特許第6927850号(P6927850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927850
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】接合構造および半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20210823BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   H01L23/04 E
   H01L23/12 K
   H01L23/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-208061(P2017-208061)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-80018(P2019-80018A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 隆二
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅彦
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−053853(JP,A)
【文献】 特開2012−216612(JP,A)
【文献】 特開2010−131669(JP,A)
【文献】 特開2009−170865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/04
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を有する金属端子と、
該金属端子の前記端部が位置している線路導体と、
銀を含有する金属粒子を含んでいるとともに、前記金属端子の前記端部と前記線路導体との間に介在している接合材とを備え
前記金属端子の前記端部と前記線路導体との接合界面に沿って空隙が位置している接合構造。
【請求項2】
前記接合材が、互いに接合した銀粒子を含んでいる請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
前記金属端子が、前記線路導体から離れた先端を有しており、
前記接合材が前記金属端子の前記先端において外側に凸状である請求項1または請求項2記載の接合構造。
【請求項4】
前記接合材の体積抵抗率が、5〜10μΩ・cmである請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の接合構造。
【請求項5】
第1面および該第1面と反対側の第2面を有する基板と、
前記基板の前記第1面側に位置する線路導体と、
前記基板の前記第2面から前記第1面にかけて貫通しており、前記第1面側に端部を有する金属端子と、
金属粒子を含んでおり、前記金属端子の前記端部と前記線路導体との間に介在している接合材とを備えており、
前記金属端子の前記端部と前記線路導体との間に、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の接合構造を有している半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード端子と線路導体との間に介在する接合材を含む接合構造および半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子等の半導体素子が実装される半導体パッケージとして、半導体素子が実装される基板と、基板に固定されたリード端子とを備えるものが知られている。基板に対する半導体素子の実装およびリード端子の固定は、例えば、誘電体基板等の絶縁性部材を介して行なわれる。
【0003】
この場合、半導体パッケージにおいて、誘電体基板に、金−スズまたはスズ−銀等のろう材を介して信号端子が接合されて、固定されている。信号端子は金属製のリードピン端子等である。誘電体基板の表面のうちろう材が接合される部分には金属層があらかじめ設けられる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/033860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体パッケージにおいて、信号端子と基板との機械的な接続の信頼性の向上、電気的な接続における直流抵抗の低減およびインピーダンス整合の容易さの向上が求められている。また、そのような半導体パッケージの構成が容易な接合構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様の接合構造は、端部を有する金属端子と、該金属端子の前記端部が位置している線路導体と、銀を含んでいるとともに、前記金属端子の前記端部と前記線路導
体との間に介在している接合材とを備え、前記金属端子の前記端部と前記線路導体との接合界面に沿って空隙が位置している。
【0007】
本発明の一つの態様の半導体パッケージは、第1面および該第1面と反対側の第2面を有する基板と、前記基板の前記第1面側に位置する線路導体と、前記基板の前記第2面から前記第1面にかけて貫通しており、前記第1面側に端部を有する金属端子と、金属粒子を含んでおり、前記金属端子の前記端部と前記線路導体との間に介在している接合材とを備えており、前記金属端子の前記端部と前記線路導体との間に、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の接合構造を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様の接合構造によれば、金属端子と線路導体との機械的な接続強度の向上、電気的な接続における直流抵抗の低減およびインピーダンス整合の容易さの向上に有効な接合構造を提供することができる。
【0009】
本発明の一つの態様の半導体パッケージによれば、上記構成の接合構造を含むことから、信号端子と基板との電気的な接続における直流抵抗が低減されているとともにインピーダンス整合も容易な半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の接合構造を示す断面図である。
図2図1のA部分を拡大して示す断面図である。
図3図1のB部分を拡大して示す断面図である。
図4】(a)は本発明の実施形態の半導体パッケージの斜視図であり、(b)は(a)の反対側から見た斜視図である。
図5】(a)は本発明の実施形態の半導体パッケージの平面図であり、(b)は(a)のX−X線における断面図である。
図6】本発明の他の実施形態の接合構造における要部を拡大して示す断面図である。
図7】本発明の他の実施形態の接合構造を示す断面図である。
図8】本発明の他の実施形態の接合構造の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の接合構造および半導体パッケージについて、添付の図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態の接合構造を示す断面図であり、図2は、図1のA部分を拡大して示す断面図であり、図3は、図1のB部分を拡大して示す断面図である。また、図4(a)は本発明の実施形態の半導体パッケージの斜視図であり、図4(b)は図4(a)の反対側から見た斜視図である。また、図5(a)は本発明の実施形態の半導体パッケージの平面図であり、図5(b)は図5(a)のX−X線における断面図である。
【0012】
本発明の実施形態の接合構造Cは、端部1aを有する金属端子1と、線路導体2と、金属端子1の端部1aと線路導体2との間に介在している接合材3とを有している。接合材3によって金属端子1の端部1aと線路導体2とが互いに接合されている。接合材3は導電性を有するものであるときに、接合材3を介して金属端子1と線路導体2とが互いに機械的および電気的に接続されている。接合材3は、その体積抵抗率が5〜10μΩ・cmである。また、この実施形態においては、金属端子1の端部1aと接合材3との接合界面に沿って空隙4が位置している。
【0013】
この接合構造Cは、例えば外部接続用の金属端子1と、半導体素子と電気的に接続される線路導体2と、金属端子1および線路導体2が所定の位置関係で配置される基板5を含む半導体パッケージにおける、金属端子1と線路導体2との接合材3を介した接合に用いられる。本発明の実施形態の半導体パッケージ10は、金属端子1と、線路導体2と、金属端子1と線路導体2との間に介在している接合材3と、金属端子1および線路導体2が配置されている基板5とを有し、さらに、金属端子1と線路導体2との間に上記実施形態の接合構造Cを有している。
【0014】
また、図4および図5に示す例において、半導体パッケージ10は、さらに、線路導体2が実際に配置されて基板5に固定されている絶縁板6と、絶縁板6に接合されているサブマウント7とを有している。基板5は、第1面5aおよび第1面と反対側の第2面5bを有し第1面5aと第2面5bとの間で基板5を厚み方向に貫通している貫通孔5cとを有している。リード端子1は、第2面5bから第1面5aにかけて、貫通孔5c内を通って基板5を貫通している。リード端子1の端部1aは第1面5a側に位置している。基板5の第1面5a側に絶縁板6が位置し、これにより基板5の第1面5a側に線路導体2が配
置されている。この、基板5の第1面5a側で、上記構成の接合構造Cを介して金属端子1の端部1aと線路導体2とが互いに接合されている。
【0015】
この半導体パッケージ10は、例えば、光半導体素子等の半導体素子(図示せず)を気密封止するものである。半導体素子は、絶縁板6に搭載されるとともに線路導体2と電気的に接続される。基板5の、半導体素子が搭載された第1面5a側が金属製ケース(CAN
)(図示せず)で封止されれば、いわゆるTO(Transistor Outline)−CAN型の半導体パッケージ10が形成される。半導体素子が光半導体素子であるときには、光信号の入出力用の開口を有する金属ケースが用いられる。
【0016】
実施形態の接合構造Cにおいて、金属端子1は、例えば上記のような半導体パッケージ10における外部接続用の導電路としての機能を有する。この場合、金属端子1は、細長い帯状または棒状等のリード(ピン)端子である。金属端子1は、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金または銅を含む合金材料等の金属材料からなる。金属端子1は、例えば鉄−ニッケル−コバルト合金からなる場合は、鉄−ニッケル−コバルト合金このインゴット(塊)に圧延加工、打ち抜き加工、切削加工およびエッチング加工等から適宜選択した金属加工を施すことによって製作することができる。
【0017】
金属端子1は、例えば図4および図5に示す例のように、複数の金属端子1が並んで基板5に固定されるものでもよい。図4および図5に示す例では、信号伝送用の一対の金属端子1が基板5を貫通して配置されている。それぞれの金属端子1は、基板5の第1面5a側に位置する端部1aを有している。
【0018】
なお、図4および図5に示す例では、一対の金属端子1と並んで、接地端子8が配置されている。接地端子8は、金属端子1と同様の金属材料を用い、同様の方法で製作することができる。半導体パッケージ10における金属端子1および接地端子8の構成および機能の詳細については後述する。
【0019】
金属端子1は、例えば、長さが1.5〜22mmで直径が0.1〜1mmの線状である。信号伝送用の場合、一対の金属端子1の機械的強度、特性インピーダンス(以下、単にインピーダンスという)のマッチングおよび半導体パッケージ10としての小型化等を考慮すれば、それぞれの金属端子1の直径は0.15〜0.25mmとする。金属端子1の直径が0.15mm以上であれば、例えば半導体パッケージ10の取り扱い時における金属端子1の曲がり等を抑制することが容易であり、作業性の向上等において有利である。また、金属端子1の直径が0.25mm以下であれば、金属端子1が貫通する貫通孔5cの径を小さく抑えることができるため、基板5の小型化、つまりは半導体パッケージ10の小型化に対して有効である。
【0020】
線路導体2は、例えば、半導体パッケージ10における半導体素子接続用の導体として機能を有している。半導体素子と線路導体2との電気的な接続は、ボンディングワイヤまたははんだ等の低融点ろう材を介して行なわれる。ボンディングワイヤの場合であれば、ボールボンド法等のボンディング法によって半導体素子(電極)と線路導体2とに順次、金ワイヤまたはアルミニウムワイヤ等のボンディングワイヤを接合することにより、半導体素子を線路導体2に電気的に接続させることができる。この線路導体2と金属端子1とが接合材3を介して互いに接合されて、半導体素子と外部電気回路とを電気的に接続する導電路が構成される。
【0021】
前述したように、線路導体2は、例えば絶縁板6の表面に形成されている。この絶縁板6が基板5の第1面5a側に固定されて、線路導体2が基板5の第1面5a側に位置している。この第1面5a側において、線路導体2に金属端子1の端部1aが位置し、後述する接合材3を介して両者が互いに接合されている。
【0022】
線路導体2は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀、金、パラジウム、白金、ロジウム、ニッケルおよびコバルト等の金属材料から適宜選択された金属材料またはこれらの金属材料を含む合金の金属材料により形成されている。線路導体2は、メタライズ層、めっき層および薄膜層等の形態で形成することができる。線路導体2は、前述したように絶縁板6に形成されたものであり、金、銅、ニッケル、銀等の薄膜層を含む
ものであるときには、チタン、クロム、タンタル、ニオブ、ニッケル−クロム合金、窒化タンタル等の密着金属層をさらに含むものでもよい。密着金属層は、絶縁板6と薄膜層との間に位置し、線路導体2の絶縁板6に対する密着性を向上させる機能を有する。
【0023】
線路導体2の厚みは、例えば電気抵抗の低減および内部応力の抑制等を考慮して、0.1
〜5μm程度に設定される。また、密着金属層の厚みは、絶縁板6に対する密着性の向上および内部応力の抑制等を考慮して、0.01〜0.2μm程度に設定される。なお、線路導体
2は、密着金属層と薄膜層との間に、両者の相互拡散を抑制する拡散抑制層をさらに含んでいてもよい。拡散抑制層は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、チタン−タングステン合金等の金属材料により形成することができる。拡散抑制層の厚みは、例えば上記の相互拡散の抑制および線路導体2における電気抵抗の抑制等を考慮して、約0.05〜1μmに設定される。
【0024】
また、線路導体2は、メタライズ法によって絶縁板6の表面に配置されたものであるときには、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀、金、白金およびパラジウム等の金属材料から適宜選択された金属材料を含んでいて構わない。この場合には、例えば、タングステンの粉末を有機溶剤およびバインダ等とともに混練して作製した金属ペーストを、絶縁板6と焼成することによって線路導体2を形成することができる。
【0025】
絶縁板6は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化ケイ素質焼結体またはガラスセラミック焼結体等のセラミックス絶縁材料によって形成されている。絶縁板6は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、次のようにして製作することができる。まず、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウム等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合してスラリーを作製する。次に、スラリーをドクターブレード法またはカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を得る。その後、グリーンシートを所定形状に打ち抜き加工するとともに必要に応じて複数枚積層し、これを約1300〜1600℃の所定温度で焼成する。以上の工程によって絶縁板6を製作することができる。
【0026】
線路導体2がタングステン等のメタライズ層からなる場合には、メタライズ層(線路導体2)用の金属ペーストを絶縁板6となるグリーンシートの表面に所定パターンに印刷し、同時焼成する製造方法を用いてもよい。この場合には、絶縁板6と線路導体2とを一体的に製作することができる。そのため、線路導体2と絶縁板6との接合の強度および生産性等の向上に関しては有効である。
【0027】
金属端子1の端部1aと線路導体2との間に介在している接合材3は、銀を含む金属材料からなる金属粒子を含有している。金属粒子における銀以外の金属材料としては、銅、金およびパラジウム等の金属材料またはこれらの金属材料を含む合金の金属材料等を挙げることができる。金属粒子同士が互いに金属結合によって結合し合い、接合材3としてまとまった形状になっている。また、この金属粒子が金属端子1および線路導体2それぞれに含有されている金属成分と結合し合っている。これにより、金属端子1と線路導体2との接合材3を介した接合が行なわれている。
【0028】
接合材3を介した金属端子1と線路導体2との接合は、例えば次のようにして行なわれる。まず、銀等の上記金属材料の粒子(実際には多数の粒子の集合物)を有機溶剤およびバインダとともに混練してペーストを作製する。次に、このペーストを間に挟んで金属端子1の端部1aを線路導体2の所定部位に位置合せし、ジグ等で仮固定する。その後、これらを電気炉等で加熱してペースト中の金属粒子同士を結合させる。このときに、バインダ成分間の重合等が生じるようにしてもよい。すなわち、接合材3は、金属粒子間の金属
結合に加えて、有機成分の重合体による接合の作用を含んでいてもよい。上記バインダ成分を含有するペーストによる接合の温度は、例えば約200〜300℃に設定される。
【0029】
接合材3は、銀を含有する金属粒子を含んでいる。なお、説明で参照する各図において、金属粒子は粒径が小さいため図示を省略している。また、接合材3は、その体積抵抗率が5〜10μΩ・cmである。この接合構造Cによれば、接合材3の体積抵抗率が5〜10μΩ・cm(5〜10×10−8Ω・m)であり、比較的小さいため金属端子1と線路導体2との電気的な接続における直流抵抗(以下、単に抵抗という)の低減に有効である。また、上記の体積抵抗率(以下、単に抵抗率ともいう)が適度に大きいため金属端子1と線路導体2との電気的な接続におけるインピーダンスが小さくなり過ぎる可能性が効果的に低減されている。また、接合材3が銀を含有する金属粒子を含んでいるため、信号端子1および線路導体に対する濡れ性向上が容易であり、接合強度の向上も容易である。したがって、金属端子1と線路導体2との機械的な接続強度の向上、電気的な接続における直流抵抗の低減およびインピーダンス整合の容易さの向上に有効な接合構造Cを提供することができる。
【0030】
言い換えれば、接合材3は、上記のような形態であるため、金属粒子間の焼結を比較的低い温度で進めることができる。そのため、接合材3(上記ペースト)を介した金属端子1と線路導体2との接合を比較的低い温度で行なうことができる。これにより、接合時に生じる熱応力を低減することができる。
【0031】
また、接合材3は、上記のような形態であるため、金属粒子を形成している金属材料としての物性よりも体積抵抗率を大きくする方向に、容易に調整することができる。したがって、接合材3の体積抵抗率が小さくなり過ぎることを抑制しながら、接合材3を介した金属端子1と線路導体2との接合を強固なものとすることができる。一例を挙げれば、金属粒子が銀からなる粒子であるときに、銀の抵抗率は約1.6×10−8Ω・m(1.6×10−2μΩ・cm)であり、これに対して、接合材3の抵抗率は5〜10μΩ・cmに調整されている。接合材3について、単に抵抗を小さくするときには抵抗率が小さいほどよいが、小さすぎると金属端子1および線路導体2と接合材3との間でインピーダンス整合が難しくなる。これに対して、接合材3の抵抗率が5〜10μΩ・cmであるため、上記インピーダンスの整合が容易である。
【0032】
なお、接合材3の抵抗率が6μΩ・cm以上であれば、接合材3と金属端子1および線路導体2とのインピーダンス整合がより容易である。また、接合材3の抵抗率が7μΩ・cm以上であれば、上記インピーダンス整合がより容易であるとともに、金属粒子間の応力緩和のための空隙等(詳細は後述)をより有効に設けることもできるため、接合の信頼性向上についても有効である。また、接合材3の抵抗率が9μΩ・cm以下であれば、接合材3の抵抗低減に対してより有効である。すなわち、接合材3の抵抗率は、接合材3およびそれが用いられる半導体パッケージ10の所望の特性等に応じて、6〜10μΩ・cm、7〜10μΩ・cm、6〜9μΩ・cmおよび7〜9μΩ・cm等の範囲に設定するようにしてもよい。
【0033】
接合材3の抵抗率は、例えば4端子法により測定することができる。例えば、通電された4端子のうち、より内側に配置されて試料(接合材3)に接続された2端子間の電位差を測定することで、この区間の試料の抵抗を測定する。以上の操作により、試料、つまり接合材3の抵抗率を測定することができる。
【0034】
また、接合材3の抵抗率は、金属粒子の組成、粒径および接合材3における充填の密度等を調整することにより、所定の値に調整することができる。上記充填の密度とは、接合材3の一定の体積において金属粒子が占める体積の割合である。接合材3のうち金属粒子
3が存在している部分以外の部分は、例えば空隙であり、金属粒子3の充填の割合が大きいほど空隙の割合が小さい。したがって、接合材3における金属粒子の充填の密度を大きくするほど、接合材3の抵抗率を小さくすることができる。
【0035】
また、接合材3における金属粒子の充填の密度を小さくすることにより、接合材3の抵抗率が小さくなり過ぎることを抑制することができる。接合材3における金属粒子の充填の割合は、上記ペースト作製時の有機溶剤およびバインダの種類および添加量、ならびに金属粒子の粒径等の条件によって調整することができる。
【0036】
上記金属粒子の粒径は、例えば平均粒径および粒度分布である。金属粒子の粒径が小さい方が、接合材3となるペーストにおける金属粒子の充填の割合を大きくすることができる。ただし、粒径が小さいものだけでは、硬化時に凝集の塊が所々に出来、ボイドが発生しやすくなる可能性があるため、適切な粒径にする必要がある。また、金属粒子の粒度分布において、粒径が比較的大きいものと小さいものとが組み合わされたときには、粒径が比較的大きい金属粒子間に粒径が比較的小さい金属粒子が入り込み、金属粒子の充填の密度が大きくなる。
【0037】
また、上記金属粒子の組成は、例えば、金属粒子が銀(物性である抵抗率が最小の金属)からなるものであるときを抵抗の低減に最も有利なものとして、銀以外の金属材料の添加による金属粒子の抵抗率の増加を考慮して調整する。例えば、銀の抵抗率が約1.6×10−8Ω・mであるのに対して、銅の抵抗率が約1.7×10−8Ω・mであり、金の抵抗率が
約2.4×10−8Ω・mである。このような抵抗率の差を利用して、接合材3の抵抗率を調
整することができる。この場合、個々の金属粒子における銀の含有率を調整してもよく、複数の金属粒子における銀粒子の個数の割合を調整してもよい。
【0038】
また、接合材3における金属粒子は、金属粒子間の接合の容易さおよび接合の強度等を考慮したときに、1μm程度またはそれ未満の粒径である微小粒子(いわゆるサブミクロン粒子、サブナノ粒子、ナノ粒子)であってもよいし、微小粒子とミクロン単位の金属粒子との混合物であってもよい。接合材3となるペーストは、このような微小粒子を金属粒子として用いるときに、互いに重合し合う有機樹脂成分を含有していてもよい。このような有機樹脂成分としては、例えば重合性のカルボン酸誘導体等を挙げることができる。
【0039】
上記構成の接合構造Cにおいて、接合材3は、互いに接合した銀粒子を含んでいるものでもよい。互いに接合した銀粒子は、例えば上記のように、接合材3における充填の密度、粒径および組成等が適宜調整されたものである。銀粒子が互いに接合して接合材3の少なくとも一部を形成しているため、接合材3の機械的な強度の向上、および金属端子1、線路導体2に対する接合強度の向上に対して有利である。
【0040】
この場合の銀粒子は、例えば、金属端子1から線路導体2にかけて連続して接合し合い、一続きになったものでもよい。このようなときには、接合材3の機械的な強度および金属端子1と線路導体2との接合強度を効果的に向上させることができる。
【0041】
また、上記の各例において、金属粒子が銀粒子であるときには、次のような点で有利である。すなわち、接合材3における熱伝導性(つまり、接合構造Cおよびこれを含む半導体パッケージ10の放熱性等)、線路導体2および金属端子1を含む信号の伝送路における電気抵抗の低減等に有利である。また、半導体素子の実装または金属ケースの接合等のための熱負荷工程においても再溶融しづらい、アウトガスが少ないという利点が挙げられる。
【0042】
この場合の銀粒子は、銀を99.9質量%以上含有する、いわゆる純銀であってもよく、微
量の銅または金等の他の成分を含有するものでもよい。また、金属粒子の全部が銀粒子でなくてもよく、例えば銀粒子と銅粒子の両方が金属粒子に含まれていてもかまわない。
【0043】
なお、金属粒子が銅粒子であるとき、または銅粒子を含むときには、金属粒子の全部が銀粒子であるときに比べて、イオンマイグレーションの可能性を低減すること、経済性を向上させること等においては有利である。
【0044】
上記各構成の接合構造Cおよびそれを含む半導体パッケージ10において、例えば図1に示すように、金属端子1が線路導体2から離れた先端を有しており、接合材3が金属端子1の先端において外側に凸状であるものでもよい。つまり、線路導体2に対して金属端子1が非接触であり、両者の間の空間の少なくとも一部に接合材3が位置している。この空間内の接合材3と、金属端子1の先端から線路導体2の上面等にかけて接合された接合材3によって、線路導体2に金属端子1が接合されている。
【0045】
この場合には、金属端子1と線路導体2とが互いに非接触であることから、金属端子1と線路導体2および線路導体2が位置する絶縁板6等との間に熱応力が生じる可能性が効果的に低減されている。また、接合材3が金属端子1の先端において外側に凸状であることから、接合材3の体積を比較的大きくすることができる。つまり、接合材3の変形の余地を大きくすることができる。そのため、接合材3に熱応力等の応力が作用したときに、接合材3の凸状の部分等の変形によって応力を吸収し、低減することができる。また凸状の外面に対する複数の法線方向に沿って、熱応力が多方向に分散される。したがって、接合材3と線路導体2との間の熱応力によるクラック等の機械的な破壊の可能性を効果的に低減することができる。
【0046】
上記各構成の接合構造Cおよびそれを含む半導体パッケージ10において、金属端子1の端部1aと線路導体2との接合界面に沿って空隙4が位置していてもよい。空隙4の一例を図1および図2に示している。この例において、空隙4は、金属端子1の下側(線路導体2側)のみに位置している。すなわち、図3に示すように、金属端子1の上側には空隙4がない。空隙4は、例えば金属端子1と接合材3との間に生じる熱応力を吸収し、緩和する機能を有している。すなわち、金属端子1の端部1aと接合材3との接合界面に沿って空隙4が位置しているため、この空隙4において金属端子1の表面部分の変形が容易である。この変形により、例えば線路導体2または線路導体2が位置している基体である絶縁板6と金属端子との間に生じる熱応力を、吸収して緩和することができる。したがって、例えば接合材3のクラック等の、熱応力による接合構造Cの機械的な破壊の可能性を低減することができる。これにより、金属端子1と線路導体2との電気的および機械的な接続の信頼性を向上させることができる。
【0047】
空隙4は、上記の熱応力の緩和を考慮すれば、金属端子1と接合材3とが対向し合う接合界面のうち5〜30%程度の面積比で存在している。言い換えれば、接合材3は、金属端子1の端部に面している表面のうち5〜30%程度の面積の領域では、金属端子1と実際に接合されていなくて構わない。上記の面積比が5%程度以上であれば、熱応力を効果的に吸収し、緩和することができる。また、上記の面積比が30%以下であれば、接合材3の金属端子1に対する実際の接合面積を大きくして、両者間の接合強度を効果的に向上させることができる。
【0048】
なお、空隙4は、図1および図2の例では一続きの比較的面積が大きいものであるが、これに限らず、より面積が小さいものが複数個分散して存在していても構わない。空隙4の高さ等の大きさは、空隙4への水分等の腐食成分の入り込み抑制等を考慮すれば、いわゆるサブミクロンオーダーの狭いものにすればよい。空隙4の高さ等の大きさは、金属粒子の粒径、接合時の加熱温度等の接合条件、金属粒子の材料および接合時に接合材3に作
用する重力等の外力の大きさおよび向き等の条件を適宜調整すればよい。
【0049】
例えば図2に示すように、空隙4が、金属端子1の端部1aのうち線路導体2と接合材3を介して対向している領域(以下、下部領域ともいう)に位置しているときには、次のような効果が得られる。この場合には、金属端子1および接合材3において熱応力が集中しやすい下部領域において、熱応力を効果的に緩和することができる。したがって、熱応力の緩和による信頼性の向上に有効な接合構造Cとすることができる。
【0050】
空隙4について、下部領域に位置させるには、例えば、接合材3を介した金属端子1と線路導体2との接合時に、上記下部領域が下向きになるようにすればよい。このようにすれば、重力により金属端子1(端部1a)から接合材3となるペーストが離れ、空隙4となる隙間を生じさせることができる。この隙間が生じた状態で、金属粒子間の結合が生じるため、金属端子1の端部1aと線路導体2との間に空隙4を位置させることができる。
【0051】
また、この例において、空隙4が、金属端子1の端部1aのうち線路導体2と接合材3を介して対向している領域(上記の下部領域)のみに位置している。この場合には、下部領域を除く比較的広い領域において接合材3が金属端子1の端部1aに直接に接合されている。そのため、両者間の接合強度を高めることができる。
【0052】
また、このような空隙4は、接合材3と金属端子1との界面における導通抵抗の調整に利用することもでき、接合材3と金属端子1との間の抵抗の調整に利用することもできる。これにより、金属端子1、接合材3および線路導体2それぞれの間の抵抗およびインピーダンスの最終調整を容易に行なうこともできる。すなわち、抵抗率を上記のように調整した接合材3を用いて上記の抵抗およびインピーダンスを概略所定値に調整し、これをさらに空隙4で微調整することで、特にインピーダンスの調整(整合)の精度を向上させることができる。
【0053】
図6は、本発明の他の実施形態の接合構造における要部を拡大して示す断面図である。図6において図1図5と同様の部位には同様の符号を付している。図6に示す例では、空隙4内において露出する金属端子1の表面に、金属粒子と同じ金属材料からなる薄層9が位置している。薄層9は、例えば厚みが0.5μm〜10μm程度の層状の部位である。薄層
9は、空隙4に面する金属端子1の表面のほぼ全面に沿って位置しているものであってもよいし、接合材3が接している金属端子1の表面に位置していてもよい。このような薄層9が存在することにより、水分の付着による金属端子1の腐食等の可能性を効果的に低減することができる。
【0054】
薄層9は、例えば、接合材3(上記ペースト)を介した金属端子1と線路導体2との接合時の加熱の温度および時間等を調整することで生成させることができる。例えば、上記の接合温度を接合材3となるペーストの接合温度の上限(300℃等)程度に設定して、金
属端子1と線路導体2との接合を行なうようにすればよい。このときの熱で接合材3中の銀等の成分が金属端子1の端部1a表面に沿って濡れ拡がり、薄層9を形成する。
【0055】
図7は、本発明の他の実施形態の接合構造を示す断面図である。図7において図1図5と同様の部位には同様の符号を付している。図7に示す例において、接合材3は、ピン端子1の先端(図7では右端)から線路導体2に対向している端部1aの広い範囲においてピン端子1に接合されていない。空隙4は、ピン端子1の先端部分に位置している。この場合には、ピン端子1の先端部の中央から端部1aに対向する線路導体2にかけて、接合材3が滑らかにフィレットを作っている。
【0056】
図7に示すような例では、上記フィレットの存在によって、接合材3の線路導体2に対
する接合強度も向上させることができる。また、この例においても、接合材3と金属端子1の端部1a(先端部)との間に空隙4が位置しているため、空隙4部分における熱応力の緩和が容易である。したがって、接合材3を介した線路導体2と金属端子1との接合強度および接続信頼性の向上に有効な接合構造Cとすることができる。
【0057】
前述したように、本発明の実施形態の半導体パッケージは次の構成を有している。すなわち、本実施形態の半導体パッケージ10は第1面5aおよび第1面5aと反対側の第2面5bを有する基板5と、基板5の第1面5a側に位置する線路導体2と、基板5の第2面5bから第1面5aにかけて貫通しており、第1面5a側に端部1aを有する金属端子1と、金属粒子を含んでおり、金属端子1の端部1aと線路導体2との間に介在している接合材3とを有している。また、本実施形態の半導体パッケージ10は、金属端子1の端部1aと線路導体2との間に、上記いずれかの構成の接合構造Cを有している。
【0058】
上記形態の半導体パッケージ10によれば、上記いずれかの構成の接合構造Cを有することから、金属端子1、接合材3および線路導体2それぞれの間の抵抗およびインピーダンスを所望の値に容易に調整することができる。したがって、例えば接合材3を含む伝送路におけるインピーダンス整合が容易な半導体パッケージ10を提供することができる。
【0059】
基板5の第1面5a側は、前述した金属ケースで封止される側である。基板5と金属ケースとの間に形成される空間内に、半導体素子および金属端子1の端部1aが封止される。また、図4および図5等に示す例では、基板5の貫通孔5c内に封止材(符号なし)が位置している。封止材は、金属端子1と貫通孔5cとの間の隙間を塞ぐ機能を有している。封止材は、ガラス材料またはセラミック材料等の絶縁材料からなる。このような絶縁材料の例としては、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス等のガラス、およびこれらのガラスに熱膨張係数や比誘電率を調整するためのセラミックフィラーを加えたものが挙げられる。この絶縁材料は、金属端子1におけるインピーダンスマッチング(比誘電率)および封止の信頼性等を考慮して、適宜選択することができる。なお、図1および図7において、金属端子1と基板5の貫通孔5cとの間の封止材を省略している。
【0060】
サブマウント7は、基板5の第1面5a上に設けられ、第1面5aに平行な基板搭載面を有する。半導体パッケージ10において、サブマウント7は、絶縁板6に搭載される電子部品が発生する熱を基板5へ伝導する機能等を有している。すなわち、サブマウント7は、半導体パッケージ10の外部に放熱する放熱材としての機能を有する。
【0061】
サブマウント7は、基板5と一体に形成されていてもよく、冷却部材(例えば、ペルチェ素子など)を含んでいてもよい。サブマウント7が基板5と一体に形成されている場合、サブマウント7は、基板5と同様の金属材料からなる。これにより、半導体パッケージ10における放熱性が効果的に確保される。
【0062】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々の変更は可能である。
【0063】
例えば、図8に示すように、空隙4は接合材3に閉じられた空間に位置していてもよい。これにより、金属端子1と絶縁板6との間に生じる熱応力を緩和することができると同時に、水分の付着による金属端子1の腐食等の可能性を効果的に低減することができる。
【実施例】
【0064】
本発明の1つの実施例の接合構造について説明する。
【0065】
この接合構造において、金属端子と線路導体とを表1に記載の組成等を有する接合材で
接合し、順次直列に接続された金属端子、接合材および線路導体からなる伝送路における抵抗およびインピーダンス整合をシミュレーション解析した。
【0066】
この例では、金属端子は、長さが10mmで直径が0.15mmのものに設定した。接合材は、銀のサブミクロン粒子を金属粒子として含むものとした。また、線路導体は、タングステンのメタライズ層からなる厚みが約10μmのものであり、ニッケルめっき層および金めっき層で被覆した状態のものとした。線路幅は、約100μmとし、その幅全域に接合材が接合されたものとした。
【0067】
測定の結果、接合材の体積抵抗率を5〜10μmの範囲としたときに、金属端子と線路導体とで構成される伝送路における抵抗は1×10−3Ω以下であり、ほぼリード端子自体の導通抵抗程度に低くできることが確認できた。また、上記伝送路における反射損失は約−15dB以下であり、高周波伝送特性が良好であることが確認できた。
【符号の説明】
【0068】
1・・金属端子
1a・・端部
2・・線路導体
3・・接合材
4・・空隙
5・・基板
5a・・第1面
5b・・第2面
5c・・貫通孔
6・・絶縁板
7・・サブマウント
8・・接地端子
9・・薄層
10・・半導体パッケージ
H・・封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8