特許第6927422号(P6927422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6927422
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】圧延操業支援システム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20210812BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20210812BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20210812BHJP
【FI】
   B21B37/00 300
   G05B19/418 Z
   G06Q50/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-517411(P2020-517411)
(86)(22)【出願日】2019年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2019049694
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 之博
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/173213(WO,A1)
【文献】 特許第4795498(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00
G05B 19/41,19/418,23/02
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ラインと、
前記圧延ラインにおける圧延制御を実行する制御装置と、
前記圧延ラインの第1操作室に設けられ、前記圧延制御に介入するための第1操作データを前記制御装置に送信する第1端末と、
前記圧延ラインの第2操作室に設けられ、前記圧延制御に介入するための第2操作データを前記制御装置に送信する第2端末と、
前記第1および第2端末に接続され、前記第1および第2操作データを記録する支援装置と、
を備える圧延操業支援システムにおいて、
前記支援装置は、更に、
前記第1操作データを前記第2端末に送信し、
前記第2操作データを前記第1端末に送信する
ことを特徴とする圧延操業支援システム。
【請求項2】
前記第1操作室は、第1モニタを備え、
前記第2操作室は、第2モニタを備え、
前記第1端末は、前記第2操作データを前記第1モニタに表示し、
前記第2端末は、前記第1操作データを前記第2モニタに表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧延操業支援システム。
【請求項3】
前記支援装置は、更に、前記第1操作データの最新データを含む前記第1操作データの履歴に基づいて、前記第1操作データの特性データを生成し、
前記第1操作データが、前記第1操作データの最新データおよび特性データを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧延操業支援システム。
【請求項4】
前記第2端末は、更に、前記支援装置が前記第2端末に前記第1操作データを送信する第2タイミングを示す第2タイミングデータを前記支援装置に送信し、
前記支援装置は、更に、前記第2タイミングデータに従って、前記第1操作データを前記第2端末に送信し、
前記第2タイミングが、前記支援装置が前記第1端末から前記第1操作データを受信した都度のタイミング、および、前記圧延ラインにおいて過去に圧延された材料と鋼種、厚さ及び幅の区分のデータにおいて同一のデータを有する材料が前記圧延ラインに供されるタイミングの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の圧延操業支援システム。
【請求項5】
前記支援装置は、更に、前記第2操作データの最新データを含む前記第2操作データの履歴に基づいて、前記第2操作データの特性データを生成し、
前記第2操作データが、前記第2操作データの最新データおよび特性データを含む
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の圧延操業支援システム。
【請求項6】
前記第1端末は、更に、前記支援装置が前記第1端末に前記第2操作データを送信する第1タイミングを示す第1タイミングデータを前記支援装置に送信し、
前記支援装置は、更に、前記第1タイミングデータに従って、前記第2操作データを前記第1端末に送信し、
前記第1タイミングが、前記支援装置が前記第2端末から前記第2操作データを受信した都度のタイミング、および、前記圧延ラインにおいて過去に圧延された材料と鋼種、厚さ及び幅の区分のデータにおいて同一のデータを有する材料が前記圧延ラインに供されるタイミングの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の圧延操業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延ラインにおいて行われる圧延操業を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼等の材料が圧延される圧延ラインには、計算機室と運転室が設けられる。計算機室は、圧延ラインから離れた場所に設けられる。計算機室には、遠隔作業者が駐在する。遠隔作業者は、圧延ラインにおいて行われる圧延制御の設定計算を行うプロセス管理者または品質管理者である。一方、運転室は、圧延ラインに近い場所に設けられる。運転室には、現場作業者が駐在する。現場作業者は、圧延ラインにおける操業の状況を直接的または間接的に監視しながら、圧延制御に介入するための各種の操作を行う。
【0003】
計算機室には、圧延ラインにおける操業の状況を表示するモニタが設けられる。遠隔作業者は、このモニタを介して操業の状況を監視しながら、圧延制御に介入するための各種の操作を行うことがある。つまり、遠隔作業者は、圧延制御の最中に、現場作業者が行う介入操作と同様の介入操作を行うことがある。このような場合は、圧延制御の最中に、遠隔作業者と現場作業者が電話により直接やり取りすることが通例である。
【0004】
遠隔作業者は、また、今回の圧延制御の終了後、現場作業者による操作データの履歴に基づいて、次回の圧延制御に備えて各種の調整を行うことがある。この場合、遠隔作業者は、操作データが記録された共有データベースにアクセスすることにより取得するのが通例である。共有データベースには、現場作業者もアクセスする。この理由は、前回の圧延制御の終了から今回の圧延制御の開始までの間に遠隔作業者が行った操作データを確認するためである。別の理由は、前回の圧延制御において現場作業者自らが行った操作の内容を確認するためである。
【0005】
日本特許第4795498号明細書は、操業支援装置を開示する。この操業支援装置は、現場作業者の熟練度に応じて、圧延制御の最中に現場作業者が操作すべき内容をガイダンスする時刻を調整する。しかしながら、このガイダンスは、遠隔作業者の操作内容を考慮していない。そのため、従来の圧延制御における問題と同様の問題が発生する。すなわち、圧延制御の最中に、一方の作業者が他方の作業者の操作の内容を把握するのに手間がかかる。仮に、一方の作業者が他方の作業者の操作の内容を十分に把握していない場合は、操業トラブルを引き起こす原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許第4795498号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、現場作業者と遠隔作業者が行った操作の内容を互いに把握することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上述の目的を達成するための圧延操業支援システムであり、次の特徴を有する。
前記圧延操業支援システムは、圧延ラインと、制御装置と、第1端末と、第2端末と、支援装置と、を備える。
前記制御装置は、前記圧延ラインにおける圧延制御を実行するように構成される。
前記第1端末は、前記圧延ラインの第1操作室に設けられる。前記第1端末は、前記圧延制御に介入するための第1操作データを前記制御装置に送信する。
前記第2端末は、前記圧延ラインの第2操作室に設けられる。前記第2端末は、前記圧延制御に介入するための第2操作データを前記制御装置に送信する。
前記支援装置は、前記第1および第2端末に接続される。前記支援装置は、前記第1および第2操作データを記録する。
前記支援装置は、更に、
前記第1操作データを前記第2端末に送信し、
前記第2操作データを前記第1端末に送信する
ように構成される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記第1操作室は、第1モニタを備える。
前記第2操作室は、第2モニタを備える。
前記第1端末は、前記第2操作データを前記第1モニタに表示するように構成される。
前記第2端末は、前記第1操作データを前記第2モニタに表示するように構成される。
【0010】
第3の発明は、第1または2の発明において更に次の特徴を有する。
前記支援装置は、更に、前記第1操作データの最新データを含む前記第1操作データの履歴に基づいて、前記第1操作データの特性データを生成するように構成される。
前記第1操作データは、前記第1操作データの最新データおよび特性データを含む。
【0011】
第4の発明は、第1〜3の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記第2端末は、更に、前記支援装置が前記第2端末に前記第1操作データを送信する第2タイミングを示す第2タイミングデータを前記支援装置に送信するように構成される。
前記支援装置は、更に、前記第2タイミングデータに従って、前記第1操作データを前記第2端末に送信するように構成される。
前記第2タイミングは、前記支援装置が前記第1端末から前記第1操作データを受信した都度のタイミング、および、前記圧延ラインにおいて過去に圧延された材料と鋼種、厚さ及び幅の区分のデータにおいて同一のデータを有する材料が前記圧延ラインに供されるタイミングの少なくとも一方を含む。
【0012】
第5の発明は、第1〜4の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記支援装置は、更に、前記第2操作データの最新データを含む前記第2操作データの履歴に基づいて、前記第2操作データの特性データを生成するように構成される。
前記第2操作データは、前記第2操作データの最新データおよび特性データを含む。
【0013】
第6の発明は、第1〜5の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記第1端末は、更に、前記支援装置が前記第1端末に前記第2操作データを送信する第1タイミングを示す第1タイミングデータを前記支援装置に送信するように構成される。
前記支援装置は、更に、前記第1タイミングデータに従って、前記第2操作データを前記第1端末に送信するように構成される。
前記第1タイミングが、前記支援装置が前記第2端末から前記第2操作データを受信した都度のタイミング、および、前記圧延ラインにおいて過去に圧延された材料と鋼種、厚さ及び幅の区分のデータにおいて同一のデータを有する材料が前記圧延ラインに供されるタイミングの少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、支援装置が第1端末から受信した第1操作データが第2端末に転送される。また、支援装置が第2端末から受信した第2操作データが第1端末に転送される。そのため、圧延の準備中、または、圧延の最中に現場作業者と遠隔作業者が連絡を取り合うことなく、自らが駐在する操作室の端末を介して一方の作業者他方の作業者の操作の内容の詳細を把握することが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【0015】
第2の発明によれば、自らが駐在する操作室のモニタを介して一方の作業者が他方の作業者の操作の内容の詳細を視覚的に把握することが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【0016】
第3または5の発明によれば、自らが駐在する操作室の端末を介して一方の作業者の操作の傾向を他方の作業者が容易に把握することが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【0017】
第4または6の発明によれば、一方の作業者の好みのタイミングで他方の作業者の操作データを受け取ることが可能となる。そのため、作業者による作業能率を上げることが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1〜3に係る圧延操業支援システムの構成例を説明する図である。
図2】圧延操業支援システムにおける主なデータの流れを示す図である。
図3】圧延制御に対する介入例を説明する図である。
図4】実施の形態1において行われる特徴的な処理を説明する図である。
図5】圧延制御に対する別の介入例を説明する図である。
図6】実施の形態2において行われる特徴的な処理を説明する図である。
図7】実施の形態3において行われる特徴的な処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
1.実施の形態1
まず、図1図4を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
【0021】
1−1.圧延操業支援システムの構成
図1は、実施の形態1に係る圧延操業支援システムの構成例を説明する図である。図1に示されるように、圧延操業支援システム100は、圧延ライン10と、制御装置20と、運転室30と、計算機室40と、支援装置50と、を備えている。
【0022】
圧延ライン10は、加熱炉、幅圧下装置、粗圧延機、仕上げ圧延機、コイラなどの設備を備えている。これらの設備についての限定は特になく、公知の設備が適用される。図1には、圧延ライン10における圧延対象である材料11a,11bおよび11cが描かれている。材料11aは、仕上げ圧延機の位置にある。なお、後述する説明において必要となるため、仕上げ圧延機が有する7基のスタンドには、符号F1〜F7が付されている。材料11bは、幅圧下装置の位置にある。材料11cは、加熱炉の位置にある。
【0023】
制御装置20は、少なくともプロセッサ21とメモリ22を備えるコンピュータである。プロセッサ21は、メモリ22に記憶された各種のプログラムに従って、圧延ライン10における圧延制御を実行する。圧延制御には、加熱、加工、冷却および巻取といった圧延ライン10上の各種の工程に対応した制御が含まれる。制御装置20は、圧延ライン10と接続されている。制御装置20は、圧延ライン10上の各種のセンサ(不図示)が計測したデータ(以下、「計測データ」と称す。)を受け取る。計測データは、メモリ22に書き込まれる。一例として、計測データは、圧延制御のための計算に使用される。
【0024】
運転室30は、モニタ31a〜31dと、モニタ32a〜32cと、端末33と、を備える。モニタ31a〜31dには、圧延ライン10における操業の状況を監視するための映像データが表示される。一方、モニタ32a〜32cには、計測データと、材料11a〜11cの製品データと、圧延制御の数値データと、が表示される。製品データには、圧延される材料の鋼種、厚(すなわち、製品厚)および幅(すなわち、製品幅)のデータが含まれる。数値データには、圧延制御の設定計算の結果を示すデータと、圧延制御の制御結果を示すデータと、が含まれる(例えば、各種の制御パラメータおよびゲインのデータ)。端末33は、少なくともプロセッサ34とメモリ35を備える。メモリ35には、映像データ、計測データ、製品データおよび数値データが書き込まれる。プロセッサ34は、これらのデータの表示に必要な処理を行う。
【0025】
運転室30は、更に、ガラス窓36を備える。運転室30には、現場作業者が駐在する。現場作業者は、ガラス窓36を介して圧延ライン10における操業の状況を直接的に監視する。現場作業者は、また、モニタ31a〜31dを介して操業の状況を間接的に監視する。現場作業者は、更に、操業の状況に応じて、圧延制御に介入するための操作を、端末33、または端末33に接続された入力装置(不図示)を用いて行う。現場作業者による圧延制御への介入操作を、以下、「第1操作」と称す。メモリ35には、第1操作に関するデータ(以下、「第1操作データ」と称す。)が書き込まれる。プロセッサ34は、モニタ32a〜32cの何れか1つに第1操作データを表示するための処理を行う。運転室30は、制御装置20および支援装置50に接続されている。プロセッサ34は、第1操作データをこれらの装置に送信するための処理を行う。
【0026】
計算機室40は、モニタ41a〜41dと、モニタ42a〜42cと、端末43と、を備える。モニタ41a〜41dの機能は、モニタ31a〜31dのそれと同じである。モニタ42a〜42cの機能は、モニタ32a〜32cのそれと同じである。端末43は、少なくともプロセッサ44とメモリ45を備える。メモリ45には、映像データ、計測データ、製品データおよび数値データが書き込まれる。プロセッサ44は、これらのデータの表示に必要な処理を行う。
【0027】
計算機室40には、遠隔作業者が駐在する。遠隔作業者は、圧延制御の設定計算を行う。遠隔作業者は、また、モニタ41a〜41dを介して操業の状況を監視する。遠隔作業者は、更に、操業の状況に応じて、圧延制御に介入するための操作を、端末43、または端末43に接続された入力装置(不図示)を用いて行う。遠隔作業者による圧延制御への介入操作を、以下、「第2操作」と称す。メモリ45には、第2操作に関連するデータ(以下、「第2操作データ」と称す。)が書き込まれる。プロセッサ44は、モニタ42a〜42cの何れか1つに第2操作データを表示するための処理を行う。計算機室40は、制御装置20および支援装置50に接続されている。プロセッサ44は、第2操作データをこれらの装置に送信するための処理を行う。
【0028】
支援装置50は、少なくともプロセッサ51とメモリ52を備えるコンピュータである。プロセッサ51は、第1および第2操作データを、制御装置20から受信した製品データに関連付けてメモリ52に書き込むための処理を行う。プロセッサ51は、運転室30と計算機室40の間で操作データを受け渡すための処理(以下、「転送処理」と称す。)を行う。転送処理の詳細については後述される。なお、「操作データ」は、第1および第2操作データの総称である。
【0029】
1−2.主なデータの流れ
図2は、圧延操業支援システム100における主なデータの流れを示す図である。指令データD1は、制御装置20から圧延ライン10に送信される。指令データD1には、数値データが含まれる。指令データD1には、操作データに基づいて変更された制御パラメータおよびゲインのデータも含まれる。圧延ライン10から制御装置20には、計測データD2が送信される。製品データD5は、制御装置20から支援装置50に送信される。
【0030】
操作データは、データの送信先で区別される。具体的に、送信先が制御装置20の場合の第1操作データは、第1操作データD31と称される。送信先が支援装置50の場合の第1操作データは、第1操作データD41と称される。送信先が制御装置20の場合の第2操作データは、第2操作データD32と称される。送信先が支援装置50の場合の第2操作データは、第2操作データD42と称される。
【0031】
1−3.実施の形態1の特徴
1−3−1.従来の問題点
図3は、圧延制御に対する介入例を説明する図である。図3に示す例では、図1に示した仕上げ圧延機において、材料11aおよび11bがこの順で圧延されている。時刻T1から時刻T2までの間は、材料11aが圧延される。時刻T3から時刻T4までの間は、材料11bが圧延される。時刻T1よりも前は、材料11aの圧延が待機される時間である。時刻T2から時刻T3までの間は、材料11bの圧延が待機される時間である。
【0032】
図3に示されるように、時刻T1の前には、運転室30から制御装置20に第1操作データD31aおよびD31bがこの順で送信される。また、時刻T1よりも前には、計算機室40から制御装置20に第2操作データD32aが送信される。第2操作データD32aの送信は、第1操作データD31aの送信から第1操作データD31bの送信までの間に行われる。また、時刻T1から時刻T2までの間には、運転室30から制御装置20に第1操作データD31cが送信される。また、時刻T2から時刻T3までの間には、運転室30から制御装置20に第1操作データD31dが送信される。
【0033】
従来においては、圧延の準備中、または、圧延の最中、遠隔作業者と現場作業者が連絡を取り合い、一方の作業者が他方の作業者の介入操作の内容の詳細を把握していた。しかしながら、このような連絡を行うことは手間がかかるうえ、聞き間違いが操業トラブルに繋がるリスクがある。また、従来の方式では、遠隔作業者と現場作業者が同一の材料に対して同じような介入操作を行う可能性がある。そうすると、介入操作が過剰に行われることになり、製品の品質を一定にすることが困難になる。
【0034】
1−3−2.実施の形態1の改良点
そこで、実施の形態1では、転送処理が行われる。図4は、転送処理を説明する図である。図2で説明したように、操作データは、制御装置20だけでなく支援装置50にも送信される。そのため、圧延の準備中、または、圧延の最中、メモリ52には、制御装置20に送信されたデータと同じデータが書き込まれる。図4に示される第1操作データD41a〜D41dは、図3で説明した第1操作データD31a〜D31dとそれぞれ同じである。第2操作データD42aは、図3で説明した第2操作データD32aと同じである。図4において、「鋼種区分:AA」、「厚区分」および「幅区分」は、製品データに相当する。「操作元」、「操作項目」および「操作量」は、操作データに相当する。
【0035】
転送処理では、転送データD6がメモリ52から読み出される。転送データD6は、メモリ52に書き込まれた最新データと、これに関連付けられた製品データと、を含む。転送処理では、また、転送データD6が、操作元の端末から、この端末が設置された操作室とは別の操作室に設置された端末(以下、「別操作室の端末」とも称す。)に送信される。例えば、最新データが第1操作データD41aの場合を考える。この場合、別操作室の端末には、端末43が該当する。転送データD6は、第1操作データD41aと、これに関連付けられた製品データと、を含む。最新データが第2操作データD42aの場合を考える。この場合、別操作室の端末には、端末33が該当する。転送データD6は、第2操作データD42aと、これに関連付けられた製品データと、を含む。
【0036】
転送データD6は、データの送信先で区別される。具体的に、別操作室の端末が端末33の場合の転送データD6は、第1通知データD71と称される。別操作室の端末が端末43の場合の転送データD6は、第2通知データD72と称される。
【0037】
端末33が第1通知データD71を受信した場合、第1通知データD71はメモリ35に書き込まれる。プロセッサ34は、第1通知データD71をモニタ32a〜32cの何れか1つに表示するための処理を行う。
【0038】
端末43が第2通知データD72を受信した場合、第2通知データD72はメモリ45に書き込まれる。プロセッサ44は、第2通知データD72をモニタ42a〜42cの何れか1つに表示するための処理を行う。
【0039】
1−4.効果
実施の形態1によれば、転送処理が行われる。転送処理によれば、操作データの最新データが、これに関連付けられた製品データと共に別操作室の端末に送信される。そのため、圧延の準備中、または、圧延の最中、現場作業者と遠隔作業者が連絡を取り合うことなく、一方の作業者が他方の作業者の介入操作の内容の詳細を把握することが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【0040】
なお、転送処理において、操作データの最新データのみが別操作室の端末に送信された場合であっても、上述の効果が期待される。何故なら、圧延の準備中、または、圧延の最中、製品データはモニタ32a〜32cおよび42a〜42cに表示される。そのため、現場作業者および遠隔作業者は、操作データの最新データと、これらのモニタに表示された製品データとの関連付けを自ら行うことが期待されるためである。
【0041】
遠隔作業者は、今回の圧延制御の終了後、第1操作データD41の履歴に基づいて、次回の圧延制御に備えて各種の調整を行うことがある。転送処理によれば、第1操作データD41の履歴が第2通知データD72としてメモリ45に書き込まれる。そのため、遠隔作業者による調整に際し、遠隔作業者がメモリ22にアクセスして現場作業者の操作履歴を調査する手間を省くことも可能となる。また、調整によって変更されたデータは、第1通知データD71としてメモリ35に書き込まれる。そのため、現場作業者がメモリ22にアクセスして遠隔作業者の調整履歴を調査する手間を省き、次回の圧延制御の前に、現場作業者が遠隔作業者の調整の結果を容易に把握することが可能となる。
【0042】
加えて、実施の形態1によれば、第1通知データD71がモニタ32a〜32cの何れか1つに表示され、第2通知データD72がモニタ42a〜42cの何れか1つに表示される。従って、一方の作業者が他方の作業者の介入操作の内容の詳細を視覚的に把握することが可能となる。
【0043】
1−5.実施の形態1と発明の対応関係
実施の形態1においては、運転室30が第1の発明の「第1操作室」に相当する。計算機室40が第1の発明の「第2操作室」に相当する。端末33が第1の発明の「第1端末」に相当する。端末43が第1の発明の「第2端末」に相当する。モニタ32a〜32cの少なくとも1つが第2の発明の「第1モニタ」に相当する。モニタ42a〜42cの少なくとも1つが第2の発明の「第2モニタ」に相当する。
【0044】
2.実施の形態2
次に、図5および6を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。以下、実施の形態1と重複する説明については適宜省略される。
【0045】
2−1.実施の形態2の特徴
図5は、圧延制御に対する別の介入例を説明する図である。図5に示す例では、仕上げ圧延機において、材料11a、11bおよび11cがこの順で圧延されている。時刻T1〜T4については、図3で説明したとおりである。時刻T5から時刻T6までの間は、材料11cが圧延される。時刻T4から時刻T5までの間は、材料11cの圧延が待機される時間である。
【0046】
図5に示されるように、時刻T1の前には、運転室30から制御装置20に第1操作データD31aおよびD31bがこの順で送信される。また、時刻T1よりも前には、計算機室40から制御装置20に第2操作データD32aが送信される。また、時刻T2から時刻T3までの間には、運転室30から制御装置20に第1操作データD31cが送信される。また、時刻T4から時刻T5までの間には、運転室30から制御装置20に第1操作データD31dおよびD31eがこの順で送信される。
【0047】
図6は、実施の形態2で行われる転送処理(以下、「第2転送処理」と称す。)を説明する図である。図6に示される第1操作データD41a〜41eは、図5で説明した第1操作データD31a〜31eとそれぞれ同じである。第2操作データD42aは、図5で説明した第2操作データD32aと同じである。図6において、「鋼種区分:AA」、「厚区分」および「幅区分」は、製品データに相当する。「時刻」、「操作元」、「操作項目」および「操作量」は、操作データに相当する。
【0048】
第2転送処理では、転送データD6がメモリ52から読み出される。転送データD6は、メモリ52に書き込まれた最新データと、これに関連付けられた製品データと、を含む。ここまでは、実施の形態1の転送処理(以下、「第1転送処理」と称す。)と同じである。第2転送処理では、最新データと「製品データ」、「操作元」および「操作項目」が共通する操作データが、共通データD8として読み出される。共通データD8には、最新データから一定時間(例えば、1時間)だけ遡ったデータが選ばれる。
【0049】
例えば、最新データが第1操作データD41eの場合、共通データD8は第1操作データD41bおよび41dが選ばれる。第1操作データD41cは「製品データ」において第1操作データD41eと異なる。第2操作データD42aは「操作元」において第1操作データD41eと異なる。第1操作データD41aは最新データから遡った時間が一定時間を超える。そのため、これらの操作データは、共通データD8として選ばれない。
【0050】
第2転送処理では、最新データと共通データD8に基づいて、特性データが生成される。特性データは、最新データおよび共通データD8の「操作量」の最大値rMAXと、最小値rMINと、平均値rAVEと、を含む。例えば、最新データが第1操作データD41eの場合、操作量α3,α5およびα6に基づいて、特性データが生成される。
【0051】
第2転送処理では、最新データ、製品データおよび特性データが、転送データD6として別操作室の端末に送信される。端末33が第1通知データD71を受信した場合のプロセッサ34の処理は、実施の形態1で説明したとおりである。端末43が第2通知データD72を受信した場合の処理も、実施の形態1で説明したとおりである。
【0052】
2−2.効果
実施の形態2によれば、第2転送処理が行われる。第2転送処理によれば、第1転送処理で送信されたデータだけでなく、特性データも転送される。特性データが転送されることで、現在圧延されている材料と「製品データ」および「操作項目」が共通する材料に対する一方の作業者の「操作量」の傾向を、他方の作業者が容易に把握することが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【0053】
3.実施の形態3
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。以下、実施の形態1または2と重複する説明については適宜省略される。
【0054】
3−1.実施の形態3の特徴
図7は、実施の形態3の転送処理(以下、「第3転送処理」と称す。)を説明する図である。第3転送処理では、第1タイミングデータD91および第2タイミングデータD92に基づいて、第3転送処理が行われるタイミングが決定される。
【0055】
第1タイミングデータD91は、現場作業者が第1通知データD71の受け取りを希望するタイミングを示すデータである。希望タイミングとしては、第2操作の都度のタイミング、次回のタイミング、または、これらの両方のタイミングが例示される。次回のタイミングとは、過去に圧延された材料の層別データと同一の層別データを有する材料が圧延ライン10に供されるタイミングを意味する。層別データは、「鋼種区分」、「厚区分」および「幅区分」から構成される。
【0056】
第1タイミングデータD91は、デフォルトが「都度のタイミング」に設定されている。現場作業者が希望タイミングを変更すると、変更後の第1タイミングデータD91が運転室30から支援装置50に送信される。希望タイミングの変更は、端末33を介して行われる。
【0057】
第2タイミングデータD92は、遠隔作業者が第2通知データD72の受け取りを希望するタイミングを示すデータである。希望タイミングとしては、第1操作の都度のタイミング、次回のタイミング、または、これらの両方のタイミングが例示される。次回のタイミングの定義については、第1タイミングデータD91に含まれる次回のタイミングのそれと同じである。
【0058】
第2タイミングデータD92は、デフォルトが「都度のタイミング」に設定されている。遠隔作業者が希望タイミングを変更すると、変更後の第2タイミングデータD92が計算機室40から支援装置50に送信される。希望タイミングの変更は、端末43を介して行われる。
【0059】
実施の形態3では、制御装置20から支援装置50にスケジュールデータD10が送信される。図7に示されるように、スケジュールデータD10には、圧延の順番データと、層別データとが含まれている。
【0060】
第3転送処理では、「次回のタイミング」が希望タイミングに含まれる場合、スケジュールデータD10、第1タイミングデータD91および第2タイミングデータD92に基づいて、第1通知データD71および第2通知データD72の送信タイミングが決定される。例えば、2番目に圧延される鋼種BBに着目する。この場合の送信タイミングは、3番目の鋼種BBが圧延ライン10に供されるタイミングである。5番目に圧延される鋼種CCに着目する。この場合の送信タイミングは、6番目の鋼種CCが圧延ライン10に供されるタイミングである。
【0061】
「次回のタイミング」が希望タイミングに含まれない場合、つまり、「都度のタイミング」が選択されている場合、第3転送処理の内容は第1転送処理の内容と同じになる。
【0062】
3−2.効果
実施の形態3によれば、第3転送処理が行われる。第3転送処理によれば、第1タイミングデータD91および第2タイミングデータD92に基づいて、第1通知データD71および第2通知データD72を支援装置50が送信するタイミングが決定される。別室に駐在する作業者の操作動向を常に把握したい作業者にとっては、「都度のタイミング」または「都度と次回の両方のタイミング」が好都合である。一方、熟練度の高い作業者であれば「都度のタイミング」が煩わしく感じる場合もある。この点、第3転送処理によれば、作業者の好みに応じて第1通知データD71または第2通知データD72を受け取ることが可能となるので、作業者による作業能率を上げることが可能となる。従って、操業を安定させて製品の品質を一定にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
10 圧延ライン
11a〜11c 材料
20 制御装置
21,34,44,51 プロセッサ
22,35,45,52 メモリ
30 運転室
31a〜31d,32a〜32c,41a〜41d,42a〜42c モニタ
33,43 端末
36 ガラス窓
40 計算機室
50 支援装置
100 圧延操業支援システム
D1 指令データ
D2 計測データ
D31,D31a〜D31e,D41,D41a〜D41e 第1操作データ
D32,D32a,D42,D42a 第2操作データ
D5 製品データ
D6 転送データ
D71 第1通知データ
D72 第2通知データ
D8 共通データ
D91 第1タイミングデータ
D92 第2タイミングデータ
D10 スケジュールデータ
【要約】
圧延操業支援システムは、圧延ラインと、制御装置と、第1端末と、第2端末と、支援装置と、を備える。制御装置は、圧延ラインにおける圧延制御を実行する。第1端末は、圧延ラインの第1操作室に設けられる。第1端末は、圧延制御に介入するための第1操作データを制御装置に送信する。第2端末は、圧延ラインの第2操作室に設けられる。第2端末は、圧延制御に介入するための第2操作データを制御装置に送信する。支援装置は、第1および第2端末に接続される。支援装置は、第1および第2操作データを記録する。支援装置は、更に、第1操作データを第2端末に送信し、第2操作データを第1端末に送信する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7