特許第6927455号(P6927455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927455
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
   C09K5/14 E
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-507239(P2021-507239)
(86)(22)【出願日】2020年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2020010568
(87)【国際公開番号】WO2020189445
(87)【国際公開日】20200924
【審査請求日】2021年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2019-52707(P2019-52707)
(32)【優先日】2019年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直輝
(72)【発明者】
【氏名】高本 真
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−185807(JP,A)
【文献】 特開2018−95682(JP,A)
【文献】 特開2017−171844(JP,A)
【文献】 特開2017−130358(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/006854(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/138255(WO,A1)
【文献】 特開2017−25186(JP,A)
【文献】 特表2005−509293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
H01L23/36
H01L23/373
H01L21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と、
バインダー樹脂と、
モノマーと、
硬化剤と、
を含み、
前記硬化剤は、フェノール樹脂系硬化剤またはイミダゾール系硬化剤を含み、
熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する熱伝導性組成物であって、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aに従って測定される熱伝導率λ(W/mK)と、下記の手順Bに従って測定される25℃の貯蔵弾性率E(GPa)とが、下記の式(I)を満たす、熱伝導性組成物。
0.35≦λ/(E) ・・式(I)
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体を得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(Pa)を測定する。
【請求項2】
請求項1に記載の熱伝導性組成物であって、
下記の手順により得られた熱処理体中の樹脂含有量が、前記熱処理体100質量%に対して、10質量%以上30質量%以下である、
熱伝導性組成物。
(手順)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理して、熱処理体を得る。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属粒子は、銀、金、および銅からなる群から選択される一種以上の金属材料からなる粒子を含む、熱伝導性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびアリル樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、熱伝導性組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記モノマーは、グリコールモノマー、アクリルモノマー、エポキシモノマー、およびマレイミドモノマーからなる群から選択される一種以上を含む、熱伝導性組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
ラジカル重合開始剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
シランカップリング剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
可塑剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属粒子は、金属コート樹脂粒子および金属からなる粒子を含む、熱伝導性組成物。
【請求項10】
請求項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子の比重が、2以上10以下である、熱伝導性組成物。
【請求項11】
請求項または10に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子の平均粒子径D50が、0.5μm以上20μm以下である、熱伝導性組成物。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子の含有量は、金属粒子100質量%中、1質量%以上50質量%以下である、熱伝導性組成物。
【請求項13】
請求項12のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子中の樹脂粒子を構成する樹脂材料が、シリコーン、アクリル、フェノール、ポリスチレン、メラミン、ポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる一または二以上を含む、熱伝導性組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
溶剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記熱伝導率λ(W/mK)が、150W/mK以下である、熱伝導性組成物。
【請求項16】
基材と、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層を介して前記基材上に搭載された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、熱伝導性組成物において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1、2に記載の技術が知られている。
特許文献1には、(メタ)アクリル酸エステル化合物、ラジカル開始剤、銀微粒子、銀粉および溶剤を含む半導体接着用熱硬化型樹脂組成物が記載されている(特許文献1の請求項1)。200℃加熱した銀微粒子によって、半導体素子と金属基板との接合が実現できるとの記載がある(段落0001、0007等)。
【0003】
一方、特許文献2には、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、銀粉を含む樹脂ペースト組成物が記載されている(特許文献2の表1)。樹脂ペースト組成物を150℃で硬化し、エポキシ樹脂等の硬化物によって、半導体素子と支持部材とを接着できるとの記載がある(段落0038等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−74132号公報
【特許文献2】特開2000−239616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1、2に記載の組成物において、サーマルサイクル特性および放熱性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はさらに検討したところ、熱伝導性組成物を半導体素子と支持基材とを接着するために用いた場合、熱伝導性組成物の熱伝導率と貯蔵弾性率とを適切に制御することで、半導体装置のサーマルサイクル特性を向上できることを見出した。
【0007】
しかしながら、加熱処理した銀粒子の接合によって半導体素子と支持基材とを接着するタイプ(以下、シンタリングタイプという。)は、熱伝導率を高められるものの、反対に貯蔵弾性率が高くなってしまし、サーマルサイクル特性が低下する恐れがある。
一方、硬化処理したエポキシ樹脂などの硬化成分によって半導体素子と支持基材とを接着するタイプ(以下、バインダータイプという。)は、貯蔵弾性率を低く抑えられるものの、反対に熱伝導率が低下し、放熱性が低下する恐れがある。
すなわち、これまでのシンタリングタイプやバインダータイプは、高熱伝導率と低貯蔵弾性率とがトレードオフの関係を示し、熱伝導率の向上および貯蔵弾性率の低減の両立が十分に検討されずにいた。
【0008】
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、シンタリングタイプとバインダータイプとを併用するとともに、金属粒子を適切に選択することによって、熱伝導率の向上しつつも、貯蔵弾性率を低減できること、そして、熱伝導率をλ(W/mK)とし、貯蔵弾性率をE(GPa)としたときの、λ/(E)を指標として活用することで、安定的にサーマルサイクル特性を評価できることが判明した。
さらに検討を進めた結果、かかる指標であるλ/(E)の数値範囲を適切に選択し、このような熱伝導性組成物を半導体素子と支持基材とを接着に使用することで、半導体装置のサーマルサイクル特性および放熱性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、
金属粒子と、
バインダー樹脂と、
モノマーと、
硬化剤と、
を含み、
前記硬化剤は、フェノール樹脂系硬化剤またはイミダゾール系硬化剤を含み、
熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する熱伝導性組成物であって、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aに従って測定される熱伝導率λ(W/mK)と、下記の手順Bに従って測定される25℃の貯蔵弾性率E(GPa)とが、下記の式(I)を満たす、熱伝導性組成物が提供される。
0.35≦λ/(E) ・・式(I)
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体を得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(MPa)を測定する。
【0010】
また本発明によれば、
基材と、
上記の熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層を介して前記基材上に搭載された半導体素子と、
を備える、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーマルサイクル特性および放熱性に優れた熱伝導性組成物、およびそれを用いた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0013】
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0015】
本実施形態の熱伝導性組成物の概要を説明する。
本実施形態の熱伝導性組成物は、金属粒子と、バインダー樹脂と、モノマーと、を含み、熱処理により金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものである。
当該熱伝導性組成物において、下記の手順Aに従って測定される熱伝導率をλ(W/mK)とし、下記の手順Bに従って測定される25℃の貯蔵弾性率をE(GPa)としたとき、λおよびEが下記の式(I)を満たすものである。
0.35≦λ/(E) ・・式(I)
【0016】
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体を得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(MPa)を測定する。
【0017】
本発明者の知見によれば、上述のシンタリングタイプとバインダータイプとを併用するとともに、金属粒子を適切に選択することによって、熱伝導率の向上しつつも、貯蔵弾性率を低減できることが分かった。詳細なメカニズムは定かではないが、熱伝導性組成物を硬化してなる接着層は、金属粒子の粒子連結構造(シンタリング構造)が形成されているために、バインダータイプよりも熱伝導率が高く、バインダー樹脂などの樹脂成分が残存しているために、シンタリングタイプよりも貯蔵弾性率が低くなる、と考えられる。さらに、金属粒子として、樹脂粒子の表面に金属が被覆された金属コート樹脂粒子を用いることで、金属粒子の燒結性の低下を抑制しつつも、貯蔵弾性率を適切に低減させることができると、考えられる。
なお、この接着層は、金属粒子の接合やバインダー樹脂によって、半導体素子と支持基材との接着可能であるため、良好な密着性を実現できる。
【0018】
さらに、本発明者の知見によれば、熱伝導率をλ(W/mK)とし、貯蔵弾性率をE(GPa)としたときの、λ/(E)を指標として活用することで、安定的にサーマルサイクル特性を評価できることが判明した。さらに検討を進めた結果、かかる指標であるλ/(E)を下限値以上とすることで、このような熱伝導性組成物を半導体素子と支持基材とを接着に使用することで、半導体装置のサーマルサイクル特性を向上できることが見出された。
【0019】
上記λ/(E)の下限は、0.35以上、好ましくは0.37以上、より好ましくは0.40以上である。これにより、サーマルサイクル特性を向上できる。一方、上記λ/(E)の上限は、例えば、3.0以下、2.0以下、1.5以下でもよい。
【0020】
また、25℃、厚み方向における、上記熱伝導性組成物の熱処理体の熱伝導率の下限は、例えば、10W/mK以上、好ましくは15W/mK以上、より好ましくは20W/mK以上である。これにより、上記熱伝導性組成物を用いた接着層の高放熱性を実現できる。一方、上記熱伝導性組成物の熱処理体の熱伝導率の上限は、例えば、200W/mK以下でもよく、150W/mK以下でもよい。
【0021】
また、貯蔵弾性率E(GPa)の上限は、例えば、15.0GPa以下、好ましくは8.5GPa以下、より好ましくは7.0GPa以下である。これにより、サーマルサイクル特性をさらに高めることが可能である。上記貯蔵弾性率E(GPa)の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1GPa以上でもよく、0.5GPa以上でもよい。
【0022】
また、次の手順により得られた熱処理体中の樹脂含有量が、熱処理体100質量%に対して、例えば、10質量%以上30質量%以下、好ましくは12質量%以上29質量%以下である。このような数値範囲とすることで、貯蔵弾性率および熱伝導率のバランスを図ることができる。
(手順)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理して、熱処理体を得る。
樹脂含有量は、得られた熱処理体の重量を測定し、その重量から含まれる銀の重量を引くことで算出できる。
樹脂含有量の対象となる樹脂分には、バインダー樹脂由来の樹脂分、金属コート樹脂粒子由来の樹脂分が挙げられ、これらのいずれか一方または両方が含まれていてよい。
【0023】
本実施形態では、たとえば熱伝導性組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、熱伝導性組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記λ/(E)、λおよび樹脂の残存量を制御することが可能である。これらの中でも、たとえばシンタリングタイプの組成系とバインダータイプの組成系とを併用すること、金属コート樹脂粒子の使用やその粒子径・含有量など金属粒子を適切に選択すること等が、上記λ/(E)、λおよび樹脂の残存量を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0024】
本実施形態の熱伝導性組成物は、様々な用途に用いることができるが、半導体素子などの電子部品の放熱性と接着性が要求される用途に適用できる。具体的には、熱伝導性組成物は、半導体素子などの電子部品とリードフレームなどの金属部材との間に介在して、これらを接着するための接着層を形成するために用いることができる。かかる接着層は、熱伝導性組成物の熱処理体で構成される。
【0025】
本実施形態によれば、上記熱伝導性組成物の熱処理体で構成された接着層を用いることで、半導体装置におけるサーマルサイクル特性を向上できる。また、半導体素子の高放熱性を実現できる。その高放熱性を安定的に実現できる。
【0026】
以下、本実施形態の熱伝導性組成物の各成分について詳述する。
【0027】
本実施形態の熱伝導性組成物は、上記金属粒子とともに、バインダー樹脂およびモノマーと、を含むものである。
詳細なメカニズムは定かではないが、加熱によって、モノマーが揮発して組成物の体積が収縮すると、金属粒子同士が近づく方向に応力がかかり、金属粒子同士の界面が消失し、金属粒子の連結構造が形成される、と考えられる。そして、このような金属粒子のシンタリングの際、バインダー樹脂、あるいはバインダー樹脂と硬化剤やモノマー等との樹脂硬化物が、連結構造の内部または外周に残存すると、考えられる。また、硬化反応によって、複数の金属粒子が凝集するような力が生じることも、考えられる。
【0028】
上記熱伝導性組成物を硬化することで、金属粒子の粒子連結構造と、バインダー樹脂、その硬化物、金属コート樹脂粒子中の樹脂粒子等で構成される樹脂成分と、を含む接着層を実現できる。
【0029】
(金属粒子)
本実施形態の熱伝導性組成物は、金属粒子を含む。この金属粒子は、熱処理によって、シンタリングを起こし、粒子連結構造(シンタリング構造)を形成できる。
【0030】
上記金属粒子は、金属コート樹脂粒子、金属からなる粒子等を用いることができる。上記金属粒子は、金属コート樹脂粒子および金属からなる粒子のいずれか一方を含むことができるが、両者を含むことがより好ましい。
【0031】
上記金属コート樹脂粒子を用いることで、金属粒子の燒結性の低下を抑制しつつも、貯蔵弾性率を適切に低減させることが可能である。上記金属からなる粒子を用いることで、金属粒子の燒結性を向上させつつも、熱伝導率を適切に高めることが可能である。
【0032】
上記金属コート樹脂粒子は、樹脂粒子と樹脂粒子の表面に形成された金属とで構成される。すなわち、上記金属コート樹脂粒子は、樹脂粒子の表面を金属層が被覆した粒子でもよい。
【0033】
本明細書中、樹脂粒子の表面を金属層が被覆したとは、樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を金属層が覆っている状態を指し、樹脂粒子の表面の全面を覆っている態様に限られず、たとえば、金属層が、表面を部分的に覆っている態様や特定の断面から見たときの表面全面を覆っている態様を含んでもよい。
この中でも、熱伝導性の観点から、金属層が、特定の断面から見たときの表面全面を覆っていることが好ましく、粒子の表面全面を覆っていることがさらに好ましい。
【0034】
上記金属コート樹脂粒子中の金属は、例えば、銀、金、ニッケル、スズからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。あるいはこれらの金属を主成分とする合金を用いてもよい。この中でも、シンタリング性や熱伝導性の観点から、銀を用いることができる。
【0035】
上記金属コート樹脂粒子中の樹脂粒子(コア樹脂粒子)を構成する樹脂材料は、例えば、シリコーン、アクリル、フェノール、ポリスチレン、メラミン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらを用いたポリマーで樹脂粒子を構成できる。ポリマーは、ホモポリマーでも、これらを主成分とする共重合体でもよい。
弾性特性や耐熱性の観点から、上記樹脂粒子は、シリコーン樹脂粒子やアクリル樹脂粒子を用いてもよい。
【0036】
上記シリコーン樹脂粒子は、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成される粒子でもよく、このオルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂粒子でもよい。
【0037】
また、シリコーン樹脂粒子の構造中に各種官能基を導入することが可能であり、導入できる官能基としてはエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
なお、本実施形態では、特性を損なわない範囲で他の低応力改質剤をこのシリコーン樹脂粒子に添加しても構わない。併用できる他の低応力改質剤としては、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、液状オルガノポリシロキサン、液状ポリブタジエン等の液状合成ゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
上記樹脂粒子の形状は、特に限定されず、球状でもよいが、球状以外の異形状、例えば扁平状、板状、針状でもよい。金属コート樹脂粒子の形状を球状に形成する場合は、使用する樹脂粒子の形状も球状であることが好ましい。なお、球状とは、上述のように、完全な真球に限られず、楕円のような球形に近い形状や、表面に若干の凹凸がある形状等も含まれる。
【0039】
上記金属コート樹脂粒子の比重の下限は、たとえば2以上であり、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。これにより、接着層としての熱伝導性や導電性をさらに向上させることができる。また、上記金属コート樹脂粒子の比重の上限は、たとえば10以下であり、9以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましい。これにより、粒子の分散性を向上させることができる。上記比重は、金属コート樹脂粒子と金属からなる粒子とを含む金属粒子の比重であってもよい。
【0040】
上記金属コート樹脂粒子は、単分散系粒子でもよく、多分散系粒子でもよい。また、上記金属コート樹脂粒子は、粒子径頻度分布において、1つのピークを有してもよく、2つ以上の複数のピークを有していてもよい。
【0041】
上記金属からなる粒子は、1種または2種以上の金属材料からなる粒子であればよく、コア部分と表層部分とが、同一または異種の金属材料で構成されてもよい。金属材料は、例えば、銀、金、および銅からなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。あるいはこれらの金属を主成分とする合金を用いてもよい。この中でも、シンタリング性や熱伝導性の観点から、銀を用いることができる。
【0042】
上記金属からなる粒子の形状は、たとえば、球状でもよく、フレーク状でもよい。上記金属からなる粒子は、球状粒子およびフレーク状粒子のいずれか一方、または両方を含むことができる。
【0043】
上記金属粒子の一つの態様は、上記金属コート樹脂粒子として、銀コートシリコーン樹脂粒子、および金属からなる粒子として、銀粒子を含む。
銀コートシリコーン樹脂粒子の他にも、弾性特性の観点から、銀コートアクリル樹脂粒子を用いてもよい。銀粒子の他にも、たとえばシンタリングを促進する、あるいは低コスト化等の目的で金粒子や銅粒子等の、銀以外の金属成分を含む粒子を併用することが可能である。
【0044】
上記金属コート樹脂粒子の平均粒子径D50の下限は、例えば、0.5μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上でもよい。これにより、貯蔵弾性率を低減させることができる。一方、上記金属コート樹脂粒子の平均粒子径D50の上限は、例えば、20μm以下でもよく、15μm以下でもよく、10μm以下でもよい。これにより、熱伝導性を高めることができる。上記金属コート樹脂粒子の平均粒子径D50は、銀コートシリコーン樹脂粒子や銀コートアクリル樹脂粒子の平均粒子径D50として用いてもよい。
【0045】
上記金属からなる粒子の平均粒子径D50の下限は、例えば、0.8μm以上であり、好ましくは1.0μm以上であり、より好ましくは1.2μm以上である。これにより、熱伝導性を高めることができる。一方、上記金属からなる粒子の平均粒子径D50の上限は、例えば、7.0μm以下であり、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは4.0μm以下である。これにより、金属粒子間における焼結性を向上させることができる。また、シンタリングの均一性の向上を図ることができる。上記金属からなる粒子の平均粒子径D50は、銀粒子の平均粒子径D50として用いてもよい。
【0046】
なお、金属粒子の平均粒子径D50は、たとえば、シスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA(登録商標)−3000を用い、粒子画像計測を行うことで決定することができる。より具体的には、上記装置を用い、体積基準のメジアン径を計測することで、金属粒子の粒子径を決定することができる。
【0047】
上記金属コート樹脂粒子の含有量は、金属粒子全体(100質量%)に対して、例えば、1質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜45質量%、より好ましくは5質量%〜40質量%である。上記下限値以上とすることで、貯蔵弾性率を低減できる。上記上限値以下とすることで、熱伝導率を向上できる。
【0048】
上記金属粒子の含有量は、熱伝導性組成物全体(100質量%)に対して、1質量%〜98質量%、好ましくは30質量%〜95質量%、より好ましくは50質量%〜90質量%である。上記下限値以上とすることで、熱伝導性を高めることができる。上記上限値以下とすることで、塗布性やペースト時の作業製を向上できる。
本明細書中、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0049】
(バインダー樹脂)
上記熱伝導性組成物は、バインダー樹脂を含む。
上記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびアリル樹脂からなる群より選択される1種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記バインダー樹脂として、具体的には、アクリルオリゴマー、アクリルポリマーといったアクリル樹脂;エポキシオリゴマー、エポキシポリマーといったエポキシ樹脂;アリルオリゴマー、アリルポリマーといったアリル樹脂などを挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、重量平均分子量が1万未満のものをオリゴマー、重量平均分子量が1万以上のものをポリマーとする。
【0051】
上記エポキシ樹脂として、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を用いてもよい。このエポキシ樹脂は、25℃で液状でもよい。これにより、熱伝導性組成物のハンドリング性を向上できる。また、その硬化収縮を適当に調整できる。
【0052】
上記エポキシ樹脂の具体例は、例えば、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂;ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテルなどのビスフェノールF型液状エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂またはビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を用いてもよい。ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテルを用いることができる。
【0053】
上記アクリル樹脂として、分子内にアクリル基を2個以上有するアクリル樹脂を用いてもよい。このアクリル樹脂は、25℃で液状でもよい。
上記アクリル樹脂として、具体的には、アクリルモノマーを(共)重合したものを用いることができる。ここで、(共)重合の方法としては限定されず、溶液重合など、一般的な重合開始剤および連鎖移動剤を用いる公知の方法を用いることができる。
【0054】
上記アリル樹脂として、1分子内にアリル基を2個以上有するアリル樹脂を用いてもよい。このアリル樹脂は、25℃で液状でもよい。
【0055】
上記アリル樹脂として、具体的には、ジカルボン酸と、アリルアルコールと、アリル基を備える化合物とを反応することで得られるアリルエステル樹脂が挙げられる。
ここで、上記ジカルボン酸としては、具体的には、しゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。また、上記アリル基を備える化合物としては、具体的には、アリル基を備えるポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
【0056】
上記バインダー樹脂の含有量の下限は、熱伝導性組成物100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。これにより、被着体に対して密着性を向上できる。一方、上記バインダー樹脂の含有量の上限は、熱伝導性組成物100質量部に対して、例えば、15質量部以下、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。これにより、熱伝導性の低下を抑制できる。
【0057】
(モノマー)
上記熱伝導性組成物は、モノマーを含む。
上記モノマーは、グリコールモノマー、アクリルモノマー、エポキシモノマーおよびマレイミドモノマーからなる群から選ばれる一または二以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記モノマーを用いることで、加熱処理したとの上記熱伝導性組成物の揮発状態を調整できる。また、バインダー樹脂や硬化剤との組み合わせを適切に選択することで、上記モノマーとこれらを硬化反応させ、硬化収縮状態を調整してもよい。
【0058】
上記グリコールモノマーとして、具体的には、分子中に2個のヒドロキシ基を備え、その2個のヒドロキシ基が、それぞれ異なる炭素原子と結合した2価アルコール;該2価アルコールが2つ以上アルコール縮合した化合物;該アルコール縮合した化合物のヒドロキシル基中の水素原子が、炭素数1以上30以下の有機基に置換されてアルコキシ基となったもの、等が挙げられる。
【0059】
上記グリコールモノマーとしては、具体的には、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラチレングリコールモノメチル、テトラチレングリコールモノエチル、テトラエチレングリコールモノn−ブチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、揮発性の観点から、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルまたはエチレングリコールモノ−n−ブチルアセテートを用いることができる。
【0060】
上記グリコールモノマーの沸点の下限としては、例えば、100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましく、170℃以上であることが一層好ましく、190℃以上であることが殊更好ましい。また、グリコールモノマーの沸点の上限としては、例えば、400℃以下であってもよく、350℃以下であってもよい。
なお、グリコールモノマーの沸点とは、大気圧下(101.3kPa)における沸点を示す。
【0061】
上記アクリルモノマーとして、分子中に(メタ)アクリル基を備えるモノマーが挙げられる。
ここで、(メタ)アクリル基とは、アクリル基及びメタアクリル基を示す。
上記アクリルモノマーは、分子中に(メタ)アクリル基を1つのみ備える単官能アクリルモノマーであってもよいし、分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上備える多官能アクリルモノマーであってもよい。
【0062】
上記単官能アクリルモノマーとして、具体的には、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2−(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。
【0063】
多官能アクリルモノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヘキサン−1,6−ジオールビス(2−メチル(メタ)アクリレート)、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、又は1,4−ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0064】
アクリルモノマーとしては、単官能アクリルモノマーまたは多官能アクリルモノマーを単独で用いてもよいし、単官能アクリルモノマー及び多官能アクリルモノマーを併用してもよい。アクリルモノマーとしては、例えば多官能アクリルモノマーを単独で用いることが好ましい。
【0065】
上記エポキシモノマーは、分子中にエポキシ基を備えるモノマーである。
上記エポキシモノマーは、分子中にエポキシ基を1つのみ備える単官能エポキシモノマーであってもよいし、分子中にエポキシ基を2つ以上備える多官能エポキシモノマーであってもよい。
【0066】
上記単官能エポキシモノマーとしては、具体的には、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p−クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0067】
上記多官能エポキシモノマーとしては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体;水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体;ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの;トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられる。
【0068】
上記マレイミドモノマーは、分子中にマレイミド環を備えるモノマーである。
上記マレイミドモノマーは、分子中に、マレイミド環を1つのみ備える単官能マレイミドモノマーであってもよいし、分子中にマレイミド環を2つ以上備える多官能マレイミドモノマーであってもよい。
上記マレイミドモノマーとして、具体的には、ポリテトラメチレンエーテルグリコール−ジ(2−マレイミドアセテート)などが挙げられる。
【0069】
上記モノマーの含有量の下限は、熱伝導性組成物100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上である。一方、上記モノマーの含有量の上限は、熱伝導性組成物100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0070】
(硬化剤)
上記熱伝導性組成物は、必要に応じて、硬化剤を含んでもよい。
上記硬化剤は、モノマーやバインダー樹脂中の官能基と反応する反応性基を有する。反応性基は、例えば、エポキシ基、マレイミド基、ヒドロキシル基などの官能基と反応するものを用いてもよい。
【0071】
具体的には、モノマーがエポキシモノマー、あるいは/およびバインダー樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、上記硬化剤として、フェノール樹脂系硬化剤またはイミダゾール系硬化剤を用いてもよい。
【0072】
上記フェノール樹脂系硬化剤として、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール−ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF(ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール化合物(ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂);4,4’−ビフェノールなどのビフェニレン骨格を有する化合物などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、フェノールアラルキル樹脂を用いてもよく、フェノールアラルキル樹脂として、フェノール・パラキシリレンジメチルエーテル重縮合物を用いてもよい。
【0073】
イミダゾール系硬化剤としては、具体的には、2−フェニル−1H−イミダゾール−4,5−ジメタノール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
上記硬化剤の含有量は、熱伝導性組成物中の上記バインダー樹脂100質量部に対して、例えば、5質量部〜50質量部でもよく、20質量部〜40質量部でもよい。
また、上記硬化剤の含有量は、熱伝導性組成物中のエポキシ樹脂100質量部、またはエポキシ樹脂およびエポキシモノマーの合計100質量部に対して、例えば、1質量部〜40質量部でもよく、10質量部〜35質量部でもよい。
【0075】
(ラジカル重合開始剤)
上記熱伝導性組成物は、ラジカル重合開始剤を含んでもよい。
上記ラジカル重合開始剤として、アゾ化合物、過酸化物などを用いることができる。
【0076】
上記過酸化物として、具体的には、ビス(1−フェニル−1−メチルエチル)ペルオキシド、1,1−ビス(1,1−ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチルー4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレラート、2,2−ジ(4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)プロパン、p−メタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジーtert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジn−pロピルパーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカルボネート、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、tert−ヘキシルネオデカネート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタネート、tert−ヘキシルパーオキシピバラート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−ジエチルヘキノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、tert−ヘキシパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾネート、2,5―ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセトネート、tert−パーオキシ−3−メチルベンゾネート、tert−ブチルパーオキシベンゾネート、tert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(硬化促進剤)
上記熱伝導性組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。
上記硬化促進剤は、バインダー樹脂またはモノマーと、硬化剤との反応を促進させることができる。
【0078】
上記硬化促進剤としては、具体的には、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(シランカップリング剤)
上記熱伝導性組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。
上記シランカップリング剤は、熱伝導性組成物を用いた密着層と基材あるいは半導体素子との密着性を向上できる。
【0080】
上記シランカップリング剤として、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシランなどを用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(可塑剤)
上記熱伝導性組成物は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤を添加することで、低応力化を実現できる。
上記可塑剤として、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物;ポリブタジエン無水マレイン酸付加体などのポリブタジエン化合物;アクリロニトリルブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(その他の成分)
上記熱伝導性組成物は、上述した成分以外にも、必要に、その他の成分を含んでもよい。その他の成分として、例えば、溶剤が挙げられる。
【0083】
上記溶剤として、特に限定されないが、たとえばエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルプロピレントリグリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3、5、5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)もしくはジイソブチルケトン(2、6−ジメチル−4−ヘプタノン)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2−ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2−ビス(2−ジエトキシ)エタンもしくは1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;酢酸2−(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類、トルエン、キシレン、n−パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;アセトアミドもしくはN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;低分子量の揮発性シリコンオイル、または揮発性有機変成シリコンオイル等のシリコンオイル類が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
上記溶剤を用いることで、上記熱伝導性組成物の流動性を制御でき、例えば、ペースト状の上記熱伝導性組成物の作業性を向上できる。また、加熱時の収縮で焼結を促進できる。溶剤の中でも、比較的沸点が高い溶剤を用いること、好ましくは硬化温度よりも沸点が高い溶剤を用いることで、熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層中にボイドが発生することを抑制できる。この高沸点溶剤の沸点は、例えば、180℃〜450℃でもよく、200℃〜400℃でもよい。
【0085】
以下、本実施形態の熱伝導性組成物の製造方法について説明する。
上記熱伝導性組成物の製造方法として、上述した原料成分を混合する方法が用いられる。混合は、公知の方法を用いることができるが、例えば、3本ロール、ミキサーなどを用いることができる。
なお、得られた混合物について、さらに脱泡を行ってもよい。脱泡は、例えば、混合物を真空下に静置してもよい。
【0086】
(半導体装置)
本実施形態の半導体装置について説明する。
上記半導体装置は、基材と、上記の熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層を介して基材上に搭載された半導体素子と、を備えるものである。放熱性や密着性に優れた接着層を用いることで、信頼性に優れた半導体装置を実現できる。
【0087】
また、上記接着層は、様々な被着体に適用できる。被着体としては、具体的には、IC、LSIなどの半導体素子;リードフレーム、BGA基板、実装基板、半導体ウエハなどの基材;ヒートスプレッダー、ヒートシンクなどの放熱部材などが挙げられる。
【0088】
以下に、本実施形態の熱伝導性組成物を用いた半導体装置の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
本実施形態にかかる半導体装置100は、基材30と、熱伝導性組成物の熱処理体である接着層10(ダイアタッチ材)を介して基材30上に搭載された半導体素子20と、を備える。
半導体素子20と基材30は、たとえばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、たとえば封止樹脂50により封止される。
【0089】
上記接着層10の厚さの下限は、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましい。これにより、熱伝導性組成物の熱処理体の熱容量を向上し、放熱性を向上できる。
また、接着層10の厚さの上限は、例えば、100μm以下としてもよく、50μm以下としてもよい。
【0090】
図1において、基材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または基材30上に接着層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(基材30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、例えば、42アロイ、Cuフレームにより構成される。
【0091】
基材30は、有機基板や、セラミック基板であってもよい。有機基板としては、たとえばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されるものが好ましい。
なお、基材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着層10と、基材30との接着性を向上できる。
【0092】
図2は、図1の変形例であり、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図である。
本変形例に係る半導体装置100において、基材30は、たとえばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0093】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、基材30の上に、熱伝導性組成物を塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、基材30、熱伝導性組成物、半導体素子20がこの順で積層される。熱伝導性組成物を塗工する方法としては限定されないが、具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
次いで、熱伝導性組成物を前硬化及び後硬化することで、熱伝導性組成物を熱処理体(硬化物)とする。前硬化及び後硬化といった熱処理により、熱伝導性組成物中の銀粒子が凝集し、複数の銀粒子同士の界面が消失してなる熱伝導層が接着層10中に形成される。これにより、接着層10を介して、基材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。これにより半導体装置を製造することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 金属粒子と、
バインダー樹脂と、
モノマーと、
を含み、
熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する熱伝導性組成物であって、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aに従って測定される熱伝導率λ(W/mK)と、下記の手順Bに従って測定される25℃の貯蔵弾性率E(GPa)とが、下記の式(I)を満たす、熱伝導性組成物。
0.35≦λ/(E) ・・式(I)
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体を得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(MPa)を測定する。
2. 1.に記載の熱伝導性組成物であって、
下記の手順により得られた熱処理体中の樹脂含有量が、前記熱処理体100質量%に対して、10質量%以上30質量%以下である、
熱伝導性組成物。
(手順)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理して、熱処理体を得る。
3. 1.または2.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属粒子は、銀、金、および銅からなる群から選択される一種以上の金属材料からなる粒子を含む、熱伝導性組成物。
4. 1.〜3.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
前記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびアリル樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、熱伝導性組成物。
5. 1.〜4.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
硬化剤を含む、熱伝導性組成物。
6. 5.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記硬化剤は、フェノール樹脂系硬化剤またはイミダゾール系硬化剤を含む、熱伝導性組成物。
7. 1.〜6.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
前記モノマーは、グリコールモノマー、アクリルモノマー、エポキシモノマー、およびマレイミドモノマーからなる群から選択される一種以上を含む、熱伝導性組成物。
8. 1.〜7.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
ラジカル重合開始剤を含む、熱伝導性組成物。
9. 1.〜8.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
シランカップリング剤を含む、熱伝導性組成物。
10. 1.〜9.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
可塑剤を含む、熱伝導性組成物。
11. 1.〜10.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属粒子は、金属コート樹脂粒子および金属からなる粒子を含む、熱伝導性組成物。
12. 11.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子の比重が、2以上10以下である、熱伝導性組成物。
13. 11.または12.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子の平均粒子径D50が、0.5μm以上20μm以下である、熱伝導性組成物。
14. 11.〜13.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子の含有量は、金属粒子100質量%中、1質量%以上50質量%以下である、熱伝導性組成物。
15. 11.〜14.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属コート樹脂粒子中の樹脂粒子を構成する樹脂材料が、シリコーン、アクリル、フェノール、ポリスチレン、メラミン、ポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる一または二以上を含む、熱伝導性組成物。
16. 1.〜15.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物であって、
溶剤を含む、熱伝導性組成物。
17. 基材と、
1.〜16.のいずれか一つに記載の熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層を介して前記基材上に搭載された半導体装置。
【実施例】
【0095】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0096】
<熱伝導性組成物>
下記の表1に示す配合量に従って、各原料成分を混合し、ワニスを得た。
得られたワニス、溶剤、金属粒子を、下記の表1に示す配合量に従って配合し、常温で、3本ロールミルで混練して、ペースト状の熱伝導性組成物を作製した。
【0097】
以下、表1の原料成分の情報を示す。
(バインダー樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE−303S)
【0098】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂(室温25℃で固体、DIC製、DIC−BPF)
【0099】
(アクリル粒子)
・アクリル粒子1:メタクリル系樹脂粒子(積水化成品工業社製、IBM−2)
(モノマー)
・アクリルモノマー1:2−フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル PO)
・アクリルモノマー2:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(三菱ケミカル社製、CHDMMA)
・アクリルモノマー3:エチレングリコールジメタクリレート(共栄化学社製、ライトエステルEG)
【0100】
(可塑剤)
・可塑剤1:アリル樹脂(関東化学社製、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−プロペニル)とプロパン−1,2−ジオールとの重合体)
【0101】
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤1:メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(信越化学工業社製、KBM−503P)
・シランカップリング剤2:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403E)
【0102】
(硬化促進剤)
・イミダゾール硬化剤1:2−フェニル−1H−イミダゾール−4,5−ジメタノール(四国化成工業社製、2PHZ−PW)
【0103】
(重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC)
【0104】
(溶剤)
・溶剤1:ブチルプロピレントリグリコール(BFTG)
【0105】
(金属粒子)
・銀粒子1:銀粉(DOWAハイテック社製、AG−DSB−114、球状、D50:1μm)
・銀粒子2:銀粉(福田金属箔粉工業社製、HKD−16、フレーク状、D50:2μm)
・銀コート樹脂粒子1:銀メッキシリコーン樹脂粒子(三菱マテリアル社製、耐熱2μm品、球形状、d50:2μm、比重:4.3、銀の重量比率80wt%、樹脂の重量比率20wt%)
・銀コート樹脂粒子2:銀メッキシリコーン樹脂粒子(三菱マテリアル社製、耐熱・表面処理2μm品、球形状、D50:2μm、比重:4.3、銀の重量比率80wt%、樹脂の重量比率20wt%)
・銀コート樹脂粒子3:銀メッキシリコーン樹脂粒子(三菱マテリアル社製、耐熱・表面処理4μm品、球形状、D50:4μm、比重:3.8、銀の重量比率75wt%、樹脂の重量比率25wt%)
・銀コート樹脂粒子4:銀メッキシリコーン樹脂粒子(三菱マテリアル社製、耐熱・表面処理10μm品、球形状、D50:10μm、比重:2.3、銀の重量比率50wt%、樹脂の重量比率50wt%)
・銀コート樹脂粒子5:銀メッキアクリル樹脂粒子(山王社製、SANSILVER−8D、球形状、D50:8μm、単分散粒子、比重:2.4、銀の重量比率50wt%、樹脂の重量比率50wt%)
【0106】
【表1】
【0107】
得られた熱伝導性組成物を用いて、下記の物性を測定し、評価項目を評価した。
【0108】
(熱伝導率)
得られた熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得た。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて、熱処理体の厚み方向の熱拡散係数αを測定した。なお、測定温度は25℃とした。
さらに、示差走査熱量(Differential scanning calorimetry:DSC)測定により比熱Cpを測定し、また、JIS−K−6911に準拠して測定した密度ρを測定した。これらの値を用いて、以下の式に基づいて、熱伝導率λを算出した。
評価結果を下記表2に示す。なお、単位はW/(m・K)である。
熱伝導率λ[W/(m・K)]=α[m/sec]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm
【0109】
(貯蔵弾性率)
得られた熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体を得た。得られた熱処理体について、測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、DMS6100)を用いて、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)で、25℃における貯蔵弾性率E(MPa)を測定した。
【0110】
(粒子連結構造の観察)
銅リードフレームと、シリコンチップ(長さ2mm×幅2mm、厚み0.35mm)とを準備した。次いで、シリコンチップに、得られた熱伝導性組成物を塗布厚み25±10μmとなるように塗布し、その上に銅リードフレームを配置した。シリコンチップ、熱伝導性組成物、銅リードフレームがこの順で積層してなる積層体を作製した。
次いで、得られた積層体を、大気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理を行い、積層体中の熱伝導性組成物を硬化させた。
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、積層体中の熱伝導性組成物の熱処理体の断面を観察し、その状態を評価した。
【0111】
実施例1〜7のいずれも、銀粒子連結構造が形成されていたことを確認した。また、断面画像において、銀粒子連結構造に略円形の樹脂粒子が複数個含まれており、その樹脂粒子の表面における金属層(銀層)と銀粒子連結構造とが連結していることも確認された。さらに、バインダー樹脂の硬化物は、銀粒子連結構造内部において、銀以外の部分に銀を覆うようにして存在していることが確認された。
【0112】
(樹脂含有量)
得られた熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理して、熱処理体を得た。得られた熱処理体において、バインダー樹脂および銀コート樹脂粒子由来の樹脂分を、以下のようにして測定した。熱処理体中における樹脂分の含有量を、樹脂含有量(質量%)とした。
樹脂含有量は、得られた熱処理体の重量を測定し、その重量から含まれる銀の重量を引くことで算出した。
【0113】
(温度サイクル試験)
得られた熱伝導性組成物を表面銀メッキの基板上に塗布し、上から3.5×3.5mmのシリコンチップ(比較例1のみ表面銀メッキ、それ以外はメッキなし)を乗せ、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理して硬化・接合させた。
接合後のシリコンチップ・基板を封止材EME−G700ML−C(住友ベークライト製)で封止し、サンプルを得た。
得られたサンプルを、85C/60%RHの高温高湿槽に入れて、168時間処理し、その後260℃のリフロー処理にかけた。
リフロー処理後のサンプルを、温度サイクル試験機TSA−72ES(エスペック製)に投入し、150℃10分→25℃10分→−65℃10分→25℃10分を1サイクルとして、2000サイクル処理を行った。
その後、SAT(超音波探傷)により剥離の有無を確認した。
表1中、剥離がないものを○、剥離があるものを×と表記した。
【0114】
(比較例2)
可塑剤(ポリブタジエン無水マレイン酸付加体、Cray Valley社製、RICOBOND1731)2.43質量部、アクリル樹脂(アクリル酸系重合物、東亞合成社製、UG4035)4.38質量部、アリル樹脂(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−プロペニル)とプロパン−1,2−ジオールとの重合体、関東化学社製)6.57質量部、硬化促進剤(ジシアンジアミド誘導体、ADEKA社製、EH−3636AS)0.05質量部、アクリルモノマー(1.6ヘキサンジオールジメタクリレート、共栄社化学社製、ライトエステル 1.6HX)2.92質量部、アクリルモノマー(2−フェノキシエチルメタクリレート、共栄社化学社製、ライトエステル PO)8.03質量部、カップリング剤(メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、信越化学工業社製、KBM−503P)0.12質量部、カップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製、KBM−403E)0.24質量部、重合開始剤(1,1−ビス(1,1−ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサン、日油社製、パーヘキサ C(S))0.24質量部を混合し、ワニスを得た。
得られたワニスに、銀粉(DOWAハイテック社製、AG−DSB−114、球状、D50:1μm)75.00質量部を配合し、常温で、3本ロールミルで混練して、ペースト状の熱伝導性組成物を作製した。
上述の測定方法で得られた熱伝導率(λ)が1W/m・K、25℃における貯蔵弾性率(E)が3GPaであった。算出されたλ/(E)は、0.11であった。
実施例1〜7の熱伝導性組成物を用いることにより、比較例2と比べて、半導体パッケージの不良発生率を低減できることが分かった。
【0115】
実施例1〜7の熱伝導性組成物は、比較例1と比べて温度サイクル性に優れること、比較例2と比べて放熱性に優れることが示された。このような実施例の熱伝導性組成物を用いることで、安定的に高い放熱性を発揮し、使用時耐久性に優れた半導体装置を実現できる。
【0116】
この出願は、2019年3月20日に出願された日本出願特願2019−052707号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2