特許第6927991号(P6927991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927991
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】眼科手術のための可視化システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20210823BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20210823BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   A61F9/007 200C
   A61B34/20
   A61B3/12
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-545310(P2018-545310)
(86)(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公表番号】特表2019-511273(P2019-511273A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(86)【国際出願番号】IB2017051775
(87)【国際公開番号】WO2017168328
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】15/087,585
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】タモ ヘーレン
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184846(US,A1)
【文献】 特開2014−188275(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0221822(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0173644(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0342460(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 3/12
A61B 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の眼底画像を生成するように構成された画像化ユニットと、
前記眼の深度分解画像を生成するように構成された深度画像化システムと、
前記画像化ユニットと前記深度画像化システムとに通信的に結合された追跡システムとを含み、
前記追跡システムは、プロセッサ及びメモリを含み、前記プロセッサ及び前記メモリは、
前記画像化ユニットによって生成された前記眼底画像を解析して、前記眼底画像内における手術器具の遠位先端の位置を特定することと、
前記深度画像化システムによって生成された前記深度分解画像を解析して、前記手術器具の前記遠位先端と前記眼の網膜との間の距離を特定することと、
前記眼底画像の一部に重なる視覚インジケータを生成することであって、前記視覚インジケータは、前記遠位先端と前記網膜との間の前記特定された距離を示す、生成することと、
前記眼底画像内における前記遠位先端の前記位置の変化を追跡するように前記視覚インジケータをリアルタイムで変更することと、
前記手術器具の前記遠位先端と前記網膜との間の前記距離の変化を示すように前記視覚インジケータをリアルタイムで変更することと
を行うように構成されており、
前記追跡システムの前記プロセッサ及び前記メモリは、前記手術器具の前記遠位先端と前記眼の網膜との間の距離を、一定のZ深さを有する前記深度分解画像内における、個々に一定距離に対応する画像の画素の解析に基づいて計算するように更に構成されている、眼科手術システム。
【請求項2】
前記深度画像化システムは、前記眼の深度分解画像を、前記手術器具に組み込まれた画像化プローブによって受信された信号に基づいて生成するように構成されている、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項3】
前記追跡システムの前記プロセッサ及び前記メモリは、前記眼底画像内の前記手術器具の前記遠位先端に重なる前記視覚インジケータを生成するように構成されている、請求項1又は2に記載の眼科手術システム。
【請求項4】
前記追跡システムの前記プロセッサ及び前記メモリは、前記視覚インジケータの大きさを前記手術器具の前記遠位先端と前記網膜との間の距離の前記変化に比例して増加又は減少させることにより、前記手術器具の前記遠位先端と前記網膜との間の前記距離の前記変化を示すように前記視覚インジケータを変更するように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【請求項5】
前記追跡システムの前記プロセッサ及び前記メモリは、前記視覚インジケータの色を変更することにより、前記手術器具の前記遠位先端と前記網膜との間の前記距離の前記変化を示すように前記視覚インジケータを変更するように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【請求項6】
前記深度画像化システムは、前記眼のOCT画像を生成するように構成された光干渉断層(OCT)システムであり、前記OCTシステムは、
OCT画像化ビームを生成するように動作可能なOCT光源と、
前記OCT画像化ビームを導くように動作可能なビームスキャナと
を含み、及び
前記追跡システムは、前記OCT画像を解析して、前記手術器具の前記遠位先端と前記眼の前記網膜との間の前記距離を特定するように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【請求項7】
前記追跡システムの前記プロセッサ及び前記メモリは、前記眼底画像内の前記手術器具の前記遠位先端の前記特定された位置に基づき、前記手術器具の前記遠位先端を含む前記眼の特定の領域に前記OCT画像化ビームを導くことを前記ビームスキャナに行わせるように更に構成されている、請求項6に記載の眼科手術システム。
【請求項8】
前記手術器具は、前記OCT画像化ビームを送信するように構成された第1の光ファイバーと、前記眼によって反射された光を送信するように構成された第2の光ファイバーとを含む、請求項6又は7に記載の眼科手術システム。
【請求項9】
前記追跡システムの前記プロセッサ及び前記メモリは、
前記眼底画像の強調画像を生成することと、
前記強調画像内のマーカー画像を推定することと、
前記強調画像から前記マーカー画像を抽出することと、
前記マーカーの前記画像から前記マーカーの位置を特定することと
により、前記眼底画像内の前記手術器具の前記遠位先端の前記位置を特定するように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【請求項10】
前記視覚インジケータ及び前記眼底画像は、接眼レンズ内又はヘッドアップスクリーン上に表示される、請求項1〜のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【請求項11】
前記視覚インジケータは、ユーザによって構成可能である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【請求項12】
前記画像化ユニットは、手術用顕微鏡、2次元カメラ、線走査カメラ及び共焦点走査検眼鏡に使用されるような単一の検出器の少なくとも1つを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の眼科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、手術処置に関し、特に眼科手術用可視化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの顕微手術処置では、体組織の精密な切除及び/又は除去を要する。例えば、特定の眼の外科的処置では、眼の後区を満たす透明なゼリー状の物質である硝子体液の切除及び/又は除去を要する。硝子体液又は硝子体は、多くの場合、網膜に付着する多くの微視的な筋原線維からなる。硝子体の切除及び除去は、網膜の牽引、脈絡膜からの網膜の分離、網膜裂孔又は最悪の場合には網膜自体の切除及び除去を回避するように細心の注意を払って行わなければならない。可動組織管理(mobile tissue management)(例えば、網膜の剥離部分又は網膜裂孔近傍の硝子体の切除及び除去)などの一部の繊細な作業、硝子体基底部の切開、並びに膜の切除及び除去は特に困難である。
【0003】
眼の後区の手術で使用される顕微手術切除プローブは、典型的には、毛様体扁平部の近傍の強膜の切開を通して挿入される。外科医はまた、後区手術中、光ファイバー照明器、灌流カニューレ、画像化プローブ(例えば、OCTプローブ)又は吸引プローブなどの他の顕微手術器具を挿入し得る。
【0004】
これらの種類及び他の種類の外科的処置において外科医を補助するために、外科医は、患者の眼の組織など、治療される組織の顕微鏡像を呈する画像化システムを用い得る。したがって、このような画像化システムのユーザは、鉗子又は他のツールなどの手術器具及び眼の関心領域の拡大像を提供され得る。このようなシステムは、眼の関心領域の光干渉断層(OCT)画像など、外科医にとって有用となり得る追加情報も外科医に提供し得る。OCT画像化では、一般に、近赤外光を使用し、表面下の組織の画像を得るか又は生成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像化システムの進歩にもかかわらず、眼の手術処置の実施は依然として困難である。とりわけ、ステレオ顕微鏡画像を見る外科医にとって、眼内に挿入された手術ツールの深さ及び網膜などの特定の組織に対するその近さを正確に認識することは困難な場合がある。外科医は、繊細な処置中のガイダンスにおいて、通常、長い年月にわたって培った経験及び判断に依存するため、患者の安全及び手術結果を向上させるために可視化技術の改良が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態では、眼科手術システムは、眼の眼底画像を生成するように構成された画像化ユニットと、眼の深度分解画像を生成するように構成された深度画像化システムとを含む。システムは、画像化ユニットと深度画像化システムとに通信的に結合された追跡システムを更に含む。追跡システムは、プロセッサ及びメモリを含み、プロセッサ及びメモリは、画像化ユニットによって生成された眼底画像を解析して、眼底画像内における手術器具の遠位先端の位置を特定することと、深度画像化システムによって生成された深度分解画像を解析して、手術器具の遠位先端と眼の網膜との間の距離を特定することと、眼底画像の一部に重なる視覚インジケータを生成することであって、視覚インジケータは、遠位先端と網膜との間の特定された距離を示す、生成することと、眼底画像内における遠位先端の位置の変化を追跡するように視覚インジケータをリアルタイムで変更することと、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化を示すように視覚インジケータをリアルタイムで変更することとを行うように構成されている。
【0007】
追跡システムのプロセッサ及びメモリは、手術器具の遠位先端と眼の網膜との間の距離を深度分解画像内の画像の画素の解析に基づいて特定するように更に構成され得る。
【0008】
深度画像化システムは、眼の深度分解画像を、手術器具に組み込まれた画像化プローブによって受信された信号に基づいて生成するように構成され得る。
【0009】
ある実施形態では、追跡システムのプロセッサ及びメモリは、眼底画像内の手術器具の遠位先端に重なる視覚インジケータを生成するように構成されている。
【0010】
追跡システムのプロセッサ及びメモリは、視覚インジケータの大きさを手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化に比例して増加又は減少させることにより、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化を示すように視覚インジケータを変更するように構成され得る。
【0011】
ある実施形態では、追跡システムのプロセッサ及びメモリは、視覚インジケータの色を変更することにより、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化を示すように視覚インジケータを変更するように構成されている。
【0012】
ある実施形態によれば、深度画像化システムは、眼のOCT画像を生成するように構成された光干渉断層(OCT)システムである。OCTシステムは、OCT画像化ビームを生成するように動作可能なOCT光源と、OCT画像化ビームを導くように動作可能なビームスキャナとを含み得る。追跡システムは、OCT画像を解析して、手術器具の遠位先端と眼の網膜との間の距離を特定するように構成され得る。追跡システムのプロセッサ及びメモリは、眼底画像内の手術器具の遠位先端の特定された位置に基づき、手術器具の遠位先端を含む眼の特定の領域にOCT画像化ビームを導くことをビームスキャナに行わせるように構成され得る。
【0013】
ある実施形態では、手術器具は、OCT画像化ビームを送信するように構成された第1の光ファイバーと、眼によって反射された光を送信するように構成された第2の光ファイバーとを含む。
【0014】
ある実施形態によれば、追跡システムのプロセッサ及びメモリは、眼底画像の強調画像を生成することと、強調画像内のマーカー画像を推定することと、強調画像からマーカー画像を抽出することと、マーカーの画像からマーカーの位置を特定することとにより、眼底画像内の手術器具の遠位先端の位置を特定するように構成されている。
【0015】
ある実施形態では、視覚インジケータ及び眼底画像は、接眼レンズ内又はヘッドアップスクリーン上に表示される。視覚インジケータは、ユーザによって構成可能でもあり得る。
【0016】
ある実施形態では、画像化ユニットは、手術用顕微鏡、2次元カメラ、線走査カメラ及び共焦点走査検眼鏡に使用されるような単一の検出器の少なくとも1つを含む。
【0017】
ある実施形態は、眼の眼底画像を生成するステップと、眼の深度分解画像を生成するステップと、眼底画像を解析して、眼底画像内における手術器具の遠位先端の位置を特定するステップと、深度分解画像を解析して、手術器具の遠位先端と眼の網膜との間の距離を特定するステップと、眼底画像内の手術器具の遠位先端に重なる視覚インジケータを生成するステップであって、視覚インジケータは、遠位先端と網膜との間の特定された距離を示す、ステップと、眼底画像内における遠位先端の位置の変化を追跡するように視覚インジケータをリアルタイムで変更するステップと、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化を示すように視覚インジケータをリアルタイムで変更するステップとを含む方法を含む。
【0018】
ある実施形態によれば、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化を示すように視覚インジケータをリアルタイムで変更するステップは、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化に比例して視覚インジケータの大きさを増加又は減少させるステップを含む。
【0019】
ある実施形態では、手術器具の遠位先端と網膜との間の距離の変化を示すように視覚インジケータをリアルタイムで変更するステップは、視覚インジケータの色を変更するステップを含む。
【0020】
ある実施形態は、画像化システムの画像化ビームを、眼底画像内の手術器具の遠位先端の特定された位置に基づき、手術器具の遠位先端を含む眼の特定の領域に導くステップを更に含む。
【0021】
ある実施形態では、眼底画像を解析して、眼底画像内における手術器具の遠位先端の位置を特定するステップは、眼底画像の強調画像を生成するステップと、強調画像内のマーカー画像を推定するステップと、強調画像からマーカー画像を抽出するステップと、マーカーの画像からマーカーの位置を特定するステップとを含む。
【0022】
ある実施形態では、方法は、接眼レンズ内又はヘッドアップスクリーン上に視覚インジケータを表示するステップを含む。方法は、視覚インジケータの種類に関連するユーザ入カを受信するステップも含み得る。
【0023】
本開示のある実施形態は、1つ以上の技術的な利点を提供し得る。例えば、ある実施形態は、外科医が、精度の向上を伴って硝子体切除を実施することを可能にし得るとともに、硝子体切除中に網膜を損傷するリスクを低下させる視覚インジケータを提供する。特に、ある実施形態は、手術器具の遠位先端の位置にオーバーレイとして表示される視覚インジケータを提供する。この態様は、手術ツール及び敏感な組織の実際の位置及び/又は相対的な位置、並びに手術ツールと敏感な組織との間の距離に関する正確なリアルタイムの情報を、周囲組織に対する外科医の視界を遮ることなく提供することにより外科医を支援し得る。更に、網膜などの敏感な組織に対するその近さを含む手術器具の正確な位置を外科医に通知するためのインジケータを提供することにより、ある実施形態は、外科医の精度、意識及び自信を高め、患者の安全及び手術結果を向上させる。更に、外科医が術野から注意を逸らすことなくインジケータを容易に監視できるように、インジケータは、接眼レンズ又はヘッドアップディスプレイ内の画像オーバーレイとして設けられ得る。加えて、インジケータの特徴又は態様は、ツールと眼組織との近さの変化に比例して変更され得、それによりツール位置に関する直感的且つ即時のフィードバックを外科医に提供する。
【0024】
本開示及びその利点のより詳細な理解のために、ここで、類似の参照符号が類似の特徴を表す添付の図面と併せて解釈される以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ある実施形態による、手術用顕微鏡及び統合されたOCTシステムを含む眼科手術用可視化システムの一例を示す。
図2】ある実施形態による、可視化システムとともに使用するための例示的な手術器具を示す。
図3A】ある実施形態による、可視化システムによって提供される視覚インジケータを含む顕微鏡画像を示す。
図3B】ある実施形態による、可視化システムによって提供される視覚インジケータを含む顕微鏡画像を示す。
図3C】ある実施形態による、可視化システムによって提供される視覚インジケータを含む顕微鏡画像を示す。
図4A】ある実施形態による、可視化システムによって提供される様々な別の視覚インジケータを含む顕微鏡画像を示す。
図4B】ある実施形態による、可視化システムによって提供される様々な別の視覚インジケータを含む顕微鏡画像を示す。
図4C】ある実施形態による、可視化システムによって提供される様々な別の視覚インジケータを含む顕微鏡画像を示す。
図5】ある実施形態による、眼内に挿入された手術器具の位置を追跡し、その眼組織への近さを示すための方法を示すフローチャートである。
図6】ある実施形態による手術器具用の様々な種類のマーカーを示す。
図7A】ある実施形態による、切り替え可能な単一チャネルデータ注入部を含む例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
図7B】ある実施形態による、切り替え可能な単一チャネルデータ注入部を含む例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
図8】ある実施形態による、2チャネルデータ注入部を含む例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
図9】ある実施形態による、2チャネルデータ注入部を含む別の例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
図10A】ある実施形態による、3D知覚を伴う2チャネルデータ注入部を含む例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
図10B】ある実施形態による、3D知覚を伴う2チャネルデータ注入部を含む例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
図10C】ある実施形態による、3D知覚を伴う2チャネルデータ注入部を含む例示的な眼科手術用可視化システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者であれば、以下で説明する図面が単に説明のためのものであり、本出願人の開示の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。
【0027】
本開示の原理の理解を促進する目的で、ここで、図面に図示されている実施形態に言及し、特定の用語を使用してそれら実施形態を説明する。それにもかかわらず、本開示の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるであろう。説明するシステム、装置、及び方法に対する改変形態及び更なる変更形態、並びに本開示の原理の任意の更なる応用は、本開示が関係する技術分野の当業者が通常想到し得るものとして考慮される。特に、一実施形態に関して説明するシステム、装置、及び/又は方法が、本開示の他の実施形態に関して説明する特徴、部品、及び/又はステップと組み合わされ得ることが考慮される。しかしながら、簡潔さのために、これらの組み合わせの多数の反復は別々に説明されていない。簡略化するために、場合により、図面全体を通して同一又は類似の部分を指すように同一の参照番号が使用される。本明細書中において位置、距離又は近さについて述べる場合、実際の及び/又は相対的な位置、距離又は近さを意味し得る。
【0028】
概して、本開示は、網膜などの特定の組織に対する手術ツールの近さを伝える1つ以上の視覚インジケータを提供することができる眼科手術用可視化システムに関する。ある実施形態は、特定の眼組織(例えば、網膜)と、眼内に挿入された手術ツール(例えば、硝子体切除プローブの先端)との間の距離を示す、コンピュータで生成した視覚インジケータ(例えば、ポインタ、形状、アイコン又は他のグラフィック要素)を含む眼組織の顕微鏡画像をユーザに提供する。視覚インジケータの1つ以上の特性(例えば、その色、大きさ、形状)は、手術ツールと特定の眼組織との間の距離を反映するようにリアルタイムで変更され得る。ある実施形態では、視覚インジケータの特性(例えば、大きさ、色)は、段階的に変更され、距離の変化に比例してツールの動きを直観的に伝える。手術ツールと特定の眼組織との間の距離は、OCT画像化システム、超音波画像化システム、マルチスペクトル画像化システム、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)走査システム、磁気共鳴画像(MRI)システム又はポジトロン放出断層撮影(PET)画像化システムなどのリアルタイムで深度分解可能な画像化システムにより得られるデータに基づいて特定され得る。ある実施形態はまた、顕微鏡画像内における手術ツールの動きをリアルタイムで追跡し、視覚インジケータを、接眼レンズ内又はヘッドアップディスプレイ上に呈示される顕微鏡画像内の動的オーバーレイとして表示し得る。例えば、視覚インジケータは、手術ツールの遠位端が網膜の顕微鏡画像内を移動する際に手術ツールの遠位端に重ねられるグラフィックオーバーレイとして表示され得、オーバーレイインジケータの大きさ及び/又は色は、手術ツールの遠位端と網膜との間の距離に応じて連続的に更新され得る。
【0029】
図1は、本開示のある実施形態による眼科手術用可視化システムの一例を示す。手術用顕微鏡100は、統合されたOCTシステム及び表示システムを含む。手術用顕微鏡100は、手術処置中に患者の眼102の拡大観察を容易にし得、概して、接眼レンズ104と、リレーレンズ106と、拡大/集束光学系108と、対物レンズ110と、手術用観察光学系112とを含み得る。接眼レンズ104、リレーレンズ106、拡大/集束光学系108、対物レンズ110、及び手術用観察光学系112の各々は、当業者により理解されるように任意の好適な光学部品を含み得る。
【0030】
手術用顕微鏡100は、患者の眼102のOCT画像を生成するように動作可能な統合されたOCTシステム114と、一方又は両方の接眼レンズ104を介してそれらのOCT画像を外科医に表示するように動作可能なリアルタイムデータ投影ユニット116とを追加的に含み得る。OCTシステム114が(以下に更に詳細に述べるように)手術用顕微鏡100に統合される位置は、有利には、外科医が拡大/集束光学系108を介して顕微鏡の視野を操作するときにOCT走査範囲が自動的に調整されることを可能にし得る。その上、リアルタイムデータ投影ユニット116は、有利には、OCTシステム114により生成されたOCT画像を外科医が別個の表示モニタを見る必要なしに観察することを可能にし得る。
【0031】
OCTシステム114は、光源/解析ユニット118とビームスキャナ120とを含み得る。概して、光源/解析ユニット118はOCT画像化ビーム122を生成し得、且つ(手術用顕微鏡の他の光学部品と併せて)ビームスキャナ120は、生成されたOCT画像化ビーム122を患者の眼102内の特定の領域に導き得る。患者の眼102内の特定の領域からのOCT画像化ビーム122の反射(反射されたOCT画像化ビーム124)は、OCT画像化ビーム122と同じ光路に沿って光源/解析ユニット118に戻り得、且つ光源/解析ユニット118は、反射124とOCT画像化ビーム122の基準アームとの干渉を判定することにより特定の領域のOCT画像を生成し得る。本開示では、OCTシステム114が、当業者により理解されるようにOCT画像化ビーム122を操作するための任意の好適な追加の光学部品を含み得ることが考慮され、それらの追加の部品は簡略化のために図示/説明されていない。
【0032】
ある実施形態において、OCT画像化ビーム122は、比較的狭い帯域の波長(例えば、830nm〜870nm、790nm〜900nm、950nm〜1150nm)を包含する赤外光ビーム又は近赤外光ビームを含み得る。しかしながら、任意の好適なスペクトル領域を有するOCT画像化ビーム122を使用し得る。
【0033】
ある実施形態において、OCT画像化ビーム122は、OCTシステム114の他の任意の好適な光学部品(上で説明した通り、図示せず)だけでなくビームスキャナ120(以下に更に詳細に説明する)を通過し得る。次いで、OCT画像化ビーム122は、(以下に更に詳細に説明するように)手術用顕微鏡100の上で説明した光学部品の1つ又は複数を介して患者の眼104に導かれ得る。
【0034】
ビームスキャナ120は、X−Y平面におけるOCT画像化ビーム122の集束を容易にする任意の好適な光学部品又は光学部品の組み合わせを含み得る。例えば、ビームスキャナ120は、走査ミラーの対、マイクロミラー装置、MEMSベースの装置、変形可能なプラットフォーム、検流計ベースのスキャナ、ポリゴンスキャナ、及び/又は共振PZTスキャナの1つ又は複数を含み得る。ある実施形態において、ビームスキャナ120の光学部品の位置は、自動的に操作され得る。ごく一例として、ビームスキャナ120は、モータ駆動部に各々結合された走査ミラーの対を含み得、モータ駆動部は、垂直軸線を中心にミラーを回転させるように動作可能である。結果として、結合されたモータの位置を(例えば、所定の又は選択された走査パターンに従って)制御することにより、患者の眼104内でのOCT画像化ビーム122のX−Y位置決めを制御することができる。追加的に、OCT画像化ビーム122の焦点深度は、3DのOCT画像化を容易にするために当技術分野で理解されるようにOCTシステム114の1つ又は複数の他の部品により制御され得る。
【0035】
上で説明したように、反射されたOCTビーム124は、OCT画像化ビーム122が移動する光路と実質的に同じ光路に沿ってOCTシステム114に戻り得る。反射されたOCTビーム124が光源/解析ユニット118に到達した時点で、光源/解析ユニット118は、反射されたOCTビーム124とOCT画像化ビーム122の基準アーム(当技術分野で知られている)との干渉に基づいてOCT画像(A走査)を構築し得る。その上、ビームスキャナ120を介してX−Y平面内で画像化ビームを移動させ、且つ/又は画像化ビーム122の焦点深度を変更することにより、複数のOCT画像(A走査)が生成されてOCT断面画像(B走査)に組み合わされ得、且つそれらの複数の断面画像(B走査)が3DのOCT画像を生成するために組み合わされ得る。
【0036】
ある実施形態において、OCTシステム114は、手術用顕微鏡100の光路に位置するビーム結合器126を介して手術用顕微鏡100に統合され得る。ビーム結合器126は、手術用顕微鏡100を通過する可視スペクトルにおける光の通過を可能にしつつ、OCT画像化ビーム122のスペクトル領域内の波長(例えば、赤外波長)を反射するように構成された光学素子を含み得る。一例として、ビーム結合器126は、ダイクロイックホットミラー、偏光ビームスプリッタ、及びノッチフィルタの1つを含み得る。
【0037】
ある実施形態では、OCTシステム114は、手術用顕微鏡100の光路に位置するビーム結合器126を介して手術用顕微鏡100に統合され得る。ビーム結合器126は、手術用顕微鏡100を通過する可視スペクトルにおける光の通過を可能にしつつ、OCT画像化ビーム122のスペクトル領域内の波長(例えば、赤外波長)を反射するように構成された光学素子を含み得る。一例として、ビーム結合器126は、ダイクロイックホットミラー、偏光ビームスプリッタ及びノッチフィルタの1つを含み得る。
【0038】
ある実施形態において、ビーム結合器126は、手術用観察光学系112と接眼レンズ104との間の光路に沿って位置し得る。手術用観察光学系112は、ドロップオン黄斑レンズ(drop−on macular lens)、接触式広角レンズ、(双眼間接検眼鏡)BIOMなどの非接触式観察システム、又は他の任意の好適な観察光学系を含み得る。より詳細には、ビーム結合器126は、拡大/集束光学系108と接眼レンズ104との間の光路に沿って位置し得る。結果として、OCT画像化ビーム122は、拡大/集束光学系108を通過して、外科医が拡大/集束光学系108を介して顕微鏡の視野を操作するときにOCT走査範囲が自動的に調整されることを可能にする。本開示では、図示されていないが、OCT画像化ビーム116が拡大/集束光学系108及び対物レンズ110を通過することを踏まえると、OCTシステム114が、患者の眼102内でのOCT画像化ビーム122の適切な焦点合わせを容易にする任意の好適な光学部品を追加的に含み得ることが考慮される。
【0039】
ある実施形態において、OCTシステム114は、OCT画像化ビーム122に加えて可視照準ビーム(図示せず)を生成し得る。この可視照準ビームは、接眼レンズ104を介して外科医が視認できてもよく、且つ外科医がOCT画像化を指示することを補助し得る。このような実施形態において、ビーム結合器126は、狭帯域の照準光に含まれない手術用顕微鏡100を通過する可視光の通過を可能にしつつ、OCT画像化ビーム122のスペクトル領域(例えば、赤外波長)と狭帯域の可視光(その狭帯域に照準ビームが含まれる)との両方を反射するように構成され得る。
【0040】
A走査、B走査、又は上で説明したように複数のB走査を組み合わせることにより構築された3DのOCT画像を含み得る、OCTシステム114により生成されたOCT画像(図1において参照符号128で特定される)は、一方又は両方の接眼レンズ104を介して外科医に対して表示されるようにリアルタイムデータ投影ユニット116に通信され得る。
【0041】
本開示では、図示されていないが、ある実施形態は、超音波画像化システム、マルチスペクトル画像化システム、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)走査システム、磁気共鳴画像(MRI)システム又はポジトロン放出断層撮影(PET)画像化システムなどの1つ以上の追加的又は代替的な深度画像化システムを含み得ると考えられる。このような画像化システムは、本明細書中に記載されるOCT画像化システム(例えば、顕微鏡100と統合された、プローブベースの、及び/又は手術器具146と統合された)と同様に、追跡ユニット144によって解析され得る深度分解画像を生成するように構成され得る。
【0042】
リアルタイムデータ投影ユニット116は、画像を投影するための任意の好適な装置を含み得、且つその画像に焦点を合わせるための任意の好適な光学系(図示せず)を含み得る。例えば、リアルタイムデータ投影ユニット116は、ヘッドアップ表示装置、1次元表示アレイ、2次元表示アレイ、スクリーン、プロジェクタ装置、又はホログラフィック表示装置の1つを含み得る。
【0043】
リアルタイムデータ投影ユニット116は、手術用顕微鏡100の光路に位置するビームスプリッタ130を介して手術用顕微鏡100に統合され得る。ビームスプリッタ130は、患者の眼102から反射された可視光に実質的に干渉せずに、リアルタイムデータ投影ユニット116により生成された投影画像を接眼レンズ104に向けて反射するように構成された光学素子を含み得る。
【0044】
ある実施形態では、手術用顕微鏡100は、追加的に又は代替的に、プローブベースのOCTシステム134を含み得る。プローブベースのOCTシステム134は、プローブベースのOCTシステム134により生成されたOCT画像化ビームが、患者の眼102に挿入され得るプローブ138を使用して患者の眼102内に導かれ得ることを除いて、OCTシステム114に関して上で説明したのと実質的に同じ様式でOCT画像136を生成し得る。OCTシステム114とプローブベースのOCTシステム134との両方を含む実施形態において、手術用顕微鏡100は、ソース選択ユニット140を追加的に含み得る。ソース選択ユニット140は、(OCTシステム114により生成された)OCT画像128又は(プローブベースのOCTシステム134により生成された)OCT画像136のいずれかの選択を、リアルタイムデータ投影ユニット116又は表示装置132への通信のために可能にする任意の好適なスイッチを含み得る。結果として、外科医は、手術中の画像化にいずれのOCT画像化システムを使用するかを選択し得る。
【0045】
ある実施形態では、手術器具146は、追加的に又は代替的に、OCT画像化プローブ138と統合され得、又は追加的若しくは代替的なOCT画像化プローブを含み得る。例えば、手術器具146は、プローブベースのOCTシステム134と通信可能に結合され得る。手術器具146は、1つ以上の光ファイバーを含み得、1つ以上の光ファイバーは、器具の遠位先端の方に器具の長さに沿って延び、OCT画像化ビーム又は眼102から反射された光を送信及び/又は受信する。ファイバーは、遠位先端において又はその近傍において終端し、画像化ビームを眼102に送信し得る。このようなファイバー及び手術器具146の他の構成要素は、OCT画像化ビームを眼102に送信し、光源/解析ユニット118に反射を戻すように構成され得る。このように、OCT画像化ビームは、別個のOCTプローブ又はビームスキャナよりもむしろ手術器具146を用いて、患者の眼102内に導かれ得る。このような実施形態では、手術器具146の遠位先端と眼102との間の距離は、器具へのOCTビームを調整することなく特定され得る。画像化ビームは手術器具の先端から投影されるため、外部OCT画像化ビームを、眼組織及び手術器具の両方を画像化領域内に含むように調整する必要はない。ある実施形態では、手術器具146は、OCT画像化プローブ以外の深度画像化プローブと統合され得るか又はそれを含み得る。
【0046】
リアルタイムデータ投影ユニット116により投影されたOCT画像(例えば、OCT画像128及び/又はOCT画像136)は、接眼レンズ104を介して外科医により観察される可視構造と位置合わせされた半透明のオーバーレイとして表示され得る。このような実施形態において、OCT画像と眼の実際の構造との位置合わせは、例えば、網膜追跡(以下に更に説明する)、器具追跡(以下に更に説明する)、照準ビーム、又はこれらの任意の組み合わせに基づいて達成され得る。
【0047】
ある他の実施形態において、リアルタイムデータ投影ユニット116により投影されたOCT画像は、外科医の視野の隅に又は接眼レンズ104を通して眼102を観察する外科医の能力を実質的に低下させない他の任意の好適な位置に表示され得る。
【0048】
リアルタイムデータ投影ユニット116は、OCT画像が接眼レンズ104を通して観察可能であるように手術用顕微鏡100の光路にOCT画像128及び/又はOCT画像136を投影するものとして上で説明されているが、本開示では、リアルタイムデータ投影ユニット116が、追加的又は代替的に、特定の必要に応じて、手術用顕微鏡100の光路に他の任意の好適な情報(OCTデータ、眼底画像、手術パラメータ、手術パターン、手術指標などから抽出され且つ/又は強調表示された情報)を投影し得ることが考慮される。
【0049】
手術用顕微鏡100は、追加的に、画像化ユニット142及び追跡ユニット144を含み得る。追跡ユニット144は、システムオペレータに対して表示するための画像、インジケータ及び他のデータを提供するために、OCTシステム114、リアルタイムデータ投影ユニット116及びディスプレイ132に(有線又は無線通信によって)通信可能に結合され得る。以下で更に詳細に記載するように、OCTシステム114、画像化ユニット142及び追跡ユニット144は、患者の眼102内における手術器具146の位置、深さ、近さ及び動きの追跡を集合的に容易にし得る。
【0050】
画像化ユニット142は、患者の眼102の眼底画像148を生成するための任意の好適な装置を含み得、且つその機能を果たすための好適な拡大/集束光学系(図示せず)を含み得る。簡単な例として、手術用顕微鏡100の光路に沿って患者の眼102により反射された可視光又は近赤外光150は、光路に沿って配置されるとともに、かかる光を部分的に反射するように動作可能であるミラー152を介して画像化ユニット142に向けて導かれ得る。ある実施形態において、眼底画像148は、患者の眼102の個別の静止画であり得る。他の実施形態において、眼底画像148は、患者の眼102の連続したビデオストリームを含み得る。眼底画像148は、システム100の他の構成要素によって処理され、変更され得る複数の画像フレームを含み得る。例示の画像化ユニットは、デジタルビデオカメラ、線走査検眼鏡又は共焦点走査検眼鏡を含み得る。
【0051】
示されている実施形態では、リアルタイムデータ投影ユニット116を介してOCT画像が光路に導入される前に可視光又は近赤外光150が光路から取り出されるため、生成された眼底画像148は、投影されたOCT画像を含まない(これは、以下に説明する器具追跡のために有益であり得る)。画像化ユニット142は手術用顕微鏡100及びOCTシステム114の光学部品に対して特定の位置に位置するものとして示され説明されているが、本開示では、画像化ユニット142が、特定の必要に応じて、それらの部品に対して任意の好適な位置に配置され得ることが考慮される。
【0052】
手術用顕微鏡100の追跡ユニット144は、患者の眼102内における手術器具146の位置/姿勢、深さ、近さ及び動きを、少なくとも部分的に、画像化ユニット142によって生成された眼底画像148と、OCTシステム114、超音波画像化システム、マルチスペクトル画像化システム、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)走査システム、磁気共鳴画像(MRI)システム又はポジトロン放出断層撮影(PET)画像化システムなどの深度画像化システムによって生成された深度分解画像又は3次元画像とに基づいて特定するように動作可能である。
【0053】
追跡ユニット144は、ハードウェア、ファームウェア及びソフトウェアの任意の好適な組み合わせを含み得る。ある実施形態において、追跡ユニット144は、プロセッサ154とメモリ156とを含み得る。プロセッサ154は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コントローラ、又は他の任意の好適な計算装置若しくは計算資源を含み得る。プロセッサ154は、本明細書で説明する機能を提供するために、単独で又は図1に示されている他の部品とともに機能し得る。メモリ156は、限定されるものではないが、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、リムーバブルメディア、又は他の任意の好適なメモリ部品を含む、揮発性又は不揮発性メモリの形態を取り得る。メモリ156は、プロセッサ154により実行されたときに追跡ユニット144の機能を実施するプログラムの命令及びアルゴリズムを記憶し得る。
【0054】
追跡ユニット144は、眼底画像148を解析して、手術器具146の位置を特定及び追跡するようにプログラムされ得る(又はプロセッサ154により実行されたときに、眼底画像148を解析するように動作可能なソフトウェアをメモリ156に格納し得る)。例えば、プロセッサ154は、画像化ユニット142によって取得された画像148を受信し、処理又は解析し得、処理された画像に基づいてインジケータ及び画像を生成し、リアルタイムデータ投影ユニット116又はディスプレイ132により表示し得る。プロセッサ154は、複数の画像を処理又は解析して手術器具146の位置の変化を追跡し得、このような変化を反映するようにインジケータ及び画像を変更し得る。追跡ユニット144のメモリ156は、前処理された及び/又は後処理された画像データを記憶し得る。プロセッサ154は、術野内における手術器具146の位置及び/又は向き(又は位置及び向きの変化)を眼底画像148に基づいて検出及び計算し得る。
【0055】
加えて、追跡ユニット144は、遠位先端149の深さ及び眼102の特定の組織に対するその近さを特定するようにプログラムされ得る(又はプロセッサ154により実行されたときに、遠位先端149の深さ及び眼102の特定の組織に対するその近さを特定するように動作可能なソフトウェアをメモリ156に格納し得る)。例えば、プロセッサ154は、OCTシステム114(又は別の深度画像化システム)によって取得された3次元又は深度分解画像データを受信し得、データを解析し、遠位先端149と眼102の網膜との間の距離及び/又は近さを特定し得る。特定された距離に基づき、追跡ユニット144は、リアルタイムデータ投影ユニット116又はディスプレイ132により表示するためのインジケータ生成し、網膜などの特定の眼組織に対する遠位先端149の近さについてシステムオペレータに通知し得る。プロセッサ154は、遠位先端149に関する位置、向き及び距離/近さのデータを連続的又は反復的に特定又は計算して遠位先端149を追跡し、インジケータを更新し、顕微鏡画像内における遠位先端144の位置、及び遠位先端144と眼146の網膜との間の距離のリアルタイム表示を提供し得る。プロセッサ154はまた、遠位先端149と眼102の網膜との間の距離の変化に対して段階的及び比例的に視覚インジケータの特性(例えば、大きさ、色)を連続的又は反復的に変更し、遠位先端149の動きを直観的に伝え得る。追跡ユニット144のメモリ156は、前処理された及び/又は後処理された深度画像化データを記憶し得る。
【0056】
更に、追跡ユニット144は、OCTシステム114のビームスキャナ120がOCT画像化ビーム122の位置を患者の眼102内に導くようにするために、OCTシステム114に通信される信号158を生成するようにプログラムされ得る(又はプロセッサ154により実行されたときに、信号158を生成するように動作可能なソフトウェアをメモリ156に格納し得る)。例えば、信号158は、患者の眼102内における手術器具146の特定された位置に基づいて生成され得、OCTシステム114のビームスキャナ120は、OCT画像化ビーム122を手術器具146の遠位先端149の近傍の位置に導き得る。その結果、OCT画像128は、外科医にとって最も関心がある領域に生成され得、追跡ユニット144は、処置の全体を通し、OCTシステム114によって生成されたデータを使用して遠位先端149と網膜との間の距離を計算し得る。その上、OCT画像128が顕微鏡の視野内における半透明のオーバーレイとして表示される実施形態では、手術器具146の追跡がそのオーバーレイの適切な位置決めを追加的に容易にし得る。
【0057】
別の例として、信号158は、患者の眼102の網膜の判定された位置(手術器具146を追跡することに関して本明細書に述べたのと同様の様式で眼底画像148を処理することにより、追跡ユニット144によって判定される)に基づいて生成され得、且つOCTシステム114のビームスキャナ120は、OCT画像化ビーム122を網膜に対して一定の位置に導き得る。その上、OCT画像128が顕微鏡の視野内における半透明のオーバーレイとして表示される実施形態では、網膜の追跡がそのオーバーレイの適切な位置決めを追加的に容易にし得る。
【0058】
手術用顕微鏡100は、固定された単一チャネルを通じて表示されたOCT画像を含むものとして示され説明されているが(すなわち、リアルタイムデータ投影ユニット116は、2つの接眼レンズ104の一方の接眼レンズ104の光路に結合される)、他の実施形態も(以下で図7図10に関して説明するように)本開示により考慮される。
【0059】
ここで、ある実施形態に従い、追跡ユニット144の機能及び動作について更に詳細に記載する。
【0060】
追跡ユニット144は、種々の技術を用いて顕微鏡画像内における手術器具146の位置(例えば、顕微鏡画像内における遠位先端149のX−Y位置)を特定及び追跡し得る。ある実施形態では、手術器具146は、取り付けられた又は埋め込まれた検出デバイスを有し得る。例えば、手術器具146は、姿勢、位置又は動きの変化を検出するための1つ以上のジャイロスコープ、加速度計、重力センサ、リニア加速度センサ、回転ベクトルセンサ、地磁気場センサ又は他の種類のセンサを有し得る。このようなセンサから生成されたデータは、追跡ユニット144に提供され得、追跡ユニット144は、データを解析して手術器具146の位置、姿勢及び/又は動きを特定し得る。
【0061】
ある実施形態では、追跡ユニット144は、画像ベースの処理技術を用いて手術器具146の位置を特定及び追跡し得る。例えば、追跡ユニット144は、画像化ユニット142から取得された画像に対してマシンビジョンアルゴリズム又はコンピュータビジョンアルゴリズムを用いて、手術器具146の位置を特定及び追跡し得る。追跡ユニット144は、特徴認識若しくは抽出技術、並びに/又はモーションベースの物体追跡及び画像処理アルゴリズム(例えば、エッジ検出、コーナ検出、ブロブ検出、ブロブ抽出、リッジ検出、スケール不変特徴変換、動き検出、バックグラウンド除去、フレーム差分、オプティカルフロー、閾値処理、テンプレートマッチング、ハフ変換等)を適用し得る。追加的に又は代替的に、追跡ユニット144は領域ベースの物体追跡技術を使用し得る。
【0062】
例えば、追跡ユニット144は、深度画像化システムにより得られた画像データ内において遠位先端149及び眼102の網膜を検出又は分離するために、特徴認識又は抽出技術(例えば、エッジ検出、コーナ検出、ブロブ検出、ブロブ抽出、リッジ検出、スケール不変特徴変換、動き検出、オプティカルフロー、閾値処理、テンプレートマッチング、ハフ変換等)を深度分解画像に適用し得る。追跡ユニット144は、眼102のリファレンス画像を取得及び記憶し得るとともに、手術処置中に得られた画像をリファレンス画像と比較し、手術器具146の遠位先端及び眼102の網膜の位置及び動き、並びに手術器具146の遠位先端と眼102の網膜との間の距離を特定し得る。
【0063】
ある実施形態によれば、追跡ユニット144は、画像化ユニット142から受信された画像内の手術器具146の固有の特徴(例えば、輪郭、エッジ、形状、色、コーナ/特徴点等)を抽出及び検索するために、特徴ベースの物体追跡を使用して手術器具146の位置を特定及び追跡するようにプログラムされ得る。このような実施形態では、追跡ユニット144は、手術器具146の位置の特定及び追跡を支援するためにマーカー147を使用し得る。図2に示すように、手術器具146は、遠位部144に又はその近傍に配置された、可視光線又は赤外スペクトル又は画像化ユニット142により検出可能な他のスペクトル領域における高コントラスト特徴を有するマーカー147を含み得る。高コントラストは、眼102の眼底の色又はパターンと区別可能な色又はパターンを使用することにより得られ得る。眼内照明器(endo−illuminator)又はファイバー照明器などの光源145が、イメージング光を発して眼102の眼底を照明し得る。マーカー147については、以下で図6に関して更に詳細に記載する。
【0064】
追跡ユニット144はまた、手術器具146と眼102の組織との間の距離及び近さを特定及び追跡し得る。ある実施形態では、追跡ユニット144は、OCT画像化システム114、又は組織及び器具の深さ及び位置を特定することが可能な別の深度画像化システムから深度分解画像データを受信する。追跡ユニット144は、このような画像データに画像ベースの処理技術を適用し、手術器具146及び眼102の組織に関する位置及び姿勢データを特定及び/又は抽出し得る。この解析に基づき、追跡ユニット144は、手術器具146の一部分(例えば、遠位先端149)と眼102の組織(例えば、網膜)との間の距離を計算し得る。追跡ユニット144は、深度画像化システムにより得られた画像データの流れをリアルタイムで処理することにより、この距離の変化を追跡し得る。追跡ユニット144はまた、手術器具146及び眼102の組織の位置及び動きの変化、並びに手術器具146と眼102の組織との間の距離の変化を計算及び追跡するために、画像解析データを記憶し得る。
【0065】
ある実施形態では、追跡ユニット144は、OCTシステム114などの深度分解画像化システムから画像データを受信する。追跡ユニット144は、深度分解画像を解析し、網膜及び/又は手術ツールなど、画像内に示される特徴を識別するように構成され得る。追跡ユニット144は、深度画像データを登録し、深度分解画像内において識別された特徴の座標を特定し得る。このような座標は、エッジ若しくはブロブ検出などのコンピュータビジョンアルゴリズム又はマシンビジョンアルゴリズムを使用してデジタル化され得、画像内の特徴間の距離を計算するために使用され得る。
【0066】
ある実施形態では、校正サンプル材料を使用して、既知の位置座標内の位置に基準マークの3Dアレイを形成し得る。基準マークの既知の位置座標と、得られた深度分解画像内の基準マークの深度分解画像との間にマッピング関係を確立するために深度分解画像(例えば、OCT画像)が得られ得る。このマッピング関係は、デジタル校正データとして格納され得るとともに、深度分解画像内の特徴(例えば、網膜及び手術ツールの切除先端)間の距離を計算するため、及び深度分解画像化システムの画像化ビームを制御するために使用され得る。
【0067】
深度分解画像化プローブが手術器具146から離れている実施形態では、深度分解画像は、手術器具146及び眼102の網膜を含む特徴を示し得る。例えば、追跡ユニット144は、眼102の網膜及び遠位先端手術器具146を示す深度分解画像(例えば、A走査又はB走査)を受信し得る。追跡ユニット144は、受信された深度画像の特徴に基づき、眼102の網膜と手術器具146の遠位先端との間の距離又は近さを特定し得る。例えば、このような画像において、眼102の網膜及び手術器具146の遠位先端は、画像内の空間によって分離されているように見え得る(眼102の網膜と手術器具146の遠位先端とが接していないことを前提として)。追跡ユニット144は、眼102の網膜と手術器具146の遠位先端との間の距離又は近さを、画像内における眼102の網膜と手術器具146の遠位先端との間の分離の程度に基づいて特定し得る。例えば、上述のように、デジタル化された座標を使用し得る。別の例として、追跡ユニット144は、一定のz深度分解能を有し得る深度分解画像において、眼102の網膜と遠位先端手術器具146とを隔てる画素数に基づいて距離又は近さを特定し得る。一定のz深さを有する深度分解画像(OCT画像などの)において、画像内の特徴(例えば、ツール先端部及び網膜)間の距離及び/又は近さは、個々に一定距離に対応する画素に基づいて計算され得る。追跡ユニット144は、画像化された物体間の距離を特定するために、深度分解画像の画素数を特定及び処理し得る。この手法を容易にするために、上述のように、追跡ユニット144は、有利には、深度画像化システムによって深度画像化ビームを手術器具146の近傍の位置に導き得る。
【0068】
ある実施形態では、追跡ユニット144は、手術器具146内に少なくとも部分的に統合された深度分解画像化プローブから画像データを受信し得る。一例では、手術器具146は、統合された深度画像化プローブを含み得る。手術器具146は、画像化ビームを送信するために、眼から反射された光を送信するために、及び眼102の深度分解画像(例えば、A走査又はB走査)を生成するために深度画像化システム(例えば、OCTシステム114)によって使用される1つ以上の光ファイバーを含み得る。このような深度分解画像は、手術器具146を示すことなく眼102の網膜を示し得る(このような画像は器具146の先端の視点から得られるため)。追跡ユニット144は、受信された深度画像の特徴に基づき、眼102の網膜と手術器具146の遠位先端との間の距離又は近さを特定し得る。例えば、上記のように、デジタル化された座標を使用し得、又は追跡ユニット144が深度分解画像の画素数を割り出し、処理し、画像化された物体間の距離を特定し得る。ある実施形態では、追跡ユニット144は、画像のエッジ(又は手術器具146の遠位先端に対応する他の特徴)と、一定のz深度分解能を有し得る深度分解画像に示される眼102の網膜との間の画素に基づき、距離又は近さを特定し得る。上述のように、一定のz深さを有する深度分解画像(OCT画像など)において、画像内の特徴(例えば、ツール及び網膜)間の距離及び/又は近さは、一定距離に対応する画素に基づいて計算され得る。このような実施形態では、眼組織に対する手術ツールの近さは、画像化ビームを手術器具146へ能動的に導くことなく連続的に特定され得る。
【0069】
追跡ユニット144は、追加的に又は代替的に、種々の画像ベースの処理技術(例えば、マシンビジョンアルゴリズム又はコンピュータビジョンアルゴリズム、モーションベースの物体追跡アルゴリズム、領域ベースの物体追跡技術及び/又は特徴ベースの物体追跡)を使用して、深度分解画像(例えば、OCT画像)を解析し、手術器具146と眼102の組織との間の距離を特定及び追跡し得る。例えば、追跡ユニット144は、特徴認識又は抽出技術(例えば、エッジ検出、コーナ検出、ブロブ検出、ブロブ抽出、リッジ検出、スケール不変特徴変換、動き検出、オプティカルフロー、閾値処理、テンプレートマッチング、ハフ変換等)を深度分解画像に適用して、深度画像化システムにより得られた画像データ内において遠位先端149及び眼102の網膜を検出又は分離し得る。追跡ユニット144は、眼102のリファレンス画像を取得及び記憶し得るとともに、手術処置中に得られた画像をリファレンス画像と比較して、手術器具146の遠位先端及び眼102の網膜の位置及び動き、並びに手術器具146の遠位先端と眼102の網膜との間の距離を特定し得る。
【0070】
追跡ユニット144は、インジケータ(例えば、数、形状、色、図若しくは記号、又は他のグラフィック要素)を生成してリアルタイムデータ投影ユニット116又はディスプレイ132により表示し、遠位先端149の位置、向き及び深さ、並びに網膜に対するその近さを特定し得る。例えば、追跡ユニット144は、インジケータ(例えば、ドット又は矢印)を生成することができ、インジケータを顕微鏡画像内の遠位先端149の位置に重ねることができ、それにより、遠位先端149の位置を、周囲組織に対する外科医の視野を妨げることなく強調表示する。ある実施形態では、追跡ユニット144は、画像148内の遠位先端149の特定された位置にインジケータをオーバーレイとして適用する。他の実施形態では、インジケータは、顕微鏡画像内の別の場所に配置されるオーバーレイであり得る。プロセッサ154は、リアルタイムで更新される動的インジケータを提供するために、遠位先端149の位置、向き及び深さ、近さを追跡し得る。したがって、インジケータは、遠位先端149と網膜との間の距離の正確なリアルタイム表示を提供することにより外科医を支援し得る。これは、ステレオ顕微鏡画像から正確に認識することが困難な場合がある。
【0071】
追跡ユニット144は、画像内におけるインジケータの位置を指定する信号を生成して伝達し、リアルタイムデータ投影ユニット116又はディスプレイ132により、インジケータをオーバーレイとして顕微鏡画像上に投影又は表示し得る。代わりに、追跡ユニット144は、インジケータオーバーレイを含む変更済み眼底画像を生成し、変更済み画像をリアルタイムデータ投影ユニット116又はディスプレイ132に伝達し、ユーザに提示し得る。
【0072】
一部の例では、インジケータの態様は、遠位先端149と網膜との間の距離を直接示し得る。例えば、インジケータは、距離を明示する数値(例えば、「2.0」は2.0mm、「1.0」は1.0mm及び「0.5」は0.5mm)であり得る。一部の例では、追跡ユニット144は、遠位先端149と眼102の網膜との間の距離を間接的に示す特定の特性(例えば、大きさ、形状、色、点滅速度、明るさ、透明度、量等)を有するインジケータを生成し得る。加えて、インジケータは、遠位先端149と眼102の網膜との間の距離が変化するにつれて変更又は調整され得る。ある実施形態では、視覚インジケータの特性(例えば、大きさ、色)は、段階的に且つ距離の変化に比例して変更され、遠位先端149の動きを直観的に伝える。
【0073】
ある実施形態では、追跡ユニット144は、遠位先端149と網膜との間の特定の距離に特定の色を関連付け得る。例えば、追跡ユニット144は、緑色のインジケータを2mm以上の距離に、黄色のインジケータを1mmの距離に、赤色のインジケータを0.5mm未満の距離に関連付け得る。色スキームは、距離が2mmから0.5mmに減少するにつれて、インジケータが緑から黄色、赤色に中間調で移行するように次第に変化され得る。色の段階的変化は、距離の段階的変化に比例し得る。
【0074】
ある実施形態では、追跡ユニット144は、生成されたインジケータが、遠位先端149と眼102の網膜との間の距離が減少するにつれて徐々に大きくなる又は小さくなるように特定の距離に特定のインジケータサイズを関連付け得る。例えば、追跡ユニット144は、視覚インジケータを、網膜から離れるにつれて大きくなり、網膜に近づくにつれて小さくなる三角形のオーバーレイとして遠位先端149上に生成し得る。追跡ユニット144は、インジケータが網膜に近づくにつれてシステムオペレータから離れているという印象を与えるために、小さくなるサイズを遠位先端149の深くなる深さと関連付け得る。サイズの段階的変化は、距離の段階的変化に比例し得る。追跡ユニット144は、また、周囲組織に対する外科医の視野を妨げること又はインジケータが小さくなり過ぎて明確に見えなくなる可能性があることを避けるために、インジケータのサイズに上限及び下限を設定し得る。
【0075】
任意の数のインジケータ特性を、距離を示すように変更し得る。一部の例では、遠位先端149と眼102の網膜との間の距離が減少するにつれて、追跡ユニット144は、インジケータを、次第に明るくなるように、透明から不透明に移行するように、点滅を開始するように、増加する速度で点滅するように、及び/又は形状若しくは形態を変化させるように変更する。例えば、追跡ユニット144は、遠位先端149と網膜との間の距離が0.5mmなどの予め設定した閾値未満であるときにインジケータを点滅させ得る。
【0076】
一部の例では、距離を示すためにインジケータ特性の組み合わせを用い得る。例えば、追跡ユニット144は、最小インジケータサイズを距離の閾値と関連付けることができ(インジケータのサイズが更に減少することを避けるため)、インジケータが異なる色になるように、より明るくなるように、及び/又は距離が閾値を超えると点滅するように変更し得る。
【0077】
大きさ、色、点滅速度、明るさ等などの段階的に調整可能な又は連続的に変化する特性により、距離の段階的変化に比例して特性を変更することを有利に可能にする。このようにインジケータの変化を距離に関連付けることで、処置中に容易に監視することができる距離及び距離の変化の直感的表示を外科医に有利に提供する。
【0078】
ある実施形態は、インジケータの姿勢又は位置を距離に基づいて変更し得る。例えば、ある実施形態は、遠位先端149と網膜との間の距離が閾値(例えば、2mm)を下回ったときのみに現れる視覚インジケータを提供し得る。別の例として、ある実施形態は、眼102の組織と手術器具146とが少なくとも閾値距離だけ離れたときに視覚インジケータを第1の位置(例えば、顕微鏡画像の外縁部近傍)に表示し得るとともに、閾値に合致したときに視覚インジケータを第2の位置に再配置し得る(例えば、遠位先端149の近傍)。
【0079】
ある実施形態では、インジケータは、追加的に又は代替的に、手術器具146の向き、例えば指し示す角度を示し得る。例えば、矢印を、手術器具146の指し示す方向を示すためのインジケータとして使用し得る。インジケータは、また、眼102の網膜の一領域のOCT画像などの画像、又は硝子体切除プローブの切除速度などの手術設定パラメータを含み得る。
【0080】
追跡ユニット144の種々の実施形態は、ユーザがインジケータの外観、特性及び挙動を設定することを可能にし得る。例えば、ユーザは、インジケータの特定のサイズ及び形状を設定し得るとともに、インジケータが距離を示すようにどのように変更されるかを設定し得る。追跡ユニット144のある実施形態は、視覚インジケータがいつ、どこで、及びどのように表示及び変更されるかを定めるカスタマイズされた設定に関するユーザ入カを受信するためのユーザインタフェースを含む。ある実施形態では、ユーザは、視覚インジケータがペダル、スイッチ、ソフトキー、コンソールボタン、音声コマンド又は他の入カ機構により表示されるかどうかを制御し得る。視覚インジケータは、また、タイマー、手術器具146の特定の動き、又は手術器具146及び/若しくは遠位先端149の姿勢若しくは位置に基づいて現れるように構成され得る。
【0081】
図3及び図4は、ある実施形態による視覚インジケータを示す。図3及び図4は、網膜103を含む眼102を左側に示す。手術器具146(ここでは硝子体切除プローブ)及び光源145が眼102の後部に挿入されている。図3及び図4は、接眼レンズ104(リアルタイムデータ投影ユニット116からの入カによる)及び/又はディスプレイ132を介してシステムオペレータに対して表示される対応する顕微鏡画像を右側に更に示す。顕微鏡画像は、眼底105と、手術器具146(マーカー147(図示せず)を含み得る)と、追跡ユニット144により生成されたインジケータ300とを示す。図3及び図4の実施形態に示すように、インジケータ300は、手術器具146の遠位先端149に重ねられたオーバーレイとして現れる。眼底105に対する外科医の視界を遮断しないように、インジケータ300は、遠位先端149の全体に重ねられたオーバーレイとして現れ得る(インジケータのいずれの部分も、遠位先端149のエッジにより形成された境界の外部にないように)。ある実施形態によれば、インジケータ300は、代わりに、遠位先端149を部分的に覆うか又は遠位先端149を覆うことなく、遠位先端149の近傍にあるインジケータとして現れ得る。手術器具146が眼102内を移動すると、追跡ユニット144は、遠位先端149を追跡し、インジケータ300を遠位先端149の又は遠位先端149の近傍のオーバーレイとして維持する。加えて、インジケータ300の特性は、段階的に変更され、(均一の縮尺でないが)遠位先端149と網膜103との間の距離の変化に比例するものとして示される。
【0082】
図3の実施形態では、インジケータ300は、遠位先端149が網膜103に近づくにつれてより大きくなる。図3Aでは、手術器具146の遠位先端149は、網膜103から比較的大きい距離だけ離れている。したがって、追跡ユニット144は、右側に示される顕微鏡画像内の遠位先端149に重なる比較的大きいインジケータ300(ここでは三角形)を生成して表示する。図3Bでは、遠位先端149と網膜103との間の距離は減少しており、図3Cでは、更に一層減少している。遠位先端149が網膜103に近づくにつれて、追跡ユニット144は、インジケータ300のサイズを減少させて、遠位先端149が網膜103に近づいている(及び/又は画像化ユニット又はシステムオペレータから遠ざかっている)ことを伝える。このように、視覚インジケータ300のサイズは、遠位先端149と網膜103との間の距離の変化に比例して増加又は減少され得る。追跡ユニット144は、視覚インジケータ300のサイズを小刻みに連続的に(又は頻繁に)調整することから、遠位先端149の深さ及びその網膜103からの距離の直感的なリアルタイム表示を外科医に提供し得る。したがって、この例では、視覚インジケータの特性(この例では、サイズ)が遠位先端149と網膜103との間の距離の変化に応じて変更される。この例は、インジケータ300が、顕微鏡画像内の遠位先端149の動きを追跡するようにどのように変更され得るかを更に示す。すなわち、インジケータ300は、遠位先端149が顕微鏡画像内を移動する際にもオーバーレイとして維持される。
【0083】
図4は、ある実施形態において、更なる特性及びインジケータがどのように使用され得るかを示す。図3と同様に、図4は、図4B及び図4Cにおいて遠位先端149が網膜103に近づくにつれてインジケータ300(ここでは円)が比較的小さくなり、インジケータ300が、遠位先端149が図の右側の顕微鏡画像内を移動する際にもオーバーレイとして維持されることを示す。
【0084】
加えて、図4のインジケータ300は、追跡ユニット144により計算された距離に応じて透明度を変化させる。手術器具146の遠位先端149が網膜103から比較的遠い距離にある図4Aでは、インジケータ300は、ほぼ透明に見える。図4Bにおいて、距離が減少すると、インジケータ300は半透明である。また、図4Cでは、インジケータ300は、距離が所定の閾値距離(例えば、0.5mm)を下回ると不透明になり、点滅し始める。インジケータ300は、図4Aの低い明るさから図4Bの中間の明るさ、図4Cの最大の明るさに移行するように、距離が減少するにつれて更に明るく(又はより高輝度に)なり得る。したがって、遠位先端149の深さの直感的表示を提供するために、視覚インジケータ300の種々の特性を遠位先端149と網膜103との間の距離の変化に比例して変化させ得る。
【0085】
図4の顕微鏡画像は、また、第2のインジケータ302を示す。第2のインジケータ302は、遠位先端149と網膜103との間の特定された距離の数値(ここではミリメートル)である。二次インジケータ302は、ここで、遠位先端149の近傍に配置されるオーバーレイとして示されるが、他の実施形態では顕微鏡図内の別の場所に配置され得る。
【0086】
図4は、第3のインジケータ304を更に示す。第3のインジケータ304は、顕微鏡図の外縁部の色付きリングを含む。この例では、インジケータ304は、特定された距離に応じて色を変化させ、それぞれ図4A図4B及び図4Cで緑色から黄色及び赤色に移行する。インジケータ304は、インジケータ300と同様に、近接及び/又は距離を示すように特性を変化させ得る(例えば、明るさ、透明度、点滅速度等を変化させる)。
【0087】
上記の例は非限定的であり、本開示では、インジケータ300は、任意の適切な形態を取り得るとともに、遠位先端149の姿勢、向き及び深さ、又はその網膜からの距離若しくは網膜に対する近さを示すために任意の適切な特性を有し得ると考えられることが理解されるべきである。
【0088】
図5は、ある実施形態による、手術器具146の深さ及び位置を決定し、追跡し、且つ示すための方法500を示すフローチャートである。追跡ユニット144のある例は、方法500のステップを実施するように構成されているプロセッサを含む(又はプロセッサによって実行されたときに、方法500のステップを実施するように動作可能なソフトウェアをメモリに格納し得る)。
【0089】
ステップ502において、追跡ユニット144は眼底の画像を受信する。例えば、追跡ユニット144は、画像化ユニット142により取り込まれた1つ以上の写真又はビデオフレームを受信し得る。
【0090】
ステップ504において、追跡ユニット144は、受信された画像に対してコントラスト及び特徴強調処理を実施し得る。例えば、追跡ユニット144は、画像を赤−緑−青(RGB)形式で受信し得る。追跡ユニット144は、RGB形式の画像を色相−彩度−明度(HSV)空間に変換し得る。
【0091】
ステップ506において、追跡ユニット144は、画像内のマーカー(例えば、マーカー147)の1次推定マスク(first−order estimation mask)を決定し得る。例えば、追跡ユニット144は、マーカー147の画像を際立たせ、推定するために、マーカー147の所定の色に基づき、HSV画像の色相チャンネル及び彩度チャンネルに基準を適用し、マーカー147を背景から分離し得る。
【0092】
ステップ508において、追跡ユニット144は、眼底画像からマーカー147の画像を抽出し、マーカーの位置を特定し得る。例えば、追跡ユニット144は、ブロブ検出法を用い、画像フレーム内でほぼ一定の性質を有する領域を探すことにより、画像148内におけるマーカー147の境界を検出し得る。したがって、追跡ユニット144は、マーカー147の境界を見つけ、これを画像フレームから抽出し、画像内におけるその位置を特定し得る。
【0093】
ステップ510において、追跡ユニット144は、画像フレームから抽出されたマーカー147の形状及び向きを解析し得るとともに、所定のパターン又は色(例えば、縞の位置及び方向)に基づいてマーカーの向きを特定し得る。例えば、マーカー147が縞を有する場合、追跡ユニット144は、マーカー147の向きを縞の向き及び方向に基づいて特定し得る。
【0094】
ステップ512において、追跡ユニット144は、画像フレーム内における手術器具146の遠位先端149の姿勢及び向きを特定し得る。特定の実施形態では、追跡ユニット144は、画像内における遠位先端149の位置及び向きをマーカー147の位置及び向きの特定に基づいて特定し得る(先のステップで記載した)。このような特定を容易にするために、マーカー147は、遠位先端149から所定の距離に配置され得るとともに、手術器具146の指し示す方向を示すパターン(例えば、ストリップ、縞又は矢印)を有し得る。したがって、マーカー147の位置及びパターンに基づき、追跡ユニット144は、遠位先端149の位置及び手術器具146の指し示す方向又は向きを特定し得る。
【0095】
ステップ514において、追跡ユニット144は、眼102の深度分解画像を生成する画像化システムから画像データを受信する。このような画像は、手術器具146を含み得(器具の外部の画像化プローブにより得られる場合)、又は手術器具146自体を使用して得られ得る(例えば、器具146の先端へ延びる1つ以上の光ファイバーを介して)。ある実施形態では、追跡ユニット144は、OCTシステム114から画像データを受信する。他の実施形態では、追跡ユニット144は、超音波画像化システム、マルチスペクトル画像化システム、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)走査システム、磁気共鳴画像(MRI)システム、ポジトロン放出断層撮影(PET)画像化システム又は他の画像化システムなど、深度分解画像又は3次元画像データを提供する別のシステムから画像データを受信し得る。追跡ユニット144は、受信された画像データを解析し、遠位先端149及び眼102の網膜の深さ、並びに遠位先端149と眼102の網膜との間の距離又は近さを特定し得る。
【0096】
ステップ516において、追跡ユニット144は、受信された画像データを解析して、遠位先端149と眼102の網膜との深さ及び近さを特定する。追跡ユニット144は、ステップ514において受信された画像(又は画像に関連するか又は画像から抽出されたデータ)を処理し、手術器具146の一部分(例えば、遠位先端149)と眼102の組織(例えば、網膜)との間の距離を計算し得る。例えば、追跡ユニット144は、深度画像データを登録し、深度分解画像内において識別された特徴の座標を特定し得る。このような座標は、エッジ若しくはブロブ検出などのコンピュータビジョンアルゴリズム又はマシンビジョンアルゴリズムを使用してデジタル化され得、画像内の特徴間の距離を計算するために使用され得る。
【0097】
ある実施形態では、追跡ユニット144は、受信された深度画像の特徴に基づいて眼102の網膜と遠位先端149との間の距離又は近さを特定し得る。追跡ユニット144は、眼102の網膜と遠位先端149との間の距離又は近さを、画像内における眼102の網膜と遠位先端149との間の分離の程度に基づいて特定し得る。ある実施形態では、追跡ユニット144は、一定のz深度分解能を有し得るOCT画像内の、眼102の網膜と遠位先端149とを隔てる画素数に基づいて距離又は近さを特定し得る。ある実施形態では、追跡ユニット144は、画像のエッジ(又は遠位先端149に対応する他の特徴)と、OCT画像内に示される眼102の網膜との間の画素に基づいて距離又は近さを特定し得る。
【0098】
ステップ518において、追跡ユニット144は、顕微鏡画像内の遠位先端149上にオーバーレイとして表示するためのインジケータを生成する。追跡ユニット144のある実施形態は、手術器具146の特定された位置、深さ及び向きに基づいて1つ以上の視覚インジケータを生成し得、手術のガイダンスのために顕微鏡画像にインジケータを重ね得る。例えば、ステップ512及びステップ516の特定に基づき、追跡ユニット144は、リアルタイムデータ投影ユニット116又はディスプレイ132により表示するためのインジケータを生成し、網膜などの特定の眼組織に対する遠位先端149の近接をシステムオペレータに通知し得る。上述のように、インジケータの特性は、遠位先端149と眼102の網膜との近接又は遠位先端149と眼102の網膜との間の距離を示し得る。追跡ユニット144は、画像148内の遠位先端149の特定された位置にインジケータをオーバーレイとして適用し得る。このように、インジケータは、遠位先端149が眼102の網膜に近づくとシステムオペレータに通知することができる。
【0099】
追跡ユニット144は、遠位先端149の位置及び向き、並びに遠位先端149と眼102の網膜との間の距離をリアルタイムで追跡するために、画像化ユニット142から受信された複数の眼底画像148のための方法500を実施し得る。このため、リアルタイムデータ投影ユニット116及びディスプレイ132は、遠位先端149の位置及び動き、並びに眼102の網膜に対するその近さを追跡するために、生成されたインジケータを眼底のリアルタイムビデオ内にオーバーレイとして投影又は表示し得る。
【0100】
図6は、マーカー147の種々の例を示す。マーカー147は、手術器具146の遠位部143に巻き付けるように構成されたリング状のリボン形状を有し得る。マーカー147は、内部表面602及び外部表面604を有し得る。内部表面602は、接着剤を有し得、手術器具146の外面に接着又は結合するように構成され得る。遠位部143の外面は、リング状のリボン形状のマーカー147を収容するように構成された周囲溝を有し得る。このため、マーカー147は、周囲溝内に確実に嵌合し得る。外部表面604は、マーカー147を眼底画像内の他の要素から区別するように構成された色又はパターンを有し得る。
【0101】
手術器具146に1つ以上のマーカー147を使用し得る。マーカー147は、滅菌プラスチックなどの生体適合材料及び/又は合成材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、マーカー147は、手術器具146の遠位部143の外面に刻まれた塗料の層であり得る。マーカー147は、互いに重なっていても離れていてもよい。マーカー147は、典型的な眼底画像内には出現しない緑色などの1つ以上の高対比色を有し得る。したがって、緑色マーカー147は、眼底画像内の他の要素から区別され得る。
【0102】
マーカー147は、様々な色、テクスチャ又は特殊なコントラスト特性を有し得る。マーカー147は、器具146の向き及び角度を識別し得るパターンを含み得る。例えば、図6に示すように、マーカー147aは、無地の高対比色を有し得る。リング状のリボン形状のマーカー147aが展開されると、マーカー147aは、無地のリボンであり得る。別の例では、マーカー147bは、背景の眼底画像とマーカー147bとを区別し得るテクスチャパターンを有し得る。例示的なマーカー147cは、赤外線を反射するか又は発するように構成された赤外色を含み得る。種々のスペクトル吸収/放出を伴うマーカー114も使用し得る。
【0103】
マーカー114は、文字、数字、バーコード、パターン、記号又はピクチャを含み得る。例示的なマーカー147dは、文字を含み得る。図6に示すように、マーカー147dが器具146の遠位部143の周囲360度に巻き付くと想定すると、文字「A」は、ゼロ度位置近辺に配置され得、文字「E」は、360度位置近辺に配置され得る。文字15「B」、「C」及び「D」は、「A」と「E」との間の各位置に配置され得る。したがって、文字の向きに基づき、マーカー147dの回転位置、及び間接的に手術器具146の回転位置が特定され得る。例示的なマーカー147eは、数字「1」〜「5」を含み得る。同様に、数字は、手術器具146の回転位置を示し得る。更に、文字又は数字の向きは、また、手術器具146の傾斜角を示し得る。例えば、数字又は文字は、数字又は文字の下部が遠位先端149の方を向くように遠位先端149に対して方向付けられ得る。したがって、数字又は文字の向きに基づき、遠位先端149の傾斜角が特定され得る。
【0104】
例示的なマーカー147fは、バーコード又は縞を含み得る。縞の方向は、手術器具146の傾斜角を示し得る。更に、縞の数は、マーカー147fの回転位置、及び間接的には手術器具146の回転位置を示すように変化し得る。マーカー147gは、様々なドットパターンを有する。ドットの数は、マーカー147fの回転位置を示し得、ドットの整列は、マーカー147fの傾斜角を示し得る。他の記号もマーカー114に使用し得る。例えば、回転位置を示すために、マーカー114h及びマーカー114iの異なる回転位置に形状又は非文字記号などの様々な記号を用い得る。加えて、マーカー114jの回転位置及び傾斜位置を示すためにピクチャを用い得る。手術器具146の向き及び位置を示し得る他のパターン又は記号もマーカー114に使用し得る。
【0105】
図7A図7Bは、本開示のある実施形態による、切り替え可能な単一チャネルデータ注入部を有する眼科手術用顕微鏡100の実施形態を図示している。図7A図7Bは、簡略化のために、図1に示されている眼科手術用顕微鏡100のある部品を示していないが、本開示では、それらの部品が含まれることと、図1に関して上で説明したのと実質的に同じ様式でそれら部品が機能することとが考慮される。
【0106】
図7A図7Bに示されている実施形態において、眼科手術用顕微鏡100は、単一チャネルデータ注入が可能なリアルタイムデータ投影ユニット116を含む(すなわち、リアルタイムデータ投影ユニット116により注入された画像は、図1と同様に、2つの接眼レンズ104の一方のみを通して観察可能である)。しかしながら、図1に示されている実施形態と異なり、図7A図7Bに示されている実施形態は、データが注入されるチャネル(すなわち、接眼レンズ104)を変更する能力を提供する。より詳細には、図7Aは、データが注入されるチャネルを変更するためにリアルタイムデータ投影ユニット116及びビームスプリッタ130の一方又は両方が左右に平行移動できる実施形態を示しており、その一方で、図7Bは、データが注入されるチャネルを変更するためにリアルタイムデータ投影ユニット116とビームスプリッタ130との組立体が手術用顕微鏡100の中心点を中心に回転可能である実施形態を示している。結果として、外科医には、注入されたデータを観察するためにいずれの眼が使用されるかを選択する融通性が与えられ得る。
【0107】
図8は、本開示のある実施形態による、2チャネルデータ注入部を有する眼科手術用顕微鏡100の実施形態を図示している。図8は、簡略化のために、図1に示されている眼科手術用顕微鏡100のある部品を示していないが、本開示では、それらの部品が含まれることと、図1に関して上で説明したのと実質的に同じ様式でそれら部品が機能することとが考慮される。
【0108】
図8に示されている実施形態において、手術用顕微鏡100は、単一のリアルタイムデータ投影ユニット116と、顕微鏡の対応するチャネルに各々関連付けられた2つのビームスプリッタ130(130a及び130b)とを含む。ビームスプリッタ130a及び130bは、リアルタイムデータ投影ユニット116により投影されたデータが複製され、両方の接眼レンズ104を介して観察可能であるように構成され得る。ビームスプリッタ130a及び130bの反射率は、各接眼レンズ104を通して観察可能な画像の明るさが同じになるように選択され得る。その上、ビームスプリッタは、外科医の視野内でずらされたものを変更するために移動可能であり得る。代替的に、外科医の視野内での移動は、リアルタイムデータ投影ユニット116により投影された画像の光路にビーム偏向装置(例えば、音響光学偏向器)を配置することにより達成され得る。
【0109】
図9は、本開示のある実施形態による、2チャネルデータ注入部を有する眼科手術用顕微鏡100の代替的な実施形態を図示している。図9は、簡略化のために、図1に示されている眼科手術用顕微鏡100のある部品を示していないが、本開示では、それらの部品が含まれることと、図1に関して上で説明したのと実質的に同じ様式でそれら部品が機能することとが考慮される。
【0110】
図9の実施形態において、2つのリアルタイムデータ投影ユニット116(116a及び116b)が含まれる。各リアルタイムデータ投影ユニットは画像を投影し、各リアルタイムデータ投影ユニットは、対応するビームスプリッタ130により手術用顕微鏡の光路に結合される。各リアルタイムデータ投影ユニットは固有の画像を注入できるため、図4の実施形態は3D知覚を容易にし得る。より詳細には、各リアルタイムデータ投影ユニット116は、接眼レンズ104を通して観察されたときに3D知覚を提供するために、同じ画像であるが僅かに異なる視点の画像を投影し得る。
【0111】
図10A図10Cは、本開示のある実施形態による、3D知覚を伴う2チャネルデータ注入部を有する眼科手術用顕微鏡100の実施形態を図示している。図10A図10Cは、簡略化のために、図1に示されている眼科手術用顕微鏡100のある部品を示していないが、本開示では、それらの部品が含まれることと、図1に関して上で説明したのと実質的に同じ様式でそれら部品が機能することとが考慮される。
【0112】
図10A図10Cに示されている実施形態において、3D知覚は、(図4に関して上で説明した実施形態と同様の)2つではなく1つのリアルタイムデータ投影ユニット116を使用して容易にされる。図10Aに示されている実施形態において、単一のリアルタイムデータ投影ユニット116は、(上で説明したように)3D知覚を提供するために僅かに異なり得る横並びの画像を投影する。投影された横並びの画像は、ビームスプリッタ500により分割され、ビームスプリッタ130a及び130bにより各接眼レンズ104に投影され得る。ある実施形態において、フィルタ502a及び502bはまた、3D知覚を更に容易にするために投影された画像の光路に配置され得る。
【0113】
図10Bに示されている実施形態において、リアルタイムデータ投影ユニット116は、色分けされた画像(アナグリフにおける赤色及びシアンで色分けされた画像など)を投影し得、且つその色分けされた画像は、手術用顕微鏡100の2つのチャネルに向けて導かれるようにビームスプリッタ504a及び504bを通過し得る。フィルタ506a及び506bは、色分けされた情報を分離するために各チャネルに対する画像の光路に配置され得る。例えば、フィルタ506a(赤色フィルタなど)は左側チャネルに挿入され得、且つフィルタ506b(シアンフィルタなど)は、投影された画像における赤色/シアン情報を分離するために右側チャネルに追加され得る。投影された画像を適切に校正することにより、外科医が余計な眼鏡又は光学装置を装着する必要なしに3D知覚が提供され得る。
【0114】
図10Cに示されている実施形態において、リアルタイムデータ表示ユニット116は、偏光ディスプレイ/プロジェクタ(偏光変調プロジェクタなど)であり得、且つ偏光符号化画像を投影し得る。投影された偏光符号化画像は、2つのチャネル間で分割されるように偏光ビームスプリッタ508a及び508bを通過し得る。例えば、p偏光画像が一方の眼へと分割され得(510aとして示される)、その一方でs偏光画像が他方の眼へと分割され得る(510bとして示される)。追加的又は代替的に、波長板512a及び512bを2つのチャネルに挿入することにより、左円偏光画像が一方の眼へと分割され得、その一方で右円偏光画像が他方の眼へと分割され得る。投影された画像を適切に校正することにより、外科医が余計な眼鏡又は光学装置を装着する必要なしに3D知覚が提供され得る。
【0115】
上に開示した種々の特徴及び機能、他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、望ましくは多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることが認識されるであろう。本明細書における種々の現在予期できない又は予想できない代替形態、修正形態、変更形態、又は改良形態が後に当業者によってなされ得、これらの代替形態、変更形態及び改良形態も添付の特許請求の範囲に包含されるように意図されていることも認識されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C