特許第6927752号(P6927752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927752
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】温度分布検出装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20060101AFI20210823BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20210823BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20210823BHJP
【FI】
   G01J5/48 E
   G01J5/48 C
   F24F11/49
   F24F11/89
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-105446(P2017-105446)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-200251(P2018-200251A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 聖
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−016223(JP,A)
【文献】 特開2017−058213(JP,A)
【文献】 特開2011−208936(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0355030(US,A1)
【文献】 特開2015−200639(JP,A)
【文献】 特開2014−002124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
G01N 25/00−25/72
F24F 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に配置された複数の赤外線センサから熱画像を取得し、これら熱画像から検出した検出温度に基づいて前記空間の温度分布を検出する温度分布検出装置であって、
前記複数の赤外線センサのうち隣り合う2つの赤外線センサについて、これら赤外線センサの熱画像のうち互いに重複する重複領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域として特定する温度安定領域特定部と、
前記隣り合う2つの赤外線センサの熱画像のうち、それぞれの前記温度安定領域で検出した代表検出温度の温度差を計算する温度差計算部と、
前記温度差に基づいて前記複数の赤外線センサの間における相対温度誤差を推定し、得られた相対温度誤差に基づいて前記複数の赤外線センサの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、前記空間の温度分布を生成する温度分布生成部と
を備えることを特徴とする温度分布検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度分布検出装置において、
前記温度安定領域特定部は、前記重複領域のうちから移動する発熱体を検出し、前記重複領域のうち前記発熱体を除いた他の領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域として特定することを特徴とする温度分布検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の温度分布検出装置において、
前記温度分布生成部は、前記隣り合う2つの赤外線センサに関する前記代表検出温度の時間変化について一定の相関関係が得られない場合、これら2つの赤外線センサに関する温度差を前記相対温度誤差の推定から除外することを特徴とする温度分布検出装置。
【請求項4】
空間に配置された複数の赤外線センサから熱画像を取得し、これら熱画像から検出した検出温度に基づいて前記空間の温度分布を検出する温度分布検出装置で用いられる温度分布検出方法であって、
温度安定領域特定部が、前記複数の赤外線センサのうち隣り合う2つの赤外線センサについて、これら赤外線センサの熱画像のうち互いに重複する重複領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域として特定する温度安定領域特定ステップと、
温度差計算部が、前記隣り合う2つの赤外線センサの熱画像のうち、それぞれの前記温度安定領域で検出した代表検出温度の温度差を計算する温度差計算ステップと、
温度分布生成部が、前記温度差に基づいて前記複数の赤外線センサの間における相対温度誤差を推定し、得られた相対温度誤差に基づいて前記複数の赤外線センサの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、前記空間の温度分布を生成する温度分布生成ステップと
を備えることを特徴とする温度分布検出方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の赤外線センサで得られた熱画像に基づいて、室内の温度分布を検出する温度分布検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内環境を自動制御する技術の1つとして、例えば壁や天井に取り付けたサーモパイルアレイセンサなどの複数の赤外線センサで室内の熱画像(サーモグラフィ)を検出し、得られた熱画像のうちから人の表面温度を示す人領域を検索することにより在室者として検知し、在室者のいる部屋やエリアに限定して快適な空調環境に制御し、在室者のいない部屋やエリアについては、空調や照明を停止させる技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
また、複数の赤外線センサを用いて温度を計測する際に、素子間のばらつきにより同一温度を計測したとしても、計測温度が等しくならない場合がある。この問題を解決するために、従来、隣り合う赤外線センサ間で測定領域が重複する重複領域の検出温度より温度差を算出し、得られた温度差に基づいて、赤外線センサ間で検出温度を補正する技術が提案されている(例えば、特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−057840号公報
【特許文献2】特開2014−016223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では、隣り合う赤外線センサ間の重複領域から検出した検出温度より温度差を算出しているが、双方の検出温度が必ずしも同一物体の温度を示しているとは限らないため、異なる対象の代表検出温度より温度差を算出した場合には、赤外線センサ間で検出温度を精度よく補正することができないという問題点があった。
【0006】
例えば、重複領域内に間仕切り(セパレーション)などの障害物が配置されており、障害物の片側に人など発熱体が隠れて存在していた場合、一方の赤外線センサからは障害物の影に発熱体が存在しているため発熱体の影響がない温度が検出温度として検出されるが、他方の赤外線センサからは発熱体の影響を含む温度を検出温度として検出することになる。特に、障害物の表面において反射率が高い場合、異なる位置の温度が検出されることになる。このような場合には、双方の赤外線センサで異なる物体の温度に基づいて赤外線センサ間の検出温度を補正することになるため、精度よく補正することができなくなる。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、赤外線センサ間の検出温度を精度よく補正できる温度分布検出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる温度分布検出装置は、空間に配置された複数の赤外線センサから熱画像を取得し、これら熱画像から検出した検出温度に基づいて前記空間の温度分布を検出する温度分布検出装置であって、前記複数の赤外線センサのうち隣り合う2つの赤外線センサについて、これら赤外線センサの熱画像のうち互いに重複する重複領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域として特定する温度安定領域特定部と、前記隣り合う2つの赤外線センサの熱画像のうち、それぞれの前記温度安定領域で検出した代表検出温度の温度差を計算する温度差計算部と、前記温度差に基づいて前記複数の赤外線センサの間における相対温度誤差を推定し、得られた相対温度誤差に基づいて前記複数の赤外線センサの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、前記空間の温度分布を生成する温度分布生成部とを備えている。
【0009】
また、本発明にかかる上記温度分布検出装置の一構成例は、前記温度安定領域特定部が、前記重複領域のうちから移動する発熱体を検出し、前記重複領域のうち前記発熱体を除いた他の領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域として特定するようにしたものである。
【0010】
また、本発明にかかる上記温度分布検出装置の一構成例は、前記温度分布生成部が、前記隣り合う2つの赤外線センサに関する前記代表検出温度の時間変化について一定の相関関係が得られない場合、これら2つの赤外線センサに関する温度差を前記相対温度誤差の推定から除外するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる温度分布検出方法は、空間に配置された複数の赤外線センサから熱画像を取得し、これら熱画像から検出した検出温度に基づいて前記空間の温度分布を検出する温度分布検出装置で用いられる温度分布検出方法であって、温度安定領域特定部が、前記複数の赤外線センサのうち隣り合う2つの赤外線センサについて、これら赤外線センサの熱画像のうち互いに重複する重複領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域として特定する温度安定領域特定ステップと、温度差計算部が、前記隣り合う2つの赤外線センサの熱画像のうち、それぞれの前記温度安定領域で検出した代表検出温度の温度差を計算する温度差計算ステップと、温度分布生成部が、前記温度差に基づいて前記複数の赤外線センサの間における相対温度誤差を推定し、得られた相対温度誤差に基づいて前記複数の赤外線センサの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、前記空間の温度分布を生成する温度分布生成ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重複領域のうち、温度分布が安定している温度安定領域から検出された代表検出温度の温度差が、相対温度誤差の推定に用いられることになる。したがって、障害物や人などの発熱体による影響がない温度に基づいて、相対温度誤差が推定されるため、赤外線センサ間においてそれぞれの検出温度を精度よく補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】温度分布検出装置の構成を示すブロック図である。
図2】空間における赤外線センサの設置例である。
図3】赤外線センサの検出範囲を示す説明図である。
図4】温度分布検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[温度分布検出装置]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる温度分布検出装置10について説明する。図1は、温度分布検出装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
この温度分布検出装置10は、全体としてサーバ装置、パーソナルコンピュータ、産業用コントローラ、などの情報処理装置からなり、対象となる空間20に設置された複数の赤外線センサASから通信回線L1を介して熱画像を取得し、これら熱画像から検出した検出温度に基づいて、各赤外線センサASの検出温度に対する相対温度誤差をそれぞれ推定し、これら相対温度誤差で検出温度を補正することにより、空間20における温度分布データを生成する機能を有している。
【0016】
図2は、空間における赤外線センサの設置例であり、図2(a)は空間の平面図、図2(b)は図2(a)のII−II断面図である。ここでは、平面視矩形状の空間20の天井21に、サーモパイルアレイセンサなどからなる複数の赤外線センサASが、格子状に等間隔で設置されている。赤外線センサASは、格子の交点に設置されており、それぞれ天井21から床22に対して垂直な方向に、略正方形状の検出範囲Rを有している。
【0017】
図3は、赤外線センサの検出範囲を示す説明図である。この例では、床22において、隣り合う赤外線センサAS1,AS2間で検出範囲Rの一部が重なる重複領域Qが設けられている。なお、天井21から床22に対して垂直な方向に検出範囲Rを形成した場合を例として説明したが、垂直ではなく斜め方向に形成してもよい。また、天井21に赤外線センサASを設置せず、床22や壁23に設置してもよい。
【0018】
図3に示すように、重複領域Qに間仕切り(セパレーション)などの障害物Sが配置されており、障害物SのAS2側に人などの発熱体Hが存在していた場合、AS1の熱画像P1には発熱体Hが含まれないが、AS2の熱画像P2には発熱体Hが含まれることになる。このため、P1のうちQに相当する重複領域Q1から得られた検出温度T1と、P2のうちQに相当する重複領域Q2から得られた検出温度T2とは、異なる温度を示すことになる。
【0019】
本発明は、P1,P2について重複領域Q1,Q2における温度分布の変化を監視し、これらQ1,Q2から温度変化が基準値より小さい領域を温度安定領域V1,V2として特定し、これら温度安定領域V1,V2から得られた検出温度に基づいて、各赤外線センサASの相対的な検出温度を補正するようにしたものである。
【0020】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる温度分布検出装置10の構成について詳細に説明する。
温度分布検出装置10には、主な機能部として、センサI/F部11、熱画像取得部12、記憶部13、温度安定領域特定部14、温度差計算部15、温度分布生成部16、および通信I/F部17が設けられている。これら機能部のうち、温度安定領域特定部14、温度差計算部15、および温度分布生成部16は、中央処理装置(CPU)とプログラムとが協働することにより実現される。
【0021】
センサI/F部11は、通信回線L1を介して各赤外線センサASとデータ通信を行う機能を有している。
熱画像取得部12は、センサI/F部11および通信回線L1を介して各赤外線センサASから一定周期で熱画像を取得して、記憶部13に時系列で保存する機能を有している。
【0022】
記憶部13は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、各赤外線センサASの配置位置、熱画像、相対温度誤差、温度分布データなど、温度分布検出処理に用いる各種の処理データやプログラムを記憶する機能を有している。
【0023】
温度安定領域特定部14は、隣り合う2つの赤外線センサAS1,AS2について、記憶部13に保存されているそれぞれの熱画像P1,P2のうち、互いに重複する重複領域Qに相当するP1,P2内の重複領域Q1,Q2における温度分布の時間変化を監視する機能と、これらQ1,Q2のうちから、互いに同一の位置であって、かつ、温度の時間変化が基準値より小さい領域を温度安定領域V1,V2として特定する機能とを有している。
【0024】
この際、温度安定領域特定部14は、重複領域Q1,Q2のうちから移動する発熱体を検出し、重複領域Q1,Q2のうち発熱体を除いた他の領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域V1,V2として特定するようにしてもよい。
【0025】
温度差計算部15は、隣り合う2つの赤外線センサAS1,AS2の熱画像P1,P2のうち、それぞれの温度安定領域V1,V2で検出した代表検出温度T1,T2の温度差ΔTを計算する機能を有している。
【0026】
温度分布生成部16は、温度差計算部15で計算した温度差ΔTに基づいて、それぞれの赤外線センサASの間における相対温度誤差を推定する機能と、得られた相対温度誤差に基づいてこれら赤外線センサASの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、空間20の温度分布を生成する機能と、得られた温度分布データを記憶部13に保存する機能とを有している。
【0027】
この際、温度分布生成部16は、隣り合う2つの赤外線センサAS1,AS2に関する代表検出温度T1,T2の時間変化について一定の相関関係が得られない場合、これら2つの赤外線センサAS1,AS2に関する温度差ΔTを相対温度誤差の推定から除外するようにしてもよい。
【0028】
通信I/F部17は、通信回線L2を介して上位システム30とデータ通信を行うことにより、記憶部13に保存されている温度分布データなどの各種データをやり取りする機能を有している。
【0029】
[本実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる温度分布検出装置10の動作について説明する。図4は、温度分布検出処理を示すフローチャートである。
ここでは、記憶部13に各赤外線センサASから取得した熱画像が時系列で保存されているものとする。
【0030】
まず、温度安定領域特定部14は、各赤外線センサASのうちから未選択の、隣接する2つの赤外線センサAS1,AS2の組合せを選択し(ステップ100)、記憶部13からAS1,AS2の熱画像P1,P2を取得する(ステップ101)。
続いて、温度安定領域特定部14は、P1,P2の重複領域Q1,Q2のうちから、互いに同一の位置であって、かつ、温度の時間変化が基準値より小さい領域を温度安定領域V1,V2として特定する(ステップ102)。
【0031】
次に、温度差計算部15は、AS1,AS2の熱画像P1,P2のうち、それぞれのV1,V2から代表検出温度T1,T2を検出し(ステップ103)、これらT1,T2の温度差ΔTを計算する(ステップ104)。T1,T2については、V1,V2における温度分布の平均値、最高値、最低値、中央値などの統計処理して得られた代表温度を用いればよい。
【0032】
この後、温度安定領域特定部14は、隣接する2つの赤外線センサAS1,AS2の組合せをすべて選択したか確認し(ステップ105)、未選択の組合せがある場合には(ステップ105:NO)、ステップ100へ戻る。
【0033】
一方、隣接する2つの赤外線センサAS1,AS2の組合せをすべて選択した場合(ステップ105:YES)、温度分布生成部16は、温度差計算部15で計算した温度差ΔTに基づいて、それぞれの赤外線センサASの間における相対温度誤差を推定する(ステップ106)。
相対温度誤差の推定については、特許文献2と同様の手法を用いればよい。例えば、基準となる赤外線センサAS0と各赤外線センサASとの間の相対温度誤差と、ASの組合せごとに計算した温度差ΔTとの関係を示す方程式を、組合せごとに生成し、これら方程式を連立させて最小二乗法で解くことにより、これら相対温度誤差を推定すればよい。
【0034】
次に、温度分布生成部16は、得られた相対温度誤差に基づいてこれら赤外線センサASの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、空間20の温度分布を生成し、得られた温度分布データを記憶部13に保存して(ステップ107)、一連の温度分布検出処理を終了する。
【0035】
なお、図4では、理解を容易とするため、赤外線センサASの相対温度誤差と空間20の温度分布を一括して求める場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。一般に、赤外線センサASの相対温度誤差は比較的安定しており、短期間で変動する傾向はない。このため、通常は、所定の間隔で相対温度誤差を推定して記憶部13に保存しておき、温度分布を求める際に、この相対温度誤差を記憶部13から読み出して使用することになる。
【0036】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、温度安定領域特定部14が、複数の赤外線センサASのうち隣り合う2つの赤外線センサAS1,AS2について、これらAS1,AS2の熱画像P1,P2のうち互いに重複する重複領域Q1,Q2における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域V1,V2として特定し、温度差計算部15が、これらAS1,AS2の熱画像P1,P2のうち、それぞれの温度安定領域V1,V2で検出した代表検出温度T1,T2の温度差ΔTを計算し、温度分布生成部16が、温度差ΔTに基づいて各赤外線センサASの間における相対温度誤差を推定し、得られた相対温度誤差に基づいて各ASの熱画像から得られた検出温度を補正することにより、空間20の温度分布を生成するようにしたものである。
【0037】
これにより、重複領域Q1,Q2のうち、温度分布が安定している温度安定領域V1,V2から検出された代表検出温度T1,T2の温度差ΔTが、相対温度誤差の推定に用いられることになる。したがって、障害物や人などの発熱体による影響がない温度に基づいて、相対温度誤差が推定されるため、赤外線センサAS間においてそれぞれの検出温度を精度よく補正することが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態において、温度安定領域特定部14が、重複領域Q1,Q2のうちから移動する発熱体を検出し、重複領域Q1,Q2のうち発熱体を除いた他の領域における温度分布の変化が基準値より小さい領域を温度安定領域V1,V2として特定するようにしてもよい。これにより、重複領域Q1,Q2のうち、人などの発熱体が存在しない領域からV1,V2が特定されるため、より正確に相対温度誤差を推定することができる。さらに、従来は発熱体の影響を受けないよう夜間や人のいないときに相対温度誤差の推定を行っていたが、本実施の形態によれば、発熱体の影響を抑制できるため、人がいる昼間など、任意の実行タイミングで相対温度誤差の推定を行うことができる。
【0039】
また、本実施の形態において、温度分布生成部16が、隣り合う2つの赤外線センサAS1,AS2に関する代表検出温度T1,T2の時間変化について一定の相関関係が得られない場合、これら2つの赤外線センサAS1,AS2に関する温度差ΔTを相対温度誤差の推定から除外するようにしてもよい。
【0040】
これにより、T1,T2を検出した温度安定領域V1,V2のいずれかまたは両方が、何らかの影響を受けて温度が変化する領域であることが予測でき、このような温度差ΔTを相対温度誤差の推定から除外できるため、より正確に相対温度誤差を推定することができる。なお、温度差ΔTについては、隣接する2つの赤外線センサAS1,AS2の組合せの全てについて必要となるものではない。各赤外線センサASがいずれかの組合せに含まれていれば、すべてのASに関する相対温度誤差を推定できる。
【0041】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0042】
10…温度分布検出装置、11…センサI/F部、12…熱画像取得部、13…記憶部、14…温度安定領域特定部、15…温度差計算部、16…温度分布生成部、17…通信I/F部、20…空間、30…上位システム、AS,AS1,AS2…赤外線センサ、L1,L2…通信回線、P1,P2…熱画像、Q,Q1,Q2…重複領域、V1,V2…温度安定領域、T1,T2…代表検出温度、ΔT…温度差、S…障害物、H…発熱体。
図1
図2
図3
図4