(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クローディン−18.2に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域と、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域、ならびに前記軽鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域が、(2)それぞれ、配列番号:2、4、8、11、13、および16、(3)それぞれ、配列番号:2、4、9、10、14、および16、(4)それぞれ、配列番号:2、5、9、12、13、および16、または(5)それぞれ、配列番号:3、6、8、10、15、および16のアミノ酸配列を含む、
モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
(a)ヒトクローディン−18.2を結合する、(b)クローディン−18.1を結合しない、(c)ヒトクローディン−18.2発現細胞に対する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を誘導する、かつ(d)ヒトクローディン−18.2発現細胞に対する補体依存性細胞傷害活性を誘導する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む、二重特異性分子、免疫複合体、キメラ抗原受容体、操作されたT細胞受容体、または腫瘍溶解性ウイルス。
前記癌疾患が、膵臓癌、胃癌、大腸癌、食道癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、および膀胱癌からなる群より選択される、請求項14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分が、免疫賦活性抗体、共刺激抗体、化学療法剤、γδT細胞を刺激する薬剤、および/またはクローディン−18.2の発現を安定化または増大する薬剤と共に投与される、請求項14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
前記免疫賦活性抗体が、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗LAG−3抗体、抗TIM3抗体、抗STAT3抗体、および抗ROR1抗体からなる群より選択される、請求項16に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
クローディン−18.2の発現を安定化または増大する前記薬剤が、(i)エピルビシン、オキサリプラチン、および5−フルオロウラシル、(ii)エピルビシン、オキサリプラチン、およびカペシタビン、(iii)エピルビシン、シスプラチン、および5−フルオロウラシル、(iv)エピルビシン、シスプラチン、およびカペシタビン、(v)フォリン酸、オキサリプラチン、および5−フルオロウラシルを含む、請求項16に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【発明を実施するための形態】
【0054】
確実に本開示がより容易に理解され得るように、まずある特定の用語を定義する。追加の定義は詳細な説明を通して記載される。
【0055】
用語「クローディン−18.2」はクローディン−18、アイソフォーム2を指す。用語「クローディン−18.2」はバリアント、ホモログ、オーソログ、およびパラログを含む。たとえば、ヒトクローディン−18.2タンパク質に特異的な抗体はある特定の場合に、カニクイザルなどのヒト以外の種由来のクローディン−18.2タンパク質と交差反応する場合がある。他の実施形態において、ヒトクローディン−18.2タンパク質に特異的な抗体は、完全にヒトクローディン−18.2タンパク質に特異的であり他の種または他の種類に対して交差反応性を示さない場合がある、またはある特定の他の種由来のクローディン−18.2と交差反応するが他の種すべてと交差反応するわけではない場合がある。
【0056】
用語「ヒトクローディン−18.2」は、ジェンバンクアクセッション番号NM_001002026を有するアミノ酸配列などのヒト由来のアミノ酸配列を有するクローディン−18.2タンパク質を指す。
【0057】
本明細書において言及される用語「抗体」は、抗体全体およびその任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)または単鎖を含む。抗体全体とは、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質類である。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてV
Hと略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン、C
H1、C
H2、およびC
H3からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてV
Lと略される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、C
Lを含む。V
HおよびV
L領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、その領域にはフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する。各V
HおよびV
Lは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、以下のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を仲介することができる。
【0058】
本明細書で用いられる用語、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片(たとえばクローディン−18.2タンパク質)を指す。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって行われ得ることが示されている。用語抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例としては、(i)V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインからなる1価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab')
2断片、(iii)V
HおよびC
H1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一のアームのV
LおよびV
HドメインからなるFv断片、(v)V
HドメインからなるdAb断片(Ward et al.、(1989)Nature 341:544−546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域であるナノボディが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるV
LおよびV
Hは別々の遺伝子によってコード化されるが、単一のタンパク質鎖としてそれらの作製を可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いてそれらを接続することができ、そのタンパク質鎖において、V
L領域およびV
H領域は対になって(単鎖Fv(scFv)として公知である)1価分子を形成する。たとえば、Bird et al.、(1988)Science 242:423−426;およびHuston et al.、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい)。そのような単鎖抗体も、用語抗体の「抗原結合部分」内に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、断片はインタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0059】
本明細書で用いられる「単離された抗体」は、実質的に異なる抗原特異性を有する他の抗体を含まない抗体を指す(たとえば、クローディン−18.2タンパク質を特異的に結合する単離された抗体には、クローディン−18.2タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的に含まない)。しかしながら、ヒトクローディン−18.2タンパク質を特異的に結合する単離された抗体は、他の種由来のクローディン−18.2タンパク質などの他の抗原に対して交差反応性を有してよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてよい。
【0060】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0061】
本明細書で用いられる用語「マウス抗体」は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がマウスの生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図されている。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のマウス抗体は、マウス生殖系列免疫グロブリン配列によってエンコードされていないアミノ酸残基を含むことができる(たとえば、インビトロのランダム変異もしくは部位特異的変異またはインビボの体細胞変異によって導入される変異)。しかしながら、本明細書で用いられる用語「マウス抗体」は、別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がマウスフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図されていない。
【0062】
用語「キメラ抗体」は、非ヒト源由来の遺伝子材料をヒト由来の遺伝子材料と組み合わせることによって作製された抗体を指す。あるいはより一般的に、キメラ抗体は、ある特定の種由来の遺伝子材料を別の種由来の遺伝子材料と共に有する抗体である。
【0063】
本明細書で用いられる用語「ヒト化抗体」は、ヒトにおいて天然に産生される抗体バリアントとの類似性を高めるようにそのタンパク質配列が修飾されている非ヒト種由来の抗体を指す。
【0064】
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書において、用語「抗原と特異的に結合する抗体」と交換可能に使用される。
【0065】
本明細書で用いられる「ヒトクローディン−18.2に特異的に結合する」抗体は、ヒトクローディン−18.2タンパク質(および場合により、1つまたは複数の非ヒト種由来のクローディン−18.2タンパク質)に結合するが、非クローディン−18.2タンパク質には実質的に結合しない抗体を指すことが意図されている。抗体がヒトクローディン−18.2タンパク質に「高親和性」に、つまり、好ましくは、1.0×10
−8M以下、より好ましくは、5.0×10
−9M以下のK
Dで結合する。
【0066】
本明細書で用いられる用語タンパク質または細胞に「実質的に結合しない」は、タンパク質または細胞に結合しない、またはそれらに高親和性を持って結合しない、すなわち、K
Dが1.0×10
−6M以上、より好ましくは1.0×10
−5M以上、より好ましくは1.0×10
−4M以上、より好ましくは1.0×10
−3M以上、さらにより好ましくは1.0×10
−2M以上でタンパク質または細胞に結合するという意味である。
【0067】
用語IgG抗体に対する「高親和性」は、標的抗原に対して、K
Dが1.0×10
−6M以下、より好ましくは5.0×10
−8M以下、さらにより好ましくは1.0×10
−8M以下、さらにより好ましくは5.0×10
−9M以下、さらにより好ましくは1.0×10
−9M以下である抗体を指す。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。たとえば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合は、K
Dが10
−6M以下、より好ましくは10
−7M以下、さらにより好ましくは10
−8M以下である抗体を指す。
【0068】
用語「EC
50」は、半数効果濃度としても公知であり、特定の暴露時間の後、基線値と最大値との中間の応答を引き起こす抗体濃度を指す。
【0069】
本明細書で用いられる用語「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」、または「ADCC」は細胞媒介性の免疫防御機構を指し、これにより、その膜−表面抗原が抗クローディン−18.2抗体などの抗体によって結合されている腫瘍細胞などの標的細胞を免疫系のエフェクター細胞が活発に溶解する。
【0070】
用語「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は一般に、IgG抗体およびIgM抗体のエフェクター機能を指し、それらの抗体は、表面抗原に結合されると古典的補体経路をもたらし、膜侵襲複合体の形成および標的細胞の溶解を誘導する。本開示の抗体は、クローディン−18.2に結合することにより、癌細胞に対してCDCを誘導する。
【0071】
用語「被験体」は任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、すべての脊椎動物、たとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの、哺乳類および非哺乳類を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの哺乳類が好ましい。
【0072】
用語「治療効果のある量」は、(癌などの)疾患または症状に関連付けられた症状を予防または寛解し、かつ/または疾患または症状の重症度を軽減するのに十分な本開示の抗体の量を意味する。治療効果のある量は、文脈の中で治療される疾患に対するものと理解され、ここで、実際の効果のある量は当業者によって容易に見極められる。
【0073】
用語「γδT細胞」は、T細胞受容体が1つのγ鎖および1つのδ鎖からなるT細胞を指す。ヒトγδT細胞は、感染性疾患でのストレス監視応答、自己免疫、および腫瘍における形質転換誘導性変化において重要な役割を果たす。抗原係合(engagement)の際、病変部位で活性化したγδT細胞は、他のエフェクター細胞の動員を媒介するサイトカインおよび/またはケモカインを供給し、ADCCなどの即時のエフェクター機能を示す。末梢血液中のほとんどのγδT細胞はVγ9Vδ2T細胞受容体を発現し、Vγ9Vδ2T細胞と呼ばれる。
【0074】
用語「γδT細胞を刺激する薬剤」は、具体的にはγδT細胞の活性化および増殖を誘導することによって、インビトロかつ/またはインビボで、γδT細胞、特にVγ9Vδ2T細胞の発達を刺激する化合物を指す。この用語は、好ましくはメバロン酸経路酵素であるファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)を阻害することによって、インビトロおよび/またはインビボで、哺乳類細胞において産生されるイソペンテニルピロリン酸(IPP)を増大する化合物に関することが好ましい。
【0075】
以下のサブセクションにおいて、本開示の様々な態様をさらに詳細に説明する。
【0076】
[ヒトクローディン−18.2に結合特異性を有する抗クローディン−18.2抗体および有益な機能特性]
【0077】
本開示の例示的な抗体は、高い親和性で特異的にヒトクローディン−18.2に結合する。具体的には、本開示の例示的な抗体は、IMAB362のEC
50値と同程度のEC
50値でヒトクローディン−18.2タンパク質に結合するが、より高いADCC活性、CDC活性、および/またはクローディン−18.2結合安定性を有する。本開示の例示的な抗体は、ヒトクローディン−18.1に結合しない。
【0078】
本開示の好ましい抗体はモノクローナル抗体である。追加的に、または代替的に、抗体は、たとえばマウス、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体であり得る。
【0079】
[モノクローナル抗クローディン−18.2抗体]
【0080】
本開示の例示的な抗体は、以下に説明するようにかつ以下の実施例において構造的かつ化学的に特徴付けられるモノクローナル抗体であるか、またはその抗原結合部分である。例示的な抗クローディン−18.2抗体またはその抗原結合部分のV
Hアミノ酸配列は、配列番号:17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、または49に記載される。例示的な抗クローディン−18.2抗体または抗原結合部分のV
Lアミノ酸配列は、配列番号:50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、または66に示される。抗体の重鎖/軽鎖可変領域を含んでいてよい例示的な抗クローディン−18.2抗体または抗原結合部分は、以下の表1に要約されており、クローンの一部は同じV
HまたはV
Lを共有する。例示的な抗クローディン−18.2抗体は、重鎖定常領域および軽鎖定常領域をさらに含んでいてもよく、重鎖定常領域および軽鎖定常領域はそれぞれ、配列番号:67および68に、または代替的にそれぞれ配列番号:89および90に記載されており、重鎖可変領域のC末端は重鎖定常領域のN末端に連結され、軽鎖可変領域のC末端は軽鎖定常領域のN末端に連結されている。
【0081】
表1における重鎖可変領域のCDRおよび軽鎖可変領域のCDRはKabat番号付けシステムによって定義されている。しかしながら、当技術分野で周知であるように、CDR領域は、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいた、Chothia、IMGT、AbM、またはContact番号付けシステム/法などの他のシステムによって決定することもできる。
表1 重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列番号
【表1】
【0082】
ヒトクローディン−18.2に結合する他の抗クローディン−18.2抗体のV
Hおよび/またはV
L配列(またはCDR配列)は、本開示の抗クローディン−18.2抗体のV
Hおよび/またはV
L配列(またはCDR配列)と「混ぜて組み合わせる」ことができる。V
HおよびV
L鎖(またはそのような鎖内のCDR)が混ぜて組み合わされる際、特定のV
H/V
Lの対合由来のV
H配列は、構造的に類似のV
H配列と置き換えられることが好ましい。同様に、特定のV
H/V
Lの対合由来のV
L配列は、構造的に類似のV
L配列と置き換えられることが好ましい。
【0083】
したがって、一実施形態において、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、
(a)上記表1に列挙されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
(b)上記表1に列挙されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または別の抗クローディン−18.2抗体のV
Lを含み、ここで、抗体はヒトクローディン−18.2を特異的に結合する。
【0084】
別の実施形態において、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、
(a)上記表1に列挙される重鎖可変領域のCDR1、CDR2,およびCDR3領域、および
(b)上記表1に列挙される軽鎖可変領域のCDR1、CDR2,およびCDR3領域、または別の抗クローディン−18.2抗体のCDRを含み、ここで、抗体はヒトクローディン−18.2を特異的に結合する。
【0085】
さらに別の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、ヒトクローディン−18.2を結合する他の抗体のCDR、たとえば重鎖可変領域由来のCDR1および/またはCDR3、ならびに/または異なる抗クローディン−18.2抗体の軽鎖可変領域由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3、と組み合わされた抗クローディン−18.2抗体の重鎖可変CDR2領域を含む。
【0086】
さらに、CDR3ドメインは、CDR1および/またはCDR2ドメインから独立して単独で、同族抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができること、CDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有する複数の抗体を予測通りに産生することができることは、当技術分野では周知である。たとえば、Klimka et al.、British J.of Cancer 83(2):252−260(2000);Beiboer et al.、J.Mol.Biol.296:833−849(2000);Rader et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8910−8915(1998);Barbas et al.、J.Am.Chem.Soc.116:2161−2162(1994);Barbas et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2529−2533(1995);Ditzel et al.、J.Immunol.157:739−749(1996);Berezov et al.、BIAjournal 8:Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.、J.Biochem(Tokyo)117:452−7(1995);Bourgeois et al.、J.Virol 72:807−10(1998);Levi et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:4374−8(1993);Polymenis and Stoller、J.Immunol.152:5218−5329(1994)およびXu and Davis、Immunity 13:37−45(2000)を参照されたい。米国特許第6,951,646号明細書、同第6,914,128号明細書、同第6,090,382号明細書、同第6,818,216号明細書、同第6,156,313号明細書、同第6,827,925;5,833,943号明細書、同第5,762,905号明細書、および同第5,760,185号明細書も参照されたい。これらの参考文献の各々は、本明細書にその全体が参照により引用される。
【0087】
別の実施形態において、本開示の抗体は、抗クローディン−18.2抗体の重鎖可変領域のCDR2、ならびに少なくとも抗クローディン−18.2抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR3、または別の抗クローディン−18.2抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR3を含み、ここで、抗体はヒトクローディン−18.2に特異的に結合することができる。これらの抗体は、(a)クローディン−18.2と結合するために競合し、(b)機能特性を保持し、(c)同じエピトープに結合し、かつ/または(d)本開示の抗クローディン−18.2抗体と類似の結合親和性を有することが好ましい。さらに別の実施形態において、抗体は、抗クローディン−18.2抗体の軽鎖可変領域のCDR2、または別の抗クローディン−18.2抗体の軽鎖可変領域のCDR2をさらに含んでもよく、ここで、抗体はヒトクローディン−18.2に特異的に結合することができる。別の実施形態において、本開示の抗体は、抗クローディン−18.2抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域のCDR1、または別の抗クローディン−18.2抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域のCDR1を含んでもよく、ここで、抗体はヒトクローディン−18.2に特異的に結合することができる。
【0089】
別の実施形態において、本開示の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列の重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含み、当該配列は、1つまたは複数の保存的修飾分だけ本開示の抗クローディン−18.2抗体の配列とは異なる。抗原結合を除去しないある特定の保存的配列修飾が行われ得ることは当技術分野において理解される。たとえば、Brummell et al.、(1993)Biochem 32:1180−8;de Wildt et al.、(1997)Prot.Eng.10:835−41;Komissarov et al.、(1997)J.Biol.Chem.272:26864−26870;Hall et al.、(1992)J.Immunol.149:1605−12;Kelley and O'Connell(1993)Biochem.32:6862−35;Adib−Conquy et al.、(1998)Int.Immunol.10:341−6およびBeers et al.、(2000)Clin.Can.Res.6:2835−43を参照されたい。
【0090】
したがって、一実施形態において、抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびに/またはCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域のCDR1配列は、上記表1に列挙された配列、および/またはその保存的修飾を含み、かつ/または
(b)重鎖可変領域のCDR2配列は、上記表1に列挙された配列、およびその保存的修飾を含み、かつ/または
(c)重鎖可変領域のCDR3配列は、上記表1に列挙された配列、およびその保存的修飾を含み、かつ/または
(d)軽鎖可変領域のCDR1および/またはCDR2および/またはCDR3配列は、上記表1に列挙された配列、および/またはその保存的修飾を含み、かつ
(e)抗体はヒトクローディン−18.2を特異的に結合する。
【0091】
本開示の抗体は、上述した次の機能特性、ヒトクローディン−18.2への高親和性結合、およびクローディン−18.2を発現する細胞に対してADCCまたはCDC活性を誘発する能力などのうち1つまたは複数を有する。
【0092】
様々な実施形態において、抗体は、たとえば、マウス、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体であってよい。
【0093】
本明細書で用いられる用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響しない、または当該結合特性を著しく改変しないアミノ酸修飾を指すことを意図するものである。そのような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、付加、および欠失が挙げられる。修飾は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの当技術分野で公知の標準的な技術によって本開示の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシ)、および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含むアミノ酸が挙げられる。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の他のアミノ酸残基で置換され得、改変された抗体は、本明細書に記載される機能アッセイを用いて、保持された機能(すなわち上述の機能)に関して試験することができる。
【0095】
本開示の抗体は、修飾された抗体を設計するための出発材料として本開示の抗クローディン−18.2抗体の1つまたは複数のV
H/V
L配列を有する抗体を使用して、調製することができる。一方または両方の可変領域(すなわち、V
Hおよび/またはV
L)内の、たとえば、1つまたは複数のCDR領域内のかつ/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の、1つまたは複数の残基を修飾することによって、結合親和性を向上させるように、かつ/またはある特定の動物種において天然に産生される抗体バリアントへの類似性を高めるように抗体を操作することができる。たとえば、フレームワーク領域は、ヒト化抗体を提供するように修飾される。追加的に、または代替的に、定常領域内の残基を修飾することによって、たとえば抗体のエフェクター機能を改変させるように抗体を操作することができる。
【0096】
特定の実施形態において、CDR移植法を用いて抗体の可変領域を操作することができる。抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由ために、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間でCDR外の配列よりも多種多様である。CDR配列は大部分の抗体−抗原相互作用を担っているため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植された特定の天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(たとえば、Riechmann et al.、(1998)Nature 332:323−327;Jones et al.、(1986)Nature 321:522−525;Queen et al.、(1989)Proc.Natl.Acad.U.S.A.86:10029−10033を参照されたい。米国特許第 5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書、同第5,585,089号明細書、同第5,693,762号明細書、および同第6,180,370号明細書も参照されたい)。
【0097】
したがって、本開示の別の実施形態は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関係し、当該抗体は、上述の本開示の配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または上述の本開示の配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む。これらの抗体は、本開示のモノクローナル抗体のV
HおよびV
LCDR配列を含むと同時に、異なるフレームワーク配列を含むことができる。
【0098】
そのようなフレームワーク配列は、公開されたDNAデータベースまたは生殖系列抗体遺伝子配列を含む公表された参考文献から得ることができる。たとえば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットで入手可能、www.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbase)ならびにKabat et al.、(1991)、上記で引用された;Tomlinson et al.、(1992)J.Mol.Biol.227:776−798;およびCox et al.、(1994)Eur.J.Immunol.24:827−836;に見出すことができ、これら各々の内容は、参照により本明細書において明確に引用される。別の例として、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、ジェンバンクデータベースに見出すことができる。たとえば、HCo7HuMAbマウスに認められる以下の重鎖生殖系列配列は、付随のジェンバンクアクセッション番号1−69(NG−−0010109、NT−−024637およびBC070333)、3−33(NG−−0010109およびNT−−024637)、および3−7(NG−−0010109およびNT−−024637)において入手可能である。別の例として、HCo12HuMAbマウスに認められる以下の重鎖生殖系列配列は、付随のジェンバンクアクセッション番号1−69(NG−−0010109、NT−−024637、およびBC070333)、5−51(NG−−0010109およびNT−−024637)、4−34(NG−−0010109およびNT−−024637)、3−30.3(CAJ556644)および3−23(AJ406678)において入手可能である。
【0099】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知であるGapped BLAST(Altschul et al.、(1997)、上記)と呼ばれる配列類似性検索法の1つを用いて、編集されたタンパク質配列データベースに対して比較される。
【0100】
本開示の抗体において使用するための好ましいフレームワーク配列は、本開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似の配列である。フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子に認められる配列と同一の配列を有するV
HのCDR1、CDR2、およびCDR3配列をフレームワーク領域に移植することができる、または、生殖系列配列と比較して1つまたは複数の変異を含むCDR配列をフレームワーク領域に移植することができる。たとえば、ある特定の例において、フレームワーク領域内の残基を変異させて、抗体の抗原結合能力を維持または増強することは有益であることが見出されている(たとえば、米国特許第5,530,101号明細書、同第5,585,089号明細書、同第5,693,762号明細書、および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0101】
別の種類の可変領域修飾は、V
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって関心対象の抗体の1つまたは複数の結合特性(たとえば、親和性)を向上させることである。部位特異的変異誘発またはPCR媒介変異誘発を実施して、変異を導入することができる、または抗体結合への効果もしくは関心対象の他の機能特性を、当技術分野で公知のインビトロまたはインビボアッセイで評価することができる。(当技術分野で公知の)保存的修飾を導入することが好ましい。変異はアミノ酸置換、付加、または欠失であってよいが、置換が好ましい。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4、または5個を超えない残基が改変される。
【0102】
したがって、別の実施形態において、本開示により、単離された抗クローディン−18.2モノクローナル抗体またはその抗原結合部分が提供され、単離された抗クローディン−18.2モノクローナル抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、(a)本開示の配列または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されているアミノ酸配列を含むV
HCDR1領域、(b)本開示の配列または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されているアミノ酸配列を含むV
HCDR2領域、(c)本開示の配列または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されているアミノ酸配列を含むV
HCDR3領域、(d)本開示の配列または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されているアミノ酸配列を含むV
LCDR1領域、(e)本開示の配列または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されているアミノ酸配列を含むV
LCDR2領域、および(f)本開示の配列または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されているアミノ酸配列を含むV
LCDR3域、を含む。
【0103】
本開示の操作された抗体は、たとえば、抗体の特性を向上させるように、V
Hおよび/またはV
L内のフレームワーク残基に修飾がなされた抗体を含む。典型的に、そのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を減少するためになされる。たとえば、1つのアプローチは、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異させる(backmutate)」ことである。より具体的には、体細胞変異を経た抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定することができる。
【0104】
別の種類のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低減するために、フレームワーク領域内の、またはさらには1つまたは複数のCDR領域内の、1つまたは複数の残基を変異させることを伴う。このアプローチは、「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許公報第20030153043号明細書においてさらに詳細に説明されている。
【0105】
フレームワークまたはCDR領域内の修飾に加えて、またはその代替法として、本開示の抗体を、Fc領域内の修飾を含むように、典型的には、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害などの、抗体の1つまたは複数の機能特性を改変させるように操作することができる。さらに、本開示の抗体は、化学的に修飾することができる(たとえば、1つまたは複数の化学的部分を抗体に結合させることができる)、またはそのグリコシル化を改変させ、さらに抗体の1つまたは複数の機能特性を改変させることができる。
【0106】
一実施形態において、C
H1のヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が改変されるように、たとえば、増加するかまたは減少するように、修飾される。このアプローチは、米国特許第5,677,425号明細書においてさらに説明されている。C
H1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、たとえば軽鎖および重鎖のアセンブリを促進するように、または抗体の安定性を増加させるかまたは減少させるように、改変される。
【0107】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるように変異される。より具体的には、抗体が、天然のFc−ヒンジドメインSpA結合に比べて損なわれているStaphylococcylタンパク質A(SpA)結合を有するように、1つまたは複数のアミノ酸変異をFcヒンジ断片のC
H2−C
H3ドメイン境界領域に導入する。このアプローチは、米国特許第6,165,745号明細書においてさらに詳細に説明されている。
【0108】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化は修飾される。たとえば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を有さない)。グリコシル化は、たとえば、抗原に対する抗体の親和性を高めるように、改変され得る。そのような炭水化物修飾は、たとえば、抗体配列内のグリコシル化の1つまたは複数の部位を改変することによって達成することができる。たとえば、1つまたは複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の排除をもたらし、それによりその部位でのグリコシル化を排除する、1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことができる。そのような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高める場合がある。たとえば、米国特許第5,714,350号明細書、同6,350,861号明細書を参照されたい。
【0109】
追加的に、または代替的に、フコシル残基の量が低減した低フコシル化抗体またはbisecting GlcNac構造が増大した抗体などの、改変された種類のグリコシル化を有する抗体を作製することができる。そのような改変されたグリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増大することが実証されている。そのような炭水化物修飾は、たとえば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞内で抗体を発現することによって達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野で説明されており、本開示の組換え抗体を自身の中に発現させて、それにより改変されたグリコシル化を有する抗体を産生させる宿主細胞として使用することができる。たとえば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、Ms704、Ms705、およびMs709細胞株で発現された抗体がその炭水化物上のフコースを欠くように、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子であるFUT8(α(1,6)−フコシルトランスフェラーゼ)を欠く。Ms704、Ms705、およびMs709 FUT8−/−細胞株は、2つの置換ベクターを使用し、CHO/DG44細胞においてFUT8遺伝子の標的破壊によって作成した(米国特許公報第20040110704号明細書およびYamane−Ohnuki et al.、(2004)Biotechnol Bioeng 87:614−22を参照されたい)。別の例として、欧州特許出願第1,176,195号明細書には、α−1,6結合関連酵素を低減または排除することによって、細胞株に発現された抗体が低フコシル化を示すように、機能が破壊されたFUT8遺伝子(FUT8遺伝子はフコシルトランスフェラーゼをエンコードする)を有するそのような細胞株について記載されている。欧州特許出願1,176,195号明細書にはまた、抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンにフコースを付加するための酵素活性が低い、またはその酵素活性を有さない細胞株、たとえばラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)について記載されている。国際公開第03/035835号には、フコースをAsn(297)連結炭水化物に結合させる能力が低減され、その宿主細胞に発現された抗体の低フコシル化ももたらす、バリアントCHO細胞株、Lec13細胞について記載されている(Shields et al.、(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740も参照されたい)。国際公開第06/089231号に記載されるように、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体はまた、鶏卵中で産生させることができる。代替的には、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、アオウキクサ属などの植物細胞中で産生させることができる。国際公開第99/54342号には、操作された細胞株において発現された抗体が、bisecting GlcNac構造の増加を示し、結果として抗体のADCC活性の増大をもたらすように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(たとえば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株について記載されている(Umana et al.、(1999)Nat.Biotech.17:176−180)も参照されたい)。代替的には、抗体のフコース残基はフコシダーゼ酵素を使用して切断することができ、たとえば、フコシダーゼであるα−L−フコシダーゼは抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.、(1975)Biochem.14:5516−23)。
【0110】
本開示によって企図される本明細書における抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体は、たとえば、抗体の生物学的(たとえば血清)半減期を延長するためにペグ化することができる。抗体をペグ化するに、典型的には、抗体またはその断片を、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)基が抗体または抗体断片に結合される条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのPEGと反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(または類似反応性水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応、またはアルキル化反応を介して実行することが好ましい。本明細書で用いられるように、用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C
1−C
10)アルコキシもしくはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために用いられてきたPEGのいずれかの形態を包含することを意図するものである。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は、当技術分野で公知であり、本開示の抗体に適用することができる。たとえば、欧州特許出願0154316号明細書および欧州特許出願0401384号明細書を参照されたい。
【0112】
本開示の抗体は、その種々のクラスを検出および/または区別するために、その様々な物性によって特徴付けることができる。
【0113】
たとえば抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれかにおいて、1つまたは複数のグリコシル化部位を含むことができる。そのようなグリコシル化部位により、改変された抗原結合に起因して、抗体の免疫原性が増大するか、または抗体のpKが改変されることになる場合がある(Marshall et al(1972)Annu Rev Biochem 41:673−702;Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489−94;Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099−109;Spiro(2002)Glycobiology 12:43R−56R;Parekh et al(1985)Nature 316:452−7;Mimura et al.、(2000)Mol Immunol 37:697−706)。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含むモチーフにおいて生じることが公知である。いくつかの場合において、可変領域グリコシル化を含まない抗クローディン−18.2抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、またはグリコシル化領域内の残基を変異させるかのいずれかによって、達成することができる。
【0114】
好ましい実施形態において、抗体はアスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミドは、N−GまたはD−G配列上で起こり、結果として、ポリペプチド鎖にねじれを導入し、その安定性を減少させる(イソアスパラギン酸効果)イソアスパラギン酸残基が作られる場合がある。
【0115】
各抗体は、それぞれに等電点(pI)を有することになり、等電点は一般に、6と9.5との間のpH範囲になる。IgG1抗体のpIは典型的に、7〜9.5のpH範囲内になり、IgG4抗体のpIは典型的に、6〜8のpH範囲内になる。通常の範囲外にあるpIを有する抗体は、インビボ条件下で、アンフォールディングおよび不安定性をいくらか有する場合があるという推測がある。したがって、通常の範囲にあるpI値を含む抗クローディン−18.2抗体を有することが好ましい。これは、通常の範囲にpIを有する抗体を選択するか、または荷電表面残基を変異させるかのいずれかによって、達成することができる。
【0116】
[本開示の抗体をエンコードする核酸分子]
【0117】
別の態様において、本開示は、本開示の抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域またはCDRをエンコードする核酸分子を提供する。核酸は、全細胞に、細胞可溶化物に、または部分的に精製された、もしくは実質的に純粋な形において、存在してよい。核酸は、標準的な手法によって、他の細胞成分または他の汚染物質、たとえば、他の細胞の核酸またはタンパク質から精製されると、「単離される」または「実質的に純粋な状態にされる」。本開示の核酸は、たとえば、DNAまたはRNAであってもよく、介在配列を含んでも含まなくてよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0118】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学的手法を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(たとえば、下でさらに説明されるヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する遺伝子導入マウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体に関して、ハイブリドーマによって作製された抗体の軽鎖および重鎖をエンコードするcDNAは、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング手法によって得ることができる。(たとえば、ファージディスプレイ手法を使用して)免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られる抗体に関して、そのような抗体をエンコードする核酸は、遺伝子ライブラリーから回収することができる。
【0119】
本開示の好ましい核酸分子は、クローディン−18.2モノクローナル抗体またはCDRのV
HおよびV
L配列をエンコードする核酸分子を含む。V
HおよびV
LセグメントをエンコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片は、標準的な組換えDNA手法によって、たとえば、可変領域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するように、さらにマニピュレートすることができる。これらのマニピュレーションにおいて、V
LまたはV
HをエンコードするDNA断片は、抗体定常領域または可動性リンカーなどの、別のタンパク質をエンコードする別のDNA断片に機能可能に連結している。この文脈で使用される用語「機能可能に連結している」は、2つのDNA断片が、その2つのDNA断片によってエンコードされたアミノ酸配列がインフレームのままであるように、接続されることを意味することを意図するものである。
【0120】
単離された、V
H領域をエンコードするDNAは、V
HをエンコードするDNAを、重鎖定常領域(C
H1、C
H2およびC
H3)をエンコードする別のDNA分子に機能可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり、これらの領域を包むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgD定常領域であってよいが、最も好ましくは、IgG1またはIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子に関して、V
HをエンコードするDNAは、重鎖C
H1定常領域のみをエンコードする別のDNA分子に機能可能に連結することができる。
【0121】
単離された、V
L領域をエンコードするDNAは、V
LをエンコードするDNAを、軽鎖定常領域C
Lをエンコードする別のDNA分子に機能可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり、これらの領域を包むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ定常領域またはλ定常領域であってよい。
【0122】
scFv遺伝子を作製するために、V
HおよびV
L配列が可動性リンカーによって接続されておりV
HおよびV
L配列が連続的な単一鎖タンパク質として発現され得るように、V
HおよびV
LをエンコードするDNA断片は、可動性リンカーをエンコードする(たとえば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)3をエンコードする)別の断片に機能可能に連結される(たとえば、Bird et al.、(1988)Science 242:423−426;Huston et al.、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCafferty et al.,、(1990)Nature 348:552−554を参照されたい)。
【0123】
[本開示のモノクローナル抗体の産生]
【0124】
本開示のモノクローナル抗体(mAb)は、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495の周知の体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)手法を用いて産生され得る。モノクローナル抗体を産生するための他の実施形態は、Bリンパ球のウイルスまたは発癌性形質転換およびファージディスプレイ手法を含む。キメラまたはヒト化抗体も当技術分野で周知である。米国特許第4,816,567号明細書、同第5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書、同第5,585,089号明細書、同第5,693,762号明細書、同第6,827,925;5,833,943号明細書、同第5,762,905号明細書、および同第6,180,370号明細書も参照されたい。これらの内容はその全体を参照により本明細書に明確に引用される。
【0125】
[本開示のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成]
【0126】
本開示の抗体はまた、たとえば、組換えDNA手法と遺伝子トランスフェクション法との組み合わせを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生することができる(たとえば、Morrison、S.(1985)Science 229:1202)。一実施形態において、標準的な分子生物学的手法によって得られた部分的なまたは完全長の軽鎖および重鎖をエンコードするDNAは、遺伝子が転写および翻訳調節配列に機能可能に連結されるように、1つまたは複数の発現ベクターに挿入される。この文脈において、用語「機能可能に連結される」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するというそれらの所期の機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味することを意図するものである。
【0127】
用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および抗体遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御要素(たとえば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図するものである。そのような調節配列は、たとえば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990))において説明される。哺乳類宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(たとえばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳類細胞中での高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素を含む。代替的には、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターなどの非ウイルス性調節配列を使用することができる。さらに、SRαプロモーター系などの異なる源由来の配列から構成される調節要素、SRαプロモーター系は、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復由来の配列を含む(Takebe et al.、(1988)Mol.Cell.Biol.8:466−472)。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選ばれる。
【0128】
抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、同じまたは別々の発現ベクターに挿入することができる。好ましい実施形態において、V
Hセグメントがベクター内のC
Hセグメントに機能可能に連結され、V
Lセグメントがベクター内のC
Lセグメントに機能可能に連結されるように、可変領域を使用してそれらを所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域をすでにエンコードしている発現ベクターに挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作出する。追加的に、または代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞由来の抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをエンコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0129】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中のベクターの複製を調節する配列(たとえば、複製開始点)などの追加の配列および選択可能マーカー遺伝子を保有することができる。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターがそこに導入されている宿主細胞の選択を促進する(たとえば、米国特許第4,399,216号明細書、同第4,634,665号明細書、および同第5,179,017号明細書を参照されたい)。たとえば、典型的に選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物への抵抗性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子の例として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅をと共にdhfr−宿主細胞において使用するため)およびネオ遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0130】
軽鎖および重鎖の発現に関して、重鎖および軽鎖をエンコードする発現ベクターは、標準的な手法によって宿主細胞にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の様々な形は、外来DNAを原核または真核宿主細胞に導入するために通常用いられる各種の手法、たとえば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストラントランスフェクション法などを包含することを意図するものである。原核または真核宿主細胞のいずれかにおいて本開示の抗体を発現することは理論的には可能であるが、真核細胞における、最も好ましくは哺乳類宿主細胞における、抗体の発現が最も好ましく、それは、そのような真核細胞、特に哺乳類細胞は、適切に折りたたまれかつ免疫学的に活性な抗体を組み立て分泌する可能性が原核細胞より高いためである。
【0131】
本開示の組換え抗体を発現する好ましい哺乳類宿主細胞として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(たとえばR.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601−621に記載されているようなDHFR選択可能マーカーと共に使用される、Urlaub and Chasin、(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220において説明される、dhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。特にNSO骨髄腫細胞との使用に関して、別の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号、国際公開第89/01036号、および欧州特許出願第338,841号明細書に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をエンコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入される際、宿主細胞中で抗体が発現するのに、またはより好ましくは、宿主細胞が成長する培養培地へ抗体が分泌されるのに十分な時間の間、宿主細胞を培養することによって、抗体は産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収することができる。
【0133】
本開示の抗体は、治療剤に複合させて、抗体薬物複合体(ADC)などの免疫複合体を形成することができる。好適な治療剤としては、細胞毒、アルキル化剤、DNAマイナーグルーブバインダー、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、ヒートショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、および抗有糸分裂剤が挙げられる。ADCにおいて、抗体および治療剤は、ペプチジル、ジスルフィド、またはヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介して複合させることが好ましい。より好ましくは、リンカーは、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Pro−Val−Gly−Val−Val、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Ala−Ala−Asn、Cit−Cit、Val−Lys、Lys、Cit、Ser、またはGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号明細書、同第6,989,452号明細書、および同第7,129,261号明細書、国際公開第02/096910号、同第07/038,658号、同07/051,081号、同第07/059,404号、同第08/083,312号、および同第08/103,693号、米国特許公報第20060024317号明細書、同第20060004081号明細書、および同第20060247295号明細書に記載されるように調製することができ、これらの開示は、参照により本明細書に引用される。
【0135】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの他の機能分子、たとえば、別のペプチドまたはタンパク質(たとえば、別の抗体または受容体のためのリガンド)に連結されて、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成する本開示の1つまたは複数の抗体を含む、二重特異性分子を特徴とする。したがって、本明細書で用いられる「二重特異性分子」は、3つ以上の特異性を有する分子を含む。
【0136】
ある実施形態において、二重特異性分子は、抗Fc結合特異性および抗クローディン−18.2結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、抗エンハンスメント因子(EF)、たとえば、細胞傷害活性に関与する表面タンパク質に結合し、それにより標的細胞に対する免疫応答を増大させる分子に関するものであってよい。たとえば、抗エンハンスメント因子は、細胞傷害性T−細胞(たとえば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、またはICAM−1を介して)または他の免疫細胞を結合させることができ、標的細胞に対する免疫応答を増大させる。
【0137】
二重特異性分子は、多くの異なる形式およびサイズであってよい。サイズスペクトルの一方の端において、二重特異性分子は、特異性が同一である2本の結合アームを有する代わりに、それぞれが異なる特異性を有する2本の結合アームを有すること以外は、伝統的な抗体形式を保持する。他方の端においては、ペプチド鎖によって連結された2つの単鎖抗体断片(scFv)からなる二重特異性分子、いわゆるBs(scFv)
2構築物がある。中間的なサイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結された2つの異なるF(ab)断片を含む。これらおよび他の形式の二重特異性分子は、遺伝子操作、体細胞ハイブリダイゼーション法、または化学的方法によって調製することができる。たとえば、Kufer et al、上記で引用された;Cao and Suresh、Bioconjugate Chemistry、9(6)、635−644(1998);and van Spriel et al.,、Immunology Today、21(8)、391−397(2000)、およびこれに引用される参考文献を参照されたい。
【0138】
[抗体をエンコードするまたは抗体を持つ腫瘍溶解性ウイルス]
【0139】
腫瘍溶解性ウイルスは癌細胞を感染させ、死滅させることが好ましい。本開示の抗体は、腫瘍溶解性ウイルスと併せて使用することができる。代替的には、本開示の抗体をエンコードする腫瘍溶解性ウイルスは、人体に導入することができる。
【0141】
別の態様において、本開示は、医薬的に許容される担体と共に処方された本開示の1つまたは複数の抗体を含む医薬組成物を提供する。組成物は、別の抗体または薬物などの、1つまたは複数の追加の医薬的に活性な成分を任意選択で含有してよい。本開示の医薬組成物はまた、たとえば、別の抗癌剤、別の抗炎症剤、またはワクチンとの併用療法において投与することができる。
【0142】
医薬組成物は任意の数の賦形剤を含むことができる。使用できる賦形剤としては、担体、界面活性剤、増粘または乳化剤、固形バインダー、分散または懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存料、等張剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な賦形剤の選択および使用は、Gennaro、ed.、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、20th Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 2003)において教示されており、その開示は参照により本明細書に引用される。
【0143】
医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または上皮投与(たとえば、注射または点滴によって)に好適であることが好ましい。投与の経路に応じて、活性成分は、酸の作用、および活性成分を失活させる場合がある他の天然の条件から保護されるように、材料でコーティングすることができる。本明細書で用いられる語句「非経口投与」は、経腸および局所投与以外の通常注射による投与様式を意味し、限定することなく、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射ならびに点滴を含む。代替的には、本開示の抗体は、局所、上皮、または粘膜投与経路などの、たとえば、鼻腔内に、経口的に、経膣的に、直腸に、舌下で、または局所的に、非経口ではない経路を介して投与することができる。
【0144】
医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液の状態であってよい。医薬組成物はまた、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に好適な他の規則構造において処方されてもよい。
【0145】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分量は、治療される被験体および特定の投与様式に依存して異なることになり、一般に、治療効果を生む組成物量となる。一般に、この量は、医薬的に許容される担体と組み合わせて100パーセント中、約0.01%から約99パーセントまでの有効成分、好ましくは約0.1%から約70%までの、最も好ましくは約1%から約30%までの有効成分の範囲となる。
【0146】
投与レジメンは、最適な所望の応答(たとえば、治療応答)が得られるように調整される。たとえば、1回大量投与を行うことができ、分割用量を経時的に数回投与することができ、または治療状況の緊急性に従って用量を減らすことも増やすこともできる。投与の容易性および投薬量の均一性に関して、単位剤形で非経口組成物を処方することは特に有利である。本明細書で用いられる単位剤形は、治療される被験体に対する単位投薬量として好適な、物理的に分離した単位を指す。各単位は、必要な医薬品担体と共同して、所望の治療効果を生むように計算された所定の有効成分量を含有する。代替的には、抗体は、徐放性処方として投与することができ、その場合、必要とされる投与頻度はより少ない。
【0147】
抗体の投与に関して、投薬量は、受容者の体重の約0.0001から100mg/kgまでの範囲であってもよく、より一般には0.01から5mg/kgであってよい。たとえば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、または10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲内のであってよい。例示的な治療体制は、週1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、月1回、3ヵ月毎に1回、または3ヵ月から6ヵ月毎に1回の投与を含意する。本開示の抗クローディン−18.2抗体の好ましい投薬レジメンとしては、静脈内投与を介した1mg/kg体重または3mg/kg体重が挙げられ、以下の投薬計画(i)4週間毎に6回投薬、その後3ヵ月毎に、(ii)3週間毎に、(iii)3週間毎に3mg/kg体重を1回、その後1mg/kg体重のうち1つを使用して抗体が与えられる。いくつかの方法において約1〜1000μg/mlの、いくつかの方法においては約25〜300μg/mlのプラズマ抗体濃度を達成するように、投薬量は調整される。
【0148】
本開示の抗クローディン−18.2抗体の「治療効果のある投薬量」は、疾病症状の重症度の低下、疾病症状がない期間の頻度および長さの増大、または疾病の苦痛による機能障害または能力障害の予防をもたらすことが好ましい。たとえば、腫瘍を持つ被験体の治療に関して、「治療効果のある投薬量」は、無治療の被験体と比べて、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、腫瘍成長を阻害することが好ましい。治療用抗体の治療効果のある有効量は、腫瘍サイズを低減することができるか、または被験体の症状を寛解し、被験体は典型的にはヒトであるか、または別の哺乳類であってよい。
【0149】
医薬組成物は、植込錠、経皮パッチ、マイクロカプセル化送達系を含む、放出制御処方であってよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。たとえば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson、ed.、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978を参照されたい。
【0150】
治療用組成物は、(1)針なし皮下注射装置(たとえば、米国特許第5,399,163号明細書、同第5,383,851号明細書、同第5,312,335号明細書、同第5,064,413号明細書、同第4,941,880号明細書、同第4,790,824号明細書、および同第4,596,556号明細書)、(2)マイクロ注入ポンプ(米国特許第4,487,603号明細書)、(3)経皮性装置(米国特許第4,486,194号明細書)、(4)注入機器(米国特許第4,447,233号明細書および同第4,447,224号明細書)ならびに(5)浸透圧装置(米国特許第4,439,196号明細書および同第4,475,196号明細書)などの医療用装置を介して投与することができ、これらの開示は、参照により本明細書に引用される。
【0151】
特定の実施形態において、本開示のモノクローナル抗体は、インビボで確実に適切に分配されるように処方することができる。たとえば、本開示の治療用抗体が確実に血液脳関門を超えるために、抗体をリポソームに入れて処方することができ、リポソームは、特定の細胞または器官への選択的輸送を増強するためのターゲティング部分をさらに含んでよい。たとえば、米国特許第4,522,811号明細書、同第5,374,548号明細書、同第5,416,016号明細書、および同第5,399,331号明細書、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685;Umezawa et al.,、(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038;Bloeman et al.、(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.、(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180;Briscoe et al.、(1995)Am.J.Physiol.1233:134;Schreier et al.、(1994)J.Biol.Chem.269:9090;Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;およびKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0153】
本開示の抗体(組成物、二重特異性、および免疫複合体)は、たとえば癌の診断、治療、および/または予後に関与する、数多くのインビトロおよびインビボでの有用なものを有する。抗体は、腫瘍成長を阻害するために、たとえばインビボで、ヒト被験体に投与することができる。癌の診断および予後において、関心対象の組織試料を収集して、本開示の抗体に接触させることができ、ここで、ある特定の量のクローディン−18.2がある特定の場所または細胞の型において検出された場合、被験体は癌と診断されてもよく、クローディン−18.2発現の増加/減少により、癌の発達/寛解が表される。
【0154】
癌細胞の増殖および生存を阻害するという抗クローディン−18.2抗体の能力を考慮に入れると、本開示は、被験体における腫瘍細胞の成長を阻害する方法を提供し、当該方法は、腫瘍の成長が被験体において阻害されるように、本開示の抗体を被験体に投与することを含む。本開示の抗体によって治療され得る腫瘍の非限定的な例としては、これらに限定されないが、原発のかつ/または転移性の、膵臓癌、胃癌、大腸癌、食道癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、および膀胱癌が挙げられる。さらに、その成長が本開示の抗体を使用して阻害される難治性または再発性の悪性腫瘍が挙げられる。
【0155】
本開示のこれらおよび他の方法は、以下でさらに詳細に論じられる。
【0157】
別の態様において、本開示は、本開示の例示的な抗クローディン−18.2抗体(またはその抗原結合部分)が、被験体における腫瘍成長の阻害において有効な1つまたは複数の追加の抗体と同時投与される、併用治療の方法を提供する。一実施形態において、本開示は、被験体における腫瘍成長を阻害するための方法を提供し、当該方法は、抗クローディン−18.2抗体ならびに抗LAG−3抗体、抗PD−1抗体、および/または抗CTLA−4抗体などの1つまたは複数の追加の抗体を被験体に投与することを含む。特定の実施形態において、被験体はヒトである。別の態様において、本開示は、本開示の抗クローディン−18.2抗体(またはその抗原結合部分)が化学療法剤と同時投与され、化学療法剤は細胞傷害剤であってよい、癌治療法を提供する。たとえば、エピルビシン、オキサリプラチン、および/または5−FUを、抗クローディン−18.2療法を受けている患者に投与することができる。オキサリプラチンおよび5−FUはクローディン−18.2発現を安定化または増大させると考えられている。
【0158】
本開示はまた、被験体における腫瘍成長を阻害するために方法を提供し、当該方法は、抗クローディン−18.2抗体およびγδT細胞、特にVγ9Vδ2T細胞を刺激する薬剤を被験体に投与することを含む。γδT細胞を刺激する薬剤は、ビスホスホネート類、具体的には、N−ビスホスホネートおよびアミノビスホスホネートなどの窒素含有ビスホスホネート類であってよい。ゾレドロン酸(ZA)が、特に組換えインターロイキン−2(IL−2)と併せて投与されるとき、γδT細胞を刺激し、それに応じて抗クローディン−18.2抗体のADCC活性を増大することが、データにより示されている(国際公開第2013174509号)。
【0159】
本開示はまた、被験体における腫瘍成長を阻害するための方法を提供し、当該方法は、抗クローディン−18.2抗体およびクローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤を被験体に投与することを含む。クローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤は、細胞傷害剤および/または細胞分裂阻害剤であってよい。クローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤は、アントラサイクリン類、白金化合物、ヌクレオシド類似体、タキサン類、およびカンプトテシン類似体、またはそれらのプロドラッグ、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される薬剤を含んでよい。クローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤は、エピルビシン、オキサリプラチン、シスプラチン、5−フルオロウラシルからなる群より選択される薬剤を含んでよい。クローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤は、オキサリプラチンと5−フルオロウラシルとの、もしくはそれらのプロドラッグの組み合わせ、シスプラチンと5−フルオロウラシルとの、もしくはそれらのプロドラッグの組み合わせ、少なくとも1種のタキサンとオキサリプラチンの組み合わせ、少なくとも1種のタキサンと5−フルオロウラシルとの、もしくはそれらのプロドラッグの組み合わせ、または少なくとも1種のカンプトテシン類似体と5−フルオロウラシルとの、もしくはそれらのプロドラッグの組み合わせを含んでよい。クローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤は、免疫原性細胞死を誘導する薬剤であってよい。免疫原性細胞死を誘導する薬剤は、アントラサイクリン類、オキサリプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される薬剤を含んでよい。クローディン−18.2の発現を安定化または増大させる薬剤は、エピルビシンとオキサリプラチンとの組み合わせを含んでよい。一実施形態において、本開示の方法は、少なくとも1種のアントラサイクリン、少なくとも1種の白金化合物、ならびに5−フルオロウラシルおよびそのプロドラッグのうち少なくとも1つを投与することを含む。アントラサイクリンは、エピルビシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシンおよびバルルビシンからなる群より選択されてよい。アントラサイクリンはエピルビシンであることが好ましい。白金化合物は、オキサリプラチンおよびシスプラチンからなる群より選択されてよい。ヌクレオシド類似体は、5−フルオロウラシル、およびそのプロドラッグからなる群より選択されてよい。タキサンは、ドセタキセルおよびパクリタキセルからなる群より選択されてよい。カンプトテシン類似体は、イリノテカンおよびトポテカンからなる群より選択されてよい。一実施形態において、本開示の方法は、(i)エピルビシン、オキサリプラチン、および5−フルオロウラシル、(ii)エピルビシン、オキサリプラチン、およびカペシタビン、(iii)エピルビシン、シスプラチン、および5−フルオロウラシル、(iv)エピルビシン、シスプラチン、およびカペシタビン、または(v)フォリン酸、オキサリプラチン、および5−フルオロウラシルを投与することを含む。
【0160】
抗クローディン−18.2抗体と組み合わされてよい他の治療法としては、これらに限定されないが、免疫原性剤投与、インターロイキン−2(IL−2)投与、放射線照射、手術、またはホルモン剥奪が挙げられる。
【0161】
本明細書で論じる治療剤の組み合わせは、医薬的に許容される担体中の単一組成物として同時的に、または、各薬剤が医薬的に許容される担体中にある別々の組成物として、同時的に投与することができる。別の実施形態において、治療剤の組み合わせは、連続的に投与することができる。
【0162】
さらに、併用療法を1回より多く連続的に投与する場合、連続的な投与の順番は、投与する各時点で、逆にしてもよく、または同じ順番を保ってもよく、連続的な投与は、同時的な投与と、またはその任意の組み合わせと組み合わせることができる。
【0163】
本開示は、以下の実施例によってさらに例示されるが、これらはさらに限定するものと解釈されるべきではない。本出願にわたって引用されるすべての図、すべての参考文献、ジェンバンクの配列、特許および出願公開特許の内容は、参照により明白に本明細書に引用される。
【0165】
[実施例1 ヒトクローディン−18.1またはクローディン−18.2を安定的に発現するHEK293A細胞株の構築]
【0166】
ヒトクローディン−18.1またはヒトクローディン−18.2を過剰発現するHEK293A細胞(Cobioer社、中国)を、レンチウイルストランスフェクション系を用いて生成した。簡潔には、ヒトクローディン−18.1(配列番号:70)およびクローディン−18.2(配列番号:72)をエンコードするcDNA配列(配列番号:69および71)を合成し、それぞれ、EcoRIおよびBamHI部位でpLV−EGFP(2A)−Puroプラスミドにクローニングした。pLV−EGFP(2A)−Puro−クローディン−18.1(またはpLV−EGFP(2A)−Puro−クローディン−18.2)、psPAX2およびpMD2.Gプラスミドとの共トランスフェクションによってレンチウイルスをHEK−293T(Cobioer社、中国)細胞中に生成した。得られたレンチウイルスを使用してHEK293A細胞を感染させ、ヒトクローディン−18.1またはクローディン−18.2を過剰発現する安定的な細胞株を生成し、次いでこの細胞株を7日間より長く、10%FBS(Cat#:FND500、Excell)および0.2μg/mlのピューロマイシン(Cat#:A11138−03、Gibco)と共にDMEM培地(Cat#:SH30022.01、Gibco)にて培養した。
【0167】
市販の抗CLDN18抗体(ウサギ抗クローディン−18、Cat#:388100、Life Technology社)を使用して、クローディン−18.1またはクローディン−18.2の発現を蛍光活性化細胞分類(FACS)によって確認した。簡潔には、100,000個のトランスフェクトされた細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、後に抗ヒトクローディン−18抗体を加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSTで3回洗浄した。次いで、500倍希釈した、PEを結合したロバ抗ウサギIgG二次抗体(PEロバ抗ウサギIgG抗体、Cat#:406421、Biolegend社)をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSで3回洗浄し、次いで、FACS装置(BD社)を使用して細胞蛍光を観察した。
【0168】
[実施例2 例示的な抗クローディン−18.2モノクローナル抗体の生成およびスクリーニング]
【0169】
ヒトクローディン−18.2に結合するモノクローナル抗体を生成するためには、生後6週間のBALB/cマウスに、ヒトクローディン−18.2を安定的に発現するHEK293A細胞(実施例1を参照されたい)を接種した。簡潔には、2×10
7/mlのHEK293A/ヒトクローディン−18.2細胞をマウスに皮下的に注入し、次いで4週間間隔で3回追加免疫した。血清試料中の抗体力価を、ヒトクローディン−18.2を発現するHEK293A細胞を使用して、FACSによって決定した。マウスが好適な抗体力価に達したとき、細胞数5×10
7/mLのPBS溶液で最後の追加免疫をマウスに与えた。3日後、マウスを安楽死させ、放血して、mRNA抽出およびファージディスプレイライブラリー構築のために脾臓を採取した。
【0170】
scFvファージディスプレイライブラリーを構築するために、トリゾールキット(Trizol kit)(Invitrogen社)を使用してマウスの全脾臓RNAを抽出して、逆転写酵素キット(Reverse Transcriptase Kit)(Invitrogen社)を使用してcDNAを合成した。上で合成したcDNAをテンプレートとして使用してPCRによって遺伝子増幅を行い、商標されたファージミド、pTGSを使用してscFvファージライブラリーを構築した。簡潔には、軽鎖の可変領域をPCRによって増幅し、Qiagen PCR/精製キットを用いて精製し、制限酵素NheIおよびNotI(NEB社)で消化し、次いで、16℃で、(同じ制限酵素で消化され、アガロースゲルによって精製された)ファージミドpTGSのNheI/Not1制限部位にライゲーションした。ライゲーションに続いて、組換えDNAを沈殿させ、洗浄し、蒸留水に溶解した。次いで、エレクトロポレーション法によって、組換えDNAを大腸菌TG1細胞に形質転換させた。次いで、細胞を10mlのSOC培養液に懸濁させて、穏やかに振盪させながら37℃で1時間、培養した。細胞培養物を2YT寒天/アンピシリン上で平板培養して、アンピシリン耐性コロニーの数を数えた。重鎖の可変断片のクローニングに関して、PCR生成物をNcoIおよびXhoIで消化して、軽鎖可変領域ライブラリーにライゲーションさせ、大腸菌TG1に形質転換させた。ライブラリーを大きなプレートからこすり取り、2YTAG液体培養培地に接種した。およそ10
12pfuのヘルパーファージを、scFv遺伝子ライブラリーを含むTG1試料に加えて、振盪させながら37℃で1時間、インキュベートした。70μg/mlのカナマイシンを加え、培養物を30℃で一晩振盪した。細胞を4℃で15分間、4000rpmで遠心した。得られた上清を5mlの20%PEG8000/2.5M NaClと混合し、氷上で30分、インキュベートし、次いで、ファージを4℃で20分間、8000rpmで遠心分離によって沈殿させた。ファージを、1%BSAを含有する1.5mlのPBSに再懸濁して、ボルテックスし、ペレット破片になるまで5分間、13000rpmで遠心分離した。上清を4℃で保管するか、またはバイオパニングのために直接使用する(以下を参照されたい)。
【0171】
ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1.を安定的に発現するHEK293A細胞を使用して、バイオパニングによって、ヒトクローディン−18.2に対抗するがヒトクローディン−18.1には対抗しない抗体を選択した。簡潔には、1×10
7個のHEK293A/ヒトクローディン−18.1細胞をまず、10
13個のファージを含む15ml管に加えた。細胞/ファージ混合物を、室温で90分間、振盪機上でインキュベートし、次いで振盪なしでさらに30分間保持した。細胞懸濁液を室温で5分間1000gで遠心し、次いで上清を1×10
7個のHEK293A/ヒトクローディン−18.2細胞を含む管に移した。細胞培養物を室温で2時間、振盪機上でインキュベートした。結合されていないファージを、PBSを用いて洗い流し、次いで0.1Mのグリシン−HC1(pH2.2)を使用して抗原結合ファージを溶出した。溶出されたファージを、1.5MのTris−HC1(pH8.8)を用いてpH7.0まで中和した。上記の中和されたファージを使用して、10mlのTG1細菌を感染させ、ODが0.6に達するまで37℃で培養した。細菌培養物を遠心分離によってペレット化し、ペレットを培養液に再懸濁し、次回のスクリーニングのためにこれを大きな2YTAGプレートに塗布した。そのような富化およびスクリーニングを全体で3回行った。
【0172】
バイオパニングを3回行った後、クローディン−18.2に結合するファージを収集して細菌性細胞を感染させるために使用した。単一細菌コロニーをピックアップして、96ウェルプレート内で成長させた。細胞ベースのELISAを使用して、ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1を発現するHEK293A細胞を用いて高いバインダーを同定した。ファージELISAにおいて、高い結合能力をヒトクローディン−18.2に特異的に示すがクローディン−18.1には示さないクローンを選択し、次いでDNAシークエンシングに供し、38個の可読scFv配列を高結合クローンから同定し、それらから10個のscFv抗体をさらなる特徴付けのために選択した。
【0173】
[実施例3 例示的な完全長抗クローディン−18.2モノクローナル抗体の精製および特徴付け]
【0174】
選択された10個のscFv抗体を、さらなる特徴付けのために完全長モノクローナル抗体としてHEK293F(Cobioer社、中国)において発現させた。簡潔には、発現ベクターを、それぞれの重鎖/軽鎖可変領域およびヒトIgG1/κ定常領域(配列番号:67および68)をpcDNA3.1(Invitrogen社、カールスバッド、米国)のEcoRI/BamHIにクローニングすることによって構築した、ここで、重鎖可変領域のC末端はヒトIgG1定常領域のN末端に連結され、軽鎖可変領域のC末端はヒトκ定常領域のN末端に連結されている。
【0175】
PEIトランスフェクション法を、製造会社の取扱説明書に従って用いて、キメラ抗ヒトクローディン−18.2抗体をHEK−293F細胞において一過性発現させた。簡潔には、DNA:PEI比が1:3でポリエチレンイミン(PEI)を使用して、得られたベクターでHEK−293F細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション当たり使用された全DNAは、1.5μg/mlであった。トランスフェクトされたHEK−293Fを、37℃の5%CO
2インキュベーター中で、120RPMで振盪させながら培養した。10〜12日後、上清を採取し、モノクローナル抗体を精製した。簡潔には、細胞培養物を収集し、次に5分間、3500rpmで遠心し、次いで0.22μmカプセルを用いて濾過して細胞破片を除去した。次いで、前平衡化したタンパク質A親和性カラム(GE社、米国;Cat#:17040501;Lot#:10252250)を用いて、モノクローナル抗体を精製し、溶出緩衝液(20mMクエン酸、pH3.0〜3.5)で溶出した。緩衝液交換後、抗体をPBS緩衝液(pH7.0)にて保持し、抗体濃度をナノドロップ装置を用いて測定した。精製されたモノクローナル抗体をさらに特徴付けに供した。
【0176】
次いで、ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1を発現するHEK293A細胞を用いて、FACSによって、結合親和性および特異性について、10個の完全長抗クローディン−18.2抗体を試験した。簡潔には、100,000個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、段階希釈した抗クローディン−18.2抗体をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSTで3回洗浄した。次いで、500倍希釈した、RPEを結合したヤギ抗ヒトIgG二次抗体((Thermo社、Cat#:PAI−86078)をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSで3回洗浄し、次いで、FACS装置(BD社)を使用して細胞蛍光を観察した。
【0177】
また、精製した抗体を、ヒトクローディン−18.2を安定的に過剰発現するMC38細胞(MC38/hクローディン−18.2)(Cober社、中国)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を誘導する能力に関して分析した。簡潔には、実施例1において説明されたように、MC38/hクローディン−18.2細胞をレンチウイルストランスフェクション系によって生成した。MC38/hクローディン−18.2細胞およびエフェクター細胞NK92MI−CD16a(Huabo Bio社)の両方を5分間、1200rpmで遠心した。次いで、これらの細胞を、ADCCアッセイ培養液(MEM培地、Gibco社、Cat#:12561−056;1%FBS、EX−cell、Cat#:FND500;1%BSA、VETEC社、Cat#:V900933−1KG)で懸濁し、細胞計数によると細胞生存率は約90%であった。MC38/hクローディン−18.2細胞密度を、4×10
5/mlに調整し、NK92MI−CD16a細胞密度を2×10
6/mlに調整した。次いで、50μlのMC38/hクローディン−18.2細胞および50μlのNK92MI−CD16a細胞(エフェクター−標的の比は5:1であった)を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。種々の濃度に希釈された抗体を各ウェルに別々に加え、最終濃度はそれぞれ、32000ng/ml、6400ng/ml、1280ng/ml、256ng/ml、51.2ng/ml、10.24ng/ml、2.048ng/mlであった。試料を37℃で4時間、インキュベートし、次いで、LDH現像液(細胞傷害性検出キットPLUS(LDH)、Roche社、Cat#:04744926001)を100μl/ウェルの濃度で加えた。混合液を室温で20分間、暗所でインキュベートし、次いでMD SpectraMax i3を使用してプレートを読み取った。抗HELアイソタイプ制御抗体(LifeTein、LLC社、Cat.#:LT12031)をネガティブコントロールのために使用し、特許出願国際公開第2014/146672A1号に開示されるアミノ酸配列を使用して合成された参照抗クローディン−18.2抗体である、IMAB362を、参照抗クローディン−18.2抗体として使用した。
【0178】
図1に示すように、大部分の完全長抗体は、ヒトクローディン−18.2に特異的に結合するが、ヒトクローディン−18.1には結合しないことが示された。完全長抗体によって誘導されるADCCのEC
50値を表2に要約した。すべての抗体がMC38/CLDN18.2細胞のADCCを誘導した。結合親和性およびADCC効果の順位に基づいて、18F2をさらなる検討のために選択した。
表2 抗クローディン−18.2抗体のADCC EC
50
【表2】
【0179】
[実施例4 ファージディスプレイによる18F2の親和性成熟]
【0180】
結合親和性をさらに向上させるために、ファージディスプレイ手法によってクローン18F2を親和性成熟のために選択した。簡潔には、3次元構造モデリングシミュレーションを実施して、結合親和性に重要である可能性があるクローン18F2の重鎖および軽鎖CDRにおける潜在的な残基を同定した。同定されたCDR残基を、特異的に設計されたプライマーおよび部位特異的変異誘発の標準的なプロトコルを使用してPCRによって変異誘発に供した。次いで、ファージディスプレイライブラリーを構築し、次いで、ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1.を安定的に発現するHEK293A細胞を使用して上述のようにバイオパニングに供した。3回のバイオパニング後、高いバインダーを選択し、採取し、次いで細菌性細胞を感染させるために使用した。細菌コロニーをピックアップして、96ウェルプレートで成長させ、次いで、細胞ベースのELISAを使用して、後に配列される高いバインダーを同定した。重鎖および軽鎖CDRにおける有益な変異を、同定し、次に組み合わせて新たなファージディスプレイライブラリーにし、それを上述のようにさらに3回のバイオパニングおよび配列確認に供した。その親クローン18F2と比較して、単一から複数の変異体を含む20個を超える高いバインダーを同定し、12個のクローンを選択して、完全長キメラヒトIgG1/κ抗体としてHEK293F細胞において発現させた。ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1を発現するHEK293細胞を用いて、FACSによって、完全長抗体の結合親和性を試験した。簡潔には、100,000個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、段階希釈した抗クローディン−18.2抗体をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSTで3回洗浄した。次いで、500倍希釈した、RPEを結合したヤギ抗ヒトIgG二次抗体((Thermo社、Cat#:PAI−86078)をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSで3回洗浄し、次いで、FACS装置(BD社)を使用して細胞蛍光を観察した。結合親和性および特異性に基づいて、親クローン18F2より高い結合親和性を示す4個のクローン、18F2−5、18F2−30、18F2−35、および18F2−66をさらなる検討のために選択した。4個の選択されたキメラモノクローナル抗体のEC
50を、IMAB362と類似したEC
50と共に、表3に示した。
表3 抗クローディン−18.2抗体の結合親和性EC
50
【表3】
【0181】
[実施例5 例示的な抗クローディン−18.2抗体のADCC活性]
【0182】
ヒトクローディン−18.2(MC38/hヒトクローディン−18.2)を安定的に過剰発現するMC38細胞(Cober社、中国)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を誘導する能力に関して、精製された抗体を分析した。簡潔には、実施例1において説明されたように、MC38/hクローディン−18.2細胞をレンチウイルストランスフェクション系によって生成した。MC38/hクローディン−18.2細胞およびエフェクター細胞NK92MI−CD16a(Huabo Bio社)の両方を5分間、1200rpmで遠心した。次いで、これらの細胞を、ADCCアッセイ培養液(MEM培地、Gibco社、Cat#:12561−056;1%FBS、EX−cell、Cat#:FND500;1%BSA、VETEC社、Cat#:V900933−1KG)で懸濁し、細胞計数によると細胞生存率は約90%であった。MC38/hクローディン−18.2細胞密度を、4×10
5/mlに調整し、NK92MI−CD16a細胞密度を2×10
6/mlに調整した。次いで、50μlのMC38/hクローディン−18.2細胞および50μlのNK92MI−CD16a細胞(エフェクター−標的の比は5:1であった)を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。種々の濃度に希釈された抗体を各ウェルに別々に加え、最終濃度はそれぞれ、32000ng/ml、6400ng/ml、1280ng/ml、256ng/ml、51.2ng/ml、10.24ng/ml、2.048ng/mlであった。試料を37℃で4時間、インキュベートし、次いで、LDH現像液(細胞傷害性検出キットPLUS(LDH)、Roche社、Cat#:04744926001)を100μl/ウェルの濃度で加えた。混合液を室温で20分間、暗所でインキュベートし、次いでMD SpectraMax i3を使用してプレートを読み取った。抗HELアイソタイプ制御抗体(LifeTein、LLC社、Cat.#:LT12031)をネガティブコントロールのために使用し、IMAB362を参照抗クローディン−18.2抗体として使用した。
図2に示すように、4個の選択されたキメラ抗体、18F2−5、18F2−30、18F2−35、および18F2−66は、NK92MI−CD16aによるMC38/hクローディン−18.2細胞の死滅を誘導することができた。
【0183】
共にヒトクローディン−18.2の内在性発現が高いと報告されているKATO−III(Cobioer社、中国)およびNUGC−4細胞(Cobioer社、中国)に対するADCC活性に関して、抗クローディン−18.2抗体をさらに試験した。簡潔には、標的細胞を10ng/mlのエピルビシン(Apexbio社、Cat#.A2451−100mg)、500ng/mlのオキサリプラチン(Ark pharm社、Cat#.Ak−72813)、および10ng/mlの5−FU(Acros社、Cat#.Un12811)(EOF)で72時間、前処理し、次いで薬物を除去し、通常の培養液(DMEM+10%FBS)中でさらに24時間、細胞を培養した。KATO−IIIまたはNUGC−4細胞を標的細胞として使用して、上で述べたプロトコルを使用して、ADCCアッセイを実施した。2×10
5個のNK92MI−CD16a細胞および2×10
4個のKATO−III細胞またはNUGC−4細胞(エフェクター−標的の比は10:1であった)を各アッセイにおいて使用した。
図3に示すように、4個のモノクローナル抗体、18F2−5、18F2−30、18F2−35、および18F2−66は、NK92MI−CD16a細胞によるKATO−IIIまたはNUGC−4細胞の死滅を誘導することができた。
【0184】
抗クローディン−18.2抗体がクローディン−18.2陽性細胞にADCC活性を特異的に誘導するかをさらに確認するために、ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1を過剰発現するHEK293A細胞上のADCC活性を誘導する能力に関してこれらの抗体を試験した。簡潔には、1×10
5個のNK92MI−CD16a細胞およびヒトクローディン−18.1またはヒトクローディン−18.2を過剰発現する2×10
4個のHEK293A細胞(エフェクター−標的の比は5:1であった)を各アッセイにおいて使用した。
図4に示すように、4個の試験された抗体、18F2−5、18F2−66、18F2−30,および18F2−35は、ヒトクローディン−18.2を発現するHEK293A細胞に対してADCC活性を特異的に誘導したが、一方で、クローディン−18.1を過剰発現するHEK293A細胞では細胞傷害効果は観察されなかった。
【0185】
[実施例6 例示的な抗クローディン−18.2抗体のCDC活性]
【0186】
細胞傷害性検出キット(Roche社、Cat#:04744926001)を使用して、例示的な抗クローディン−18.2抗体が、ヒトクローディン−18.2(実施例5において生成されたMC38/hクローディン−18.2)を安定的に過剰発現するMC38細胞に対してCDC活性を誘導する能力を測定した。簡潔には、標的細胞MC38/ヒトクローディン−18.2細胞を4分間1200rpmで遠心して、次いで、1%FBSのDMEM培地で細胞を懸濁したMC38/hクローディン−18.2細胞の細胞密度を細胞数3×10
5個/mlに調整し、100μlの細胞を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。様々な濃度に希釈された抗体を別々に加え、それらの最終濃度はそれぞれ、20μg/ml、4μg/ml、0.8μg/ml、0.16μg/ml、0.032μg/ml、0.0064μg/ml、および0.00128μg/mlであった。正常ヒト血清補体(Quidel社、Cat#:A113)を、5%の最終濃度で加え、次いで、得られた混合物を37℃で2時間、インキュベートした。LDH現像液を100μl/ウェルの濃度で加え、次いで、試料を室温で20分間、暗所でインキュベートした。MD SpectraMax i3計器を使用して、プレートを読み取った。抗クローディン−18.2抗体IMAB362を参照として使用し、抗HELモノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。
図5に示すように、すべての試験抗体、18F2−5、18F2−30、18F2−35、および18F2−66は、用量依存的なやり方で、強いCDC活性を示した。
【0187】
[実施例7 例示的な抗クローディン−18.2抗体のヒトクローディン−18.2への結合安定性]
【0188】
FACSによって、HEK293A/hクローディン−18.2細胞への結合安定性に関して精製された抗クローディン−18.2抗体をさらに分析した。簡潔には、10
5個のHEK293A/hクローディン−18.2細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、10μg/mlの抗クローディン−18.2抗体をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSTで3回洗浄し、細胞を細胞培養液(DMEM)で懸濁した。細胞をそれぞれ、37℃で0時間、3時間、または5時間、さらにインキュベートした。次いで、500倍で希釈した、RPEを結合したヤギ抗ヒトIgG二次抗体((Thermo社、Cat#:PAI−86078)をプレートに加えた。4℃で1時間、インキュベートした後、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで、FACS装置(BD社)を使用して細胞蛍光を観察した。
【0189】
図6に示すように、4個の抗体すべて(18F2−5、18F2−30、18F2−35、および18F2−66)は、アッセイにおいてIMAB362より高い結合安定性を示し、このことはこれらの抗体のADCCおよびCDC活性がより高いことと一貫しているように思われ、より高い結合安定性はより高いADCCおよびCDC活性に寄与する場合があることを示唆した。
【0190】
[実施例8 例示的な抗クローディン−18.2抗体のヒト化]
【0191】
ヒト化およびさらなる検討のために、抗クローディン−18.2抗体、18F2−5、8F2−30、18F2−35、および18F2−66を選択した。以下に詳細に説明される、確立されたCDR移植法を用いてマウス抗体のヒト化を行った。
【0192】
キメラ抗体18F2−5、18F2−30、18F2−35、および18F2−66のヒト化のためのアクセプターフレームワークをスクリーニングするために、上記抗体の軽鎖および重鎖可変鎖配列を、NCBIウェブサイト((http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)にあるヒト免疫グロブリン遺伝子データベースに対してブラスト検索(blast)し、最も相同性であるヒト生殖系列IGVHおよびIGVΚをそれぞれ、ヒト化のためのアクセプターとして同定した。上記の4個の抗体に関して、選択されたヒト重鎖アクセプターはIGHV1−46*01であり、選択されたヒト軽鎖アクセプターはIGKV4−1*01であった。
【0193】
CDRループ構造を支持することにおいて重要な役割を果たし、したがってヒト化抗体において復帰突然変異を設計する可能性があるキーフレームワーク残基を同定するために、3次元構造を上記の4個の抗体の可変ドメインのためにシミュレーションした。選択された構造テンプレートは、L−CDR1、L−CDR2、L−CDR3、H−CDR1、H−CDR2、およびH−CDR3における正準ループ構造が、それぞれ、18F2−5、8F2−30、18F2−35、および18F2−66と同じクラスであった。構造テンプレートを使用して、マウスのフレームワークを、重鎖および軽鎖のヒトアクセプターのフレームワークで置換することによって構造モデルを構築した。次いで、3次元構造モデリングシミュレーションを実施して、CDRループ構造または重鎖および軽鎖境界を支持することにおいて重要である可能性があるキーフレームワーク残基を同定した。フレームワーク内のある特定の部位でマウスの抗体およびヒトアクセプターフレームワークの両方が、同じ残基を共有するとき、ヒト生殖系列残基が保持された。他方で、マウスの抗体およびヒト生殖系列アクセプターフレームワークが、フレームワーク内のある特定の部位で異なる残基を有するとき、この残基の重要性を構造モデリングによって評価した。マウスの抗体のフレームワークにおける残基がCDR残基と相互作用して影響を与えると見られた場合、この残基をマウスの残基に復帰変異させた。以下の表4に、抗体構造シミュレーションにおいて使用された構造テンプレートを列挙した。
表4 抗体構造シミュレーションで使用した構造テンプレート
【表4】
表5 抗クローディン−18.2抗体のために設計された復帰変異
【表5】
【0194】
上述の構造モデリングに基づいて、11個の潜在的な復帰変異体(R38K、A40R、M48I、R67K、M70L、R72V、T74K、T76S、V79A、R87T、A97T)を抗クローディン−18.2抗体の重鎖に関して同定し、6個の潜在的な復帰変異体(D9S、A12T、R18K、N22S、V89L、Q106S)を軽鎖に関して同定した。
【0195】
上記の表5に要約されているように、親和性が成熟した抗クローディン−18.2抗体のそれぞれに関して、7個のヒト化重鎖可変領域および3個のヒト化軽鎖可変領域を設計した。
【0196】
ヒト化完全長抗体をエンコードするDNA配列(それぞれの重鎖/軽鎖可変領域(表1に要約されている)およびヒトIgG1/κ定常領域(配列番号:67および68))を化学的に合成し、次いで、それぞれ、EcoR IおよびXho I、Cla IおよびHind III制限部位を使用して発現ベクターpcDNA3(Invitrogen社)にサブクローニングした。すべての発現構築物をDNAシークエンシングによって確認した。42個のヒト化クローディン−18.2抗体(10個は18F2−5、11個は18F2−30、11個は18F2−35、および10個は18F2−66)を一過性発現させ、実施例3において説明したようにプロトコルを使用して精製した。次いで、精製されたヒト化抗体を、以下で詳細に説明するようにさらに特徴付けした。
【0197】
[実施例9 HEK293A細胞上に発現させたヒトクローディン−18.2に結合された例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体]
【0198】
42個のヒト化抗クローディン−18.2抗体を、HEK293A/hクローディン−18.2細胞またはHEK293A/hクローディン−18.1細胞それぞれに発現させたヒトクローディン−18.2またはヒトクローディン−18.1に結合する能力に関して、さらに試験した。FACSを実施例4において説明されるように行った。
【0199】
代表的なヒト化抗クローディン−18.2抗体の結合親和性を
図7に示した。すべてのヒト化抗体の結合親和性は、それらの親抗体と類似しており、ヒトクローディン−18.1への結合親和性を有するものはなく、それらのヒトクローディン−18.2への高い特異的な結合性を表した。結合親和性に基づいて、それらのうち6個(18F2−5VH0VL0、18F2−5VH7VL3、18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、18F2−35VH0VL0、18F2−35VH7VL3)をさらなる検討のために選択した。
【0200】
[実施例10 例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体のCDC活性]
【0201】
ヒトクローディン−18.2を過剰発現するMC38細胞に対してCDC活性を誘導する能力に関して、ヒト化抗体をさらにアッセイした。実施例6において説明されるプロトコルに従って、CDCアッセイを実施した。抗クローディン−18.2抗体IMAB362を参照抗体として使用し、抗HELモノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。
【0202】
CDCアッセイの結果を
図8に示した。結果はすべての試験したヒト化抗クローディン−18.2抗体が強いCDC活性を示したことを表した。
【0203】
[実施例11 例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体のADCC活性]
【0204】
NK92MI−CD16a細胞をエフェクター細胞として使用することによって、ヒト化抗体のADCC効果を誘導する能力をアッセイした。実施例5におけるプロトコルに従って、ADCCアッセイを行った。
【0205】
まず、MC38/hクローディン−18.2細胞に対してADCCを誘導する能力に関して、ヒト化抗クローディン−18.2抗体を分析した。
図9に示すように、ヒト化抗体18F2−35VH0VL0および18F2−30VH7VL3は、ADCCアッセイにおいて、すべてのヒト化抗体の中でより強い効果を示した。
【0206】
この結果に基づいて、EOFで前処理したKATO−III細胞およびNUGC−4細胞(両方ともクローディン−18.2タンパク質の高い内在性発現を有することが公知である)に対するこれらのヒト化抗クローディン−18.2抗体のADCC効果をさらに試験した。KATO−III細胞およびNUGC−4細胞を10ng/mlのエピルビシン(Apexbio社,Cat.A2451−100mg)、500ng/mlのオキサリプラチン(Ark pharm社、Cat.Ak−72813)、および10ng/mlの5−FU(Acros社、Cat.Un12811)(EOF)で72時間、前処理し、次いで、薬物を除去し、細胞をさらに24時間、通常の培養液(DMEM+10%FBS)中で培養した。実施例5において言及されるプロトコルを使用して、ADCCアッセイを実施した。
【0207】
図10に示すように、すべての6個の試験されたヒト化抗クローディン−18.2抗体は、参照抗体IMAB362.と比較して、標的細胞KATO−IIIまたはNUGC−4細胞上で強いADCC活性を示した。
【0208】
[実施例12 例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体のADCCおよびCDC活性の特異性]
【0209】
抗クローディン−18.2抗体が、クローディン−18.2を発現する標的細胞上に特異的にADCCまたはCDC活性を示したが、クローディン−18.1を発現する細胞上には示さなかったことを確認するために、実施例5および6において説明されるプロトコルに従って、ヒトクローディン−18.1またはヒトクローディン−18.2を発現するHEK293A細胞(HEK293A/hクローディン−18.1細胞またはHEK293A/hクローディン−18.2)を標的細胞として使用してADCCおよびCDCアッセイを実施した。
図11(ADCCアッセイ)および
図12(CDCアッセイ)に示すように、すべての試験された抗クローディン−18.2抗体は、ヒトクローディン−18.2を発現するHEK293A細胞上にのみADCCおよびCDC活性を誘導し、ヒトクローディン−18.1を発現する細胞上には誘導せず、抗クローディン−18.2抗体によって誘導されたADCCおよびCDC活性がヒトクローディン−18.2を発現する細胞に非常に特異的であることを示唆した。
【0210】
[実施例13 例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体のヒトクローディン−18.2への結合安定性]
【0211】
10個のヒト化抗クローディン−18.2抗体を選んで、ヒトクローディン−18.2(HEK293A/hヒトクローディン−18.2)を安定的に過剰発現するHEK293A細胞との、それらの結合安定性を、実施例7において説明されるプロトコルに従って、FACSによって分析した。抗クローディン−18.2抗体IMAB362を参照として使用し、抗HELモノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。
【0212】
図13に示すように、ヒト化抗体は種々の結合安定性を有し、結合安定性はADCCおよびCDC試験結果と一貫している傾向がある。
【0213】
[実施例14 例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体のエピトープマッピング]
【0214】
各ヒト化抗クローディン−18.2抗体の結合エピトープを検討した。その細胞外ループ1に様々な変異を有するヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1を発現する16個のHEK293A細胞株を生成した。ヒトクローディン−18.2またはクローディン−18.1変異体のアミノ酸配列は以下の表6に見ることができる。具体的には、細胞外ループ1にある単一のアミノ酸残基が、クローディン−18.1.の細胞外ループ1にあるその対応物で置換された8個のヒトクローディン−18.2変異体を設計した。実施例1におけるプロトコルに従って、これらのクローディン−18.2またはクローディン−18.1変異体を安定的に過剰発現するHEK−293A細胞株をレンチウイルス感染によって生成した。次いで、FACSを実施して、変異体の各々への抗クローディン−18.2抗体の結合親和性を調べた。
表6 ヒトクローディン−18.1およびヒトクローディン−18.2の変異体のアミノ酸配列番号ならびに抗体の変異体への結合能力
【表6】
【0215】
表6に示すように、IMAB362を含む、すべての抗クローディン−18.2抗体は、E56Q変異を持つ変異体6を発現する細胞に結合せず、E56が、抗体クローディン−18.2相互作用のために必須のアミノ酸残基であることを示唆した。加えて、データは、A42S(変異体3)またはN45Q(変異体4)変異を有するクローディン−18.2が、IMAB362による結合を完全に失い、ヒト化抗クローディン−18.2抗体18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、または18F2−35VH0VL0による部分的な結合を失ったことを示した。総合すると、これらのデータは、IMAB362と比較して、抗体18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、および18F2−35VH0VL0が、ヒト化抗クローディン−18.2の細胞外ループ1で異なるエピトープに結合したことを示唆した。
【0216】
上記の結果に基づいて、二重または複数部位の変異を有する別の5個の変異体を設計した。表6に示すように、IMAB362は、5個すべての変異体に結合せず、一方ですべてのヒト化抗体は変異体9、10、および11への結合親和性を完全に、または部分的に示し、ヒトクローディン−18.2のA42およびN45はIMAB362結合親和性のために必須のアミノ酸残基であるが、18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、または18F2−35VH0VL0のために必須のアミノ酸残基ではないことが確認された。
【0217】
この結論をさらに確認するために、ヒトクローディン−18.1変異体を過剰発現する別の3個の細胞株を生成した。上記の結果と一貫して、IMAB362を除くすべての抗体は変異体14発現細胞に結合することができ、本開示のヒト化抗体とIMAB362との間の異なる結合パターンを表す(
図15を参照されたい)。さらに、
図16から、E47Q復帰突然変異によりIMAB362のクローディン−18.2への結合親和性は向上しなかったが、18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、および18F2−35VH0VL0の結合親和性は増強されたことを見ることができ、ヒトクローディン−18.2/Q47が、18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、および18F2−35VH0VL0のクローディン−18.2への結合親和性のために重要なアミノ酸残基であるが、IMAB362のために重要なアミノ酸残基ではないことを示唆した。
【0218】
要点としては、ヒト化抗クローディン−18.2抗体18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、および18F2−35VH0VL0は、参照抗体IMAB362と比較して、ヒトクローディン−18.2の細胞外ループ1において極めて異なるエピトープと結合すると結論される。
【0219】
[実施例15 ヒトPBMCまたはVγ9Vδ2T細による例示的なヒト化抗クローディン−18.2抗体のADCC活性]
【0220】
MC38/hクローディン−18.2細胞(実施例5において調製された)またはEOFで前処理されたNUGC−4細胞に対してADCC活性を誘導する能力に関して、ヒトPBMCによって、ヒト化抗クローディン−18.2抗体をさらに分析し、GFPタンパク質を発現したpLV−EGFP(2A)−Puroの感染によってMC38/hクローディン−18.2細胞を生成した。リンパ球単離溶液を使用して、ヒトPBMCを密度勾配遠心によって調製し、培地(RIPM1640+10%FBS+300IU IL−2)において一晩培養した。
【0221】
LIVE/DEAD固定可能な死細胞染色キット(Fixable Dead Cell Stains Kit)(Thermo Fisher社、米国、Cat#:L34964)を使用することによってADCCアッセイを行った。標的細胞およびエフェクター細胞(PBMC)の両方を5分間、1200rpmで遠心した。次いで、細胞をADCC実験用の培養液(RIPM1640培養液+1%FBS)にて懸濁した。細胞計数によれば細胞生存率は約90%であるはずである。標的細胞密度を、4×10
5/mlに調整し、PBMC細胞密度を8×10
6/mlに調整した。次いで、50μlのMC38/hクローディン−18.2細胞および50μlのPBMC(エフェクター−標的の比は20:1であった)を各ウェルに加えた。異なる濃度の抗体を別々に加えて最終濃度を得た。MC38/hクローディン−18.2細胞の抗体最終濃度は、800ng/ml、32ng/ml、および6.4ng/mlであり、NUGC−4の濃度は、4000ng/ml、160ng/ml、64ng/ml、および2.5ng/mlであった。次いで、試料を37℃で12時間、インキュベートした。混合物をPBSで3回洗浄し、次いで、LIVE/DEAD固定可能な死細胞染色で、37℃で30分間、インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、FACSによって分析した。GFP陽性細胞(MC38/hクローディン−18.2細胞)のアポトーシス比を算出した。
【0222】
NUGC−4細胞に対するアッセイに関して、NUGC−4細胞を、10ng/mlのエピルビシン(Apexbio社、Cat.A2451−100mg)、500ng/mlのオキサリプラチン(Ark pharm社、Cat.Ak−72813)、および10ng/mlの5−FU(Acros社、Cat.Un12811)(EOF)で72時間、前処理し、次いで、薬剤を除去した。細胞をさらに24時間、通常の培養液(DMEM+10%FBS)中で培養した。NUGC−4細胞を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社、米国、Cat#:C34554)で製造会社の指示に従って標識した。ADCCエフェクター細胞の標的細胞に対する比が50:1であったことを除いては、上述のように、ADCCアッセイを実施した。
【0223】
これまでの調査により、Vγ9Vδ2T細胞が、抗ヒトクローディン−18.2抗体のADCC活性にとって重要であることは示されていた。本実施例において、Vγ9Vδ2T細胞をヒトPBMC中で富化した。具体的には、PBMCを収集し、10%FBS、300IU IL−2、および1μMのゾレドロン酸(ZA)と共に、Vγ9Vδ2T細胞を誘導するDMEM培地において培養した。14日後、細胞を採取してADCCアッセイにおいてエフェクター細胞として使用した。MC38/hクローディン−18.2細胞を標的細胞として使用するアッセイでは、E/T比は20:1であり、一方、EOFで前処理したNUGC−4細胞を標的細胞として使用したとき、E/T比は50:1であった。詳細なADCCプロトコルは、上述の説明と同じであった。
【0224】
図17(エフェクター細胞としてのPBMC)および
図18(エフェクター細胞としてのVγ9Vδ2T細胞)に示すように、すべての抗体は、用量依存的なやり方で、PBMCおよびVγ9Vδ2T細胞によって標的細胞上の強いADCC活性を誘導することができる。Vγ9Vδ2T細胞によるADCC活性は確かに、PBMCによるADCC活性より強く、これまでの調査と一貫していた。
【0225】
[実施例16 例示的な抗クローディン−18.2抗体のインビボ抗腫瘍効果]
【0226】
6個の抗クローディン−18.2抗体(18F2−5VH0VL0、18F2−5VH7VL3、18F2−30VH0VL0、18F2−30VH7VL3、18F2−35VH0VL0、および18F2−35VH7VL3)を、マウス結腸腺癌を有するC57マウスにおけるインビボ抗腫瘍活性の調査のために選択した。動物モデルの抗体のADCC活性を示させるために、抗体の可変領域をマウスIgG2a/κ定常領域と融合させて完全長抗体を調製した。mIgG2aおよびκ定常領域アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号:89および90に記載されていた。
【0227】
C57マウスに、ヒトクローディン−18.2(MC38/hヒトクローディン−18.2)を過剰発現する1×10
6個のMC38細胞を側腹部領域に0日目に注入した。腫瘍が約80mm
3に達したとき、動物を異なる群(n=8)に振り分け、抗体のうち1つを、5、7、10、12、14、17、および19日目に10mg/kgの用量で腹腔内投与した。腫瘍成長を経時的に観察し、5、7、10、12、14、17および19日目に体積を測定した。腫瘍の測定値(幅および長さ)をノギスで取り、腫瘍体積は式TV=(長さ×幅
2)/2によって算出した。実験を腫瘍体積が3cm
3に達する前に終了した。
【0228】
図19に示すように、すべての試験された抗体は腫瘍成長を阻害し、抗体は、最良の抗腫瘍効果を示す18F2−30VH0VL0可変領域を有した。
【0229】
[実施例17 化学療法との組み合わせにおける例示的な抗クローディン−18.2抗体の抗腫瘍効果]
【0230】
C57マウスに、ヒトクローディン−18.2(MC38/hヒトクローディン−18.2)を過剰発現する1×10
6個のMC38細胞を側腹部領域に0日目に皮下的に注入した。腫瘍が約80mm
3に達したとき、動物を異なる群(n=10)に振り分け、EOF(エピルビシン(1.25mg/kg)、オキサリプラチン(3.25mg/kg)、および5−FU(56.25mg/kg))または対照ビヒクルを5日目および12日目に腹腔内投与し、ここで、対照群はEOF前処理を受けなかった。次いで、6、8、11、13、15、および18日目に、これらのマウスに18F2−30−VH0VL0、18F2−5−VH0VL0、18F2−35−VH7VL3(3種すべてがマウスIgG2a/κ定常領域を有し、mIgG2aおよびκ定常領域アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号:89および90に記載されていた)、または対照薬剤を10mg/kgの用量で腹腔内注入した。腫瘍成長を経時的に観察し、5、7、10、12、14、17および19日目に体積を測定した。腫瘍の測定値(幅および長さ)をノギスで取り、腫瘍体積は式TV=(長さ×幅
2)/2によって算出した。実験を腫瘍体積が3cm
3に達する前に終了した。
【0231】
図20に示すように、すべての試験された抗体は、化学療法剤と相乗的な抗腫瘍効果を示し、その中で、18F2−30VH0VL0可変領域を有する抗体は、最良の相乗的な抗腫瘍効果を示した。
【0232】
[実施例18 非フコシル化抗クローディン−18.2抗体のADCCおよびCDC活性]
【0233】
米国特許出願公開第2018/0022820A1号明細書において説明されるようにSLC35c1ノックアウトのCHOK1−AF細胞がMabworks社によって生成され、この細胞株によって発現されるタンパク質は、フコシル化修飾をほとんど有さなかった。
【0234】
18F2−30VH0VL0および18F2−35VH7VL3のそれぞれの重鎖/軽鎖可変領域およびヒトIgG1/κ定常領域(配列番号:67および68)をpcDNA3.1(Invitrogen社、米国、カールスバッド)の適切な制御部位にクローニングすることによって、発現ベクターを構築し、次いで、発現ベクターをSLC35c1ノックアウトのCHOK1−AFに形質転換させた。18F2−30VH0VL0AFおよび18F2−35VH7VL3AFと呼ばれる2種の非フコシル化抗クローディン−18.2抗体をSLC35c1ノックアウトのCHOK1−AFに一過性発現させ、次いで、実施例3におけるプロトコルに従って精製した。
【0235】
エフェクター細胞としてNK92MI−CD16a細胞を、および標的細胞として、EOFで前処理したNUGC−4細胞を使用することによって、2個の非フコシル化抗クローディン−18.2抗体のADCC活性をアッセイした。実施例5におけるプロトコルに従って、ADCCアッセイを行った。
【0236】
ヒトクローディン−18.2を過剰発現するMC38細胞に対してCDC活性を誘導する能力に関して、非フコシル化抗体をさらにアッセイした。実施例6において説明されるプロトコルに従って、CDCアッセイを実施した。抗クローディン−18.2抗体IMAB362を参照抗体として使用し、抗HELモノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。
【0237】
図21に示すように、18F2−30VH0VL0AFおよび18F2−35VH7VL3AFは共に、それぞれの親抗体より高いADCC活性を有した。
図22における結果により、これらの2個の抗体のCDC活性が親抗体と異ならないことが示唆された。
【0238】
例示的な抗体の重鎖/軽鎖可変領域アミノ酸配列を以下のとおり要約する。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0239】
本開示では、1つまたは複数の実施形態に関連して上に説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるべきであり、説明はすべての代替、改変、および均等物を包含することを意図するものであり、それらは添付した請求項の趣旨および範囲内に含まれる場合がある。本明細書において言及されるすべての参考文献は、その全体が参照により引用される。