(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927861
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】アナログメータ指示値自動読み取り方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20210823BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20210823BHJP
G08C 19/36 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
G01B11/26 H
G06T7/60 150Z
G08C19/36
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-222588(P2017-222588)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-95225(P2019-95225A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 聡
【審査官】
山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−267365(JP,A)
【文献】
特開平03−100424(JP,A)
【文献】
特開平07−019814(JP,A)
【文献】
特開2005−032028(JP,A)
【文献】
特開2017−126187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00−3/08
3/11−3/56
11/00−11/30
21/00−21/32
G06T 1/00−1/40
3/00−5/50
7/00−7/90
9/00−9/40
G08C 13/00−25/04
G01D 18/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支点を中心として回転する針によって指示値を指し示すアナログメータの前記針を含む盤面の全体の画像を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップによって撮影された画像をグレースケール画像とする前処理ステップと、
前記針が可動する角度領域を等角度間隔で分割した各角度を投票角度とし、この投票角度毎に、前記グレースケール画像における前記針と交差する前記針の支点を中心とする円と前記投票角度を表現する前記針の支点を起点とする半直線との交点における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度に対応して用意されている投票箱および少なくとも両隣の投票角度を含む隣接する投票角度に対応して用意されている投票箱に投票する投票ステップと、
前記投票ステップによって投票された投票箱のうち最も投票された画素値の和が大きい投票箱に対応する投票角度を現在の針の角度として決定する角度決定ステップと、
前記角度決定ステップによって決定された現在の針の角度を前記針が指し示す指示値に変換する指示値変換ステップと
を備えることを特徴とするアナログメータ指示値自動読み取り方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたアナログメータ指示値自動読み取り方法において、
前記投票ステップは、
前記投票角度毎に、前記グレースケール画像における前記針と交差する前記針の支点を中心とする複数の同心円と前記投票角度を表現する前記針の支点を起点とする半直線との交点における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度に対応して用意されている投票箱および少なくとも両隣の投票角度を含む隣接する投票角度に対応して用意されている投票箱に投票する
ことを特徴とするアナログメータ指示値自動読み取り方法。
【請求項3】
支点を中心として回転する針によって指示値を指し示すアナログメータの前記針を含む盤面の全体の画像を撮影するように構成された撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像をグレースケール画像とするように構成された前処理部と、
前記針が可動する角度領域を等角度間隔で分割した各角度を投票角度とし、この投票角度毎に、前記グレースケール画像における前記針と交差する前記針の支点を中心とする円と前記投票角度を表現する前記針の支点を起点とする半直線との交点における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度に対応して用意されている投票箱および少なくとも両隣の投票角度を含む隣接する投票角度に対応して用意されている投票箱に投票するように構成された投票部と、
前記投票部によって投票された投票箱のうち最も投票された画素値の和が大きい投票箱に対応する投票角度を現在の針の角度として決定するように構成された角度決定部と、
前記角度決定部によって決定された現在の針の角度を前記針が指し示す指示値に変換するように構成された指示値変換部と
を備えることを特徴とするアナログメータ指示値自動読み取り装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたアナログメータ指示値自動読み取り装置において、
前記投票部は、
前記投票角度毎に、前記グレースケール画像における前記針と交差する前記針の支点を中心とする複数の同心円と前記投票角度を表現する前記針の支点を起点とする半直線との交点における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度に対応して用意されている投票箱および少なくとも両隣の投票角度を含む隣接する投票角度に対応して用意されている投票箱に投票する
ことを特徴とするアナログメータ指示値自動読み取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログメータの指示値を自動的に読み取るアナログメータ指示値自動読み取り方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧力計や温度計などには、支点を中心として回転する針によって指示値を指し示すアナログメータが多く使用されている。
【0003】
例えば、
図12に示されるアナログメータ100のように、支点Oを中心として回転する針1によって指示値を指し示す。このアナログメータ100において、針1が回転する盤面2には、針1の支点Oを中心とした円に沿って、指示値を示す目盛3が刻まれている。
【0004】
このようなアナログメータは指示値をデジタル信号に変換することができない。よって、データを収集する時には、計測者が指示値を目で見て確認して読み取る方法が一般的である。この方法はデータを管理、活用しやすい時系列データにしたい場合、計測者がアナログメータを監視するために拘束されることとなり、現実的ではない。さらに、アナログメータの設置された環境が暑い場所だったり、寒い場所だったり、作業者の職務を行っている普段の事業所から離れた遠隔地だったりした場合、時系列データとすることは困難である。
【0005】
これを解決するために、アナログメータをデジタルメータに交換し、遠隔地からオンラインで監視できるようにすることが考えられる。しかし、アナログメータをデジタルメータに交換するのには費用が掛かる。また、すでに稼働中の工場のラインなどにおいては、そのラインを停止して工事をしなければならず、顧客への取引を一時取りやめにするなど生産停止による様々なリスクを抱えなければならない。
【0006】
そこで、近年、アナログメータの指示値をRGBカメラをはじめとする安価なイメージセンサを用いて自動的に読み取る方法が提案されている。例えば、特許文献1では、アナログメータをカメラで撮影し、その撮影した画像から直線のハフ変換を用いて針の角度を抽出する。この技術を用いれば、抽出した針の角度から、針が指し示す指示値を計算によって求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−196713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1に示された技術は、針の先が三角形であることを利用している。すなわち、直線のハフ変換だけでは、針の角度(針の角度の中央値)は計測できない。なぜなら、直線のハフ変換は前処理として物体の縁を検出するエッジ処理を行うからである。そのため、太さのある針(幅のある針)においては、その右側と左側の直線を検出するので針の幅の中央を検出しない。これを解決するために、特許文献1では、針の先が三角形であることを利用している。
【0009】
この場合、ハフ変換によって複数の直線が検出される。それらの交点座標は針の示す先である。したがって、特許文献1では、針の角度の中央値を検出するために、それらの直線の交点座標を算出し、平均座標を算出する。
【0010】
しかしながら、画像上の目盛線などの他の直線が長かったり多かったりすると、誤認識をしてしまい針の角度の中央値を検出できない。また針の振動(針のブレ)があると、より多くの直線が検出され、それらの平均値をとったとしても、どれが針の角度の中央値か判別できなくなる。さらに、針の先が尖っておらず、左右の縁の線が平行であると、交点を算出することができず、針の角度の中央値を求めることができない。
【0011】
このように、特許文献1に示された技術では、針のブレなどによって、針の角度の中央値を求めることができず、正しい指示値を読み取ることができないことがある、という問題があった。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、針のブレなどがあっても、針の角度の中央値を求め、正しい指示値を読み取ることが可能なアナログメータ指示値自動読み取り方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために本発明は、支点(O)を中心として回転する針(1)によって指示値を指し示すアナログメータ(100)の針を含む盤面(2)の全体の画像を撮影する撮影ステップ(S101)と、撮影ステップによって撮影された画像をグレースケール画像とする前処理ステップ(S102)と、針が可動する角度領域を等角度間隔で分割した各角度を投票角度とし、この投票角度毎に、グレースケール画像における針と交差する針の支点を中心とする円(C1)と投票角度(投票角度[N])を表現する針の支点を起点とする半直線との交点(P
N)における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度に対応して用意されている投票箱(投票箱[N])および少なくとも両隣の投票角度(投票角度[N−1],[N+1])を含む隣接する投票角度に対応して用意されている投票箱(投票箱[N−1],[N+1])に投票する投票ステップ(S103〜S107)と、投票ステップによって投票された投票箱のうち最も投票された画素値の和が大きい投票箱に対応する投票角度を現在の針の角度として決定する角度決定ステップ(S108)と、角度決定ステップによって決定された現在の針の角度を針が指し示す指示値に変換する指示値変換ステップ(S109)とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、先ず、アナログメータの針を含む盤面の全体の画像を撮影する。そして、この撮影された画像を例えば画素値「255」を黒、画素値「0」を白とするグレースケール画像とし、針が可動する角度領域(例えば、0〜360゜)を等角度間隔(例えば、1゜間隔)で分割した各角度(投票角度)毎に、グレースケール画像における針と交差する針の支点を中心とする円と投票角度を表現する針の支点を起点とする半直線との交点における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度(例えば、0゜)に対応して用意されている投票箱および少なくとも両隣の投票角度を含む隣接する投票角度(例えば、359゜、2゜)に対応して用意されている投票箱に投票する。そして、全ての投票角度で、投票箱への投票が終わった後、最も投票された画素値の和(投票数)が大きい投票箱に対応する投票角度を現在の針の角度として決定し、この決定された現在の針の角度を針が指し示す指示値に変換する。
【0015】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、投票角度毎に、グレースケール画像における針と交差する針の支点を中心とする円と投票角度を表現する針の支点を起点とする半直線との交点における画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度に対応して用意されている投票箱および少なくとも両隣を含む隣接する投票箱に投票するようにし、この投票された投票箱のうち最も投票された画素値の和(投票数)が大きい投票箱に対応する投票角度を現在の針の角度として決定するようにしたので、針のブレなどによって画素値に欠損が生じたりしても、針の角度の中央値を現在の針の角度として求め、正しい指示値を読み取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るアナログメータ指示値自動読み取り装置の要部を示す構成図である。
【
図2】
図2は、このアナログメータ指示値自動読み取り装置での処理動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、グレースケール画像における針と交差する針の支点を中心とする円と投票角度を表現する針の支点を起点とする半直線との交点を例示する図である。
【
図4】
図4は、
図2におけるステップS106の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、投票箱へ画素値が投票されて行く様子を説明する図である。
【
図6】
図6は、投票箱へ投票された画素値の和(投票数)を示す図である。
【
図7】
図7は、グレースケール画像における針の上に画素値の欠損があった場合を例示する図である。
【
図8】
図8は、グレースケール画像における針の上に画素値の欠損があった場合の例での投票箱への投票数を示す図である。
【
図9】
図9は、グレースケール画像における針と交差する針の支点を中心とする複数の円を設けた例を示す図である。
【
図10】
図10は、両隣の投票箱に投票する方式での問題を説明する図である。
【
図11】
図11は、投票する範囲を広げることによって針の中央値をうまく推定できるようになることを説明する図である。
【
図12】
図12は、アナログメータの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るアナログメータ指示値自動読み取り装置の要部を構成を示す図である。
【0019】
図1において、100はアナログメータ(
図12)、200は本実施の形態のアナログメータ指示値自動読み取り装置、300はアナログメータ指示値自動読み取り装置200とインターネットなどの通信回線を介して接続された外部装置である。
【0020】
本実施の形態のアナログメータ指示値自動読み取り装置200は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、撮影部201と、前処理部202と、投票アルゴリズム部203と、指示値変換部204とを備えている。投票アルゴリズム部203は投票部203
1と角度決定部203
2とを備えている。投票部203
1は投票箱生成部203
11と投票実行部203
12とを備えている。
【0021】
このアナログメータ指示値自動読み取り装置200には、前提として、アナログメータ100の盤面2の円の場所と大きさ、針1の支点Oと針1が可動する角度領域(角度レンジ)と、その角度領域の中で針1の示す指示値の最小値と最大値(指示値レンジ)が設定されているものとする。
【0022】
このアナログメータ指示値自動読み取り装置200において、撮影部201は、アナログメータ100を対象とし、このアナログメータ100の針1を含む盤面2の全体の画像を撮影する(
図2に示すステップS101)。
【0023】
前処理部202は、撮影部201によって撮影された画像に対して前処理を行って(ステップS102)、この前処理された画像を投票アルゴリズム部203の投票部203
1へ送る。この場合、前処理として、撮影された画像をグレースケール画像とする。このグレースケール画像では、画素値「255」を黒、画素値「0」を白とする
【0024】
投票部203
1において、投票箱生成部203
11は、針1が可動する角度領域(この例では、0゜〜360゜)を等角度間隔(この例では、1゜間隔)で分割した各角度(0゜〜359゜)を投票角度とし、この投票角度毎に投票箱を生成する(ステップS103)。すなわち、0゜〜359゜の投票角度に対し、0゜〜359゜の投票箱を生成する。以下、N゜の投票角度を投票角度[N]とし、N゜の投票箱を投票箱[N]とする。
【0025】
投票部203
1において、投票実行部203
12は、投票角度[N]毎に、グレースケール画像における針1と交差する針1の支点Oを中心とする円(以下、同心円と呼ぶ。)C1(
図3参照)と投票角度[N]を表現する針1の支点Oを起点とする半直線との交点P
Nにおける画素値を取得し、この取得した画素値を当該画素値を取得した投票角度[N]に対応して用意されている投票箱[N]および両隣の投票角度[N−1],[N+1]に対応して用意されている投票箱[N−1],[N+1]に投票する。以下、簡略化して、「円C1と投票角度[N]を表現する針1の支点Oを起点とする半直線との交点P
N」を「円C1と投票角度[N]の交点P
N」という。
【0026】
すなわち、先ず、N=0とし(ステップS104)、N≦359であることを確認して(ステップS105のYES)、同心円C1と投票角度[0]との交点P
0における画素値を投票箱[0]および両隣の投票箱[359],[1]に投票する(ステップS106)。そして、Nに1を加えてN=1とし(ステップS107)、ステップS105〜S107の処理を繰り返す。
【0027】
なお、投票実行部203
12は、
図4にステップS106の詳細を示すように、Nが入力される毎に(ステップS201)、同心円C1と投票角度[N]との交点P
Nの位置[x,y]を同心円C1の半径と投票角度[N](N゜)とから求め(ステップS202)、この求めた交点P
Nの位置[x,y]の画素値を投票箱[N]および両隣の投票箱[N−1],[N+1]に投票する(ステップS203)。
【0028】
また、
図3において、投票角度[N]は実際の角度とは異なっているが、すなわち図では5゜間隔で示しているが、便宜上、この角度間隔を1゜間隔とみなす。また、撮影された画像において、針1の先端は2゜を指しているものとし、同心円C1と投票角度[0],[1],[2],[3]との交点P
0,P
1,P
2,P
3の上に針1が乗っているものとする。また、針1はその中央部が山折りとされており、針1の幅の中央の方が画素値が大きくなるものとする。また、針のエッジ(縁)やノイズをぼかしたいので、平滑化が必要なときがあり、平滑化フィルタを適応すると、縁の方が画素値が小さくなる。
【0029】
図5に投票箱[N]へ画素値が投票されて行く様子を示す。この例では、交点P
0における画素値が「50」,交点P
1における画素値が「200」,交点P
2における画素値が「255」、交点P
3における画素値が「200」として取得されたものとする。
【0030】
この場合、投票角度[0]の交点P
0に着目すると、この交点P
0における画素値は「50」である。この場合、投票箱[0]に画素値「50」が投票され、同じ画素値「50」が両隣の投票箱[359],[1]に投票される。投票角度[0]の画素値が「50」であれば、その隣りの投票角度[359],[1]も針1の上である確率が高い。よって、両隣の投票箱[359],[1]に同じ画素値「50」を投票する。
【0031】
投票角度[1]についても、投票角度[0]と同様に、その交点P
1の画素値「200」が投票箱[1]と両隣の投票箱[0],[2]に投票される。以下、同様にして、投票角度[359]まで、その交点P
Nの画素値が投票箱[N]と両隣の投票箱[N−1],[N+1]に投票されていく。
【0032】
投票実行部203
12は、全ての投票角度[N]で、投票箱[N]および両隣の投票箱[N−1],[N+1]への投票が終わった後、その旨を角度決定部203
2へ通知する。
【0033】
角度決定部203
2は、投票実行部203
12からの投票が終わった旨の知らせを受けて、最も投票数の多い投票角度[N]を最大得票角度として探索する(ステップS108)。すなわち、投票箱[N]のうち最も投票された画素値の和(投票数)が大きい投票箱[N]に対応する投票角度[N]を最大得票角度とし、この最大得票角度を現在の針の角度(針の角度の中央値)として決定する。
【0034】
図5に示した例では、
図6に示すように、投票箱[359]では投票数が「50」、投票箱[0]では投票数が「250」、投票箱[1]では投票数が「505」、投票箱[2]では投票数が「655」、投票箱[3]では投票数が「455」、投票箱[4]では投票数が「200」とされ、投票箱[2]の投票数が最大となる。このため、投票箱[2]に対応する投票角度[2]が、すなわちN=2゜が現在の針の角度として決定される。
【0035】
この角度決定部203
2で決定された現在の針の角度は指示値変換部204へ送られる。指示値変換部204は、角度決定部203
2から送られてきた現在の針の角度を針が指し示す指示値に変換する(ステップS109)。
【0036】
この場合、指示値変換部204では、角度レンジや指示値レンジの設定から、現在の針の角度とその時の針の指示値を対応させる。あるいは、単位回転角度当たりの指示値量を計算し、この単位回転角度当たりの指示値量から現在の針の指示値を計算する。
【0037】
指示値変換部204で求められた指示値は外部装置300へ送られる。外部装置300は、通信部301と記憶部302とを備えており、指示値変換部204からの指示値すなわちアナログメータ指示値自動読み取り装置200で自動的に読み取られた針の指示値を通信部301で受信し、記憶部302に記憶させる。これにより、記憶部302から時系列データとして、針の指示値を読み出すことが可能となる。
【0038】
この方法のメリットは多少のノイズと欠損を許容するということである。
例えば、
図6に示した例において、ノイズにより投票角度[90]など針が乗っていない位置で投票が加えられたとする。この場合、その位置での投票数は最大とならないので、その位置を現在の針の角度として誤認識することはない。
【0039】
また、
図7に示すように、グレースケール画像における針の上に画素値の欠損があったとする。この例では、投票角度[2]における画素値に欠損がある。この場合、投票角度[2]における画素値が投票されなくても、隣りの投票角度[1],[3]の画素値(交点P
1,P
2の画素値)が「200」,「200」であるため、投票箱[2]に投票角度[1]での画素値「200」と投票角度[3]での画素値「200」とが投票され、その投票数が「400」となり(
図8参照)、現在の針の角度がN=2゜として正しく決定される。
【0040】
このように、本実施の形態では、針の上にノイズが生じても、許容できるアルゴリズムとなる。すなわち、針のブレなどによって画素値に欠損が生じたりしても、針の角度の中央値を現在の針の角度として求め、正しい指示値を読み取ることができるようになる。
【0041】
なお、上述した実施の形態では、グレースケール画像における針と交差する円をC1の1つとしたが、C1と同様の円を複数用意し、この複数の円と投票角度[N]との交点(複数の円と投票角度[N]を表現する針の支点を起点とする半直線との交点)における画素値を取得し、この取得した画素値を投票箱[N]および両隣の投票箱[N−1]、[N+1]へ投票するようにしてもよい。これにより,指示値の読み取り精度を上げることができるようになる。
図9に、グレースケール画像における針1と交差する支点Oを中心とする円として、複数の同心円C1,C2,C3を設けた例を示す。
【0042】
また、上述した実施の形態では、円C1と投票角度[N]との交点P
Nにおける画素値を取得し、この取得した画素値を投票箱[N]および両隣の投票箱[N−1]、[N+1]に投票するようにしたが、投票する範囲をさらに広げるようにしてもよい。
【0043】
グレースケール画像において、針の上で多峰性の分布になった場合、つまり「針の太さ(幅)が太すぎる」かつ「針の濃淡がノイズにより中央の方が薄い」と、針の中央値を推定できないという問題が生じる。この問題は、投票する範囲をさらに広げることによって、解決することが可能となる。
【0044】
すなわち、グレースケール画像における針の太さ(ピクセル)が既知だとする。このとき、針の太さの分、各角度の投票において、投票する範囲を広げると、より針の中央値を推定し易くなる。
【0045】
例えば、針の太さが7ピクセルのとき、両隣の投票箱に投票する方式の場合、ノイズにより針の中央の画素値が薄いような場合、
図10に示すように、うまく針の中央値を推定できない。
【0046】
ここで、針の太さが7ピクセルとのときは、対象のピクセル自身(交点P
N)から−3〜+3までの投票箱[N−3]、[N−2]、[N−1]、[N+1]、[N+2]、[N+3]を隣接する投票箱とし、この隣接する投票箱に自身の投票箱[N]への画素値と同じ画素値を投票する。
【0047】
すると、
図11に示すように、針の中央値を推定することができる。これは、投票する範囲を針の太さに適した範囲にすることにより、針上の全ての画素値が中央の投票箱に投票されたためである。
【0048】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…針、2…盤面、3…目盛、100…アナログメータ、200…アナログメータ指示値自動読み取り装置、201…撮影部、202…前処理部、203…投票アルゴリズム部、203
1…投票部、203
11…投票箱生成部、203
12…投票実行部、203
2…角度決定部、204…指示値変換部、C1,C2,C3…同心円、O…支点、P
0〜P
6…交点。