特許第6927778号(P6927778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927778
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】螺旋管の製管装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20210823BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20210823BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   B29C63/32
   F16L1/00 J
   F16L55/18 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-139163(P2017-139163)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-18460(P2019-18460A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−233706(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/175243(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/26,63/30,63/32
F16L 1/00,55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周規制体の内周に沿う螺旋管となるべき帯状部材における先行して螺旋状に製管された先行管部の延伸端部を内周側へ解放させた状態で、前記先行管部に続く未製管の後続帯部を前記延伸端部の内周側から斜めに押し出し、前記後続帯部の縁を前記延伸端部の一周先行する対応縁と嵌合させるとともに、前記螺旋状の巻回方向に沿って推進される、螺旋管の製管装置であって、
前記延伸端部に配置される装置フレームと、
前記装置フレームに設けられ、前記後続帯部に前記押し出し力を付与する駆動部と、
前記装置フレームの推進前後方向と直交する装置高さ方向における、前記駆動部よりも基部側かつ前記延伸端部の外周側に設けられ、前記先行管部の延伸端部に外周側から係止される管端外周ガイドと、
前記管端外周ガイドに設けられ、前記管端外周ガイドよりも前記基部側へ突出されて前記外周規制体の内周と接する転動体と、
前記管端外周ガイドに設けられ、前記管端外周ガイドから推進前方へ突出された案内部材と、
を備え、前記案内部材が、前記転動体の中心よりも前記基部側から推進前方へ向かって、前記装置高さ方向の頂部側へ傾く案内面を有し、前記推進前後方向とも前記装置高さ方向とも直交する方向から見て、前記案内面が、前記転動体の中心よりも前記装置高さ方向の基部側で前記転動体の外周面と交差し、該交差箇所から前記転動体よりも推進前方かつ前記装置高さ方向の頂部側へ斜めに延び出ていることを特徴とする螺旋管の製管装置。
【請求項2】
前記案内部材が、前記帯状部材の外周側の溝にスライド可能に嵌め入れられることを特徴とする請求項1に記載の製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材を螺旋状に巻回することによって螺旋管を製造する製管装置に関し、特に、螺旋状の巻回方向に沿って推進されながら製管する自走式かつ非内周規制構造の製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管等の既設管を更生管でライニングすることによって更生することは公知である。更生管の一例として、合成樹脂製の帯状部材を螺旋状に巻回することにより形成される螺旋管が知られている。
【0003】
螺旋管を製管する製管装置として、所謂自走式の製管装置が知られている(特許文献1〜3等参照)。この種の製管装置は、帯状部材における先行して螺旋状に製管された先行管部の延伸端部に配置されている。そして、前記先行管部に続く未製管の後続帯部の縁を、先行管部の一周先行する対応縁と嵌合させる。嵌合に伴って、製管装置が、螺旋状の巻回方向に沿って自走(推進)される。これによって、螺旋管が漸次延伸される。
【0004】
特許文献1の製管装置は、所謂リンクローラと称される環状の内周規制体を備えている。該内周規制体に先行管部の延伸端部が巻き付けられる。ひいては、内周規制体によって螺旋管の断面(形状及び直径ないしは周長を含む)が内周側から規制されている。
【0005】
特許文献2の製管装置においては、内周規制体として、複数の支持アームが放射状に延びている。これら支持アームの先端部の案内ローラが、先行管部の延伸端部に押し当てられることで、先行管部ひいては螺旋管の断面が内周側から規制されている。
【0006】
特許文献3の製管装置は、駆動部と、管端ガイドを備える一方で、内周規制体を有しない非内周規制構造になっている。このため、延伸端部が内周側へ解放されている。管端ガイドは、先行管部の延伸端部の外周側の管端外周ガイドと、内周側のガイドを含み、先行管部の延伸端部にスライド可能かつ摩擦抵抗を発現可能に係止されている。駆動部の一対の駆動ローラによって、帯状部材における既に螺旋状に製管された先行管部に連なる後続帯部を、前記先行管部の内周側から斜め外側へ押し出す。この押し出し力によって、後続帯部の縁を先行管部の一周先行する対応縁と嵌合させる。このとき、管端外周ガイドが嵌合力を受ける。かつ、嵌合によって推進反力が生じ、製管装置が螺旋状の巻回方向に沿って推進(自走)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4866428号公報
【特許文献2】特許第4505142号公報
【特許文献3】国際公開WO2016/175243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記非内周規制構造の自走式製管装置(特許文献3)における管端外周ガイドは、例えばプレート状に形成され、既設管の内周と更生管の外周との限られた隙間に配置されている。このため、特に管底や管側面では、管端外周ガイドが既設管と接触しやすく、大きな負荷を受けて、変形したり破損したりする等の損傷を受けやすい。
かかる損傷を防止するために、製管装置の幅方向の一側部にコロやタイヤないしはギア状体等の転動体を設けることが考えられる。転動体が既設管の内周に当たることで、管端外周ガイドを既設管の内周面から浮かせることができる。
一方、転動体が大径であると、製管装置が例えば縮径製管される側に傾き、拡径製管できなくなる。
そこで、転動体を小径にすると、既設管の内周面に部分的なコンクリート剥落などによる凹みなどの段差があった場合、転動体がその段差に引っ掛かって製管装置が止まってしまうおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、非内周規制構造の自走式製管装置において、管端外周ガイドの損傷を防止でき、かつ製管の拡縮制御を容易化でき、更には外周規制体の内周面に段差があっても円滑に製管可能な製管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、螺旋管となるべき帯状部材における先行して螺旋状に製管された先行管部の延伸端部を内周側へ解放させた状態で、前記先行管部に続く未製管の後続帯部を前記延伸端部の内周側から斜めに押し出し、前記後続帯部の縁を前記延伸端部の一周先行する対応縁と嵌合させるとともに、前記螺旋状の巻回方向に沿って推進される、螺旋管の製管装置であって、
前記延伸端部に配置される装置フレームと、
前記装置フレームに設けられ、前記後続帯部に前記押し出し力を付与する駆動部と、
前記装置フレームの推進前後方向と直交する装置高さ方向における、前記駆動部よりも基部側に設けられ、前記先行管部の延伸端部に外周側から係止される管端外周ガイドと、
前記管端外周ガイドよりも前記基部側へ突出された転動体と、
前記管端外周ガイドから推進前方へ突出された案内部材と、
を備え、前記案内部材が、前記転動体の中心よりも前記基部側から推進前方へ向かって、前記装置高さ方向の頂部側へ傾く案内面を有していることを特徴とする。
【0010】
当該製管装置によれば、転動体が既設管等の外周規制体の内周面に接することで、管端外周ガイドが直接、外周規制体に当たるのを避けることができ、管端外周ガイドの変形、破損、その他の損傷を防止できる。
転動体を小径化することで、製管装置が例えば縮径側に傾くのを防止でき、製管の拡縮制御を容易化できる。
外周規制体に段差があったときは、案内部材の傾斜された案内面が段差に当たって摺動されることによって、段差を乗り越える方向へ転動体を案内することができる。転動体が小径であっても、転動体よりも先に案内部材が段差に当たることで、案内作用を確実に発現できる。そして、転動体の中心が段差より管内側へ位置したとき、転動体が段差に当たる。以後、転動体が転動されることで段差を乗り越えることができる。この結果、外周規制体に段差があっても、製管を円滑に行なうことができる。
【0011】
前記案内部材が、前記帯状部材の外周側の溝にスライド可能に嵌め入れられることが好ましい。
これによって、製管装置を、螺旋管の巻回方向に沿って案内することができる。また、溝にゴミや小砂利等の異物が入っていたときは、案内部材によって異物を除去することができる。
【0012】
外周規制体の内周面及び螺旋管の断面形状は、円形に限られず、四角形等の非円形であってもよい。
本明細書における「縮径」は、外周規制体及び螺旋管が円形断面であるとき、直径が小さくなることに限られず、外周規制体及び螺旋管が任意の断面であるときの、周長が小さくなること(縮周長)をも含む。
また、「拡径」は、螺旋管が円形断面であるとき、直径が大きくなることに限られず、螺旋管が任意の断面であるときの、周長が大きくなること(拡周長)をも含む。
「延伸端部」とは、先行管部が管軸に沿って延伸されていく方向(延伸方向)の前端の約一周部分を言う。延伸方向の前方を「延伸前方」と称し、延伸方向の後方を「延伸後方」と称す。
好ましくは、前記押し出し方向は、前記駆動部フレームから、装置高さ方向の基部側かつ推進後方へ向けられる。前記装置高さ方向は、概略、螺旋管の管内外方向へ向けられる。前記装置高さ方向の基部側は、螺旋管の外周側へ向けられ、装置高さ方向の頂部側は、螺旋管の内周側へ向けられる。
前記延伸端部が内周側へ解放された状態とは、前記製管装置が、前記先行管部の延伸端部の断面(形状、周長、直径)を内周側から規制する内周規制体を有しない非内周規制構造になっており、前記延伸端部が、内周規制体によって内周側から規制されていない状態を言う。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製管装置によれば、転動体を設けることで管端外周ガイドの損傷を防止でき、転動体を小径化することで螺旋管の拡径縮径の制御を容易化でき、更には、案内部材を設けることで、転動体が小径であっても外周規制体の段差を乗り越えて、円滑に製管を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る製管装置を、更生管(螺旋管)の製管中の状態で模式的に示す側面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿う、前記製管装置及び更生管の解説平面図である。
図3図3は、前記製管装置によって製管中の更生管(螺旋管)の斜視図である。
図4図4は、前記製管装置によって既設管を更生する様子を示す断面図である。
図5図5(a)は、前記更生管となるべき帯状部材を示し、図1のVa−Va線に沿う断面図である。図5(b)は、図1のVb−Vb線に沿う断面図である。図5(c)は、図1のVc−Vc線に沿う断面図である。
図6図6は、図1のVI−VI線に沿う断面図である。
図7図7(a)〜同図(c)は、前記製管装置の後側の管端外周ガイドが既設管の内周の段差を乗り越える様子を順次示す断面図である。
図8図8(a)〜同図(c)は、図7から引き続いて、前記製管装置の後側の管端外周ガイドが既設管の内周の段差を乗り越える様子を順次示す断面図である。
図9図9(a)〜同図(b)は、前記段差が大きい場合を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図4は、老朽化した既設管1(外周規制体)を更生する様子を示したものである。既設管1としては、下水道管、上水道管、農業用水管、水力発電用導水管、ガス管等が挙げられる。既設管1の内壁に更生管9がライニングされる。更生管9は、長尺の帯状部材90によって構成され、螺旋管状になっている。以下、更生管9を適宜「螺旋管9」と称す。
【0016】
図5(a)に示すように、帯状部材90は、一定の断面を有して、同図の紙面と略直交する方向へ延びている。帯状部材90の帯本体90aの材質は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂である。帯本体90aの裏側には金属製の補強帯材96が設けられている。なお、補強帯材96が省略されていてもよい。平板状の補強帯材が樹脂製の帯本体90aに埋め込まれていてもよい。
帯状部材90の裏側部(外周側部、図5(a)において下側部)には、溝95bが形成されている。溝95bは、帯状部材90の長手方向に沿って延びている。
【0017】
図5(a)に示すように、帯状部材90の幅方向の一方側(図5(a)において左側)の縁部には、凹状の第1嵌合部93が形成されている。帯状部材90の幅方向の他方側(図5(a)において右側)の縁部には、凸状の第2嵌合部94が形成されている。第1嵌合部93の凹部と第2嵌合部94の凸部は互いに相補形状になっている。
図5(c)及び図6に示すように、螺旋管9における、一周違いに隣接する縁の嵌合部93,94どうしが互いに凹凸嵌合によって接合されている。
【0018】
図3及び図4に示すように、製管途中の帯状部材90は、既に製管された先行管部91と、これに続く未製管の後続帯部92とを含む。帯状部材90が、螺旋状の巻回方向に巻回されることで、螺旋管状の先行管部91が形成されている。製管が進むにつれて、先行管部91が、該先行管部91の管軸に沿って漸次延伸される。先行管部91の管軸に沿う延伸方向EDの前端(図4において左端)の約一周部分を「延伸端部91e」と称す。
【0019】
図3及び図4に示すように、後続帯部92は、地上の巻回ドラム5から人孔4を経て、先行管部91の内部を通され、延伸端部91eと連続している。
図5(c)に示すように、該連続する直近の後続帯部92及び先行管部91における帯状部材90の幅方向は、延伸方向EDにほぼ沿わされ、かつ第1嵌合部93が延伸前方(同図において左方)へ向けられ、第2嵌合部94が延伸後方(同図において右方)へ向けられている。
【0020】
図3に示すように、先行管部91の延伸端部91e(図4において左端部)上に製管装置3が配置されている。製管装置3は、後続帯部92の縁(第2嵌合部94)と、先行管部91の一周先行する対向縁(第1嵌合部93)とを嵌合させることで、螺旋管9を製管しながら、螺旋状の巻回方向に沿って、図3において時計回りに推進される。前記嵌合は、先行管部91の延伸端部91eの周方向の一部分(嵌合位置9q)においてなされる。
【0021】
図4に示すように、製管装置3の推進前後方向LDは、前記巻回方向に沿っている。製管装置3の幅方向WDは、前記巻回方向と直交され、螺旋管9の管軸にほぼ沿っている。図1に示すように、製管装置3の高さ方向HDは、幅方向WD及び推進前後方向LDと直交し、螺旋管9の管内外方向(径方向)へ向けられている。
製管装置3は、非内周規制構造になっている。つまり、製管装置3は、先行管部91の延伸端部91eの断面(形状、周長、直径)を内周側から規制する内周規制体を有しておらず、延伸端部91eが内周側へ解放された状態で、製管が行われる。
【0022】
詳しくは、図1図3に示すように、製管装置3は、駆動ユニット10(駆動部)と、管端ガイドユニット20を含む。
駆動ユニット10は、製管装置3の推進前方側(図1において左)かつ高さ方向HDの頂部側(図1において上)に配置されている。駆動ユニット10は、駆動部フレーム15と、二対の駆動ローラ11,12を含む。駆動部フレーム15に駆動ローラ11,12が保持されている。前段駆動ローラ11,11と後段駆動ローラ12,12とが、推進前後方向LD及び装置高さ方向HDにずれて配置されている。各駆動ローラ11,12の軸線は、装置幅方向WD(図1の紙面直交方向)へ向けられている。各駆動ローラ11,12には、駆動モータ(図示省略)がトルク伝達可能に接続されている。
なお、駆動ローラは、2対に限られず、少なくとも一対あればよく、3対以上でもよい。
【0023】
対をなす前段駆動ローラ11,11間及び後段駆動ローラ12,12間に後続帯部92が通されている。駆動ローラ11,12の回転駆動によって、後続帯部92に対して斜め後方(推進後方かつ装置高さ方向HDの基部側)への押し出し力が付与される。
【0024】
図1に示すように、駆動ユニット10に管端ガイドユニット20が接続されている。管端ガイドユニット20は、ガイドフレーム25と、管端ガイド21,22,23を含む。図において簡略化して示すガイドフレーム25が、駆動部フレーム15から装置高さ方向HDの基部側及び推進後方へ延びている。
ガイドフレーム25に管端ガイド21,22,23が保持されている。管端ガイド21,22,23が、先行管部91の延伸端部91eに係止されている。
ガイドフレーム25と駆動部フレーム15とによって、装置フレーム3fが構成されている。管端ガイド21,22,23は、装置フレーム3fにおける駆動部10よりも装置高さ方向HDの基部側(図1において下側)に配置されている。
【0025】
図1図3に示すように、管端ガイド21は、ガイドフレーム25の前側部に配置され、かつ駆動部10に対して延伸後方(図2において上)へ1ピッチずれて配置されている。管端ガイド21は、プレート状の管端外周ガイド21aと、押え部材21d(内周ガイド)を含む。管端外周ガイド21aは、先行管部91における延伸端部91eに外周側から宛がわれ、かつ先行管部91の周方向にスライド(移動)可能に係止されている。図6に示すように、管端外周ガイド21aには、係止部21fが設けられている。係止部21fが、帯状部材90の溝95bにスライド可能に係止されている。
【0026】
図1に示すように、管端外周ガイド21aの前後両側部には、転動体21cが設けられている。転動体21cは、円筒形のコロによって構成されている。転動体21cの直径は、製管の拡縮径制御の観点からは、なるべく小径であることが好ましい。
転動体21cは、管端外周ガイド21aより基部側(図1において下側)へ突出されている。転動体21cが既設管1の内周に接して転動される。
【0027】
押え部材21dは、延伸端部91eを挟んで管端外周ガイド21aと対向するように配置されている。押え部材21dと管端外周ガイド21aとの間に延伸端部91eが挟み付けられている。言い換えると、押え部材21dが、延伸端部91eを内周側から押え付けている。製管装置3の推進に伴って、管端ガイド21と先行管部91との間に摩擦抵抗が発生する。
【0028】
更に、図1に示すように、管端ガイド21には、1又は複数の案内部材31が設けられている。案内部材31は、比較的薄肉のプレート状であってもよく、厚肉のブロック状であってもよい。複数の案内部材31は、管端ガイド21の幅方向WDに離れて配置されている。
案内部材31は、管端外周ガイド21aから推進前方(図1において左方)へ突出されている。
案内部材31の突出端面は、案内面31eとなっている。案内面31eは、転動体21cの中心より基部側(図1において下側)から推進前方へ向かって突出されている。かつ、案内面31eは、推進前方へ向かうにしたがって頂部側(図1において上側)へ傾けられている。
図6に示すように、案内部材31の頂部側(図1において上側)の部分は、延伸端部91eの溝95bにスライド可能に嵌め入れられている。
【0029】
管端ガイド21の推進後方に離れて、管端外周ガイド23が配置されている。管端外周ガイド23は、装置幅方向WDにおける駆動ローラ11と同じ位置に配置されている。図6に示すように、プレート状の管端外周ガイド23が、先行管部91における延伸端部91eからその一周先行部分91bに跨るとともに、先行管部91の外周面に宛がわれている。
【0030】
図6に示すように、管端外周ガイド23には、係止部23fが設けられている。係止部23fが、先行管部91の溝95bに外周側から係止されている。かつ、係止部23fは、溝95bの長手方向(図6の紙面直交方向)へスライド可能になっている。ひいては、管端外周ガイド23が、延伸端部91eの周方向にスライド可能になっている。
図1に示すように、管端外周ガイド23の前後両側部には、転動体23c(転動体)が設けられている。転動体23cが既設管1の内周に接して転動される。
管端外周ガイド23上、又は管端外周ガイド23の推進前方もしくは推進後方に嵌合位置9qが配置されている。
【0031】
図1に示すように、管端外周ガイド23には、1又は複数の案内部材33が設けられている。案内部材33は、比較的薄肉のプレート状であってもよく、厚肉のブロック状であってもよい。複数の案内部材33は、管端外周ガイド23の幅方向WDに離れて配置されている。
案内部材33は、管端外周ガイド23から推進前方(図1において左方)へ突出されている。
【0032】
案内部材33の突出端面は、案内面33eとなっている。案内面33eは、転動体23cの中心より基部側(図1において下側)から推進前方へ向かって突出されている。かつ、案内面33eは、推進前方へ向かうにしたがって頂部側(図1において上側)へ傾けられている。
案内部材33の頂部側(図1において上側)の部分は、後続帯部92又は延伸端部91eの溝95bにスライド可能に嵌め入れられている。
【0033】
図1に示すように、外周側の管端ガイド23の推進後方(図1において右)には、内周側の管端ガイドとして、内周ガイドローラ22が配置されている。図6に示すように、内周ガイドローラ22の軸線は、装置幅方向WDへ向けられている。内周ガイドローラ22は、先行管部91における延伸端部91eからその一周先行部分91bへ少し跨るとともに、先行管部91の内周面に押し当てられている。
【0034】
製管装置3によって、次のようにして更生管9(螺旋管)が製管され、既設管1が更生される。
図4に示すように、既設管1内に先行管部91がある程度形成されているものとする。
帯状部材90の後続帯部92は、人孔4から先行管部91の内部を経て、製管装置3の駆動ユニット10へ導入されている。
図1に示すように、駆動ローラ11,12の駆動によって、後続帯部92を、駆動ユニット10から嵌合位置9qへ向けて斜めに押し出す。これによって、図5(c)に示すように、嵌合位置9qにおいて、後続帯部92の第2嵌合部94(縁)と、先行管部91の一周先行する部分の第1嵌合部93(対応縁)とが嵌合される(嵌合工程)。このとき、前側管端ガイド21の管端外周ガイド21aと後側管端外周ガイド23とが、先行管部91を外周側から保持することで、前記嵌合力を受ける。
更に、嵌合によって、推進反力が生じ、製管装置3が螺旋状の巻回方向に沿って図3において時計回りに推進される(推進工程)。これによって、製管装置3を自走させながら、既設管1の内面に沿って更生管9を製管できる。
管端ガイド21,22,23が先行管部91の延伸端部19eの巻回方向に沿って移動可能に係合されることによって、製管装置3を前記巻回方向に案内できる。
さらに、内周ガイドローラ22が、嵌合位置9qを通過後の先行管部91を内周側から押さえることで、前記嵌合部93,94どうしを一層確実に嵌合でき、嵌合が不十分になるのを防止できる。
【0035】
製管装置3によれば、転動体21c,23cが、管端外周ガイド21a,23よりも管外側へ突出して、既設管1の内周面に転動可能に接している。したがって、管端外周ガイド21a,23が直接、既設管1に当たるのを避けることができる。この結果、管端外周ガイド21a,23が変形や破損、その他の損傷を受けるのを防止できる。
転動体21c,23cを小径化することで、製管装置3が縮径側に傾くのを防止できる。つまり、装置幅方向WDが、延伸前方(図5(b)及び図6において左)へ向かって管内側(図5(b)及び図6において上)へ傾くのを防止できる。これによって、製管の拡縮制御を容易化できる。
【0036】
案内部材31,33は、先行管部91の溝95bに嵌め入れられ、製管装置3の推進に伴って、溝95bに沿ってスライドされる。したがって、管端外周ガイド21a,23によってだけでなく、案内部材31,32によっても、製管装置3を先行管部91の螺旋状の巻回方向に沿って案内することができる。
また、溝95bにゴミや小砂利等の異物が入っていたときは、案内部材31,33によって異物を除去することができる。
【0037】
さらに既設管1の内周面に段差1dがあったときは、案内部材31,33の案内面31e,33eの案内作用によって、転動体21c,23cが段差1dを確実に乗り越えることができる。
例えば、図7(a)に示すように、管端外周ガイド23の推進前方に段差1dがあったものとする。転動体23cが小径であるために、段差1dの高さH1dのほうが、転動体23cの半径R23cより大きくなりがちである(H1d>R23c)。(このような寸法関係(H1d>R23c)の場合、案内部材33が無いと仮定すると、転動体23cが段差1dに引っ掛かって動けなくなる。)
【0038】
一方、図7(b)に示すように、製管装置3においては、推進前方へ移動していくと、案内部材33のほうが転動体23cよりも先に段差1dに当たる。特に、案内部材33の斜めをなす案内面33eが、段差1dの上面1aと端面1eとの角部1cに当たる。
そして、図7(c)に示すように、製管装置3の推進に伴って、案内面33eが角部1cに沿って摺動されることで、案内部材33が既設管1の管内側(同図において上)へ変位される。これに伴って、転動体23cが管内側へ変位される。
【0039】
図8(a)に示すように、転動体23cの中心が段差1dの上面1aよりも管内側(同図において上側)に位置するようになったとき、転動体23cが、段差1dに当たる。詳しくは、転動体23cにおける中心よりも基部側(同図において下側)の部分が、段差1dの角部1c又は端面1eに当たる。これによって、転動体23cに転動モーメントが働くようにできる。
図8(b)〜同図(c)に示すように、該転動モーメントによって、転動体23cが回転して、段差1dの上面1a上に乗り上げる。このようにして、転動体23cが段差1dを乗り越えることができる。この結果、段差1dがあっても推進が止まることなく、円滑に製管を行なうことができる。
【0040】
図示は省略するが、同様に、管端外周ガイド21aの転動体21cについても、案内部材31の案内作用によって段差1dを乗り越えることができる。
【0041】
案内部材31,33による段差乗り越え能力は、段差1dの高さH1dに依らない。
図7図8は、段差1dの高さH1dが、転動体23cの直径D23c程度ないしは直径D23c以下の場合(H1d≦D23c)を例示したものであるが、図9に示すように、段差1dの高さH1dが転動体23cの直径D23cよりも大きくても(H1d>D23c)、乗り越え可能である。
【0042】
すなわち、段差1dの高低に拘わらず、段差1d上の先行管部91は、常に、段差1dの上面に沿って架け渡される。かつ、先行管部91に管端ガイドユニット20が係合されている(図1図3参照)。このため、図9(a)に示すように、H1d>D23cのときは、転動体23cが既設管1の内周面から浮き上がった状態になる。要するに、段差1dが大きくても、転動体23cが段差1dの底部に落ち込むことはない。更には、案内部材33の上端部が、段差1dの上面1aよりも底部側(図9(a)において下側)に位置されることはない。
したがって、図9(b)に示すように、H1d>D23cであっても、案内面33eが段差1dの角部1cに確実に当たって摺動でき、段差1dを乗り越えることができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、転動体21c,23cが、円筒状のコロに代えて、タイヤで構成されていてもよく、ギア状体で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば下水道管、上水道管、農業用水管等の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
LD 推進前後方向
HD 装置高さ方向
WD 装置幅方向
1 既設管(外周規制体)
1d 段差
3 製管装置
3f 装置フレーム
9 更生管(螺旋管)
90 帯状部材
91 先行管部
91e 延伸端部
92 後続帯部
93 第1嵌合部(対応縁)
94 第2嵌合部(縁)
95b 溝
10 駆動ユニット(駆動部)
11,12 駆動ローラ
21a 管端外周ガイド
21c 転動体
23 管端外周ガイド
23c 転動体
31 案内部材
31e 案内面
33 案内部材
33e 案内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9