(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6928360
(24)【登録日】2021年8月11日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】動物用の履物
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
A01K13/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-174811(P2017-174811)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-47767(P2019-47767A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】518385590
【氏名又は名称】千葉 光範
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】千葉 光範
【審査官】
星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第09629336(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0039565(US,A1)
【文献】
国際公開第2017/090195(WO,A3)
【文献】
特開平11−032615(JP,A)
【文献】
特開2006−262734(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3089457(JP,U)
【文献】
特開2004−229632(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3133810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の足の裏を覆う底部と;
前記底部と連結され、当該動物の少なくとも足先部から足首相当部までを覆うとともに、本体部の前側にくびれ部分が形成された本体部と;
前記本体部の内側であり、前記くびれ部分の上部で概ね水平方向に延びる棒状の弾性部材と、を備え、
前記本体部には、当該履物を履かせるときに大きく開くように、縦方向に延びる切り込みが形成され、
前記切り込みには、当該切り込みを開閉可能な締付部材が設けられ、
当該靴を履いた状態から脱げる方向に動物の足が動いたときに、前記弾性部材が足に干渉して脱落を防止可能に構成されていることを特徴とする動物用の履物。
【請求項2】
前記切り込みは、前記弾性部材と干渉しない側部又は後部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動物用の履物。
【請求項3】
前記締め付け部材は、面ファスナーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の動物用の履物。
【請求項4】
当該履物は、ブーツであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の動物用の履物。
【請求項5】
前記弾性部材は、ゴム製又は樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の動物用の履物。
【請求項6】
前記弾性部材は、少なくとも1本の中空管状であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の動物用の履物。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記本体部の内周の一部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の動物用の履物。
【請求項8】
前記動物は犬であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の動物用の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物用の履物に関し、特に、犬等のペットに適した履物の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットにも靴を履かせる飼い主が増えている。その目的は、例えば、犬の場合には、ファッション性を高めてオシャレをする他、雨の日に足が汚れるのを防いだり、真夏の散歩の際に熱くなったアスファルトから肉球を保護したり、加齢等の原因で滑りやすくなった肉球を保護すること等である。
【0003】
しかしながら、動物の足と人間の足とでは足首や踵の骨格が異なるため、靴が脱げやすいという問題があった。例えば、犬や猫の場合には、踵が足先から遠く離れた位置にあり、靴を履かせる部分の周辺には人間の足首のような凹凸が少ない。このため、歩いている途中で靴が脱げてしまうことが頻繁にある。
一方で、犬等のペットはそもそも履物を嫌がる習性があるため、履かせること自体が大変でもある。
【0004】
足を挿入する部分を狭くして靴を脱げ難くすると、靴を履かせ難いという問題があるし、足を挿入する部分を大きく広げると、靴を履かせ易い反面、脱げ易くなってしまう。すなわち、履き易さと脱げ難さという相反する要望に応えることが大きな課題であった。
【0005】
そこで、足を挿入する部分を大きめに広げると共に、面ファスナー等を利用して履いた後に締め付けるような工夫がされているものがあるが、脱げ難さという課題は十分に解決されていないのが現状である。
【0006】
また、人間の靴のサイズは、一般的に、0.5cm刻みとなっているが、犬等の動物の足に確実にフィットさせるためには更に細かく設定する必要がある。しかしながら、1mm単位等の細かいサイズ設定で履物を製造することは現実的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、履かせ易さを損なうことなく、脱げ難さを徹底的に追求した画期的な構造の動物用の履物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、どんなサイズの足に対しても確実にフィットさせることが可能な動物用の履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る動物用の履物は、動物の足の裏を覆う底部と;前記底部と連結され、当該動物の少なくとも足先部を覆う本体部と;前記本体部の内側に設けられた凸状の弾性部部材とを備えている。
【0010】
本体部の内面に凸状の弾性部材を設けることにより、フィット性が向上するとともに、動物の足が抜ける方向に動こうとした場合にも、当該弾性部材が引っかかって抜け難くなる。また、凸状部材が弾性を有するため、動物の履き心地を損なうこともない。更に、弾性部材の素材をゴムや樹脂にすることで、動物の足との摩擦抵抗が大きくなり、脱げ難いという本発明の効果が更に顕著となる。
【0011】
前記本体部の外側に、動物の足に対してフィットさせる締付部材を更に設けることが好ましい。弾性部材の弾力性と締付部材による締付具合によって、それぞれ微妙に異なる動物の足の太さに対して微調整が可能となる。
例えば、0.5cmや1.0cm刻みで靴のサイズを設定した場合にも、その中間サイズに対して、弾性部材によって微調整が可能となる。すなわち、どんなサイズの足に対してもフィットさせることが可能となる。
【0012】
前記弾性部材は、前記本体部の内周の足先部よりも上方に設けることが好ましい。更には、前記弾性部材を、本体部の前側に形成されたくびれ部分の近傍上部に設けることが好ましい。この場合、動物の足が当該履物から抜けようとするときに、足の甲の部分が真っ先に弾性部材と干渉し、脱げにくくなる。
なお、弾性部材の配置は、本体部のくびれ部分の中心付近でも良いが、履かせ易さを考慮すると若干上側にすることが好ましい。
【0013】
前記弾性部材は、前記本体部の内周で概ね水平方向に延びる棒状とすることができる。例えば、中空管状とした場合には、素材自体の弾力性に加えて中空部でも更に弾力性を発揮するため、本発明に適していると言える。中空の弾性部材は、空隙を持たないソリッドな弾性部材に比べ、動物の足の太さに応じた締付力の調整範囲を更に広く設定することができ、あらゆるタイプの動物(犬種)にフィットさせるという本発明の本質的な効果を更に向上させることが可能となる。
【0014】
前記弾性部材は、所定の間隔を開けて複数配置することもできる。例えば、球状や、まんじゅうのような形状の弾性部材を点在させることができる。足に当たる部分は、角がなく滑らかな形状にすることが履き心地の点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るペット用ブーツを着用した様子を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施例に係るペット用ブーツの構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した第1実施例に係るペット用ブーツの構造を示す正面図、側面図、背面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施例に係るペット用サンダルの構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A),(B),(C)は、本発明に適用可能な弾性部材の他の例をしめす説明図である。
【
図6】
図6は、
図3に示した第1実施例に係るペット用ブーツの変形例を示す正面図、側面図、背面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明についてペット(犬)用の履物を例にとって説明する。
図1に示すように、犬の足には爪が延びる足先P1と、人間の踵付近に位置する関節P2と、踵P3とがある。本実施例においては、足先P1と関節P2とを覆うようにブーツ10が設計されている。なお、犬の場合には前足と後足とでは骨格、太さが若干異なるが、前後で同じブーツを履かせることもできるし、大きさや深さ等を若干変更して適用させることもできる。
【0017】
図2に示すように、本実施例に係る犬用ブーツ10は、犬の足の裏を覆う底部12と;底部12と連結され、犬の少なくとも足先部P1を覆う本体部14と;本体部14の内側に設けられた凸状の弾性部部材16とを備えている。本体部14の後ろ側には縦方向に延びる切り込み18が形成され、面ファスナー20a,20bによって締め付け、固定するようになっている。なお、本体部14は、例えば、ゴムや樹脂から成型することができる。
【0018】
弾性部材16は、本体部14の前方側において、上縁より若干下側に略水平に延びるように設けられている。弾性部材16を設ける範囲は、切り込み18の位置を考慮して、適宜変更することができる。例えば、切り込み18を側面に形成する場合には、当該切り込み18を避けるように逆側の側面を中心に設けることができる。また、弾性部材16の高さ方向の位置についても、図に示す例よりも若干下側に下げることもできる。
【0019】
弾性部材16は、ゴム製又は樹脂製(シリコン等)からなり、中空管状に成形されている。なお、弾性部材16は、本体部14と一体成形することも可能である。
【0020】
図4に示す第2実施例に係るペット用サンダル110の場合には、上述したブーツ10よりも高さが低く、切り込み118は足の甲側に設けられ、面ファスナーを備えたベルト120によって固定するようになっている。また、切り込み118が前方にあるため、弾性部材116は後方(人間の足の踵側)に配置される。
【0021】
弾性部材としては、
図1〜
図3に示す中空管状のものの他にも、
図5(A)に示すような、中身の詰まった(ソリッドな)棒状の弾性部材216を採用することができる。なお、
図5(A)の場合には四角柱であるが、弾性部材の特性(弾性力等)や、ペットの足の大きさ等に応じて、三角柱、五角柱、円柱、楕円柱等を採用することもできる。
【0022】
弾性部材としては、また、
図5(B)に示すように、犬の足に接触する側が複数本に割れた断面が漢字の「山」のような形状の弾性部材316を採用することもできる。なお、(B)図の場合には3本の平行な突起が形成されているが、突起の数及び方向を変更することもできる。
長尺状の弾性部材としては、更に、細い線状の部材をらせん状に巻いたコイル形状としたり、ベースに対して細い部材を植設することでブラシ形状とすることもできる。
【0023】
弾性部材としては、更に、
図5(C)に示すように、長尺状ではなく、まんじゅうのような形状の部材416を複数等間隔で点在させることができる。なお、点在させる弾性部材416の形状については、球状や、足に接触する側が膨らんだ半球状、リング状、渦巻き状等とすることもできる。
【0024】
再び
図2に戻るが、本発明に係るブーツ10を犬に履かせる際には、後方の切り込み18を大きく開き、本体部14の中に足を挿入し、締付部材として機能する面ファスナー20によって固定する。この時、面ファスナー20による締付具合と、弾性部材16による弾性とによって、足にフィットするように調整する。
犬には足首らしき部分が殆ど存在しないため、歩いているうちに脱げそうになるが、本実施例によれば、そもそもブーツ10が犬の足に確実にフィットしているため脱げ難くなる。また、脱げる方向に足がずれた場合にも、弾性部材16が足に引っかかって、脱げることはない。
【0025】
図6は、
図3に示した第1実施例に係るペット用ブーツの変形例を示す正面図、側面図、背面図である。
図6に示す例においては、弾性部材16の配置を変更している。すなわち、弾性部材16を、本体部14の前側に形成されたくびれ部分14aの近傍上部に設けている。この場合、動物の足が当該履物から抜けようとするときに、足の甲(人間相当)の部分が真っ先に弾性部材16と干渉し、脱げ難くなる。
【0026】
なお、弾性部材16の配置は、本体部14のくびれ部分14aの中心付近でも良いが、履かせ易さを考慮すると若干上側にすることが好ましい。また、弾性部材16は切り込み18の範囲内に設けることが好ましい。ブーツ10を動物に履かせる際に、切り込み18を大きく開くため、弾性部材16が足に干渉して履かせ難くなるようなことがない。
【0027】
図2,3,6に示す実施例においては、くびれ部分(14a)を有するブーツを採り上げて説明しているが、くびれ部分の存在しない真っ直ぐな靴下状の履物についても本発明を適用することができる。このとき、弾性部材16の位置は、動物の足の屈曲部付近の若干上とすることが好ましい。
図1には、これに近い構成が確認できる。例えば、関節P2の若干上の前側にチューブ状の弾性部材16を設けることができる。この場合にも、踵側に切り込み(18)を設けることが好ましいことは言うまでもない。
【0028】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。例えば、本発明に係る履物は、犬以外にも猫等の他の動物に適用可能である。また、締付手段として、本体部に切り込みを設けず、巾着のように本体部の上縁部を絞るタイプのものを採用することも可能である。