特許第6927756号(P6927756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927756
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス電極用スラリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20210823BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20210823BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20210823BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20210823BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
   H01G11/06
   H01G11/38
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-112723(P2017-112723)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-206675(P2018-206675A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金岡 友季
(72)【発明者】
【氏名】森田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】沖塚 真珠美
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/146747(WO,A1)
【文献】 特開2015−030777(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/200223(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/047662(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/047655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/84
H01M 10/00−10/39
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極に用いられるスラリーであって、
ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子、水溶性高分子を含有する水溶液、及び、導電性微粒子を含有し、
前記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径と前記導電性微粒子の体積平均粒子径の比(導電性微粒子の体積平均粒子径/ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径)が0.04〜0.4であり、
前記導電性微粒子のBET比表面積が15〜140m/gであり、
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール又はポリアクリル酸ナトリウムを含有する
ことを特徴とする蓄電デバイス電極用スラリー。
【請求項2】
ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子は、体積平均粒子径が50〜700nmであることを特徴とする請求項1載の蓄電デバイス電極用スラリー。
【請求項3】
ポリビニルアセタール系樹脂は、水酸基量が30〜65モル%であることを特徴とする請求項1記載の蓄電デバイス電極用スラリー。
【請求項4】
ポリビニルアセタール系樹脂は、イオン性官能基を有することを特徴とする請求項1、2記載の蓄電デバイス電極用スラリー。
【請求項5】
イオン性官能基は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項記載の蓄電デバイス電極用スラリー。
【請求項6】
導電性微粒子が、炭素質導電性微粒子、金属導電性微粒子及び金属酸化物導電性微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2、3、又は記載の蓄電デバイス電極用スラリー。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5記載の蓄電デバイス電極用スラリー、及び、活物質を含有する蓄電デバイス電極用組成物であって、
前記活物質100重量部に対して、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を0.5〜12重量部含有することを特徴とする蓄電デバイス電極用組成物。
【請求項8】
請求項記載の蓄電デバイス電極用組成物を用いてなることを特徴とする蓄電デバイス電極。
【請求項9】
請求項記載の蓄電デバイス電極を用いてなることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子の分散性に優れ、サイクル特性に優れた蓄電デバイス用電極を作製可能な蓄電デバイス電極用スラリーに関する。また、該蓄電デバイス電極用スラリーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型ビデオカメラや携帯型パソコン等の携帯型電子機器の普及に伴い、移動用電源としての二次電池の需要が急増している。また、このような二次電池に対する小型化、軽量化、高エネルギー密度化の要求は非常に高い。
このように、繰り返し充放電が可能な二次電池としては、従来、鉛電池、ニッケル−カドミウム電池等が主流となっている。しかしながらこれらの電池は、充放電特性は優れているが、電池重量やエネルギー密度の点では、携帯型電子機器の移動用電源として充分満足できる特性を有しているとはいえない。
【0003】
そこで、二次電池として、リチウム又はリチウム合金を負極電極に用いたリチウム二次電池の研究開発が盛んに行われている。リチウム二次電池は、正極活物質を含む正極層と、負極活物質を含む負極層とが、電解質層を介して積層された構成を有している。このリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、軽量であるという優れた特徴を有している。リチウム二次電池の電極は、通常、活物質と電極用バインダーを溶媒と共に混練し、導電性微粒子、増粘剤を混合してスラリーとした後、このスラリーをドクターブレード法等によって集電体上に塗布し乾燥して薄膜化することにより形成されている。
【0004】
リチウム二次電池の電極用バインダーとして最も広範に用いられているのが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表されるフッ素系樹脂である。
電極用バインダーは、活物質同士を結着するとともに、集電体と活物質とを結着するものである。バインダーが活物質を集電体に充分に結着できなかったり、活物質同士を結着できなかったりすると、高容量の電池が得られないこととなるが、フッ素系樹脂は、可撓性を有する薄膜を作製可能な一方で、集電体と活物質の結着性が劣るため、電池製造工程時に活物質の一部又は全部が集電体から剥離、脱落する恐れがあった。また、電池の充放電が行われる際、活物質内ではリチウムイオンの挿入、放出が繰り返され、それに伴い、集電体から活物質の剥離、脱落の問題が起こり得るという問題もあった。
【0005】
このような問題を解決するため、PVDF以外のバインダーを使用することも試みられている。しかしながら、従来の樹脂を用いた場合、電極に電圧を負荷した際に、樹脂の分解や劣化が生じてしまうという問題が新たに生じていた。このような樹脂の劣化が生じた場合は、充放電容量が低下したり、電極の剥離が発生したりするという問題が生じていた。
これに対して、特許文献1には、鹸化度75mol%以上のポリビニルアルコールをバインダー樹脂として使用した蓄電装置用導電性塗工液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−48043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなバインダーを用いた場合でも、電極作製時に添加される導電性微粒子は、活物質粒子に比べて非常に小さいため、電極中に均一に分散させることが難しいという問題があった。このため、電極内において導電性が不充分な部分が生じることで、蓄電デバイスのサイクル特性が低下するという問題があった。
また、このような樹脂を用いた場合、電極の柔軟性が低いものとなり、ひび割れや、集電体からの剥がれが発生するため、電池耐久性の低下を招くという問題があった。
【0008】
本発明は、導電性微粒子の分散性に優れ、サイクル特性に優れた蓄電デバイス用電極を作製可能な蓄電デバイス電極用スラリーを提供することを目的とする。また、該蓄電デバイス電極用スラリーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いられるスラリーであって、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子、水溶性高分子を含有する水溶液、及び、導電性微粒子を含有し、前記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径と前記導電性微粒子の体積平均粒子径の比(導電性微粒子の体積平均粒子径/ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径)が0.04〜0.4であり、前記導電性微粒子のBET比表面積が15〜140m/gである蓄電デバイス電極用スラリーである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子、水溶性高分子を含有する水溶液、及び、導電性微粒子を含有する蓄電デバイス電極用スラリーを用いることにより、得られる電極中の導電性微粒子の分散性を向上させて、サイクル特性に優れた蓄電デバイスを作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーは、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を含有する。
本発明では、スラリーの樹脂成分としてポリビニルアセタール系樹脂を用いることで、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子と活物質に引力的相互作用が働き、少量のバインダー量で活物質を固定化することが出来る。
また、該微粒子は導電性微粒子とも引力的相互作用を及ぼし、活物質、導電性微粒子間距離をある一定範囲にとどめることが出来る。このように活物質と導電性微粒子との距離を程よいものとすることで、活物質の分散性が大幅に改善される。
更に、PVDF等の樹脂を用いる場合と比較して、集電体との接着性を著しく向上させることができる。加えて、カルボキシメチルセルロースを用いる場合と比較して、活物質の分散性、接着性に優れ、バインダーの添加量が少ない場合でも充分な効果を発揮することができる。
更に、バインダーを微粒子形状とすることによって、活物質及び導電性微粒子の表面を全て覆うこと無く、部分的に接着(点接触)することが可能となる。その結果、電解液と活物質との接触が良好となり、リチウム電池に使用した場合に大電流が付加されても、リチウムイオンの伝導が充分に保たれ、電池容量の低下を抑制することが出来るという利点が得られる。
【0012】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、下記式(1−1)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(1−2)で表されるアセチル基を有する構成単位、下記式(1−3)で表されるアセタール基を有する構成単位、及び、下記式(1−4)で表されるイオン性官能基を含むアセタール基を有する構成単位を有するものであることが好ましい。
これにより、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性、活物質および導電性微粒子の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、集電体に対する接着力及び電解液に対する耐性も特に優れたものとすることができることから、リチウム二次電池の放電容量の低下を特に抑制することができる。
【0013】
【化1】
【0014】
上記式(1−3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、式(1−4)中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基又は芳香環を表し、Xはイオン性官能基を表す。
【0015】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0016】
上記炭素数1〜20のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等の環状アルキレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましい。
【0017】
上記イオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、それらの塩がより好ましく、スルホン酸基、その塩であることが特に好ましい。
【0018】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を構成するポリビニルアセタール系樹脂中の水酸基を有する構成単位の含有量(以下、水酸基量ともいう)は、好ましい下限が30モル%、好ましい上限が65モル%である。
上記水酸基量が30モル%以上であると、電解液に対する耐性を充分に向上させて、電極を電解液中に浸した際に樹脂成分が電解液中に溶出することを抑制することができる。上記水酸基量が65モル%以下であると、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の水媒体中での安定性を向上させて、粒子同士の合着が発生を抑制して、活物質の分散性を向上させることができる。
上記水酸基量は、より好ましい下限は35モル%、より好ましい上限は55モル%である。
【0019】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を構成するポリビニルアセタール系樹脂中のアセタール基を有する構成単位の含有量(以下、アセタール基量ともいう)は、単独アルデヒド、混合アルデヒドのいずれのアセタール化を用いる場合でも、全アセタール基量で、好ましい下限が40モル%、好ましい上限が70モル%である。
全アセタール基量が40モル%以上であると、樹脂の柔軟性を充分に向上させて、集電体との接着力を向上させることができる。上記アセタール化度が70モル%以下であると、電解液に対する耐性を充分に向上させて、電極を電解液中に浸漬した際に樹脂成分が電解液中に溶出することを防止することができる。
上記アセタール基量は、より好ましい下限が45モル%、より好ましい上限が65モル%である。
【0020】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を構成するポリビニルアセタール系樹脂中のアセチル基を有する構成単位の含有量(以下、アセチル基量ともいう)は、好ましい下限が0.2モル%、好ましい上限が20モル%である。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量が0.2モル%以上であると、柔軟性を充分に向上させて、アルミ箔への接着性を充分に向上させることができる。上記アセチル基量が20モル%以下であると、電解液に対する耐性を充分なものとして、電極を電解液中に浸漬した際に、樹脂成分が電解液中に溶出することを防止することができる。
上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は15モル%である。
【0021】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を構成するポリビニルアセタール系樹脂の重合度は、好ましい下限は250、好ましい上限は4000である。
上記重合度が250以上であると、電解液への耐性を充分なものとして、電極の電解液へ溶出を抑制して、短絡を防止することができる。上記重合度が4000以下であると、活物質との接着力を充分に向上させて、蓄電デバイスの放電容量の低下を抑制することができる。
上記重合度のより好ましい下限は280、より好ましい上限は3500である。
【0022】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0023】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記ポリビニルアルコールは、上記ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化したものであってもよい。また、更に上記エチレン性不飽和単量体を共重合させ、エチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有するポリビニルアルコールとしてもよい。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とα−オレフィンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端ポリビニルアルコールも用いることができる。上記α−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等が挙げられる。
【0025】
また、上記ポリビニルアセタール系樹脂微粒子を構成するポリビニルアセタール系樹脂はイオン性官能基を有することが好ましい。上記イオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、それらの塩がより好ましく、スルホン酸基、その塩であることが特に好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂がイオン性官能基を有することにより、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性が向上し、また、活物質および導電性微粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。
なお、上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0026】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量は0.01〜1mmol/gであることが好ましい。上記イオン性官能基の含有量が0.01mmol/g未満であると、微粒子のリチウム二次電池電極用組成物中での分散性、および、電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性が低下することがあり、1mmol/gを超えると、電池とした際のバインダーの耐久性が低下し、リチウム二次電池の放電容量が低下してしまうことがある。上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基のより好ましい含有量は0.02〜0.5mmol/gである。上記イオン性官能基の含有量は、NMRを用いることで測定することができる。
【0027】
上記イオン性官能基の存在形態については、ポリビニルアセタール系樹脂構造中に直接存在していてもよく、グラフト鎖を含むポリビニルアセタール系樹脂(以下、単にグラフト共重合体ともいう)のグラフト鎖に存在していてもよい。なかでも、電解液に対する耐性および電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を優れたものとすることが出来ることから、ポリビニルアセタール系樹脂構造中に直接存在していることが好ましい。
上記イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在している場合、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造であるか、アセタール結合を介してイオン性官能基が結合した分子構造であることが好ましい。また、アセタール結合を介してイオン性官能基が結合した分子構造であることが特に好ましい。
イオン性官能基が上記の構造で存在することで、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性が向上し、電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
【0028】
上記ポリビニルアセタール系樹脂構造中に、上記イオン性官能基を直接有するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては特に限定されない。例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール系樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基及びイオン性官能基を持った化合物と反応させる方法等が挙げられる。
【0029】
上記ポリビニルアセタール系樹脂が、アセタール結合を介してイオン性官能基を有している場合、アセタール結合とイオン性官能基が鎖状、環状のアルキル基や芳香族環により接続されていることが好ましい。なかでも、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数5以上の環状アルキレン基、炭素数6以上のアリール基等により接続されていることが好ましく、特に、炭素数1以上のアルキレン基、芳香環により接続されていることが好ましい。
これにより、電解液に対する耐性および電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を優れたものとすることが出来るとともに、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
上記芳香族環としては、ベンゼン環、ピリジン環等の芳香環や、ナフタレン環、アントラセン環等の縮合多環芳香族基等が挙げられる。
【0030】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となるように調整することが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記適性範囲とするためには、例えば、1つのアセタール結合によって、1つのイオン性官能基が導入されている場合、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量を0.1〜10モル%程度とすることが好ましい。また、1つのアセタール結合によって、2つのイオン性官能基が導入されている場合には、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量を0.05〜5モル%程度とすることが好ましい。更に、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性と、樹脂の柔軟性及び集電体に対する接着力を共に高いものとするために、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は、全アセタール結合の0.5〜20モル%であることが好ましい。
ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記範囲内とすることで、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性が向上するとともに、電解液に対する耐性および電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を優れたものとすることができる。更に、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
【0031】
上記ポリビニルアセタール系樹脂構造中にアセタール結合を介してイオン性官能基を有するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール原料に上記イオン性官能基を有するアルデヒドをあらかじめ反応させた後にアセタール化する方法が挙げられる。また、ポリビニルアルコールをアセタール化する際に、アルデヒド原料に上記イオン性官能基を有するアルデヒドを混合してアセタール化する方法が挙げられる。更に、ポリビニルアセタール樹脂を作成した後に上記イオン性官能基を有するアルデヒドを反応させる方法等が挙げられる。
【0032】
上記イオン性官能基を有するアルデヒドとしては、スルホン酸基を有するアルデヒド、アミノ基を有するアルデヒド、リン酸基を有するアルデヒド、カルボキシル基を有するアルデヒド等が挙げられる。具体的には例えば、4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム、4−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−ピリジンカルバルデヒド塩酸塩、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド塩酸塩、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド塩酸塩、ベタインアルデヒドクロリド、(2−ヒドロキシ−3−オキソプロポキシ)リン酸、5−リン酸ピリドキサール、テレフタルアルデヒド酸、イソフタルアルデヒド酸等が挙げられる。
【0033】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール結合を介してイオン性官能基を有しており、イオン性官能基はスルホン酸基又はその塩であり、アセタール結合とイオン性官能基がベンゼン環によって接続されていることが特に好ましい。上記ポリビニルアセタール系樹脂がこのような分子構造を有することで、リチウム二次電池電極用組成物中におけるポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性、電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性、電池とした際のバインダーの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0034】
上記ポリビニルアセタール系樹脂が、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造である場合、下記一般式(2)に示す構造単位を有することが好ましい。上記ポリビニルアセタール系樹脂が下記一般式(2)に示す構造単位を有することで、リチウム二次電池電極用組成物中におけるポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性、電池とした際のバインダーの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0035】
【化2】
【0036】
式(2)中、Cはポリマー主鎖の炭素原子を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
【0037】
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
【0038】
上記ポリビニルアセタール系樹脂構造中にイオン性官能基が直接存在するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては特に限定されない。例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基及びイオン性官能基を持った化合物と反応させる方法等が挙げられる。
【0039】
上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマーと、下記一般式(3)に示す構造を有するモノマーとを共重合化させた後、得られた共重合樹脂のエステル部位をアルカリ又は酸によりケン化する方法が挙げられる。
【0040】
【化3】
【0041】
式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
【0042】
上記一般式(3)に示す構造を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸等のカルボキシル基と重合性官能基を有するもの、アリルスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸等のスルホン酸基と重合性官能基を有するもの、N,N−ジエチルアリルアミン等のアミノ基と重合性官能基を有するもの、及びこれらの塩等が挙げられる。
なかでも、アリルスルホン酸及びその塩を用いた場合、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性が向上するとともに、電解液に対する耐性および電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を優れたものとすることができる。更に、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができるため好適である。特に、アリルスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
【0044】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中の上記一般式(2)に示す構造単位の含有量は、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となるように調整することが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記適性範囲とするためには、例えば、上記一般式(3)によって、1つのイオン性官能基が導入されている場合、上記一般式(2)に示す構造単位の含有量を0.05〜5モル%程度とすることが好ましい。また、上記一般式(3)によって、2つのイオン性官能基が導入されている場合、上記一般式(2)に示す構造単位の含有量を0.025〜2.5モル%程度とすることが好ましい。
ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記範囲内とすることで、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散性が向上するとともに、電解液に対する耐性および電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を優れたものとすることができる。更に、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
【0045】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径は、好ましい下限が50nm、好ましい上限が700nmである。
上記体積平均粒子径が50nm以上であると、活物質及び導電性微粒子の表面をバインダーが全て覆ってしまうことがなく、電解液と活物質とを充分に接触させることができる。上記体積平均粒子径が700nm以下であると、電極とした際の活物質および導電性微粒子の分散性を充分に向上させて、蓄電デバイスの放電容量を充分に高めることができる。
ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径は、より好ましい下限が200nm、より好ましい上限が400nmである。
なお、上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置や透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0046】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径は、CV値の好ましい上限が40%である。CV値が40%以下であると、大きな粒子径を持った微粒子が存在することがなく、微粒子の沈降を抑制して安定な蓄電デバイス電極用スラリーを得ることができる。
上記CV値のより好ましい上限は35%、更に好ましい上限は32%、特に好ましい上限は30%である。なお、CV値は、標準偏差を体積平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0047】
上記ポリビニルアセタール系樹脂のガラス転移温度は、好ましい下限が50℃、より好ましい下限が65℃、好ましい上限が90℃、より好ましい上限が87℃である。
【0048】
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子のBET比表面積は、好ましい下限が15m/g、より好ましい下限が30m/g、好ましい上限が140m/g、より好ましい上限が120m/gである。
【0049】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー中の上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は2重量%、好ましい上限は60重量%である。上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量が2重量%未満であると、上記スラリーを活物質と混合して蓄電デバイス電極用組成物とした際の活物質に対するポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の量が少なくなり、集電体への接着力が不足してしまうことがある。上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量が60重量%を超えると、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の水媒体中での安定性が低下し、粒子同士の合着が発生することによって、活物質を充分に分散させることが困難となり、リチウム二次電池等の蓄電デバイスの放電容量が低下してしまうことがある。上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量は、より好ましい下限が5重量%、より好ましい上限が50重量%である。
【0050】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーは、水溶性高分子を含有する水溶液を含有する。
上記水溶性高分子を含有する水溶液を含有することにより、スラリー中の導電性微粒子の分散性を向上させることができる。
【0051】
上記水溶性高分子としては、天然高分子、セルロース誘導体、合成高分子等が挙げられる。
上記天然高分子としては、例えば、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ペクチン、アラビアガム等の植物系天然高分子、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、カゼイン等の動物系天然高分子等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
上記合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール等のアルコール系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド等のエーテル系高分子等が挙げられる。
なかでも、スラリーの粘度を好適なものとし、導電性微粒子の分散性を向上させることができることから、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0052】
上記水溶性高分子は、1重量%濃度水溶液の粘度の好ましい下限が500mPa・s、より好ましい下限が800mPa・s、好ましい上限が3000mPa・s、より好ましい上限が5000mPa・sである。
なお、上記1重量%濃度水溶液の粘度は、例えば、B型粘度計を用い、温度25℃、攪拌速度60rpmの条件で測定することができる。
【0053】
上記水溶性高分子の重合度は、好ましい下限が1000、より好ましい下限が1200、好ましい上限が3000、より好ましい上限が2500である。
【0054】
上記水溶性高分子のガラス転移温度は、好ましい下限が50℃、より好ましい下限が85℃、好ましい上限が95℃、より好ましい上限が90℃である。
【0055】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー中、上記水溶性高分子の含有量は、好ましい下限が0.5重量%、より好ましい下限が1重量%、好ましい上限が3重量%、より好ましい上限が2重量%である。
【0056】
上記水溶性高分子を含有する水溶液の粘度は、1000mPa・s以上であることが好ましい。
上記水溶液の粘度が1000mPa・s以上であると、電極を作製する際の塗布性を良好なものとして、接着力を向上させることができる。
上記水溶液の粘度は、好ましい下限が1200mPa・s、より好ましい下限が1500mPa・s、好ましい上限が10000mPa・s、より好ましい上限が5000mPa・sである。
なお、上記水溶液の粘度は、例えば、B型粘度計を用いて、温度25℃、攪拌速度60rpmの条件で測定することができる。
【0057】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー中の上記水溶性高分子を含有する水溶液の含有量は、好ましい下限が30重量%、好ましい上限が70重量%である。
上記水溶性高分子を含有する水溶液の含有量が30重量%以上であると、集電体へのスラリーの塗布性を好適なものとすることができる。上記水溶性高分子を含有する水溶液の含有量が70重量%以下であると、負極活物質や導電助剤等粒子表面を完全に被覆することなく、電極抵抗の増加を抑制することができる。
上記水溶性高分子を含有する水溶液の含有量は、より好ましい下限が35重量%、より好ましい上限が65重量%である。
【0058】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーにおいて、上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子100重量部に対する上記水溶性高分子の含有量は、好ましい下限が50重量部、より好ましい下限が80重量部、好ましい上限が150重量部、より好ましい上限が120重量部である。
【0059】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーは、導電性微粒子を含有する。
導電性微粒子としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等の炭素質導電性微粒子;銅(Cu)、ニッケル(Ni)等のリチウムと合金を形成しない金属の金属導電性微粒子;及びCuO、Fe等の導電性を有する金属酸化物導電性微粒子が挙げられる。導電性微粒子は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、炭素質導電性微粒子が好ましく、アセチレンブラックがより好ましい。
【0060】
上記導電性微粒子の体積平均粒子径は、好ましい下限が10nm、より好ましい下限が50nm、好ましい上限が150nm、より好ましい上限が100nmである。
なお、上記導電性微粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置や透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0061】
上記導電性微粒子の形状は特に限定されないが、球状、楕円体状、針状、板状、鱗片状、チューブ状、棒状、不定形状などが挙げられる。
【0062】
上記導電性微粒子のBET比表面積は、15〜140m/gである。
上記導電性微粒子のBET比表面積が15m/g以上であると、電解液との接触面積が増大し、充放電効率を高くすることができる。上記導電性微粒子のBET比表面積が140m/g以下であると得られるリチウムイオン二次電池の初回の不可逆容量を抑制することができる。
上記導電性微粒子のBET比表面積は、好ましい下限が20m/g、より好ましい下限が30m/g、好ましい上限が100m/g、より好ましい上限が50m/gである。
なお、上記BET比表面積は、例えば、比表面積測定装置(島津製作所社製、ASAP−2000)を用いること等により測定することができる。
【0063】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーにおいて、上記導電性微粒子の体積平均粒子径と上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径との比(導電性微粒子の体積平均粒子径/ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径)は、0.04〜0.4である。
上記体積平均粒子径の比が0.04以上であると、微粒子同士が互いに引き合いやすくなることで、活物質表面への付着性が高まり、高い導電性を維持することができる。上記体積平均粒子径の比が0.4以下であると、微粒子同士の凝集を抑制することができ、リチウムイオンの吸蔵および放出を阻害することなく、高い導電性を維持することができる。
上記体積平均粒子径の比は、好ましい下限が0.06、より好ましい下限が0.1、好ましい上限が0.35、より好ましい上限が0.2である。
【0064】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーは、分散媒として水性媒体を含有していてもよい。
上記分散媒として水性媒体を用いることで、電極に残留する溶媒を限りなく減らすことができ、リチウム二次電池を作製することが可能となる。
なお、本発明の蓄電デバイス電極用スラリーでは、水性媒体は水のみであってもよく、上記水に加えて、水以外の溶媒を添加してもよい。
上記水以外の溶媒としては、水への溶解性を有しており、なおかつ揮発性の高いものがよく、例えば、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール類が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記水以外の溶媒添加量の好ましい上限は水100重量部に対して30重量部であり、より好ましい上限は20重量部である。
【0065】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーにおいて、上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子100重量部に対する上記導電性微粒子の含有量は、好ましい下限が50重量部、より好ましい下限が80重量部、好ましい上限が150重量部、より好ましい上限が120重量部である。
【0066】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーは、蓄電デバイスの電極に用いられるスラリーである。
上記蓄電デバイスとしては、リチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。なかでも、リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタに特に好適に使用することができる。
【0067】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーを製造する方法としては特に限定されない。例えば、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後、上記ポリビニルアセタール系樹脂を溶解する有機溶剤に溶解させ、次いで、水等の貧溶媒を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去してポリビニルアセタール系樹脂を析出させて微粒子を作製し、更に、水溶性高分子を含有する水溶液、導電性微粒子を添加する方法が挙げられる。また、大量の水に上記ポリビニルアセタール系樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去し、ポリビニルアセタール系樹脂を析出させて微粒子を作製し、更に、水溶性高分子を含有する水溶液、導電性微粒子を添加する方法が挙げられる。上記有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
なかでも、得られるポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の体積平均粒子径が小さく、粒子径分布が狭い微粒子を得ることができるため、上記ポリビニルアセタール系樹脂を有機溶剤に溶解した後にポリビニルアセタール系樹脂を析出させて微粒子を作製し、更に、水溶性高分子を含有する水溶液、導電性微粒子を添加する方法が好ましい。
なお、上記製造方法では、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子を作製し、乾燥した後に水性媒体に分散させてもよく、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の作製時に使用した溶媒をそのまま水性媒体として使用してもよい。
【0068】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリーに活物質を添加することで蓄電デバイス電極用組成物とすることができる。このような本発明の蓄電デバイス電極用スラリー、及び、活物質を含有する蓄電デバイス電極用組成物もまた本発明の1つである。
【0069】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物中の上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量は特に限定されないが、活物質100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は12重量部である。
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量が0.5重量部以上であると、集電体への接着力を充分に向上させることができる。上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量が12重量部以下であると、リチウム二次電池の放電容量の低下を充分に抑制することができる。
上記ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の含有量は、より好ましい下限が1重量部、より好ましい上限が5重量部である。
【0070】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物中の上記導電性微粒子の含有量は特に限定されないが、活物質100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が10重量部である。
上記導電性微粒子の含有量が0.5重量部以上であると、良好な電子伝導性を付与することができる。上記導電性微粒子の含有量が10重量部以下であると、電極内での導電性微粒子の分散性を良好なものとすることができる。
上記導電性微粒子の含有量は、より好ましい下限が1重量部、より好ましい上限が5重量部である。
【0071】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、活物質を含有する。
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、正極、負極のいずれの電極に使用してもよく、また、正極および負極の両方に使用してもよい。従って、活物質としては、正極活物質、負極活物質がある。
【0072】
上記正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)や、これらの複合体(例えば、LiNi0.5Mn1.5、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)等の、リチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)の粒子が挙げられる。また、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩等の粒子が挙げられる。
なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
上記負極活物質としては、例えば、従来からリチウム二次電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば黒鉛、天然黒鉛、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物、ケイ素、酸化ケイ素等のシリコン化合物等が挙げられる。
【0074】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物には、上述した活物質、本発明の蓄電デバイス電極用スラリー以外にも、必要に応じて、難燃助剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤のような添加剤を添加してもよい。なかでも、蓄電デバイス電極用組成物を集電体に塗工する際に、塗膜を均一なものとすることができることから、水溶性高分子を添加することが好ましい。
【0075】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、上記活物質、本発明の蓄電デバイス電極用スラリー及び必要に応じて添加する各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0076】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、例えば、導電性基体上に塗布し、乾燥する工程を経ることで、蓄電デバイス電極が形成される。このような蓄電デバイス電極用組成物を用いて得られる蓄電デバイス電極、及び、蓄電デバイスもまた本発明の1つである。
本発明の蓄電デバイス電極用組成物を導電性基体に塗布する際の塗布方法としては、例えば、押出しコーター、リバースローラー、ドクターブレード、アプリケーターなどをはじめ、各種の塗布方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、導電性微粒子の分散性に優れ、サイクル特性に優れた蓄電デバイス用電極を作製可能な蓄電デバイス電極用スラリーを提供することができる。また、該蓄電デバイス電極用スラリーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散液の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、アセタール化度55.0モル%、水酸基量43.6モル%、アセチル基量1.4モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させて溶解液を得た。得られた溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え、75℃にて4時間反応させた。反応液を冷却し、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノールおよび水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子1(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1ともいう)が分散した分散液(ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子1の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、アセタール化度54.0モル%、水酸基量42.0モル%、アセチル基量1.1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は5.0モル%であった。また、得られたポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子1の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、300nmであった。
【0080】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子2の分散液の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、アセタール化度55.5モル%、水酸基量40.5モル%、アセチル基量4.0モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させて溶解液を得た。得られた溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え、75℃にて4時間反応させた。反応液を冷却し、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノールおよび水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子2が分散した分散液(ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子2の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、アセタール化度55.0モル%、水酸基量40.0モル%、アセチル基量2.0モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は3.0モル%であった。
また、得られたポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子2の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、340nmであった。
【0081】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子3の分散液の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、アセタール化度46.0モル%、水酸基量51.9モル%、アセチル基量2.1モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させて溶解液を得た。得られた溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え、75℃にて4時間反応させた。反応液を冷却し、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノールおよび水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子3が分散した分散液(ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子3の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、アセタール化度46.0モル%、水酸基量51.9モル%、アセチル基量2.1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は1.0mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は11.0モル%であった。
また、得られたポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子3の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、400nmであった。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例1)
得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散液10重量部に、10重量%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(粘度1900mPa・s、ポリアクリル酸ナトリウムの重合度2700)20重量部、導電性微粒子としてアセチレンブラック2重量部を加えて、蓄電デバイス電極用スラリーを調製した。なお、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、アセチレンブラックの体積平均粒子径は51nmであった。また、比表面積測定装置(島津製作所社製、ASAP−2000)を用いて測定したところ、アセチレンブラックのBET比表面積は35m/gであった。
得られた蓄電デバイス電極用スラリーに対して、負極活物質として球状天然黒鉛(日本黒鉛工業社製、CGB−10)84.6重量部、シリコン化合物(大阪チタニウムテクノロジーズ社製)9.4重量部を加えて混合し、蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0084】
(実施例2)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径96nm、BET比表面積30m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0085】
(実施例3)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径17nm、BET比表面積47m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0086】
(実施例4)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径46nm、BET比表面積22m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0087】
(実施例5)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径42nm、BET比表面積136m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0088】
(実施例6)
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液に代えて20重量%ポリビニルアルコール水溶液(粘度2000mPa・s、ポリビニルアルコールの重合度1700)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0089】
(実施例7)
ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散液に代えてポリビニルアセタール系樹脂微粒子2の分散液(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子2の含有量:20重量%)を用いた以外は実施例6と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0090】
(実施例8)
ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散液に代えてポリビニルアセタール系樹脂微粒子3の分散液を用い、水溶性高分子水溶液として2重量%カルボキシメチルセルロース水溶液(粘度2500mPa・s、カルボキシメチルセルロースの重合度2200)100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0091】
(比較例1)
蓄電デバイス電極用スラリーとして、20重量%ポリビニルアルコール水溶液(粘度2000mPa・s、ポリビニルアルコールの重合度1700)を用いた。
蓄電デバイス電極用スラリー20重量部に対して、負極活物質として球状天然黒鉛(日本黒鉛工業社製、CGB−10)84.6重量部、シリコン化合物(大阪チタニウムテクノロジーズ社製)9.4重量部、導電性微粒子としてアセチレンブラック2重量部を加えて混合し、蓄電デバイス電極用組成物を得た。なお、アセチレンブラックとしては実施例1と同様のものを用いた。
【0092】
(比較例2)
ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散液に代えてスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(スチレン−ブタジエン共重合体の含有量:20重量%、スチレン−ブタジエン共重合体粒子の体積平均粒子径200nm)を用いた以外は実施例6と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0093】
(比較例3)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径11nm、BET比表面積71m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0094】
(比較例4)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径125nm、BET比表面積28m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0095】
(比較例5)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径78nm、BET比表面積13m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0096】
(比較例6)
導電性微粒子としてアセチレンブラック(体積平均粒子径22nm、BET比表面積174m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス電極用組成物を得た。
【0097】
<評価>
実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池電極用組成物について以下の評価を行った。結果を表3に示した。
【0098】
(1)接着性
銅箔(厚み15μm)の上に、乾燥後の膜厚が40μmとなるように蓄電デバイス負極用組成物を塗工、乾燥し、アルミ箔上に電極がシート状に形成された試験片を得た。
この試験片を縦10cm、横5cmに切り出し、アルミ箔側を厚み2mmのアクリル板に両面テープで貼り付けた。試験片の電極表面に幅18mmのテープ(商品名:セロテープ(登録商標)No.252(積水化学工業社製)(JIS Z1522規定))を貼り付け、90°方向に300mm/minの速度でテープを剥離したときの剥離力(N)をAUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS−J」)を用いて計測した。
【0099】
(2)電池性能評価
(a)コイン電池の作製
実施例1〜8、比較例1〜6で得られた蓄電デバイス電極用組成物を厚さ15μmの銅箔に均一に塗布、乾燥し、これをφ16mmに打ち抜いて負極層を得た。
電解液として、LiPF(1M)を含有するエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1)を用い、該電解液を負極層に含浸させた後、この負極層を負極集電体上に置き、さらにその上に電解液を含浸させた厚さ25mmの多孔質PP膜(セパレータ)を置いた。
更に、この上に正極層となるリチウム金属板を置き、この上に絶縁パッキンで被覆された正極集電体を重ね合わせた。この積層体をかしめ機により圧力を加え、密閉型のコイン電池を得た。
【0100】
(b)放電容量評価、及び、充放電サイクル評価
得られたコイン電池について、充放電試験装置(宝泉社製)を用いて放電容量評価、及び、充放電サイクル評価を行った。
この放電容量評価、充放電サイクル評価は電圧範囲2.7〜4.2V、評価温度は25℃と50℃で行った。なお、充放電サイクル評価は、充放電時の電流量を0.2Cとし、初回の放電容量に対する30サイクル目の放電容量の割合より算出した。
【0101】
(c)レート特性評価
得られたコイン電池について、充放電時の電流量を0.2C、1C、3Cとして、充放電サイクルを行った。充放電サイクルの10回目の放電容量を測定し、電流量が0.2Cの場合の放電容量を100とした場合の、電流量が1Cと3Cの場合の放電容量の比率を算出し、レート特性を評価した。
なお、「1C」とは、活物質量より算出した容量を1時間で充放電するのに必要な電流量であり、同様に「0.2C」とは5時間、「3C」とは20分で、それぞれ充放電するのに必要な電流量である。
【0102】
(d)電子伝導性
(a)コイン電池の作製で得られた負極層について、表面抵抗計(MITSUBISHI CHEMICAL ANALYTECH社製、商品名:Loresta−EP)を用いて、4端子法によって抵抗値を測定することにより、電子伝導性を評価した。抵抗値が低い場合、電子伝導性に優れているといえる。
【0103】
(3)貯蔵安定性
実施例及び比較例で得られた蓄電デバイス電極用スラリーを60℃、50%RHの条件で、1ヶ月間貯蔵した。貯蔵後の蓄電デバイス電極用スラリーを用いた以外は実施例及び比較例と同様にして、リチウム二次電池電極用組成物を得た。
得られたリチウム二次電池電極用組成物を用いて、(2)電池性能評価と同様にして、放電容量評価、充放電サイクル評価、レート特性評価を行った。
【0104】
【表2】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、導電性微粒子の分散性、サイクル特性に優れた蓄電デバイス用電極を作製可能な蓄電デバイス電極用スラリーを提供することができる。また、該蓄電デバイス電極用スラリーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供することができる。