特許第6927984号(P6927984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6927984ノズル列の一方又は両方の縁領域で孔間隔が大きくなる孔あき板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927984
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ノズル列の一方又は両方の縁領域で孔間隔が大きくなる孔あき板
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
【請求項の数】24
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-536731(P2018-536731)
(86)(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公表番号】特表2019-501771(P2019-501771A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】EP2017000038
(87)【国際公開番号】WO2017121644
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】102016000390.1
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、ハンス−ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】クライナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ブベック、モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベイル、ティモ
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−254210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0375241(US,A1)
【文献】 特表2014−502920(JP,A)
【文献】 独国実用新案第202011001109(DE,U1)
【文献】 中国特許出願公開第103402726(CN,A)
【文献】 特開平08−274014(JP,A)
【文献】 特開平09−075825(JP,A)
【文献】 特開2005−028227(JP,A)
【文献】 特表2015−506412(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011056823(DE,A1)
【文献】 特開2002−096474(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1253626(EP,A2)
【文献】 特表2011−526832(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051071(US,A1)
【文献】 特開平07−037797(JP,A)
【文献】 特開2011−230410(JP,A)
【文献】 特開2010−040323(JP,A)
【文献】 特開2003−117460(JP,A)
【文献】 特表2016−513003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−3/18
7/00−9/08
B05C5/00−5/04
B05D1/00−7/26
B41J2/01−2/215
F27D7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を自動車車体及び/又はその付属品に塗布するための塗布装置の孔あき板(1)であって、
中央領域(2)及び2つの縁領域(3a、3b)を有する単一ノズル列に割り振られ、孔ピッチ(a1、a2、a3、a4、a5)で互いに離間して配置される、流体通過用の少なくとも4つの貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)を備え、
少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の最外から少なくとも1つの孔ピッチ(a1、a2)が、前記中央領域(2)にある少なくとも1つの孔ピッチ(a3)より大き
前記ノズル列の前記貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)の全ては、それぞれ、前記孔あき板(1)の上流面上にある孔入口開口(30)と、前記孔あき板(1)の下流面上にある三次元構造としてのパイプスタブ(70)を有する孔出口開口(40)とを備える、
孔あき板(1)。
【請求項2】
前記ノズル列が中心が直線上となるように並んでいる、及び/又は、前記ノズル列の全ての前記貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)の中心軸が直線的に並べられている、請求項1に記載の孔あき板(1)。
【請求項3】
前記ノズル列の全ての前記貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)の直径が揃いに形成されている、請求項1又は2に記載の孔あき板(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の最外孔ピッチ(a1)は、前記ノズル列の最大孔ピッチを有する、請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の最外から少なくとも2つの孔ピッチ(a1、a2)は、前記中央領域(2)にある少なくとも1つの前記孔ピッチ(a3)よりも大きい、請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の最外から少なくとも2つの孔ピッチ(a1、a2)は、揃い(a1=a2)又は不揃い(a1≠a2)に形成される、請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項7】
前記中央領域(2)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの孔ピッチ(a3)を有し、及び/又は、
前記少なくとも1つの縁領域(3a)は、少なくとも2つ又は少なくとも3つの孔ピッチ(a1、a2)を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項8】
前記中央領域(2)にある前記孔ピッチ(a3)は、前記中央領域(2)にある前記貫通孔(2.1)が等間隔で配置されるように、揃いに形成される、及び/又は、前記中央領域(2)にある全ての前記貫通孔(2.1)の直径が揃いに形成される、請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項9】
前記ノズル列の1つの縁領域(3a)にある最外孔ピッチ(a1)が、別の縁領域(3b)にある最外孔ピッチ(a5)と、揃い又は不揃いに形成され、又は、
前記ノズル列の前記1つの縁領域(3a)にある最から少なくとも2つのピッチ(a1、a2)は、前記別の縁領域(3b)にある最外から少なくとも2つの孔ピッチ(a4、a5)と、揃い又は不揃いに形成される、
請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項10】
1つの縁領域(3a)にある最外から少なくとも1つの孔ピッチ(a1、a2)が、前記中央領域(2)にある少なくとも1つの孔ピッチ(a3)よりも大きく、且つ、別の縁領域(3b)にある最外から少なくとも1つの孔ピッチ(a1、a2)が、前記中央領域(2)にある前記少なくとも1つの孔ピッチ(a3)と、揃いに形成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項11】
前記ノズル列は、実質的に台形の断面形状(6)を有する流体塗布物を形成するために構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項12】
記孔入口開口(30)は前記孔出口開口(40)よりも大きい流路断面を有し、及び/又は、
前記パイプスタブ(70)は、各前記パイプスタブ(70)の自由端に向けて先細りになっている外部ケーシング表面を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項13】
2つの前記縁領域(3a、3b)は、対称若しくは非対称に形成され、又は、前記ノズル列は、全体として対称的に形成される、請求項1から12のいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある最外孔ピッチ(a1)は、前記中央領域(2)にある各孔ピッチ(a3)の最大2又は3倍の大きさであり、又は、
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の最外から少なくとも2つの孔ピッチ(a1、a2)は、それぞれ、前記中央領域(2)にある各孔ピッチ(a3)の最大2又は3倍の大きさである、
請求項1から13のいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項15】
前記ノズル列の前記中央領域(2)にある少なくとも1つの貫通孔(2.1)、及び/又は、前記ノズル列の少なくとも1つの縁領域(3a)にある少なくとも1つの貫通孔(3.1)は、漏斗状孔口開口(30)を有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項16】
前記中央領域(2)にある前記少なくとも1つの貫通孔(2.1)の前記漏斗状孔入口開口(30)が、前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記少なくとも1つの貫通孔(3.1)の前記漏斗状孔入口開口(30)と比べて、前記孔あき板(1)の中のより深いところまで存在する、請求項15に記載の孔あき板(1)。
【請求項17】
前記ノズル列の前記中央領域(2)にある少なくとも1つの貫通孔(2.1)の孔入口開口(30)の入口断面(E)が、前記ノズル列の少なくとも1つの縁領域(3a)にある少なくとも1つの貫通孔(3.1)の孔入口開口(30)の入口断面(E)よりも大きい、請求項1から16のいずれか1項に記載の孔あき板(1)。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の孔あき板(1)を少なくとも1つ有する、流体を塗布するための塗布装置。
【請求項19】
前記塗布装置は、前記中央領域(2)とは独立に制御可能な少なくとも1つの縁領域(3a)での流体流入のために構成されている、請求項18に記載の塗布装置。
【請求項20】
前記2つの縁領域(3a、3b)が、同じ流体送達ユニットに接続されている、又は、それぞれが、それ自身の流体送達ユニットに接続されている、請求項18又は19に記載の塗布装置。
【請求項21】
前記塗布装置は、50mPa・sより大きい、80mPa・sより大きい、又は、100mPa・sより大きい粘度を有する流体を塗布するために構成されている、請求項18から20のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項22】
前記塗布装置は、互いに隣接して配置された少なくとも2つの孔あき板(1)を含み、前記孔あき板(1)のノズル列は、前記ノズル列の長手方向に互いにずれて配置されている、請求項18から21のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項23】
少なくとも1つの前記孔あき板(1)は、前記塗布装置の外端面上に配置される、請求項18から22のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項24】
請求項1から17のいずれか1項に記載の孔あき板(1)の少なくとも1つ又は請求項18から23のいずれか1項に記載の塗布装置により流体が塗布される、流体を塗布するための塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品、特に、自動車車体及び/又はその付属品に、流体を塗布するための塗布装置(例えば、塗布器)用の孔あき板(例えば、カバー)に関する。本発明は、さらに、こうした孔あき板を用いた塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コーティング媒体を、特に、オーバースプレーなしで、塗布するための塗布器用の孔あき板を開示する。この文献では、孔あき板は、コーティング媒体を塗布するためのいくつかの貫通孔を備えており、これらの貫通穴は、格子パターンで、従って、二次元配置で、いくつかのノズル列に配置されている。これにより、縁が鮮明なコーティング媒体線を作ることができる。しかし、縁が鮮明なコーティング媒体線は、少なくとも凡そ長方形の断面形状を有するので、重ね合わせるのには適していないという欠点がある。例えば、図13は、長方形の断面形状を有する2本のコーティング媒体線B及びB2の間での殆ど完璧な接続を示す。こうした完璧な接続は±50μmの分散を有するはずであり、これは図13の右に示すような最適のコーティングをもたらす。こうした完璧な接続は、例えば、許容差のために、実際には不可能であるか、又は、甚大な費用を掛けてのみ可能である。図14は、長方形の断面形状を有する2本のコーティング媒体線B及びB2を示す。これらの線は接続/重複領域で接触も重複もしていない。そのため、図14の右に示すように、得られたコーティングに不都合な凹みができる。図15は、長方形の断面形状を有する2本のコーティング媒体線B及びB2を示す。これらの線は重複コーティングが生じるように接続/重複領域で重複している。そのため、図15の右に示すように、得られたコーティングに不都合なピーク又は突出ができる。
【0003】
特許文献2は、コーティング線の重複に一層適する台形の形態の断面形状を提供する塗布装置を開示する。台形形状は、格子パターンで、従って、二次元配置で、いくつかのノズル列に配置される、コーティング媒体塗布用のいくつかの貫通穴を用いて得られる。異なる径のノズルの直径は、規則的又は表面的に分布しており、特に、表面コーティングでより良い解像度を得るために、役立つ。同じ又は異なる径のノズル直径を有する二次元配置及びこれより得られる台形形状は、まず、複数の貫通孔のため、高度に複雑である。さらに、二次元配置では、特に、車体を塗装する際よくあるようにコーティング媒体が連続的に塗布される場合に、コーティング媒体の流量が不必要に多くなる。また、二次元配置では、コーティング線を塗布する際に、移動方向に対して下流に配置されたノズル列からのコーティング媒体が、移動方向に対して上流に配置されたノズル列からのコーティング媒体の上に塗布されることとなるが、これは、まだ十分に乾燥又は固化していないコーティング媒体上にコーティング媒体が塗布されるため、コーティング媒体の飛び散りを不都合にも招きかねない。一般的な先行技術として、特許文献3も引用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013002413号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102010019612号明細書
【特許文献3】米国特許第5769949号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題の1つは、改善された及び/又は代わりとなる孔あき板、特に、2本の流体線の改善された接続領域若しくは重複領域を可能とする、及び/又は、流体の飛び散りが少なくとも実質的にない流体塗布物を可能とする孔あき板を設けることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、主要な請求項及び副次的な請求項に記載の特徴により達成できる。本発明の有利な修正例を従属請求項及び以下の本発明の好ましい実施形態の記載に示す。
【0007】
本発明は、部品、特に、自動車車体及び/又はその付属品に、流体を塗布するための塗布装置(例えば、塗布器)用の孔あき板(例えば、カバー、ストリップ、チップなど)を提供する。
【0008】
孔あき板及び/又は塗布装置は、霧化及び/又はマスキングなしでの流体の塗布に特に役立つ。
【0009】
流体は、例えば、コーティング媒体、特に、塗料、封止剤、分離剤、機能層、又は接着剤であってもよい。
【0010】
流体は、特に、1000s−1の剪断速度で測定して、好ましくは、50mPa・sより大きい、80mPa・sより大きい、また、さらには、100mPa・sより大きい粘度を有する。流体は、ニュートン力学的挙動を示すものでも、非ニュートン力学的挙動を示すものでもよい。
【0011】
孔あき板は、好ましくは、流体通過用の貫通孔を、少なくとも4つ又は少なくとも5つ有する。貫通孔は、好ましくは実質的に直線的に方向付けられたノズル列内に適宜に配置される。このノズル列は、2つの縁領域と、この2つの縁領域の間に適宜に存在する中央領域とを有する。貫通孔は、特に、孔間隔により互いに隔てられていてもよい。
【0012】
孔あき板は、少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の少なくとも1つの最外孔間隔が、好ましくは、実質的に台形の断面形状(例えば、実質的に直角な、等脚又は不等脚台形の断面形状、及び/又、実質的にガウス曲線形状の断面形状)を有する流体塗布物(例えば、流体線)が可能となるように、中央領域にある少なくとも1つの孔間隔よりも大きい点で特に特徴的である。
【0013】
前述の少なくとも1つの最外孔間隔は、特に、少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の外側から1つ目の孔間隔に対応する。
【0014】
前述の少なくとも2つ、少なくとも3つ、及び/又は、少なくとも4つの最外孔間隔は、特に、少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の最も外側にある、2つ、3つ、及び/又は4つの孔間隔に対応する。
【0015】
孔間隔のステッピング、即ち、適切な増加が、縁領域の一方のみの又は両方の、最外孔間隔、即ち、外側から1つ目の孔間隔についてだけ適用されてもよい。
【0016】
しかし、孔間隔のステッピング、即ち、適切な増加が、縁領域の一方のみにある又は両方にある、少なくとも2つ、少なくとも3つ、及び/又は、少なくとも4つの、最外孔間隔、即ち、最も外側にある孔間隔にわたって適用されてもよい。
【0017】
一方の縁領域のみで孔間隔が増加する場合、好ましくは、流体塗布物(例えば、流体線)は、実質的に直角な台形の断面形状で設けられてもよい。
【0018】
両方の縁領域で孔間隔が増加する場合、好ましくは、流体塗布物(例えば、流体線)は、実質的に等脚又は不等脚な台形の断面形状で設けられてもよい。
【0019】
特に、本発明は、2つの流体塗布物(例えば、流体線)の接続又は重複領域での層の厚さの分布の改善を可能とし、これにより、不利益にも人の目に知覚される層の厚さの上下を適切に有さない、視覚的に揃った流体表面(例えば、コーティング表面)が、もたらされる。この代わりに又はこれに加えて、本発明は、好ましくは単一ノズル列のみから、即ち、一次元ノズル配置で、流体を塗布することにより、塗布の飛び散りを抑制したり完全に避けたりすることを特に可能とする。なぜなら、接続又は重複領域において、以前に塗布した流体が、通常は、既に十分に乾燥又は硬化しており、流体の飛び散りをなすような傾向がまったくない、又は、少なくともそうした傾向が大幅に減少している状態で、このノズル列は流体を直接的に部品に塗布する(場合によっては2つの流体塗布物の接続又は重複領域を除いて塗布する)からである。
【0020】
本発明に係る孔あき板によれば、2つの適切に縁の明瞭な流体塗布物(例えば、流体線)の間の間隔許容差は、±150μm、±200μm、±500μm、±1mm、また、さらには、±2mmまでであってもよい。
【0021】
孔あき板は、好ましくは一次元ノズル配置が可能となるように、流体を塗布するために単一のノズル列のみを有してもよい。
【0022】
ノズル列が中心が直線状となるように方向付けられ、及び/又は、ノズル列の、好ましくは全ての、貫通孔の中心軸が、例えば1つの同じ位置決め線(好適には直線状の位置決め線)に沿って直線的に方向付けられることが可能である。
【0023】
ノズル列の、好ましくは全ての、貫通孔が、揃いに(例えば、実質的に同一に)構成されることが可能である。
【0024】
少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の最外孔間隔は、ノズル列の最大孔間隔を適宜有してもよい。
【0025】
少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の少なくとも2つの最外孔間隔は、中央領域にある少なくとも1つの孔間隔よりも大きくてもよい。
【0026】
少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の少なくとも2つの最外孔間隔は、揃いに(好適には、実質的に同じ大きさに)又は不揃いに(好適には、異なる大きさに)構成されてもよい。
【0027】
中央領域は、好ましくは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの孔間隔を有してもよく、即ち、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つの貫通孔を適宜有してもよい。
【0028】
少なくとも1つの縁領域は、例えば、少なくとも2つ又は少なくとも3つの孔間隔を有する。
【0029】
中央領域にある貫通孔が互いに等間隔に配置されるように、中央領域にある孔間隔が揃いに(好適には、実質的に同じ大きさに)構成されることが可能である。この代わりに又はこれに加えて、中央領域にある貫通孔が適宜揃いに形成されてもよい。
【0030】
ノズル列の1つの縁領域にある最外孔間隔が、別の縁領域にある最外孔間隔と、揃い(好適には実質的に同じ大きさ)又は不揃い(好適には異なる大きさ)に構成されることが可能である。
【0031】
ノズル列の1つの縁領域にある少なくともつの最外孔間隔が、別の縁領域にある少なくとも2つの最外孔間隔と、揃い(好適には実質的に同じ大きさ)又は不揃い(好適には異なる大きさ)に構成されることも可能である。
【0032】
1つの縁領域にある少なくとも1つの最外孔間隔は、例えば、中央領域にある少なくとも1つの孔間隔よりも大きくてもよく、別の縁領域にある少なくとも1つの最外孔間隔は、中央領域にある少なくとも1つの孔間隔と揃いに(例えば、実質的に同じ大きさに)形成されてもよい。
【0033】
ノズル列の、好ましくは全ての、貫通孔は、それぞれ、孔あき板の上流面上にある孔入口開口と、孔あき板の下流面上にある孔出口開口と、例えば、孔あき板の下流面上にある三次元構造であるパイプスタブとを有してもよい。
【0034】
孔入口開口は、例えば、孔出口開口よりも大きな流路断面を有してもよく、及び/又は、パイプスタブは、例えば、それぞれのパイプスタブの自由端に向けて、先細りの、特に、円錐状の外部ケーシング表面を有していてもよい。
【0035】
2つの縁領域は対称又は非対称に形成されてもよい。好ましくは、ノズル列は、全体として対称的に、特に、ノズル列に対して横方向に延びる対称軸に対して軸対称及び/又は鏡面対称に構成される。
【0036】
少なくとも1つの縁領域にある最外孔間隔が、中央領域の各孔間隔の最大2又は3倍の大きさであることが可能である。
【0037】
少なくとも1つの縁領域にあるノズル列の少なくとも2つの最外孔間隔が、それぞれ、中央領域の各孔間隔の最大2又は3倍の大きさであることが可能である。
【0038】
ノズル列の、好ましくは全ての、貫通孔が、揃いに(好適には、実質的に同一に)形成され、特に、同じ流路断面を有することが可能である。
【0039】
ノズル列の中央領域にある少なくとも1つの貫通孔、及び/又は、ノズル列の少なくとも1つの縁領域にある少なくとも1つの貫通孔は、漏斗状の孔入口開口を有し、さらに、好ましくは、円柱状の孔出口開口を有することが可能である。漏斗状の孔入口開口は、好ましくは、流体の流れの方向に狭まっている。
【0040】
例えば、中央領域にある少なくとも1つの貫通孔の漏斗状の孔入口開口は、少なくとも1つの縁領域にある少なくとも1つの貫通孔の漏斗状の孔入口開口よりも、孔あき板内に深く広がっていてもよい。この代わりに又はこれに加えて、ノズル列の中央領域にある少なくとも1つの貫通孔の孔入口開口の入口断面(例えば、入口側の流路断面)は、ノズル列の少なくとも1つの縁領域にある少なくとも1つの貫通孔の孔入口開口の入口断面(例えば、入口側の流路断面)よりも大きくてもよい。
【0041】
ノズル列は、重複に最適化された流体線の生成に特に適するように、実質的に台形の断面形状(例えば、実質的に直角な、等脚又は不等脚台形の断面形状、及び/又、実質的にガウス曲線形状の断面形状)を有する流体塗布物(例えば、流体線)を形成するよう特に構成されてもよい。
【0042】
特に好ましい実施形態では、ノズル列の貫通孔の孔入口開口は孔出口開口よりも大きい流路断面を有する。
【0043】
本発明は、孔あき板に限定されるものではなく、本願明細書に記載の孔あき板を少なくとも1つ有する、流体を塗布するための、塗布装置、例えば、塗布器も包含する。
【0044】
塗布装置は、ノズル列全体にわたって、即ち、好適には貫通孔の全てにわたって、等しい圧力での流体流入を保証するように構成されることが可能である。
【0045】
塗布装置は、中央領域とは独立に制御(例えば、調節)可能な少なくとも1つの縁領域での流体流入を保証するように構成されることも可能である。
【0046】
2つの縁領域は、例えば、同じ流体送達ユニットにより流体を供給されてもよいし、特に、個別に制御可能な(例えば、調節可能な)流体送達ユニットを介して流体をそれぞれの縁領域に供給できるように、それぞれが自分自身の流体送達ユニットを有してもよい。
【0047】
塗布装置は、好ましくは、特に、1000s−1の剪断速度で、好ましくは、50mPa・sより大きい、80mPa・sより大きい、又は、100mPa・sより大きい粘度を有する流体の塗布に役立つ。流体は、ニュートン力学的挙動を示すものでも、非ニュートン力学的挙動を示すものでもよい。
【0048】
塗布装置は、互いに隣接して配置された少なくとも2つの孔あき板、好ましくは、それらのノズル列がノズル列の長手方向に互いにずれて配置された孔あき板を有することが可能である。
【0049】
少なくとも1つの孔あき板は、特に、塗布装置の外端面に(例えば、外端面上又は内に)配置され、好ましくは、そうして外板を構成してもよい。そこで、少なくとも4つの貫通孔が、好ましくは、塗布装置からの出口穴を形成する。
【0050】
本発明は、さらに、本願明細書に記載の少なくとも1つの塗布装置及び/又は少なくとも1つの孔あき板を用いて流体を塗布する塗布方法も包含する。
【0051】
特に、流体は孔あき板の単一のノズル列から塗布されることが可能である。
【0052】
流体は、好ましくは、コーティング媒体、例えば、塗料、封止剤、分離剤、機能層、接着剤などであり、及び/又は、機能層を形成する役割を果たすものであってもよいことは特筆すべきだろう。
【0053】
機能層の分類として、例えば、接着促進剤、プライマーなどの表面機能化をもたらす層、又は、透過を抑制する層が特に挙げられる。
【0054】
本発明の文脈において、本願明細書に記載の孔あき板を、国際公開第2014/121926号に記載の特徴、特に、特許請求の範囲に記載の特徴で補完することが可能である。そこで、この特許出願の内容の全てが本出願の記載に取り込まれるべきである。
【0055】
本発明に係る孔あき板は、特に、孔あき板の上流面上にある孔入口開口と、孔あき板の下流面上にある孔出口開口と、孔あき板の上流面上及び/又は孔あき板の下流面上にある例えば三次元の構造とを有してもよい。
【0056】
孔入口開口は、流体的に最適化されており、特に、ノズル状であり、及び/又は、孔入口開口は、孔出口開口よりも大きな(流路)断面を有することが可能である。
【0057】
パイプスタブは、孔あき板の下流面から突き出し、貫通孔がそれに移行していくものであり、特に、孔出口開口での湿潤表面積を減らすためのものである構造としての役割を果たすことが可能である。
【0058】
パイプスタブは、例えば、それぞれのパイプスタブの自由端に向けて、先細りの、特に、円錐状の外部ケーシング表面を有していてもよい。
【0059】
孔あき板は、例えば、貫通孔を有する中央領域よりも縁部での厚さが大きくてもよい。
【0060】
好ましくは、孔あき板にある全ての貫通孔が、エッチング製造法、特に、ドライエッチング又はウェットエッチングにより、少なくとも部分的に製造されることが可能である。
【0061】
孔あき板は、特に、半導体材料、例えば、シリコン、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、ガリウム、ヒ化ガリウム、及び/又は、リン化インジウムなどのひとつから少なくとも部分的になるものでもよい。
【0062】
本発明の文脈において、実質的に台形の断面形状という特徴は、好ましくは、例えば、実質的にガウス曲線形状の断面形状なども含んでよいことも言及すべきだろう。
【0063】
上述した本発明の好ましい実施形態は互いに組み合わせてもよい。本発明の他の有利な修正例は、請求項に開示されているし、また、以下の本発明の好ましい実施形態にも図面と連携しつつ記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の一実施形態に係るノズル列を有する孔あき板を示す。
図2】本発明の別の実施形態に係るノズル列を有する孔あき板を示す。
図3】本発明のさらに別の実施形態に係るノズル列を有する孔あき板を示す。
図4】本発明のさらに別の実施形態に係るノズル列を有する孔あき板を示す。
図5A】本発明の一実施形態における、本発明に係る孔あき板により作られた2つの流体塗布物の模式断面図を示す。
図5B】本発明の一実施形態における、本発明に係る孔あき板により作られた2つの流体塗布物の模式断面図を示す。
図6】本発明の一実施形態に係る孔あき板の貫通孔の断面図を示す。
図7A】本発明の一実施形態の別の変形例に係る孔あき板の貫通孔の断面図を示す。
図7B】貫通孔内にコーティング媒体があるときの図7Aの断面図を示す。
図8A】本発明の別の実施形態に係る、湿潤表面積を減らすための追加のパイプスタブを有する、図7Aの変形例を示す。
図8B】貫通孔内にコーティング媒体があるときの図8Aの断面図を示す。
図9】本発明の別の実施形態に係る、円錐状に先細りになっているパイプスタブを有する、図8Aの変形例を示す。
図10A】本発明の別の実施形態に係る、強化された縁部と貫通孔を有するより薄い中央領域とを備える孔あき板の模式断面図を示す。
図10B】本発明の別の実施形態に係る、図10Aの変形例を示す。
図11】本発明の別の実施形態に係る、図6の変形例を示す。
図12A】本発明の別の実施形態に係る、孔あき板を有する塗布装置(塗布器)を示す。
図12B】本発明の別の実施形態に係る塗布装置(塗布器)を示す。
図13】先行技術に係る2つのコーティング媒体線を示す。
図14】先行技術に係る2つのコーティング媒体線を示す。
図15】先行技術に係る2つのコーティング媒体線を示す。
図16】本発明の一実施形態に係る孔あき板の貫通孔の断面図を示す。
図17】本発明の別の実施形態に係る孔あき板の貫通孔の断面図を示す。
図18】本発明のさらに別の実施形態に係る孔あき板の貫通孔の断面図を示す。
図19】本発明のさらなる実施形態に係る孔あき板の貫通孔の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図面を参照しつつ記載される実施形態は、部分的に関連するので、類似又は同一の部品は、同じ符号で示し、繰り返しを避けるために、それらの説明について、1以上の他の実施形態の記載も参照する。
【0066】
図1は、流体を部品(例えば、自動車車体及び/又はその付属品)に塗布する、好ましくは、噴霧もマスキングも無しで塗布するための、塗布装置用の、孔あき板1を示す。
【0067】
孔あき板1は、流体を通すための7つの貫通孔2.1、3.1、3.2、及び3.3を含む。貫通孔2.1、3.1、3.2、及び3.3は、中央領域2と2つの縁領域3a及び3bを有する1つのノズル列に割り振られており、孔間隔a1、a2、及びa3で互いに離間して配置されている。
【0068】
ノズル列は、特に、中央領域2(4つの貫通孔2.1を有する)、第1縁領域3a(図1左、2つの貫通孔3.1及び3.2を有する)、及び第2縁領域3b(図1右、1つの貫通孔3.3を有する)を備える。
【0069】
第1縁領域3aは、2つの最外孔間隔a1及びa2を備える。第2縁領域3bは、1つの最外孔間隔a3を備える。
【0070】
縁領域3aにある2つの最外孔間隔a1及びa2は、中央領域にある孔間隔a3よりも大きい。
【0071】
中央領域2にある貫通孔2.1は、等しい大きさの孔間隔a3で、互いに、等間隔に配置されている。
【0072】
縁領域3bにある最外孔間隔a3は、中央領域2にある孔間隔a3と揃いに形成されている。
【0073】
縁領域3aにある2つの最外孔間隔a1及びa2は、適宜、揃い(a1=a2)又は不揃い(a1≠a2)に形成されてもよい。
【0074】
孔あき板1は、単一のノズル列のみを有し、このノズル列は、ノズル列の、好ましくは全ての、貫通孔2.1、3.1、3.2、及び3.3の中心軸が1つの同じ位置決め線4に沿って直線的に並べられるように、直線状の位置決め線4に沿って中心が直線上に並べられている。
【0075】
ノズル列の貫通孔2.1、3.1、3.2、及び3.3は、好ましくは、揃っており、即ち、実質的に同一に形成されている。
【0076】
両矢印5は、部品に対する孔あき板1の2つのあり得る移動方向を示す。
【0077】
図2は、本発明の別の実施形態に係る孔あき板1を示す。
【0078】
図2に示す孔あき板1では、孔間隔のステッピング、即ち、増加が、縁領域3a及び3bの両方で生じている。
【0079】
そのため、第1の縁領域3aの貫通孔3.1及び3.2が、孔間隔a1及びa2で互いに離間して配置されてもよいし、第2の縁領域3bの貫通孔3.1及び3.2が、孔間隔a4及びa5で互いに離間して配置されてもよい。
【0080】
孔間隔a1、a2、a4、及びa5は、全て、中央領域2にある揃った孔間隔a3よりも大きい。
【0081】
縁領域3aにある2つの最外孔間隔a1及びa2は、縁領域3bにある2つの最外孔間隔a4及びa5と、揃い又は不揃いに形成されてもよい(a1=a5、a1≠a5、a2=a4、a2≠a4)。
【0082】
図2に示す実施形態では、図1とは異なり、ノズル列は、全体として対称的に、特に、ノズル列に対して横方向に延びる対称軸Sに対して軸対称及び/又は鏡面対称に構成されてもよい。
【0083】
図3は、本発明のさらに別の実施形態に係る孔あき板1を示す。
【0084】
図3に示す孔あき板1では、孔間隔の増加は、縁領域3a及び3bの両方で生じている。しかし、2つの縁領域3a及び3bは、(図2に示されるような)2つの孔間隔をそれぞれが有するのではなく、1つの孔間隔a1及びa4のみをそれぞれが有する。
【0085】
ここで、縁領域3aにある最外孔間隔a1は、縁領域3bにある最外孔間隔a4と、揃い又は不揃いに形成されてもよい(a1=a4、a1≠a4)。
【0086】
図4は、本発明のさらに別の実施形態に係る孔あき板1を示す。
【0087】
図4に示す孔あき板1では、縁領域3にあるノズル列の最外孔間隔a1のみが、中央領域2にある揃った孔間隔a3より大きい。
【0088】
縁領域3bにある最外孔間隔a3は、中央領域2にある孔間隔a3と揃いに構成される。
【0089】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る、孔あき板1により作ることのできる2つの流体線B1及びB2を通る断面の模式図を示す。
【0090】
コーティング媒体線B1及びB2の断面は、実質的に等脚の台形形状6を有しており、接続又は重複領域で重複している。2つの流体線B1及びB2の間の間隔許容差は、±150μm、±200μm、±500μm、±1mm、また、さらには、±2mmの範囲であってもよい。台形形状6は、図5Aで右側に示すように、最適のコーティングを、特に、重複領域で、もたらす。
【0091】
図5Bは、本発明の一実施形態に係る、孔あき板1により作ることのできる流体線B1を通る断面の模式図を示す。この断面は実質的に直角な台形形状6を有する。
【0092】
図1から4に係る孔あき板1は、流体を塗布するための塗布装置との使用に適切に役立つ。塗布装置は、ノズル列全体にわたって実質的に等しい圧力での流体の流入を保証するように構成されてもよい。
【0093】
また、塗布装置は、中央領域2とは独立に制御可能(例えば、調節可能)な少なくとも1つの縁領域3a又は3bでの流体流入を可能とするように構成されてもよい。
【0094】
2つの縁領域3a及び3bは、例えば、同じ流体送達ユニットにより又はそれぞれがそれ自身の流体送達ユニットにより、流体を供給されてもよい。
【0095】
図6から11は、ノズル列の各貫通孔2.1、3.1、3.2、及び3.3を構成し得る本発明の好ましい実施形態に係る貫通孔構成を示す。ここで、孔あき板1、特に、貫通孔は、国際公開第2014/121926号に記載されているように構成してもよい。そこで、この特許出願の内容の全てが本出願の記載に取り込まれるべきである。
【0096】
図6は、貫通孔の1つの領域における孔あき板1の断面図を示す。断面図内の矢印は、貫通孔を通るコーティング媒体の流れ方向を示す。この断面図から、貫通孔の流体抵抗が減少する流体的に最適な孔入口開口30を貫通孔が有することは明らかである。
【0097】
さらに、孔あき板1は、湿潤性を減少させる構造を、下流面上で各貫通孔の外周縁上に有する。
【0098】
図7A及び7Bは、貫通孔の領域における孔あき板1の別の断面図を示す。図7Aはコーティング媒体がない状態の貫通孔を示し、図7Bはコーティング媒体(例えば、流体)50を示す。
【0099】
これから、コーティング媒体50が、孔あき板1の下流表面上の湿潤表面60を濡らし、これが、孔あき板1からのコーティング媒体50のジェット形放出を妨げることは明らかである。
【0100】
図8A及び8Bは、湿潤性の減少した本発明の好ましい実施形態を示す。このため、孔あき板1は、個別の貫通孔のそれぞれの外周縁上にパイプスタブ70を有している。パイプスタブ70の自由端でパイプスタブ70の端面が湿潤表面80を形成するように、貫通孔はパイプスタブ70に移行している。そこで、湿潤表面80は、パイプスタブ70の自由端面に制限されており、そのため、図7Aの湿潤表面60よりも実質的に小さい。これは孔あき板1からのコーティング媒体50の放出を促進する。
【0101】
孔あき板1の下流面とパイプスタブ70の自由端との間で、パイプスタブ70は、例えば、長さLを有している。長さLは、好ましくは、50μm、70μm、又は100μmより大きく、及び/又は、200μm、170μm、又は150μmより小さい。そこで、パイプスタブ70は、例えば、50から200μm、70から170μm、又は100から150μmの間の長さLを有していてもよい。
【0102】
図9は、パイプスタブ70の自由端の湿潤表面が最小となるように、パイプスタブ70の外部ケーシング表面がパイプスタブ70の自由端に向けて先細りとなっている、図8Aの修正例を示す。
【0103】
図10Aは、上述の孔あき板と部分的に関連する孔あき板1の模式断面図を示す。そこで、繰り返しを避けるために、上述の記載を参照し、対応する部分には同じ符号を用いる。
【0104】
この例示的実施形態の特別な特徴の1つとしては、孔あき板1が、外側には比較的厚い縁90を、中央には貫通孔のあるより薄い領域100を有する点が挙げられる。ここで、孔あき板1の厚い縁90は、十分な機械的安定性を保証し、一方、貫通孔のある領域100での厚みの減少は、貫通孔が比較的に低い流れ抵抗のみをもたらすことを保証する。
【0105】
図10Bは、図10Aの修正例を示す。そこで、繰り返しを避けるために、図10Aの記載を参照し、対応する部分には同じ符号を用いる。
【0106】
この例示的実施形態の特別な特徴は、領域100が一方の側でのみ厚みが減少している点である。
【0107】
図中、鋭利な縁及び角は、例としてそう描いたに過ぎず、有利には、流体的に最適化するため又は洗浄性を改善するために丸めてもよい。
【0108】
図11に示す貫通孔の例示的実施形態の特別な特徴は、上流の孔入口開口で、貫通孔が、最初は、第1の内径を有する円柱状領域200を有する点である。
【0109】
その後、流れ方向に、円柱状領域200に続いて、流れ方向に先細りになりる円錐形領域210がある。
【0110】
ここで、孔出口開口の内径dが、好ましくは、円柱状領域200の内径よりも実質的に小さいことは重要である。
【0111】
図12Aは、部品160(例えば、自動車車体部品)をコーティングするために、本発明に係る孔あき板1を備える、塗布装置、特に、塗布器の極めて単純化した模式図を示す。
【0112】
ここで、コーティング媒体のジェット170が、孔あき板1の個別の貫通孔から出て、部品160の表面にコーティング媒体の連続膜を形成する。コーティング媒体の個別のジェット170は、図12Aに示すように液滴状のジェットとして形成されてもよいし、図12Bに示すように、コーティング媒体の連続したジェット、特に、液滴を形成しないものとして形成されてもよい。
【0113】
さらに、図12A及び12Bは、孔あき板1に接続される塗布器180と、塗布器180に接続される塗布機材190(接続を模式的な線で表す)とを示す。
【0114】
また、図12A及び12Bは、孔あき板1の貫通孔がが塗布装置からの出口孔を形成するように、塗布装置の外端面上に配置されることも示す。
【0115】
図16は、本発明の一実施形態に係る孔あき板1の貫通孔の断面図を示す。この貫通孔は、入口断面Eを有する漏斗状の孔入口開口30と円柱状の孔出口開口40とを備える。
【0116】
図17は、本発明の別の実施形態に係る孔あき板1の貫通孔の断面図を示す。この貫通孔は、入口断面Eを有する漏斗状の孔入口開口30と円柱状の孔出口開口40とを備え、図17の漏斗状の孔入口開口30は図16の漏斗状の孔入口開口30よりも孔あき板1内に深く広がっている。
【0117】
図18は、本発明の別の実施形態に係る孔あき板1の貫通孔の断面図を示す。この貫通孔は、入口断面Eを有する漏斗状の孔入口開口30と円柱状の孔出口開口40とを備え、図18の漏斗状の孔入口開口30は図17の漏斗状の孔入口開口30よりも孔あき板1内に深く広がっている。
【0118】
図19は、本発明の別の実施形態に係る孔あき板1の貫通孔の断面図を示す。この貫通孔は、入口断面Eを有する漏斗状の孔入口開口30と円柱状の孔出口開口40とを備え、図19の漏斗状の孔入口開口30は図18の漏斗状の孔入口開口30よりも孔あき板1内に深く広がっている。
【0119】
図16から19は、孔入口開口30が漏斗状に構成された貫通孔の円柱割合を変えることで流量に影響を与えることができるという追加の可能性を特に示す。貫通孔の円柱割合を減少又は拡大できるように漏斗状の孔入口開口30を設けることで、図16から19では(基準)開口径d及び入口断面Eが同じ大きさであるものの、貫通孔を通る流体体積流量をさらに増加又は減少させることができる。ここで、図16が最も小さい、図17が2番目に小さい、図18が3番目に小さい、そして、図19が最も大きい、流体体積流量を可能とする。
【0120】
図16から19に示す貫通孔は、好適には、ノズル列の中央領域2内及び/又はノズル列の少なくとも1つの縁領域3a、3b内で使用できる。
【0121】
本発明の実施形態に係る塗布装置は、互いに隣接して配置された少なくとも2つの孔あき板1であって、それらのノズル列がノズル列の長手方向に互いにずれて配置された孔あき板を有してもよいことは言及せねばなるまい。ここで、孔あき板1は、外板を構成するように、塗布装置の外端面上に配置される。
【0122】
本発明は上述の好ましい実施形態に制限されるものではない。むしろ、本発明の概念を利用し、それ故、本権利保護範囲に含まれる、種々の変形例及び修正例が可能である。さらに、また、本発明は、従属請求項が参照する特徴及び請求項とは独立に、従属請求項の主題及び特徴についての権利保護も請求する。
【0123】
[付記]
[付記1]
流体を、部品、好ましくは、自動車車体及び/又はその付属品に塗布するための塗布装置用の孔あき板(1)であって、
中央領域(2)及び2つの縁領域(3a、3b)を有するノズル列に割り振られ、孔間隔(a1、a2、a3、a4、a5)で互いに離間して配置される、流体通過用の少なくとも4つの貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)を備え、
少なくとも1つの縁領域(3a)にあるノズル列の少なくとも1つの最外孔間隔(a1、a2)が、前記中央領域(2)にある少なくとも1つの孔間隔(a3)より大きい、孔あき板(1)。
【0124】
[付記2]
前記孔あき板(1)は、流体を塗布するために単一のノズル列のみを有する、付記1に記載の孔あき板(1)。
【0125】
[付記3]
前記ノズル列が中心が直線上となるように並んでいる、及び/又は、前記ノズル列の全ての前記貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)の中心軸が、好ましくは、一つの同じ直線位置決め線(4)に沿って、直線的に並べられている、付記1又は2に記載の孔あき板(1)。
【0126】
[付記4]
前記ノズル列の全ての貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)が揃いに形成されている、付記1から3のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0127】
[付記5]
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の最外孔間隔(a1)は、前記ノズル列の最大孔間隔を有する、付記1から4のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0128】
[付記6]
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の少なくとも2つの最外孔間隔(a1、a2)は、前記中央領域(2)にある少なくとも1つの前記孔間隔(a3)よりも大きい、付記1から5のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0129】
[付記7]
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の少なくとも2つの最外孔間隔(a1、a2)は、揃い(a1=a2)又は不揃い(a1≠a2)に形成される、付記1から6のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0130】
[付記8]
前記中央領域(2)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの孔間隔(a3)を有し、及び/又は、
前記少なくとも1つの縁領域(3a)は、少なくとも2つ又は少なくとも3つの孔間隔(a1、a2)を有する、
付記1から7のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0131】
[付記9]
前記中央領域(2)にある前記孔間隔(a3)は、前記中央領域(2)にある前記貫通孔(2.1)が等間隔で配置される及び/又は前記中央領域(2)にある全ての前記貫通孔(2.1)が揃いに形成されるように、揃いに形成される、付記1から8のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0132】
[付記10]
前記ノズル列の1つの縁領域(3a)にある最外孔間隔(a1)が、別の縁領域(3b)にある最外孔間隔(a5)と、揃い又は不揃いに形成され、又は、
前記ノズル列の前記1つの縁領域(3a)にある少なくとも2つの最外孔間隔(a1、a2)は、前記別の縁領域(3b)にある少なくとも2つの最外孔間隔(a4、a5)と、揃い又は不揃いに形成される、
付記1から9のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0133】
[付記11]
1つの縁領域(3a)にある少なくとも1つの最外孔間隔(a1、a2)が、前記中央領域(2)にある少なくとも1つの最外孔間隔(a3)よりも大きく、且つ、別の縁領域(3b)にある少なくとも1つの最外孔間隔(a1、a2)が、前記中央領域(2)にある前記少なくとも1つの最外孔間隔(a3)と、揃いに形成されている、付記1から10のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0134】
[付記12]
前記ノズル列は、実質的に台形の断面形状(6)を有する流体塗布物を形成するために構成されている、付記1から11のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0135】
[付記13]
前記ノズル列の、前記貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)、好ましくは、前記貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)の全ては、それぞれ、前記孔あき板(1)の上流面上にある孔入口開口(30)と、前記孔あき板(1)の下流面上にある孔出口開口(40)と、前記孔あき板(1)の下流面上にある三次元構造としてのパイプスタブ(70)とを備え、
前記孔入口開口(30)は前記孔出口開口(40)よりも大きい流路断面を有し、及び/又は、
前記パイプスタブ(70)は、各前記パイプスタブ(70)の自由端に向けて、特に、円錐状に、先細りになっている外部ケーシング表面を有する、付記1から12のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0136】
[付記14]
2つの前記縁領域(3a、3b)は、対称若しくは非対称に形成され、又は、前記ノズル列は、全体として対称的に、特に、前記ノズル列に対して横方向に延びる対称軸に対して軸対称及び/又は鏡面対称に形成される、付記1から13のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0137】
[付記15]
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある最外孔間隔(a1)は、前記中央領域(2)にある各孔間隔(a3)の最大2又は3倍の大きさであり、又は、
前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記ノズル列の少なくとも2つの最外孔間隔(a1、a2)は、それぞれ、前記中央領域(2)にある各孔間隔(a3)の最大2又は3倍の大きさである、
付記1から14のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0138】
[付記16]
前記ノズル列の前記中央領域(2)にある少なくとも1つの貫通孔(2.1)、及び/又は、前記ノズル列の少なくとも1つの縁領域(3a)にある少なくとも1つの貫通孔(3.1)は、漏斗状孔出口開口(30)と、好ましくは、円柱状孔出口開口(40)とを有する、付記1から15のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0139】
[付記17]
前記中央領域(2)にある前記少なくとも1つの貫通孔(2.1)の前記漏斗状孔入口開口(30)が、前記少なくとも1つの縁領域(3a)にある前記少なくとも1つの貫通孔(3.1)の前記漏斗状孔開口(30)と比べて、前記孔あき板(1)の中のより深いところまで存在する、付記16に記載の孔あき板(1)。
【0140】
[付記18]
前記ノズル列の前記中央領域(2)にある少なくとも1つの貫通孔(2.1)の孔入口開口(30)の入口断面(E)が、前記ノズル列の少なくとも1つの縁領域(3a)にある少なくとも1つの貫通孔(3.1)の孔入口開口(30)の入口断面(E)よりも大きい、付記1から17のいずれか1つに記載の孔あき板(1)。
【0141】
[付記19]
付記1から18のいずれか1つに記載の孔あき板(1)を少なくとも1つ有する、流体を塗布するための塗布装置。
【0142】
[付記20]
前記塗布装置は、前記ノズル列の全体に渡って等しい圧力での流体流入のために構成されている、付記19に記載の塗布装置。
【0143】
[付記21]
前記塗布装置は、前記中央領域(2)とは独立に制御可能な少なくとも1つの縁領域(3a)での流体流入のために構成されている、付記19又は20に記載の塗布装置。
【0144】
[付記22]
前記2つの縁領域(3a、3b)が、同じ流体送達ユニットに接続されている、又は、それぞれが、それ自身の流体送達ユニットに接続されている、付記19から21のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0145】
[付記23]
前記塗布装置は、50mPa・sより大きい、80mPa・sより大きい、又は、100mPa・sより大きい粘度を有する流体を塗布するために構成されている、付記19から22のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0146】
[付記24]
前記塗布装置は、互いに隣接して配置された少なくとも2つの孔あき板(1)を含み、前記孔あき板(1)のノズル列は、前記ノズル列の長手方向に互いにずれて配置されている、付記19から23のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0147】
[付記25]
少なくとも1つの前記孔あき板(1)は、前記塗布装置の外端面上に、好ましくは、少なくともつの貫通孔(2.1、3.1、3.2、3.3)が前記塗布装置からの出口孔を形成するように、配置される、付記19から24のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0148】
[付記26]
付記1から18のいずれか1つに記載の孔あき板(1)の少なくとも1つ又は付記19から25のいずれか1つに記載の塗布装置により流体が塗布される、流体を塗布するための塗布方法。
【符号の説明】
【0149】
1 孔あき板、例えば、カバー
2 中央領域
2.1 中央領域にある貫通孔
3a 縁領域(好適には、1つ目)
3b 縁領域(好適には、2つ目)
3.1 最外貫通孔
3.2 2番目に外側の最外貫通孔
4 位置決め線(好適には、直線状の位置決め線)
5 孔あき板の移動方向
6 実質的に台形の流体の断面形状
30 孔入口開口
40 孔出口開口
50 流体(コーティング媒体)
60 湿潤表面
70 パイプスタブ
80 湿潤表面
90 縁
100 貫通孔を有する領域
110 強化帯
160 部品
170 流体/コーティング媒体のジェット
180 塗布器
190 塗布機材
200 貫通孔の円柱状領域
210 貫通孔の円錐状領域
d 開口径
a1 1つの縁領域の最外孔間隔
a2 1つの縁領域の2番目に外側の最外孔間隔
a3 中央領域の孔間隔(特に、揃った孔間隔)
a4 別の縁領域の2番目に外側の最外孔間隔
a5 別の縁領域の最外孔間隔
B1 流体塗布物(特に、流体線)
B2 流体塗布物(特に、流体線)
S 対称軸
L パイプスタブの長さ
E 入口断面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19