特許第6927807号(P6927807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927807
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20210823BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   B60C11/01 A
   B60C11/03 100B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-167117(P2017-167117)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-43311(P2019-43311A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−291937(JP,A)
【文献】 特開2007−203970(JP,A)
【文献】 特開平11−291718(JP,A)
【文献】 特開2015−168301(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0271826(US,A1)
【文献】 特開2010−179819(JP,A)
【文献】 特開2017−109543(JP,A)
【文献】 特開2010−264962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイド部に設けられ、タイヤ周方向に延びるショルダー主溝、及び、タイヤ幅方向に延びるショルダー横溝によって区画され、タイヤ周方向に並設される複数のショルダーブロックと、
前記サイド部に設けられ、前記ショルダーブロックに沿ってタイヤ周方向に延びる補助リブと、
前記サイド部に設けられ、前記補助リブから前記ショルダーブロックに向かって尖った先端部を有する突起と、
を備え
前記突起は、前記ショルダーブロックに向かって斜めに延び、
前記ショルダーブロックの中心線は、タイヤ幅方向に延びる直線に対して傾斜し、
前記突起の中心線は、タイヤ幅方向に延びる直線に対して傾斜し、
前記ショルダーブロックと前記突起の中心線は、タイヤ幅方向に対する傾斜方向が逆向きである、空気入りタイヤ。
【請求項2】
サイド部に設けられ、タイヤ周方向に延びるショルダー主溝、及び、タイヤ幅方向に延びるショルダー横溝によって区画され、タイヤ周方向に並設される複数のショルダーブロックと、
前記サイド部に設けられ、前記ショルダーブロックに沿ってタイヤ周方向に延びる補助リブと、
前記サイド部に設けられ、前記補助リブから前記ショルダーブロックに向かって尖った先端部を有する突起と、
を備え、
前記突起は、前記ショルダーブロックに向かって斜めに延び、
前記ショルダーブロックは、前記突起の各突条部の先端部が位置する鋸歯状の切欠きを形成されている、空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記突起は、同一方向に延びる2つの突条部で構成されている、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ表面に、内周側から外周側に向かって延在される乱流発生用突起をタイヤ周方向に間隔を置いて設けた空気入りタイヤが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、サイド部に乱流発生用突起を設けただけであり、冷却性能は得られるものの、縦方向の撓みを抑える点についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5374362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐外傷性能、冷却性能及びトラクション性能を発揮しつつ、ショルダーブロック及び補助リブの剛性を向上させてサイド部の縦方向の撓みを抑えることのできる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の空気入りタイヤは、
サイド部に設けられ、タイヤ周方向に延びるショルダー主溝、及び、タイヤ幅方向に延びるショルダー横溝によって区画され、タイヤ周方向に並設される複数のショルダーブロックと、
前記サイド部に設けられ、前記ショルダーブロックに沿ってタイヤ周方向に延びる補助リブと、
前記サイド部に設けられ、前記補助リブから前記ショルダーブロックに向かって尖った先端部を有する突起と、
を備え
前記突起は、前記ショルダーブロックに向かって斜めに延び、
前記ショルダーブロックの中心線は、タイヤ幅方向に延びる直線に対して傾斜し、
前記突起の中心線は、タイヤ幅方向に延びる直線に対して傾斜し、
前記ショルダーブロックと前記突起の中心線は、タイヤ幅方向に対する傾斜方向が逆向きである
【0007】
この構成により、突起が耐外傷性能、冷却性能及びトラクション性能を高めることができるだけでなく、ショルダーブロック及び補助リブを補強して剛性を高めることが可能となる。これにより、サイド部の縦方向の撓み量を抑制して良好な乗り心地を得ることができる。また、タイヤ周方向への突起の長さを確保することにより、より一層、耐外傷性能を高めることができる。また、ショルダーブロックの補強方向をより適切なものとすることができる。
【0008】
本発明の一態様の空気入りタイヤは、
サイド部に設けられ、タイヤ周方向に延びるショルダー主溝、及び、タイヤ幅方向に延びるショルダー横溝によって区画され、タイヤ周方向に並設される複数のショルダーブロックと、
前記サイド部に設けられ、前記ショルダーブロックに沿ってタイヤ周方向に延びる補助リブと、
前記サイド部に設けられ、前記補助リブから前記ショルダーブロックに向かって尖った先端部を有する突起と、
を備え、
前記突起は、前記ショルダーブロックに向かって斜めに延び、
前記ショルダーブロックは、前記突起の各突条部の先端部が位置する鋸歯状の切欠きを形成されている。
【0009】
この構成により、突起が耐外傷性能、冷却性能及びトラクション性能を高めることができるだけでなく、ショルダーブロック及び補助リブを補強して剛性を高めることが可能となる。これにより、サイド部の縦方向の撓み量を抑制して良好な乗り心地を得ることができる。また、タイヤ周方向への突起の長さを確保することにより、より一層、耐外傷性能を高めることができる。また、ショルダーブロックに対する突起の影響力を向上させて、より一層、剛性を高めることが可能となる。
【0010】
前記突起は、同一方向に延びる2つの突条部で構成されているのが好ましい。
【0011】
この構成により、より一層、ショルダーブロックの剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、補助リブからショルダーブロックに向かって突起を形成するようにしたので、耐外傷性能、冷却性能及びトラクション性能を発揮しつつ、ショルダーブロック及び補助リブの剛性を高めて、サイド部での縦方向の撓みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す部分斜視図
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分展開図
図3図2のショルダー領域の部分拡大図
図4】第2実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分展開図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る空気入りタイヤの斜視図である。この空気入りタイヤは、図示しないが、一対のビードコア間にカーカスを掛け渡し、カーカスの中間部の外周側にベルトを巻き付けて補強し、さらにタイヤ外径側にトレッド部6を配置した構成である。
【0020】
図2は、図1に示す空気入りタイヤのトレッドパターンを示す部分展開図である。このトレッドパターンでは、タイヤ幅方向(図2中、矢印W方向で示す。)のほぼ中心をタイヤ周方向(図2中、矢印R方向で示す。)に延びるセンター主溝1が形成されている。センター主溝1は、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる、例えば10.2mm程度の深さの溝である。センター主溝1の両側にはショルダー主溝2がそれぞれ形成されている。ショルダー主溝2も、センター主溝1と同様に、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる、例えば10.2mm程度の深さの溝である。そして、センター主溝1とショルダー主溝2とによってタイヤ周方向に延びる2本のセンターリブ3が形成されている。
【0021】
ショルダー主溝2には、概ねタイヤ幅方向に延びるショルダー横溝4が連通している。ショルダー横溝4は、ショルダー主溝2からタイヤ周縁部まで延びる、例えば9.6mm程度の深さの溝である。ショルダー主溝2とショルダー横溝4とによってタイヤ周方向に複数のショルダーブロック5が形成されている。そして、センターリブ3とショルダーブロック5の一部とで、走行時に路面に接触するトレッド部6を構成している。本実施形態では、トレッド部6の両側の領域をサイド部7と定義する。
【0022】
図3に示すように、ショルダー横溝4は、ショルダーブロック5の側面で構成される、ショルダー主溝2との連通部分から徐々に幅寸法が大きくなる拡張部4aと、タイヤ幅方向に対して斜めに延びる同一幅の傾斜部4bと、タイヤ幅方向外側に向かって真っ直ぐに延びる直線部4cとからなる。拡張部4a、傾斜部4b及び直線部4cの一部では、ショルダーブロック5の側面はタイヤ表面に向かうに従って徐々に広がる傾斜面で構成されている。ショルダー横溝4の傾斜部4bの中心線(図3中、一点鎖線aで示す。)は、タイヤ幅方向に対する傾斜方向が、タイヤ幅方向の両側で逆向きとなっている。
【0023】
各ショルダーブロック5には、タイヤ周方向のほぼ中心をショルダー主溝2からタイヤ幅方向に向かって延びる断続サイプ8が形成されている。断続サイプ8は、タイヤ周方向に位置をずらせてタイヤ幅方向に真っ直ぐに延びる3箇所の直線部8aを、これら直線部8aよりも浅い2箇所の橋渡部8bで接続したものである。直線部8aは例えば深さ8.5mm程度の溝であり、橋渡部8bは例えば深さ1mm程度の溝である。なお、直線部8aは、タイヤ幅方向外側に位置するものの方が順次長くなっている。
【0024】
また、各ショルダーブロック5には、断続サイプ8の両側にショルダー主溝2からタイヤ幅方向に向かって延びる2本の混合サイプ9が形成されている。混合サイプ9は、ショルダー主溝2から概ねタイヤ幅方向に直線状に延びる直線部9aと、直線部9aから概ねタイヤ幅方向に波形状に延びる波形部9bとを有している。タイヤ幅方向において波形部9bの先には、無地領域10が形成されている。タイヤ幅方向において無地領域10のさらに先には、タイヤ幅方向に直線状に延びる2本の2Dサイプ11が形成されている。
【0025】
ショルダーブロック5は、タイヤ幅方向外側の縁部がタイヤ周方向に延びる円弧部12で構成される第1ショルダーブロック5Aと、後述する突起15を配置できるスペースを提供する異形部13で構成される第2ショルダーブロック5Bとからなる。第1ショルダーブロック5Aと第2ショルダーブロック5Bとは、タイヤ周方向に交互に配置されている。異形部13は、第1傾斜部13a、第2傾斜部13b及び第3傾斜部13cで構成されている。第1傾斜部13aは、ショルダーブロック5の片側のショルダー横溝4によって形成される側面のタイヤ幅方向外側端からタイヤ幅方向内側に向かってタイヤ周方向に延びている。第2傾斜部13bは、第1傾斜部13aに連続してほぼタイヤ幅方向外側へと延びている。第3傾斜部13cは、第2傾斜部13bに連続して第1傾斜部13aと同じ角度で延び、ショルダー横溝4に至っている。
【0026】
タイヤ周縁部には、タイヤ周方向に環状につながった補助リブ14が形成されている。補助リブ14からは各第2ショルダーブロック5Bに向かって延びる突起15がそれぞれ形成されている。タイヤ幅方向に対する突起15の中心線(図3中、一点鎖線bで示す。)の傾斜方向と、タイヤ幅方向に対するショルダー横溝4の傾斜部4bの中心線(図3中、一点鎖線aで示す。)の傾斜方向とは、逆向きとなっている。各突起15は、先端位置をずらせて並設させた第1突条部16と第2突条部17を備える。
【0027】
第1突条部16は、補助リブ14とサイド部7の表面からの突出高さが同一であり、第1傾斜面16aと第2傾斜面16bとを備える。第1傾斜面16aと第2傾斜面16bは合流して、三角形状(鋸歯状)に尖った先端部を構成している。第2突条部17も補助リブ14と同一突出高さで延び、第1突条部16と同様な先端部を構成する第1傾斜面17aと第2傾斜面17bを備えるほか、第1傾斜面17aの反対側に第3傾斜面17cを備える。第1突条部16と第2突条部17の境界部分にはスリット18が形成され、第1突条部16と第2突条部17はそれぞれ独立して弾性変形可能となっている。第1突条部16は、ショルダーブロック5の第1傾斜部13aに対して第1傾斜面16aを所定間隔で位置させている。また、第1突条部16は、ショルダーブロック5の第2傾斜部13bに対して第2傾斜面16bを所定間隔で位置させている。一方、第2突条部17は、ショルダーブロック5の第3傾斜部13cに対して第1傾斜面17aを所定間隔で位置させている。
【0028】
前記構成の空気入りタイヤによれば、補助リブ14からショルダーブロック5に向かって延びる突起15を形成するようにしたので、次のような利点が得られる。
(1)突起15がショルダーブロック5と補助リブ14を補強して剛性を高め、サイド部7の縦方向の撓み量を抑制できる。
(2)特に、突起15を2つの突条部16,17で形成し、ショルダーブロック5に食い込ませるように構成しているので、サイド部7の縦方向の撓み量をより一層抑制できる。
(3)突起15が斜めに形成することにより、タイヤ周方向での突起15の占有スペースを大きくして耐外傷性能を高めることができる。
(4)突起15はショルダー横溝4内には大きく突出しないので、ショルダー横溝4を利用した排水性を悪化させることがない。
【0029】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部6の展開図である。センターリブ3の構成は前記第1実施形態とほぼ同じである。ショルダーブロック5は、タイヤ周方向には完全には区画されておらず、部分的につながった構成となっている。ショルダーブロック5には、ショルダー主溝2からタイヤ幅方向外側に延び、途中でほぼ直角に折れ曲がったノッチ19が形成されている。また、ショルダー主溝2とは反対側の端部には、タイヤ周方向に所定間隔で切欠き20が形成されている。切欠き20は、第1傾斜部20aと第2傾斜部20bとで構成される三角形状(鋸歯状)である。
【0030】
また、ショルダーブロック5には、ノッチ19の近傍からタイヤ幅方向外側に延びる複数のショルダー横溝4が形成されている。ショルダー横溝4は、ショルダー端まで到達する第1ショルダー横溝4と、その手前で終端する第2ショルダー横溝4と、切欠き20に連通する第3ショルダー横溝4とで構成されている。
【0031】
補助リブ14から延びる突起15は、前記第2突条部17と同様な構成の単一の突条部で構成されている。突起15の先端は、ショルダーブロック5の切欠き20に位置し、第1傾斜部20a及び第2傾斜部20bとの間に細溝を形成する。
【0032】
前記構成の突起15によっても、前記第1実施形態と同様に、ショルダーブロック5と補助リブ14の剛性を高めて、タイヤの縦方向の撓み量を抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…センター主溝
2…ショルダー主溝
3…センターリブ
4…ショルダー横溝
5…ショルダーブロック
6…トレッド部
7…サイド部
8…断続サイプ
9…混合サイプ
10…無地領域
11…2Dサイプ
12…円弧部
13…異形部
14…補助リブ
15…突起
16…第1突条部
17…第2突条部
18…スリット
19…ノッチ
20…切欠き
図1
図2
図3
図4