特許第6927866号(P6927866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6927866保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927866
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20210823BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20210823BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210823BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20210823BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210823BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J4/02
   C09J7/38
【請求項の数】7
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-231123(P2017-231123)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-99664(P2019-99664A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】吉原 悠
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】竹口 港
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202692(JP,A)
【文献】 特開2017−128636(JP,A)
【文献】 特開2014−144636(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/191815(WO,A1)
【文献】 特開2019−035066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
架橋剤(B)と
分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)と、
帯電防止剤(D)と、
光重合開始剤(E)と、
を含み、
前記カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が、前記樹脂(A)の全構成単位に対して、0.3質量%〜3質量%である、
保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記シリコーン化合物(C)の含有量は、前記樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜2.5質量部である、請求項1に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記シリコーン化合物(C)は、下記構造式(1)で表される構造を含む、請求項1又は請求項2に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【化1】

[構造式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、rは1〜100の整数を表し、bは1〜100の整数を表し、Xは重合性官能基を含む1価の有機基を表す。]
【請求項4】
前記帯電防止剤(D)は、アルカリ金属塩又は有機塩である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
更に、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
光学部材に用いられる、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
保護フィルムは、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)型表示装置などの表示装置に用いられる光学部材等を保護するために、広く用いられている。
保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。そのため、保護フィルムには、剥離後に光学部材(被着体)の表面を汚染しないこと(耐汚染性)が求められる。
【0003】
また、保護フィルムを光学部材に代表される被着体から剥離する際に、静電気が発生すると、被着体にほこりなどが付着したり、液晶表示装置の回路が破壊されたりする不具合が生じるため、保護フィルムには、剥離時に発生する静電気を防止できる性質(帯電防止性)が求められる。
【0004】
容易に剥離することができ、且つ、被着体の汚染が少ない粘着フィルムを形成可能な粘着剤組成物として、例えば、酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体と、反応性基を有するジメチルポリシロキサン化合物と、架橋剤とを含む粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)
帯電防止性に優れ、被保護体への汚染性が低減された粘着剤組成物として、アルカリ金属塩を含み、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物15重量%〜100重量%をモノマー成分として使用した粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、アルキレンオキシ基とビニル基とを有するシリコーン化合物を、可視又は紫外の放射線で硬化させる粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−160907号公報
【特許文献2】特開2005−314579号公報
【特許文献3】特表平11−504370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、保護フィルムに対して、被着体の汚染防止に対する要求が向上している。発明者らが特許文献1〜3に記載の粘着剤組成物について検討したところ、当該粘着剤組成物に対して、更なる耐汚染性の改良が求められている。
耐汚染性を更に向上させる為には、例えば、ジメチルポリシロキサン化合物等の帯電防止助剤及び帯電防止剤の添加量を減らすことが考えられる。しかしながら、単に帯電防止助剤又は帯電防止剤の添加量を減らした場合、帯電防止性が低下する傾向があるため、保護フィルムを剥離除去した際に、静電気が発生しやすくなり、液晶表示装置等の不具合が生じる可能性がある。そのため、従来の粘着剤組成物では、耐汚染性と帯電防止性との両立を高いレベルで維持することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐汚染性及び帯電防止性に優れる保護フィルム用粘着剤組成物並びに保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1>少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と、
架橋剤(B)と
分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)と、
帯電防止剤(D)と、
光重合開始剤(E)と、
を含む、保護フィルム用粘着剤組成物。
<2> 前記シリコーン化合物(C)の含有量は、前記樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜2.5質量部である、<1>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<3> 前記シリコーン化合物(C)は、下記構造式(1)で表される構造を含む、<1>又は<2>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
構造式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、rは1〜100の整数を表し、bは1〜100の整数を表し、Xは重合性官能基を含む1価の有機基を表す。
【0011】
<4> 前記帯電防止剤(D)は、アルカリ金属塩又は有機塩である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<5> 更に、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<6> 光学部材に用いられる、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐汚染性及び帯電防止性に優れる保護フィルム用粘着剤組成物並びに保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の粘着剤組成物について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値範囲における「〜」は、「〜」の前後の数値を含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂又は(メタ)アクリル系オリゴマーとは、これを構成するモノマーのうち少なくとも主成分であるモノマーが(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが重合して形成された樹脂又はオリゴマーを意味する。
(メタ)アクリル系樹脂又は (メタ)アクリル系オリゴマーにおける主成分とは、樹脂又はオリゴマーを形成するモノマー成分の中で最も含有率(質量%)が多いことを意味する。例えば、(メタ)アクリル系樹脂の場合、主成分となる(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上であることをいう。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味する。
【0015】
≪保護フィルム用粘着剤組成物≫
本発明の保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と、
架橋剤(B)と、
分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)(以下、「特定シリコーン化合物(C)」ともいう。)と、
帯電防止剤(D)と、
光重合開始剤(E)と、を少なくとも含む。
【0016】
本発明の粘着剤組成物は上記構成を有することで、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は耐汚染性及び帯電防止性に優れる。この理由は、明らかではないが、以下のように推測される。
【0017】
一般に、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物は帯電防止助剤として作用することが知られている。帯電防止剤と、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、を含む粘着剤組成物を基材上に塗工して形成された粘着剤層は、塗工直後、シリコーン化合物中のアルキレンオキシド構造が帯電防止剤に配位した状態で粘着剤層の表面付近に局在する。そのため、粘着剤組成物に含まれる帯電防止剤が少量であっても、帯電防止性が発揮されやすい。
一方、シリコーン化合物は粘着剤層の表面付近に局在しやすいので、保護フィルムを被着体に貼り付けた際に、シリコーン化合物が被着体の表面に転着して、被着体を汚染する要因の一つとなりやすいことが知られている。
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と、架橋剤(B)と、特定シリコーン化合物(C)と、帯電防止剤(D)と、光重合開始剤(E)と、を少なくとも含む。
本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層では、表面付近に、特定シリコーン化合物(C)が局在している。このとき、例えば、紫外光等の活性光線を照射すると、光重合開始剤(E)が開裂してラジカルが発生し、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基が重合反応し、特定シリコーン化合物(C)の重合体が形成される。特定シリコーン化合物(C)の重合体は、分子量が大きくなっているため、架橋性官能基を有する樹脂(A)と適度に絡み合い、粘着剤層に固定化されると推察される。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、粘着剤組成物中に含まれる例えば、帯電防止剤(D)、帯電防止助剤(以下、「汚染成分」ともいう。)等が、被着体表面に転着することを抑制するので、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、優れた耐汚染性を発揮する。
加えて、重合した特定シリコーン化合物(C)は、アルキレンオキシド構造を有するため帯電防止剤(E)が配位し、帯電防止助剤としても機能する。このため、粘着剤組成物が含む特定シリコーン化合物(C)により、帯電防止性能がさらに改善される。
【0019】
また、特定シリコーン化合物(C)は、分子内にポリシロキサン構造を有するため、表面自由エネルギーが低くなり、少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と相溶しにくく、特定シリコーン化合物(C)は粘着剤層の表面付近に局在すると推察される。
また、樹脂(A)は架橋性官能基を有するので、この架橋性官能基と、架橋剤(B)とが、反応して、架橋構造を形成することにより、保護フィルムに適した粘着力(すなわち、凝集力)が得られる。
以上より、本発明の粘着剤組成物は、耐汚染性及び帯電防止性に優れる粘着剤層の形成に適している。
以下、本発明の粘着剤組成物に用いられる各成分の詳細について説明する。
【0020】
<樹脂(A)>
粘着剤組成物は、少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)(以下、「特定樹脂(A)」ともいう。)を含む。特定樹脂(A)は、架橋性官能基を有するので、後述の架橋剤(B)と反応して、架橋構造を形成し、保護フィルムに適した粘着力(すなわち、凝集力)を得ることが可能となる。
本明細書において「架橋性官能基」とは、架橋剤と反応して架橋剤と架橋構造を形成可能な官能基を意味する。
【0021】
特定樹脂(A)は、架橋性官能基を有する樹脂であれば特に制限はない。特定樹脂(A)としては、硬化性樹脂であっても可塑性樹脂であってもよい。
特定樹脂(A)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、特定シリコーン化合物(C)との適度な相溶しにくさ、保護フィルムに適した粘着力、及びその他各種物性を得るための設計が容易であり、かつ、透明性に優れるとの観点から、特定樹脂(A)としては、(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂は、例えばアルキル(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー成分を、重合させることにより得ることができる。
【0022】
特定樹脂(A)を構成する架橋性官能基を有するモノマーとしては、後述する架橋剤(B)と架橋構造を形成可能であれば、特に制限はない。
【0023】
特定樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂である場合、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特に制限はなく、例えば、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを単独重合して形成された樹脂であってもよく、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリロイル基を有するモノマーと、架橋性官能基を有するモノマーとの付加重合反応により形成された樹脂であってもよい。
【0024】
架橋性官能基を有するモノマーとしては、カルボキシ基、メチロール基、水酸基、グリシジル基、アミド基、アミノ基などを有するモノマーが挙げられる。
これらの中でも、後述する架橋剤(B)との反応性の観点から、架橋性官能基としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方であることがより好ましい。
架橋性官能基を有するモノマーは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂は、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を2種以上含有することが好ましく、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位と水酸基を有するモノマーに由来する構成単位とを含有することがより好ましい。
【0026】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
カルボキシ基を有するモノマーは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0027】
後述の架橋剤(B)との反応性の観点から、カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
【0028】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート及び3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
後述の架橋剤(B)との反応性の観点から、水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0030】
架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、特定樹脂(A)の全構成単位に対して0.1質量%〜10質量%であることが好ましい。
架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が、0.1質量%〜10質量%であると、後述する架橋剤(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率としては、0.5質量%〜8質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0031】
特定樹脂(A)が、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位として、カルボキシ基を有するモノマーを含む場合、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、特定樹脂(A)の全構成単位に対して、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が0.1質量%〜10質量%であると、後述する架橋剤(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、0.2質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
【0032】
特定樹脂(A)が、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位として、水酸基を有するモノマーを有する場合、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、特定樹脂(A)の全構成単位に対して、0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。
水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が0.5質量%〜10質量%であると、後述する架橋剤(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、1質量%〜9質量%であることがより好ましく、2質量%〜8質量%であることが更に好ましい。
【0033】
特定樹脂(A)は、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位に加えて、更に、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含んでいてもよい。
特定樹脂(A)が、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートとしては、無置換のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、その種類は特に制限されない。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1〜18の範囲であることが好ましく、1〜12の範囲であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が上記の範囲内であると、保護フィルムに適した粘着力を保つ傾向がある。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0035】
保護フィルムに適した粘着力の観点から、アルキル(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0036】
被着体に適した粘着力の観点から、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、特定樹脂(A)の全構成単位に対して、70.0質量%〜99.99質量%であることが好ましく、85.0質量%〜99.9質量%であることがより好ましく、80.0質量%〜99.0質量%であることが更に好ましい。
【0037】
特定樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂である場合、本発明の効果が発揮される範囲内において、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外のその他のモノマーに由来する構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでもいてもよい。その他の構成単位を構成するモノマーは、架橋性官能基を有するモノマーと共重合できるものであれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
その他の構成単位を構成するモノマーとしては、例えば、多官能アクリル系モノマー、芳香族モノビニルモノマーが挙げられる。
【0039】
多官能アクリル系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
芳香族モノビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエンが挙げられる。
【0041】
特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)としては、10万〜190万であることが好ましい。特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、本発明の保護フィルム用粘着剤組成物から形成された粘着層は、保護フィルムに適した粘着力がより発現しやすい傾向がある。
上記観点から、特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)としては、30万〜180万であることがより好ましく、40万〜150万であることが更に好ましく、40万〜130万であることが特に好ましく、40万〜100万であることが最も好ましい。
【0042】
特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)特定樹脂(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定樹脂(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定樹脂(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム :TSK−GEL GMHXL 使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0043】
粘着剤組成物における特定樹脂(A)の含有率は、目的に応じて適宜選択することができる。特定樹脂(A)の含有率としては、粘着剤組成物の固形分総質量中に、80質量%〜99質量%であることが好ましく、85質量%〜99質量%であることがより好ましく、90質量%〜98質量%であることが更に好ましい。
なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶媒などの揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0044】
<架橋剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含む。架橋剤(B)は、特定樹脂(A)中の架橋性官能基と反応して架橋構造を形成する。これにより、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層に適度な硬さを付与することが可能となる。また、保護フィルムとして必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を保持させることが可能となる。
【0045】
架橋剤(B)としては、特定樹脂(A)中の架橋性官能基と反応可能であれば特に制限はなく、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属キレート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、特定樹脂(A)との反応性の観点から、架橋剤(B)としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤又は金属キレート化合物であることが好ましく、イソシアネート系架橋剤であることがより好ましい。
架橋剤(B)は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0046】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0047】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、「TETRAD−C」、「TETRAD−X」〔三菱瓦斯化学(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0048】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートに代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物等の2官能以上のポリイソシアネート化合物、並びに、これらのポリイソシアネート化合物のビュレット体、2量体(例えば、ウレトジオン変性体)、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)又は5量体、並びにこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、特定樹脂(A)の架橋性官能基との反応性の観点から、架橋剤(B)としては、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物の2量体、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのアダクト体、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を含む3量体又は5量体、又は、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のビュレット体などに由来するポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
更に、反応性に優れ架橋密度を高めることができ、かつ、特定樹脂(A)との相溶性に優れる観点から、架橋剤(B)としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体及びイソホロンジイソシアネートの少なくとも一方であることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体であることがより好ましい。
【0050】
架橋剤(B)は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネートL」、「コロネート2031」、「コロネート2030」、「コロネート2037」、「コロネート2234」、「コロネート2785」、「コロネートT−80」、「アクアネート200」、及び「アクアネート210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュールN−3300」、「デスモジュールN−3400」、及び「スミジュールN−75」、「デスモジュールI」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、及び「デュラネートTSE−100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート500」、「タケネート600」、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」及び「MT−オレスターNP1200」〔以上、三井化学(株)製〕の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0051】
架橋剤(B)(2種以上を用いる場合には総含有量)の含有量としては、特定樹脂(A)100質量部に対して0.5質量部〜8.0質量部であることが好ましく、1.0質量部〜7.0質量部であることがより好ましく、3.0質量部〜6.0質量部であることが更に好ましい。
架橋剤(B)の含有量が上記範囲内であると、被着体からの剥がれをより抑制し、かつ、保護フィルムの用途により適した粘着力を保つ傾向がある。
【0052】
<特定シリコーン化合物(C)>
粘着剤組成物は、分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)(特定シリコーン化合物(C))を含む。
例えば、紫外光等の活性光線を照射すると、後述の光重合開始剤(E)が開裂しラジカルを発生させて、これにより特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基を重合反応させて、特定シリコーン化合物(C)の重合体となる。特定シリコーン化合物(C)の重合体は、重合前と比べて分子量が大きくなるので、特定樹脂(A)と適度に絡み合うことで粘着剤層に固定化されると推察される。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、被着体表面への特定シリコーン化合物(C)の転着が抑制される。
そのため、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は優れた耐汚染性を発揮する。
【0053】
また、特定シリコーン化合物(C)は、特定樹脂(A)と相溶しにくく、粘着剤層の表面付近に局在しやすい。さらに、特定シリコーン化合物(C)は、分子内にアルキレンオキシド構造を有するので、帯電防止剤(E)と配位した状態で粘着剤層の表面付近に局在する。このように、特定シリコーン化合物(C)は帯電防止助剤として機能するため、粘着剤組成物は、少量の帯電防止剤を用いた場合であっても優れた帯電防止性能を発揮することが可能になる。
【0054】
特定シリコーン化合物(C)は、分子内に反応性基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、重合性官能基を有する化合物(以下、「重合性官能基含有化合物」ともいう。)と、の反応(以下、「プレ反応」ともいう。)により得ることができる。
【0055】
アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物は、シリコーン化合物の主鎖にアルキレンオキシド構造がグラフト状に結合した化合物であってもよく、アルキレンオキシド構造がブロック状又は異なるアルキレンオキシド構造がランダム状に結合した化合物であってもよい。
なお、本明細書において、シリコーン化合物の主鎖とは、シロキサン基(−Si−O−)が連結したポリシロキサン構造において、最も多くケイ素原子が連続する鎖を意味する。
プレ反応に用いるシリコーン化合物中のポリシロキサン構造に含まれるケイ素原子の数は、1〜100の範囲であることが好ましい。
【0056】
アルキレンオキシドは、後述の反応性基を有するアルキレンオキシドであってもよい。
【0057】
プレ反応に用いるシリコーン化合物が有する反応性基としては、水酸基、カルボキシ基、置換又は無置換のアミド基、置換又は無置換のアミノ基、エポキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
これらの中でも、後述するプレ反応に用いる重合性官能基含有化合物が、例えば、イソシアネート(NCO)基等を有する場合、反応が促進されやすい観点から、反応性基としては、水酸基であることが好ましい。
【0058】
プレ反応に用いるシリコーン化合物において、反応性基が導入される部位は、特に制限はなく、シリコーン化合物の主鎖の両末端、片末端又は側鎖の何れに導入されていてもよい。
ここで、片末端とは、シリコーン化合物の前記主鎖の一方の末端を意味する。両末端とは、例えば、シロキサン基の繰り返し単位を有する分子鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の前記主鎖の両方の末端を意味する。
【0059】
優れた帯電防止性を示し、かつ、被着体に対する汚染を抑制する点から、プレ反応に用いるシリコーン化合物としては、アルキレンオキシド構造と、アルキレンオキシド構造の末端に水酸基が結合した構造と、を含有するシリコーン化合物(以下、「特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物」ともいう。)であることが好ましい。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、アルキレンオキシド構造の末端にヒドロキシ基が結合した構造を有すると、優れた耐汚染性をさらに発揮することが可能となる。
【0060】
帯電防止性を付与し、かつ、被着体に対する汚染性を低くする観点から、プレ反応に用いるシリコーン化合物としては、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位と、アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位と、を含むポリシロキサン化合物であることが好ましい。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1であることがより好ましい。
またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の炭素数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の含有数は、1〜100であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましい。
【0061】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位とを含む場合、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位の含有数は100以下であることが好ましく、1〜80であることがより好ましい。またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位の含有数は2〜100であることが好ましく、2〜80であることがより好ましい。
【0062】
プレ反応に用いるシリコーン化合物は、帯電防止性を向上させ、かつ、被着体に対する汚染性を低減する観点から、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【化2】
【0064】
一般式(3)中、pはジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって0〜100の数を表す。qはポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって2〜100の数を表す。またaはエチレンオキシド構造単位の繰り返し数であって1〜100の数をそれぞれ表わす。ここで、一般式(3)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q及びaは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0065】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数aは1〜100の数であり、10〜100の数であることが好ましい。aが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止効果が更に向上する傾向がある。またaが100以下であると粘着剤層の表面付近に局在しやすくなる。
【0066】
また、ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0〜100の数であり、1〜80の数であることが好ましい。pが0以上の場合には帯電防止効果が向上する傾向がある。また、pが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
さらに、メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2〜100の数であり、2〜80の数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られやすく、帯電防止効果を向上させる傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性がより向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0067】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、「SF−8428」、「FZ−2162」、「SH−3773M」、「FZ−77」、「FZ−2104」、「FZ−2110」、「L−7001」、「L−7002」、「SH−3749」〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕が挙げられる。
【0068】
【化3】
【0069】
一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、cは10〜80の整数を表し、dはエチレンオキシド(EO)構成単位の繰り返し数であって、1以上の整数を表し、eはプロピレンオキシド(PO)構成単位の繰り返し数であって、0以上の整数を表し、さらにd+eは1〜30の整数を表す。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの順序はランダムであってもよい。
【0070】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、「BY−16−201」、「SF−8427」〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕が挙げられる。
【0071】
プレ反応に用いるシリコーン化合物の重量平均分子量としては、特に制限はなく、例えば、1,000〜20,000であることが好ましく、3,000〜15,000であることがより好ましい。
【0072】
また、プレ反応に用いるシリコーン化合物のHLB値については特に制限されない。特定樹脂(A)との相溶性、局在のしやすさ、及び保護フィルムに適した粘着力の観点から、HLB値としては、5以上16未満であることが好ましく、7〜15であることがより好ましい。
【0073】
HLB値は、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の親水性と疎水性とのバランスを示す尺度である。本明細書においては、下記式で算出されるグリフィン法の定義に従い、アルキレンオキシド構造を有するシリコーンが市販品である場合、市販品のカタログデータを優先して採用する。
HLB= {(親水性基部分の式量の総和)/(アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の分子量)}×20
【0074】
プレ反応に用いるシリコーン化合物は、市販品を用いてもよい。また、プレ反応に用いるシリコーン化合物は、水素化ケイ素を有するジメチルポリシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリエチレンオキシド鎖を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフト化させることによって得てもよい。
【0075】
プレ反応に用いる重合性官能基含有化合物としては、重合性官能基を有し、かつ、プレ反応に用いるシリコーン化合物と反応可能な化合物であれば、特に制限はない。
【0076】
重合性官能基含有化合物は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する多官能化合物であってもよい。
【0077】
重合性官能基としては、ラジカル重合し得る官能基であれば特に制限はない。ラジカル重合し得る官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリール基等が挙げられる。
これらの中でも、ラジカル重合の反応性の観点から、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はアリール基であることが好ましく、特定シリコーン化合物(C)の調製のし易さの観点から(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
【0078】
1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物が挙げられる。
【0079】
(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物の具体例としては、「カレンズMOI(登録商標)」、「カレンズAOI(登録商標)」及び「カレンズMOI−EG(登録商標)」等〔以上、昭和電工(株)製〕が挙げられる。
【0080】
重合性官能基含有化合物が(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物である場合、重合性官能基含有化合物としては、前記架橋剤(B)と異なるイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0081】
プレ反応に用いる重合性官能基含有化合物は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0082】
特定シリコーン化合物(C)は、下記構造式(1)で表される構造を含むことが好ましい。
【0083】
【化4】
【0084】
構造式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、rは1〜100の整数を表し、bは1〜100の整数を表し、Xは重合性官能基を含む1価の有機基を表す。
【0085】
及びRで表される炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、帯電防止性の観点から、R及びRとしては、それぞれ独立に、炭素数2又は3のアルキレン基であることが好ましい。
【0086】
メチルプロピレンシロキサン構造(−Si(CH)−O−)単位の繰り返し数rは、1〜100の整数を表す。rが1以上であると、良好な導電性が得られ、帯電防止性がより向上する傾向がある。またrが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
上記観点から、rとしては、2〜80の整数であることがより好ましい。
【0087】
アルキレンオキシド構造(−RO−)単位の繰り返し数bは、1〜100の整数である。bが1以上であると良好な導電性が得られやすく、帯電防止性が更に向上する傾向がある。またbが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
上記観点から、bは、10〜100の整数であることが好ましい。
【0088】
重合性官能基としては、既述のプレ反応に用いる重合性官能基含有化合物の重合性官能基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
重合性官能基を有する1価の有機基としては、1分子中に少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する化合物から、重合性官能基を1つ除いた基が挙げられる。
【0089】
重合反応の反応性の観点から、重合性官能基を有する1価の有機基としては、(メタ)アクリロイル基を含む1価の有機基であることが好ましく、末端に(メタ)アクリロイル基を含む1価の有機基であることが更に好ましい。
(メタ)アクリロイル基を含む1価の有機基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた基等が挙げられる。
【0090】
(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた基としては、例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリラート及び1,1−ビスアクリロイルオキシメチル(エチルイソシアナート)から、イソシアネート基を除いた基等が挙げられる。
【0091】
特定シリコーン化合物(C)の重合時の反応性が適切であることで耐汚染性をより改善できるとの観点から、Xで表される1価の有機基としては、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた基であることが好ましい。
【0092】
上記構造式(1)で表される構造の具体例を以下に示す。なお、構造式(1)で表される構造は、以下の例示構造に限定されず、構造式(1)で表される構造に包含される構造であれば特に制限されない。
【0093】
【化5】
【0094】
耐汚染性の観点から、特定シリコーン化合物(C)としては、下記一般式(1−1)、一般式(2−1)又は、一般式(2−2)で表される化合物であることが好ましく、一般式(1−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0095】
【化6】
【0096】
一般式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、p又はqは、それぞれ独立に、0〜100の整数を表し、q及びrはそれぞれ独立に1〜100の整数を表し、aは0〜100の整数を表し、bは1〜100の整数を表す。また、Xは、重合性官能基を含む1価の有機基を表す。
ここで、一般式(1−1)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、r、a及びbは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0097】
アルキレンオキシド構造単位の繰り返し数aは1〜100の整数であり、10〜100の数であることが好ましい。aが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またaが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0098】
またジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0〜100の整数であり、1〜80の整数であることが好ましい。pが0以上の場合には帯電防止性が向上する傾向がある。
またpが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
更にメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2〜80の数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性がより向上する傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が更に向上する傾向がある。
【0099】
一般式(1−1)中、R及びR、r、b及びXは、構造式(1)中のR及びR、r、b及びXと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0100】
【化7】
【0101】
一般式(2−1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、cは10〜80の整数を表し、d及びeはアルキレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、dは1以上の整数を表し、eは0以上の整数を表し、さらにd+eは1〜30の整数を表す。アルキレンオキシド構造単位の順序はランダムであってもよい。また、Xは重合性官能基を含む1価の有機基を表す。
【0102】
一般式(2−1)、R〜Rで表される炭素数1〜4のアルキレン基としては、特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0103】
アルキレンオキシド構造単位の繰り返し数dは1〜100の整数であることが好ましく、10〜100の整数であることがより好ましい。
dが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またdが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0104】
アルキレンオキシド構造単位の繰り返し数eは1〜100の整数であることが好ましく、10〜100の整数であることがより好ましい。
eが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またeが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0105】
アルキレンオキシド構造単位の繰り返し数d及びeとの和は、1〜50の整数であることがより好ましい。
【0106】
【化8】
【0107】
一般式(2−2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、cは10〜80の整数を表し、d及びeはアルキレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、dは1以上の整数を表し、eは0以上の整数を表し、さらにd+eは1〜30の整数を表す。アルキレンオキシド構造単位の順序はランダムであってもよい。また、Xは重合性官能基を含む1価の有機基を表す。
一般式(2−2)中、R〜R、c、d、及びe並びにXは、一般式(2−1)中のR〜R、c、d、及びe並びにXと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0108】
特定シリコーン化合物(C)の具体例を以下に示す。なお、特定シリコーン化合物(C)は、以下の例示化合物に限定されず、既述の構造式(1)で表される構造を含む化合物に包含される化合物であれば特に制限されない。
【0109】
【化9】
【0110】
【化10】
【0111】
【化11】
【0112】
【化12】
【0113】
【化13】
【0114】
【化14】
【0115】
特定シリコーン化合物(C)の製造方法は特に制限されず、公知の製造方法を適用することができる。
例えば、反応容器に、分子内に反応性基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、重合性官能基含有化合物と、を所定量づつ投入し、均一に撹拌して反応(プレ反応)させることで、特定シリコーン化合物(C)を得ることができる。
【0116】
プレ反応の温度としては、40℃〜100℃であることが好ましく、45℃〜95℃であることがより好ましく、50℃〜80℃であることが更に好ましい。
【0117】
特定シリコーン化合物(C)の含有率は、特定樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜5質量部であることが好ましく、0.2質量部〜3質量部であることが好ましく、0.25質量部〜2.5質量部であることがより好ましく、0.3質量部〜2質量部であることが更に好ましい。
【0118】
ポリシロキサン構造を有する特定シリコーン化合物(C)は、特定樹脂(A)と相溶しにくく、粘着剤層の表面付近に局在しやすい。さらに、特定シリコーン化合物(C)は、分子内にアルキレンオキシド構造を有するので、帯電防止助剤として一般的に用いられるアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と同様に、帯電防止剤に配位した状態で、粘着剤層の表面付近に局在しやすい。そのため、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、少量の帯電防止剤でも優れた帯電防止性能を発揮する。
特定シリコーン化合物(C)の含有量が0.1質量部以上であると、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基が重合反応により、特定シリコーン化合物(C)の重合体が形成される。特定シリコーン化合物(C)の重合体は、重合前の特定シリコーン化合物(C)と比べて分子量が大きい。そのため、特定シリコーン化合物(C)が粘着剤層の表面付近に局在にした後に、重合させることで、保護フィルムを被着体から剥離する際に、汚染成分の被着体への転着を更に抑制することができ、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は更に優れた耐汚染性を発揮する。
【0119】
<帯電防止剤(D)>
粘着剤組成物は、帯電防止剤(D)を含む。粘着剤組成物は、帯電防止剤(D)を含有することで、優れた帯電防止性能を発揮する。
帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物としては、特に制限はなく、アルカリ金属塩、有機塩などが挙げられる。
イオン解離性が高く、かつ、少量であっても優れた帯電防止性を発現しやすい点から、帯電防止剤としては、アルカリ金属塩又は有機塩であることが好ましい。
【0120】
アルカリ金属塩としては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウム(Rb)などをカチオンとする金属塩であれば特に制限されない。
例えば、Li、Na及びKからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(FSO、(CFSO、(CSO及び(CFSOからなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩を好適に用いることができる。
【0121】
中でも、アルカリ金属塩としては、帯電防止性の観点から、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩であることが好ましく、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCであることがより好ましい。
アルカリ金属塩は、単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用して使用してもよい。
【0122】
有機塩は、有機カチオンとその対イオンとを含む。有機塩には、例えば、融点が30℃以上のイオン性固体と、融点が30℃未満のイオン性液体とが含まれる。
有機塩としては、融点が30℃以上であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、汚染性が低く好ましい。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、有機基を置換基として有するアンモニウムカチオン、有機基を置換基として有するスルホニウムカチオン、有機基を置換基として有するホスホニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、帯電防止性の観点から、有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
【0123】
有機カチオンの対イオンとなるアニオン部は、特に限定されるものではなく、無機アニオン又は有機アニオンのいずれでもよい。中でも、特に、帯電防止性に優れるため、フッ素原子を含むフッ素含有アニオンであることが好ましく、更にはヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF)であることが好ましい。
【0124】
有機塩の例としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジニウム塩、アルキルホスホニウム塩などが好適に挙げられる。中でも、有機塩としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩であることが好ましく、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩であることがより好ましい。
【0125】
帯電防止剤(D)の含有量としては、特定樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部〜0.5質量部であることが好ましく、0.1質量部〜0.3質量部であることがより好ましい。
帯電防止剤(D)の含有量が特定樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。帯電防止剤(D)の含有量が0.5質量部以下であると、帯電防止剤(D)の含有量に対する帯電防止効果の効率がより高くなり、被着体への耐汚染性がより改善できる傾向がある。
【0126】
<光重合開始剤(E)>
粘着剤組成物は、光重合開始剤(E)を含む。光重合開始剤(E)は、紫外光、可視光等の活性光線を受けて開裂し、ラジカルを発生させて、重合性官能基の重合を開始させる。重合反応により特定シリコーン化合物(C)は重合体となり、重合前の特定シリコーン化合物(C)と比べて分子量が大きいため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、被着体へのシリコーン化合物の転着が抑制される。
また、特定シリコーン化合物(C)が2つ以上の重合性官能基を有する場合、特定シリコーン化合物(C)は光重合開始剤(E)と反応して、三次元の重合体を形成し、被着体へのシリコーン化合物の転着を更に抑制することができる。
【0127】
光重合開始剤(E)としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾイン誘導体化合物、ベンジルケタール化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物、チオキサントン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0128】
光重合開始剤(E)としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASFジャパン(株))、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(商品名:エサキュアONE、ランバルティ(株))、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、BASFジャパン(株))、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア127、BASFジャパン(株))、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(商品名:イルガキュア651、BASFジャパン(株))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:ダロキュア1173、BASFジャパン(株))、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、BASFジャパン(株))、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:ルシリンTPO、BASFジャパン(株))、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASFジャパン(株))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0129】
これらの中でも、重合反応の反応性の観点から、光重合開始剤(E)としては、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物であることが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又はビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドであることが好ましい。
【0130】
光重合開始剤(E)の含有量としては、粘着剤組成物100質量部に対して、0.01質量部〜3質量部であることが好ましく、0.15質量部〜1質量部であることがより好ましい。
光重合開始剤(E)の含有量が上記範囲であると、特定シリコーン化合物(C)との重合反応効率がよく、被着体の汚染性を更に抑制することができる。
【0131】
<多官能(メタ)アクリルモノマー(F)>
粘着剤組成物は、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を更に含んでいてもよい。
粘着剤組成物が、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む場合、重合反応により、特定シリコーン化合物(C)と多官能(メタ)アクリルモノマー(F)との三次元の重合体が得られる。粘着剤組成物が多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む場合、特定シリコーン化合物(C)のみを含む場合と比べて重合性官能基の量が増える。そのため、重合反応効率がよくなり、被着体へのシリコーン化合物の転着を更に抑制することができる。
【0132】
多官能(メタ)アクリルモノマー(F)としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリラート、1,1−ビスアクリロイルオキシメチル(エチルイソシアナート)等(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0133】
多官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、「ライトアクリレート3EG−A」、「ライトアクリレートPTMGA−250」、「ライトアクリレートNP−A」、「ライトアクリレートPE−4A」、「ライトアクリレートTMP−A」、「ライトアクリレートDPE−6A」等〔以上、共栄社化学(株)製〕、「ビスコート#335HP」等〔以上、大阪有機工業(株)製〕が挙げられる。
【0134】
粘着剤組成物が多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む場合、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有率としては、粘着剤組成物100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部であることが好ましく、2質量部〜8質量部であることがより好ましい。
多官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有率が上記範囲であると、特定シリコーン化合物(C)との重合反応効率がよく、被着体の汚染性を更に抑制することができる。
【0135】
(他のシリコーン化合物)
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、特定シリコーン化合物(C)以外のシリコーン化合物(以下、「他のシリコーン化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。粘着剤組成物が、他のシリコーン化合物を含む場合、帯電防止性をより向上させることが可能である。
他のシリコーン化合物は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0136】
他のシリコーン化合物としては、例えば、プレ反応に用いるアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物が挙げられる。アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物としては、既述のアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の具体例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0137】
粘着剤組成物が他のシリコーン化合物を含有する場合、他のシリコーン化合物の含有量としては、特定樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部〜1質量部であることが好ましく、0.05質量部〜0.7質量部であることがより好ましく、0.05質量部〜0.3質量部であることが更に好ましい。
他のシリコーン化合物の含有量が0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。また他のシリコーン化合物の含有量が1質量部以下であることで、被着体への汚染(クモリ)の発生が抑制され、また、特定樹脂(A)との相溶性が低下して発生する白濁をより抑制することが可能となる。
【0138】
((メタ)アクリル系オリゴマー)
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系オリゴマーを更に含んでいてもよい。
より優れた帯電防止性及び被着体に対する耐汚染性を発揮する観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、アルキレンオキシド構造単位を含む(メタ)アクリル系オリゴマーであることが好ましい。
【0139】
(メタ)アクリル系オリゴマーが、アルキレンオキシド構造単位を含み、かつ、分子量が特定樹脂(A)よりも小さいことで、粘着剤組成物中で比較的容易に移動することができると推察される。これにより、粘着剤組成物の表面抵抗値がより効果的に低下し、より優れた帯電防止性を付与することが可能となる。
【0140】
アルキレンオキシド構造単位に含まれるアルキレンオキシ基としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であることが好ましく、炭素数2〜3のアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
【0141】
アルキレンオキシ基の含有数は、目的等に応じて適宜選択することができる。アルキレンオキシ基の含有数は、帯電防止性の観点から、20以上であることが好ましく、20〜100であることがより好ましく、20〜50であることが更に好ましい。アルキレンオキシ基の含有数が20以上であることで、既述の帯電防止剤(D)との組み合わせによって、より顕著な帯電防止性を発揮する傾向がある。
なお、アルキレンオキシ基の含有数は、(メタ)アクリル系オリゴマーにアルキレンオキシ基を有する構成単位が2種以上含まれる場合、含有数の平均値である有理数となる。
【0142】
アルキレンオキシ基の末端部は、ヒドロキシ基であっても、アルコキシ基であってもよく、帯電防止性の観点から、アルコキシ基であることが好ましい。ポリアルキレンオキシ基の末端部がアルコキシ基の場合、アルコキシ基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
【0143】
アルキレンオキシ基に由来する構成単位は、アルキレンオキシ基及びビニル基を有するモノマーに由来するものであっても、アルキレンオキシ基を有さない構成単位に重合反応でアルキレンオキシ基を導入したものであってもよい。
生産性の観点から、アルキレンオキシ基に由来する構成単位は、アルキレンオキシ基及びビニル基を有するモノマーに由来するものが好ましい。
【0144】
アルキレンオキシ基及びビニル基を有するモノマーとして具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート等を挙げられる。
中でもメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びプロピレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0145】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシ基に由来する構成単位を1種単独又は2種以上を併用して含んでいてもよい。
【0146】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基に由来する構成単位の含有率としては、帯電防止性の観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーの全質量に対して、1質量%〜50質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましく、5質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0147】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシ基に由来する構成単位に加えて、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を少なくとも1種含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーがカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含むと、剥離性の向上に寄与する傾向がある。
カルボキシ基を有するモノマーの種類としては、特に制限されず、既述の(メタ)アクリル系樹脂におけるカルボキシ基を有するモノマーが挙げられる。剥離性の観点から、カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0148】
カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率としては、汚染性をより低くする観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜7.0質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜5.0質量%であることが更に好ましい。
【0149】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を更に含んでいてもよい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する傾向がある。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、既述の特定樹脂(A)におけるアルキル(メタ)アクリレートと同義であり、具体例も同様である。
粘着剤層を高温高湿環境下に曝した場合に、高い耐久性が発揮される点で、アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、分岐鎖を有する炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、2−エチルヘキシルメタクリレートであることが更に好ましい。
【0150】
耐久性の観点から、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、(メタ)アクリル系オリゴマー全構成単位に対して65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、耐久性の点で、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0151】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びアルキレンオキシ基を有するモノマーに由来する構成単位以外の構成単位(その他の構成単位)を含んでもよい。
この場合、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占める、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びアルキレンオキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の合計の含有量としては、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0152】
その他の構成単位を構成するモノマーとしては、既述の水酸基を有するモノマー、環状基を有するモノマーが挙げられ、具体例及び好ましい範囲も同様である。
【0153】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、特定樹脂(A)の重量平均分子量に比べて小さければ、特に制限はない。特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、3,000〜60,000であることが好ましく、3,000〜20,000であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が3,000以上であると、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また、重量平均分子量(Mw)が60,000以下であると、帯電防止性がより向上する傾向がある。
【0154】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、既述の特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様にして測定することができる。
【0155】
(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量としては、保護フィルムとして必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を保持させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部〜2.0質量部であることが好ましく、0.1質量部〜1.5質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜1.2質量部であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーの含有率が0.05質量部〜2.0質量部であると、保護フィルムに必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を更に保持することが可能となる。
【0156】
<その他の成分>
粘着剤組成物は、特定樹脂(A)、架橋剤(B)、特定シリコーン化合物(C)、帯電防止剤(D)、光重合開始剤(E)、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)及び(メタ)アクリル系オリゴマーの他に、必要に応じて、特定樹脂(A)及び(メタ)アクリル系オリゴマー以外の樹脂、架橋触媒、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。
【0157】
架橋触媒としては、ブロック化イソシアネート化合物のブロック化剤の解離を促進する触媒、解離により再生したイソシアネート基と他の官能基との反応を促進する触媒等が挙げられる。
【0158】
架橋触媒としては、特に制限なく公知の触媒を用いることができる。例えば、有機金属化合物、第3級アミン化合物、金属塩等が挙げられ、第3級アミン化合物であることが好ましい。
有機金属化合物の具体的な例としては、ジオクチル錫ジラウレート、1,3−ジアセトキシテトラブチルスタノキサンなどが挙げられる。
第3級アミン化合物の具体例としては、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどの三級アミンが挙げられる。
【0159】
[用途]
本発明の粘着剤組成物は、光学部材に用いることが好ましい。本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に優れるため、光学部材の保護フィルムに好適に用いることができる。
また、ステンレスやアルミ等金属板、プラスチック板、ラミネート鋼板、化粧シート、
各種建材、及びボディ、内装等の自動車関連部材用の保護フィルムに好適に用いることができる。
【0160】
[保護フィルム]
本発明の保護フィルムは、保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、基材と、を少なくとも有する。
本明細書において、保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物は、特定樹脂(A)の架橋物と、特定シリコーン化合物(C)の重合体と、を少なくとも有する態様を含む。
保護フィルムが有する粘着剤層は、例えば光学部材に対して、優れた耐汚染性及び帯電防止性を発揮する。
【0161】
保護フィルムに用いられる基材としては、基材上に粘着剤層が形成可能であれば特に制限されない。
透視による被着体(例えば、光学部材)の検査及び管理の観点から、基材としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂などから選択される樹脂を用いたフィルムが挙げられる。
中でも、基材としては、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂を用いたフィルムが好ましく、実用性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いたフィルムであることがより好ましい。
【0162】
基材の厚さとしては、一般には500μm以下とすることができ、好ましくは5μm〜300μmであり、より好ましくは10μm〜200μmである。
【0163】
基材の片面又は両面には、帯電防止層を設けてもよい。また、基材の粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層と基材との密着性を向上させるためにコロナ放電処理等が施されていてもよい。
【0164】
基材上には、粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層が設けられている。
粘着剤層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を、そのままで又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを基材に塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。
また、先ずシリコーン樹脂などにより離型処理が施された紙、ポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離フィルムの上に粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、次いで、剥離フィルムの粘着剤層側を基材に圧着して、粘着剤層を基材に転写させる方法を採用することもできる。
【0165】
本発明の保護フィルムは、粘着剤層を形成した後に、活性光線を照射して作製された保護フィルムであることが好ましい。
活性光線を照射することで、光重合開始剤(E)が開裂しラジカルを発生させて、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基を重合反応させる。重合反応により、特定シリコーン化合物(C)を含む重合体が得られるので、保護フィルムを被着体から剥がす際にシリコーン化合物の転着を抑制することができ、耐汚染性に優れる。
【0166】
活性光線としては、少なくとも、光重合開始剤(E)が開裂しラジカルを発生させて、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基が重合反応できれば、特に制限はなく、例えば、可視光、紫外光及び電子線が挙げられる。これらの中でも、活性光線としては、可視光又は紫外光であることが好ましく、紫外光であることがより好ましい。
【0167】
活性光線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、発光ダイオード(LED)光源、エキシマレーザー発生装置等を用いることができる。
【0168】
活性光線が照射される際の露光面照度は、例えば、10mW/cm〜1000mW/cmが好ましく、より好ましくは100mW/cm〜800mW/cmであり、更に好ましくは、200mW/cm〜500mW/cmである。
【0169】
露光量は、粘着剤層の厚さ及び形状に応じて、適宜選択することができ、例えば、10mJ/cm〜1000mJ/cmであることが好ましく、より好ましくは100mJ/cm〜800mJ/cmである。
【0170】
活性光線の照射時間は、好ましくは0.01秒〜30秒であり、より好ましくは0.05秒〜20秒であり、更に好ましくは0.1秒〜10秒である。
【0171】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、保護フィルムに求められる粘着力、被着体の表面粗さなどに応じて適宜設定することができる。粘着剤層の厚さとしては、一般に1μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜50μmであり、更に好ましくは15μm〜30μm程度の厚さを例示することができる。
【0172】
すなわち、被着体に対する粘着剤層は、180°剥離(剥離速度0.3m/分)(低速剥離)における粘着力(剥離力)が0.05N/25mm以上であることが好ましく、0.06N/25mm以上であることがより好ましい。低速剥離時の粘着力が0.05N/25mm以上であること、めくれ又はずれの発生がより抑制される傾向がある。
【0173】
また、粘着力が高くなると高速剥離時の作業性が低下するので、剥離速度30m/分(高速剥離)における粘着力(剥離力)が1.5N/25mm未満であることが好ましく、1.2N/25mm未満であることがより好ましく、0.9N/25mm未満であることが更に好ましい。
【0174】
剥離時の帯電による被着体への影響を抑制する観点から、粘着剤組成物は、偏光板(商品名:SRDB31E、住友化学(株)製)に対する30m/分剥離時の剥離帯電圧の絶対値が0.9kV以下であることが好ましく、0.7kV以下であることがより好ましく、0.5kV以下であることが更に好ましい。
【0175】
また剥離の際のフィルム側の帯電を防止する観点から、粘着剤層の表面抵抗値は、4.9E+11(Ω/□)(4.9×1011Ω/□)以下であることが好ましい。
【0176】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、表面保護フィルムに求められる粘着力、被着体の表面粗さ等に応じて適宜設定することができ、一般に1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm、更に好ましくは15μm〜30μm程度の厚さを例示することができる。
【0177】
代表的な被着体である光学部材としては、画像表示装置、入力装置などの機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。光学部材の具体例としては、例えば、偏光板、AG偏光板、波長板、位相差板(1/2、1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、プリズムシート、レンズシート、拡散板等の表示装置に用いられるものが挙げられる。
【実施例】
【0178】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0179】
−特定シリコーン化合物(C)の製造−
(重合性シリコーン1)
撹拌羽根、温度計、窒素導入管及び還流冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、カレンズMOI(登録商標)(2−イソシアナトエチルメタクリレート、昭和電工(株)を6質量部、SH−3773M(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)を94質量部仕込み、30分の窒素置換後、内温を25℃に保持しながら96時間撹拌させ、メタクリロイル基とアルキレンオキシド構造とを有する重合性シリコーン1(特定シリコーン化合物(C))を得た。得られた重合性シリコーン1の組成を表1に示す。
【0180】
(重合性シリコーン2〜重合性シリコーン7)
重合性シリコーン1において、組成を表1に示すように変更したこと以外は、重合性シリコーン1の製造と同様の方法により、重合性シリコーン2〜重合性シリコーン6を調製した。なお、重合性シリコーン7は市販品である。
【0181】
【表1】
【0182】
表1中における略号は以下の通りである。なお、表1中の「−」は、該当の成分を含まないことを示す。
・SH−3773M:反応性基を有するシリコーン化合物(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)(一般式(1)で表されるポリシロキサン化合物)
・SF−8427:反応性基を有するシリコーン化合物(カルビノール変性シリコーン化合物(両末端変性)、東レ・ダウコーニング(株)製)(一般式(1)で表されるポリシロキサン化合物)
・SF−8400:反応性基を有さないシリコーン化合物(末端がアセチル基であるポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・X−22−164C:反応性基を有さないシリコーン化合物(側鎖メタクリロイル基変性(アルキレンオキシド変性なし)シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
【0183】
・MOI:2−イソシアナトエチルメタクリレート(商品名:カレンズMOI(登録商標)、昭和電工(株)製)
・AOI:2−イソシアナトエチルアクリラート(商品名:カレンズAOI(登録商標)、昭和電工(株)製)
【0184】
[製造例1]
−樹脂(A)の製造−
温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル171.0質量部、tert−ブタノール249質量部を入れた。また別の反応容器に、モノマーとしてn−ブチルアクリレート(nBA)217.8質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)360.0質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)18.0質量部、及びアクリル酸(AA)4.2質量部を入れ、混合してモノマー混合物とした。このモノマー混合物のうち、20.0質量%を反応容器中に加え、次いで反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.08質量部を添加して、撹拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りのモノマー混合物80.0質量%、並びに酢酸エチル88.0質量部、及びAIBN0.80質量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いて、さらに2時間反応させた。その後、酢酸エチル132.0質量部にtert−ブチルペルオキシピバレート0.60質量部を溶解させた溶液を、上記混合物に1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、樹脂(A)溶液を得た。得られた樹脂(A)溶液の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0185】
(製造例2〜製造例4)
製造例1において、モノマー組成を表2に示すように変更し、重合開始剤の量、重合条件等を適宜変更して重量平均分子量(Mw)を調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、樹脂(A)溶液を調製した。得られた樹脂(A)溶液の固形分の組成(質量%)及び重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0186】
【表2】
【0187】
なお、表2中の「−」は、該当の成分を含まないことを示す。
【0188】
−(メタ)アクリル系オリゴマーの製造−
温度計、撹拌羽根、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器内に、メチルエチルケトン100.0部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら還流温度まで加熱した。滴下ロートに、予め混合しておいた、n−ブチルメタクリレート(nBMA)68.0質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)20.0質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシ基の含有数:23)10部、アクリル酸(AA)2.0質量部、メチルエチルケトン100.0質量部及びアゾビスイソブチロニトリル5.0質量部の混合溶液を入れ、120分かけて還流温度の反応容器に逐次添加した。その後、240分間還流温度を維持したまま反応させ、反応を終了した。このようにして、(メタ)アクリル系オリゴマー溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液の固形分は33.0質量%であり、重量平均分子量(Mw)は7,000であった。なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0189】
(実施例1)
撹拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに製造例1で調製した樹脂(A)の溶液(固形分45%)を222.2質量部(固形分として100質量部)、上記で調製した(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液(固形分33%)を0.9質量部(固形分として0.8質量部)、帯電防止剤(D)としてLiTFS(Li(CFSO)、森田化学工業(株)製)0.25質量部、光重合開始剤(E)としてイルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン(株)製)0.18質量部、多官能モノマーとしてライトアクリレートTMP−A(トリメチロールプロパントリアクリレート、共栄社化学(株))5.0質量部を仕込み、フラスコ内の液温を25℃付近に保って4.0時間混合撹拌を行った。架橋剤(B)としてスミジュールN−3300希釈物(イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、住化コベストロウレタン(株))を12.0質量部(固形分として3.0質量部)、重合性シリコーン1を0.32質量部相当量添加し、十分に撹拌して、粘着剤組成物溶液を得た。
【0190】
<保護フィルムの作製>
上記で得られた粘着剤組成物溶液を用いて、試験用保護フィルムを作製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:帝人テトロンフィルムG2、厚み38μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の上に、乾燥後の塗工量が15g/mとなるように粘着剤組成物溶液を塗布し、100℃の条件下1分間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した。
次いで、粘着剤組成物溶液を塗布した塗布面を、別途用意したシリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ 100E−0010NO23、厚み25μm、藤森工業(株)製)の表面処理面と重ね合せて積層体とした。この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、剥離フィルム側から、高圧水銀灯を用いて照度235mW/cm、積算光量500mJ/cmの条件で紫外光を照射した。その後、23℃、50%RHの条件下で96時間養生して、試験用保護フィルムとした。
【0191】
[評価]
−耐汚染性−
(シリコーン反応率)
75mm×75mmの大きさに切断した試験用保護フィルムから、一方の離型フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面を100mm×100mmに切断した250メッシュの金網(真鍋工業(株)製)に貼り合わせた。次いで、残りの離型フィルムを剥がし、溶媒浸漬時に粘着剤が漏れでないように250メッシュの金網で包み込み、粘着剤入りの金網を準備した。この操作を繰り返して、粘着剤入りの金網を6個用意し、粘着剤の全質量を測定した。
粘着剤の全質量=粘着剤入りの金網の質量(g)−金網の質量(g)
【0192】
粘着剤入りの金網6個を酢酸エチル80gが入った容器に浸漬し、23℃環境下で3日間静置した。3日経過後、容器から粘着剤入り金網を6個全て取り出し、浸漬後の酢酸エチルを250メッシュの金網にて濾過し試料サンプルとした。
【0193】
まず試料サンプル10g〜11gを量り取り、50mlのテフロン(登録商標)製の皿に採取した後、80℃前後のホットプレート上で十分に蒸発乾固し一旦放冷した。放冷後に残留物をポリプロピレン(PP)製の時計皿に移し、1.5mlの塩酸(特級試薬、和光純薬工業(株)製)を加え、80℃前後のホットプレート上で5分程度、加熱溶解した後、再度放冷した。
再度放冷後、残溶液をポリ容器に流し入れ、パーフルオロアルコキシ(PFA)製の蒸発皿を蒸留水10mlで洗浄した後、洗浄液をポリ容器に流し入れ、残留物を測定用サンプルとした。
測定用サンプル中に含まれるケイ素(Si)原子の量は、以下の測定条件で定量した。
【0194】
<測定条件>
分析機器:誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)装置(型番:ICPS−7510型、(株)島津製作所製)
スプレーチャンバー:サイクロンチャンバー
測定位置:横方向観測
ネブライザー:同軸ネブライザー
高周波パワー:1.2kW
クーラントガス:14.0L/分
キャリアガス:アルゴンガス、0.7L/分
定量方法:検量線法により実施
検量線用サンプル濃度:0.2ppm、1.0ppm、5.0ppm(和光純薬工業(株)製 原子吸光用標準液(Si 1000ppm))
【0195】
検出されたケイ素(Si)原子の量を元に、下記計算式にてシリコーン反応率を計算した。
【0196】
シリコーン反応率(%)=(1−(A/B))×100
A:酢酸エチルへ溶出したシリコーン化合物量(ppm)=検出されたケイ素(Si)原子の量の値(ppm)−0.04(ppm)
なお、検出されたケイ素(Si)原子の量は、離型フィルムに含まれるシリコーン化合物の影響分として0.04ppmを引いた数値である。
B:粘着剤層に含まれるシリコーン化合物量(ppm)=(w×s)/e×t×1000000
w:粘着剤の全質量(g)
s:粘着剤に含まれるシリコーン化合物の割合(質量%)
e:酢酸エチル質量;80g
t:シリコーン化合物中のSi原子量(ICP−AES実測値であり、SH−3773M(側鎖ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製))のSi原子量は0.20であり、SF−8427(両末端ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製)))のSi原子量は0.45であり、SF−8400(末端がアセチル基であるポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製)))のSi原子量は0.31である。)
【0197】
実施例1におけるシリコーン反応率は、94%であり、下記の数値を用いて求めた値である。
A:0.24−0.04=0.20
B:(w×s)/e×t×1000000=3.67
w:0.51g
s:0.30/(100+0.80+0.25+0.38+0.13+3.0)
=0.002869
e:80g
t:0.20
【0198】
実施例1におけるs(粘着剤に含まれるシリコーン化合物の割合(質量%))は、シリコーン化合物の含有量0.30を有効成分の全質量104.25で除した値である。
なお、有効成分の全質量は、樹脂(A)の含有量100、(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量0.80、帯電防止剤(D)の含有量0.25、特定シリコーン化合物(C)の含有量0.38、プレ反応における未反応の重合性官能基含有化合物の含有量0.13及び架橋剤(B)の含有量3.0の和である。
【0199】
算出したシリコーン反応率は、下記の評価基準に従って耐汚染性を評価した。結果は表3に示す。
シリコーン反応率が高ければ、粘着剤組成物の耐汚染性は優れる。評価が「A」以上であれば、耐汚染性に優れると判断した。
【0200】
《評価基準》
AA:90%以上である。
A:60%〜90%未満である。
B:40%〜60%未満である。
C:40%未満である。
【0201】
−帯電防止性−
上記で作製した試験用保護フィルムの表面抵抗値を表面抵抗測定装置((株)アドバンテスト製:R12704 RESISTIVITY CHAMBER)を用いて、23℃、50%RH、印加電圧100Vの条件下で測定し、下記評価基準に従って評価した。結果は表3に示す。
表面抵抗値が小さいほど帯電防止性に優れる。なお、評価が「C」以上であれば帯電防止性があると評価した。
【0202】
《評価基準》
A:表面抵抗値が1.0×1011Ω/□未満であり、帯電防止性が非常に優れている。
B:表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上5.0×1011Ω/□未満であり、帯電防止性が優れている。
C:表面抵抗値が5.0×1011Ω/□以上1.0×1012Ω/□未満であり、帯電防止性がある。
D:表面抵抗値が1.0×1012Ω/□以上であり、帯電防止性に劣っている。
【0203】
(実施例2〜実施例22並びに比較例1、比較例2及び比較例4〜比較例7)
製造例1において、表1に示すモノマー組成に変更し、適宜開始剤量などを調整したこと以外は、製造例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして保護フィルムを作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。
【0204】
(比較例3)
比較例3では、SH−3773M(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)と、MOI(2−イソシアナトエチルメタクリレート、商品名:カレンズMOI(登録商標)、昭和電工(株)製)と、をプレ反応させずに、製造例1で調製した樹脂(A)と、架橋剤(B)、帯電防止剤(D)、光重合開始剤(E)及びその他の成分と、ともに、表1に記載の配合比率で混合し、粘着剤組成物溶液を調製した。調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして保護フィルムを作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。
【0205】
【表3】
【0206】
表3における略号は以下の通りである。なお、表3中の「−」は、該当の成分を含まないこと又は判定できないことを示し、「ND]は検出できないことを示す。
【0207】
・IRG184:α−ヒドロキシアセトフェノン化合物(化学名:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン(株)製)
・IRG819:アシルホスフィンオキサイド化合物(化学名:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・N−3300:イソシアネート化合物(化学名:イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、商品名:スミジュールN−3300、住化コベストロウレタン(株)製、固形分100質量%)
・IPDI:イソシアネート化合物(化学名:イソホロンジイソシアネート、商品名:デスモジュールI、住化コベストロウレタン(株)製)
・TETRAD−X:エポキシ系架橋剤(化学名:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、三菱瓦斯化学(株)製)
・LiTFS:リチウム塩(化学名:Li(CFSO)、森田化学工業(株)製)
・MP−402:イオン性化合物(化学名:トリメチルドデシルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、第一工業製薬(株)製)
・TMP−A:トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:ライトアクリレートTMP−A、共栄社化学(株)製)
・#335HP:テトラエチレングリコールジアクリレート(商品名:ビスコート#335HP、大阪有機工業(株)製)
・SH−3773M:特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物(側鎖ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・DOBDL:架橋触媒(化学名:ジオクチル錫ジラウレート、商品名:OT−1、ADEKA(株)製、アセチルアセトンにより適宜希釈して使用)
・MOI:2−イソシアナトエチルメタクリレート(商品名:カレンズMOI(登録商標)、昭和電工(株)製)
【0208】
少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と、架橋剤(B)と、分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)と、帯電防止剤(D)と、光重合開始剤(E)と、を含む実施例1〜実施例22は、耐汚染性及び帯電防止性に優れていた。
特に、実施例1、11、12、16及び21は、耐汚染性及び帯電防止性に極めて優れていた。
【0209】
これに対して、帯電防止剤(D)を含まない比較例1は、帯電防止性に劣っていた。また、光重合開始剤(E)を含まない比較例2では、耐汚染性に劣っていた。
【0210】
シリコーン化合物の調製において、分子内に反応性基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、重合性官能基含有化合物と、をプレ反応させていない比較例3及び、重合性官能基含有化合物と反応させていないシリコーン化合物で調製した比較例4、分子内に反応性基を含まないシリコーン化合物と、重合性官能基含有化合物と、をプレ反応させて調製した比較例5は、特定シリコーン化合物(C)が生成されていないため、耐汚染性に劣っていた。
特定シリコーン化合物(C)を含まない比較例6及び、分子内に反応性基及びアルキレンオキシド構造を有しないシリコーン化合物を含む比較例7は、帯電防止剤(D)を粘着剤層の表面付近に局在させることができないため、帯電防止性に劣っていた。
【0211】
以上より、本発明の粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に優れるため、保護フィルム、特に光学部材の保護フィルムとして好適に用いることができる。