【文献】
2008年度 研究成果報告書 睡眠と自律神経活動との関連に関する研究,[online],2016年,[令和3年1月26日検索],URL,インターネット<URL:https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-19500495/19500495seika/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電子機器100の外観の一例を示す概略図である。電子機器100は、測定装置110と、推定装置120とを備える。測定装置110と推定装置120とは、ケーブル130a及び130bにより、互いに通信可能に接続されていてよい。測定装置110と推定装置120とは、ケーブル130a及び130bを介して、各種信号及び電力等を送受信できる。測定装置110と推定装置120とは、必ずしもケーブル130a及び130bにより接続されていなくてもよい。測定装置110と推定装置120とは、例えば、無線又は有線と無線との組合せにより、互いに通信可能に接続されていてもよい。
【0014】
測定装置110は、装着部111と、第1測定部112a及び第2測定部112bとを備える。測定装置110は、被検者に装着された状態で、被検者の血流に関する情報(以下、「血流情報」ともいう)を測定する。血流情報は、例えば血流量であってよい。血流情報は、血流量以外の他の情報であってもよい。血流情報は、例えば脈動血流波高又は拍出量であってよい。拍出量は、例えば心拍1拍当たりの血液の拍出量であってよい。
【0015】
測定装置110は、例えば被検者の頭部に装着可能であってよい。本明細書において、測定装置110は被検者の頭部に装着された状態で使用されるとして、以下説明を行う。
【0016】
装着部111は、被検者に対する測定装置110の装着状態を維持するための機構である。本実施形態において、装着部111は、例えば
図1に示すように、アーチ形状である。被検者は、装着部111で頭部を挟み込むことにより、測定装置110を装着し、装着状態を維持できる。装着部111は、例えば被検者の頭部の大きさに合わせて長さを調節可能な機構を有していてよい。装着部111は、例えばプラスチック等により構成されてよい。
【0017】
第1測定部112a及び第2測定部112bは、装着部111の第1端111a及び第2端111bにおいて、それぞれ第1連結部113a及び第2連結部113bを介して、装着部111に連結される。すなわち、装着部111と、第1測定部112a及び第2測定部112bと、第1連結部113a及び第2連結部113bとは、全体として連結された1つのイヤホンタイプの測定装置110として構成されている。第1連結部113aは、第1測定部112aと装着部111の第1端111aとを連結する部分に形成される。第2連結部113bは、第2測定部112bと装着部111の第2端111bとを連結する部分に形成される。
【0018】
第1測定部112a及び第2測定部112bは、被検者の血流量を測定するセンサ部を備える。センサ部の詳細については後述する。第1測定部112a及び第2測定部112bの機能は同じである。本明細書において、第1測定部112aと第2測定部112bとを区別しない場合には、これらをまとめて、測定部112と記載する。
【0019】
本実施形態において、測定部112は、被検者の耳において、血流量を測定する。測定部112は、例えば、被検者の耳甲介において、血流量を測定する。
【0020】
第1測定部112aは、例えば被検者の右耳の耳甲介において、血流量を測定する。第1測定部112aは、本体114aと、イヤピース115aと、センサ部116aとを備える。イヤピース115aは、測定装置110の装着状態において、被検者の右耳の外耳道に挿入される。イヤピース115aは、例えばシリコン等で構成される。センサ部116aは、本体114aにおいて、イヤピース115aが右耳の外耳道に挿入された状態において被検部位である右耳の耳甲介に接触する位置に設けられる。本体114aは、センサ部116aが備える測定機構(詳細については後述する)を保護するケースとしても機能する。本体114aは、例えばプラスチック等により構成されてよい。イヤピース115aは、右耳の外耳道に挿入された状態で、被検部位である耳甲介に対するセンサ部116aの接触状態を維持する。センサ部116aは、被検者の血流量を測定する血流量測定部として機能する。
【0021】
図2は、
図1の測定装置110のA−A断面図である。すなわち、
図2は、右耳において血流情報を測定する第1測定部112aを含む部分断面図である。ただし、
図2では、第1測定部112aの内部機構の詳細を一部省略している。
【0022】
図2に概略的に示すように、センサ部116aは、測定機構として発光部117a及び受光部118aを備える。発光部117aは、被検部位である右耳の耳甲介に測定光を照射する。受光部118aは、照射された測定光に対する耳甲介の内部の組織から反射光(散乱光)を取得する。受光部118aで受光された散乱光の光電変換信号は、測定装置110が備える制御部、又は推定装置120が備える制御部に送信される。本実施形態では、受光部118で受光された散乱光の光電変換信号は、推定装置120が備える制御部に送信されるとして、以下説明する。なお、推定装置120が備える制御部の詳細については後述する。
【0023】
発光部117aは、例えばレーザ光を射出する。発光部117aは、例えば、血液中に含まれる所定の成分を検出可能な波長のレーザ光を、測定光として被検部位に照射する。発光部117aは、例えば1つのLD(レーザダイオード:Laser Diode)により構成される。
【0024】
受光部118aは、生体情報として、被検部位からの測定光の散乱光を受光する。受光部118aは、例えば、PD(フォトダイオード:Photo Diode)により構成される。
【0025】
図2に示すように、本体114aは、内部にスピーカ部119aを備える。スピーカ部119aは、入力された音信号に基づいて音を発生させる。音信号は、例えば推定装置120から入力される。スピーカ部119aは、被検者に各種情報を報知できる報知部として機能する。
【0026】
第1連結部113aは、装着部111の第1端111aにおいて、装着部111と第1測定部112aとを連結する。第1連結部113aは、振動を低減可能な部材を含んで構成されていてもよい。振動を低減可能な部材は、例えば、ばね、ゴム、シリコン樹脂、ゲル、布、スポンジ若しくは紙その他の部材又はこれらの任意の組合せを含む。振動を低減可能な部材は、例えば内部に流体(すなわち液体又は気体)を有する、流体封入式ダンパであってもよい。内部の流体は、例えば粘性を有する液体であってよい。第1連結部113aが振動を低減可能な部材を含む場合、装着部111から第1測定部112aに伝達される振動が低減される。これにより、第1測定部112aと被検部位との接触状態が変化しにくくなり、生体情報の測定精度が向上しうる。
【0027】
第2測定部112bは、例えば被検者の左耳の耳甲介において、血流に関する情報を測定する。第2測定部112bは、第1測定部112aに対して左右対称な構成及び機能を有する。すなわち、第2測定部112bは、本体114bと、イヤピース115bと、センサ部116bと、スピーカ部119bとを備える。本体114b、イヤピース115b、センサ部116b及びスピーカ部119bは、それぞれ本体114a、イヤピース115a、センサ部116a及びスピーカ部119aが有する機能を、左耳において実現する。センサ部116bは、被検者の血流量を測定する血流量測定部として機能する。センサ部116bは、発光部117b及び受光部118bを備える。発光部117b及び受光部118bの機能は、それぞれ発光部117a及び受光部118aと同様であってよい。第2測定部112bは、第2連結部113bにより、装着部111の第2端111bに連結される。第2測定部112bの構成は、第1測定部112aの構成と同様であってよい。
【0028】
以下、本明細書において、左右で同一の機能を有する機能部について、左右の機能部を区別せずにまとめて記載する場合には、参照符号のa及びbの文字を省略して記載する。例えば、第1測定部112aと第2測定部112bとを区別しない場合には、これらをまとめて測定部112と記載する。
【0029】
図3は、
図1の電子機器100の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、電子機器100は、測定装置110と推定装置120とを備える。
【0030】
測定装置110は、第1測定部112a及び第2測定部112bを備える。各測定部112は、上述したようにセンサ部116とスピーカ部119とを備える。各センサ部116は、それぞれ発光部117と受光部118とを備え、被検者の血流量を測定する血流量測定部として機能する。
【0031】
第1測定部112aは、通信部121aを備える。通信部121aは、推定装置120と通信を行うことにより、各種信号を送受信する。本実施形態では、通信部121aは、ケーブル130aを介して推定装置120と通信を行う。ただし、通信部121aは、例えば、無線又は有線と無線との組合せにより推定装置120と通信を行ってもよい。通信部121aは、例えば、受光部118aで受光された散乱光の光電変換信号を推定装置120に送信する。通信部121aは、例えば、センサ部116aによる生体情報の測定処理を実行させる信号を推定装置120から受信する。通信部121aは、例えば、スピーカ部119aから出力される音に関する信号を推定装置120から受信する。
【0032】
第2測定部112bは、通信部121bを備える。本実施形態では、通信部121bは、ケーブル130bを介して推定装置120と通信を行う。通信部121bの機能は、第1測定部112aが備える通信部121aと同様であってよい。
【0033】
推定装置120は、通信部121cと、制御部122と、記憶部123と、入力部124とを備える。
【0034】
通信部121cは、測定装置110と通信を行うことにより、各種信号を送受信する。本実施形態では、通信部121cは、それぞれケーブル130a及び130bを介して、測定装置110の第1測定部112a及び第2測定部112bと通信を行う。通信部121cは、例えば受光部118で受光された散乱光の光電変換信号を、測定装置110から受信する。通信部121cは、例えば、センサ部116による生体情報の測定処理を実行させる信号を、測定装置110に送信する。通信部121cは、例えば、スピーカ部119から出力させる音に関する信号を測定装置110に送信する。
【0035】
制御部122は、電子機器100の各機能ブロックをはじめとして、電子機器100の全体を制御及び管理する少なくとも1つのプロセッサ122aを含む。制御部122は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の少なくとも1つのプロセッサ122aを含んで構成され、その機能を実現する。このようなプログラムは、例えば記憶部123、又は電子機器100に接続された外部の記憶媒体等に格納される。
【0036】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサ122aは、単一の集積回路(IC)として、又は複数の通信可能に接続された集積回路IC及び/又はディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサ122aは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
【0037】
一実施形態において、プロセッサ122aは、例えば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続又は処理を実行するように構成された1以上の回路又はユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサ122aは、1以上のデータ計算手続き又は処理を実行するように構成されたファームウェア(例えば、ディスクリートロジックコンポーネント)であってもよい。
【0038】
種々の実施形態によれば、プロセッサ122aは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又はこれらのデバイス若しくは構成の任意の組合せ、又は他の既知のデバイス若しくは構成の組合せを含み、以下に説明される制御部122としての機能を実行してもよい。
【0039】
制御部122は、測定装置110から受信した散乱光の光電変換信号に基づき、被検者の被検部位における血流量を算出する。制御部122は、例えばドップラーシフトを利用して血流量を測定する。ここで、ドップラーシフトを利用した血流量測定技術について説明する。
【0040】
生体の組織内において、動いている血球から散乱された散乱光は、ドップラー効果に基づいて血液中の血球の移動速度に比例した周波数シフト(ドップラーシフト)を受ける。制御部122は、静止した組織からの散乱光と、動いている血球からの散乱光との光の干渉によって生じるうなり信号(ビート信号ともいう)を検出する。このうなり信号は、散乱光の強度と時間との関数として表される。制御部122は、このうなり信号にFFT(Fast Fourier Transform)を行うことで、周波数成分の重み付けを行った周波数スペクトル(パワースペクトル)を生成する。このうなり信号のパワースペクトルでは、血球の速度に比例して、高周波成分が増加する。また、このうなり信号のパワースペクトルでは、パワーは血球の量に対応する。制御部122は、さらに、うなり信号のパワースペクトルから一次モーメントを算出し、血流量を求める。
【0041】
制御部122は、算出した血流量に基づいて、前記被検者の睡眠状態を推定する。制御部122が実行する睡眠状態の推定処理の詳細については、後述する。
【0042】
記憶部123は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成されることができる。記憶部123は、各種情報及び/又は電子機器100を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部123は、ワークメモリとしても機能してもよい。
【0043】
入力部124は、被検者からの操作入力を受け付けるものであり、例えば、
図1に示すような操作ボタン(操作キー)から構成される。入力部124は、例えばタッチスクリーンにより構成され、表示デバイスの一部に被検者からの操作入力を受け付ける入力領域を表示して、被検者によるタッチ操作入力を受け付けてもよい。
【0044】
次に、被検者の睡眠状態の詳細について説明する。ここで、睡眠状態は、被検者が睡眠しているか否か、つまり覚醒しているか睡眠しているかを含んでよい。睡眠状態は、被検者の睡眠の深さを含んでよい。睡眠の深さは、複数の段階に分類されてよい。睡眠の深さは、例えばレム睡眠又はノンレム睡眠に分類されてよい。睡眠の深さは、例えば睡眠のステージとして分類されてよい。睡眠のステージは、例えば、4つのステージに分類され、睡眠の深さが浅い方から順に、ステージ1、ステージ2、ステージ3及びステージ4として示されてよい。4つのステージの分類の一例については、後述する
図4の説明において示す。睡眠の深さは、浅い眠り又は深い眠りに分類されてよい。
【0045】
睡眠状態は、例えば脳波に基づいて分類することができる。睡眠分類に関する脳波は、波長が長いものから順に、β波、α波、θ波及びδ波の4つに区分される。β波は、例えば38Hzから14Hz程度の周波数の脳波である。α波は、例えば14Hzから8Hz程度の周波数の脳波である。θ波は、例えば8Hzから4Hz程度の周波数の脳波である。δ波は、例えば4Hzから0.5Hz程度の周波数の脳波である。
【0046】
図4は、睡眠に関する脳波の一例を模式的に示す図である。
図4は、睡眠に関する脳波の変化と、優位な脳波を記載したものである。
【0047】
θ波又はδ波が、β波又はα波と比べて優位である場合に、人は睡眠状態にある。ここで優位であるとは、測定された脳波における割合が多くなることをいう。すなわち、θ波がα波よりも優位になったとき(
図4の時間が0のとき)、人が入眠したといえる。入眠した後(つまり睡眠時であり、
図4の時間が0から7.5の間)、脳波の周波数は、
図4に模式的に示すように、θ波及びδ波の範囲で、高くなったり低くなったりして周期的に変化することが知られている。睡眠は、脳波の波長が長いほど深く、脳波の波長が短いほど浅い。脳波の周波数が、周期的に変化することで、浅い眠りと深い眠り(又はレム睡眠とノンレム睡眠)とが繰り返される。例えば、脳波に含まれるθ波の割合が所定未満の場合、人は眠りが浅い状態(レム睡眠の状態)にある。脳波に含まれるθ波の割合が所定以上の場合、又は、δ波が優位な場合、人は眠りが深い状態(ノンレム睡眠の状態)にある。
【0048】
ノンレム睡眠は、
図4に示されるように、眠りが浅い方から順に、ステージ1、ステージ2、ステージ3及びステージ4の4つの段階に分けられる。
【0049】
制御部122は、血流量と人の睡眠状態との関係を利用して、上述した睡眠状態を、血流量に基づいて推定する。例えば、制御部122は、血流量と睡眠の深さとの関係を利用して、睡眠状態を推定する。ここで、血流量と睡眠状態との関係について説明する。
【0050】
人の脳は、入眠するときに副交感神経を亢進させる。副交感神経は、脳の温度を下げるために、体の内部の熱を外部に逃がすように作用し、体の内部の温度(深部温度又は核心温度という)を下げる。具体的には、副交感神経は、末梢の血管を拡張して、外郭(つまり表皮付近の皮膚)の血流量を増加させる。このとき、血液中の熱は、皮膚と空気とが触れ合うことにより放散される。また、外郭では、血液を介して深部から伝えられた熱により、発汗が促され、汗が蒸発することによっても、血液中の熱が放散される。このようにして、深部温度が下げられると、再び副交感神経の働きにより、末梢の血管が収縮し、これに伴って血流量も減少する。つまり、人は、入眠するときに血流量が増加し、眠りが深くなるにつれて血流量が減少する。本実施形態の制御部122は、この性質を利用して、血流量に基づいて睡眠状態を推定する。
【0051】
図5は、睡眠に関する血流量の一例を模式的に示す図である。
図5は、入眠時の血流量の変化の一例を示している。
図5には、参考として、優位な脳波についても記載されている。
図5を用いて、制御部122による睡眠状態の推定処理について説明する。ここでは、制御部122は、睡眠状態として、被検者が入眠したこと、被検者の睡眠が浅い眠りであること、及び被検者の睡眠が深い眠りであることを推定するとして説明する。浅い眠りは、例えばθ波が優位となっている状態に対応し、深い眠りは、例えばδ波が優位となっている状態に対応するとしてよい。
【0052】
上述の原理により、
図5に示すように、血流量は入眠に際して増加する。制御部122は、血流量が所定の閾値(第1の閾値)に達したとき、被検者の睡眠状態として、被検者が入眠したと推定してよい。
図5では、血流量が第1の閾値に達した時間をt1により示している。第1の閾値は、例えば予め設定されて記憶部123に記憶されていてよい。第1の閾値は、例えば被検者ごとに設定されてもよい。この場合、第1の閾値は、例えば、入眠時における被検者の血流の変化を複数回測定した結果を用いて、制御部122又は電子機器100以外の機器により決定されてよい。血流量が第1の閾値に達するまでの時間(つまりt1までの時間)、脳波は、α波が優位となっている状態に相当する。制御部122は、被検者が入眠したと推定した時間の後(つまりt1以降)、睡眠状態として、被検者の睡眠が浅い眠りであると推定してよい。このとき、脳波は、θ波が優位となっている状態に相当する。
【0053】
上述の原理により、
図5に示すように、睡眠が深くなるにつれて血流量は減少する。制御部122は、血流量が所定の閾値(第2の閾値)以下となったとき、被検者の睡眠状態として、被検者の睡眠が浅い眠りから深い眠りに移行したと推定してよい。
図5では、血流量が第2の閾値以下になった時間をt2により示している。ここで用いられる第2の閾値は、上述した、第1の閾値と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。第2の閾値は、例えば予め設定されて記憶部123に記憶されていてもよく、被検者ごとに設定されてもよい。制御部122が、被検者が入眠したと推定してから、被検者の睡眠が浅い眠りから深い眠りに移行したと推定するまでの時間(つまりt1からt2までの時間)、脳波は、θ波が優位となっている状態に相当する。制御部122は、被検者の睡眠が浅い眠りから深い眠りに移行したと推定した時間の後(つまりt2以降)、睡眠状態として、被検者の睡眠が深い眠りであると推定してよい。このとき、脳波は、δ波が優位となっている状態に相当する。このようにして、制御部122は、血流量に基づき、被検者の睡眠状態を推定できる。
【0054】
図4を参照して説明したように、人の睡眠は、浅い眠りと深い眠りが繰り返される。制御部122は、例えば、被検者の睡眠が深い眠りであると推定した後、再び血流量が第1の閾値に達したとき、睡眠が深い眠りから浅い眠りに移行したと推定してよい。制御部122は、被検者が覚醒するまで、血流量と閾値とを比較して、被検者の眠りが浅い眠りであるか深い眠りであるかを推定してよい。
【0055】
なお、睡眠状態の移行に関する推定は、浅い眠りと深い眠りとに限られない。例えば、覚醒している状態と睡眠している状態との移行が推定されてもよい。例えば、睡眠の段階の移行が推定されてもよい。例えば、レム睡眠とノンレム睡眠との移行が推定されてもよい。
【0056】
制御部122は、推定した被検者の睡眠状態に応じて、スピーカ部119から音を出力することができる。このときスピーカ部119から出力される音は、公知の目覚まし時計で用いられているアラーム音等であってよい。
【0057】
例えば、制御部122は、被検者の眠りが浅い状態であるときに、スピーカ部119から音を出力して、覚醒を促してよい。被検者の眠りが浅い状態であるときに覚醒を促すことにより、被検者の眠りが深い状態であるときに覚醒を促す場合と比較して、被験者は覚醒しやすく、また、覚醒直後に眠気や気だるさが強く残るいわゆる睡眠慣性と呼ばれる脳の働きが悪い状態を誘引しにくくなる。
【0058】
制御部122は、例えば、被検者の眠りが浅い状態であるときに、被検者の血流量が第2の閾値以下となる前に、覚醒を促してよい。制御部122は、例えば、第2の閾値よりも高い第3の閾値を設け、被検者の血流量が第3の閾値以下となったときに、覚醒を促すことができる。この方法は、例えば被検者がパワーナップを行う場合に用いられてよい。パワーナップは、15分乃至30分程度の短い仮眠であり、入眠してから、深い眠りに入る前に覚醒する仮眠をいう。被検者の血流量が第3の閾値以下となったときに覚醒を促すことにより、睡眠慣性を誘引しにくくなる。
【0059】
図6は、制御部122が実行する睡眠状態の推定処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示すフローは、例えば、被検者が測定装置110を装着して、推定装置120の入力部124を用いて、測定を開始するための操作入力を行った場合に開始されてよい。
【0060】
まず、制御部122は、被検者の生体情報の測定を開始する(ステップS11)。制御部122は、例えばセンサ部116を起動して、発光部117から測定光を照射することにより、生体情報の測定を開始する。
【0061】
制御部122は、受光部118で受光された散乱光の光電変換信号を、受光部118から取得する(ステップS12)。
【0062】
制御部122は、取得した光電変換信号に基づき、被検者の血流量を算出する(ステップS13)。
【0063】
制御部122は、算出した血流量に基づき、被検者の睡眠状態を推定する(ステップS14)。睡眠状態の推定処理は、
図5を参照して説明した処理であってよい。
【0064】
制御部122は、ステップS12からステップS14を繰り返し実行してよい。制御部122は、例えば推定した睡眠状態に応じて、スピーカ部119から音を出力することにより、被検者に覚醒を促してもよい。
【0065】
このように、電子機器100によれば、被検者の血流量に基づいて、被検者の睡眠状態を推定できる。血流量測定部は、例えば本実施形態で説明したように、発光部117と受光部118とを備えるセンサ部116として構成することができる。センサ部116の構成は、例えば公知の脳波計よりも小さく、簡便に使用できる。そのため、電子機器100によれば、脳波計を用いて測定した脳波に基づいて睡眠状態を推定する場合と比較して、小型化された装置により、簡便に睡眠状態を推定できる。これにより、被検者にとっての利便性が高まるとともに、電子機器100の有用性が高まる。
【0066】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る電子機器200の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。第2実施形態に係る電子機器200は、測定装置210と、推定装置120とを備える。本実施形態に係る電子機器200が備える機能ブロックにおいて、第1実施形態に係る電子機器100が備える機能ブロックと同一の機能を有するものについては、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。本実施形態に係る電子機器200の外観は、
図1で示した第1実施形態に係る電子機器100と同一であってよい。
【0067】
測定装置210は、第1測定部212aと、第2測定部212bとを備える。第1測定部212a及び第2測定部212bの外観は、それぞれ
図1で示した第1実施形態に係る測定装置110の第1測定部112a及び第2測定部112bと同一であってよい。本実施形態に係る第1測定部212a及び第2測定部212bは、それぞれ環境情報取得部140a及び140bを備える点で、第1実施形態に係る第1測定部112a及び第2測定部112bと異なる。
【0068】
環境情報取得部140は、それぞれ測定装置210の周囲の環境に関する情報を取得する。環境情報取得部140は、例えば、被検者の血流量の変化に影響を及ぼし得る環境に関する情報を取得してよい。環境情報取得部140は、例えば測定装置210の周囲の温度を測定する温度測定部として構成されていてよい。温度測定部は、例えば温度計により構成される。温度計により構成される環境情報取得部140は、例えば、本体114において、外気に接触する位置に配置されてよい。環境情報取得部140が取得した情報(以下、「環境情報」とも称する)は、通信部121cを介して推定装置120に送信される。環境情報取得部140が温度計により構成されている場合、環境情報は、温度(外気温)の情報である。
【0069】
本実施形態では、推定装置120の制御部122は、第1実施形態で説明した睡眠状態の推定処理に加え、測定装置210から取得した環境情報に基づき、諸々の処理を行ってよい。例えば、制御部122は、環境情報に基づき、睡眠状態の推定精度を判定してよい。
【0070】
例えば、被検者がいる部屋の室温が低いほど、被検者の深部体温も室温の影響を受けて低くなっている。この状態で被検者が入眠使用とする場合、深部体温が既に低くなっていることにより、末梢の血管を拡張して深部体温を下げようとする働きが弱くなる場合がある。すると、室温が高い場合と比較して、血流量の変化が小さくなることにより、睡眠状態の推定を正確に実施しにくくなる。そのため、制御部122は、例えば環境情報である温度(以下、「環境温度」とも称する)に基づいて、睡眠状態の推定精度を判定できる。
【0071】
例えば、制御部122は、睡眠状態の推定精度を、複数の段階で判定してよい。例えば、制御部122は、睡眠状態の推定精度を、「高」、「中」及び「低」の3段階で判定してよい。例えば、制御部122は、測定装置210から取得した環境温度が第1の温度閾値よりも高い場合、睡眠状態の推定精度を「高」と判定してよい。例えば、制御部122は、測定装置210から取得した環境温度が、第2の温度閾値よりも低い場合、睡眠状態の推定精度を「低」と判定してよい。ただし、第2の温度閾値は、第1の温度閾値よりも低い値である。例えば、制御部122は、測定装置210から取得した環境温度が、第1の温度閾値以下かつ第2の温度閾値以上である場合、睡眠状態の推定精度を「中」と判定してよい。制御部122による睡眠状態の推定精度の判定は、この例に限られない。制御部122は、測定装置210から取得した環境温度に基づいて、所定のアルゴリズムを用いたり、記憶部123に予め格納されたテーブルを参照したりして、睡眠状態の推定精度を判定してよい。このアルゴリズム及びテーブルは、例えば、環境温度が高いほど睡眠状態の推定精度が高く出力されるように定められていてよい。
【0072】
制御部122は、判定した睡眠状態の推定精度に関する情報を、例えばスピーカ部119から音声で出力してもよい。制御部122は、推定した睡眠状態と、当該睡眠状態の推定精度とを対応付けて、記憶部123に記憶してもよい。
【0073】
制御部122は、睡眠状態の推定精度が所定の精度より高い精度であると判定した場合に、例えば第1実施形態で説明したように、睡眠状態に基づいて覚醒を促す音をスピーカ部119から出力させてもよい。制御部122は、睡眠状態の推定精度が当該所定の精度以下であると判定した場合、睡眠状態に基づいて覚醒を促す音を出力させずに、例えば被検者が入眠してから経過した時間に基づいて覚醒を促す音を出力させてもよい。
【0074】
図8は、本実施形態において制御部122が実行する睡眠状態の推定処理及び睡眠状態の推定精度の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すフローは、例えば、被検者が測定装置210を装着して、推定装置120の入力部124を用いて、測定を開始するための操作入力を行った場合に開始されてよい。
【0075】
制御部122は、被検者の生体情報の測定を開始し(ステップS21)、受光部118で受光された散乱光の光電変換信号を、受光部118から取得する(ステップS22)。ステップS21及びステップS22の詳細は、それぞれ第1実施形態におけるステップS11及びステップS12と同一であってよい。
【0076】
制御部122は、環境情報取得部140が取得した環境情報を、測定装置210から取得する(ステップS23)。上述した例では、制御部122は、環境温度の情報を取得する。
【0077】
制御部122は、ステップS22で取得した光電変換信号に基づき、被検者の血流量を算出する(ステップS24)。制御部122は、算出した血流量に基づき、被検者の睡眠状態を推定する(ステップS25)。ステップS24及びステップS25の詳細は、それぞれ第1実施形態におけるステップS13及びステップS14と同一であってよい。
【0078】
制御部122は、ステップS23で取得した環境情報に基づいて、ステップS25で推定し睡眠状態の推定精度を判定する(ステップS26)。
【0079】
制御部122は、ステップS25で推定した睡眠状態と、ステップS26で判定した推定精度とを対応付けて、記憶部123に記憶する(ステップS27)。
【0080】
制御部122は、ステップS22からステップS27を繰り返し実行してよい。制御部122は、例えば推定した睡眠状態に応じて、スピーカ部119から音を出力することにより、被検者に覚醒を促してもよい。
【0081】
このように、電子機器100によれば、被検者の血流量に基づいて、被検者の睡眠状態を推定可能であることに加え、睡眠状態の推定精度を判定できる。
【0082】
上記説明では、環境情報取得部140が温度計として構成される場合の例について説明したが、環境情報取得部140の構成例は、これに限られない。例えば、環境情報取得部140は、(温度以外の)環境情報として湿度を取得する湿度計として構成されていてもよい。この場合、環境情報取得部140は、取得した湿度の情報を推定装置120に送信する。推定装置120では、制御部122が、湿度に基づいて睡眠状態の推定精度を判定する。例えば、被検者がいる部屋の湿度が低いほど、汗が蒸発しやすく、被検者の深部体温が下がりやすくなる。そのため、発汗による体温の低下が促されることとなり、その結果、末梢の血管を拡張して深部体温を下げようとする働きが弱くなる場合がある。すると、湿度が高い場合と比較して、血流量の変化が小さくなることにより、睡眠状態の推定を正確に実施しにくくなる。そのため、制御部122は、例えば環境情報である湿度に基づいて、睡眠状態の推定精度を判定できる。
【0083】
環境情報取得部140は、複数の機器により構成され、複数種類の環境情報を取得してもよい。例えば、環境情報取得部140は、温度計及び湿度計を含んで構成され、環境情報として、温度及び湿度を測定してもよい。この場合、制御部122は、複数の環境情報に基づいて、睡眠状態の推定精度を判定してもよい。
【0084】
本開示を完全かつ明瞭に開示するためにいくつかの実施形態に関し説明してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。また、いくつかの実施形態に示した各要件は、自由に組み合わせが可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態では、被検部位が耳甲介であると説明したが、被検部位としては、シャントの分布が少なく、自律神経による血管の拡張収縮を受けにくい部位を用いればよく、必ずしも耳甲介に限られない。被検部位は、例えば耳珠であってもよい。また、被検部位は、耳以外の部位であってもよい。例えば、被検部位は、指等であってもよい。被検部位は、血流量を算出するための生体情報を取得可能な任意の部位とすることができる。
【0086】
上記実施形態では、測定部112及び212がスピーカ部119を備えると説明したが、測定部112及び212は、必ずしもスピーカ部119を備えていなくてもよい。例えば、被検者に覚醒を促す音を出力しない場合には、測定部112及び212は、スピーカ部119を備えていなくてもよい。
【0087】
電子機器100は、スピーカ部119を用いた音の出力以外の方法で、被検者に対して覚醒を促す報知を出力してもよい。例えば、電子機器100は、振動子を備え、振動により、被検者に対して覚醒を促す報知を出力してもよい。例えば、電子機器100は、発光部を備え、発光により、被検者に対して覚醒を促す報知を出力してもよい。電子機器100は、ここで示した例以外の被検者が認識可能な方法で、覚醒を促す報知を出力してもよい。
【0088】
上記実施形態で説明した推定装置120の機能は、1つの機能として他の装置に備えられていてもよい。例えば、上記実施形態で説明した推定装置120の機能は、スマートフォン等の携帯端末に備えられていてもよい。この場合、当該携帯端末と、上記実施形態で説明した測定装置110又は210とが、例えば無線により互いに通信可能に接続される。測定装置110又は210が受光部118で受光された散乱光の光電変換信号が、携帯端末に送信され、携帯端末において、睡眠状態が推定される。上記実施形態で説明した推定装置120の機能は、携帯端末以外の他の装置に備えられていてもよい。このようにして、上記実施形態で説明した電子機器100及び200の機能は、測定装置と、他の装置とにより、システムとして実現されることができる。