特許第6928037号(P6928037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6928037
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】多相重合のための管状反応器および方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20210823BHJP
   C08F 10/08 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   C08F2/01
   C08F10/08
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-135368(P2019-135368)
(22)【出願日】2019年7月23日
(62)【分割の表示】特願2017-541644(P2017-541644)の分割
【原出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2019-196497(P2019-196497A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】15154112.5
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・リッター
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04395523(US,A)
【文献】 特開2002−308908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相重合のための管状反応器であって、少なくとも、
注入口と排出口との間で半径方向に反応器容積の境界を定めるためのパイプピースと、
前記パイプピースの軸方向にフローを生成するための攪拌器であって、前記攪拌器が、前記注入口に隣接し、かつ、前記フローに、前記パイプピースの内側に前記半径方向にポリマー生成物の濃度分布を生じさせる遠心力を付与可能であるように寸法決めされるとともに作動可能であり、前記反応器中の溶媒よりも低い密度を有する前記ポリマー生成物が前記管状反応器の内部において濃縮される、攪拌器と、
前記排出口を通って挿入され、前記パイプピースの内側のフローの濃縮された半径方向内側部に浸された、前記ポリマー生成物を含む前記フローの前記半径方向内側部を排出するための排出口導管と
前記反応器の排出口側のパージ導管と、
を含む、管状反応器。
【請求項2】
前記攪拌器によって、異なる濃度の少なくとも2つの部分を有する多相性積層型回転フローが、前記パイプピースの内側の前記排出口に割り当てられた分離領域において付与可能であることを特徴とする、請求項1に記載の管状反応器。
【請求項3】
前記多相性積層型回転フローが、異なる濃度の2つの部分を有する二相性積層型回転フローであることを特徴とする、請求項2に記載の管状反応器。
【請求項4】
前記攪拌器が前記注入口に隣接して位置付けられ、第1反応剤の導入のための第1供給口と、第2反応剤及び/又は触媒の導入のための第2供給口とが提供され、前記第1供給口および前記第2供給口が、前記パイプピース内へ開口することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の管状反応器。
【請求項5】
前記攪拌器がシャフトへ接合され、前記シャフトが管状反応器にシャフト貫通口を介して導入可能であり、前記シャフト貫通口は溶媒で洗浄可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の管状反応器。
【請求項6】
前記攪拌器の外径dに対する前記パイプピースの内径Dの比率が、1.0001≦D/d≦1.300に従うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の管状反応器。
【請求項7】
前記排出口導管が、前記排出口導管を冷却するための冷却手段を含み、前記冷却手段が、冷却媒体を導くための二重壁の被覆パイプを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の管状反応器。
【請求項8】
前記排出口導管が前記パイプピースに対して前記軸方向に可動であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の管状反応器。
【請求項9】
前記管状反応器が、熱交換器の内側に同心円状に配置され、前記熱交換器が、前記管状反応器の半径方向外側に、熱除去のための少なくとも1つの熱交換器要素を含み、ループフローが、前記管状反応器の前記攪拌器によって、前記熱交換器内側に付与可能である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の管状反応器を含む熱交換器。
【請求項10】
多相重合のためのプラントであって、少なくとも、
・溶媒を含む流体を冷却するための熱交換器と、
・生成物を分離するための分離手段と、
・前記分離手段の出口と前記熱交換器とへ接続された再循環用導管と
を含み、
前記熱交換器および/または前記再循環用導管が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の管状反応器を含み、前記管状反応器の前記排出口導管が前記分離手段の入口と接続される、プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相重合を実施するために使用され得る管状反応器と、多相重合のためのプロセスとに関する。本発明は特に、管状反応器と、液体溶媒における触媒を使用したモノマーの重合によりブチルゴムを製造するためのプロセスとに関連する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)は、ポリオレフィンを製造するために重合を実施するために管状ループ反応器を使用することを開示する。この目的のために、溶媒に固体ポリマー粒子を含む懸濁液が、ループ反応器から連続的に引き出される。引き出された流れは、ポリマー粒子を集めた後それらを分離手段において分離および精製するために、液体遠心分離機へ送られる。分離手段において分離された溶媒、および、分離手段に送られなかった液体遠心分離機由来の、溶媒が豊富に含まれた部分は、ループ反応器へ送り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1591459A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々のパイプラインおよび特に反応器が容易に詰まり得るということが、そのようなプロセスにおけるそのような反応器の欠点である。特にブチルゴムの製造において、典型的には−70〜−100℃の温度で重合を実施することが必要である。この温度は、およそ−75℃〜−67℃であるブチルゴムのガラス転移温度に十分近い。したがって、特にブチルゴムの製造において、重合の間に形成される反応の熱により、ブチルゴム粒子はもはやガラス状でなくなり、この状態において非常に容易に表面に付着するという危険が常にある。これはパイプラインおよび特に管状反応器の詰まりをもたらし、したがってブチルゴムの製造を中断して、パイプラインおよび管状反応器に、費用がかかり不便な洗浄を行うことがしばしば必要となる。
【0005】
本発明により対処される問題は、詰まる危険性が低下した、管状反応器と多相重合のための、特にブチルゴムを製造するためのプロセスと提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は本発明により、管状反応器であって、注入口と排出口との間で半径方向に反応器容積の境界を定めるための少なくとも1つのパイプピースと、パイプピースの軸方向にフローを生成するための攪拌器であって、攪拌器が、フローに、パイプピース内側に半径方向に濃度分布を生じさせる遠心力を付与可能であるように好ましくは寸法決めされるとともに作動可能である、攪拌器と、フローの半径方向内側部を排出するための排出口導管とを含む管状反応器により解決される。
【0007】
本発明は、多相重合のための、特にブチルゴムを製造するためのプロセスであって、少なくとも、攪拌器を使用して、溶媒において生成物をもたらすために重合を実施するために第1反応剤を第2反応剤および/または触媒と混合するステップと、同じ攪拌器を使用して、少なくとも生成物および溶媒に遠心力を与えるステップと、フローの濃縮された半径方向内側部を引き出すステップとを含むプロセスをさらに含む。
【0008】
特にブチルゴムを製造するために使用され得る本発明の多相重合のための管状反応器は、注入口と排出口との間で半径方向に反応器容積の境界を定めるためのパイプピースを含む。管状反応器は、パイプピースの軸方向にフローを生成するための攪拌器を含み、本発明によると、攪拌器は、フローに、パイプピース内側に半径方向に濃度分布を生じさせる遠心力を付与可能であるように寸法決めされるとともに作動可能である。フローの濃縮された半径方向内側部を排出するための排出口導管も提供される。
【0009】
管状反応器の攪拌器は、したがって、軸方向フロー、ならびに第1反応剤と、第2反応剤および/またはさらなる反応剤および/または触媒との混合を達成するのみならず遠心力を与える。特に遠心力の比率は、軸方向における慣性力および重り力の比率ならびに摩擦力の比率を上回る。与えられた遠心力により、管状反応器の内側で濃度分布が起こり、その結果、未反応の反応剤および/または触媒からの生成物の少なくとも部分的な分離が管状反応器内側で既に起こっている。生成物/溶媒混合物に基づく生成物の比率が増加するように、生成物はさらに濃縮され得る。生成物が管状反応器の内部において濃縮されるように、生成物が溶媒より低い密度を有する場合が特に好ましい。これは、管状反応器の内側に生成物粒子が付着し得ないように、生成物、例えばブチルゴムが管状反応器のパイプピースと接触するのを回避する。
【0010】
管状反応器の詰まりのリスクはしたがって減少する。さらに、液体遠心分離機の効果は管状反応器内側で既に達成され得るため、管状反応器の内容物を液体遠心分離機へ追加的に送る必要はない。これは、同じ攪拌器であって、いずれの場合も軸方向の搬送および混合を達成するために提供される同じ攪拌器で達成され得る。これは、生成物の十分に高い濃度を達成するのに必要である攪拌器速度であっても、十分に乱れたフローが攪拌器のごく近傍で達成され、したがって、用いられた反応剤/触媒の良好な混合がもたらされるという発見を利用するものである。特にブチルゴムの製造において、反応速度は、乱領域および混合領域における滞留時間が高変換および良好な空時収量を達成するのに十分であるように、十分に高い。特にブチルゴムの製造において、生成物の脱混合および濃縮は、混合物が化学平衡に既に近づきつつあるときにのみ行われる。パイプピースおよび攪拌器の形状は、化学平衡に基づいて計算された理論的に可能な生成物重量分率の少なくとも60重量パーセント、特に少なくとも80重量パーセントが達成され得るように、選択され得る。
【0011】
攪拌器によって、異なる濃度の少なくとも2つの層を有する二相性積層型回転フローが、パイプピース内側の排出口に割り当てられた分離領域において付与可能である場合が望ましい。攪拌器は、積層型回転フローがパイプピース内側で達成され得るように寸法決めされ得るとともに作動可能であり得る。ランキン渦が、例えばパイプピース内側にもたらされ得る。回転フローの層は、特に相境界により互いから分離されるとともに、各々異なる角速度を有し得る。これは、互いから最適に境界を定めることができる異なる濃度の部分容積をもたらす。排出口導管の形状は、特に、回転フローの内部層の予期される形状に適合される。排出口導管は、例えば、内部層の外径に等しい内径を有することができ、または、より小さい直径を有することができる。これは、特に高い生成物濃度を有する質量流量が排出口導管を介して引き出され得ることを確実にする。
【0012】
攪拌器は好ましくは、注入口に隣接して位置付けられる。さらに、第1反応剤の導入のための第1供給口ならびに第2反応剤および/または触媒の導入のための第2供給口が設けられてもよく、第1供給口および第2供給口は、特に攪拌器に隣接して、パイプピース内へ開口する。同じ反応剤のためのさらなる供給口および/または追加的な反応剤のためのさらなる供給口も設けられてもよい。結果として、管状反応器の長さ全体が効果的に用いられ得るように、反応剤/触媒は、パイプピースの注入口で攪拌器により互いと既に混合されていてもよい。供給口ラインにおける早すぎる重合が回避され、したがって、生成物の過度に大きい粒子サイズが回避される。代わりに、可能な限り狭い分子量分布を達成することを可能にするために、パイプピースおよび攪拌器の寸法が、混合された反応剤/触媒の滞留時間を調整するために使用されてもよい。これは特に後続の分離操作を容易にする。
【0013】
排出口導管がパイプピース内側のフローの濃縮された半径方向内側部に浸される場合が特に好ましい。排出口導管は、例えば、浸漬チューブであって、その入口開口がフローの濃縮された半径方向内側部の内側にある浸漬チューブとして構成される。これは、例えば断面の変化を理由として管状反応器のパイプピースの排出口の下流で起こる、濃縮された生成物の、フローの残りの構成成分とのクロス混合を回避することを可能にする。
【0014】
攪拌器は好ましくは、遠心力をフローに与え得る軸方向搬送攪拌器である。この目的のために、攪拌器は、例えばそれが、搬送されるフローを回転するように設定し得るように構成される。攪拌器は、例えばプロペラ、特に厳密に1つのプロペラを含み、このプロペラは、船舶のプロペラと同様に、軸方向フローおよび同時に回転フローを生じ得る。フローの回転率を介して、攪拌器は、管状反応器の下流領域においてフローの構成成分の脱混合をもたらし得る遠心力をフローへ与えるのに十分大きい接線力をフローへ加える。
【0015】
攪拌器は特にシャフト、特に穿設中空シャフトへ接合され、シャフトは管状反応器にシャフト貫通口を介して好ましくは導入可能であり、シャフト貫通口は特に、溶媒で洗浄可能である。反応剤および/または触媒は、中空シャフトを介して管状反応器へ供給され得る。さらに、フローの再循環部分、例えば濃縮された溶媒は、中空シャフトを介して再利用され得る。中空シャフトにおける穿孔を介して、中空シャフトを介して供給されたフローは、攪拌器に到達する前に中空シャフトの外側のフローと既に連通している、および混ざっていることができる。したがって、反応剤および/または触媒および/または溶媒は、半径方向内側および半径方向外側の両方から管状反応器に供給され得る。溶媒は好ましくはシャフト貫通口でシャフトへ供給されるため、堆積物は回避されるおよび/または洗い流される。
【0016】
パイプピースの内径Dが攪拌器の外径dと適合される場合が特に好ましい。したがって、パイプピースと攪拌器との間のギャップは、パイプピースにおける攪拌器の妨害の危険無しに、可能な限り小さく保たれ得る。この目的のために、攪拌器の外径dに対するパイプピースの内径Dの比率は、1.0001≦D/d≦1.300、特に1.0005≦D/d≦1.100、および好ましくは1.001≦D/d≦1.010に従う。一例として、比率D/d=1.005±0.001である。
【0017】
排出口導管がパイプピースの軸方向に可動である場合が特に好ましい。これにより、例えば攪拌器が異なる速度でおよび/または異なる電源入力で作動され、パイプピースの軸方向における生成物の濃縮がシフトされる場合、排出口導管をパイプピース内側の異なるフロー条件に適合させることが可能となる。これは、組立て中に排出口導管がパイプピースと衝突し得ないため、管状反応器の組立てと別の装置における管状反応器の組立てとの両方を同時に容易にする。これはまた、異なる生成物タイプを動かすことを可能にする。
【0018】
本発明は、上述のとおり構成および開発され得る管状反応器を含む熱交換器にさらに関する。管状反応器は、熱交換器内側に実質的に同心円状に配置され、熱交換器は、管状反応器の半径方向外側に、熱除去のための少なくとも1つの熱交換器要素を含む。管状反応器の攪拌器によって、ループフローが熱交換器内側に付与可能である。したがって、生成物を濃縮するため、および熱交換器内側にループフローを提供するために、1つのみの攪拌器で反応剤/触媒を混合することが可能である。ループフローは、例えば、排出されない溶媒を、排出口導管を介して熱交換器要素へ運んで当該溶媒を冷却することができる。濃縮された生成物の大部分は排出口導管を介して既に除去されているため、熱交換器要素へ搬送されたフローは、熱交換器要素のゴム状化を引き起こし得るポリマー粒子はほとんど含まない。これは熱交換器要素における熱伝達の低下を回避する。熱交換器要素の交換および/または熱交換器要素の洗浄は、したがって、控えられ得るか、または少なくとも、著しくより長い間隔で実施され得る。これは、生産性をさらに増す。異なる熱交換器要素間の通路の詰まりも回避される。比較的大きい粒子の好ましい分離は、熱交換器要素の詰まりを回避する。
【0019】
好ましい実施形態において、排出口導管は、排出口導管を冷却するための冷却手段を含む。
【0020】
冷却手段は特に、冷却媒体を導くための好ましくは二重壁の被覆パイプを含む。一例として、冷却媒体は、排出口導管に沿って逆流して流れ得る、排出口導管の入口開口で外向きにそらされ得る、および並流に還流し得る。冷却された排出口導管は、生成物が加熱されることを防ぐことを可能にする。特にブチルゴムの製造において、これは、排出口導管を介して濃縮されたブチルゴムがもはやガラス状のままではなく、排出口導管のゴム状化をもたらす状況を回避する。これは出口導管の詰まりを回避する。
【0021】
本発明は、ブチルゴムを製造するために特に使用され得る多相重合のためのプラントにさらに関する。プラントは、流体を冷却するための熱交換器を含む。プラントは、生成物の分離のための分離手段をさらに含む。再循環用導管が分離手段の出口および熱交換器へ接続される。熱交換器および/または再循環用導管は、上述のとおり構成および開発され得る管状反応器を含む。管状反応器の排出口導管は、分離手段の入口へ接続される。熱交換器は、特に、上述のとおり構成および開発され得る。管状反応器は、ポリマー粒子が熱交換器の再循環用導管および/または要素に付着することおよびそれらを詰まらせることを回避する。したがって、詰まりのリスクは減少し、プラントは、したがってより生産的に作動され得る。特に、プラントを、より長い期間にわたって洗浄作業を行う必要無く、連続的に作動させることが可能である。例えば、質量流量を、複数のより小さい熱交換器にわたって冷却されるように分割するために、および/または冷却中に特に大きい温度差を達成するために多段式冷却を実施するために、直列および/または並列に接続された2つ以上の熱交換器を提供することも可能である。生成物質量流量を複数のより小さい分離手段にわたって分割するために、および/または、特に高い純度で多段式分離を実施するために、並列および/または直列に接続された複数の分離手段を提供することも可能である。分離手段は、特に、フラッシュユニット、ストリッパーおよび/または蒸留カラムを含み得る。特に熱交換器に接続されたパージ導管が、溶媒における不必要な不純物の濃縮を回避するために同様に設けられてもよい。
【0022】
本発明は、多相重合のための、特にブチルゴムを製造するためのプロセスであって、攪拌器を使用して、溶媒において生成物をもたらすために重合を実施するために第1反応剤を第2反応剤および/または触媒と混合するステップと、同じ攪拌器を使用して、少なくとも生成物および溶媒に遠心力を与えるステップと、フローの濃縮された半径方向内側部を引き出すステップとを含むプロセスにさらに関する。攪拌器は、混合のためだけでなく、遠心力を与えるためにも使用されるため、濃縮された生成物が引き出され得るフローの濃縮された半径方向内側部を生じる。生成物は、特に、溶媒より低い密度を有するため、重合中に形成されたポリマー粒子は、それらが半径方向にフローの境界を定める構成要素に付着し得ないように、フローの内部において濃縮され得る。これは特に、管状の構成要素の詰まりのリスクを減らす。本プロセスは、したがって、洗浄および補修管理作業が必要とされることなく、より長い期間にわたって、連続的に作動され得る。これはプロセスのより高い生産性をもたらす。
【0023】
遠心力を与えるステップの間、回転フローが生成され、回転フローが特に、異なる濃度の少なくとも2つの層を有する二相性積層型回転フローである場合が好ましい。回転フローにより、生成物の濃縮を円滑にすることが可能になり、これは特にフロー内側に、相境界により互いから分離された2つの層が生じることを可能にする。これは濃縮された生成物の引き出しを円滑にする。
【0024】
特に、少なくとも溶媒が冷却される。溶媒は、遠心力を与えるステップの後、特に好ましくはフローの濃縮された半径方向内側部の引き出しの後に好ましくは冷却される。これは、可能な限り少ない数の、重合の間に形成されたポリマー粒子を冷却することを可能にする。溶媒への熱伝達はポリマー粒子への熱伝達より良好であるため、これは、より効率的な冷却が達成されることを可能にする。さらに、再循環され冷却された溶媒は、重合の間に形成されたポリマー粒子を完全に取り込むことができ、したがって、重合の間に形成された反応熱を形成されたポリマー粒子から取り除くのが特に単純かつ効率的である。溶媒は、特に好ましくはループフローを介して、熱除去のための少なくとも1つの熱交換器要素へ搬送され、ループフローは好ましくは、同じ攪拌器を使用して与えられる。結果として、溶媒の冷却のために必要であるループフローを提供するために、1つのみの攪拌器が必要となる。追加的な搬送手段は不要である。
【0025】
攪拌器は特に好ましくは比率c=wtan2/((d/2)・g)について、wtanが攪拌器の外縁での接線速度を示し、dが攪拌器の外径を示し、gが重力による加速を示し、c≧10、特にc≧100、および好ましくはc≧1000であるように作動される。c≦10000である場合が好ましい。攪拌器のこの動作モードは、攪拌器が混合を達成するのみならず、攪拌器により与えられたフローの半径方向内側部における濃縮も確実にすることを可能にする。
【0026】
本プロセスは、特に好ましくは上述のとおり構成および開発され得る管状反応器を用いる。代替的にまたは追加的に、本プロセスは、上述のとおり構成および開発され得る熱交換器を用いてもよい。代替的にまたは追加的に、本プロセスは、上述のとおり構成および開発され得るプラントを用いてもよい。特に熱交換器内側に配置される、ここで使用される管状反応器は、適切に作動された攪拌器を使用して、重合の後に、形成された生成物の濃縮を自動的に引き起こす管状反応器のパイプピースの内側の好適なフローを押し進めることを可能にする。
【0027】
本発明はここで、添付図面を参照して好ましい例示的な実施形態を使用して、一例として解明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による管状反応器を含む熱交換器の概略側面図器を示す。
図2】さらなる実施形態における、本発明による管状反応器の概略側面図を示す。
図3図1の熱交換器を含む、多相重合のためのプラントの概略側縁図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示される熱交換器10は、中央軸12に同心円状に配置された管状反応器14を含む。管状反応器14は、注入口18から排出口20へ至るパイプピース16を含む。管状反応器14は、攪拌器22を含み、これは、例示的な実施形態において示されるのはプロペラである。攪拌器22は、熱交換器10の底部26から下向きに突出するシャフト24により駆動される。シャフト24はシャフト貫通口25を介して熱交換器10へ導入され、堆積物を回避および洗い流すために、特に溶媒がシャフト貫通口25を介して供給される。シャフト24は攪拌器22を、軸方向フロー27だけでなく回転フロー28も生じるのに十分な速度にさらす。回転フロー28は軸方向フロー27に、パイプピース16内側における半径方向の濃度分布をもたらす遠心力を与える。この濃度分布は、生成物、特にブチルゴムが濃縮されるようになった内側部30を有する積層型回転フロー28における、管状反応器14の上部領域において、すなわち排出口20に隣接して、生じる。濃縮された生成物は、内側部30に浸された排出口導管32を介して引き出され得る。
【0030】
軸方向フロー27の、排出口導管32を介して引き出されなかった部分は、排出口導管32を通過して流れるとともにループフロー34に沿ってそらされる。溶媒および触媒が特に豊富に含まれた、そらされたループフロー34は、ループフロー34を冷却する熱交換器要素36を通過して流れる。
【0031】
底部26において、第1生成物、例えば20モノマーが第1供給口38を介して供給される。第2反応剤および/または触媒は、第2供給口40を介して供給される。反応剤および/または触媒は、特に液体溶媒に溶解される。攪拌器22は、混合ゾーン42において、第1供給口38および第2供給口40を介して供給された反応剤/触媒を、それらが混合ゾーン42において互いに反応するように、混合する。生成物、反応剤および/または触媒の混合物は次いで、中間ゾーン44に流入し、中間ゾーン44において、混合物はさらに反応し得るが、半径方向における濃度プロファイルでの脱混合は、既に確立されている。渦流ゾーン46において、回転フローが確立され、この回転フローは、特に、内部濃縮部分30を含む内部層と溶媒が豊富に含まれた部分48とを含む。
【0032】
フロー27には、排出口導管32を介して除去された、濃縮された生成物の洗浄中に除去された再循環流れが、さらなる供給口(図示せず)を介して供給され得る。再循環流れは、第1供給口38および/または第2供給口40を介してさらに供給され得る。シャフト24を中空シャフトとして構成すること、ならびに、再循環流れおよび/または反応剤および/または触媒を、中空シャフトとして構成されたシャフト24を介して供給することも可能である。堆積物を回避するおよび/または洗い流すために、シャフト24のシャフト貫通口25で溶媒を供給することが好ましい。
【0033】
熱交換器10は、パージ導管52へ接続された上部50をさらに含む。不必要な不純物または副産物を有する熱交換器10および管状反応器14の内容物の濃縮を回避するために、溶媒が豊富に含まれたフローは、パージ導管52を介して排出され得る。
【0034】
図1に示される実施形態と比較して、図2に示される実施形態においては、管状反応器14は熱交換器10の外側に配置される。ここで、排出口導管32を通過させられたフローは、供給口54を介して熱交換器10へ供給され、熱交換器10で、フローは熱交換器要素36を介して冷却される。熱交換器10は、この場合、直線的に横断され得るとともに、形成された反応の熱を吸収するために、戻り配管56を介して管状反応器14へ送り返され得る。同様に、溶媒は、分離手段58(図3)において、排出口導管32を介して引き出された生成物流れから除去されて、再循環用導管60を介して管状反応器14へ送り返されることも可能である。図2に示される実施形態において、管状反応器14は再循環用導管60に配置され、再循環用導管60の一部は管状反応器14のパイプピース16を形成する。
【0035】
図3に示されるプラント62において、図1に示されるとともに管状反応器14を含む熱交換器10は、分離手段58へ接続される。熱交換器10は、代替的に、図2に示される配置構成と交換され得る。管状反応器14の排出口導管32は分離導管64を介して分離手段58へ接続される。分離手段58において、分離導管64を介して供給された生成物は、例えば、蒸留を使用して浄化され、少なくとも2つの副流に分割される。浄化された生成物は、生成物を保管する、および/またはさらに精製する、および/または包装するために、生成物導管66を介して分離手段58を離れる。溶媒に特に豊富に含まれるとともに触媒および/または未反応の反応剤を含み得る分離された構成成分は、熱交換器10を介して再循環用導管60を介して管状反応器14へ供給される。
図1
図2
図3