(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一形態を図面を参照して以下に説明する。なお、以下では装置等の具体的な一例が開示されているが、本発明は必ずしもこれらの具体的構成に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態の薬液注入装置100は、
図8に一例を示ように注入ヘッド110とそれに電気的に接続されたコンソール210とを備えている。また、注入ヘッド110とコンソール210とに有線で電力を供給する電源ユニット190が設けられていてもよい。
図8では一例として撮像装置300−1、300−2(単に撮像装置300ともいう)も描かれている。
【0015】
限定されるものではないが、これらの機器の配置に関し、撮像装置300および注入ヘッド110が病院の検査室内に配置され、コンソール210が操作室内に配置され、電源ユニット190が機械室内に配置されてもよい。各室は壁によって仕切られていてもよく、検査室と操作室との間には窓が設けられていてもよい。電源ユニット190の配置位置に関し、他の形態では、電源ユニット190は操作室内に配置されてもよい、または、電源ユニット190は検査室内に配置されてもよい。本発明の一形態において、蓄電池を電源とする電源ユニットが注入ヘッド110と一体的に構成されてもよいし、注入ヘッド110の近傍に配置される構成としてもよい。電源ユニットは例えば可動式スタンドの一部に保持されてもよい。
【0016】
(a.注入ヘッド)
注入ヘッド110は、どのようなタイプのものであってもよいが、ここでは、アンギオグラフィ用すなわち血管造影検査用のものが保持されている。
図2に示すように、注入ヘッド110は、筐体111を有し、筐体111の前方側には、シリンジ(不図示)が取り付けられる凹部141が設けられている。この注入ヘッド110は、いわゆる二筒式と呼ばれるもので、2本のシリンジを保持する。アンギオグラフィ検査では、カテーテルを通じて造影剤等を注入する必要があり、高圧注入が可能なピストン駆動機構(不図示)を備えている。
【0017】
アンギオグラフィ用のシリンジ(不図示)は、通常、製品の保証耐圧が設定されている。保証耐圧は、一例で、600psi以上、800psi以上、または1000psi以上であってもよい。シリンジは、滅菌済みのディスポーザブル製品として流通するものであってもよい。なお、シリンジは予め薬液(造影剤または生理食塩水等)が充填されたプレフィルドタイプであってもよいし、空のシリンジに薬液を吸引して使用する吸引式のものであってもよい。
【0018】
シリンジは保護ケース(プレッシャージャケット等とも呼ばれる)内に挿入された状態で注入ヘッド110に装着されるものであってもよい。このような保護ケースとしては、一例で、略円筒形の中空の本体部材を有するものであってもよい。本体部材は、先端側が略閉じ、後端側が開口した構成となっている。シリンジは保護ケースの後端側の開口から挿入される。本体部材の先端面にはシリンジの導管部を通すための開口部が形成されている。保護ケースの材質は具体的にはポリカーボネートであってもよい。一例で、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製の材料などを利用してもよい。成形後、アニール処理および/または磨き処理といった二次加工を行うことも好ましい。これにより保護カバーの保証耐圧の向上を図ることができる。保護ケースは、また、ガラス製としてもよい。
【0019】
注入ヘッドのピストン駆動機構(不図示)は、従来公知のものであってもよく、アクチュエータとしてのモータと、モータの回転出力を伝達する伝達機構と、伝達機構により回転させられるボールねじと、その回転の移動に伴って進退移動するラム部材とを有している。
【0020】
モータとしては、直流モータを用いることができ、その中でも特に、直流ブラシレスモータを好ましく用いることができる。ブラシレスモータは、ブラシが無いことにより、音が静かで耐久性に優れるという利点を有している。また、ブラシレスモータは、より高速回転が可能であるため、外部ギア比を高くしてモータにかかるトルクを小さくすれば、所望の注入圧力で薬液を注入するのに必要な電流値をブラシモータに比べて小さくすることができるという利点もある。なお、アンギオグラフィ検査において造影剤注入を行うために、高出力のモータ、例えば出力が70w以上、150W以上、または300W以上のものを用いることも好ましい。
【0021】
図2に示すように、筐体111の一部には、ピストン駆動機構の動作を操作するため種々のボタン161が配置されている。この例の注入ヘッド110は、保護カバーが取り付けられたシリンジをクランパ145で保持固定するタイプのものである。
【0022】
(b.スタンドおよび保持機構)
注入ヘッド110を保持するものとしては、例えば、可動式スタンドであってもよいし、撮像装置等の一部であるレールに取り付けられるタイプのスタンドであってもよい。
図1を参照して本実施形態の可動式スタンドの例を以下説明する。
図1に示すように、この可動式スタンド301は、キャスターが取り付けられた複数の脚を有する脚部310と、そこから上方に延びる支柱305と、支柱305に取り付けられた本発明の一形態に係る保持機構320とを備えている。支柱305は、この例ではストレートなものとなっているが、他の形態では、湾曲したものであってもよい。
【0023】
(保持機構について)
保持機構320は、いわゆる平行リンク機構を構成するものであり、支柱305の上部に取り付けられている。保持機構320は、注入ヘッド110を昇降自在に保持する。具体的には、水平方向に延びる軸A
330(
図1参照)を中心としてアーム330が回動するように構成されている(昇降動作については他の図面を参照して後述する)。
【0024】
図6、
図7(
図7は模式図)に示すように、この保持機構は、ベース部材325と、第1のアーム部材311と、第2のアーム部材337と、対象物保持部材341とを備えている。さらに、保持機構320は、注入ヘッド110を上昇させる補助力を付与するスプリング360(
図6参照)も備えている。
【0025】
ベース部材325は、一例として金属製の部材であり、
図7に示すように、支柱に305に取り付けられる取付部325aと、アーム部材を支持する部分325bとを有している。アーム部材を支持する部分325bには、2つの貫通孔が形成され、それぞれの孔の中心軸が符号A
331−1、A
337−1で示されている。この例では、中心軸A
331−1は相対的に高い位置に形成されており、中心軸A
337−1が相対的に低い位置に形成されている。
【0026】
なお、取付部325aは、可動式スタンド301の支柱305上に取り外し自在に装着される構成であってもよい。取付部325aが、第2の実施形態で説明するようなタイプの保持機構(透視撮像装置のレールに取り付けられるもの)で用いられる連結ブロック(詳細後述)に対しても接続できる構成となっていてもよい。両部材は直接接続されるものであってもよいし、他の中間部材を介して接続されるものであってもよい。
【0027】
第1のアーム部材331は、例えばボルトまたはピンまたは支持軸等により、中心軸A
333−1周りに回動できるように連結されている。同様に、第2のアーム部材337も、例えばボルトまたはピンまたは支持軸等により、中心軸A
337−1周りに回動できるように連結されている。第1のアーム部材331の長さ(一方の端部の中心軸と他方の端部の中心軸との間の距離)と、第2のアーム部材337の長さ(一方の端部の中心軸と他方の端部の中心軸との間の距離)とは、この例では、同一もしくは実質的同一とされている。両アーム部材(正確には、それぞれのアーム部材における、一方の端部の中心軸と他方の端部の中心軸とを結ぶ直線どうし)は、一例で、互いに平行となっている。
【0028】
第1のアーム部材331および第2のアーム部材337の先端側に取り付けられているのは対象物保持部材341である。対象物保持部材341も金属製の部材として設けられていてもよい。対象物保持部材341における第1の中心軸A
331−2および第2の中心軸
337−2の部分に対して、各アーム部材331、337がそれぞれ、回動自在に連結されている。
【0029】
以上のような構造により平行リンク機構が構成され、対象物保持部材341が、その姿勢を保ったまま、
図7に示すように、回動しながら昇降できるようになっている。
【0030】
対象物保持部材341は、
図2、
図7に示すように、水平方向に延びるように形成された穴(凹部)341hを有している。注入ヘッド110に形成された取付け用の構造部(一例で、ヘッド側面から突出した軸状の突出部)の一部が凹部341h内に入り込み、これをナット止め(一例)することにより、注入ヘッド110が対象物保持部材341に取り付けられる。
【0031】
注入ヘッド110は、一例として、対象物保持部材341に対して回動可能(具体的には、水平軸周り)に取り付けられる。この理由は、注入ヘッド110は、使用時に、必要に応じて、先端側が上方を向く姿勢や下方を向く姿勢に変更されるためである。つまり、シリンジ内に薬液を吸引して充填する動作またはシリンジ内のエアを排出する動作などを行う際には、先端側が上方を向く姿勢とされる。一方、薬液を注入する際には、先端側が下方を向く姿勢(水平よりもシリンジ先端がやや下向きとなるような姿勢)とされる。この姿勢の変更は、操作者が手動で行うものであってもよい。
【0032】
図6に示すように、注入ヘッドを上昇させる補助力を付与するスプリング360(付勢手段)は、この例では、2つのアーム部材331、337に近接して設けられている。具体的には、2つのアーム部材331、337の間となるような位置であってもよい。スプリング360としては例えばコイルスプリング等であってもよいが、この例では、ガススプリングを用いている。詳細な図示は省略するが、ガススプリングは、細長い筒状のハウジングと、その内部に軸方向に摺動するように配置されたピストンと、それに連結されハウジングに対して進退するロッド等から構成される。ハウジング内は、ピストンによって第1の室と第2の室とに区画され、この両室には圧縮ガス(一例で窒素ガスなど)が充填される。2つの室はピストンに設けられた穴(オリフィス)によって連通されている。ガススプリングは、ガスの圧力を利用して付勢力を得るものである。
【0033】
スプリング360のハウジング端部の取付部361(
図6参照)が、一例で、中心軸A
337−1の部分に、ピンまたはボルトまたは支持軸等を用いて、回動自在に取り付けられ、一方、ロッドの取付部363が一例で中心軸A
331−2の部分に、ピンまたはボルトまたは支持軸等を用いて、回動自在に取り付けられる。
【0034】
図7に示すように、アーム部材331、337(以下、単に「アーム」と称することもある)は、この例では(i)対象物保持部材341が相対的に高い位置となる第1のポジションと、(ii)対象物保持部材341が相対的に低い位置となる第2のポジションとの間で移動可能に構成されている。
【0035】
第1のポジションは、この例では、アームが略鉛直方向となるような位置である(
図7の鉛直軸L1参照)。第2のポジション(参考として軸L2)は、限定されるものではないが、アームが略水平方向となるような位置であってもよい。
【0036】
なお、アームの可動域(限定されるものではないが、鉛直方向の軸L1を基準とした角度)は、45°以上180°以下の範囲であってもよく、60°以上または90°以下程度としてもよい。可動域の一端は、
図7のように軸L1が鉛直となるような角度であってもよいがこれに限定されるものはない。例えば、鉛直(この角度を0°とする)ではなく、鉛直に対して10°程度傾斜した角度を第1のポジションとしてもよい。もっとも、軸L1を超えてさらに反対側(
図7の左側)に回動できるようになっていてもよい。
【0037】
第1のポジション(
図7参照)の状態からアームを徐々に傾けていくと、スプリング360(
図6参照)の両端部を取り付けている支点間の距離が徐々に縮まり、スプリングが縮められて反力がそれにともなって大きくなる。したがって、例えば
図7のL2で示すような位置(約45°に傾いた位置)においても、注入ヘッドの自重でアームが下がることなく、注入ヘッドをその場に安定的に保持することができる。スププリングの反力をどの程度とするかは、保持させる注入ヘッドの重さ等を考慮して適宜設定すればよい。
【0038】
図2〜
図5に示すように、本実施形態の保持機構では、アームの位置を固定するためのレバー345も設けられている。レバー345を回すことにより、対象物保持部材341の第1のアーム部材331に対する回動が制限され、これによりアームを動かせない状態となる。このようにアーム位置固定用のレバー345が設けられている場合、所望の位置でロックをかけることで、不慮の力が加わって注入ヘッド110が意図せず上下移動してしまうことを防止できるものとなる。
【0039】
レバー345は回転により位置固定を行うものであるが、他にも、回動させる範囲がよりより狭くて済む(例えば180°以下)、カムレバーを含むロック手段を利用するようにしてもよい。これによれば、レバーを何周も回す必要がなく、簡単な操作でロックを行うことができる。
【0040】
上記に説明したとおり、本実施形態の保持機構320は平行リンク機構として設けられているので、注入ヘッド110の姿勢を維持したまま昇降させることができる。また、スプリング360が備えられているので、仮に
図7の軸L2のようにアームを傾けて注入ヘッド110の高さを下げていった場合でも、スプリング360の付勢力により、注入ヘッド110を所望の位置で良好に保持することができる。
【0041】
また、従来、この種の可動式スタンドで注入ヘッド110を昇降させるためには、例えば鉛直方向に伸縮自在に構成された保持機構を利用するものもあった。このような保持機構の場合、一般に、固定解除用の所定の部材を回すなどして、昇降させることができる状態とし、所望の高さに変更した後、再度その部材を回して昇降不能な状態としておくといった操作が必要となる。これに対して、操作に不慣れが者が取り扱う場合や、頻繁に注入ヘッドを昇降させたいような場合には、このような方式よりも、本実施形態のような方式の方が、直感的かつ簡便に注入ヘッドの高さ変更を行える点で有利である。
【0042】
例えば、シリンジ内に薬液を吸引する場合、シリンジを上に向けて(換言すれば注入ヘッドを縦向きにして)吸引動作が行われる。
図1等に示すようにアーム330が略垂直となっている状態で注入ヘッド110を縦向きとすると、シリンジ先端が比較的高い位置となり、シリンジ先端へのチューブの接続やボタンの操作等が行い難い場合もある。この点、本実施形態の保持機構320によれば、必要に応じてアーム330を倒して注入ヘッド110を低い位置とし、この吸引動作を行うことができるので、操作が行い易く、吸引時のミスの発生の防止にも寄与する。
【0043】
平行リンク機構および付勢部材(ガススプリング)等による作用効果は上記のとおりであるが、本実施形態のより具体的な構成について、他の図面も参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0044】
(詳細構造)
図4に示すように、第1のアーム部材331はスプリング360を取り囲む収容体の一部を構成している。つまり、収容体用の部品が平行リンク機構の一方のアーム部材を兼用する構成となっている。限定されるものではないが、第1のアーム部材331は、断面形状が略コ字型(例えば、
図4の左側、後側、右側の3つの面を備えるような形状)であってもよい。第1のアーム部材331の前面側に他のカバー部材333(
図3参照、断面コ字型)が取り付けられ、これにより、第2のアーム部材337およびスプリング360等が包囲され、収容される。断面コ字型のアーム部材331の場合、その剛性が高くなるので、本実施形態のように比較的重量のある注入ヘッド110(一例で3.0Kg〜12.0Kg)のようなものを保持する好適である。また、このアーム部材331内にスプリング360を配置する構成によれば、スプリング360を外に配置する構成に比べて、全体をコンパクトに構成できるという利点もある。
【0045】
第1のアーム部材331等の外側に、さらに、不図示のカバーが取り付けられていてもよい。例えばこのカバーは、意匠性の向上や、異物(一例で液体や粉塵等)の浸入防止などを目的としたものであってもよい。
【0046】
図3に示すように、カバー部材333の上端部付近および下端部付近には、開口部を覆い隠すプレート335aおよびプレート335bが取り付けられている。これらのプレート335a、335bは、付勢機能を備えたヒンジ(
図4)を介して取り付けられ、これにより、アームを昇降させた場合でも常にプレート335a、335bがカバー部材333に押し当たるようになっている。このようなプレート335a、335bが設けられていることにより、アームを昇降させる際に生じるカバー部材333上下の開口部に指を挟まれるおそれが無くなり、より安全なものとなる。
【0047】
(第2の実施形態)
図9に示す保持機構は、可動式スタンドではなく、透視撮像装置の一部であるレール390に取り付けられるタイプのものである。レール390は、断面形状が四角形で、一例で、
図11に示すような透視撮像装置のベッド395に沿うように配置されたものである。撮像装置は、Cアーム393を備え、血管造影を行うことができるものであってもよい。
【0048】
図9の構成では、第1の実施形態の保持機構に相当するもの(符号320′)と、それを支持する支持バー405と、支持バー405を支持するとともにレール390にスライド可能に取り付けられる連結ブロック401とを有している。
【0049】
連結ブロック401は、一例で金属製の部材であり、
図9、
図10に模式的に示すようにレール390が通ることとなる内部スペース403と、レール390に当接することとなる1つまたは複数のガイドローラ401a、401bとを有している。また、連結ブロック401には、固定ハンドル407が設けられており、これを回すことにより、連結ブロック401がレールに対して位置決め固定されるようになっている。
【0050】
すなわち、固定ハンドル407を所定方向に回して緩め、連結ブロック401をレール390に沿って所望の位置まで移動させ、その位置で固定ハンドル407を逆方向に回して締めることで、連結ブロック401をその位置に固定することができる。
【0051】
なお、一例で回転式のハンドル407について説明したが、当然ながら、例えばレバーで固定の解除が行われるようなものであってもよい。レバーは、棒状の操作部を有するグリップタイプものや、または、指をフラップにかけてそれを引くことで解除がなされるようなフラップタイプのものであってもよい。
【0052】
ところで、レール390に取り付けられる
図8のような保持機構の場合、
図9、
図12に示すように、アーム330が、注入ヘッド110の向きに対して、後ろ側に回動するように構成されていてもよい。言い換えれば、注入ヘッド110が前方に移動するようにアーム330が傾斜するのではなく、後退するようにアーム330が傾斜ようになっていることも、一形態において好ましい。
図9の構成では、一例で、アーム330が垂直となった状態からアーム330が前方へと移動しないように規制されている。
【0053】
ベッド390の近傍に注入ヘッド110を配置する場合、第1の実施形態のようにアームが前側(注入ヘッドの向きを基準とする)に傾く構成とすると、注入ヘッド110がベッド上の患者側に移動することとなる。ベッド上の患者側の領域は、施術内容にもよるが、一般的に、清潔が保たれた領域とされることが多い。そこで、そのような清潔領域に注入ヘッド110が進入しないように、本実施形態では後方に退避する方向(
図9参照)にアーム330を倒せるようになっていることが、一形態において、好ましい。
【0054】
また、
図11、
図12に示すように、アーム330が鉛直方向の軸(符号405参照)周りに回動自在に構成されていてもよい。好ましくは、その範囲が、注入ヘッド110がベッド395上の領域に大きく入り込まないように、規制されていることも好ましい。例えば
図12の例のように、アーム330の回動方向(L
311a参照)がベッド395とほぼ平行となるような状態(L
311a参照)から、注入ヘッド110がベッドから所定角度退避する位置(L
311b参照)に制限されていることも好ましい。この場合、退避角度はベッドに平行な線に対して例えば45°〜90°となるような範囲であってもよい。
【0055】
(第3の実施形態)
図13のような保持機構の構成を採用してもよい。この例では、上述した実施形態同様、保持機構は、第1および第2のアーム部材331、337と、それを保持するベース部材325と、対象物保持部材341と、スプリング(図示省略)とを備えている。
【0056】
保持機構のアームの回動範囲の規制は、次のような構造により実現されている。すなわち、まず、第2のアーム337の一部に凹部339が形成されており、アームの回動に応じてこの凹部内を、所定の軸332(詳細下記)が動くようになっている。
【0057】
凹部339は、
図13に示すように、一方の端部に形成された第1の受け部339aと、反対側の端部に形成された第2の受け部339bと、受け部どうしを接続する湾曲部339cとを有している。第1の受け部339aは中心軸A
337−1から相対的に遠い位置にあり、第2の受け部339bは相対的に近い位置にある。
【0058】
軸332は、第1のアーム331の一部に通され、第1のアーム331と一緒に回動するものであってもよい。一例で、この軸332は、後述するレバー345に連結された軸であってもよい。
【0059】
アームが第1のポジション(垂直方向となっている状態)のとき、
図13に示すように、軸332は第1の受け部339aのところに位置している。そして、アームを、
図13の状態からさらに図示右側に回動させようとしても、軸322が第1の受け部339aに当接することによって、それ以上の回動しないようになっている。
【0060】
一方、第1のポジションから徐々にアームを倒していくと、軸322は、湾曲部339cに沿うような円弧を描きながら第2の受け部339bのところまで移動する。そして、アームを、
図13の状態からさらに下方に回動させようとしても、軸322が第2の受け部339bに当接することによって、それ以上の回動しないようになっている。
【0061】
このように、本実施形態では、凹部339とその内部で移動する部材(軸332、アーム部材311と連動する)との協働作用によって、アームの可動範囲が規定される。このような構成によれば、比較的簡素な構成で、堅固で安定したアームの移動制限を行うことができるという利点ある。アーム部材377が複数本ある場合、それぞれに凹部339をもうければよい。
【0062】
軸322は、必ずしも断面形状が円形である必要はなく、四角形、多角形、円形の一部を切除したような形状等であってもよい。ただし、円形の場合、第1の受け部339aや第2の受け部339bの形状もそれに対応する円弧状とすることで、良好に軸を受けることができ、軸の損傷等も生じにくいという点で好ましい。
【0063】
なお、この例では凹部339を利用しているが、凹部に代えて、開口部や、長孔等としてもよい。
【0064】
アームの移動制限を行うための更なる構造部(凹部339と併用でもよいし単独でもよい)が設けられていてもよい。具体的には、例えば、アームの一部を所定の部材の一部に当接させることで移動制限が行われるようになっていてもよい。
図13の例では、第1のアーム部材331の一部に突出部331pが形成されている。第1のポジションでは、この突出部331pはどこにも当接しない。しかしながら、
図13のようにアームの可動範囲の最下側までくると、突出部331pが、対象物保持部材341に形成された受け部341pに突き当たるようになっている。これによっても、また、アームの下方へのそれ以上の移動が制限されることとなる。
【0065】
図14は、レバー345(
図13の軸332と兼用で)によってアームの移動をロックする構成の一例を示す模式図である。レバー345には軸346が連結されており、軸は、第1の部材p1と、第2の部材p2とを貫通するように通されている。ここで、第1の部材p1は第1のアーム部材331の一部であってもよく、第2の部材p2は第2のアーム部材337の一部であってもよい。レバー345を回すと、軸346の端部に取り付けられた押さえ部材346wが変位し、その結果、両部材p1、p2の距離が狭まり、最終的には互いに圧接する。これにより、両部材p1、p2の相対的な移動が不能となり、ひいてはアームの回動が不能となって、ロックされた状態となる。
【0066】
当然ながら、部材p1、p2の相対的な移動を不能とするためには上述以外にも種々の方式および構造を採用しうるのは言うまでもない。レバー345に代えて、ロック解除状態とロック状態とを切り替えることができるカムレバー(不図示)を採用してもよい。
【0067】
以上、本発明については図面を参照しながら幾つかの実施形態を説明したが、それぞれに示された特徴部は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更、省略、組み合せることができる。
【0068】
スプリング360に関し、ガススプリングに代えて、トーションスプリングやコイルスプリングを利用するようにしてもよい。コイルスプリングは、第1のポジション(高位置)から第2のポジション(低位置)に移動するにしたがって伸ばされ、それにより、徐々に付勢力が高まるようなものであってもよい。
【0069】
(別の実施形形態に係る構成例)
図15〜
図19を参照してさらに別の形態の構成について説明する。この例の保持機構720は、ガススプリングに代えてコイルスプリング760(
図18参照)を有し、また、回転させる範囲が少なくて済む(180°未満)いわゆるクイックリリース方式のレバー745を有している。第1のアーム部材731および第2のアーム部材737でアーム730が構成されそのアーム730がベース部725の上部側の所定の軸周り回動するようになっている点、および、対象物保持部材741の姿勢を維持したままアーム730が昇降するように構成されている点等に関しては、他の実施形態と共通である。また、技術的思想が上述の実施形態と共通する箇所については、説明を省略するものとする。
【0070】
この例のレバー745は、軸771周りに回動自在となっており、具体的には軸771が通される通し孔(符号を付して示さず)の近傍がカム部745aとなっていることで、レバー745の回動にしたがって締付けを行うことができるようになっている。すなわち、
図18に示すような、レバー745がアーム730に沿う向きに倒された状態が締付け状態であり、この状態では、カム部745aの大径部745a−1がシャフト773と平行になるような向きとなる。
【0071】
シャフト730上には、第1のアーム部材731の一部を挟むように部材775、776が設けられており、アーム745を
図18のように倒すと、アーム730の内側の部材775が第1のアーム部材731の一部に対して押し付けられ、部材775と部材776とによって第1のアーム部材731の一部が挟持される。これにより、アーム730の昇降がロックされることとなる。なお、必ずしもロックされる必要はなく、別例として、アーム730を昇降させるための力は大きくなるが、ロックまではされないような構成としてもよい。
【0072】
図18に示すように、この例では、コイルスプリング760が利用されている。このコイルスプリング760は、少なくとも2種類のバネ定数の部分を含む圧縮コイルバネである。具体的には、コイルスプリング760は、バネ定数の相対的に小さい第1の部分761−1、761−2と、バネ定数の相対的に大きい第2の部分762とを有するものである。第1の部分761−1、761−2のバネのピッチは相対的に広く、第2の部分762のバネのピッチは相対的に狭い。
【0073】
また、コイルスプリング760の内側には、細長い筒状のシリンダとそれに進退自在に挿入されたロッドとを有するシリンダアセンブリ765が配置されている。
図19に模式的に示すように、シリンダは符号766で示すようなものであり、ロッドは符号768で示すようなものであってもよい。この例では、シリンダアセンブリ765の両端部にシャフトを通すための貫通孔765hが形成されている。
【0074】
シリンダアセンブリ765は、ダンパー機能を有するものであってもよく、このダンパー機能は、一例で、オイルダンパーのように粘性抵抗を利用するもの、フリクションを利用するもの、または内部に充填されたガスの作用を利用するもの(ガスダンパー)など、種々の方式を用いることができる。ダンパー機能は、一例で、ロッドの端部に取り付けられたピストン(不図示)のオリフィス(不図示)の数や径によって調整されるものであってもよい。
【0075】
アーム730の先端部に保持された重量物である注入ヘッドを安定的に保持するためには、アーム730の傾斜角が浅い場合には比較的小さな付勢力でよいが傾斜角が深くなるほど大きな付勢力が必要となる。このような特徴に対応するために、この例では、コイルスプリング760を2種以上のバネ定数の部分で構成することとし、アーム730の傾斜角が深くなった場合でも十分な付勢力で補助できるようにしている。なお、
図18では、中心部に第2の部分762があり、その両側に第1の部分761−1、761−2がある構成となっているが、これに限定されるものではない。
【0076】
コイルスプリング760の全長のうち一部が第1の部分で残りが第2の部分となるような構成としてもよい。また、コイルスプリング760は、第1の部分と第2の部分とが一体的に構成された単一の部材であってもよいし、2つまたは3つ以上の別体のスプリングを組み合わせてなるものであってもよい。
【0077】
図18の例は、バネのピッチを異ならせることで異なったバネ定数を示すようにした例であるが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
図19の例では、材質を異ならせることでバネの特性を変えた2種類のコイルスプリング761′、762′が設けられている。限定されるものではないが、バネのピッチ、バネの径、および/または線経は同一であってもよい。やはり、限定されるものではないが、コイルスプリング761′、762′どうしの間にはワッシャ769が介装されていてもよい。
【0078】
特性の異なる複数のバネ部分/バネを構成するためには、次のような態様を採用してもよい:バネの線径を異ならせる、バネの材質を異ならせる、バネの経を異ならせる、または、それら(さらにはバネのピッチを異ならせた上記の例も含め)のうちの任意の組合せとしてもよい。このような構成であったとしても、バネの特性が異なる2種以上のバネが備わっていることによる上述したような作用効果は同様に得られるためである。
【0079】
また、
図18の例では、1本のコイルスプリング760のみが設けられた形態となっているが、複数本のスプリングを並列に設ける構成としてもよい。
【0080】
なお、本発明の一形態としては、シリンダアセンブリ765の可動域によって、アーム730の最下端側の可動範囲(
図15のようにアームが下げられた状態)が規定される構成であってもよい。つまり、シリンダアセンブリ765は、当然ながら、ロッド768の可動域が決まっており、ロッド768をシリンダ766内にある程度まで侵入させると、ロッド768の端部(またはロッド768に連結された所定の部材)がシリンダ766内の一部に当接してそれ以上移動できなくなる(シリンダアセンブリ765が最短となる状態)。アーム730が最下端側の可動範囲まで移動するとこのようにシリンダアセンブリ765も最短の状態となり、それによって、アーム730がそれ以上回動しなくなる構成の場合、コイルスプリング760を支持する部品を、アーム730の移動を規制するための部品として兼用することができるという利点がある。注入ヘッドのような重量物を安定的に支持するという点でも有利である。
【0081】
以上に説明したそれぞれの技術的事項は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ得る。
【0082】
(付記)
本出願は下記の発明を開示する:
1.ベース部(325)と、
該ベース部(325)に回動可能に連結された第1のアーム部材(331)と、
上記ベース部(325)に回動可能に連結された第2のアーム部材(337)と、
上記第1および第2のアーム部材の先端側の端部がそれぞれ回動可能に連結され、医療機器が取り付けられる保持部材(341)と、
を備え、上記ベース部、上記第1および第2のアーム部材、ならびに上記対象物保持部材によって平行リンクが構成される医療用保持機構であって、
さらに、
上記医療機器を上昇させる補助力を付与する付勢手段(360)を備える、
医療用保持機構(320)。
【0083】
2.上記第1のアーム部材(331)の断面形状が略コ字型である、上記に記載の医療用保持機構。
【0084】
3.上記付勢手段が、断面略コ字型の上記第1のアーム部材の内側に配置されている、上記に記載の医療用保持機構。
【0085】
4.上記付勢手段がスプリング(360)である、上記に記載の医療用保持機構。
【0086】
5.上記第1および第2のアーム部材の回動範囲を規制するための構造(339、332)であって、
上記第1および第2のアーム部材と連動して動く移動部材(332)と、
上記第1および第2のアーム部材がその可動範囲の一方の端部まできたときに上記移動部材が当接する第1の受け部(339a)と、
上記第1および第2のアーム部材がその可動範囲の他方の端部まできたときに上記移動部材が当接する第2の受け部(339b)と、
を有する回動範囲規制構造をさらに備える、上記に記載の医療用保持機構。
【0087】
6.上記第1および第2のアーム部材が回動しないようにするロック手段(345等)をさらに備える、上記に記載の医療用保持機構。
上記に記載の医療用保持機構と、それが接続される可動式スタンドとを備える保持機構(保持システム)。上記に記載の医療用保持機構と、それが接続されるレール取付型の保持手段とを備える保持機構(保持システム)。
【0088】
7.上記スプリングは、圧縮コイルスプリングである、上記に記載の医療用保持機構。
−圧縮コイルスプリングは、第1のコイルスプリング(761′)と、それとはバネ定数の異なる第2のコイルスプリング(762′)とを有する。
−両コイルスプリングは同軸上に直列に配置されている。