直径を濾過対象物の大きさとする。なお、光学顕微鏡を観察して測定する長さについては、倍率を考慮した濾過対象物の実寸の長さを意味する。
言い換えると、フィルタ部11の第1主面PS1上の複数の貫通孔13の開口が同一平面(XY平面)上に形成されている。また、フィルタ部11のうち貫通孔13が形成されていない部分であるフィルタ基体部14は、繋がっており、一体に形成されている。このような構成により、フィルタ部11の表面(第1主面PS1)への濾過対象物の付着が低減され、液体の抵抗を低減することができる。
【0067】
貫通孔13は、第1主面PS1側の開口と第2主面PS2側の開口とが連続した壁面を通じて連通している。具体的には、貫通孔13は、第1主面PS1側の開口が第2主面PS2側の開口に投影可能に設けられている。即ち、フィルタ部11を第1主面PS1側から見た場合に、貫通孔13は、第1主面PS1側の開口が第2主面PS2側の開口と重なるように設けられている。実施の形態1において、貫通孔13は、その内壁が第1主面PS1及び第2主面PS2に対して垂直となるように設けられている。
【0068】
なお、第2フィルタ部PS2側に補強層を設けてもよい。これにより、濾過フィルタ10の耐久性を向上させることができる。
【0069】
フィルタ基体部14を構成する材料は、金属及び/又は金属酸化物を主成分としている。フィルタ基体部14は、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、チタン、これらの合金及びこれらの酸化物であってもよい。
【0070】
<枠部>
枠部12は、フィルタ部11の外周を囲むように配置される部材である。枠部12は、フィルタ部11の第1主面PS1側から見て、リング状に形成されている。また、濾過フィルタ10を第1主面PS1側から見て、枠部12の中心は、フィルタ部11の中心と一致する。即ち、枠部12は、フィルタ部11と同心円上に形成されている。
【0071】
実施の形態1では、枠部12の厚みT0は、フィルタ部11の膜厚T1,T2,T3よりも厚く形成されている。このような構成により、濾過フィルタ10の機械強度を高めることができる。
【0072】
枠部12は、濾過フィルタ10とハウジング(実施の形態2参照)とを接続する接続部として機能する。実施の形態1では、濾過フィルタ10は、ハウジングによって枠部12を保持する。
【0073】
また、枠部12には、フィルタの情報(例えば、貫通孔13の寸法など)を表示してもよい。これにより、改めて測長などを行うことなくフィルタ孔寸法を把握したり、表裏を判別したりしやすくなる。
【0074】
枠部12において、フィルタ部11の第1主面PS1側に位置する第1面PS3は、フィルタ部11から枠部12に向かう方向(X,Y方向)に連続して延びている。また、枠部12において、フィルタ部11の第2主面PS2側に位置する第2面PS4は、フィルタ部11から枠部12に向かう方向(X,Y方向)に連続して延びている。「連続して延びている」とは、屈曲せずに延びていることを意味する。実施の形態1では、枠部12の第1面PS3及び第2面PS4は、濾過フィルタ10の中心から径方向外側に向かって平坦に形成されている。このような構成により、枠部12を保持しやすくなっている。
【0075】
実施の形態1では、濾過フィルタ10は直径7.8mmであり、フィルタ部11の直径は6mmであり、枠部12の幅は0.9mmである。また、フィルタ部11の中央側領域R11の膜厚T1は11μmであり、周縁側領域R13の膜厚T3は6μmであり、枠部12の厚みT0は15μmである。濾過フィルタ10は、これらの寸法に限定されることなく、他の寸法で作製されていてもよい。
【0076】
実施の形態1では、枠部12を構成する材料は、フィルタ部11(フィルタ基体部14)を構成する材料と同じである。
【0077】
[濾過フィルタの使用方法]
濾過フィルタ10の使用方法の一例を
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
図5A及び
図5B、それぞれ、濾過フィルタ10の使用方法の工程の一例を示す。
【0078】
図5Aに示すように、濾過対象物である細胞を含む液体30を収容したピペット20を準備する。そして、濾過フィルタ10の厚み方向(Z方向)において、濾過フィルタ10に近づく方向D11にピペット20を移動させる。
【0079】
図5Bに示すように、ピペット20の先端をフィルタ部11の第1主面PS1に接触させる。具体的には、フィルタ部11内において膜厚が最も大きくなる部分の第1主面PS1に、ピペット20の先端を押し当てる。実施の形態1では、フィルタ部11内において膜厚が最も大きくなる部分は、フィルタ部11の中央側領域R11である。
【0080】
次に、ピペット20の先端をフィルタ部11の第1主面PS1に押し当てた状態で、ピペット20の先端から液体30を排出する。これにより、ピペット20内に収容されていた液体30がフィルタ部11を通過し、細胞がフィルタ部11の第1主面PS1上に捕捉される。
【0081】
また、ピペット20から排出された液体30は、フィルタ部11の第1主面PS1上を凸形状に沿って流れる。即ち、濾過フィルタ10を第1主面PS1側から見て、液体30は、フィルタ部11の中央から外周に向かって広がるように流れる。これにより、液体30とフィルタ部11との接触面積が大きくなるため、濾過効率を向上させることができる。
【0082】
[濾過フィルタの製造方法]
濾過フィルタ10の製造方法の一例を
図6A〜6Fを用いて説明する。
図6A〜6Fは、それぞれ、濾過フィルタ10の製造工程の一例を示す図である。
【0083】
図6Aに示すように、シリコンなどの基板21上に銅薄膜22を形成する。銅薄膜22は、例えば、蒸着又はスパッタリングにより形成することができる。スパッタリングにて形成した方が、蒸着にて形成される場合と比べて、表面膜質を良好なものとすることができる。このとき、基板21と銅薄膜22との接着性確保を目的としてTi等の中間層を形成してもよい。銅薄膜22は、後述する電界めっき法による濾過フィルタ10の形成の際に、給電膜として機能する。
【0084】
図6Bに示すように、銅薄膜22上にレジスト膜23を形成する。具体的には、銅薄膜22上に、例えばスピンコートによりレジストの塗布を行い、乾燥処理を行うことにより、レジスト膜23を形成する。レジスト膜23の膜厚は、濾過フィルタ10の厚みに応じて適宜設定されるものである。
【0085】
図6Cに示すように、レジスト膜23を露光及び現像処理し、レジスト膜23から濾過フィルタ10に対応する部分が除去された、溝部24を有するレジスト像25を形成する。
【0086】
図6Dに示すように、レジスト膜23を除去した部分に濾過フィルタ10を形成する。濾過フィルタ10は、例えば、電解めっき法(電鋳)により形成することができる。電解めっき法によりめっきを行う場合、めっき時間を長くする。具体的には、めっきの立ち上がり時間を長くする。めっきの立ち上がり時間とは、めっきを開始してからめっき液が設定温度に達するまでの時間を意味する。
【0087】
電解めっき法による濾過フィルタ10の形成の条件は、以下の通りである。
めっき液:スルファミン酸ニッケルめっき液
pH値:3.7〜4.1
めっき液の温度:55℃
めっき時間:立ち上がり時間 0〜60s(好ましくは10s)
安定域 20〜60min(好ましくは20min)
電流設定値:0.5〜3A(好ましくは2A)
めっき槽の容積:8L
槽液の攪拌速度:3〜40L/min(好ましくは29L/min)
【0088】
図6Eに示すように、溶剤(例えば、アセトン等)への浸漬を行って、レジスト像25を溶解剥離処理して、銅薄膜22上からレジスト像25を除去する。
【0089】
図6Fに示すように、、銅薄膜22をエッチングして除去し、濾過フィルタ10を基板21から剥離する。これにより、濾過フィルタ10が作製される。
【0090】
なお、
図6A〜
図6Fを用いて説明した製造方法は一例であり、濾過フィルタ10の製造方法として、その他の製造方法が採用されてもよい。
【0091】
[効果]
実施の形態1に係る濾過フィルタ10によれば、以下の効果を奏することができる。
【0092】
濾過フィルタ10は、濾過対象物を捕捉する第1主面PS1側に突出する凸形状のフィルタ部11を有している。具体的には、枠部12から離れた中央側領域R11におけるフィルタ部11の膜厚T1は、中央側領域R11よりも枠部12に近い周縁側領域R13におけるフィルタ部11の膜厚T3よりも大きく形成されている。即ち、フィルタ部11の中心P1における膜厚T1は、フィルタ部11の中心P1よりも枠部12に近い位置におけるフィルタ部11の膜厚T3よりも大きく形成されている。
【0093】
このような構成により、耐久性を向上させることができる。
【0094】
例えば、濾過フィルタ10にピペット20を押し当てて濾過を行う場合に、より効果的である。具体的には、濾過フィルタ10のフィルタ部11内において、最も膜厚が大きくなる部分、即ちフィルタ部11の中心P1にピペット20を押し当てて濾過を行うことによって、濾過フィルタ10が破損することを抑制することができる。また、濾過対象物を含む液体30は、フィルタ部11の中央側領域R11から周縁側領域R13に向かって流れる。即ち、液体30は、フィルタ部11の中心P1から径方向外側に向かって、即ち枠部12側に向かって広がるように流れ、液体30とフィルタ部11との接触面積が大きくなる。その結果、液体30がフィルタ部11の貫通孔13を通過しやすくなり、濾過効率が向上する。
【0095】
フィルタ部11の第2主面PS2は、平坦な形状を有している。このような構成により、貫通孔13を通過した液体はそのまま下方向へ落下し、処理速度が速くなる。一方、第2主面PS2が下に凸形あるいは凹形である場合、貫通孔13を通過した液体は、第2主面PS2を面内方向に伝ってから落下するため、特に粘性の高い液体を使用する場合において、処理速度が遅くなってしまう。このように、フィルタ部11の第2主面PS2を平坦にすることによって、液体30が複数の貫通孔13から排出されやすくなる。その結果、濾過時間を短くすることができる。
【0096】
フィルタ部11は略円形の形状を有し、枠部12はフィルタ部11の外周を囲むリング状の形状を有する。このような構成により、フィルタ部11に発生する応力をより分散できる。
【0097】
[応力解析シミュレーション]
濾過フィルタ10の応力解析シミュレーション結果について説明する。応力解析シミュレーションは、株式会社村田製作所製Femtetを用いて行った。
【0098】
図7は、応力解析シミュレーションに用いる濾過フィルタの二次元モデル40の概略図を示す。
図7に示すように、濾過フィルタ10の形状が対称性を有するため、応力解析は二次元モデル40を用いた。応力解析に用いた二次元モデル40は、幅200μm、端部41,42の厚み10μmとし、中央部43の厚みt1をパラメータとして変化させた。また、二次元モデル40を構成する材料はNiに設定した。
【0099】
なお、実施の形態1では、濾過フィルタ10の直径(幅)は6mmであるのに対し、二次元モデル40の幅を200μmと設定しているが、解析結果に大きな影響はない。二次元モデル40の幅を6mmにして解析を行った場合でも、以降で説明する実験結果と同様の結果が得られる。
【0100】
具体的には、二次元モデル40の第2主面PS2を平坦に維持した状態で、中央部43の厚みt1を5〜15μmまで1μmずつ変化させた。即ち、中央部43の厚みt1が5〜9μmの場合、二次元モデル40は凹形状に形成される。中央部43の厚みt1が10μmの場合、二次元モデル40は扁平形状に形成される。中央部43の厚みt1が11〜15μmの場合、二次元モデル40は凸形状に形成される。また、中央部43の厚みt1が5〜9μm又は11〜15μmの場合、二次元モデル40の第1主面PS1は、端部41,42及び中央部43の3点を結んだ円弧状に形成される。
【0101】
応力解析は、二次元モデル40の端部41,42を固定した状態で、中央部43に荷重P1を加えたときの二次元モデル40に生じる応力を計算している。荷重P1は、第1主面PS1側から加えられる。荷重P1の大きさは、1.0×10
−4Nに設定されている。
【0102】
図8は、
図7に示す二次元モデルを用いてミーゼス応力を計算した結果を示す。
図8に示すように、二次元モデル40の中央部43の厚みt1が大きくなるに伴い、中央部43に生じる応力が小さくなっている。即ち、荷重P1が加えられる部分の応力が小さくなっている。
【0103】
図9は、濾過フィルタの二次元モデル40の中央部43の厚みt1をパラメータとした場合、ミーゼス応力が最大となる位置を示す。
図9に示すように、二次元モデル40の中央部43の厚みt1が10μm以下の場合、ミーゼス応力が最大となる位置は中央部43である。二次元モデル40の中央部43の厚みt1が11μm以上19μm以下の場合、ミーゼス応力が最大となる位置は端部41又は42である。二次元モデル40の中央部43の厚みt1が20μm以上の場合、ミーゼス応力が最大となる位置は中央部43である。なお、端部41,42の厚みは、10μmで一定である。このことから、二次元モデル40において中央部43の厚みt1が端部41,42の厚みの1.1倍以上1.9倍以下であれば、応力を分散できると考えられる。
【0104】
このように、二次元モデル40が凸形状に形成されている場合、凹形状及び扁平形状に比べて、荷重P1が加えられた部分(中央部43)に発生する応力を小さくすることができる。言い換えると、二次元モデル40が凸形状に形成されている場合、凹形状及び扁平形状に比べて、荷重P1が加えられることによって濾過フィルタ内に生じる応力を分散させることができる。
【0105】
図10A〜10Cは、それぞれ、凸形状、扁平形状、凹形状を有する濾過フィルタの二次元モデル40a、40b、40cに荷重P1を加えた場合の応力解析結果を示す。
図10A〜10Cは、それぞれ、荷重P1を加えたときの応力分布を示す。なお、二次元モデル40a、40b、40cの中央部43の厚みt1は、それぞれ、15μm、10μm、5μmである。
【0106】
図10Aに示すように、凸形状を有する濾過フィルタの二次元モデル40aにおいては、中央部43に荷重P1が加わった場合、二次元モデル40aのほぼ全体に均等に応力が分散されている。
【0107】
これに対し、扁平形状及び凹形状を有する濾過フィルタの二次元モデル40b、40cにおいては、
図10B及び
図10Cに示すように、中央部43に荷重P1が加わった場合、応力が集中する箇所が多く見られる。
【0108】
具体的には、二次元モデル40b、40cでは、中央部43に応力が集中しており、二次元モデル40aと比べて、より大きな応力が生じている。
【0109】
以上のことから、濾過フィルタ10のフィルタ部11を凸形状に形成することによって、第1主面PS1に荷重が加わったときに応力を分散することができる。これにより、濾過フィルタ10は、耐久性を向上させることができる。
【0110】
なお、実施の形態1では、濾過フィルタ10は金属製フィルタである例を説明したが、これに限定されない。濾過フィルタ10は、液体30に含まれる濾過対象物を濾過することができるものであればよく、例えば、メンブレン等の他のフィルタであってもよい。
【0111】
実施の形態1では、フィルタ部11の第1主面PS1は、連続的に膜厚が変化する例を説明したが、これに限定されない。例えば、フィルタ部11の第1主面PS1は、段階的に膜厚が変化してもよい。
【0112】
実施の形態1では、フィルタ部11の第2主面PS2は、平坦な形状を有する例を説明したが、これに限定されない。フィルタ部11の第2主面PS2は、平坦でなくてもよい。例えば、フィルタ部11は、フィルタ部11の第2主面PS2側に突出していてもよい。あるいは、フィルタ部11は、フィルタ部11の第2主面PS2から第1主面PS1に向かって凹んでいてもよい。このような構成であっても、フィルタ部11の中心P1における膜厚T1がフィルタ部11の中心P1よりも枠部12に近い位置におけるフィルタ部11の膜厚T3よりも大きく形成されている場合、濾過フィルタ10の耐久性を向上させることができる。
【0113】
実施の形態1では、ピペット20を用いた濾過フィルタ10の使用方法の例を説明したが、これに限定されない。濾過フィルタ10は、ピペット20を用いずに濾過を行ってもよい。
【0114】
実施の形態1では、フィルタ部11は、中央側領域R11において膜厚が最も大きくなる例を説明したが、これに限定されない。フィルタ部11は、中間領域R12において膜厚が最も大きくなってもよい。
【0115】
実施の形態1では、フィルタ部11において膜厚が最も大きくなる部分である中央側領域R11の膜厚T1が枠部12の厚みT0よりも小さい例を説明したが、これに限定されない。
【0116】
図11は、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過フィルタ10Aの概略構成図を示す。
図11に示すように、濾過フィルタ10Aにおいて、中央側領域R11におけるフィルタ部11aの膜厚T1は、枠部12の厚みT0より大きくてもよい。即ち、フィルタ部11aの中心P1における膜厚T1は、枠部12の厚みT0より大きくてもよい。このような構成により、濾過フィルタ10Aの耐久性を更に向上させることができる。
【0117】
実施の形態1では、周縁側領域R13におけるフィルタ部11の膜厚T3は、枠部12の厚みT0よりも小さい例を説明したが、これに限定されない。
【0118】
図12は、本発明に係る実施の形態1の別の変形例の濾過フィルタ10Bの概略構成図である。
図12に示すように、濾過フィルタ10Bにおいて、周縁側領域R13におけるフィルタ部11bの膜厚T3は、枠部12の厚みT0よりも大きくてもよい。即ち、フィルタ部11bの中心P1よりも枠部12に近い位置におけるフィルタ部11bの膜厚T3は、枠部12の厚みT0よりも大きくてもよい。例えば、周縁側領域R13におけるフィルタ部11bの第1主面PS1が、枠部12の上面に連続して延びた状態で接続される形状であってもよい。連続して延びた状態で接続される形状とは、第1主面PS1が連続的に変化して枠部12の上面に接続される形状を意味する。このような構成により、濾過フィルタ10Bの耐久性を更に向上させることができる。
【0119】
図13A〜13Cは、それぞれ、濾過フィルタ10,10A,10Bの二次元モデル40d,40e,40fに荷重P1を加えた場合の応力解析結果を示す。
図13A〜13Cに示す応力解析は、上述した[応力解析シミュレーション]の条件と同じ条件で行った。二次元モデル40d,40e,40fは、それぞれ、濾過フィルタ10,10A,10Bの二次元形状を再現している。
【0120】
図13A〜13Cに示すように、中央部43に荷重P1が加わった場合、二次元モデル40e,40fは、二次元モデル40dに比べて、ほぼ全体に応力を分散している。特に、二次元モデル40e,40fにおいてフィルタ部11に生じる応力が、二次元モデル40dに比べて均一に分散されている。
【0121】
したがって、濾過フィルタ10A,10Bは、濾過フィルタ10に比べて、応力を分散することができるため、濾過フィルタ10に比べて、耐久性を更に向上させることができる。
【0122】
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2の濾過装置について説明する。
【0123】
実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0124】
実施の形態2では、実施の形態1の濾過フィルタ10を備える濾過装置について
図14〜18を用いて説明する。
【0125】
図14は、本発明に係る実施の形態2の濾過装置50の一例の概略斜視図である。
図15は、濾過装置50の一例の概略分解図である。
図16は、濾過装置50の一例の概略断面図である。
【0126】
図14〜16に示すように、濾過装置50は、濾過フィルタ10と、液体が流れる流路51を内部に有し、且つ濾過フィルタ10を流路51に保持するハウジング52と、を備える。
【0127】
<ハウジング>
ハウジング52は、第1ハウジング部60と、第1ハウジング部60に嵌合する第2ハウジング部70と、を備える。ハウジング52は、濾過フィルタ10を間に挟んで第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とを嵌合することによって、濾過フィルタ10を流路51内に保持する。具体的には、ハウジング52は、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって、濾過フィルタ10の枠部12を厚み方向(Z方向)に挟持する。ハウジング52には、容器との間の気体流路となる溝が設けられている。
【0128】
第1ハウジング部60は、濾過フィルタ10のフィルタ部11の第1主面PS1に向かう第1流路61を内部に有する。第1流路61は、濾過をする際に、濾過対象物を含む液体が流入する流路であり、ハウジング52の流路51の一部を構成している。具体的には、第1ハウジング部60は、円筒状に形成されている。
【0129】
実施の形態2では、第1ハウジング部60の幅、即ち直径は、第2ハウジング部70と嵌合する側と反対側に向かって小さくなっている。
【0130】
第1ハウジング部60は、第2ハウジング部70と嵌合する側において、濾過フィルタ10の枠部12の第1面PS3と接触する部分を有する。具体的には、第1ハウジング部60において、第2ハウジング部70と嵌合する側の端部には、枠部12の第1面PS3と接触する平坦な面が形成されている。実施の形態1で述べたように、枠部12の第1面PS3は、屈曲せずに平坦に形成されている。よって、第1ハウジング部60の平坦面は、枠部12の平坦な第1面PS3と面接触する。
【0131】
より具体的に説明すると、第1ハウジング部60は、第2ハウジング部70と嵌合する側の端部に凸段差部62を有する。凸段差部62は、第1ハウジング部60から第2ハウジング部70に向かう方向に突出する。凸段差部62の凸面は、平坦に形成されている。凸段差部62の凸面とは、凸段差部62において第1ハウジング部60から第2ハウジング部70に向かう方向に突出した面を意味する。したがって、凸段差部62の凸面は、枠部12の第1面PS3に接触する。
【0132】
また、第1ハウジング部60は、第1ハウジング部60の側壁から外側に延びる第1フランジ部63を有する。第1フランジ部63は、第1ハウジング部60を上側から見て、第1ハウジング部60から第2ハウジング部70に向かう方向に窪む第1溝63aを有する。第1溝63aは、第1ハウジング部60の側壁を囲うようにリング状に形成されている。
【0133】
第1ハウジング部60の幅(X,Y方向の長さ)は、遠沈管などの容器内に収容可能な寸法で形成されている。一方、第1フランジ部63は、容器の開口よりも大きい寸法で形成されている。
【0134】
例えば、濾過装置50に保持された濾過フィルタ10を逆洗する場合、濾過装置50を上下ひっくり返して遠沈管などの容器に取り付ける。このとき、第1ハウジング部60は容器内部に収容され、第1フランジ部63は容器の開口端部に係合する。これにより、第1ハウジング部60を下にして、容器の開口に濾過装置50を保持することができる。その結果、濾過フィルタ10を容易に逆洗することができる。
【0135】
さらに、第1溝63aが容器の開口端部に係合することによって、容器の開口に濾過装置50を安定して保持することができる。
【0136】
第2ハウジング部70は、濾過フィルタ10のフィルタ部11の第2主面PS2に向かう第2流路71を内部に有する。第2流路71は、濾過をする際に、濾過フィルタ10を通過した液体が流出する流路であり、流路51の一部を構成している。具体的には、第2ハウジング部70は、円筒状に形成されている。
【0137】
実施の形態2では、第2ハウジング部70の幅、即ち直径は、第1ハウジング部60と嵌合する側と反対側に向かって小さくなっている。
【0138】
第2ハウジング部70は、第1ハウジング部60と嵌合する側において、濾過フィルタ10の枠部12の第2面PS4と接触する部分を有する。具体的には、第2ハウジング部70において、第1ハウジング部60と嵌合する側の端部には、枠部12の第2面PS4と接触する平坦な面が形成されている。実施の形態1で述べたように、枠部12の第2面PS4は、平坦に形成されている。よって、第2ハウジング部70の平坦面は、枠部12の平坦な第2面PS4と面接触する。
【0139】
より具体的に説明すると、第2ハウジング部70は、第1ハウジング部60と嵌合する側の端部に凹段差部72を有する。凹段差部72は、第1ハウジング部60から第2ハウジング部70に向かう方向に窪んでいる。凹段差部72の凹面は、平坦に形成されている。凹段差部72の凹面とは、凹段差部72において、第1ハウジング部60から第2ハウジング部70に向かう方向に窪んだ面を意味する。凹段差部72の凹面は、枠部12の第2面PS4に接触する。
【0140】
また、第2ハウジング部70は、第2ハウジング部70の側壁から外側に延びる第2フランジ部73を有する。第2フランジ部73は、第2ハウジング部70を下側から見て、第2ハウジング部70から第1ハウジング部60に向かう方向に窪む第2溝73aを有する。第2溝73aは、第2ハウジング部70の側壁に沿ってリング状に形成されている。
【0141】
第2ハウジング部70の幅寸法(X,Y方向の長さ)は、第2フランジ部73を除いて、遠沈管などの容器の開口より小さく形成されている。即ち、第2フランジ部73は、容器の開口よりも大きい寸法を有している。このような構成により、第2フランジ部73を容器に係合させることによって、濾過装置50を容易に容器に取り付けて濾過を行うことができる。
【0142】
具体的には、濾過装置50を容器に取り付けて濾過を行う場合、第2ハウジング部70は容器内部に収容され、第2フランジ部73は容器の開口端部に接触する。これにより、濾過する際に、第2ハウジング部70を下にして、容器の開口に濾過装置50を保持することができる。
【0143】
さらに、第2溝73aが容器の開口端部に係合することによって、容器の開口に濾過装置50を安定して保持することができる。
【0144】
第2ハウジング部70は、持ち手74を有する。持ち手74は、第2ハウジング部70の側壁の一部から外側に向かって延びている。実施の形態2では、持ち手74は、第2フランジ部73の一部から外側に向かって延びている。持ち手74は、第2ハウジング部70を下側から見て、台形形状を有する。
【0145】
[濾過フィルタの保持構造]
濾過装置50における濾過フィルタ10の保持構造について、
図17を用いて説明する。
【0146】
図17は、
図16の濾過装置50のZ1部分の拡大図である。
図17に示すように、濾過フィルタ10は、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって保持されている。
【0147】
第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、濾過フィルタ10の枠部12を間に挟んで嵌合するように構成され、且つ、嵌合された状態で濾過フィルタ10の枠部12を厚み方向(Z方向)に挟持している。また、濾過フィルタ10の枠部12は、フィルタ部11から枠部12に向かう方向(X,Y方向)に連続して延びた状態で、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって保持される。これにより、濾過装置50は、濾過フィルタ10をハウジング52の流路51内に保持している。
【0148】
「フィルタ部11から枠部12に向かう方向(X,Y方向)に連続して延びた状態で第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって保持される」とは、濾過フィルタ10の枠部12において、フィルタ部11から枠部12に向かう方向(X,Y方向)に延びる部分が屈曲せずに第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって保持されることを意味する。言い換えると、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって保持される枠部12の部分が屈曲していないことを意味する。
【0149】
第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、濾過フィルタ10の枠部12を間に挟んで、凸段差部62と凹段差部72とを嵌合する。これにより、濾過フィルタ10の枠部12は、凸段差部62と凹段差部72とによって厚み方向(Z方向)に挟持される。
【0150】
凸段差部62と凹段差部72とを嵌合することによって、枠部12の第1面PS3と接触する凸段差部62の凸面は、枠部12の第1面PS3に対して、厚み方向(Z方向)において第1ハウジング部60から第2ハウジング部70に向かう力を発生させる。一方、枠部12の第2面PS4と接触する凹段差部72の凹面は、枠部12の第2面PS4に対して、厚み方向において第2ハウジング部70から第1ハウジング部60に向かう力を発生させる。
【0151】
このように、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、凸段差部62と凹段差部72とを嵌合することによって、凸段差部62の凸面と凹段差部72の凹面とによって濾過フィルタ10の枠部12を厚み方向(Z方向)に挟持する。
【0152】
実施の形態2では、凸段差部62の凸面と枠部12の第1面PS3は、互いに平坦な形状を有している。また、凹段差部72の凹面と枠部12の第2面PS4は、互いに平坦な形状を有している。このため、凸段差部62と凹段差部72とは、枠部12を屈曲させずに厚み方向に保持することができる。これにより、濾過フィルタ10の径方向外側に引っ張る力を抑制した状態で、濾過フィルタ10をハウジング52の流路51内に保持することができる。
【0153】
このような保持構造により、濾過フィルタ10に厚み方向(Z方向)に力が加わったとしても、濾過フィルタ10の耐久性を向上させることができる。
【0154】
例えば、濾過フィルタ10のフィルタ部11に荷重が加わったとき、濾過フィルタ10を厚み方向に撓ませることができる。これにより、濾過フィルタ10にかかる力を逃がし、濾過フィルタ10が破損することを抑制することができる。即ち、濾過フィルタ10の耐久性を向上させることができる。
【0155】
図18は、濾過装置50を用いた濾過の一例を示す。
図18に示す例では、濾過対象物を含む液体30を収容したピペット20の先端を濾過フィルタ10のフィルタ部11の第1主面PS1に押し当てて、濾過を行っている。なお、ピペット20の先端は、フィルタ部11内において、膜厚が最も大きい部分に接触している。
【0156】
図18に示すように、ピペット20の先端をフィルタ部11の第1主面PS1に押し当てると、フィルタ部11において第1主面PS1から第2主面PS2に向かう方向D12に荷重がかかる。
【0157】
上述したように、濾過フィルタ10においては、枠部12が第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって厚み方向(Z方向)に挟持されることによって、濾過フィルタ10を保持している。したがって、濾過フィルタ10は、濾過フィルタ10の径方向外側に引っ張る力が抑制された状態で保持されている。
【0158】
このため、ピペット20の先端がフィルタ部11の第1主面PS1に押し当てられると、フィルタ部11は押し当てられた方向D12に撓むことができる。これにより、フィルタ部11に加わる力を逃がし、濾過フィルタ10が破損することを抑制することができる。
【0159】
なお、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70が、枠部12を屈曲させた状態で枠部12を保持した場合、枠部12の屈曲部分において濾過フィルタ10の径方向外側(X,Y方向)に引っ張る力が生じる。このため、濾過フィルタ10が径方向外側に引っ張られた状態で、ハウジング52の流路51内に保持されることになる。この場合、フィルタ部11に荷重が加わったとき、濾過フィルタ10を厚み方向(Z方向)に撓ませにくくなる。
【0160】
以上のように、濾過装置50における濾過フィルタ10の保持構造においては、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とが、濾過フィルタ10の枠部12を厚み方向(Z方向)に挟持すると共に、枠部12を屈曲させることなく保持している。
【0161】
[効果]
実施の形態2に係る濾過装置50によれば、以下の効果を奏することができる。
【0162】
濾過装置50は、濾過フィルタ10の枠部12を厚み方向(Z方向)に挟持することによって、濾過フィルタ10をハウジング52内部の流路51に保持している。また、枠部12は、フィルタ部11から枠部12に向かう方向(X,Y方向)に連続して延びた状態で、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とによって保持される。
【0163】
このような構成により、濾過フィルタ10を径方向外側に引っ張る力を抑制した状態で、濾過フィルタ10をハウジング52内部の流路51に保持することができる。このため、濾過装置50の耐久性を向上させることができる。特に、濾過フィルタ10のフィルタ部11において、厚み方向に加わる力に対しての耐久性を向上させることができる。
【0164】
例えば、ピペット20を用いた濾過において、ピペット20の先端が濾過フィルタ10に押し当てられた場合、濾過フィルタ10は押し当てられた方向D12に撓むことができる。これにより、濾過フィルタ10に加わる力を逃がし、濾過フィルタ10が破損することを抑制することができる。
【0165】
なお、実施の形態2では、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、円筒形状を有する例について説明したが、これに限定されない。第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、濾過フィルタ10を保持可能な形状であればよく、例えば、矩形状、楕円形状などの形状を有していてもよい。
【0166】
実施の形態2では、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、それぞれ、凸段差部62と凹段差部72とを有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、凸段差部62と凹段差部72とを有していなくてもよい。第1ハウジング部60が凹段差部を有し、第2ハウジング部70が凸段差を有していてもよい。あるいは、第1ハウジング部60と第2ハウジング部70とは、凸段差部62と凹段差部72以外に嵌合可能な形状を有していてもよい。
【0167】
実施の形態2では、凸段差部62の凸面と凹段差部72の凹面とは、それぞれ、平坦な形状を有する例について説明したが、これに限定されない。凸段差部62の凸面と凹段差部72の凹面とは、濾過フィルタ10の枠部12を厚み方向(Z方向)に挟持可能な形状であればよい。
【0168】
実施の形態2では、第1ハウジング部60と第2ハウジング部とは、それぞれ、第1フランジ部63と第2フランジ部73とを有する例について説明したが、これに限定されない。第1ハウジング部60と第2ハウジング部とは、第1フランジ部63と第2フランジ部73とを有していなくてもよい。
【0169】
実施の形態2では、第1フランジ部63と第2フランジ部73とは、それぞれ、第1溝63aと第2溝73aとを有する例について説明したが、これに限定されない。第1フランジ部63と第2フランジ部73とは、第1溝63aと第2溝73aとを有していなくてもよい。
【0170】
図19は、本発明に係る実施の形態2の変形例の濾過装置50Aの概略斜視図である。
図20は、本発明に係る実施の形態2の変形例の濾過装置50Aの概略断面図である。
図19及び
図20に示すように、濾過装置50Aにおいて、第1ハウジング部60aの第1フランジ部63bは、容器の開口端部と係合する溝を有していない。また、第1ハウジング部60の直径は、第2ハウジング部70と嵌合する側の端部から反対側の端部まで一定で形成されている。
【0171】
このような構成により、第1ハウジング部60aの第1流路61の流路入口を広げることができる。このため、第1ハウジング部60aの第1流路61に濾過対象物を含む液体30を流しやすくなる。また、ピペット20を用いた濾過の場合でもあっても、ピペット20の先端をフィルタ部11の膜厚が大きい部分により容易に押し当てることができる。これにより、濾過装置50Aの操作性が向上する。
【0172】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。