特許第6927851号(P6927851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927851
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ヒータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20210823BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20210823BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   H05B3/02 B
   H05B3/74
   H05B3/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-209520(P2017-209520)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-83115(P2019-83115A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】520055630
【氏名又は名称】モメンティブ・クオーツ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】松井 誠彦
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−354260(JP,A)
【文献】 特開2004−87476(JP,A)
【文献】 特開平10−233436(JP,A)
【文献】 特開2005−93746(JP,A)
【文献】 特開平11−317284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
H05B 3/74
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に給電ボルトが装着される一対の端子間に複数のヒータパターンが並列に形成された並列型ヒータであって、各端子は、ヒータパターン数に応じて複数個に互いに非接触に分割され、これら複数の分割端子同士が給電ボルトによって導通されており、給電ボルトが装着されない状態では一方の端子の一の分割端子部材と他方の端子の一の分割端子との間に複数の仮想直列ヒータパターンが形成され、給電ボルトが装着されることにより複数の仮想直列ヒータパターン同士が導通して並列回路が形成されることを特徴とする並列型ヒータ。
【請求項2】
給電ボルトの頭部が直接または導電性材料からなる座金を介してヒータパターンを形成するヒータエレメントに接触していることを特徴とする請求項1記載の並列型ヒータ。
【請求項3】
一対の端子間に第一および第二のヒータパターンが並列に形成され、各端子は、第一のヒータパターンのみに導通する第一の分割端子と、第二のヒータパターンのみに導通する第二の分割端子とに分割されていることを特徴とする請求項1または2記載の並列型ヒータ。
【請求項4】
第一および第二の分割端子は各々略半円リング状に形成され、それらの間に径方向に延長するように設けられる隙間で第一及び第二のヒータパターンが絶縁されていることを特徴とする請求項3記載の並列型ヒータ。
【請求項5】
一対の端子間に第一ないし第四のヒータパターンが並列に形成され、各端子は、第一のヒータパターンのみに導通する第一の分割端子と、第二のヒータパターンのみに導通する第二の分割端子と、第三のヒータパターンのみに導通する第三の分割端子と、第四のヒータパターンのみに導通する第四の分割端子に分割されていることを特徴とする請求項1または2記載の並列型ヒータ。
【請求項6】
第一ないし第四の分割端子は各々略四半円リング状に形成され、それらの間に径方向および周方向に延長するように設けられる隙間で第一ないし第四のヒータパターンが絶縁されていることを特徴とする請求項5記載の並列型ヒータ。
【請求項7】
一対の端子間に複数のヒータパターンが並列に形成されたヒータ本体を作製し、各端子に給電ボルトを装着する前の状態において、一方の端子の一の分割端子と他方の端子の一の分割端子との間に形成される複数の仮想直列ヒータパターンについて抵抗調整を行った後、各端子に給電ボルトを装着することにより複数の仮想直列ヒータパターン同士を導通させて並列回路を形成することを特徴とする請求項1ないし6記載の並列型ヒータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスなどにおいてウエハを加熱するヒータとして好適に用いられるヒータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスヒータなどのヒータは、半導体や液晶の製造プロセスにおいてウエハを加熱するための加熱装置として広く用いられており、PG(熱分解黒鉛)などの導電性材料からなるヒータエレメントを端士間で螺旋状、渦巻状、蛇行状などの所定ヒータパターンを基材上に形成したものが知られている(特許文献1など)。
【0003】
このようなヒータには、端子A,Bの間に直列にヒータパターン11が形成される直列型ヒータ10(図7)と、端子A,Bの間に並列にヒータパターン21,22が形成される並列型ヒータ20(図8)があり、被加熱物の形状や外径、ヒータが組み込まれる装置の使用目的、適用される電源などに応じて最適な加熱性能を発揮し得るように適宜選択して用いられている。なお、図7の直列型ヒータ10および図7の並列型ヒータ20におけるヒータパターン11および21,22は、いずれも簡略化された一例として示されている。
【0004】
多くの場合、ヒータで半導体ウエハなどの被加熱物を加熱すると、その外周部の温度が内周部に比べて低下する傾向にあるため、ヒータの設計においては、外周部の電気抵抗値を小さく、内周部の電気抵抗値を大きくして、外周部から内周部に至る全領域に均熱性を与えるようにしている。あるいは、場合によっては、外周部と内周部、上半部と下半部、右半部と左半部などの異なる領域に異なる発熱性を与えることが要求されることもある。いずれの場合でも、その設計要求を満たすためには、ヒータパターンの電気抵抗値を調整する必要がある。
【0005】
たとえば、図7に示される直列型ヒータ10のヒータパターン11は、その半周ごとに、径方向に外周部11aと中間部11bと内周部11cとを有しており、これら各部を均等に発熱させるために、これら各部ごとに抵抗値を調整する場合の一例について、図9を参照して説明すると、各部の抵抗値を測定するために、測定点P1〜P4を設定し、端子Aから測定点P1までの区間(外周部11a)の抵抗値r1が1.59Ω、測定点P1から測定点P2までの区間(中間部11b)の抵抗値r2が0.96Ω、測定点P2から測定点P3までの区間(内周部11c)の抵抗値r3が1.36Ω、測定点P3から測定点P4までの区間(中間部11b)の抵抗値r4が0.96Ω、測定点P4から端子Bまでの区間(外周部11a)の抵抗値r5が1.59Ωとなるように調整すべきものとする(各区間抵抗値r1〜r5は調整後の基準値)。
【0006】
直列型ヒータ10のヒータパターン11では、端子Aから測定点P1〜P4を経て端子Bまで一方通行で抵抗値を測定・調整することができる。すなわち、端子Aから各測定点(端子Bを含む)までの抵抗値は、その間の区間抵抗値の合計に一致する(たとえば、端子AからP4までの抵抗値はr1+r2+r3=3.91Ωとなる)ので、端子Aと各測定点P1〜P4および端子Bとの間で抵抗値を測定し、これらが上記区間抵抗値に合致するように順次に調整していけば良く、比較的容易に抵抗調整を行うことができる。具体的には、設計抵抗値より若干低くなるようにヒータパターン11のエレメントを若干厚めに形成しておいて、各測定点で測定された抵抗値に応じてその区間のエレメントを削って抵抗調整することができる。
【0007】
しかしながら、端子A,B間にそれぞれ半周に亘るヒータパターン21,22が形成されている並列型ヒータ20(図8)においてヒータパターン21,22内に設定した複数の測定点で抵抗値を測定して調整しようとしても、各測定点で測定される抵抗値は、端子Aから該測定点に至る経路(A−Pn)と、該測定点から端子Aに至る経路(Pn−A)の2つの電流経路があり、測定した区間のエレメントを削って抵抗調整すると、他の区間の抵抗値も変わってしまうので、それらを考慮して加工しなければならず、抵抗調整に熟練を要するという問題があった。
【0008】
図10を参照して詳しく説明すると、ヒータ20としての設計抵抗値1.61Ωとして、端子A,B間のヒータパターン21,22に測定点P11〜P14を設定し、端子Aと測定点P1の間の区間(ヒータパターン21の外周部21aおよび中間部21b)の抵抗値r11が1.01Ω、測定点P11,P12間の区間(ヒータパターン21の内周部21cおよび中間部21b)の抵抗値r12が0.97Ω、測定点P12と端子Bの間の区間(ヒータパターン21の外周部21a)の抵抗値r13が0.68Ω、端子Bと測定点P13の間の区間(ヒータパターン22の外周部22aおよび中間部22b)の抵抗値r14が1.01Ω、測定点P13,P14間の区間(ヒータパターン22の内周部22cおよび中間部22b)の抵抗値r15が0.97Ω、測定点P14と端子Aの間の区間(ヒータパターン22の外周部22a)の抵抗値r15が0.68Ωとなるように調整すべきものとする(各区間抵抗値r11〜r15は調整後の基準値)。
【0009】
この場合の各区間の設計上の抵抗値は表1に示す通りであり、経路A−Bと経路B−Aが完全並列で同一の抵抗値(1.61Ω)を持ち、且つ、各経路において対称位置にある測定区間(A−P11とB−P14,P11−P12とP13−P14,P12−BとP14−A)が同一の抵抗値を持つように設計されている。並列パターンでは、各測定点において端子Aからの経路と端子Aまでの経路の2つの経路が並列するため、たとえば端子Aと測定点P11の間の区間(A−P11)での抵抗値は、1/{1/r11+1/(r12+r13+r14+r15+r16)}=1/(1/1.26+1/5.18)=1.01Ωとなる(図10(b)参照)。
【0010】
【表1】
【0011】
このように、並列パターンでは、各測定点において端子Aからの経路と該測定点から端子Aに至る経路の2経路が並列していることから、直列パターンのように各測定点での抵抗値が単純な合計値にならず、ある区間で抵抗調整すると、他の区間の抵抗値も変わってしまい、厳密な調整がきわめて困難である。並列経路を構成する区間A−Pnと区間Pn(−B)−Aの抵抗値の差が大きい場合は特に調整が難しく、エレメント加工について熟練した技術が要求される。
【0012】
この点について具体例を示してより詳細に説明すると、ヒータ製造時のCVD条件だけでは並列型ヒータ20のヒータパターン21,22を構成するエレメントの厚さを全領域に亘って完全に同一にすることは実際上困難であり、エレメントの厚さが部分的に異なって形成されてしまうことが多い。そのため、各測定点P11,P12,B,P13,P14で測定される測定抵抗値r11〜r16が、図10(b)に示す基準値から大きく外れて、図11に示すような測定値になることがある。この例では、並列型ヒータ20のヒータパターン21,22の上半部のエレメントはほぼ規定の厚さに形成され、したがって上半部の区間抵抗値r11,r12,r13はいずれも図10(b)に示す基準値にほぼ合致しており、エレメント切削加工による抵抗調整を行う必要はほとんどないが、下半部のエレメントが規定より厚く形成されたため、下半部の区間抵抗値r14〜r16がいずれも図10(b)に示す基準値より0.8〜1.1Ω程度低くなっており、この部分のエレメントを切削して薄くすることによりこれらの区間抵抗値を基準値と略同一になるように抵抗調整する必要がある。
【0013】
たとえば、測定区間B−P13の測定抵抗値0.90Ωは図10(b)に示す同区間の抵抗値r14=1.01Ωより低いのでヒータエレメントを削って抵抗調整する必要があるが、前出の式から分かるように、各区間抵抗値は他の区間の区間抵抗値も関連するので、この区間抵抗値r14を変えると、先行する他の区間(元々基準値に近く抵抗調整が不要であった区間や、既に抵抗調整済の区間)の抵抗値も変わってしまう。したがって、ある区間で抵抗調整を行う際には、それによって他の区間の抵抗値も変化することとその変化量を予測した上で、全体のバランスを考慮しつつエレメント切削加工を行わなければならず、経験則を駆使した熟練技術が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−354260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、端子間に並列にヒータパターンが形成される並列型ヒータにおいて、その本来の機能を損なわずに、製品化前の抵抗調整を熟練を要することなく容易に行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本願の請求項1に係る発明は、各々に給電ボルトが装着される一対の端子間に複数のヒータパターンが並列に形成された並列型ヒータであって、各端子は、ヒータパターン数に応じて複数個に互いに非接触に分割され、これら複数の分割端子同士が給電ボルトによって導通されており、給電ボルトが装着されない状態では一方の端子の一の分割端子と他方の端子の一の分割端子との間に複数の仮想直列ヒータパターンが形成され、給電ボルトが装着されることにより複数の仮想直列ヒータパターン同士が導通して並列回路が形成されることを特徴とする。
【0017】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載の並列型ヒータにおいて、給電ボルトの頭部が直接または導電性材料からなる座金を介してヒータパターンを形成するヒータエレメントに接触していることを特徴とする。
【0018】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の並列型ヒータにおいて、一対の端子間に第一および第二のヒータパターンが並列に形成され、各端子は、第一のヒータパターンのみに導通する第一の分割端子と、第二のヒータパターンのみに導通する第二の分割端子とに分割されていることを特徴とする。
【0019】
本願の請求項4に係る発明は、請求項3記載の並列型ヒータにおいて、第一および第二の分割端子は各々略半円リング状に形成され、それらの間に径方向に延長するように設けられる隙間で第一及び第二のヒータパターンが絶縁されていることを特徴とする。
【0020】
本願の請求項5に係る発明は、請求項1または2記載の並列型ヒータにおいて、一対の端子間に第一ないし第四のヒータパターンが並列に形成され、各端子は、第一のヒータパターンのみに導通する第一の分割端子と、第二のヒータパターンのみに導通する第二の分割端子と、第三のヒータパターンのみに導通する第三の分割端子と、第四のヒータパターンのみに導通する第四の分割端子に分割されていることを特徴とする。
【0021】
本願の請求項6に係る発明は、請求項5記載の並列型ヒータにおいて、第一ないし第四の分割端子は各々略四半円リング状に形成され、それらの間に径方向および周方向に延長するように設けられる隙間で第一ないし第四のヒータパターンが絶縁されていることを特徴とする。
【0022】
本願の請求項7に係る発明は、請求項1ないし6記載の並列型ヒータの製造方法であって、一対の端子間に複数のヒータパターンが並列に形成されたヒータ本体を作製し、各端子に給電ボルトを装着する前の状態において、一方の端子の一の分割端子と他方の端子の一の分割端子との間に形成される複数の仮想直列ヒータパターンについて抵抗調整を行った後、各端子に給電ボルトを装着することにより複数の仮想直列ヒータパターン同士を導通させて並列回路を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、端子に給電ボルトが装着されない状態では、一方の端子の一の分割端子と他方の端子の一の分割端子との間に複数の仮想直列ヒータパターンが形成される。したがって、この仮想直列ヒータパターンについて、従来の直列型ヒータと同様にして比較的容易に抵抗調整を行うことができる。その後、端子に給電ボルトを装着することにより、複数の仮想直列ヒータパターン同士を導通させて並列回路が形成されるので、完成品としては従来の並列型ヒータと同様の構成になる。このようにして、個体差の小さい製品を安定的・効率的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による並列型ヒータ(完成状態ないし給電ボルト取付状態)の全体平面図である。
図2図1の端子部拡大平面図(a)および同図中I−I切断線による断面図(b)である。
図3】給電ボルトが除かれた状態の全体平面図である。
図4図3の端子部拡大平面図(a)および同図中II−II切断線による断面図(b)である。
図5図3および図4に示す状態で抵抗調整を行う説明図である。
図6】本発明の他実施形態(実施例2)による並列型ヒータにおいて図3と同様に給電ボルトが除かれた状態を示す全体平面図である。
図7】従来技術による直列型ヒータの全体平面図である。
図8】従来技術による並列型ヒータの全体平面図である。
図9図7の直列型ヒータのヒータパターンに抵抗測定点を設けた全体平面図(a)およびその抵抗調整説明図である。
図10図8の並列型ヒータのヒータパターンに抵抗測定点を設けた全体平面図(a)およびその抵抗調整説明図(b)である。
図11図8の並列型ヒータについての抵抗調整が難しいことを具体例で示す抵抗調整説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明について詳述する。
【実施例1】
【0026】
図1および図2に本発明の一実施形態(実施例1)による並列型ヒータ30が示されている。このヒータ30では、対称形状のヒータパターン31,32が端子A,B間に並列に形成されている。
【0027】
このヒータ30は、少なくともその表裏面がPBN(熱分解性窒化ホウ素、微量のカーボンを添加したものを含む。)などの絶縁材料から円板状に形成されたヒータベース33と、ヒータパターン31,32(中心経路を一点鎖線で示す)を構成するPG(熱分解性グラファイト)などの導電材料からなるヒータエレメント34と、PBNなどの絶縁材料からなるオーバーコート35とで3層積層構造に形成されたヒータ本体36を有する。ヒータ本体36は、常法に従い、ヒータベース33上にヒータエレメント34を蒸着し、ヒータパターン31,32となる部分以外の部分を除去してヒータパターン31,32を加工し、さらにその上にオーバーコート35を形成した後、端子部のオーバーコート35を除去してヒータエレメント34を露出させて端子A,Bとすることにより製造される。なお、オーバーコート35は図2(b)に示されているが、図1および図2(a)では図示省略されている。
【0028】
各端子A,Bは、略半円リング状に2分割された分割端子部37,38として形成されており、ヒータベース33を貫通するボルト穴39に挿通される給電ボルト40と、ヒータ本体36を挟んで給電ボルト40に螺着されるナット41と、座金42,43とを有して構成されている。分割端子部37はヒータパターン31にのみ導通し、分割端子部38はヒータパターン32にのみ導通しており、分割端子部37,38は径方向に延長する隙間44で分断・絶縁されているが、給電ボルト40が取り付けられることにより、給電ボルト40の頭部40aが座金42を挟んで分割端子部37,38の両方に接触するので、ヒータパターン31,32が導通して並列型ヒータ30が形成される。給電ボルト40および座金42はPGなどの導電性材料で形成される。座金43は導電性材料であっても絶縁性材料であっても良い。
【0029】
図3および図4は、上記のように構成された並列型ヒータ30から給電ボルト40を取り除いた状態(言い換えれば、ヒータ30の製造過程においてヒータ本体36を作製後、給電ボルト40を取り付ける前の状態)を示す。既述したように、この状態では、分割端子部37と分割端子部38とが隙間44で絶縁されているので、ヒータパターン31は端子A,Bの分割端子部37,37間に形成され、ヒータパターン32は端子A,Bの分割端子部38,38間に形成され、それぞれが直列のヒータ経路45,46となる。したがって、この状態で、既述した直列型ヒータ10(図7)の場合と同様に、抵抗調整を容易に行うことができる。
【0030】
既述した従来の並列型ヒータ20(図8)と同様にヒータパターン31,32に抵抗測定点P21〜P24を設けて抵抗調整を行う場合について、図5を参照して説明する。この例では、ヒータ30としての設計抵抗値を1.61Ω(経路45,46の抵抗値がいずれも3.22Ω)として、端子Aと測定点P1の間の区間抵抗値r21=1.26Ω、測定点P21,P22間の区間抵抗値r22=1.19Ω、測定点P22と端子Bの間の区間抵抗値r23=0.77Ω、端子Bと測定点P23の間の区間抵抗値r24=1.26Ω、測定点P23,P24間の区間抵抗値r25=1.19Ω、測定点P24と端子Aの間の区間抵抗値r25=0.77Ωとなるように調整すべきものとする(各区間抵抗値r21〜r25は調整後の基準値)。
【0031】
給電ボルト40が取り付けられていない状態では、経路45は端子Aから端子Bに至る直列経路であるから、直列型ヒータ10(図7)について図9を参照して説明した抵抗調整と同様にして、端子Aと各測定点P21,P22および端子Bとの間で抵抗値を測定し、これらが上記基準値に合致するように順次に調整していけば良く、これを経路46についても同様に行えば良いので、比較的容易に抵抗調整を行うことができる。具体的には、設計抵抗値より若干低くなるようにヒータパターン31,32のヒータエレメント34を若干厚めに形成しておいて、各測定点で測定された抵抗値に応じてその区間のヒータエレメント34を削って抵抗調整することができる。
【0032】
このようにして、仮想直列経路45,46で抵抗調整を行った後、端子A,Bにおいて給電ボルト40、ナット41および座金42,43を取り付けると、既述したように、給電ボルト40の頭部40aが座金42を挟んで分割端子部37,38の両方に接触するので、ヒータパターン31,32が導通して並列経路となり、並列型ヒータ30が製造される。
【実施例2】
【0033】
以上に説明した実施例1の並列型ヒータ30は、一対の端子A,B間に2つのヒータパターン31,32が並列に設けられているので、これに応じて各端子A,Bを径方向の隙間44で分割端子部37,38に2分割した構成を有するが、大型のヒータなどにおいてより厳密な温度制御が必要とされる場合にあっては、一対の端子A,B間により多数、たとえば4つのヒータパターンが並列に形成されることがある。
【0034】
このような場合の一例が図6に示されている。すなわち、この並列型ヒータ50は、端子A,B間に4つのヒータパターン51〜54が形成されており、端子A,Bが分割端子部55〜58に4分割されている。ヒータパターン51(中心経路を一点鎖線で示す)は端子A,Bの分割端子部55,55間に形成され、ヒータパターン52(中心経路を破線で示す)は端子A,Bの分割端子部56,56間に形成され、ヒータパターン53(中心経路を一点鎖線で示す)は端子A,Bの分割端子部57,57間に形成され、ヒータパターン54(中心経路を破線で示す)は端子A,Bの分割端子部58,58間に形成される。これらの分割端子部55〜58は、径方向および周方向に延長する隙間59を介して分断され、各々が略四半円リング状に形成されている。
【0035】
以上に本発明について実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によって画定される発明の範囲内において多種多様に変形して実施することができる。たとえば、実施例1においては、給電ボルト40を装着したときに座金42を介してヒータパターン31,32(経路45,46)同士を導通させているが、座金42を省略して、給電ボルト頭部40aの裏面を直接分割端子部37,38に接触させて導通するようにしても良い。また、一つのヒータにおいて複数対の端子が設けられる場合は、各対の端子について、端子間に並列される複数のヒータパターン数に応じて2分割(実施例1)または4分割(実施例2)などに分割して、給電ボルト非装着時に仮想直列パターンが形成されるように構成すれば良い。
【符号の説明】
【0036】
10 直列型ヒータ(従来技術)
20 並列型ヒータ(従来技術)
30 並列型ヒータ(本発明実施例)
31,32 並列ヒータパターン
33 ヒータベース
34 ヒータエレメント
35 オーバーコート
36 ヒータ本体
37,38 分割端子部(2分割)
39 ボルト穴
40 給電ボルト
41 ナット
42 座金
43 座金
44 隙間
45,46 経路
50 並列型ヒータ(本発明実施例)
51〜54 並列ヒータパターン
55〜58 分割端子部(4分割)
59 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11