特許第6928181号(P6928181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6928181
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】皮膚の水分及び脂質レベルの決定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20210823BHJP
【FI】
   A61B5/0537ZDM
   A61B5/0537 100
   A61B5/0537 200
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-535242(P2020-535242)
(86)(22)【出願日】2018年12月27日
(65)【公表番号】特表2021-506524(P2021-506524A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2018097029
(87)【国際公開番号】WO2019129812
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2020年6月24日
(31)【優先権主張番号】17210608.0
(32)【優先日】2017年12月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルギース,バブー
(72)【発明者】
【氏名】スポーレンドンク,ワウテル ヘンドリク コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマンス,ヴァルター ヘルマンス
(72)【発明者】
【氏名】バラゴナ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】エゼルスカヤ,アナ
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0007151(US,A1)
【文献】 特開平09−243683(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0123629(US,A1)
【文献】 米国特許第04966158(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0214311(US,A1)
【文献】 特開2007−181524(JP,A)
【文献】 特表2007−521102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の水分及び脂質レベルを測定する、皮膚に接触するのに適する少なくとも2つの電極及び前記少なくとも2つの電極を横切る周波数で電気信号を生成する信号発生器を含む、システムであって、ここで、前記信号発生器が第1周波数範囲の第1周波数で電気信号を生成する場合に、前記システムが、前記信号の周波数が前記第1周波数であるときに測定された導電率に基づいて、皮膚の水分レベルを判定し、前記第1周波数範囲が、10kHz〜100kHzの周波数範囲であり、かつ、前記第1周波数範囲は、脂質と湿潤又は乾燥皮膚との間の導電率のコントラストが低く、皮膚の導電率が脂質レベルに対する感度が低く、並びに、
前記信号発生器が第2周波数範囲の第2周波数で電気信号を生成する場合に、前記システムが、前記信号の周波数が前記第2周波数であるときに測定された導電率に基づいて、皮膚の脂質レベルを判定し、前記第2周波数範囲が10Hz〜500Hz、又は10MHz〜100MHzの周波数範囲であり、かつ、前記第2周波数範囲は、脂質と湿潤又は乾燥皮膚との間の導電率のコントラストが高く、皮膚の導電率が脂質レベルに対する感度がより高く、
以下の:
前記少なくとも2つの電極間の導電率を測定し、
前記測定された導電率と、1又はそれ以上の所定の皮膚の導電率が周波数により変化する態様を記載するプロファイルとを、比較し、かつ、
前記測定された導電率及び無線周波数信号の周波数の比較に基づいて、前記皮膚の水分及び脂質レベルを判定する、ことを含む、システム。
【請求項2】
第1周波数が、50kHzである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第2周波数が50Hz又は50MHzである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
複数の周波数で導電率を測定して、複数の導電率測定値を取得する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
複数の導電率測定値から皮膚の水分及び脂質レベルの平均を判定して、皮膚の水分及び脂質レベルを判定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
さらに、判定された水分又は脂質レベルに基づいて、皮膚状態を決定すること、を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
さらに、決定された皮膚状態に基づいて、推奨するスキンケアを決定すること、を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
皮膚の水分及び脂質レベルを測定する、皮膚に接触するのに適する少なくとも2つの電極及び前記少なくとも2つの電極を横切る周波数で電気信号を生成する信号発生器を含むシステムを作動させる、方法であって、ここで、前記信号発生器が第1周波数範囲の第1周波数で電気信号を生成する場合に、前記システムが、前記信号の周波数が前記第1周波数であるときに測定された導電率に基づいて、皮膚の水分レベルを判定し、前記第1周波数範囲が、10kHz〜100kHzの周波数範囲であり、かつ、前記第1周波数範囲は、脂質と湿潤又は乾燥皮膚との間の導電率のコントラストが低く、皮膚の導電率が脂質レベルに対する感度が低く、並びに、
前記信号発生器が第2周波数範囲の第2周波数で電気信号を生成する場合に、前記システムが、前記信号の周波数が前記第2周波数であるときに測定された導電率に基づいて、皮膚の脂質レベルを判定し、前記第2周波数範囲が10Hz〜500Hz、又は10MHz〜100MHzの周波数範囲であり、前記第2周波数範囲は、脂質と湿潤又は乾燥皮膚との間の導電率のコントラストが高く、皮膚の導電率が脂質レベルに対する感度がより高く、
前記以下の:
前記少なくとも2つの電極間の導電率を測定し、
測定された導電率と、1又はそれ以上の所定の皮膚の導電率が周波数により変化する態様を記載するプロファイルとを、比較し、かつ、
前記測定された導電率及び無線周波数信号の周波数の比較に基づいて、前記皮膚の水分及び脂質レベルを判定する、ことを含む、方法。
【請求項9】
適当なコンピュータ又はプロセッサによって実行されると、前記コンピュータ又はプロセッサが請求項8に記載の方法を実行するように構成される、具現化されたコンピュータ読取可能コードを備える、非一過性のコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の水分又は脂質レベルを測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の表面脂質(例:皮脂)と水分(例:ハイドレーション(hydration))のレベルは、肌の外観と肌の健康を決定する重要な要因と考えられる。当該成分の適切なバランスは、健康な肌の指標であり、肌の完全な状態を保護し、維持する中心的な役割を果たす。皮膚のハイドレーションと脂質保持能は、主に角質層(SC)に関連する。SCは、角質細胞と細胞間脂質二重層マトリクスで構成され、水分損失を防ぐ役割を果たす。角質層の保水性は、(i)天然保湿因子(NMF)と総称される天然の保湿剤の存在と、(ii)角質層の細胞間脂質の整然な配置とで、表皮の水分損失を防ぐバリアを形成することに依存する。
【0003】
一般に、皮膚は、10〜20%の水分を含む場合に柔軟性が維持されるが、10%未満に低下すると脆くなる。皮膚脂質(例えば、皮脂)は、真皮の皮脂腺が産生する脂肪酸、中性脂肪、タンパク質等の分子の混合物である。皮膚脂質は、角質層の水分を封じ込めて保存し、蒸発や細菌感染から防御して、肌をなめらかに保ち、柔軟性を保つ機能がある。皮脂排泄率(SER)は、脂質(例えば皮脂)の産生量を反映して、皮脂腺の生理的活動と密接に関連する。これは、皮脂腺障害の病態形成、吹き出物やニキビの重要な情報である。
【0004】
脂質及び水分レベルのバランスが最適であることは、化粧品の観点から重要である、肌の外観に輝きのある滑らかな質感と自然な色素沈着がもたらされる。脂質が過剰生成すると、毛穴が詰まり、シミの原因になりうる。肌のハイドレーション量と脂質量が十分な場合、肌が滑らかで、柔らかくしなやかになるが、水分が不足すると、肌がくすんで見えたり、ひび割れたりして老けて見える場合がある。肌のバリア機能や水分維持機能が低下すると、乾燥しやすく荒れた肌になり、感染症に罹患する可能性が高くなる。
【0005】
特許文献1は、皮膚に交流電流を印加し、戻り交流電流を測定して、皮膚の水分及び皮膚を測定する皮膚状態測定装置を開示する。特許文献1によれば、皮膚の水分は測定された抵抗から導出され、皮膚油分は測定された戻り交流電流の形状から導出されるかもしれない。皮膚の水分と皮膚油分は、1つの入力信号のみを用いて得られるといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/208932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、水分及び脂質含有量は、皮膚の全体的な健康状態を決定する重要な因子であり、例えば、皮膚の静電容量または電流導電率を測定し、当該測定値に基づいて皮膚の水分を検出する水分測定装置が存在する。しかしながら、当該測定値は、実際には、皮膚の水分(例えばハイドレーション)レベルと脂質(例えば油分)レベルの両方に依存する可能性があり、本発明者らにより、当該装置の測定は不正確でありうることが観察された。例えば、当該装置で測定されるハイドレーションレベルは、同一にハイドレードされた皮膚の2つのパッチを測定した場合でも、皮膚の表面脂質レベルに応じて変化する可能性がある。したがって、皮膚の水分又は脂質含有量のレベルを判定するシステム及び方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様では、請求項1で特定される皮膚の水分及び脂質レベルを測定する、システムが提供される。有利な実施形態は、請求項2〜7で特定される。
【0009】
当該システムは、皮膚に接触するのに適する少なくとも2つの電極及び前記少なくとも2つの電極を横切る周波数で電気信号を生成する信号発生器を含む。当該システムは、以下の:少なくとも2つの電極間の導電率を測定し、かつ、測定された導電率、及び電気信号の周波数に基づく皮膚の水分又は脂質レベルを判定する、ことを含む、システムである。
【0010】
前記信号発生器が第1周波数範囲の第1周波数で電気信号を生成してもよい。前記システムが、前記信号の周波数が第1周波数であるときに測定された導電率に基づいて、皮膚の水分レベルを判定する
【0011】
第1周波数範囲は、10kHz〜100kHz、又は0.8MHz〜5MHzの周波数範囲であ
【0012】
いくつかの実施形態では、第1周波数が、50kHz〜1MHzであってよい。
【0013】
信号発生器は、第2周波数範囲の第2周波数で電気信号を生成する。前記システムは、前記信号の周波数が第2周波数であるときに測定された導電率に基づいて、皮膚の脂質レベルを判定る。
【0014】
第2周波数範囲は、第1周波数範囲とは異な
【0015】
第2周波数範囲は、10Hz〜500Hz、又は10MHz〜100MHzの周波数範囲であ
【0016】
いくつかの実施形態では、第2周波数が50Hz〜50MHzであってよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記システムは、複数の周波数で導電率を測定して、複数の導電率測定値を取得してよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記システムは、複数の導電率測定値から皮膚の水分又は脂質レベルの平均を判定して、皮膚の水分又は脂質レベルを判定してよい。
【0019】
前記システムはさらに、測定された導電率と、1又はそれ以上の所定の皮膚の導電率が周波数により変化する態様を記載するプロファイルとを、比較すること;及び、測定された導電率及び無線周波数信号の周波数の比較に基づいて、皮膚の水分又は脂質レベルを判定すること、を含
【0020】
いくつかの実施形態では、前記システムは、さらに、判定された水分又は脂質レベルに基づいて、皮膚状態を決定すること、を含んでよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記システムはさらに、前記決定された皮膚状態に基づいて、推奨するスキンケアを決定してよい。
【0022】
第2態様では、請求項8に記載の、皮膚の水分又は脂質レベルを判定する、システムを作動させる、方法に関する。
【0023】
前記システムは、皮膚に接触するのに適する少なくとも2つの電極及び前記少なくとも2つの電極を横切る周波数で電気信号を生成する信号発生器を含む。前記方法は、前記少なくとも2つの電極間の導電率を測定し、かつ、前記測定された導電率、及び前記電気信号の前記周波数に基づく皮膚の水分又は脂質レベルを判定する、ことを含む。
【0024】
第3態様では、適当なコンピュータ又はプロセッサによって実行されると、前記コンピュータ又はプロセッサが請求項14に記載の方法を実行するように構成される、具現化されたコンピュータ読取可能コードを備える、非一過性のコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【発明の効果】
【0025】
上記態様及び実施形態では、測定された導電率から水分又は脂質レベルを決定する場合に電気信号の周波数を考慮すれば、皮膚の水分レベルを実質的に独立して測定でき、及び/又は皮膚の脂質レベルを実質的に独立して測定できる。より具体的には、測定された導電率、及び電気信号の周波数に基づいて、水分又は脂質レベルを決定することで、測定対象の特性(例えば、水分又は脂質レベル)に応じた、より感度の高い周波数で導電率の測定を行うことができる。このように、皮膚の水分又は脂質レベルのより正確な測定を判定しうる。さらに、皮膚の水分レベル及び脂質レベルを単一システム(例えば、単一装置)を用いて判定しうる。当該システム及び対応する方法により、皮膚の健康に関連する水分及び脂質レベルのバランスの評価を、適当なスキンケアトリートメント及び製品の選択に用いることができる。当該システム及び方法はさらに、当該トリートメントの進行状況のモニタリングに用いることができる。
【0026】
上記及び他の側面は、以下に記載される実施形態を参照して自明であり、解明されるであろう。
【0027】
以下に記載する例示的な実施形態は、例示のためだけに以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本明細書の一実施形態に関するシステムの概略図である。
図2】周波数と異なる皮膚タイプに関するグラフである。
図3】周波数に関して異なる皮膚タイプの導電率を比較した導電率の比率を示す図である。
図4】いくつかの実施形態に関する、皮膚の脂質及び水分レベルを判定する例示的な周波数範囲の表である。
図5】一実施形態に関する、異なる皮膚タイプの相対的な脂質及び水分レベルを示す図である。
図6】一実施形態に関する、様々な異なる皮膚状態に対する相対的な脂質及び水分レベルを示す図である。
図7】一実施形態に関する、皮膚の水分又は脂質レベルを判定するシステムの操作方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上記のように、皮膚の水分(又はハイドレーション)又は脂質(又は皮脂又は油分)のレベルを測定するシステム及び方法が提供される。
【0030】
図1は皮膚の水分又は脂質レベルを測定するシステム100を示す。当該システムは、少なくとも皮膚に接触するのに適する少なくとも2つの電極108(例えば、少なくとも対の)、及び少なくとも2つの電極108を横切る周波数で電気信号を生成する信号発生器106を含む。本明細書に記載されるシステム100は装置であってよい。簡潔には、当該システム100は、少なくとも2つの電極108間の導電率を測定し、かつ、測定された導電率、及び電気信号の周波数に基づく皮膚の水分又は脂質レベルを判定する。使用時には、少なくとも2つの電極と皮膚が電気回路を構成する。2つの電極108を横切って生成される電気信号は、すなわち、皮膚の導電率が測定されうるように、少なくとも2つの電極108間の皮膚を通過する。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの電極108は、電気信号を送信する少なくとも1つの活性電極と、この少なくとも1つの活性電極から送信された電気信号を受信する少なくとも1つの対応する戻り電極とを備えてよい。いくつかの実施形態では、当該少なくとも2つの電極108は、少なくとも2つの微小電極を備えてよい。当該少なくとも2つの電極108は、当該少なくとも2つの電極108の別の電極からいかなる適当な距離に配置されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、電極は、互いに0.1mm〜1mmの範囲の距離に配置されてよい。これにより、当該システム100の感度が高まり、皮膚の表層部を測定することが可能となる。
【0032】
上記のように、本発明者らにより、皮膚の導電率が、脂質及び水分レベルの両方に依存する場合があり、公知の装置を用いて取得したハイドレーションレベルの測定が不正確になりうることが、見出された。測定された導電率、電気信号の前記周波数に基づいて水分又は脂質レベルを判定することで、測定される特性(例えば、水分又は脂質レベル)に応じた周波数の測定感度が高まりうる。このようにして、皮膚の水分又は脂質含有量のより正確な測定値が判定されうる。
【0033】
当業者であれば、皮膚へ接触させるのに適する電極に精通しているであろう。いくつかの実施形態では、パッド(又はパッチ)は、少なくとも2つの電極108を備えてよく、パッドは、皮膚に接触するのに適してよい。例えば、各電極は、パッドに部分的に埋め込まれてよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つの電極108(又は前記少なくとも2つの電極108を備えるパッド)には、皮膚に密着させうる粘着面があってよい。いくつかの実施形態では、当該少なくとも2つの電極108は、電極のアレイを備えてよい。いくつかの実施形態では、当該少なくとも2つの電極108(又は電極のアレイ)は、皮膚の所望の領域を被覆しうる(か、又は所望の領域に配置されてよい)。例えば、電極のアレイは、皮膚状態の広範囲マッピングのため、皮膚の広範囲の導電率を測定するのに用いられうる。いくつかの実施形態では、電極のアレイは、例えば、指紋センサに備えられてよい。
【0034】
上記のとおり、当該システム100の信号発生器106は、当該少なくとも2つの電極108を横切る周波数で電気信号を生成する。いくつかの実施形態では、当該信号発生器106は、周波数パルスを発生させうる。当該周波数パルスは、例えば、固定周波数パルス、又は可変周波数パルスであってよい。いくつかの実施形態では、パルスは、低電圧パルスであってよい。いくつかの実施形態では、前記信号発生器106は、無線周波数(RF)信号を発生してよい。したがって、いくつかの実施形態では、前記信号発生器106は、周波数パルスを生成し、当該パルスは、無線周波数パルスであってよい。
【0035】
図1に示されるように、当該システム100はさらに、増幅器110(例えば、無線周波数増幅器)を備えてよい。いくつかの実施形態では、当該増幅器110は、信号発生器106が出力する電圧を増幅できる。図1に示すように、当該システム100はさらに、導電率測定システム(インピーダンス測定システム等)112を備えてよい。当該導電率測定システム112は、例えば、少なくとも2つの電極108を横切る電圧を測定しうる。当該少なくとも2つの電極108が皮膚と接触する場合(例えば、前記システムの使用中)、当該導電率測定システム112は、当該システム100の当該少なくとも2つの電極108と皮膚とにより形成される回路を流れる電流を測定しうる。当該導電率測定システム112は、測定された電流から電極間の導電率を測定しうる。当業者であれば、測定された電流から導電率が導出されうる態様を認識するであろう。
【0036】
いくつかの実施形態では、当該システム100は、機械的に実行されてよく、例えば、電極間で測定された導電率は、アナログディスプレイ上に表示されてよい。当該アナログディスプレイは、較正されて、水分又は脂質レベルを表示することもできる(例えば、目盛りがシフト又はスケーリングされてもよい)。
【0037】
他の実施形態では、図1に示すように、当該システム100はさらに、プロセッサ102を備えてよい。当該プロセッサ102は、例えば、信号発生器106を制御し、少なくとも2つの電極108を横切る周波数で電気信号を生成しうる。例えば、当該プロセッサ102は、当該信号発生器106を制御するのに適してよく、所望の周波数電圧、及び/又はパルス持続時間のパルスを生成しうる。いくつかの実施形態では、導電率測定システム112は、プロセッサ102によって制御されうる。あるいは、又はそれに加えて、いくつかの実施形態では、当該導電率測定システム112の出力はプロセッサ102に送られ、後続の処理及び/又は出力(例えば、ユーザ用の表示)に用いられうる。
【0038】
一般に、当該システム100がプロセッサ102を備える実施形態では、当該プロセッサ102は、当該システム100の動作を制御して、本明細書に記載の方法を実施しうる。当該プロセッサ102は、ソフトウェア及び/又はハードウェアにより、多数の方法で実装されて、本明細書に記載された様々な機能を実行しうる。特定の実施形態では、当該プロセッサ102は、本明細書に記載された方法の1又は複数の工程を実行するか、又は実行するための複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを備えてよい。当該プロセッサ102は、1又はそれ以上のプロセッサ(例えば、1又はそれ以上のマイクロプロセッサ、1又はそれ以上のマルチコアプロセッサ及び/又は1又はそれ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)等)、1又はそれ以上の処理ユニット及び/又はモジュール、及び/又は1又はそれ以上のコントローラ(例えば、ソフトウェア又はコンピュータプログラムコードにより)が、本明細書に記載された方法で、当該システム100を制御又は動作させるように備えるか、又はプログラムされてよい(例えば、ソフトウェア又はコンピュータプログラムコードにより)、1又はそれ以上のコントローラ(例えば、1又はそれ以上のマイクロコントローラ)を備えてよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えば、プロセッサ102は、分散処理用の複数の(例えば、相互運用された)プロセッサ、処理ユニット及び/又はモジュール、マルチコアプロセッサ及び/又はコントローラを備えてよい。当業者であれば、当該プロセッサ、処理ユニット及び/又はモジュール、マルチコアプロセッサ及び/又はコントローラは、異なる場所に配置されてよく、本明細書に記載された方法の異なるステップ及び/又は1つのステップの異なる部分を実行しうることを、理解するであろう。当該プロセッサ102では、いくつかの機能を実行する専用ハードウェア(例えば、アンプ、プリアンプ、アナログ−デジタル変換器(ADC)及び/又はデジタル−アナログ変換器(DAC))と、他の機能を実行するプロセッサ(例えば、1又はそれ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、コントローラ、DSP及び関連回路)が組み合わされて実装されてよい。
【0040】
図1に示されるように、いくつかの実施形態では、当該システム100は、メモリ104を備えてよい。当該メモリ104は、命令の集合を表す命令データを備えてよい。例えば、当該メモリ104は、プロセッサ102により実行されうるプログラムコードの形態で命令データを記憶して、当該システム100を本明細書に記載された方法で作動させることができる。いくつかの実施形態では、命令データは各々、本明細書に記載された方法の1又は複数の工程を実行するか、又は実行する複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを備えてよい。いくつかの実施形態では、当該メモリ104は、当該システム100の他の構成要素(例えば、当該プロセッサ102及び/又は1又はそれ以上の他の構成要素)もまた備える装置の部分であってよい。代替的な実施形態では、当該メモリ104は、当該システム100の他の構成要素とは別個の装置の一部であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、当該メモリ104は、複数のサブメモリを備えてよく、各サブメモリは命令データを格納しうる。いくつかの実施形態では、当該メモリ104が複数のサブメモリを備える場合、命令の集合を表す命令データは、単一のサブメモリに格納されてよい。当該メモリ104が複数のサブメモリを備える他の実施形態では、命令セットを表す命令データは、複数のサブメモリに格納されてよい。例えば、少なくとも1つのサブメモリは、命令セットの少なくとも1つの命令を表す命令データを格納してよく、少なくとも1つの他のサブメモリは、命令セットの少なくとも1つの他の命令を表す命令データを格納してよい。このように、いくつかの実施形態によれば、当該システム100では、異なる命令を表す命令データは、1又はそれ以上の異なる位置に格納されてよい。いくつかの実施形態では、当該メモリ104は、当該システム100のプロセッサ又は当該システム100の他の構成要素等、当該システム100により取得又は作成された情報、データ、信号(例えば、導電率信号)及び測定値(例えば、導電率測定値)を記憶するのに用いられてよい。
【0042】
メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、電気的に消去可能PROM(EEPROM)等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリを含むキャッシュ又はシステムメモリ等のいかなるタイプの非一過性の機械読取可能媒体から構成されていてもよい。
【0043】
当該システム100の当該プロセッサ102は、当該メモリ104と通信して命令セットを実行することができる。当該命令セットは、当該プロセッサ102によって実行されると、当該プロセッサ102に本明細書に記載された方法を実行させる。
【0044】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、当該システム100は、少なくとも1つのユーザインタフェース114を備えてよい。いくつかの実施形態では、当該ユーザインタフェース114は、当該システム100の他の構成要素(例えば、当該プロセッサ102、当該メモリ104及び/又は1又はそれ以上の他の構成要素)をも備える装置の部分でありうる。代替的な実施形態では、当該ユーザインタフェース114は、当該システム100の他の構成要素とは別個の装置の部分であってよい。
【0045】
ユーザインタフェース114は、本明細書の実施形態による方法から得られる情報を、当該システム100のユーザ(例えば、医療専門家、皮膚科医、家庭内設定のユーザ、又は他のいかなるユーザ)に提供して用いられうる。命令セットが当該プロセッサ102によって実行されると、当該プロセッサ102は1又はそれ以上のユーザインタフェース114を制御して、本明細書の実施形態の方法から得られる情報をもたらしうる。例えば、いくつかの実施形態では、当該ユーザインタフェース114は、当該システム100により判定された皮膚の水分又は脂質レベルをレンダリング(例えば、提供、出力又は表示)してよい。あるいは、又はそれに加えて、ユーザインタフェース114は、ユーザ入力を受信することができる。換言すれば、ユーザインタフェース114により、当該システム100のユーザが手動で指示、データ、又は情報を入力できる。命令セットが当該プロセッサ102によって実行されると、プロセッサ102は、1又はそれ以上のユーザインタフェース114からユーザ入力を取得することができる。
【0046】
ユーザインタフェース114は、当該システム100のユーザが情報、データ、又は信号をレンダリング(又は出力若しくは表示)しうるいかなるユーザインタフェースであってよい。あるいは、又はそれに加えて、ユーザインタフェース114は、当該システム100のユーザがユーザ入力を提供し、及び/又は制御しうるいかなるユーザインタフェースであってよい。例えば、当該ユーザインタフェース114は、1又はそれ以上のスイッチ、1又はそれ以上のボタン、キーパッド、キーボード、マウス、マウスホイール、タッチスクリーン又はアプリケーション(例えば、タブレット又はスマートフォン上)、ディスプレイ画面、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)又は他の視覚レンダリング部品、1又はそれ以上のスピーカ、1又はそれ以上のマイク又は他のオーディオ部品、1又はそれ以上のライト、触覚フィードバック(例えば、振動機能)を提供する部品、又は他のユーザインタフェース又はその組み合わせを備えてよい。
【0047】
図1は、本開示の当該側面を例示するのに必要な要素を示しているに過ぎず、実際の実施形態では、当該システム100は、示される要素及び他の要素を備えてよいことが理解されるであろう。例えば、当該システム100は、当該システム100に電源を供給するバッテリ若しくは他の電源、又は当該システム100を主電源に接続する手段を備えてよい。当該システム100は、当該システム100(又は当該システム100の部品)が、当該システム100の部分であるか、又は当該システム100外部の(すなわち、当該システム100とは別個の又は遠隔の)要素、インターフェース、メモリ及び/又は装置と通信しうる通信インターフェース(又は回路)をさらに備えてよい。当該通信インターフェースは、いかなる要素、インターフェース、メモリ及びデバイスと無線又は有線接続を介して、又はいかなる他の通信(又はデータ転送)機構を介して通信してよい。いくつかの無線実施形態では、通信インターフェースは、例えば、通信用の無線周波数(RF)、ブルートゥース(登録商標)、又はいかなる他の無線通信技術を用いてよい。
【0048】
上記で概要したように、当該システム100は、少なくとも2つの電極108間の導電率を測定し、測定された導電率、電気信号の周波数に基づいて、皮膚の水分又は脂質レベルを判定する。
【0049】
いくつかの実施形態では、信号発生器106は、第1周波数で電気信号を発生させ、第2周波数で電気信号を発生させ、発生した電気信号が前記第1周波数のときに水分レベルを測定し、発生した電気信号が前記第2周波数のときに脂質レベルを測定してよい。
【0050】
このように、前記システムが、水分又は脂質レベルのどちらを判定するかにより、判定に用いる周波数の値が異なる場合がある。上記のように、本発明者らにより、皮膚の導電率が皮膚の脂質含有量及び水分含有量の両方に依存することが、実験的に見いだされている。
【0051】
図2は、乳房組織202(例えば、脂質過多組織)、湿潤皮膚204及び乾燥皮膚206の各々の、周波数に対する(又は対若しくは関数としての)導電率のプロットを示す。図2から、感度が改善され、脂質及び水分レベルを測定するのに最も感度の高い(つまり最適な)周波数範囲(例えば、周波数バンド)を確認するのに用いられうる、導電率の様々な比率が判定されうる。
【0052】
図3は、異なる周波数の導電率の比を示す。湿潤皮膚の脂質レベルに対する導電率の比を線302で示し、湿潤皮膚の脂質レベルに対する導電率の比を線304で示し、乾燥皮膚の脂質レベルに対する導電率の比を線306で示す。その後、4つの周波数範囲f1〜f4が定義され、各周波数範囲は、水分レベル又は脂質レベルのどちらかに対してより感度が高い(例えば、上記範囲で得られた導電率測定値が、より大きく依存する)。換言すれば、当該範囲では、脂質及び水分レベルのコントラストが、脂質及び水分レベルのどちらか特定のレベルを測定するのに最適である場合がある。皮膚の脂質及び水分レベルの測定に適した例示的な周波数範囲を、図4の表にまとめる。
【0053】
すなわち、いくつかの実施形態では、信号発生器106により生成された電気信号の周波数により、測定された導電率が、皮膚の水分又は脂質レベルを示すか否かを、判定しうる。
【0054】
いくつかの実施形態では、信号発生器106は、第1周波数範囲の第1周波数で電気信号を生成し、システム100は、前記信号の周波数が前記第1周波数である場合に測定された導電率に基づいて、皮膚の水分レベルを判定しうる。いくつかの実施形態では、当該第1周波数範囲は、湿潤皮膚と乾燥皮膚の導電率との間のコントラストが十分に高い周波数を含み、測定された皮膚導電率は、水分レベル(又は水分量)に感度が高くなる。いくつかの実施形態では、第1周波数範囲は、脂質と湿潤又は乾燥皮膚との導電率との間のコントラストが低い周波数を含んでよく、この場合は皮膚の導電率が脂質レベル(又は脂質量)に感度が低くなる。このように、いつくかの実施形態では、当該信号の周波数が前記第1周波数の場合、導電率は脂質よりも水分の影響を大きく受ける。このように、前記第1周波数における導電率の値は、皮膚の水分含有量により大きく依存し(例えば、より強依存性)、前記第1周波数(又は前記第1周波数範囲内)の導電率は、他の周波数(又は周波数範囲)の導電率よりも、水分含有量を正確に測定するのに用いられうる。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記第1周波数範囲は、例えば、10kHz〜100kHzの周波数範囲、例えば、20kHz〜90kHzの周波数範囲、例えば、30kHz〜80kHzの周波数範囲、例えば、40kHz〜70kHzの周波数範囲、例えば、50kHz〜60kHzの周波数範囲であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、前記第1周波数は、10kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、60kHz、70kHz、80kHz、及び90kHzから選択される周波数であってよい。他の実施形態では、前記第1周波数範囲は、0.8MHz〜5MHzの周波数範囲、例えば1.4MHz〜1.4MHzの周波数範囲、例えば2MHz〜3.8MHzの周波数範囲、例えば2.6MHz〜3.2MHzの周波数範囲、例えば2.6MHz〜3.2MHzの周波数範囲であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、前記第1周波数は、1MHz、2MHz、3MHz、4MHz及び5MHzから選択される周波数であってよい。他の実施形態では、前記第1周波数範囲は、例えば、500kHz〜1MHzの周波数範囲、例えば、500kHz〜0.8MHzの周波数範囲であってよい。
【0056】
一般に、電気信号発生器106で生成した周波数が前記第1周波数である場合に測定される導電率は、導電率と水分レベル(例えば水分含有量)との関係を用いて皮膚の水分レベルを判定しうる。いくつかの実施形態では、この導電率と水分レベルとの関係は、経験的な関係であってよい。一般に、当該信号発生器106で測定された導電率は、検量線や検量表を用いて水分レベルに換算しうる。この経験的関係、検量線及び/又は表は、測定された皮膚の導電率と水分レベルとを比較して導出しうる。例えば、共焦点ラマンマイクロスペクトロメータを用いて測定された水分レベルと、測定された皮膚の導電率を比較して、導電率を水分レベルに変換しうる。いくつかの実施形態では、経験的関係、検量線及び/又は表は、当該システム100の当該メモリ104に格納されてよい。
【0057】
経験的関係、較正曲線及び/又は表の導出は、本明細書に記載された前記システムの較正に用いられる較正工程といってよい。一般に、この較正工程は、当該システムで一度だけ実行されてよく、反復実行されなくてよい。いくつかの実施形態では、較正工程は、較正サンプル(又はファントム)上で実施されてよい。当該較正サンプルは、例えば、皮脂と水でできたエマルジョンであってよい。皮脂と水は、例えば乳化剤を用いて、公知の体積分率で混合されて、サンプル全体で均一な混合特性を達成しうる。いくつかの実施形態では、当該システムは、他の工業的標準、例えば、コルネオメータ(Corneometer)(例えば、水分レベル用)や皮脂計(例えば、脂質レベル用)に較正されてよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、信号発生器106は、第2周波数範囲の第2周波数で電気信号を生成し、かつ、システム100は、前記信号の前記周波数が第2周波数である場合に測定された導電率に基づいて皮膚の脂質レベルを判定しうる。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2周波数範囲は、湿潤皮膚及び乾燥皮膚の導電率のコントラストが十分に低い周波数を含んでよく、その場合は皮膚の導電率が水分レベル(又は水分量)に対して感度が低くなる。いくつかの実施形態では、第2周波数範囲は、脂質と湿潤又は乾燥皮膚との導電率とのコントラストが高くなるような周波数を含んでよく、その場合は皮膚の導電率が脂質レベル(又は脂質量)に対してより感度が高くなる。このように、いつくかの実施形態では、前記信号の前記周波数が第2周波数である場合、導電率は水よりも脂質の影響を大きく受ける。このように、第2周波数の導電率値は、皮膚の脂質含有量により大きく依存し(例えば、より強依存性)、第2周波数(又は第2周波数範囲内)の導電率は、他の周波数(又は周波数範囲)よりも、脂質含有量を正確に測定するのに用いられうる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第2周波数範囲は、例えば、10Hz〜500Hzの周波数範囲、例えば、50Hz〜500Hzの周波数範囲、例えば、100Hz〜450Hzの周波数範囲、例えば、150Hz〜400Hzの周波数範囲、例えば、200Hz〜350Hzの周波数範囲、例えば、250Hz〜300Hzの周波数範囲であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、前記第1周波数は、50Hz、100Hz、150Hz、200Hz、250Hz、300Hz、350Hz、400Hz、450Hz及び500Hzから選択される周波数であってよい。他の実施形態では、当該第2周波数範囲は、10MHz〜100MHz、例えば20MHz〜90MHz、例えば30MHz〜80MHz、例えば40MHz〜70MHz、例えば50MHz〜60MHzから選択される周波数範囲であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、当該第2周波数は、10MHz、20MHz、30MHz、40MHz、50MHz、60MHz、70MHz、80MHz、90MHz、及び100MHzから選択された周波数であってよい。
【0061】
一般に、信号発生器106で発生した信号の電気的周波数が第2周波数である場合に測定される導電率は、導電率と脂質含有量(例えば、脂質含有量又は皮脂量)との関係を利用して皮膚の脂質含有量の判定に用いうる。いくつかの実施形態では、この導電率と脂質レベルとの関係は、経験的関係でありうる。一般に、前記信号発生器106で測定された導電率を検量線や表を用いて脂質レベルに換算しうる。この経験的関係、検量線及び/又は表は、測定された皮膚の導電率と脂質レベルとを比較して導出されうる。例えば、共焦点ラマンマイクロスペクトロメータを用いて測定された脂質レベルと測定された導電率レベルとを比較して、導電率と脂質レベルとの関係が導出されうる。いくつかの実施形態では、経験的関係、検量線及び/又は表は、当該システム100の当該メモリ104に格納されうる。
【0062】
経験的関係、較正曲線及び/又は表の導出は、本明細書に記載された前記システムの較正に用いる較正工程といってよい。一般に、当該較正工程は、前記システムで一度だけ実行されてよく、反復実行されなくてよい。いくつかの実施形態では、較正工程は、較正サンプル(又はファントム)上で実施されてよい。この較正サンプルは、例えば、皮脂と水でできたエマルジョンであってよい。皮脂と水は、例えば乳化剤を用いて、公知の体積分率で混合されて、サンプル全体で均一な混合特性が達成される。いくつかの実施形態では、前記システムは、他の工業的標準、例えば、コルネオメータ(例えば、水分レベル)及び皮脂計(例えば、脂質レベル)に較正されてよい。
【0063】
本明細書でいう第2周波数範囲は、第1周波数範囲とは異なる(又は、当該第1周波数範囲は第2周波数範囲とは異なる)。すなわち、当該システム100は、皮膚の水分レベルの判定に、皮膚の脂質レベルの判定に用いる周波数とは異なる周波数を用いてよく、皮膚の導電率は、第1周波数及び第2周波数各々で、水分レベル又は脂質レベルにより強く依存し(又はより多くの影響を受け)、その結果、皮膚の脂質及び水分レベルをより正確に判定しうる。例えば、図4に示す周波数範囲は、要素(例えば、脂質又は水分レベル)のうちの1つの要素(例えば、脂質又は水分レベル)を、他の要素の交絡する影響をより少なくして決定できるように選択される(又は選ばれる)。
【0064】
当該システム100は、単一の周波数で導電率測定を行うことにより、単一の導電率測定値を取得しうる。当該実施形態では、単一の導電率測定値を用いて、皮膚の水分又は脂質レベルを判定しうる。例えば、導電率測定は、生成された電気信号の周波数が前記第1周波数である場合の皮膚の水分レベル、又は生成された電気信号の周波数が当該第2周波数である場合の皮膚の脂質レベルの判定に用いうる。他の実施形態では、当該システム100は、複数の周波数で前記導電率を測定する、複数の導電率測定値を取得しうる。当該実施形態では、前記複数の導電率測定値は、皮膚の水分又は脂質レベルの判定に用いうる。例えば、生成された電気信号の周波数が前記第1周波数範囲にある場合の取得した複数の導電率測定値は、皮膚の水分レベルの判定に用いられてよく、生成された電気信号の周波数が当該第2周波数範囲にある場合に取得した複数の導電率測定値は、皮膚の脂質レベルの判定に用いられてよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、複数の導電率測定値が取得された場合、当該システム100は、前記複数の導電率測定値から皮膚の水分又は脂質レベルの平均値を判定して、皮膚の水分又は脂質レベルを判定しうる。例えば、前記複数の導電率測定値の各導電率測定値を用いて、皮膚の水分レベル又は脂質レベルを判定しうる(例えば、上記のように、生成された電気信号の周波数が、前記第1周波数範囲又は前記第2周波数範囲のどちらかに応じて)。その後、判定された水及び/又は脂質レベルの平均値を決定してよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、判定された脂質レベルを、判定された水分レベルの補正に用いうる。同様に、いつくかの実施形態では、判定された水分レベルを、判定された脂質レベルの補正に用いうる。例えば、ある特定の周波数では、脂質が、測定された皮膚の導電率値にある程度寄与することが公知であり、脂質レベルが公知の場合、これを用いて、皮膚の水分レベルに帰属させうる導電率の量を決定しうる(又はその逆もありうる)。
【0067】
いくつかの実施形態では、当該システム100は、前記測定された導電率1又はそれ以上の所定の皮膚の導電率が周波数により変化する態様を記載するプロファイル、及び、前記測定された導電率の比較に基づいて、皮膚の水分又は脂質レベル、及び、無線周波数周波数信号の周波数を判定しうる。
【0068】
所定のプロファイルの例を、図2に示す。図2は、異なる皮膚特性(例えば、脂質含有量が多い、水分含有量が多い、水分含有量が少ない)について、皮膚の導電率が周波数に関して変化する態様を例示する。当業者であれば、図2が単に例示的なプロファイルを示しているだけで、前記測定された導電率レベルが、例えば、水分及び脂質の異なるレベル(例えば、レベルの異なる組み合わせ)を表すプロファイルの範囲と比較されうることを理解するであろう。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記測定された導電率(例えば、複数の導電率レベル)を1又はそれ以上の所定のプロファイルと比較することは、導電率レベルの分布を所定のプロファイルに関連付けられた形状に比較することを含みうる。例えば、導電率測定値の大きさ、傾き、又は第1若しくは第2の導電率測定値の第1若しくは第2の導電率測定値を決定し、1又はそれ以上の所定のプロファイルと比較して、導電率測定値が所定のプロファイルの大きさ、傾き、又は第1若しくは第2の導電率測定値と一致するかを識別しうる。
【0070】
皮膚の水及び/又は脂質レベルは、最良適合する所定のプロファイル(例えば、前記複数の導電率測定値に最良適合するプロファイル)から判定しうる。当業者であれば、複数の測定値に対して最良適合するプロファイルを決定する方法、例えば、最小二乗フィッティング法等の方法に精通しているであろう。このように、複数の導電率測定値を、皮膚の水及び/又は脂質レベルをより正確に判定するのに、公知のプロファイルに適合させうる。
【0071】
本明細書に記載のいずれかの実施形態では、システム100はさらに、判定された水分又は脂質レベルに基づいて皮膚状態を決定しうる。図5は、脂質レベル(例えば、油性)及び水分レベル(例えば、ハイドレーションレベル)が、皮膚をいくつかのタイプのうちの1つに特徴付けるのに用いうることを示す。例えば、低脂質レベルかつ低湿潤の乾燥肌502、低ハイドレーションレベルかつ高脂質レベルの乾燥油性肌504、水分及び脂質レベルともに中程度の正常肌506、高脂質レベルかつ高水分レベルの水分過多油性肌508、高水分レベルかつ低油分レベルである水分過多肌510である。いくつかの実施形態では、当該システム100は、判定された水分及び脂質の組み合わせが、図5に示すチャート(又はパラメータ空間)のどこに該当するかに基づき、皮膚状態を決定しうる。
【0072】
図6では、脂質及び水分レベルの異なる組み合わせはさらに、いくつかの実施形態の、様々な皮膚状態(例えば、皮膚科学的状態)に関連する場合があることを示す。アトピー性皮膚炎等の皮膚状態は、皮膚の保水能力の低下、経表皮水分損失(TEWL)の増加、及びバリア機能の不備を反映して、皮膚のハイドレーションレベルが低下する。同様の症状は、乾癬606、湿疹614及び尋常性魚鱗癬604の罹患者にも見られる。それにもかかわらず、当該疾患は、ハイドレーションと油性との間のバランスに関して特異な皮膚状態を示す。湿疹614は、わずかな水分喪失(数%)と脂質の顕著な低下(〜25%)が組み合わされ、一方、乾癬606は、ハイドレーション(〜70%)及び脂質(〜40〜70%)レベルが劇的に低下する。尋常性魚鱗癬604は、ハイドレーションレベルが低下(〜63%)する一方で、表在性皮膚脂質レベルは有意に変化しない(〜±15%)。皮膚の健康は、皮膚の表在性脂質構造の連続性に依存する皮膚バリアの機能の安定性と関連する。図6で示された他の皮膚状態としては、脂漏症602、尋常性ざ瘡612、接触皮膚炎608、及び薬疹(例えばアレルギー)610があげられる。
【0073】
皮膚表在性脂質が角質層内で水分調節因子として機能することが見いだされており、角質層内での脂質相挙動は皮膚バリア機能にとって極めて重要であると考えられている。このように、皮膚の水分及び/又は脂質レベルを測定することで、当該システム100は皮膚状態を把握でき、皮膚の健康状態を総合的に判断する指標として利用しうる。いくつかの実施形態では、前記決定された皮膚状態は、ユーザインタフェース上でレンダリング(又は提供、出力、若しくは表示)されてよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、システム100は、水分又は脂質レベルに基づいて皮膚状態を決定し、かつ、この判定された皮膚状態に基づいて、推奨するスキンケアを決定しうる。例えば、当該システム100が、水分及び/又は脂質レベルが皮膚の状態(例えば、湿疹)と一致すると決定した場合、当該システム100は、皮膚の状態を改善する、外用クリーム、軟膏又は他の処置を推奨(又は提案)しうる。いくつかの実施形態では、決定された推奨は、ユーザインタフェース上でレンダリング(又は提供、出力、若しくは表示)されてよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、システム100は、メモリ(例えば、データ記憶装置、データベース又はサーバ)に接続されてよい。例えば、接続は、有線又は無線接続であってよい。当該実施形態のいくつかでは、皮膚状態及び/又はスキンケアの推奨を決定後、当該システム100は、当該決定をメモリに送信しうる。いくつかの実施形態では、当該システム100は、周期的な間隔で皮膚の脂質及び/又は水分レベルを決定しうる。当該実施形態のいくつかでは、当該システム100は、結果をメモリに記憶しうる。このようにして、当該システム100は、皮膚状態及び/又は経時的な改善又は変化を追跡しうる。したがって、本明細書に記載された当該システム100は、様々な場所での皮膚のハイドレーション及び脂質レベルの変動や、また様々な気候変動下での皮膚のハイドレーション及び脂質レベルの変動を考慮して、処置前及び処置後の皮膚状態を定量的に測定できる。
【0076】
当該システム100は、脂質レベルと皮膚の水分レベルをともに測定しうる、非接触、ポータブル、低費用、迅速ソリューションを提供しうる。つまり、当該システム100には、二重様相がある。さらに、測定データを保存して、皮膚状態の経時的なモニタリング及び制御しうる。
【0077】
次に図7について、皮膚の水分又は脂質レベルを決定するシステム100を動作させる方法700が提供される。当該システム100は、上記の通りである。特に、当該システム100は、皮膚に接触するのに適する少なくとも2つの電極及び当該少なくとも2つの電極を横切る周波数で電気信号を生成する信号発生器を含む。方法700は、ブロック702で、前記少なくとも2つの電極108間の導電率を測定する工程を含む。方法700は、ブロック704で、前記測定された導電率、及び前記電気信号の前記周波数に基づく皮膚の水分又は脂質レベルを測定する工程を含む。当該工程は、当該システム100により実行されるものとして記載され、上記詳細は、図7のブロック702及び704の方法にも同様に適用されることが理解されるであろう。
【0078】
さらに、非一過性の、コンピュータ読取可能媒体内に具現化されたコンピュータ読取可能コードを備えるコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品が提供され、このコンピュータ読取可能コードは、適当なコンピュータ又はプロセッサによって実行されると、当該コンピュータ又はプロセッサが本明細書に記載された方法のいずれかを実行する。
【0079】
したがって、本明細書に記載された実施形態は、本発明を実施するように適合されたコンピュータプログラム、特にキャリア上又はキャリア内のコンピュータプログラムにも適用されることが理解されるであろう。プログラムは、部分的にコンパイルされた形態等のソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース及びオブジェクトコードの形態であってよく、又は本発明の実施形態の方法の実施に用いるのに適した他の形態であってよい。また、当該プログラムには、多くの異なるアーキテクチャ設計があってよいことが理解されるであろう。例えば、本発明の方法又はシステムの機能を実装するプログラムコードは、1又はそれ以上のサブルーチンに細分化されてよい。当該サブルーチンの間で機能を分配する多くの異なる方法は、当業者には明らかであろう。当該サブルーチンは、1つの実行ファイルにまとめて格納されて、自己完結型のプログラムを形成してよい。当該実行ファイルは、コンピュータ実行可能命令、例えば、プロセッサ命令及び/又はインタプリタ命令(例えば、Java(登録商標)インタプリタ命令)を備えてよい。
【0080】
あるいは、1又はそれ以上のサブルーチン又は全てのサブルーチンは、少なくとも1の外部ライブラリファイルに格納され、静的又は動的に、例えば実行時にメインプログラムとリンクされてよい。メインプログラムは、サブルーチンの少なくとも1つへの少なくとも1の呼び出しを含む。サブルーチンはまた互いに関数を呼び出しあってよい。コンピュータプログラム製品に関連する実施形態は、本明細書に記載された方法の少なくとも1つの各処理段階に対応するコンピュータ実行可能な命令からなる。当該命令は、1又はそれ以上のファイルに格納されたサブルーチン及び/又は1又はそれ以上のファイルに細分化され、静的又は動的にリンクされてよい。コンピュータプログラム製品に関連する別の実施形態は、本明細書に記載された前記システム及び/又は製品の少なくとも1つの各手段に対応するコンピュータ実行可能な命令を含む。当該命令は、1又はそれ以上のファイルに格納されたサブルーチン及び/又はサブルーチンに細分化されてよく、静的又は動的にリンクされてよい。
【0081】
コンピュータプログラムのキャリアは、プログラムを担持しうるいかなる実体又は装置であってよい。例えば、キャリアは、例えば、CD-ROMや半導体ROM等のROM等のデータ記憶装置や、ハードディスク等の磁気記録媒体を含んでよい。さらに、キャリアは、電気信号や光信号等の伝送可能なキャリアであってよく、電気ケーブルや光ケーブルを介して伝送されてよく、無線等で伝送されてよい。プログラムが当該信号で具現化される場合、キャリアは、当該ケーブル又は他の装置若しくは手段によって構成されてよい。あるいは、キャリアは、プログラムが埋め込まれた集積回路であってよく、集積回路は、関連する方法を実行するように適合されているか、または関連する方法の実行に用いられる。
【0082】
開示された実施形態への変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、本明細書に記載された原理及び技術を実践するのに熟練した当業者によって理解され、効果を得られる。特許請求の範囲の用語「含む」は、他の要素又は工程を排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に引用された複数の項目の機能を果たしうる。特定の手段が相互に異なる従属請求項で引用されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に用いられないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアとともに又は他のハードウェアの部分として供給される固体媒体等の適切な媒体に記憶又は配布されてよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システム等を介して他の形態で配布されてよい。特許請求の範囲に記載された参照符号は、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7