【実施例】
【0047】
<1.実施例のバッテリーの構成>
【0048】
図5の左側には実施例に係る最外集電板21の正面図が示されている。
図5の右側には最外集電板21の左側面図が示されている。内部集電板71a及び71bも示されている。バッテリーの他の構成要素が一点鎖線で表されている。最外集電板21は
図4にも示した通り二体に分離していてもよい。
【0049】
図5に示すように最外集電板21は基礎集電板31と構造板32とを有する。構造板32は導体である。基礎集電板31は内部接続部24を構成する一部である。基礎集電板31は端面77に接合されている。構造板32は基礎集電板31に貼り付けられている。構造板32と基礎集電板31とは溶接により接合されていてもよい。基礎集電板31を介して構造板32と極板群70aとの間の導通が行われる。
【0050】
図5に示すように構造板32は外部接続部22、突出部23、屈曲部25a及び25bを有する。構造板32は外部接続部22及び突出部23としての機能を有する。構造板32はさらに脚部28及び屈曲部25cを備える。
【0051】
図5に示すように構造板32は腕部27を備える。腕部27には基礎集電板31が貼り付けられる。腕部27と基礎集電板31とは溶接により接合されていてもよい。腕部27は内部接続部24を構成する一部である。腕部27と基礎集電板31とが内部接続部24として機能する。屈曲部25bにより腕部27の表面と、側壁55の内表面との間に段差が生じる。
【0052】
図5に示すように腕部27の下端と基礎集電板31の下端とは高さを揃えなくてもよい。腕部27の下端が基礎集電板31の下端よりも高い位置にあってもよい。これによりインサートナット用の穴48と腕部27との間の立体的な干渉を回避してもよい。穴48は側壁55の下端に設けてもよい。穴48は所定の外部構造材にバッテリーを固定するのに役立つ。一方、基礎集電板31の下端は内部集電板71aの下部接続部74aの下端に揃えてもよい。
【0053】
図5に示すように構造板32は基礎集電板31よりも厚い。構造板32は基礎集電板31よりもたわみが少ない。したがって構造板32はセル20aのケース50内での位置を固定するのにより役立つ。構造板32はセル20aと側壁55との間に空間35を設けるのに役立つ。
【0054】
図5に示すように突出部23、屈曲部25a及び屈曲部25bはいずれも基礎集電板31よりも厚い。したがって極板群70a、基礎集電板31、構造板32及び外部端子57の順に電流が流れる場合、当該区間での電気抵抗は相対的に小さい。例えば構造板を用いず、基礎集電板31と同様の厚さを有する集電板のみを最外集電板として利用した場合よりも電気抵抗を小さくすることができる。
【0055】
<2.構造板の製造>
【0056】
図5に示すように構造板32が厚いため、これを製造するための材料加工方法に工夫をしてもよい。一例として次のように構造板32を作成してもよい。外部接続部22と突出部23との間には屈曲部25aが位置している。そこで所定の幅と長さを有する平板(1.2mm厚)をS字に折り曲げて屈曲部25aを形成する。
【0057】
図5に示すように内部接続部24あるいは腕部27と突出部23との間には屈曲部25bが位置している。そこで上記の通り折り曲げた平板をさらにS字に折り曲げて屈曲部25bを形成する。これにより空間35を空気層(0.6mm厚)として形成してもよい。
【0058】
図5に示すように脚部28と外部接続部22との間には屈曲部25cが位置している。そこで上記の通り折り曲げた平板をさらにS字に折り曲げて屈曲部25cを形成する。これらの折り曲げの順序は問わない。これらの折り曲げを金型等で一斉に行ってもよい。
【0059】
上記工程により、
図5に示すように突出部23を形成する。屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲で構造板32の断面積が変化しないことが好ましい。ただし折り曲げ加工による材料の多少の伸展はあってもよい。
【0060】
<3.比較例のバッテリーの構成>
【0061】
図6に示す本比較例のバッテリー90は、実施例のバッテリーと以下の点が異なる。バッテリー90は外部端子−最外セル間の接続構造を有する。最外セル80aにおいて極板群70aに最外集電板91が接続されている。最外集電板91の内部接続部94が極板群70aの側面に接合されている。最外集電板91は上部構造として外部接続部92を備える。外部接続部92は外部端子57と接合する。
【0062】
図6に示すように外部接続部92と内部接続部94との間には屈曲部95がある。フランジ58とケース50との密着を強力にするために屈曲部95の応力を利用することができることは実施例と同様である。最外集電板91も屈曲部95においてS字に屈曲している。最外集電板91は外部接続部92が極板群70aに近づくように屈曲している。
【0063】
図6において最外集電板91の生ずる応力がフランジ58をケース50の内側に引きずり込むように強く働く点は実施例と同じである。一方、実施例と異なり内部接続部94は屈曲部95を支えるようにケース50の内面にくっ付いている。このため内部接続部94は極板群70aに対する強力なヒートシンクとして働く。
【0064】
図7の左側には比較例に係る最外集電板91の正面図が示されている。
図7の右側には最外集電板91の左側面図が示されている。最外集電板91は基礎集電板31と構造板97との二体からなる構造を有する。基礎集電板31は端面77に接合されている。構造板97は基礎集電板31に貼り付けられている。
【0065】
図7に示すように構造板97は延在部93を備える。延在部93には基礎集電板31が貼り付けられる。延在部93は内部接続部94を構成する一部である。構造板97は基礎集電板31よりも厚い。
【0066】
図7に示すように延在部93は屈曲部95から真っ直ぐに下方に延在している。したがって延在部93は側壁55に面で接触している。端面77と側壁55との間に空間はない。このように空間が設けられないことに合わせて構造板97は上述の構造板32(
図5)よりも厚くなっている。
【0067】
図7において、次のように構造板97を作成する。外部接続部22と延在部93との間には屈曲部95が位置している。やや厚めの平板(1.8mm厚)をS字に折り曲げて屈曲部95を形成する。脚部98と外部接続部92との間には屈曲部96が位置している。そこで上記の通り折り曲げた平板をさらにS字に折り曲げて屈曲部96を形成する。
【0068】
図7に示すように、屈曲部95及び96での折り曲げを容易にするため平板の側部に予め切欠き99a−99dを設ける。切欠き99a及び99bは構造板97を側壁55側から正面視した時、屈曲部95の両側部に位置する。切欠き99c及び99dは屈曲部96の両側部に位置する。
【0069】
<4.外部端子−最外セル間の接続構造における電気抵抗>
【0070】
図7に示すように屈曲部95に切欠きが設けられているので、屈曲部95の断面は他の部分の断面よりも小さくなっている。このため極板群70aから外部端子57に向かって電流が流れる場合、電気抵抗が大きい。これは切欠き99a及び99bに挟まれたくびれ部分に電流が集中することを表している。
【0071】
図5に戻る。実施例に係る構造板32では、屈曲部25a及び25bに切欠きを設けないことが好ましい。屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲で構造板32の断面積を変化させるくびれのないことが好ましい。構造板32は構造板97よりも薄いので比較的折り曲げ加工が容易である。したがって切欠きは必須ではない。なお屈曲部25cには切欠きを設けてもよい。
【0072】
図5に示すように実施例では屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲で構造板32の断面積が変化しない。構造板32の電気抵抗は構造板97よりも小さいことが好ましい。このようにして外部端子−最外セル間の接続構造における電気抵抗を小さくすることが出来る。屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲での電気抵抗を低減することでジュール熱の発生を抑制する。
【0073】
図5において外部端子−最外セル間の接続構造における電気抵抗を低減することはバッテリーの密閉に良い影響を与える。孔56の周囲にガスケットとして用いられるシールリング49が設けられる。バッテリーはフランジ58とシールリング49との密着によって密閉される。外部端子−最外セル間で生じたジュール熱はシールリング49まで伝わるとともにシールリング49を損耗する。しかしながら本実施例ではジュール熱が抑えられているのでシールリング49は損耗しにくい。
【0074】
<5.セル間の電気抵抗>
【0075】
図5において構造板32における電気抵抗の低減に合わせて、さらに最外セル20aと内部セル80bとの間の電気抵抗を小さくしてもよい。内部集電板71aは基礎集電板31とは正負が反対である。内部集電板71aは構造板32よりも薄くてもよい。上述の通り内部集電板71aにおいて上部接続部72aは極板群70aとは接合していない。上部接続部72aは内部セル80bと接合される。上部接続部72aは上部接続部72bと接合されている。
【0076】
図5に示すように下部接続部74aは端面78に接合される。端面78は端面77とは正負が反対である。下部接続部74aはさらに導通部73を介して内部セル80bと接合されている。下部接続部74aは導通部73を介して下部接続部74bと接合されている。接合は溶接によって行ってもよい。
【0077】
図5に示すように内部集電板71aは上部接続部72a及び72bの間のみならず、下部接続部74a及び74bの間でも電気的に接続されている。したがって最外セル20aと内部セル80bとの間の電気抵抗を小さくすることが出来る。内部セル同士の間での電気抵抗も同様の手法で小さくすることができる。
【0078】
以上により外部端子−最外セル間のみならず、最外セル−内部セル間及び内部セル−内部セル間のいずれにおいても電気抵抗を小さくすることが出来る。これに合わせて各セルの出力を大きくしてもよい。各所の電気抵抗が小さいのでセルの出力が大きくてもバッテリー内の局所的な発熱を抑制することが出来る。
【0079】
<6.セルごとの温度のバラつきとセルの充電容量>
【0080】
図8には実施例に係るバッテリーにおける熱移動の模式図が示されている。最外セルで発生した熱はルート41を通じて熱伝導により基礎集電板31、さらに腕部27に伝わる。図中には最外セル内の各部材を代表して正極板61が示されている。腕部27の熱はルート42を通じてケースの側壁55に伝わる。しかしながら空間35が熱伝導を妨げる。このため側壁55における昇温は比較的小さい。また側壁55から放射される熱は比較的少ない。腕部27の熱の一部はルート44を通じて熱伝導により最外セルに戻るように伝わる。結果として最外セルの温度は比較的に高く保たれる。
【0081】
図9には実施例に係るバッテリーにおけるセル位置ごとの温度とSOCとのグラフが示されている。
図9に示すセル位置I〜IIIは
図1の記載に基づいている。
図1に示すようにセル位置Iには最外セル20aが配置されている。セル位置IIはセル位置Iに隣接する。セル位置IIには内部セル80bが配置されている。セル位置IIIはセル位置IIに隣接する。セル位置IIIには内部セル80cが配置されている。
【0082】
図9に示すようにセル位置I〜IIIにおけるセルの温度は一様である。したがってセル位置I〜IIIにおけるSOC、いわゆる充電容量は一定である。このためバッテリー内でのセルごとの充電容量のバラつきが少ない。実施例のバッテリーでは充放電の制御が比較的容易である。
【0083】
図10には比較例に係るバッテリーにおける熱移動の模式図が示されている。最外セルで発生した熱はルート46を通じて熱伝導により基礎集電板31、さらに延在部93、さらに側壁55に伝わる。これは各部材が面で接触しているからである。図中には最外セルを代表して正極板61が示されている。側壁55から放射される熱は比較的多い。したがって側壁55は最外セルに対するヒートシンクとして効率的に機能する。
【0084】
図11には比較例に係るバッテリーにおけるセル位置ごとの温度とSOCとのグラフが示されている。セルの配置順序において
図1と違いはない。セル位置Iにおけるセルの温度はセル位置II及びセル位置IIIにおけるセルの温度よりも低い。したがってセル位置IにおけるSOCはセル位置II及びセル位置IIIにおけるSOCよりも高い。このためバッテリー内でセルごとの充電容量にバラつきが生じる。比較例のバッテリーでは充放電の制御が比較的難しい。
【0085】
<7.バッテリー群への応用>
【0086】
図1に戻る。各バッテリー30の有する側壁55がバッテリー群40の外縁に面一に配置されている。各バッテリー30において側壁55と対向する最外セルが冷却されやすいという上述の問題が残る。したがってバッテリー群又はバッテリーパックにおいても、本実施形態の外部端子−最外セル間の接続構造を用いることが好適である。