(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、各相の前記一次側電流の振幅値の相互間の比率のうち所定の相電流偏差検出レート以上であるものが存在する場合、または、各相の前記一次側電流の相互間の位相差が所定の範囲を外れる場合に、前記開放故障が生じた旨を示す判定信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の電路故障検知装置。
前記制御部は、前記変圧器の二次側電圧における電圧の過去の値と現在の値との比率が所定の不足電圧検出レート以下である場合に、前記開放故障が生じた旨を示す判定信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の電路故障検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈一実施形態の全体構成〉
図1は、本発明の一実施形態による電路故障検知装置Aのブロック図である。
図1において、電力系統150は、例えば商用電力系統である。三相の変圧器156は、一次巻線156aと、二次巻線156bと、を備えている。一次巻線156aは、遮断器152および電路154を介して電力系統150に接続されている。ここで、電路154は、R相電路154rと、S相電路154sと、T相電路154tと、を有している。遮断器152は、電力系統150と変圧器156との間の接続をオン/オフするとともに、そのオン/オフ状態を、遮断器状態信号Sbとして出力する。変圧器156は、電力系統150から供給された電圧を変換し(例えば降圧し)、電路158を介して電力を負荷装置160に供給する。
【0012】
電路故障検知装置Aは、巻線型光ファイバ電流センサ101(電流センサ)と、光ファイバ102と、電圧センサ112,114と、信号処理部133と、制御部200と、を備えている。電流センサ101は、信号処理部133とともに、電路154に流れるR相、S相、T相の一次側電流ir,is,itを検出する。
【0013】
電流センサ101は、可撓性のある棒状に形成されている。電流センサ101を電路154に装着する際には、電路154の導電部の解線や分解の必要はなく、導電部に電流センサ101を巻き付けるだけで装着可能である。光ファイバ102は、電流センサ101の検出結果を光信号として伝送する。電圧センサ112は、電力系統150における一次側電圧vr,vs,vtを検出する。また、電圧センサ114は、変圧器156の二次側電圧vu,vv,vwを検出する。
【0014】
信号処理部133は光源(図示せず)を有し、光ファイバ102を介して電流センサ101に光を出力する。電流センサ101の先端部には、伝送された光を反射するミラー(図示せず)が装着されている。このミラー反射された光は、信号処理部133に戻る。ここで、電路154に流れる電流により、電路154の周囲には磁界が発生し、電流センサ101内の光はファラデー効果により、磁界に応じて偏波する。そこで、信号処理部133は、その偏波量に基づいて、一次側電流ir,is,itを検出し、その結果を出力する。また、一次側電圧vr,vs,vtは、一次側電流ir,is,itの検出結果の補正のために信号処理部133に入力されている。
【0015】
また、制御部200は、遮断器152から出力された遮断器状態信号Sbと、信号処理部133にて検出された一次側電流ir,is,itと、電圧センサ114にて検出された二次側電圧vu,vv,vwと、を受信する。制御部200は、これら受信した信号と、後述するアルゴリズムと、に基づいて、電路154に故障が生じているか否かを判定し、その結果を判定信号Sjとして出力する。なお、判定信号Sjは、「警報」や「トリップ出力」のような形式であってもよい。
【0016】
〈変圧器の一次側開放故障に関する問題〉
ここで、変圧器156の一次側、すなわち電路154に開放故障が発生した場合の問題点について説明しておく。
図2は、この開放故障が発生した場合の動作説明図である。図示のように、変圧器156の一次巻線156aが中性点接地の星形結線であり、二次巻線156bが三角結線であったと仮定する。そして、開放故障点170において、R相電路154rに開放故障が発生したと仮定する。電路154は、例えば数百メートルから数キロメートル程度の長さを有している。そして、電路154は、接地電位との間に比較的大きな充電容量を有している。
図2においては、この充電容量を破線のコンデンサ(符号なし)によって示している。
【0017】
なお、
図2において、ベクトルVr,Vs,Vtは一次側電圧vr,vs,vtに対応し、ベクトルVu,Vv,Vwは二次側電圧vu,vv,vwに対応する。そして、一次巻線156aにおけるR相、S相、T相の巻線は、それぞれ二次巻線156bにおけるU相、V相、W相の巻線に対応して巻回されていることとする。
【0018】
図2において、開放相ではないS相およびT相電圧ベクトルVs,Vtによって、二次巻線156bには、V相およびW相電圧ベクトルVv,Vwが発生する。すると、このV相およびW相電圧ベクトルVv,Vwによって、二次巻線156bには、U相電圧ベクトルVuが発生する。U相電圧ベクトルVuが発生すると、これによって一次巻線156aには、R相電圧ベクトルVrが発生する。このように、一次側開放故障の発生前後において、変圧器156における一次/二次の電圧関係の変化は小さくなることが解る。
【0019】
また、二次巻線156bに流れる二次電流は、二次側電圧vu,vv,vw(
図1参照)と、負荷装置160の負荷インピーダンスと、によって決定される。従って、二次側電圧vu,vv,vwが故障発生前から変化しないと仮定すると、二次電流の大きさや位相の変化も、変化しないことになる。実際には、一次側開放故障の前後で二次側の電気量にも多少の変化は生じるが、この変化によって一次側開放故障を検知することは、困難であることが多い。
【0020】
一方、変圧器156の一次側開放故障が起こると、変圧器156の一次側電流ir,is,itには、有意な変化が現れる。すなわち、開放相に係る一次側電流irの振幅値はほぼ零になるが、残りの一次側電流is,itの振幅値は、故障発生前よりも大きくなる。
図1に示した遮断器152は、過負荷や短絡時等に対し変圧器156を保護するために設けられており、一次側電流ir,is,itのうち何れかが所定の電流閾値を超えると、全相をオフ状態にするように構成されている。そこで、遮断器152の保護装置(図示せず)によって一次側電流の変化を検出し、一次側開放故障を検出することが考えられる。しかし、一般的に、電流保護のために設けられている保護装置において、遮断動作を行う電流閾値は、比較的高い値に設定されている。従って、低負荷状態で変圧器一次側の開放故障が起こった場合には、遮断器152によって開放故障を検出することは困難である。
【0021】
また、本実施形態においては、上述したように、変圧器156の一次側に、巻線型光ファイバ電流センサ101を設けたが、通常の変圧器では、電流計測用の鉄心型変流器(図示せず)が適用される場合が多い。この種の鉄心型変流器は、変圧器一次側の定格電流相当を所定の二次側電流(例えば5Aまたは1A程度)に対応させている。従って、変圧器が無負荷または低負荷状態であるとき、鉄心型変流器の二次側電流は微小な値になる。従って、変圧器が無負荷または低負荷状態であるとき、鉄心型変流器によって変圧器一次側の開放故障を検出することは、やはり困難な場合が多い。
【0022】
変圧器156に一次側開放故障が発生した場合、変圧器156の二次側に、負荷装置160を接続すると、一次側中性点の接地状態や、巻線構成等によって程度は異なるものの、二次側電圧vu,vv,vwは不平衡になる。この負荷装置160が、例えば誘導電動機を含む場合、誘導電動機の各相電流が不平衡になるため異音や振動が生じ、場合によっては誘導電動機が焼損する。従って、変圧器156の一次側開放故障が発生した場合に、これを早期に検知し、操作員に把握させることが望まれている。特に、近年、原子力発電所等の付帯設備に適用される負荷装置160では、本事象に関する保護が強く要求されている。
【0023】
〈制御部200の構成〉
図3は、制御部200のブロック図である。なお、制御部200は、リレー回路等によって構成されている。
制御部200は、相電流偏差検出部202と、線間電流偏差検出部204と、一次側電流検出部206と、相電流位相差検出部208と、相電圧偏差検出部210と、不足電圧検出部212と、AND回路222,224,234,240と、OR回路226,230,232,244と、NOT回路220,228,238と、タイムアップ回路236,242と、を備えている。
【0024】
(相電流偏差検出部202)
相電流偏差検出部202は、一次側電流ir,is,itの振幅値を求め、これら各振幅値の相互間の比率のうち、所定の相電流偏差検出レート以上であるものが存在すると“1”になり、それ以外の場合に“0”になる相電流偏差信号S2を出力する。
ここで、相電流偏差検出部202の動作例を説明する。
図4は、(a)負荷装置160(
図1参照)が誘導電動機を含む設備を有し、その設備が運転されている、および(b)一次巻線156a(
図1参照)は中性点接地の星形結線である、という条件における一次側電流ir,is,itの波形図である。
波形群G31,G32,G33の何れにおいても、横軸が時間、縦軸が電流値である。また、一次側電流ir,is,itは、それぞれ実線、点線および破線によって描かれている。
【0025】
波形群G31は、一次側開放故障が生じていない場合の電流波形であり、一次側電流ir,is,itの振幅値がほぼ等しくなっている。この場合、相電流偏差検出部202は、相電流偏差信号S2を“0”に設定する。また、波形群G32は、一相の(T相の)一次側開放故障が生じた場合の電流波形である。図示の例においては、一次側電流itの振幅値は、他の一次側電流ir,isの振幅値よりも有意に小さくなっている。この場合、相電流偏差検出部202は、相電流偏差信号S2を“1”に設定する。なお、一次側電流itの振幅値が完全に零になっていないのは、電路154および変圧器156の各部に充電容量が存在するためである。また、波形群G33は、二相の一次側開放故障が生じた場合の電流波形であり、開放相(R相、T相)の電流が有意に小さくなっている。この場合も、相電流偏差検出部202は、相電流偏差信号S2を“1”に設定する。
【0026】
また、
図5を参照し、相電流偏差検出部202の他の動作例を説明する。ここで、
図5は、
図4の条件と同様の条件下における一次側電流ir,is,itの波形図である。但し、
図5においては、負荷装置160に含まれる該誘導電動機が低出力で運転されていることとする。波形群G61は、一次側開放故障が生じていない場合の電流波形であり、一次側電流ir,is,itの振幅値はほぼ等しい。また、波形群G62は、二相の一次側開放故障が生じた場合の電流波形である。この場合、一次側電流irの振幅値は、一次側電流is,itの振幅値よりも有意に大きくなっている。
従って、相電流偏差検出部202は、負荷装置160に誘導電動機が含まれている場合であっても、正確な相電流偏差信号S2を出力することができる。
【0027】
図4および
図5に示したように、一相開放事象は、基本的には各相電流値の偏差にて検出可能である。しかし、変圧器156が無負荷または低負荷状態であるとき、一次側電流ir,is,itは、ほぼ変圧器156n励磁電流に等しくなる。そして、
図2において、開放故障点170と変圧器156との間における充電容量が大きい場合には、充電容量に流れる充電電流によって、励磁電流の各相の偏差が顕著に現れないケースが生じる。
【0028】
ここで、一次巻線156aの中性点が非接地である場合には、一相開放事象によって中性点が移動するため、電流偏差よりも二次側電圧vu,vv,vw(
図1参照)の偏差の方が顕著になる。また、一次巻線156aの中性点が非接地であって、二相開放事象が生じた場合には、変圧器156に印加される有効な電圧ベクトルがなくなるため、変圧器の通電電流および二次電圧は、三相とも減少傾向を示し、有効な相間偏差が現れなくなる。
【0029】
このように、変圧器156の一次側開放故障時の電圧および電流の様相には種々のケースがある。そこで、本実施形態においては、
図3に示す他の構成要素(詳細は後述する)によって、開放故障の各モードに有効なアルゴリズムを選定し、そのアルゴリズムを並列に実装している(OR演算を行っている)。これにより、変圧器156の結線種別、接地方式、系統側の電路状態を問わず、変圧器156の無負荷時〜定格負荷時において一次側で発生した一相開放および二相開放故障を正確に検知することが可能になる。
【0030】
(相電流位相差検出部208)
図3に戻り、相電流位相差検出部208は、一次側電流ir,is,itの位相関係に基づいて、一次側開放故障を検出するものである。すなわち、相電流位相差検出部208は、各一次側電流ir,is,it間の位相差を計算する。ここで、一次側電流が三相平衡状態であれば、各一次側電流間の位相差は120°になる。そこで、この位相差120°に計算誤差を考慮し、位相差検出部208は、各一次側電流間の位相差が120°±α(αは所定の定数)の範囲であれば、“0”になり、それ以外の場合に“1”になる位相差検出信号S8を出力する。
【0031】
ここで、相電流位相差検出部208の動作例を説明する。
図6は、(a)負荷装置160(
図1参照)が無負荷状態である、および(b)一次巻線156aは中性点接地の星形結線である、(c)変圧器156に三角結線が含まれている、という条件における一次側電流ir,is,itの波形図である。なお、本実施形態においては、二次巻線156bは三角結線であるため、上記条件(c)は充足されている。
波形群G41は、一次側開放故障が生じていない場合の電流波形すなわち励磁電流の波形である。図示のように、一次側電流ir,is,itは、相互にほぼ120°の位相差を有している。この場合、相電流位相差検出部208は、位相差検出信号S8を“0”に設定する。
【0032】
また、波形群G42は、一次側開放故障が発生した場合の電流波形である。上述したように、各電路154(
図1参照)は、比較的長距離であり、接地電位との間に大きな充電容量を有しているものとする。そして、一次側の何れかの相で開放故障が発生すると、開放相の電路154に誘導された電圧により、充電容量と変圧器156の一次側中性点を通して閉ループが構成され充電電流が還流する。この充電電流は、一次巻線156aの開放相に通電するため、対応する電流が変圧器156の二次巻線156bに誘導される。二次巻線156bに誘導される電流は、三角結線である二次巻線を還流し、結果的に一次巻線156aの各相に誘導される。
図2において、開放故障点170から変圧器156までの距離が長く、充電容量が大きい場合には、励磁電流よりも充電電流が支配的となる。これにより、波形群G42に示すように、一次側電流ir,is,itは、ほぼ同相で、かつほぼ同じ電流値になる。この場合、相電流位相差検出部208は、位相差検出信号S8を“1”に設定する。
【0033】
(線間電流偏差検出部204)
一次巻線156aが中性点接地の星形結線である場合、一次巻線156aには、中性点を介して零相電流が流れる。ここで、一次側電流ir,is,itが比較的小さい場合には、電路154等、送電系統の状態によっては、相電流である一次側電流ir,is,itのうち、零相電流の割合が多くなる場合がある。零相電流の割合が多くなると、一次側開放故障が発生していなかったとしても、一次側電流ir,is,itの位相関係が崩れ、上述した位相差検出信号S8が“1”になる可能性がある。このような状況下において、上述した位相差検出信号S8に基づいて一次側開放故障の有無を判定する場合には、零相電流の影響を考慮することが必要である。
【0034】
図3において、線間電流偏差検出部204は、零相電流の影響が大きいか否かを判定するために設けられている。まず、線間電流偏差検出部204は、線間電流ir−is,ir−it,is−itの振幅値を求める。さらに、線間電流偏差検出部204は、これら各振幅値の相互間の比率のうち、所定の線間電流偏差検出レート以上であるものが存在すると“1”になり、それ以外の場合に“0”になる線間電流偏差信号S4を出力する。
【0035】
(一次側電流検出部206)
上述したように、線間電流偏差検出部204は、線間電流ir−is,ir−it,is−itの振幅値によって零相電流の影響を除外した判定ができる。しかし、零相電流の影響の除外は、開放故障が発生していないときの電流位相差を検出する際の誤動作防止用であるため、変圧器156の無負荷時における一次側電流ir,is,itに相当する、小電流領域でのみ適用する。
【0036】
一次側電流検出部206は、一次側電流ir,is,itが無負荷電流相当か否かを判定するために設けられている。すなわち、一次側電流検出部206は、一次側電流ir,is,itのうち何れかの振幅値が所定の一次側電流検出閾値以上になると“0”になり、それ以外の場合に“1”になる一次側電流検出信号S6を出力する。
【0037】
(相電圧偏差検出部210)
図3において、相電圧偏差検出部210は、変圧器156の二次側電圧vu,vv,vwの振幅値を求める。さらに、相電圧偏差検出部210は、これら各振幅値の相互間の比率のうち、所定の相電圧偏差検出レート以上であるものが存在すると“1”になり、それ以外の場合に“0”になる相電圧偏差信号S10を出力する。
【0038】
ここで、相電圧偏差検出部210の動作例を説明する。
図7は、(a)負荷装置160(
図1参照)が無負荷状態である、および(b)一次巻線156aは中性点非接地の星形結線である、という条件における二次側電圧vu,vv,vwの波形図である。換言すれば、相電圧偏差検出部210は、一次巻線156aが中性点非接地である場合のために設けられている。
波形群G51は、一次側開放故障が生じていない場合の二次側電圧vu,vv,vwの波形であり、これらの振幅値はほぼ等しくなっている。この場合、相電圧偏差検出部210は相電圧偏差信号S10を“0”に設定する。
【0039】
また波形群G52は、一次側開放故障が発生した場合における二次側電圧vu,vv,vwの波形であり、電圧振幅の差が大きくなっていることが解る。この場合、相電圧偏差検出部210は相電圧偏差信号S10を“1”に設定する。
このように、一次巻線156aの中性点が非接地である無負荷状態においては、二次側電圧vu,vv,vwの振幅偏差に基づいた相電圧偏差信号S10によって、一次側開放故障の有無を判定することができる。
【0040】
(不足電圧検出部212)
図3に戻り、不足電圧検出部212は、変圧器156の二次側電圧vu,vv,vwの振幅値を求め、これらの過去の振幅値(換言すれば、正常時の振幅値)との比率すなわち振幅比を求める。そして、不足電圧検出部212は、これら振幅比のうち、何れかが所定の不足電圧検出レートβ以下である場合に“1”になり、それ以外の場合に“0”になる不足電圧検出信号S12を出力する。
【0041】
ここで、不足電圧検出部212の動作例を説明する。
図8は、(a)負荷装置160(
図1参照)に誘導電動機が含まれ該誘導電動機が低出力で運転されている、および(b)一次巻線156a(
図1参照)は中性点非接地の星形結線である、という条件における二次側電圧vu,vv,vwの波形図である。換言すれば、不足電圧検出部212も、一次巻線156aが中性点非接地である場合のために設けられている。
波形群G71は、一次側開放故障が生じていない場合の二次側電圧vu,vv,vwの波形である。ここで、電路154のうち、二相において一次側開放故障が発生すると、誘導電動機には変圧器156からは電力が供給されなくなる。しかし、誘導電動機は惰性で回転し続けながら、比較的短い時間内(例えば数百ミリ秒程度)では、徐々に出力電圧すなわち二次側電圧vu,vv,vwを低下させつつ「誘導発電機」として機能する。
【0042】
波形群G72は、出力電圧が低下した二次側電圧vu,vv,vwの波形である。図示のように、波形群G71,G72における二次側電圧vu,vv,vwの振幅値は相違している。不足電圧検出部212は、誘導電動機の出力電圧すなわち二次側電圧vu,vv,vwの振幅値の変化を検出する。そして、不足電圧検出部212は、二次側電圧vu,vv,vwのうち何れかの現在値が、これらの正常時の値の「1/β」以上であるときは、“0”になり、「1/β」未満であるときは“1”になる不足電圧検出信号S12を出力する。なお、不足電圧検出レートβは、「1」を超える所定の定数である。
【0043】
(構成要素202〜212の後段の回路)
以下、構成要素202〜212の後段の回路構成について説明するが、以下の説明において、論理和は「+」、論理積は「×」、論理否定は「−」で表記する。
まず、AND回路222は、線間電流偏差信号S4と一次側電流検出信号S6との論理積「S4×S6」を信号S22として出力し、OR回路226は、信号S22と一次側電流検出信号S6の論理否定との論理和「S22+(−S6)」を信号S26として出力する。また、AND回路224は、信号S26と信号S8との論理積「S26×S8=(S4×S6+(−S6))×S8」を信号S24として出力する。すなわち、AND回路224が出力する信号S24は、「線間電流の偏差が大きく(S4=1)」、「一次側電流ir,is,itが比較的小さく(S6=1)」、かつ「位相の相互間の偏差120°±αよりも大きい(S8=1)」場合、または、「一次側電流ir,is,itが比較的大きく(S6=0)」かつ「位相の相互間の偏差が120°±αよりも大きい(S8=1)」場合に“1”になる信号である。そして、OR回路230は、「S2+S24」となる信号S30を出力する。すなわち、信号S30は、一次巻線156aの中性点が接地されている条件下において、一次側開放故障が発生した旨を示す信号になる。
【0044】
また、OR回路232は、「S2+S10+S12」となる信号S32を出力する。信号S32は、一次巻線156aの中性点が非接地である条件下において、一次側開放故障が発生した旨を示す信号になる。また、NOT回路220は、遮断器状態信号Sbの論理否定「−Sb」を出力する。ここで、遮断器状態信号Sbは、遮断器152がオフ状態であるときに“1”、オン状態であるときに“0”になる信号である。
また、中性点接地状態信号Seは、変圧器156の一次巻線156aの中性点が接地されている場合に“1”、非接地の場合に“0”になる信号である。なお、中性点接地状態信号Seを介在させている理由は、変圧器156の運用状態(中性点接地の有無)を正しく検知装置に判断させるためである。
【0045】
AND回路234は、「Se×(−Sb)×S30」となる信号S34を出力する。すなわち、信号S34は、「一次巻線156aの中性点が接地されており(Se=1)」、「遮断器152がオン状態であり(Sb=0)」、かつ、「中性点接地であれば一次側開放故障が発生している(S30=1)」という条件下で“1”になる。
【0046】
また、AND回路240は、「(−Se)×(−Sb)×S32」となる信号S40を出力する。すなわち、信号S40は、「一次巻線156aの中性点が非接地であり(Se=0)」、「遮断器152がオン状態であり(Sb=0)」、かつ、「中性点非接地であれば一次側開放故障が発生している(S32=1)」という条件下で“1”になる。
【0047】
タイムアップ回路236は、信号S34が所定時間以上連続して“1”であれば“1”になる信号S36を出力する。同様に、タイムアップ回路242は、信号S40が所定時間以上連続して“1”であれば“1”になる信号S42を出力する。そして、OR回路244は、信号S36,S42の論理和を判定信号Sjとして出力する。これにより、判定信号Sjは、電路154に開放故障が発生した場合に“1”になり、それ以外の場合に“0”になる信号になる。
【0048】
〈一実施形態の効果〉
以上のように本実施形態によれば、三相の変圧器(156)の一次巻線(156a)と、電力源(150)との間に接続された電路(154)に流れる一次側電流(ir,is,it)を計測する電流センサ(101)と、変圧器(156)の二次側電圧(vu,vv,vw)を計測する電圧センサ(114)と、一次側電流(ir,is,it)の位相関係と、二次側電圧(vu,vv,vw)と、に基づいて電路(154)における開放故障の有無を判別し、判別結果を出力する制御部(200)と、を有することを特徴とする。
これにより、一次側電流の位相関係と、二次側電圧と、に基づいて、電路故障を正確に検知できる。
【0049】
また、電流センサ(101)は、入射した光を反射する機能を有する巻線型光ファイバ電流センサであり、電流センサ(101)に対して光を出力し、電流センサ(101)から反射された光を受信することによって一次側電流(ir,is,it)を検出する信号処理部(133)と、電流センサ(101)と信号処理部(133)とを接続する光ファイバ(102)と、をさらに有する。
これにより、一次側電流(ir,is,it)を高精度に測定できるようになる。
【0050】
また、制御部(200)は、各相の一次側電流(ir,is,it)の振幅値の相互間の比率のうち所定の相電流偏差検出レート以上であるものが存在する場合(S2=1)、または、各相の一次側電流(ir,is,it)の相互間の位相差が所定の範囲(120°±α)を外れる場合(S8=1)に、開放故障が生じた旨を示す判定信号(Sj=1)を出力する。
これにより、一次側電流(ir,is,it)の振幅値および位相に基づいて、電路故障を一層正確に検知できる。
【0051】
また、制御部(200)は、変圧器(156)の二次側電圧(vu,vv,vw)における各相の振幅値の相互間の比率のうち、所定の相電圧偏差検出レート以上であるものが存在すると(S10=1)、開放故障が生じた旨を示す判定信号(Sj=1)を出力する。
これにより、二次側電圧の振幅値に基づいて、電路故障を一層正確に検知できる。
【0052】
また、制御部(200)は、変圧器(156)の二次側電圧(vu,vv,vw)における電圧の過去の値と現在の値との比率が所定の不足電圧検出レート以下である(S12=1)場合に、開放故障が生じた旨を示す判定信号(Sj=1)を出力する。
これにより、一次側電圧または二次側電圧の電圧に基づいて、電路故障を一層正確に検知できる。
【0053】
また、制御部(200)は、各相の一次側電流(ir,is,it)の相互間の位相差が所定の範囲(120°±α)を外れる場合であり(S8=1)、変圧器(156)の一次側における線間電流(ir−is,ir−it,is−it)の振幅値の相互間の比率は全て所定の線間電流偏差検出レート以上であり(S4=1)、かつ、一次側電流(ir,is,it)の振幅値の全てが所定の一次側電流検出閾値未満である(S6=1)場合、または、各相の一次側電流(ir,is,it)の相互間の位相差が所定の範囲(120°±α)を外れる場合であり(S8=1)、かつ、一次側電流(ir,is,it)の振幅値の全てが所定の一次側電流検出閾値以上である(S6=0)場合に、開放故障が生じた旨を示す判定信号(Sj=1)を出力する。
これにより、一次側電流の位相と、線間電流の振幅値と、一次側電流の振幅値と、に基づいて、電路故障を一層正確に検知できる。
【0054】
〈変形例〉
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0055】
上記実施形態において、制御部200はリレー回路等によって構成したが、制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを有するものを適用してもよい。