(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の連続洗浄装置では、水蒸気を過熱するための過熱手段やブラシロールを設けているので、構成部品の点数が多く、設備が大型化する。また、ブラシロールは、ロールを鋼板に接触させて残留物を物理的に欠き落とすので、頻繁なメンテナンスが必要である。また、特許文献2に記載の洗浄装置では、蒸気ノズルの内部に、空気供給管や液体供給管を設けている。洗浄対象となる板材の幅が大きくなると、蒸気ノズルの数を増やす必要があるものの、特許文献2の構成では、蒸気ノズルの数だけ、供給管が必要となることから、コスト高であり、ノズルの多数化には不向きである。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡易的な構成であって、洗浄能力及びメンテナンス性に優れる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、板材の洗浄装置であって、複数のノズルを有する洗浄用のノズルヘッダと、前記ノズルヘッダに対して蒸気を供給する蒸気供給部と、前記ノズルヘッダに対して水を供給する水管と、を備え、前記ノズルヘッダの内部には、前記水管より供給された水を貯留する貯水層と、前記貯水層の上方に位置し、前記蒸気供給部より供給された蒸気が導入される蒸気層と、が設けられ、前記複数のノズル又は前記複数のノズルが接続される接続管は、前記貯水層を貫通して前記蒸気層に連通し、前記貯水層内に貯留する水を、前記蒸気層に導入された蒸気の圧力を利用して、前記複数のノズルから又は前記接続管を通じて前記複数のノズルから、蒸気と同時に水滴として噴射し、前記板材の表面を脱脂洗浄する。
【0011】
このように、蒸気の熱で粘度の低下した油分を、蒸気圧で加速された水滴で吹き飛ばすので、過熱蒸気を用いた洗浄装置と同等の洗浄能力を発揮することが出来、洗浄能力に優れる。しかも、本構成では、蒸気を過熱するためのヒータ等を設ける必要がなく、簡易的な構成である。また、洗浄対象である板材と物理的に接触する部分が無いことから、摩耗がなくメンテナンス性に優れる。接触洗浄の場合は、汚れがブラシロールに貯まり、板材に対して汚れを引きずることがあり、板材に汚れが残る可能性がある。非接触洗浄では汚れが貯まらないことから洗浄効果が高くなる。
【0012】
また、貯水層内に貯留する水を、蒸気層に導入された蒸気の圧力を利用して、複数のノズルから(又は接続管を通じて複数のノズルから)蒸気と同時に水滴として噴射する構成である。本構成では、ノズル数を増やしても、他に部品が増加しない(例えば、特許文献2の洗浄装置のように、ノズルの数だけ水用の供給管が必要となることはない)。従って、ノズルの多本数化に好適な構成であり、比較的、横幅の大きな板材の洗浄用でも、低コストに装置を構成できる。
【0013】
板材の洗浄装置の一実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記ノズルヘッダは、水平に支持されている。本構成では、ノズルヘッダ内にて貯留する水の深さが均一になることから、各ノズルに対して、ほぼ均等に水を給水することが可能となる。そのため、各ノズルから蒸気と同時に噴出される水滴の量を均一化出来る。そのため、板材の洗浄時に洗浄むらが出来難く、洗浄効果が高い。
【0014】
板材の洗浄装置の一実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記ノズルから噴出した蒸気のドレン及び洗浄に使用した水を前記ノズルヘッダに循環させるドレン管を有する。本構成では、板材の洗浄に使用する水の使用量を削減することが可能である。また、洗浄に温水を使用することになるため、常温に比べて洗浄能力が高くなる。
【0015】
板材の洗浄装置の一実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記洗浄用のノズルヘッダは、前記板材の上方に位置する上側ノズルヘッダと、前記板材の下方に位置する下側ノズルヘッダと、を含み、前記上側ノズルヘッダは、ヘッダ本体と、前記ヘッダ本体の底部に対して、噴出口を下方に向けて取り付けられた複数の上側ノズルを有し、前記下側ノズルヘッダは、ヘッダ本体と、前記ヘッダ本体の底部に設けられた複数の接続部と、噴出口が上方に向いた複数の下側ノズルと、各下側ノズルと各接続部をそれぞれ接続するチューブと、を有する。本構成では、上側ノズルヘッダと下側ノズルヘッダの双方とも、水の溜まったヘッダ本体の底部側から蒸気を抜くようにしている。このようにすることで、蒸気と同時に水滴をノズルから噴出させることが出来る。
【0016】
板材の洗浄装置の一実施態様として、以下の構成が好ましい。
複数のエアノズルを有する水切り用のノズルヘッダを有し、前記洗浄用のノズルヘッダにより洗浄された前記板材の表面に、前記水切り用のノズルヘッダの前記複数のエアノズルからエアを噴出することにより、前記板材の表面の水切りを行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単的な構成であって、洗浄能力及びメンテナンス性に優れる洗浄装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
図1〜
図7を参照して洗浄装置1の構成を説明する。洗浄装置1は、例えば、鋼板Gの製造工程において、冷間圧延工程後に行われる脱脂洗浄工程用として使用され、冷間圧延工程で使用された圧延油等の油分や異物を鋼板Gから除去するものである。
【0020】
1.洗浄装置10の構成
図1は鋼板Gを搬送する搬送装置と洗浄装置10の平面図である。
図2は搬送装置と洗浄装置10の正面図である。搬送装置は、架台3と駆動ユニット5とから構成されている。架台3は、
図1の左右方向(X方向)に長い長尺状であり、鋼板Gの両側(
図1の上下両側)を支える一対のレール部3A、3Bを有している。
【0021】
駆動ユニット5は、
図2に示すように、エアシリンダ5Aと動滑車5Bとからなる。駆動ユニット5の作動により、ワイヤ6を引き取ることで、鋼板Gを、一対のレール部3A、3Bに沿って、
図1のX方向(具体的には左側から右側)に走行させることが出来る。また、
図1に示す符号7は、エアシリンダ5Aの動作速度を調整するためのスピードコントローラである。
【0022】
洗浄装置10は、走行する鋼板Gを脱脂洗浄する装置であり、洗浄ユニット20と水切りユニット100を有している。
【0023】
洗浄ユニット20は、軟水装置21と、ボイラ23と、蒸気ヘッダ25と、蒸気管27A、27Bと、圧力調整弁29A、29B、汽水分離器31A、31Bと、水管35A、35Bと、上側ノズルヘッダ51Aと、下側ノズルヘッダ51Bと、を含む。尚、ボイラ23、蒸気ヘッダ25、蒸気管27A、27B、圧力調整弁29A、29Bが本発明の「蒸気供給部」に相当する。また、上側ノズルヘッダ51A、下側ノズルヘッダ51Bが本発明の「洗浄用のノズルヘッダ」に相当する。
【0024】
ボイラ23は軟水装置21を介して第1水源R1に接続されており、軟水装置21により軟水処理された水から蒸気Sを生成する。ボイラ23には蒸気ヘッダ25が接続されており、ボイラ23により生成された蒸気Sは蒸気ヘッダ25に送られる。
【0025】
蒸気ヘッダ25には、2つの蒸気管27A、27Bを介して上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bが接続されている。ボイラ23から供給される蒸気Sは、蒸気ヘッダ25にて2分岐した後、各蒸気管27A、27Bを通って上側ノズルヘッダ51Aと、下側ノズルヘッダ51Bに供給される。
【0026】
圧力調整弁29A、29Bは各蒸気管27A、27Bの途中に設けられており、各ノズルヘッダ51A、51Bに供給する蒸気Sの蒸気圧を、所定値(一例として、0.5MPa)以上に調整する。
【0027】
また、上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bには、水管35A、35Bを介して第2水源R2に接続されている。上側ノズルヘッダ51Aには水管35Aを介して常温の水が供給され、下側ノズルヘッダ51Bには水管35Bを介して常温の水が供給される。
【0028】
2.上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bの構成
図1、
図2に示すように、上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bは、鋼板Gの搬送経路上において、鋼板Gの搬送方向であるX方向に直交するY方向に平行な向きで、図外のフレーム等の支持部材に取り付けられている。具体的には、
図2、
図3に示すように、上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bは、上部カバー70Aと下部カバー70Bの内部にあって、鋼板Gの搬送面を間にして、上下に向かい合っている。
【0029】
図4は上側ノズルヘッダの斜視図、
図5は上側ノズルヘッダの断面図である。
上側ノズルヘッダ51Aは、ヘッダ本体53Aと、複数本の上側ノズル55Aとから構成されている。ヘッダ本体53Aは、例えば金属製である。ヘッダ本体53Aは、Y方向に長い筒型であり、洗浄対象である鋼板GのY方向の長さと概ね対応している。ヘッダ本体53は中空である。
【0030】
ヘッダ本体53Aの側端面には蒸気用の導入部57Aが設けられている。導入部57Aには蒸気管27Aが接続されており、蒸気管27Aを通ってヘッダ本体53Aに、蒸気Sが供給されるようになっている。
【0031】
また、ヘッダ本体53Aの上部壁には水用の導入部59Aが設けられている。導入部59Aには水管35Aが接続されており、水管35Aを通ってヘッダ本体53Aに、水Wが供給されるようになっている。
【0032】
ヘッダ本体53Aの内部は、蒸気Sと水Wを収容する収容室であり、
図5に示すように、上側ノズルヘッダ51Aは、供給された水Wが底部に貯留し、他の部分が蒸気Sで占められる構成となっている。このように、ヘッダ本体53Aの内部は、水管35Aより供給された水Wが貯留する貯水層F1と、貯水層F1の上方に位置し、蒸気ヘッダ25から供給された蒸気Sが導入される蒸気層F2と、に分かれている。
【0033】
上側ノズル55Aは、
図5に示すように、ヘッダ本体53Aの底部において、Y方向に沿ってほぼ等間隔で配置されている。各上側ノズル55Aは、内部に絞りを有している。各上側ノズル55Aは、噴出口を真下に向けた状態で、ヘッダ本体53Aの底部を上下方向に貫通している。具体的には、各上側ノズル55Aの上部は、ヘッダ本体53Aの底部、貯水層F1を貫通して、蒸気層F2に連通している。尚、本例では、各ノズル上端の位置を、貯水層F1に貯留する水面の高さと一致させている。
【0034】
上記の構成とすることで、蒸気層F2に導入された蒸気Sの圧力の作用により、
図5に示すように、各上側ノズル55Aの先端から蒸気Sと共に水滴Wを噴出することができる。具体的には、蒸気Sの圧力で蒸気Sがノズル内へと流れ込む時に、ノズル周囲の水Wを同時に取り込んで、ノズル先端から蒸気Sと水滴Wを噴出することができる。
【0035】
また、使用中、蒸気管27Aと水管35Aから、蒸気Sと水Wを絶えず供給し、
図5に示すように、上側ノズル55Aの上端位置と底部に貯留する水Wの水面の高さの関係をほぼ一定に保つ(ノズル上端を水面と一致)ことにより、各上側ノズル55Aの噴出口から蒸気Sと共に水滴Wを噴出し続けることができる。
【0036】
各上側ノズル55Aから噴出する蒸気Sや水滴Wを均一にするためには、各ノズルヘッダ51Aの水平度を高く保ち、傾きがない状態にすることが好ましい。そのため、本実施形態では、断面の中心を通る軸線Lgが水平となるように向きを調整した上で、ノズルヘッダ51Aを図外のフレーム(支持部材)に固定して取けている。具体的には、断面の中心を通る軸線Lgが水平となるように向きを調整した上で、ノズルヘッダ51AのY方向の両端部をフレーム(支持部材)に固定して取り付けている。ノズルヘッダ51Bも同様である。
【0037】
また、ヘッダ本体53Aの内径Dが大きい程、各ノズル55Aから噴出される蒸気量等のバラツキが小さくなる傾向にあり、
図5に示すように、ヘッダ本体53Aの内部空間の全長Lと内径Dの比率は、少なくとも16対9程度にすることが好ましい。これらの事項は、以下に説明する下側ノズルヘッダ51Bも同様である。
【0038】
図6は下側ノズルヘッダの斜視図、
図7は下側ノズルヘッダの断面図である。
下側ノズルヘッダ51Bは、ヘッダ本体53Bと、複数本の下側ノズル55Bと、複数本の接続管61Bと、複数本のチューブ63Bから構成されている。
【0039】
下側ノズルヘッダ51Bの基本的な構成は、上側ノズルヘッダ51Aと同一であることから、相違点のみ説明する。
【0040】
上側ノズルヘッダ51Aは、ヘッダ本体53Aの底部に上側ノズル55Aを直接取り付けた。これに対して、下側ノズルヘッダ51Bは、ヘッダ本体53Bの底部に接続管61Bを取り付けている。
【0041】
そして、噴出口を真上に向けた下側ノズル55Bと、接続部61Bとの間を、Uターン状に屈曲したチューブ63Bで接続している。
【0042】
下側ノズルヘッダ51Bは、
図7に示すように、ヘッダ本体53Bの内部に供給された蒸気Sの圧力の作用により、ヘッダ本体53Bの底部に取り付けられた接続管61Bから蒸気Sと水滴Wを送出する。そして、送出された蒸気Sと水滴Wを、チューブ63Bを介して送って、下側ノズル55Bの先端から噴出する。
【0043】
このようにヘッダ本体53Bの底部に、接続管61Bをわざわざ設けて、蒸気Sと水Wを底部側から抜く理由は、例えば、下側ノズル55Bをヘッダ本体53Bの上部に取り付けるような構造にすると、蒸気Sだけが噴出し、同時に水滴Wを噴出させることが出来ないからである。
【0044】
尚、上側ノズルヘッダ51Aと同様、下側ノズルヘッダ51Bも、使用中、蒸気管27Bと水管35Bから、蒸気Sと水Wを絶えず供給し、
図7に示すように、接続管61Bの上端位置と底部に貯留する水Wの水面の高さの関係をほぼ一定に保つ(本例では接続管上端を水面と一致)ようになっている。
【0045】
また、下側ノズルヘッダ51Bは、水管35Bが接続される導入部59Bを、ヘッダ本体53Bの底部に設けており、この点も、上側ノズルヘッダ51Bと相違している。
【0046】
図2に示すように、洗浄ユニット20は、排気ダクト90と、水受け95を有している。排気ダクト90は、上部カバー70Aと下部カバー70Bの前端部と後端部に対応して、フード91、92を有しており、上側ノズルヘッダ51Aや下側ノズルヘッダ51Bから噴出した蒸気Sや水滴Wを、排気ファン93により外部に排気する。
【0047】
水受け95は、下部カバー70Bの下部に設けられており、上側ノズルヘッダ51Aや下側ノズルヘッダ51Bから噴出した蒸気Sのドレンおよび洗浄に使用した水Wを受ける構成となっている。
【0048】
3.水切りユニット100
水切りユニット100は、鋼板Gの走行方向(X方向)で、洗浄ユニット20の下流側(
図1では右側)に配置されている。水切りユニット100は、上側ノズルヘッダ110Aと、下側ノズルヘッダ110Bと、分岐管125Aと、エア管125と、エア調整ユニット126と、流量計127と、を有している。尚、上側ノズルヘッダ110Aと、下側ノズルヘッダ110Bが本発明の「水切り用のノズルヘッダ」に相当する。
【0049】
上側ノズルヘッダ110Aと下側ノズルヘッダ110Bは、洗浄ユニット20の下流側にあって、鋼板Gの搬送面を間にして、上下に向かい合って配置されている。
【0050】
上側ノズルヘッダ110Aと下側ノズルヘッダ110Bは、共に中空の筒型である。両ノズルヘッダ110A、110Bは、鋼板Gの搬送方向であるX方向に直交するY方向に平行な向きで、図外のフレームに取り付けられている。
【0051】
上側ノズルヘッダ110Aの底部には、Y方向に沿って一定の間隔で、エアノズル115Aが取り付けられている。下側ノズルヘッダ110Bの上部には、Y方向に沿って一定の間隔で、エアノズル115Bが取り付けられている。
【0052】
各ノズルヘッダ110A、110Bは、分岐管125A、エア管125を介して、エア源120に接続されている。エア源120からエア管125、分岐管125Aを介して圧縮エアを供給することにより、各ノズルヘッダ110A、110Bのエアノズル115A、115Bからエアを噴出できる。
【0053】
エア調整ユニット126と流量計127は、エア管125の途中に設けられている。エア調整ユニット126は、エアフィルタ、レギュレータ、ルブリケータの3機器を1つの装置にまとめたユニットである。エア調整ユニット126は、エアから塵やごみ等の異物を除去すると共に、エアの圧力調整を行う。
【0054】
また、分岐管125Bは、スピードコントローラ7に接続されており、スピードコントローラ7へ圧縮エアを供給する構成となっている。
【0055】
4.洗浄装置10の動作説明
洗浄装置10を稼働すると、ボイラ23で生成した蒸気Sが蒸気管27A、27Bを通って上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bに供給される。また、水源R2から水管35A、35Bを通って上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bに常温の水Wが供給される。
【0056】
各ノズルヘッダ51A、51Bに対して蒸気Sと水Wが供給されると、上側ノズルヘッダ51Aでは、貯水層F1内に貯留する水Wが、蒸気層F2に導入された蒸気Sの圧力を利用して、各上側ノズル55Aから蒸気Sと同時に、水滴Wとして下向きに噴出される。また、下側ノズルヘッダ51Bでは、貯水層F1内に貯留する水Wが、蒸気層F2に導入された蒸気Sの圧力を利用して、各下側ノズル55Bから蒸気Sと同時に、水滴Wとして上向きに噴出される。
【0057】
従って、レール部3A、3Bに沿って走行する鋼板Gが、洗浄ユニット20を通過する時に、上側ノズルヘッダ51Aの各上側ノズル55Aから鋼板Gの上面に対して、蒸気Sと同時に水滴Wが吹きかけられる。また、下側ノズルヘッダ51Bの各下側ノズル55Bから鋼板Gの下面に対して、蒸気Sと同時に水滴Wが吹きかけられる。
【0058】
吹きかけた蒸気Sは、鋼板Gを加熱するため、鋼板Gに付着する油分の粘度が下がる。そして、各ノズル55A、55Bから蒸気Sと同時に噴出された水滴Wは、蒸気圧により微小化されつつ加速して鋼板Gの表面に衝突し、鋼板Gの表面に付着する油分や異物を除去する。
【0059】
また、洗浄ユニット20での洗浄後、水切りユニット100を通過する時に、上側ノズルヘッダ110Aのエアノズル115Aから、洗浄後の鋼板Gの上面にエアが噴射される。また、下側ノズルヘッダ110Bのエアノズル115Bから、洗浄後の鋼板Gの下面にエアが噴射される。
【0060】
これにより、洗浄後の鋼板Gを水切り、つまり、表面に残留する水滴Wを圧縮エアで吹き飛ばして除去できる。そのため、水滴Wに含まれる油分(蒸気と水滴を利用して板材から除去した油分)が鋼板Gの表面に再付着することを抑制できる。
【0061】
5.効果
洗浄装置10は、蒸気Sの熱で粘度の低下した油分を、蒸気圧で加速された水滴Wで吹き飛ばすので、過熱蒸気を用いた洗浄装置と同等の高い洗浄能力を発揮することが出来る。しかも、本構成では、洗浄対象である板材と物理的に接触する部分が無いことから、摩耗がなくメンテナンス性に優れる。また、ボイラ23で生成した非過熱の蒸気を使用しているので、蒸気過熱用のヒータ等を設ける必要がない。そのため、構成部品の点数が少なく、簡易的な構成である。
【0062】
また、本構成は、貯水層F1内に貯留する水Wを、蒸気層F2に導入された蒸気Sの圧力を利用して、複数のノズル55A、55Bから蒸気Sと同時に水滴Wとして噴射する構成である。そのため、ノズル数を増やしても、他に部品が増加しない(例えば、特許文献2の洗浄装置のように、ノズルの数だけ水用の供給管が必要となることはない)。従って、ノズルの多本数化に好適な構成であり、比較的、横幅の大きな鋼板Gの洗浄用でも、低コストに装置を構成できる。
【0063】
各ノズルヘッダ51A、51Bは、図外のフレームにより、水平に支持されている。このようにすることで、ノズルヘッダ内にて貯留する水Wの深さが均一になることから、各ノズル55A、55Bに対してほぼ均等に水を給水することが可能となる。そのため、各ノズル55A、55Bから蒸気Sと同時に噴出される水滴Wの量を概ね均一化出来る。そのため、鋼板Gの洗浄時に洗浄むらが出来難く、洗浄効果が高い。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
(1)実施形態1では、洗浄対象を鋼板Gとした。洗浄対象は、鋼板Gに限定されるものではなく、例えば、アルミニウム製や銅製の金属板でもよい。また、ボイラ23で生成した非過熱の蒸気(樹脂を溶かす程の高温ではない)を用いた洗浄方式であることから、金属製の板材に限らず、樹脂製の板材を洗浄対象としてもよい。また、
図1のように有限の長さを持つ被洗浄物を連続的に装置に装入してもよいし、冷間圧延した薄板ロールのように、帯状の被洗浄物を切れ目なく装置に装入してもよい。板材の搬送は、板の上下面が露出していればローラコンベア等でもよい。薄板ロール品の連続圧延工程中に本発明品を適用する場合は、特に搬送装置を追加する必要はない。
【0066】
(2)実施形態1では、上側ノズルヘッダ51Aと下側ノズルヘッダ51Bを用いて、鋼板Gの上面と下面を同時に洗浄した。ノズルヘッダは上下一対の構成に限定されず、上側のみ、下側のみの構成でもよい。この場合、鋼板の片面ずつ洗浄するようにすればよい。
また、ノズルヘッダは必要とされる洗浄能力に応じて、複数列設けてもよい。ノズルヘッダは円筒状でなくてもよく、箱形状として複数列のノズルを千鳥に配置してもよい。ノズルヘッダは、鋼材Gの搬送方向であるX方向に直交するY方向に平行でなくてもよい。例えば、Y方向に平行な状態に対しノズルヘッダを、30°傾ければ、各ノズル間のノズルピッチNPを13%減らすのと同等の効果が得られ、ノズルピッチNPを疑似的に可変として洗浄能力を調整することができる。尚、上側ノズルヘッダ51Aや下側ノズルヘッダ51Bの傾きθを可変にするには、例えば、
図10に示すように、ノズルヘッダ51A、51Bの一端部を回転可能な状態で支持しておき、必要に応じて、ノズルヘッダ51A、51Bを、回転軸Hを中心に回転させることで、傾きθの調整を行えばよい。
【0067】
(3)実施形態1では、上側ノズルヘッダ51A、下側ノズルヘッダ51Bに対して、水源R2から常温の水を供給するようにした。上側ノズルヘッダ51Aや下側ノズルヘッダ51Bに供給する水は、必ずしも常温である必要はなく、温水(沸点以下の温度の水)であってもよい。温水を使用することで、常温の水を使用する場合に比べて、鋼板Gの洗浄能力を高くすることが出来る。
【0068】
また、温水を供給する場合、蒸気Sのドレン及び洗浄に使用した水を再循環して使用することが望ましい。具体的には、
図8、
図9に示すように、水管35A、35Bに対して、ドレン管235A、235Bを分岐接続する。そして、蒸気Sのドレン及び洗浄に使用した水(例えば、水受け95で受けたドレン及び水)を、ドレン管235A、235Bを介して、上側ノズルヘッダ51Aや下側ノズルヘッダ51Bに循環させる構成にする。なお、ドレンや水を再循環する場合は、一旦油水分離槽を介してドレンに含まれる油や異物を除去することが望ましい。
【0069】
このようにすることで、循環時に、水源R2からの水の供給を停止又は絞ることが出来るので、鋼板Gの洗浄に使用する水Wの使用量を削減することが可能である。尚、ドレン管235A、235Bは、必ずしも水管35A、35Bに分岐接続されている必要はなく、上側ノズルヘッダ51Aや下側ノズルヘッダ51Bに直接繋がっていてもよい。