(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の主結合部のうち、外部との間で信号が入出力される誘電体導波管共振器と当該誘電体導波管共振器に結合する誘電体導波管共振器との間の主結合部は誘導性結合部である、
請求項1に記載の誘電体導波管フィルタ。
前記複数の誘電体導波管共振器のうち前記主結合部で順次結合される4つの誘電体導波管共振器を、順に、第1誘電体導波管共振器、第2誘電体導波管共振器、第3誘電体導波管共振器、及び第4誘電体導波管共振器、で表すとき、前記第1誘電体導波管共振器と前記第2誘電体導波管共振器との間に設けられた主結合部は誘導性結合部であり、前記第2誘電体導波管共振器と前記第3誘電体導波管共振器との間に設けられた主結合部は容量性結合部であり、前記第3誘電体導波管共振器と前記第4誘電体導波管共振器との間に設けられた主結合部は誘導性結合部であり、
前記副結合部のうち、前記第1誘電体導波管共振器と前記第4誘電体導波管共振器との間に設けられた副結合部は誘導性結合部であり、当該副結合部の結合は前記主結合部の結合に比べて弱い、
請求項3に記載の誘電体導波管フィルタ。
前記主結合部の前記誘導性結合部と、前記副結合部の前記誘導性結合部とは、前記誘電体導波管共振器の電界方向に直交する幅を制限する、連続する一体の共通のポストで構成された、
請求項4又は5に記載の誘電体導波管フィルタ。
前記主結合部の前記容量性結合部と、前記副結合部の前記容量性結合部とは、前記誘電体導波管共振器の電界方向の幅を制限する、連続する一体の共通のポストで構成された、
請求項4又は5に記載の誘電体導波管フィルタ。
前記主結合部の前記容量性結合部と、前記副結合部の前記誘導性結合部とは、前記誘電体導波管共振器の電界方向の幅を制限する部分と、前記誘電体導波管共振器の電界方向に直交する幅を制限する部分と、が連続する一体の共通のポストで構成された、
請求項4又は5に記載の誘電体導波管フィルタ。
前記主結合部の前記誘導性結合部と、前記副結合部の前記容量性結合部とは、前記誘電体導波管共振器の電界方向に直交する幅を制限する部分と、前記誘電体導波管共振器の電界方向の幅を制限する部分と、が連続する一体の共通のポストで構成された、
請求項4又は5に記載の誘電体導波管フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0013】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係る誘電体導波管フィルタ101の外観斜視図であり、
図1(B)は誘電体導波管フィルタ101の内部構造を示す透視斜視図である。
図2(A)
は入出力用ポスト及び入出力用パッドの構成を示す拡大斜視図であり、
図2(B)
は非貫通ポスト3U,3Lの構成を示す拡大斜視図である。また、
図3(A)は誘電体導波管フィルタ101が備える4つの誘電体導波管共振器部分を示す斜視図であり、
図3(B)は誘電体導波管フィルタ101が備える主結合部及び副結合部を示す斜視図である。
【0014】
この誘電体導波管フィルタ101は直方体状の誘電体ブロック1に構成されている。誘電体ブロック1は例えば誘電体セラミック、水晶、樹脂等を直方体形状に加工したものである。誘電体ブロック1の底面には入出力用パッド5A,5Bが形成されている。誘電体ブロック1には、入出力用パッド5A,5Bから誘電体ブロック1の内部へ突出する入出力用ポスト4A,4Bが形成されている。また、誘電体ブロック1には、その上面から下面まで貫通する貫通ポスト2A〜
2G,2J,2Kが形成されている。さらに、誘電体ブロック1には、その上面から所定深さまで掘られた非貫通ポスト3U、及び誘電体ブロック1の下面から所定深さまで掘られた非貫通ポスト3Lが形成されている。
【0015】
誘電体ブロック1の外面、各貫通ポスト、及び各非貫通ポストに内面には導体膜が形成されている。上記入出力用パッド5A,5Bの周囲はグランド導体として用いる導体膜から分離されている。この導体膜は、例えばAg電極用ペーストをメタライズすることにより形成される。
【0016】
図3(A)、
図3(B)において二点鎖線は、誘電体ブロック1に構成される誘電体導波管共振器の区分を示す仮想上の線である。誘電体導波管フィルタ101は4つの誘電体導波管共振器11A,11B,11C,11Dを備える。誘電体導波管共振器11Aは本発明に係る第1誘電体導波管共振器、誘電体導波管共振器11Bは本発明に係る第2誘電体導波管共振器、誘電体導波管共振器11Cは本発明に係る第3誘電体導波管共振器、誘電体導波管共振器11Dは本発明に係る第4誘電体導波管共振器にそれぞれ相当する。
【0017】
以降、「誘電体導波管共振器」を単に「共振器」という。共振器11A,11B,11C,11DはいずれもTE101モードを基本モードとする共振器である。つまり、Z方向を電界方向とし、X−Y面に沿った面方向に磁界が回る電磁界分布の共振モードであり、X方向に電界強度のピークが一つ、Y方向に電界強度のピークが一つ生じる。
【0018】
共振器11A−11B間には主結合部MC12が構成されていて、共振器11B−11C間には主結合部MC23が構成されていて、共振器11C−11D間には主結合部MC34が構成されていて、共振器11A−11D間には副結合部SC14が構成されている。
【0019】
図3(B)に示す主結合部MC12は
図3(A)に示す貫通ポスト2C,2D,2Eによって構成されている。また、
図3(B)に示す主結合部MC34は
図3(A)に示す貫通ポスト2C,2J,2Kによって構成されている。
図3(B)に示す副結合部SC14は
図3(A)に示す貫通ポスト2A,2B,2Cによって構成されている。そして、
図3(B)に示す主結合部MC23は
図3(A)に示す貫通ポスト
2C,2F,2G及び非貫通ポスト3U,3Lによって構成されている。
【0020】
主結合部MC12は、貫通ポスト2C,2D,2Eによって、共振器11A,11Bの電界方向に直交する幅(Y方向の幅)を制限する誘導性結合窓として作用するので、共振器11A−11B同士は誘導性結合する。主結合部MC34は、貫通ポスト2C,2J,2Kによって、共振器11C,11Dの電界方向に直交する幅(Y方向の幅)を制限する誘導性結合窓として作用するので、共振器11C−11D同士は誘導性結合する。副結合部SC14は、貫通ポスト2A,2B,2Cによって、共振器11A,11Dの電界方向に直交する幅(X方向の幅)を制限する誘導性結合窓
として作用するので、共振器11A−11D同士は誘導性結合する。一方、主結合部MC23は、非貫通ポスト3Uと非貫通ポスト3Lとの間隙(
図2(B)に示すG)は、共振器11B,11Cの電界方向(Z方向)の幅を制限する容量性結合窓として作用するので、共振器11B−11C同士は容量性結合する。なお、貫通ポスト2C,2F,2Gは共振器11B,11Cの電界方向に直交する幅(X方向の幅)を制限するが、この例では、非貫通ポスト3U,3Lによる、電界方向(Z方向)の幅を制限する作用が強いので、共振器11B−11C同士は容量性結合する。
【0021】
図4は誘電体導波管フィルタ101を実装する回路基板90の部分斜視図である。回路基板90には、グランド導体10及び入出力用ランド15A,15Bが形成されている。この回路基板90に誘電体導波管フィルタ101が表面実装される状態で、誘電体導波管フィルタ101の入出力用パッド5A,5Bが上記入出力用ランド15A,15Bに接続され、誘電体導波管フィルタ101の底面に形成されているグランド導体が回路基板90のグランド導体10に接続される。
【0022】
回路基板90には、上記入出力用ランド15A,15Bに繋がる、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン等の伝送線路が構成されている。
【0023】
図5(A)、
図5(B)は本実施形態の誘電体導波管フィルタ101を構成する4つの共振器の結合構造を示す図である。
図5(A)、
図5(B)において、共振器11Aは1段目(初段)の共振器であり、共振器11Bは2段目の共振器であり、共振器11Cは3段目の共振器であり、共振器11Dは4段目(終段)の共振器である。
図5(A)、
図5(B)において二重線で示す経路は主結合路であり、破線は副結合路である。また、
図5(A)、
図5(B)において“L”は誘導性結合、“C”は容量性結合をそれぞれ表している。
【0024】
本実施形態の誘電体導波管フィルタ101は、共振器11A,11B,11C,11Dが信号伝搬の主結合路に沿って配置され、主結合部MC12は誘導性結合部であり、主結合部MC23は容量性結合部であり、主結合部MC34は誘導性結合部である。つまり、主結合部は誘導性結合部と容量性結合部とで構成され、誘導性結合部と容量性結合部とが主結合路に沿って交互に繰り返し配置されている。
【0025】
また、本実施形態の誘電体導波管フィルタ101は、外部との間で信号が入出力される共振器11Aと当該共振器11Aに結合する共振器11Bとの間の主結合部は誘導性結合部である。同様に、外部との間で信号が入出力される共振器11Dと当該共振器11Dに結合する共振器11Cとの間の主結合部は誘導性結合部である。
【0026】
また、本実施形態の誘電体導波管フィルタ101は、共振器11Aと共振器11Dとは上記主結合路以外に副結合路に沿っても配置されている。つまり、共振器11Aと共振器11Dとの間に副結合部SC14が形成されている。この副結合部SC14は誘導性結合部であり、副結合部SC14の結合は主結合部MC12,MC23,MC34の結合に比べて弱い。ここで、誘導性結合を正の結合係数で表し、容量性結合を負の結合係数で表現する方法もあるので、その表現方法に従えば、「副結合部SC14の結合係数の絶対値は主結合部MC12,MC23,MC34の結合係数の絶対値に比べて小さい。」と言うこともできる。
【0027】
図6(A)、
図6(B)は、誘電体導波管フィルタ101の反射特性と通過特性の周波数特性を示す図である。
図6(B)は
図6(A)より周波数軸の範囲が広い。
【0028】
図6(A)、
図6(B)において、S11は反射特性、S21は通過特性である。本実施形態の誘電体導波管フィルタ101は、
図6(A)に現れているように、3.3GHz〜3.4GHzに通過域を有し、3.17GHzに低域側の減衰極を有し、3.48GHzに高域側の減衰極を有する。
【0029】
このように有極特性が現れる理由は次のとおりである。
【0030】
まず、共振器の透過位相は、共振器の共振周波数より低周波数側では位相が90°遅れ、共振周波数より高周波数側では位相が90°進む。そして、誘導性結合と容量性結合とでは位相が反転するため、誘導性結合と容量性結合とを組み合わせると、主結合路を伝わる信号と副結合路を伝わる信号とが逆位相かつ同振幅となる周波数が存在する。この周波数に減衰極が現れる。本実施形態の誘電体導波管フィルタ101では、第1共振器11Aと第2共振器11Bとが誘導性結合し、第2共振器11Bと第3共振器11Cとが容量性結合し、第3共振器11Cと第4共振器11Dとが誘導性結合し、第2共振器11Bと第3共振器11Cを飛び越して、第1共振器11Aと第4共振器11Dとが副結合するので(偶数段の飛び越し結合が行われるので)、第1共振器11Aから第4共振器11Dへの主結合路での位相と、第1共振器11Aから第4共振器11Dへの副結合路での位相とは、通過域の低域で反転し、高域でも反転する。つまり通過域の低域と高域の両方に減衰極が現れる。
【0031】
また、主結合路に沿って容量性結合部が連続していないので、低次モードの励振が生じ難い。そのため、通過域より低周波数帯域に生じるスプリアス応答(
図6(B)において楕円で囲む部
分)は非常に小さい。
【0032】
このように低次のスプリアス応答が抑制される理由は次のとおりである。
【0033】
図7(A)、
図7(B)は、隣接する二つの共振器R1,R2を備える共振系の模式図である。
図7(A)はこの共振系の斜視図、
図7(B)はその正面図である。
図7(B)においては、TE101、TE102、TE103の各モードの電界波を重ねて表している。このように、二つの共振器による共振系において、周波数が低い順にTE101、TE102、TE103・・・、といった伝搬モードTE10に関する共振モードが存在する。このうち、TE101モードは共振器R1と共振器R2とで同相関係にあり、共振モードTE102は共振器R1と共振器R2とで逆相関係にあり、TE103モードは共振器R1と共振器R2とで同相関係にある。ここで、TE101モード(同相)とTE102モード(逆相)との間での結合を誘導性結合とすれば、TE102モード(逆相)とTE103モード(同相)との間での結合は、誘導性結合に対して位相が反転した関係の結合であるので、容量性結合である。
【0034】
このように、容量性結合は、高次モードであるTE102モードと、高次モードであるTE103モードとの結合であるので、スプリアスとしての低次の共振モードであるTE101モードが通過帯域より低周波数側に現れる。一方、誘導性結合は、基本モードであるTE101モードと、TE102モードとの結合であるので、(それ以上低次のモードは存在しないので、)通過帯域より低周波数側にスプリアスは発生しない。そのため、主結合路に沿って、容量性結合部を誘導性結合部で挟むように配置することで、上記容量性結合を起因とする低次のスプリアス応答が抑制される。
【0035】
次に、容量性結合の強さの設定構造について示す。
図8は、
図2(B)に示した非貫通ポスト3を簡素化した非貫通ポストによる容量性結合部の構造を示す透過斜視図である。ここで、誘電体ブロック1の下面からの非貫通ポスト3の突出高さ(深さ)をD、幅をW、厚みをTで表している。ここで、W=6.6mm、T=1.0mmである。また、各共振器の高さHは5
.5mm、X方向の幅XWは13mm、Y方向の幅YWは13mmである。
【0036】
図9は、横軸に非貫通ポスト3の深さをとり、縦軸に共振周波数をとったときの、各共振モードの特性を示す図である。このように、非貫通孔が深くなる程、つまり、容量性結合窓の間隙が狭くなる程、TE101モードの周波数とTE103モードの周波数が下がるが、TE102モードは影響を受けない。各モードの周波数間隔は結合の強さに対応するので、非貫通ポストの深さで結合を調節できる。したがって、容量性結合になるTE102モードとTE103モードの周波数を通過帯域(3.5GHz)近傍の周波数に定めることで、目標仕様のフィルタ特性に適した容量性結合が得られる。
【0037】
なお、
図8では、
図2(B)に示した非貫通ポスト3を簡素化した単一の非貫通ポストによる容量性結合部の構造を示したが、
図2(B)に示したように、誘電体ブロックの上下面から非貫通ポストを形成する場合にも、同様に、その二つの非貫通ポスト間の間隙Gによって
図9に示したものと同様の特性が得られる。
【0038】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1の実施形態で示したものとは共振器の段数等が異なる誘電体導波管フィルタについて示す。
【0039】
図10(A)は第2の実施形態に係る誘電体導波管フィルタ102の外観斜視図であり、
図10(B)は誘電体導波管フィルタ102の内部構造を示す透視斜視図である。
【0040】
この誘電体導波管フィルタ102は直方体状の誘電体ブロック1に構成されている。誘電体ブロック1の底面には入出力用パッド5A,5Bが形成されている。誘電体ブロック1には、入出力用パッド5A,5Bから誘電体ブロック1の内部へ突出する入出力用ポスト4A,4Bが形成されている。また、誘電体ブロック1には、その上面から下面まで貫通する貫通ポスト2A,2B,2C,2D,2E,2Fが形成されている。また、誘電体ブロック1には、その下面から所定深さまで掘られた非貫通ポスト3A,3B,3Cが形成されている。さらに、誘電体ブロック1には、その下面から所定深さまで掘られた共振周波数調整用ポスト6B,6C,6F,6Gが形成されている。
【0041】
誘電体ブロック1の外面、各貫通ポスト、及び各非貫通ポストに内面には導体膜が形成されている。上記入出力用パッド5A,5Bの周囲はグランド導体として用いる導体膜から分離されている。
【0042】
図10(B)において二点鎖線は、誘電体ブロック1に構成される共振器の区分を示す仮想上の線である。誘電体導波管フィルタ102は8つの共振器11A〜11Hを備える。これら共振器11A〜11HはいずれもTE101モードを基本モードとする共振器である。
【0043】
図1(B)に示した誘電体導波管フィルタ101とは異なり、本実施形態の誘電体導波管フィルタ102では入出力用パッド5A,5Bは円形である。また、貫通ポスト2A,2B,2C,2D,2E,2Fはいずれも横断面長円形の孔であり、所定幅の導体壁を形成する。これら貫通ポスト2A,2B,2C,2D,2E,2Fの形成部は誘導性結合部を構成し、非貫通ポスト3A,3B,3Cの形成部は容量性結合部を構成する。共振周波数調整用ポスト6B,6C,6F,6Gは共振器11B,11C,11F,11Gの共振周波数を微調整するために設けられている。これら共振周波数調整用ポスト6B,6C,6F,6Gの高さ(深さ)を定めることによって共振器11B,11C,11F,11Gの共振周波数をそれぞれ定める。
【0044】
図11(A)、
図11(B)は本実施形態の誘電体導波管フィルタ102を構成する8つの共振器の結合構造を示す図である。
図11(A)、
図11(B)において、共振器11Aは1段目(初段)の共振器であり、共振器11Hは8段目(終段)の共振器である。この共振器11A−11Hの間に2段目から7段目の共振器11B,11C,11D,11E,11F,11Gが順に配置されている。
【0045】
図11(A)、
図11(B)において二重線で示す経路は主結合路であり、破線は副結合路である。また、
図11(A)、
図11(B)において“L”は誘導性結合、“C”は容量性結合をそれぞれ表している。
【0046】
本実施形態の誘電体導波管フィルタ102は、共振器11A〜11Hが信号伝搬の主結合路に沿って配置されていて、主結合部は誘導性結合部と容量性結合部とで構成され、誘導性結合部と容量性結合部とが主結合路に沿って交互に繰り返し配置されている。
【0047】
また、本実施形態の誘電体導波管フィルタ102では、外部との間で信号が入出力される共振器11Aと当該共振器11Aに結合する共振器11Bとの間の主結合部は誘導性結合部である。同様に、外部との間で信号が入出力される共振器11Hと当該共振器11Hに結合する共振器11Gとの間の主結合部は誘導性結合部である。
【0048】
また、本実施形態の誘電体導波管フィルタ102では、共振器11Aと共振器11Dとは、誘導性結合部である副結合部で副結合(飛び越し結合)されている。また、共振器11Cと共振器11Fとは、誘導性結合部である副結合部で副結合(飛び越し結合)されている。さらに、共振器11Eと共振器11Hとは、誘導性結合部である副結合部で副結合(飛び越し結合)されている。各副結合部の結合は主結合部の結合に比べて弱い。
【0049】
図12は、誘電体導波管フィルタ102の反射特性と通過特性の周波数特性を示す図である。
図12において、S11は反射特性、S21は通過特
性である。本実施形態の誘電体導波管フィルタ102は、3.4GHz〜3.6GHzに通過域を有し、3.34GHz,3.36GHzに低域側の減衰極を有し、3.63GHz,3.66GHzに高域側の減衰極を有する。
【0050】
共振器11A〜11Dは本発明に係る第1共振器から第4共振器にそれぞれ相当する。また、共振器11C〜11Fも本発明に係る第1共振器から第4共振器にそれぞれ相当する。さらに、共振器11E〜11Hも本発明に係る第1共振器から第4共振器にそれぞれ相当する。
【0051】
このように、4つの共振器の組が複数組構成されていてもよい。第1の実施形態の誘電体導波管フィルタ101と同様に、本実施形態の誘電体導波管フィルタ102についても、主結合部及び前記副結合部を構成する複数の結合部のうち、容量性結合部の数は誘導性結合部の数より少ない。そのため、容量性結合に起因する低次モードの励振が顕著に現れることなく、通過帯域より低域に現れるスプリアス応答が抑制される。
【0052】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第2の実施形態で示した誘電体導波管フィルタとは誘導性結合部及び容量性結合部の構造が異なる誘電体導波管フィルタの幾つかの例について示す。
【0053】
図13(A)は第3の実施形態に係る誘電体導波管フィルタ103Aの外観斜視図であり、
図13(B)は誘電体導波管フィルタ103Aの内部構造を示す透視斜視図である。
【0054】
誘電体導波管フィルタ103Aは直方体状の誘電体ブロック1に構成されている。誘電体ブロック1には、その上面から下面まで貫通する貫通ポスト2AD,2BE,2CFが形成されている。貫通ポスト2ADは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Aと貫通ポスト2Dとを連結して一体化したものである。また、貫通ポスト2BEは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Bと貫通ポスト2Eとを連結して一体化したものである。さらに、貫通ポスト2CFは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Cと貫通ポスト2Fとを連結して一体化したものである。いずれの貫通ポストも平面視でT字状である。その他の各部の構成は第2の実施形態で示した誘電体導波管フィルタ102と同じである。
【0055】
図13(A)、
図13(B)に示したように、主結合部の誘導性結合部と副結合部の誘導性結合部とが一体のポストで構成されていてもよい。
【0056】
図14(A)は第3の実施形態に係る別の誘電体導波管フィルタ103Bの外観斜視図であり、
図14(B)は誘電体導波管フィルタ103Bの内部構造を示す透視斜視図である。
【0057】
誘電体導波管フィルタ103Bは直方体状の誘電体ブロック1に構成されている。誘電体ブロック1には、その上面から下面まで貫通する貫通ポスト2AD,2BE,2CFが形成されている。
図13(B)に示した誘電体導波管フィルタ103Aと同様に、貫通ポスト2ADは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Aと貫通ポスト2Dとを連結して一体化したものである。また、貫通ポスト2BEは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Bと貫通ポスト2Eとを連結して一体化したものである。さらに、貫通ポスト2CFは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Cと貫通ポスト2Fとを連結して一体化したものである。貫通ポスト2AD,2CFは平面視でL字状であり、貫通ポスト2BEは平面視でT字状である。その他の各部の構成は第2の実施形態で示した誘電体導波管フィルタ102と同じである。
【0058】
図13(A),
図13(B)、
図14(A)、
図14(B)に示したように、誘導性結合部を構成する貫通ポストは、複数の結合部に亘って連続していてもよい。
【0059】
図15(A)は第3の実施形態に係る更に別の誘電体導波管フィルタ103Cの外観斜視図であり、
図15(B)は誘電体導波管フィルタ103Cの内部構造を示す透視斜視図である。
【0060】
誘電体導波管フィルタ103Cは直方体状の誘電体ブロック1に構成されている。誘電体ブロック1には、その上面から下面まで貫通する貫通ポスト2A,2BE,2CF,2Dが形成されている。また、誘電体ブロック1には、その下面から所定深さまで掘られた非貫通ポスト3A,3B,3Cが形成されている。貫通ポスト2Aと非貫通ポスト3Aとは連結されて一体化されている。また、貫通ポスト2BEと非貫通ポスト3Bは連結されて一体化されている。貫通ポスト2CFは
図10(B)に示した誘電体導波管フィルタ102が備える貫通ポスト2Cと貫通ポスト2Fとを連結して一体化したものである。
【0061】
図15(A)、
図15(B)に示したように、誘導性結合部を構成する貫通ポストと容量性結合部を構成する非貫通ポストが連続していてもよい。また、このように、主結合部の容量性結合部と、副結合部の誘導性結合部とが一体のポストで構成されていてもよい。
【0062】
なお、同様にして、容量性結合の副結合部を備える場合に、主結合部の誘導性結合部と、副結合部の容量性結合部とが一体のポストで構成されていてもよい。また、主結合部の容量性結合部と、副結合部の容量
性結合部とが一体のポストで構成されていてもよい。
【0063】
なお、上記説明では、主結合部と副結合部とが一体の共通ポストで構成されることについて述べたが、例えば
図15(A)、
図15(B)に示したように、主結合部の誘導性結合部と、主結合部の容量性結合部とが一体のポストで構成されていてもよい。同様に、主結合部の容量性結合部と、主結合部の容量性結合部とが一体のポストで構成されていてもよい。
【0064】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、飛び越し結合部分の構造が、これまでに示したものとは異なる誘電体導波管フィルタの例について示す。
【0065】
図16(A)、
図16(B)は第4の実施形態に係る誘電体導波管フィルタ104Aを構成する6つの共振器の結合構造を示す図である。
図16(A)、
図16(B)において、共振器11Aは1段目(初段)の共振器であり、共振器11Fは6段目(終段)の共振器である。この共振器11A−11Fの間に2段目から5段目の共振器11B,11C,11D,11Eが順に配置されている。
【0066】
図16(A)、
図16(B)において二重線で示す経路は主結合路であり、破線は副結合路である。また、
図16(A)、
図16(B)において“L”は誘導性結合、“C”は容量性結合をそれぞれ表している。
【0067】
本実施形態の誘電体導波管フィルタ104Aは、共振器11A〜11Fが信号伝搬の主結合路に沿って配置されていて、主結合部は誘導性結合部と容量性結合部とで構成され、誘導性結合部と容量性結合部とが主結合路に沿って交互に繰り返し配置されている。
【0068】
また、本実施形態の誘電体導波管フィルタ104Aでは、共振器11Bと共振器11Eとは、誘導性結合部である副結合部で副結合(飛び越し結合)されている。これまでに示した各実施形態では、副結合で結合される二つの共振器同士は、主結合路では、誘導性結合⇒容量性結合⇒誘導性結合の順に結合されるが、
図16(A)、
図16(B)に示す本実施形態の誘電体導波管フィルタ104Aにおいては、副結合で結合される共振器11Bと共振器11Eとは、主結合路では、容量性結合⇒誘導性結合⇒容量性結合の順に結合される。そして、共振器11Bと共振器11Eとは、副結合路では誘導性結合される。
【0069】
このように、主結合路で容量性結合⇒誘導性結合⇒容量性結合の順に結合される二つの共振器同士を副結合させてもよい。
【0070】
図17(A)、
図17(B)は第4の実施形態に係る別の誘電体導波管フィルタ104Bを構成する6つの共振器の結合構造を示す図である。
図17(A)、
図17(B)において、共振器11Aは1段目(初段)の共振器であり、共振器11Fは6段目(終段)の共振器である。この共振器11A−11Fの間に2段目から5段目の共振器11B,11C,11D,11Eが順に配置されている。
【0071】
図17(A)、
図17(B)において二重線で示す経路は主結合路である。また、
図17(A)、
図17(B)において“L”は誘導性結合、“C”は容量性結合をそれぞれ表している。この誘電体導波管フィルタ104Bは副結合路が無い。つまり飛び越し結合が無い。
【0072】
本実施形態の誘電体導波管フィルタ104Bは、共振器11A−11Fが信号伝搬の主結合路に沿って配置されていて、主結合部は誘導性結合部と容量性結合部とで構成され、誘導性結合部と容量性結合部とが主結合路に沿って交互に繰り返し配置されている。これまでに示した実施形態では、入出力段の共振器と、それに対して主結合する共振器とは誘導性結合するものであったが、この誘電体導波管フィルタ104Bでは、1段目(初段)の共振器11Aと2段目の共振器11Bとは容量性結合していて、6段目(終段)の共振器11Fと5段目の共振器11Eとは容量性結合される。
【0073】
なお、2段目の共振器11Bと5段目の共振器11Eとは容量性で副結合(飛び越し結合)させない方が好ましい。ここを容量性結合させると、共振器11A→11B→11E→11Fの経路で容量性結合が3段連続するからである。このことを言い換えると、
図16(A)、
図16(B)に示したように、複数の主結合部のうち、外部との間で信号が入出力される共振器と当該共振器に結合する共振器との間の主結合部が誘導性結合部であることが好ましい。この二つの共振器間(
図16(A)、
図16(B)に示した例では共振器11Bと共振器11E)を容量性で副結合させても、容量性結合が3段連続することがない。したがって、副結合部を設けることで減衰極を容易に形成できる。
【0074】
このように、入出力段の共振器と、それに対して主結合する共振器とが容量性結合する構造であってもよい。
【0075】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、基板に構成された誘電体導波管フィルタの例について示す。
図18(A)は第5の実施形態に係る誘電体導波管フィルタ105の外観斜視図であり、
図18(B)は誘電体導波管フィルタ105の内部構造を示す透視斜視図である。
【0076】
この誘電体導波管フィルタ105は、直方体状の誘電体ブロックに構成されているのではなく、基板9の一部に構成されている。基板9は、誘電体板(絶縁体板)、その上面に形成された導体膜7、及びその下面に形成された導体膜8を備える。この基板9は例えばガラス・エポキシ(FR−4)基板である。
【0077】
本実施形態では、
図1(A)に示した誘電体ブロック1の外側面に相当する位置に、複数の貫通ポスト(ビア導体)2Vが配列されている。これら貫通ポスト2Vの内面には導体膜が形成されていて、それら導体膜は導体膜7,8に導通している。この構造によって、誘電体ブロック1の外側面と等価的な壁面が構成される。
【0078】
図18(A)、
図18(B)において、貫通ポスト2Vで囲まれる内部の構造は、
図1(A)、
図1(B)に示したものと同様である。
【0079】
このようにして、基板集積導波管(SIW:Substrate IntegratedWaveguide)やポスト壁導波管(PWW:Post-Wall Waveguide)で誘電体導波管フィルタを構成してもよい。
【0080】
等価的な壁面を構成する上記貫通ポスト2Vの隣接間隔は、配列された貫通ポスト2Vの遮断周波数がフィルタの通過帯域よりも高い関係にある。そのためには次に示すように、貫通ポスト2Vの隣接間隔を定めればよい。
【0082】
ここで、
f
c:遮断周波数
a:貫通ポスト2Vの孔−孔間の間隔
b:上下の導体膜7−8間の間隔
C
o:真空中の光速
ε
r:基板の誘電体部(絶縁体部)の比誘電率
m,n:導波管モードの次数
である。
【0083】
上記遮断周波数は電磁波(導波管モード:TEモード)の通りやすさの尺度であり、遮断周波数以下の周波数の電磁波は遮断されて通過しない。配列された貫通ポスト2V同士の間隔から電磁波が漏れると損失が増大するので、貫通ポスト2V同士の間隔を狭くして、遮断周波数をフィルタの通過帯域より高くすることが重要である。
【0084】
通常、導波管では基本モード(最低次数のTE10モード)を使うので、上式(1)において、m=1、n=0とすることで、次のように簡単に表せる。
【0086】
さらに、上記で書いたように遮断周波数f
cは、すくなくともフィルタの中心周波数f より高くないと損失が増えてしまうので、
【0088】
の関係となる。例えば、フィルタの中心周波数が高くなると、その分、遮断周波数を高くしなければならず、貫通ポスト2Vの孔−孔間の間隔を狭くする必要がある。
【0089】
なお、貫通ポスト2Vの内面は導体で埋まった中実構造であってもよい。また、貫通ポスト2Vの断面形状は、円形状でなくてもよく、オーバル形状でも、角丸長方形でもよい。さらに、入出力構造は、基板9の下面や上面に限らず、複数の貫通ポスト2Vによって構成される等価的な側壁に設けられていてもよい。
【0090】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、誘電体導波管フィルタが適用される携帯電話基地局の例について示す。
【0091】
図19は携帯電話基地局のブロック図である。携帯電話基地局の回路には、FPGA121、DAコンバータ122、帯域通過フィルタ123、126,131、シングルミキサー125、局部発振器124、アッテネータ127、アンプ128、パワーアンプ129、検波器130、及びアンテナ132を備える。
【0092】
上記FPGA121は、変調済みのデジタル信号を発生する。DAコンバータ122は変調済みのデジタル信号をアナログ信号に変換する。帯域通過フィルタ123はベースバンドの周波数帯域の信号を通過させ、それ以外の周波数帯の信号を除去する。シングルミキサー125は、帯域通過フィルタ123の出力信号と局部発振器124の発振信号とを混合してアップコンバートする。帯域通過フィルタ126はアップコンバートにより生じる不要周波数帯を除去する。アッテネータ127は送信波の強度を調整し、アンプ128は送信波を前段増幅する。パワーアンプ129は送信波を電力増幅して、帯域通過フィルタ131を介してアンテナ132から送信波を送信する。帯域通過フィルタ131は送信周波数帯の送信波を通過させる。検波器130は送信電力を検出する。
【0093】
このような携帯電話基地局において、送信波の周波数帯域を通過させる帯域通過フィルタ126,131に、第1の実施形態から第4の実施形態で示した誘電体導波管フィルタを用いることができる。
【0094】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。