特許第6928513号(P6928513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6928513
(24)【登録日】2021年8月11日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ガラス筐体
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/03 20060101AFI20210823BHJP
   C03B 23/025 20060101ALI20210823BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20210823BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20210823BHJP
   C03C 17/28 20060101ALI20210823BHJP
   C03C 17/22 20060101ALI20210823BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20210823BHJP
   C03B 27/00 20060101ALI20210823BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   C03B23/03
   C03B23/025
   C03C21/00 101
   C03C19/00 Z
   C03C17/28
   C03C17/22 Z
   C03C15/00 D
   C03B27/00
   H05K5/02 J
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-166729(P2017-166729)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-43795(P2019-43795A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158208
【氏名又は名称】AGCテクノグラス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 政一
(72)【発明者】
【氏名】桃井 弘
(72)【発明者】
【氏名】小山 公治
(72)【発明者】
【氏名】入澤 博幸
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−206297(JP,A)
【文献】 特開2015−168611(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0233161(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/038868(WO,A1)
【文献】 特開2016−121050(JP,A)
【文献】 特開2017−001940(JP,A)
【文献】 特開2013−228669(JP,A)
【文献】 特開2009−061730(JP,A)
【文献】 特表2019−535628(JP,A)
【文献】 特開2013−137383(JP,A)
【文献】 特開2016−145968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−35/26
40/00−40/04
C03C 1/00−23/00
H05K 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の表面に凹凸パターンおよび非凹凸パターン領域を備え、該凹凸パターンは、該非凹凸パターン領域に向けて、凹凸深さが漸減するガラスにより構成されてなり、電子機器に外装されることを特徴とするガラス筐体。
【請求項2】
前記ガラスは、凹凸パターンを備える表面の凸部表面で計測した肉厚が連続的または断続的に変化する請求項1のガラス筐体。
【請求項3】
前記凹凸パターンは、凸部および凹部がそれぞれ曲面で構成され、該曲面は連続している請求項1または請求項2のガラス筐体。
【請求項4】
前記凹凸パターンは、凸部の曲率半径が2.5mm以上の曲面で構成される請求項1ないし請求項3のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項5】
前記凹凸パターンは、凸部の曲率半径が0.05mm〜2.5mm(但し、2.5mmを含まない)の曲面で構成される請求項1ないし請求項3のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項6】
前記凹凸パターンの凹部は、曲率半径が0.1mm以上の曲面で構成される構成される請求項1ないし請求項5のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項7】
前記凹凸パターンは、最も薄い箇所で、板厚が0.2mm以上である請求項1ないし請求項6のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項8】
前記ガラスは、板状であり、一方の面の少なくとも一部に前記凹凸パターンを有し、他方の面は平坦である請求項1ないし請求項7のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項9】
前記ガラスは、平坦な側の面のJIS B0021にて規定される平面度が0.3mm以下である請求項8のガラス筐体。
【請求項10】
前記ガラスは、平坦な周縁面を備える請求項1ないしは請求項9のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項11】
前記ガラスは、表面から深さ方向に5〜100μmの圧縮応力層を有する、請求項1ないし請求項10のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項12】
前記ガラスは、薄肉部を備え、該薄肉部の最も薄い箇所が平坦である請求項1ないし請求項11のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項13】
前記ガラスは、薄肉部と該薄肉部に接続する厚肉部とを備え、該薄肉部と該厚肉部とでレンズを構成する請求項1ないし請求項12のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項14】
前記ガラスは、周縁部の厚さが周縁部以外の部分の厚さより厚い請求項1ないし請求項13のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項15】
前記ガラスは、Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Biの金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分を、酸化物基準のモル百分率表示で、0.1〜7%含有する請求項1ないし請求項14のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項16】
前記ガラスは、前記凹凸パターン側の少なくとも一部の表面に機能膜を備える請求項1ないし請求項15のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項17】
前記ガラスは、少なくとも一部の表面に着色塗膜層もしくは可視光反射層を備える請求項1ないし請求項16のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項18】
前記ガラスは、貫通孔を備える請求項1ないし請求項17のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項19】
前記ガラスは、最も厚い箇所の板厚が0.4mm〜1.0mmである請求項1ないし請求項18のいずれか1項のガラス筐体。
【請求項20】
前記ガラスは、最も薄い箇所の板厚が0.2mm〜0.8mmである請求項1ないし請求項19のいずれか1項のガラス筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、例えば携帯して使用可能な通信機器や情報機器等に用いられるガラス筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやウエアラブル機器においてワイヤレス給電(非接触給電)が検討されている。ワイヤレス給電を用いることで、コネクタに接続することなく機器の充電ができるようになる。またこれにより、金属製の接点が不要になり機器の防水性能や意匠性の向上ができると考えられる。
【0003】
ワイヤレス給電の方式の一つとして電磁誘導方式が知られている。この方式では、金属を介した給電ができないため、金属以外の素材を筐体に用いる必要がある。金属以外の素材として、ガラスを用いる試みがされている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
また、スマートフォンやタブレットPCなどでは、複数の通信規格に対応して複数のアンテナを内蔵するため、金属筐体を用いた場合、機器内のアンテナ配置に制約を生じる。このため、ディスプレイ側ではない背面側にも電波透過性を有するガラスを用いた製品が多くみられるようになった。
【0005】
特許文献1によれば、携帯電話等の電子機器において、筐体本体をガラスで形成することにより、透明感のある独特の装飾効果を発揮することができるとされている。
また、特許文献2によれば、吸光係数の最小値が一定以下のガラスを用いることで、電子機器の筐体に好適な特性、すなわち、遮光性、高強度、製造コストに優れた筐体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−61730号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/124758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の各特許文献では、ガラスに塗膜や多層膜フィルムを積層したり、ガラス自体を着色したりして、筐体としての装飾性を向上させる試みがなされている。
しかしながら、これらの装飾表現は、ガラス表面が平坦であることに起因し、反射光により装飾性が低下するという課題があった。また、スマートフォンやタブレットPCなどでは、ディスプレイの大画面化、狭額縁化と背面に平坦なガラスを用いることにより、デザインが画一化し、外観上、製品の個性が出しにくくなっている。
本発明は、このような背景によりなされたものであり、ガラスの持つ光沢性や硬質感を生かしつつ、独特の装飾性と触感を備えるガラス筐体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラス筐体は、少なくとも一部の表面に凹凸パターンおよび非凹凸パターン領域を備え、凹凸パターンは、非凹凸パターン領域に向けて、凹凸深さが漸減するガラスにより構成されてなり、電子機器に外装されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス素材の持つ光沢性や硬質感に加え、凹凸パターンによる装飾性や独特の触感を備えたガラス筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガラス筐体の平面図(a)、断面図(b)である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターン部分の拡大断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターンの過渡領域部分の拡大断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るガラス筐体の周縁部の拡大断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るガラス筐体の平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターン部分の拡大断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターン部分の拡大断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターン部分の拡大断面図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターン部分の拡大断面図である。
図10】本発明の第6の実施形態に係るガラス筐体の凹凸パターン部分の拡大断面図である。
図11】本発明の第7の実施形態に係るガラス筐体の薄肉部の拡大断面図である。
図12】本発明の第8の実施形態に係るガラス筐体の薄肉部および厚肉部の拡大断面図である。
図13】本発明の第9の実施形態に係るガラス筐体の周縁部および凹凸パターン部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るガラス筐体1について、図1ないし図4を用いて説明する。図1は、ガラス筐体1の平面図(a)、断面図(b)である。図2は、ガラス筐体1の凹凸パターン領域2を模式的に示した拡大断面図である。図3は、ガラス筐体1の凹凸パターン過渡領域3を模式的に示した拡大断面図である。図4は、ガラス筐体1の周縁部7の拡大断面図である。
【0012】
本実施形態に係るガラス筐体1は、電子機器に外装される筐体であって、一方の表面に凹凸パターンを備えるガラスより構成される。
【0013】
まず、本実施形態に係るガラス筐体1の構成について説明する。
ガラス筐体1は、図1(a)、(b)に示すように、平面視で略矩形の板状体であり、一方の面に凹凸パターン領域2を備え、他方は平坦面4である。また、ガラス筐体1の周縁部7は周縁面8に向けて板厚が徐々に薄くなっており、かつ平坦面4とほぼ直交する平坦な周縁面8を備える。
【0014】
本実施形態では、ガラス筐体1は、一方の面において、凹凸パターン領域2を備え、かつ凹凸パターン領域2の周囲に凹凸パターン過渡領域3を備え、更に凹凸パターン過渡領域3の周囲に非凹凸パターン領域(平坦部)6を備える。なお、本発明においては、凹凸パターン領域2と凹凸パターン過渡領域3の両者を凹凸パターンと定義する。
【0015】
凹凸パターン領域2は、ガラス筐体1の一方の表面の略中央部に形成されている。本実施形態では、微小な凸部が千鳥状に配置されている。このような凹凸パターンを備えるため、凹凸パターン領域2における光の反射方向が一様でなく、独特の装飾性をガラス筐体1に付与できる。また、ガラス筐体1を携帯型の電子機器に用いた際、凹凸パターン領域2の形状に起因して、使用者に独特の触感を付与できる。また、凹凸パターンがあることにより、ガラス特有の光沢感を損なうことなく、指掛かり性が向上し、すべりにくくなるため、電子機器の落下による破損のおそれが減少する。
【0016】
凹凸パターン領域2は、パターンが形成された側の表面の凸部表面で計測した肉厚(他方の面を基準とした場合)が、連続的または断続的に変化していることが好ましい。これにより、凹凸パターン領域2における光の透過特性が一様でないため、例えば透過光に起因する色の濃淡をガラス筐体1に付与できる。また、ガラス筐体1を携帯型の電子機器に用いた際、凹凸パターン領域2の形状に起因して、使用者に独特の触感を付与できる。
【0017】
凹凸パターン領域2は、凸部および凹部がそれぞれ曲面で構成され、この曲面は連続していることが好ましい。これにより、ガラス筐体1を携帯型の電子機器に用いた際、凹凸パターン領域2の形状に起因し、ザラツキのない触感を付与できる。また、凹凸パターン領域2に汚れが付いた場合でも、容易に汚れをふき取ることができる。
【0018】
凹凸パターン領域2は、凸部の曲率半径が2.5mm以上の曲面で構成されることが好ましい。凸部の曲率半径とは、図2の拡大断面図で示したとおり、凸部の曲率が最も小さい部分の曲率半径11をいうものである。凹凸パターン領域2の凸部の曲率半径11を2.5mm以上の曲面で構成することで、ガラス筐体1を電子機器に用いた際に、凸部先端が丸いため、凸部の欠けを抑制することができる。凹凸パターン領域2の凸部の曲率半径11が2.5mm未満の曲面で構成される場合、電子機器のガラス筐体1側の面を下にして落下した場合、凸部が欠けるおそれがあるため好ましくない。
【0019】
凹凸パターン領域2は、凹部の曲率半径が0.1mm以上の曲面で構成されることが好ましい。凹部の曲率半径とは、図2の拡大断面図で示したとおり、凹部の曲率が最も小さい部分の曲率半径12をいうものである。凹凸パターン領域2の凹部の曲率半径12を0.1mm以上の曲面で構成することで、ガラス筐体1を電子機器に用いた際に、ガラス筐体1自体に曲げ応力が作用した場合、凹部への応力集中を回避でき、凹部を起点とした破損を抑制することができる。凹凸パターン領域2の凹部の曲率半径12が0.1mm未満の曲面で構成される場合、ガラス筐体1自体に曲げ応力が作用した場合、凹部に応力が集中することでガラス筐体1が破損するおそれがあるため好ましくない。凹部の曲率半径は、0.5mm以上の曲面で構成されることがより好ましい。
【0020】
凹凸パターン領域2は、最も薄い箇所で、板厚が0.2mm以上であることが好ましい。ここで、最も薄い箇所とは、凹部の最深部から他方の面までの肉厚をいうものである。凹凸パターン領域2は、最も薄い箇所で、板厚が0.2mm以上であると、ガラス筐体1に一定の強度を持たせることができる。凹凸パターン領域2は、最も薄い箇所で、板厚が0.2mm未満であると、ガラス筐体1自体に曲げ応力が作用した場合、最も薄い箇所を起点にガラス筐体1が破損するおそれがあるため好ましくない。凹凸パターン領域2は、最も薄い箇所で、板厚が0.4mm以上であることがより好ましく、0.6mm以上が一層好ましい。
【0021】
凹凸パターン領域2は、上記形状に限らず用いることができる。例えば、凸部を正方配置したものや、シリンドリカル状の凸部を配置してもよい。また、凸部表面で計測した板厚が凹凸パターン領域2内において一様であっても、相違してもよい。また、凹凸パターンは、類似する形状(凹部または凸部)を等間隔で配置してもよく、不等間隔で配置してもよい。また、凹凸パターンは、全て相違する形状を不規則に配置してもよい。
凹凸パターンの間隔や形状サイズ(平面視の外形もしくは幅)は、150μm〜10mmであることが好ましい。
【0022】
凹凸パターン過渡領域3は、図3に示すように凹凸パターン領域2と非凹凸パターン領域6との間に存在する領域であって、凹凸パターン領域2から非凹凸パターン領域6に向かうに従い、凹凸深さ5が浅くなる領域をいうものである。例えば、図3に示すとおり、凹凸パターン過渡領域3の凹凸深さは、凹凸深さ21が一番浅く、次いで凹凸深さ22、凹凸深さ23、凹凸深さ24、凹凸深さ25、凹凸深さ26と徐々に浅くなる。ガラス筐体1に凹凸パターン過渡領域3を備えることで、凹凸パターン領域2と非凹凸パターン領域6との境界を不明瞭にすることができる。
【0023】
ガラス筐体1は、板状であり、一方の面に凹凸パターン領域2を備え、他方の面は平坦であることが好ましい。ガラス筐体1は、電子機器の表面に機器の保護と装飾とを主たる目的として用いられる。そのため、電子機器の表面に沿った形状である板状が好ましい。また、ガラス筐体1は、電子機器の表面に貼り付けられるため、機器との組み付けが容易になるよう、他方の面は平坦であることが好ましい。なお、本発明における平坦とは、JIS B0021(1998)にて規定される平面度が1mm以下であることをいう。
【0024】
平坦面4は、JIS B 0021にて規定される平面度が0.3mm以下であることが好ましい。このようにすることで、反りの小さいガラス筐体1が得られ、機器との組み付けが容易になる。平坦面4の平面度が0.3mm超であると、電子機器に組み付ける際に機器側との間に空間ができるおそれがある。また、平坦面4に着色塗膜層を形成する場合、ムラができるおそれがある。平坦面4の平面度は、0.2mm以下がより好ましく、0.15mm以下が一層好ましい。
【0025】
ガラス筐体1は、周囲に平坦面4とほぼ直交する平坦な周縁面8を備えることが好ましい。このようにすることで、周縁部7が一定以上の板厚を備えるため、ガラス筐体1を製造、搬送する工程において、周縁部7の欠けを抑制することができる。また、ガラス筐体1を電子機器に組み付ける際、枠状部材の内周面と周縁面8とを摺動することで、はめ込みを容易にすることができる。なお、周縁面8が平坦面4に対してほぼ直交する、としたのは枠状部材との係合形状によって±数度程度の形状変更がありうるためである。
また、ガラス筐体1の周縁面8とガラス表面(電子機器側と反対の面)との交線は耐傷付性やデザインを考慮し、面取り形状(丸み面取りや角面取り)とすることが多い。ガラス筐体1をプレスにて成形する場合、流動状態のガラスは金型の外側に逃げる傾向が強く、ガラス筐体1の最外周となる周縁部7(特に交線)は所望の面取り形状とならないおそれがある。ガラス筐体1の周縁部7が一定以上の板厚を備えることで、確実に周縁部7をプレス成形することができ、周縁部7を所望の面取り形状とすることができる。
【0026】
ガラス筐体1は、最も厚い箇所の板厚が0.4mm〜1.0mmであることが好ましい。このようにすることで、ガラス筐体1に一定の強度を付与することができる。最も厚い箇所の板厚が0.4mm未満であると、ガラス筐体1の強度不足が懸念され、ガラス筐体1を電子機器に用いた際に破損のおそれがある。また、ガラス表面に圧縮応力層を形成する際に、ガラスが反るおそれがある。最も厚い箇所の板厚が1.0mm超であると、ガラス筐体1自体の重量が大きくなり、ガラス筐体1を電子機器に用いた際に電子機器の軽量化を阻害するおそれがある。ガラス筐体1の最も厚い箇所の板厚は、0.6mm〜0.9mmであることがより好ましい。
【0027】
ガラス筐体1は、最も薄い箇所の板厚が0.2mm〜0.8mmであることが好ましい。このようにすることで、ガラス筐体1に一定の強度を付与することができる。最も薄い箇所の板厚が0.2mm未満であると、ガラス筐体1の強度不足が懸念され、ガラス筐体1を電子機器に用いた際に破損のおそれがある。また、ガラス表面に圧縮応力層を形成する際に、ガラスが反るおそれがある。最も薄い箇所の板厚が0.8mm超であると、ガラス筐体1自体の重量が大きくなり、ガラス筐体1を電子機器に用いた際に電子機器の軽量化を阻害するおそれがある。ガラス筐体1の最も薄い箇所の板厚は、0.4mm〜0.7mmであることがより好ましい。
【0028】
ガラス筐体1は、非晶質ガラス、結晶化ガラス、分相ガラスを用いることができる。
非晶質ガラスとしては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等である。これらガラスは、透明もしくは半透明であり、透光性を備える独特の意匠性をガラス筐体1に付与できる。
結晶化ガラスは、ガラス内部に析出した微小な結晶により透過光が散乱されるため、光の透過を抑えながら適度な反射(光の存在)による独特の意匠性をガラス筐体1に付与できる。
分層ガラスは、ガラス中の分散相の粒子が光を拡散反射、散乱することで外観が白色のガラス筐体1を得ることができる。
【0029】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るガラス筐体20について、図5および図6を用いて説明する。図5は、ガラス筐体20の平面図である。図6は、図5において丸で示した部分をX−X線に沿って切断した場合の拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0030】
本実施形態は、凹凸パターン領域27がロゴもしくは文字である点が第1の実施形態と相違する。電子機器においては、ブランド、会社名、商品名等の文字や図名ロゴを認識しやすい位置に設けることがある。これら表記をシールや印刷によって形成した場合、電子機器を長期間使用すると傷がついたり、ハガレが生じるおそれがある。本実施形態のガラス筐体20は、これら表記をガラス自体に凹凸パターンとして形成するため、ハガレや消失のおそれはない。
【0031】
本実施形態においては、前述のとおり凹凸パターン領域27自体がロゴもしくは文字のため、明瞭に認識できることが好ましい。そのため、凹凸パターン領域27は、凸部の曲率半径11が0.05mm〜2.5mm(但し、2.5mmを含まない)の曲面で構成されることが好ましい。本実施形態における凸部の曲率半径11とは、図6において曲率半径11と示す、凹凸パターンを備える表面と凹部の側面との境界部分(ここを凸部の曲率が最も小さい部分とみなす)の丸みをいうものである。凸部の曲率半径11が0.05mm未満であると、境界部分が欠けやすくなり好ましくない。また、凸部の曲率半径11が2.5mm以上であると、境界部分があいまいとなり、ロゴもしくは文字などの凹凸パターンが不明瞭になるため、好ましくない。
なお、本実施形態における凹凸パターンは、ロゴや文字に限らず、平坦面に掘られたようなストライプや格子、ディンプルなどの文様やキャラクター表示であってもよい。
【0032】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るガラス筐体30について、図7を用いて説明する。図7は、ガラス筐体30の凹凸パターン領域2を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0033】
本実施形態は、ガラス筐体30の表面(一方の面および他方の面)に圧縮応力層13を備える点が第1の実施形態と相違する。
携帯型の電子機器は、落下による破損や接触傷による機械的強度の低下が懸念される。本実施形態のガラス筐体30は、ガラスの表面に圧縮応力層を備えるため、機械的強度の高い、ガラス筐体30を得ることができる。
【0034】
ガラスの表面に形成される圧縮応力層の深さ(以下、DOLということがある)は、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上となるように強化処理されていることが好ましい。ガラス筐体30を携帯型の電子機器に用いる場合、ガラスの表面に接触傷がつく確率が高く、ガラスの機械的強度が低下することがある。そこで、DOLを大きくすれば、ガラス筐体30の表面に傷がついても、割れ難くなる。一方、強化処理に要する時間が過度に長くならないようにするために、DOLを100μm以下とすることが好ましい。
【0035】
また、ガラス筐体30は、ガラス表面に形成される表面圧縮応力(以下、CSということがある)が、300MPa以上、500MPa以上、700MPa以上、900MPa以上となるように強化処理されていることが好ましい。CSが高くなることでガラス筐体30の機械的強度が高くなる。一方、CSが高くなりすぎるとガラス内部の引張応力が極端に高くなるおそれがあるため、CSは1400MPa以下とすることが好ましく、1300MPa以下とすることがより好ましい。
【0036】
ガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法としては、風冷強化法(物理強化法)と、化学強化法が代表的である。風冷強化法(物理強化法)は、軟化点付近まで加熱したガラス板表面を風冷などにより急速に冷却して行う手法である。また、化学強化法は、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板表面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはLiイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換する手法である。特に板厚の薄い板状のガラスについては、処理後の平面性や圧縮応力層の形成し易さを考慮し、後者の化学強化法によって強化することが好ましい。
【0037】
化学強化処理は、例えば、400℃〜550℃の溶融塩中にガラスを1時間〜20時間程度浸漬することで行うことができる。化学強化処理に用いる溶融塩としては、カリウムイオンもしくはナトリウムイオンを含むものであれば、特に限定されないが、例えば硝酸カリウム(KNO)の溶融塩が好適に用いられる。その他、硝酸ナトリウム(NaNO)の溶融塩や硝酸カリウム(KNO)と硝酸ナトリウム(NaNO)とを混合した溶融塩を用いてもよい。
【0038】
なお、本発明に用いるガラス材質は限定されないが、適度な表面硬度と化学強化処理のしやすさ(比較的短時間でイオン交換が可能)から、アルミノシリケートガラスを用いることが好ましい。
【0039】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係るガラス筐体40について、図8を用いて説明する。図8は、ガラス筐体40の凹凸パターン領域2を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0040】
本実施形態は、ガラス筐体40の凹凸パターン側の少なくとも一部の表面に機能膜14を備える点が第1の実施形態と相違する。
ガラス筐体40は、凹凸パターン側の少なくとも一部の表面に機能膜14を設けることで、凹凸パターンと機能膜14との相乗効果により、装飾性や意匠性をより高めることができる。この場合、機能膜14とは、偏光膜、反射防止膜、バンドパスフィルタ等の光の透過、反射を制御するものである。
また、機能膜14として防汚膜、防塵膜、耐指紋性コートを用いると、ガラス筐体40に汚れが付着しにくくなる。また、汚れを容易にふき取ることが可能となる。
【0041】
機能膜14は、公知の無機膜、有機膜を用いることができる。また、機能膜14は、真空蒸着法、スパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法、ディッピング法等の公知の方法で、ガラス筐体40に設けることができる。
【0042】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係るガラス筐体50について、図9を用いて説明する。図9は、ガラス筐体50の凹凸パターン領域2を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0043】
本実施形態は、ガラス筐体50の平坦面4に着色塗膜層15もしくは可視光反射層を備える点が第1の実施形態と相違する。
ガラス筐体50は、平坦面4に着色塗膜層15もしくは可視光反射層を設けることで、凹凸パターンとの相乗効果により、装飾性や意匠性をより高めることができる。また、ガラス筐体50に遮光性を付与することもできる。
【0044】
ガラス筐体50が透光性を備える場合、平坦面4に着色塗膜層15を設けることで、任意の色彩を付与することができる。また、ガラス筐体50が貼り付けられる電子機器側から漏れる迷光を着色塗膜層15で遮断することで、認識し難くすることもできる。また、ガラス筐体50の表面側より入射した光が、電子機器の特定部分で強く反射し認識されることを抑制することができる。
着色塗膜層15に替えて可視光反射層を設けると、可視光反射層にて反射された可視光がガラス表面の凹凸パターンで屈折し、キラキラとした独特の光輝感を付与することもできる。
【0045】
着色塗膜層15は、公知の無機膜、有機膜を用いることができる。また、着色塗膜層15は、ディッピング法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法で、ガラス筐体50に設けることができる。可視光反射層は、公知の金属膜を用いることができ、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等の方法で設けることができる。
【0046】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係るガラス筐体60について、図10を用いて説明する。図10は、ガラス筐体60の凹凸パターン領域2を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0047】
本実施形態は、ガラス筐体60が着色成分を含有し、任意の色味を呈するガラスからなる点が第1の実施形態と相違する。
ガラス筐体60は、Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Biの金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分(着色成分)を、酸化物基準のモル百分率表示で、0.1〜7%含有することが好ましい。これにより、ガラス筐体60は、透明もしくは白色以外の任意の色味を呈する装飾性や意匠性を付与することができる。本実施形態のガラス筐体60は、凹凸パターンを備えることにより、板厚の相違により色の濃淡に差が生じるため、これを利用してグラデーション等の多彩な装飾表現が可能となる。
また、ガラス筐体60が貼り付けられる電子機器側から漏れる迷光をガラス自体で吸光することで、認識し難くすることもできる。また、ガラス筐体60の表面側より入射した光が、電子機器の特定部分で強く反射し認識されることを抑制することができる。
【0048】
ガラス筐体60は、前述の金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分を、酸化物基準のモル百分率表示で、0.1%未満含有すると、所望の色味が得られないため好ましくない。また、7%超含有すると、ガラス原料を溶解する際にガラスが不安定となり、失透を生じるため好ましくない。ガラスに含有する金属酸化物としては、例えば、Co、MnO、MnO、Fe、NiO、CuO、CuO、Cr、V、Bi等が好適に用いられる。
【0049】
なお、本明細書において、着色成分の含有量は、ガラス中に存在する各成分が、表示された酸化物として存在するものとした場合の換算含有量を示す。たとえば「Feを0.1%〜7%含有する」とは、ガラス中に存在するFeが、すべてFeの形で存在するものとした場合のFe含有量、すなわち、FeのFe換算含有量が0.1%〜7%であることを意味するものである。
【0050】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係るガラス筐体70について、図11を用いて説明する。図11は、ガラス筐体70の薄肉部17を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0051】
本実施形態は、ガラス筐体70の少なくとも一部の表面に凹凸パターン領域2と共に薄肉部17を備える点が第1の実施形態と相違する。
ガラス筐体70は、凹凸パターン領域2を備える面側、もしくはその裏面に少なくとも1つの薄肉部17を備える。そして、薄肉部17は、最も厚さが薄い箇所が平坦である。
【0052】
ガラス筐体70は、薄肉部17を備える面をおもて面として用いる場合であって、裏面側の薄肉部17に対応する位置に指紋認証用センサ31が配置されると、薄肉部17への指入れ性が向上し、薄肉部17の底面に自然に指先の中心部分を導くことができる。また、最も厚さが薄い箇所が平坦のため、指紋認証用センサ31による誤認証を抑制することができる。ここで用いられる指紋認証用センサ31としては、光学方式、感熱方式、圧力方式、静電容量方式、超音波方式などのセンサが使用できるが、センシング感度や消費電力の観点から静電容量方式、超音波方式のセンサが好ましい。
【0053】
また、ガラス筐体70は、薄肉部17を備える面を裏面(電子機器側)として用いる場合であって、薄肉部17に指紋認証用センサ31が配置されてもよい。このように指紋認証用センサ31を配置することで、指紋認証用センサ31が静電容量方式の場合、センシング感度を良好にできる利点がある。また、指紋認証用センサ31のためのくぼみをおもて面に備えないため、電子機器の美観を向上させることができる。
これら薄肉部17は、凹凸パターン領域2と同時に形成することが製造コストを抑制する観点から好ましい。
【0054】
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態に係るガラス筐体80について、図12を用いて説明する。図12は、ガラス筐体80の薄肉部17および厚肉部18を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0055】
本実施形態は、ガラス筐体80の少なくとも一部の表面に凹凸パターン領域2と共に薄肉部17および厚肉部18を備える点が第1の実施形態と相違する。
ガラス筐体80は、薄肉部17と薄肉部17に接続する厚肉部18とを備え、薄肉部17と厚肉部18とでレンズ19を構成し、該レンズに対応する位置に固体撮像素子32などが配設される。
【0056】
電子機器には、カメラや照明等が設けられることがある。カメラや照明には、光を屈折させて発散または集束させるためのレンズが用いられる。ここで、ガラス筐体80は、薄肉部17と厚肉部18とで構成されるレンズ19を備えることで固体撮像素子モジュールの部品点数を削減することができる。また、カメラや照明等の透光用の開口部を形成する必要がないため、加工や組み立てに関する製造コストを抑制することができ、開口部が減少するので防水面でもメリットがある。
【0057】
なお、図12ではレンズ19が凸レンズの例を示したが、凹レンズであってもよい。また、レンズ19は、図12に示すように、レンズ周囲の筐体面から凹入していることが、表面の傷つき防止の点で好ましい。
これら薄肉部17および厚肉部18は、凹凸パターン領域2と同時に形成することが製造コストを抑制する観点から好ましい。
【0058】
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態に係るガラス筐体90について、図13を用いて説明する。図13は、ガラス筐体90の周縁部7および凹凸パターン領域2を模式的に示した拡大断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0059】
本実施形態は、ガラス筐体90の周縁部7が周縁部7以外の部分よりも厚さが厚い点が第1の実施形態と相違する。
ガラス筐体90の周縁部7以外の部分とは、凹凸パターン領域2や凹凸パターン領域2でない部分を含む。また、ガラス筐体90の周縁部7とは、ガラス筐体90の周縁部7の全部であってもよいし、一部であってもよい。
【0060】
ガラス筐体90の周縁部7は、電子機器の落下の際にダメージを受ける可能性が高い位置である。そのため、ガラス筐体90の周縁部7を周縁部7以外の部分よりも厚さも厚くすることで、ガラス筐体90自体の機械的強度を高めることができる。
【0061】
また、ガラス筐体90は、端部を曲面形状(丸み面取り)とすることが多い。ガラス筐体90をプレスにて成形する場合、流動状体のガラスは金型の外側に逃げる傾向が強く、ガラス筐体90の最外周となる周縁部7は曲面形状が所望のものとならないおそれがある。ガラス筐体90の周縁部7を周縁部7以外の部分よりも厚さも厚くすることで、確実に周縁部7をプレス成形することができ、周縁部7の所望の曲面形状とすることができる。
【0062】
[他の実施形態]
上記の各実施形態に係るガラス筐体は、代表的な例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、ガラス筐体に貫通孔を有してもよい。これにより、電子機器にカメラやセンサの受発信部として用いることができる。
【0063】
また、前述の各実施形態を組み合わせて用いてもよい。例えば、第1の実施形態のガラス筐体に圧縮応力層(第3の実施形態)と着色塗膜層(第5の実施形態)とを備える形態である。
また、前述の各実施形態では、凹凸パターン側を表面、平坦面を電子機器側としたが、これに限らず、凹凸パターンを備える側を電子機器側としてもよい。
【0064】
また、凹凸パターンを表裏面の両方に設けてもよい。例えば、表側に凹凸パターンによる図形模様を設け、電子機器側にロゴマークなどを形成したり、表裏に異なるパターンを形成し、複雑な文様を表現したりすることもできる。
また、電子機器側の凹凸パターンは、ガラス筐体と電子機器との組み付けを考慮し、他部材との干渉を回避する凹部やはめ込み用の凹凸部等であってもよい。
【0065】
本発明のガラス筐体が用いられる電子機器としては、以下に挙げるものがある。
例えば、通信端末としての電子機器としては、携帯電話、PHS(Personal Handy−phone System)、スマートフォン、PDA(Personal Data Assistance)、PND(Portable Navigation Device、携帯型カーナビゲーションシステム)があり、放送受信機としての携帯ラジオ、携帯テレビ、ワンセグ受信機等が挙げられる。また、情報端末としての電子機器は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯音楽プレーヤー、サウンドレコーダー、ポータブルDVDプレーヤー、携帯ゲーム機、ノートパソコン、タブレットPC、電子辞書、電子手帳、電子書籍リーダー、携帯プリンター、携帯スキャナ等が挙げられる。
その他、自動車内に設けられる電子機器のカバー部材や、家電製品の意匠部材として用いることもできる。
なお、これらの例示に限定されるものではない。
【0066】
本発明のガラス筐体は、公知の方法で成形することができる。例えば、板状、棒状、塊状のガラス材料を用意し、このガラス材料を軟化点以上に加熱し、凹凸を有する一組の金型でプレス加工することにより、所望の凹凸パターンを得る方法である。また、平坦なガラス材料を歪点以上軟化点未満に加熱し、ガラスの自重による変形を利用して、金型に接触させることで、所望の凹凸パターンを得る方法であってもよい。また、フォトリソ等でパターンを形成しエッチングする方法や、数値制御の研削機械を用いて加工してもよい。特に金型を用いてプレス加工する製法は、所望の凹凸パターンを少ない工程で形成することができるため好ましい。
また、ガラス筐体が平坦面を備える場合、一方の面に凹凸パターンを形成した後に、研削にて所望の平坦面を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のガラス筐体は、ガラス素材の持つ光沢性や硬質感に加え、凹凸パターンによる装飾性や独特の触感を付与すること可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,20,30,40,50,60,70,80,90…ガラス筐体、2,27…凹凸パターン領域、3…凹凸パターン過渡領域、4…平坦面、5…凹凸高さ、6…非凹凸パターン領域(平坦部)、7…周縁部、8…周縁面、11…凸部の曲率半径、12…凹部の曲率半径、13…圧縮応力層、14…機能膜、15…着色塗膜層、16…着色成分を含有するガラス、17…薄肉部、18…厚肉部、19…レンズ、21,22,23,24,25,26…凹凸高さ、31…指紋認証用センサ、32…固体撮像素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13