特許第6928546号(P6928546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6928546-バッテリー 図000002
  • 特許6928546-バッテリー 図000003
  • 特許6928546-バッテリー 図000004
  • 特許6928546-バッテリー 図000005
  • 特許6928546-バッテリー 図000006
  • 特許6928546-バッテリー 図000007
  • 特許6928546-バッテリー 図000008
  • 特許6928546-バッテリー 図000009
  • 特許6928546-バッテリー 図000010
  • 特許6928546-バッテリー 図000011
  • 特許6928546-バッテリー 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6928546
(24)【登録日】2021年8月11日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】バッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20210823BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20210823BHJP
   H01M 50/547 20210101ALI20210823BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20210823BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20210823BHJP
   H01M 50/112 20210101ALI20210823BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20210823BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20210823BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20210823BHJP
【FI】
   H01M50/533
   H01M50/51
   H01M50/547
   H01M50/548 101
   H01M50/553
   H01M50/112
   H01M10/04 Z
   H01M10/617
   H01M10/658
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-245918(P2017-245918)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-114379(P2019-114379A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野▲瀬▼ 雄介
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/141978(WO,A1)
【文献】 特開2012−248451(JP,A)
【文献】 特開2003−331907(JP,A)
【文献】 特開2007−299648(JP,A)
【文献】 特開2015−159105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50−50/598
H01M 50/10−50/198
H01M 50/20−50/298
H01M 10/00−10/39
H01M 10/617
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)孔の開いた側壁を有するケースと、
前記孔に通された外部端子と、
正極板及び負極板が交互に積層された極板群並びに前記外部端子と接続されるための最外集電板を有する最外セルと、
前記最外セルを間に挟んで前記側壁と対向している内部セルであって、前記最外セルに対して電気的に直列に接続されたものと、
を備え、
(b)前記最外集電板は、
前記孔を境にして前記ケースの内側にて前記外部端子と接合される外部接続部と、
前記正極板及び前記負極板のいずれかの群の端面であって、前記最外集電板を間に挟んで前記側壁と対向している端面に接合される内部接続部と、
前記外部接続部及び前記内部接続部の間に位置するとともに、前記側壁に向かって突出している突出部と、
を有し、
(c)前記突出部が前記側壁で支持されているところ、
前記外部接続部が前記側壁から浮くものとなっており、さらに
前記内部接続部が前記側壁から浮くものとなっていることで前記極板群を前記側壁から離間させている、
バッテリー。
【請求項2】
前記外部端子は前記孔を境にして前記ケースの外側に配置されたフランジを有し、
前記ケースは前記孔の周囲に設けられたシールリングを有し、
前記最外集電板の応力により前記フランジが前記シールリングと密着することで前記ケースは密閉される、
請求項1に記載のバッテリー。
【請求項3】
前記最外集電板は、基礎集電板と構造板とを有し、
前記基礎集電板は前記内部接続部を構成しているとともに前記極板群の前記端面に接合されており、
前記構造板は前記外部接続部、前記突出部及び腕部を有し、前記基礎集電板よりも厚く、
前記腕部が前記基礎集電板に貼り付けられている、
請求項2に記載のバッテリー。
【請求項4】
前記最外セルは前記基礎集電板とは正負が反対であるとともに、前記構造板よりも薄い内部集電板をさらに備え、
前記内部集電板は前記極板群には接合していないものの、隣り合う他のセルと電気的に接続される上部接続部と、
前記端面とは正負が反対の極板の群の端面に接合する下部接続部とを有し、
前記下部接続部はさらに前記他のセルと電気的に接続されている、
請求項3に記載のバッテリー。
【請求項5】
前記内部接続部と前記突出部と間で前記構造板がS字に曲げられ、さらに前記突出部と前記外部接続部との間で前記構造板が逆向きのS字に曲げられることで、前記突出部が形成されており、
前記構造板は、前記S字から前記逆向きのS字までの範囲内で前記構造板の断面積を変化させるくびれをもたない、
請求項3又は4に記載のバッテリー。
【請求項6】
前記構造板は前記外部接続部のさらに外側に脚部を有し、
前記脚部と外部接続部との間ではさらに前記構造板が前記逆向きのS字に曲げられ、
前記脚部と前記突出部とで前記外部接続部を支えることによって前記外部接続部を前記側壁から浮かせている、
請求項5に記載のバッテリー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバッテリーを並列化して得られるバッテリー群であって、
各前記バッテリーの有する前記側壁が前記バッテリー群の外縁に配置されている、
バッテリー群。
【請求項8】
請求項7に記載のバッテリー群を備えるバッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリーに関し、特にバッテリー内の外部端子−最外セル間の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはS字に屈曲した集電板を外部端子−最外セル間の接続に利用することが開示されている。特許文献2には最外セルとケースの間に多孔質の断熱材を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−299648号公報
【特許文献2】特開2010−531535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部端子−最外セル間の接続に集電板を使用する場合、最外セルの表面にある集電板とケースの側壁とが外部端子周辺以外の場所で接する場合がある。集電板は導体であるため熱を伝えやすい。このためケースの側壁が最外セルに対する強力なヒートシンクとして作用する可能性がある。この場合、最外セルと内部セルとの間で温度差が生じる。
【0005】
本発明はかかるセル間の温度差を低減するのに適した外部端子−最外セル間の接続構造を提供することを目的とする。かかる接続構造には最外集電板そのものの立体的な構造に関する技術事項が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るバッテリーは(a)孔の開いた側壁を有するケースと、前記孔に通された外部端子と、正極板及び負極板が交互に積層された極板群並びに最外集電板を有する最外セルと、前記最外セルを間に挟んで前記側壁と対向している内部セルであって、前記最外セルに対して電気的に直列に接続されたものと、を備える。(b)前記最外集電板は、前記孔を境にして前記ケースの内側にて前記外部端子と接合される外部接続部と、前記正極板及び前記負極板のいずれかの群の端面であって前記最外集電板を間に挟んで前記側壁と対向している端面に接合される内部接続部と、前記外部接続部及び前記内部接続部の間に位置するとともに前記側壁に向かって突出する突出部と、を有する。(c)前記突出部が前記側壁で支持されているところ、前記外部接続部が前記側壁から浮くものとなっており、さらに前記内部接続部が前記側壁から浮くものとなっていることで前記極板群を前記側壁から離間させている。
【0007】
前記外部端子は前記孔を境にして前記ケースの外側に配置されたフランジを有していてもよい。前記ケースは前記孔の周囲に設けられたシールリングを有していてもよい。前記最外集電板の応力により前記フランジが前記シールリングと密着することで前記ケースは密閉されてもよい。
【0008】
前記最外集電板は、基礎集電板と構造板とを有していてもよい。前記基礎集電板は前記内部接続部を構成しているとともに前記極板群の前記端面に接合されていてもよい。前記構造板は前記外部接続部、前記突出部及び腕部を有し、前記基礎集電板よりも厚くてもよい。前記腕部が前記基礎集電板に貼り付けられていてもよい。
【0009】
前記最外セルは前記基礎集電板とは正負が反対であるとともに、前記構造板よりも薄い内部集電板をさらに備えていてもよい。前記内部集電板は前記極板群には接合していないものの隣り合う他のセルと電気的に接続される上部接続部と、前記端面とは正負が反対の極板の群の端面に接合する下部接続部とを有していてもよい。前記下部接続部はさらに前記他のセルと電気的に接続されていてもよい。
【0010】
前記内部接続部と前記突出部と間で前記構造板がS字に曲げられ、さらに前記突出部と前記外部接続部との間で前記構造板が逆向きのS字に曲げられることで、前記突出部が形成されていてもよい。前記構造板は、前記S字から前記逆向きのS字までの範囲内で前記構造板の断面積を変化させるくびれをもたなくともよい。
【0011】
前記構造板は前記外部接続部のさらに外側に脚部を有していてもよい。前記脚部と外部接続部との間ではさらに前記構造板が前記逆向きのS字に曲げられていてもよい。前記脚部と前記突出部とで前記外部接続部を支えることによって前記外部接続部を前記側壁から浮かせていてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係るバッテリー群は上記バッテリーを並列化して得られるバッテリー群である。各前記バッテリーの有する前記側壁が前記バッテリー群の外縁に配置されている。本発明の一態様に係るバッテリーパックは上記バッテリー群を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によりセル間の温度差を低減するのに適した外部端子−最外セル間の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】バッテリーの断面の模式図
図2】接続構造の拡大断面図。
図3】接合部の断面図。
図4】IV−IV断面におけるセルの断面図。
図5】実施例の構造板の正面図及び側面図。
図6】比較例の接続構造の断面図。
図7】比較例の構造板の正面図及び側面図。
図8】実施例の熱移動の模式図。
図9】実施例の温度とSOC(State Of Charge)のグラフ。
図10】比較例の熱移動の模式図。
図11】比較例の温度とSOCのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1にはバッテリー30の断面が模式的に示されている。説明の便宜のためバッテリー30の長手方向にあたる横方向にX軸、上下方向にY軸、奥行き方向にZ軸をとる。また以降の図においてもこの座標軸を利用する。
【0016】
図1に示すバッテリー30はケース50、柱状の外部端子57、最外セル20a及び20z、内部セル80b−80eとを備える。内部セル80b−80eは最外セル20a及び20zの間に位置している。これらのセルは一列に並ぶとともに電気的に直列に接続されている。バッテリー30は複数のセルを互いに接続してなるモジュールである。
【0017】
図1に示すようにケース50は側壁55を備える電槽である。後述する図4に示すように側壁55を含む側壁がこれらのセルを取り囲んでいる。ケース50には隔壁51が設けられている。図1中では隔壁51のうち、ケース50の底面から延びる部分しか表されていないがこれは説明の便宜のためである。本実施形態において隔壁51はケース50の上面まで延びている。かかる隔壁51が各セルを個別に隔離する。またケース50と隔壁51とによって各セルは個別に密閉されている。セル間の結合は隔壁51を貫通する孔を通じて行われている。
【0018】
図1において最外セル20aを含むセルは化学的な意味において二次電池でもよい。好適な二次電池の種類として、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池及び鉛蓄電池が挙げられる。
【0019】
図1に示すように複数のバッテリー30を立体配置上並列に並べてバッテリー群40を得てもよい。この時、各バッテリー30の側壁55を互いに揃えて配置することができる。これにより各バッテリー30を電気的に並列に接続してもよい。バッテリー群40にコントロールユニットや冷却システムや開閉スイッチといった部材を付与することでバッテリーパックを製造してもよい。
【0020】
なお図1において最外セル20a及び20z並びに内部セル80b−80eの間で同一のハッチングを用いているが、これらの部材が一体の部材であることを示すものではない。図に示すセル位置I〜IIIについては後述する。
【0021】
図2には外部端子−最外セル間の接続構造が最外セル20aを中心に描かれている。Z軸を示す記号(X)は紙面の表から裏に抜ける方向を表している。バッテリー30は外部端子−最外セル間の特徴的な接続構造を有する。かかる接続構造は図1に示す最外セル20zに対して用いてもよい。
【0022】
図2に示すように最外セル20aにおいて極板群70aに最外集電板21が電気的に接続されている。詳細には最外集電板21の内部接続部24が極板群70aの有する端面77に接合されている。極板群70aは端面77の反対側にさらに端面78を有する。内部集電板71aの有する下部接続部74aが端面78に接合されている。これらの接合は例えば溶接によって行うことが出来る。
【0023】
図2にはS字に屈曲した内部集電板71a及び71bが示されている。これらの内部集電板は下部接続部74a及び74bを有している。これらの接続部が極板群70aや極板群70bの側部の端面に接合されることで最外セル20aや内部セル80bが形成される。接合は溶接によって行ってもよい。これらの内部集電板はそれぞれ上部接続部72a及び72bを有する。上部接続部72a及び72bは極板群とは接しない。
【0024】
図2に示すようにこれらの上部接続部と下部接続部との間には屈曲部75a及び75bが設けられている。これらの屈曲部で各内部集電板はS字に屈曲している。屈曲により上部接続部72aや72bが極板群から遠ざかるとともに、隣り合うセルに近づくようになっている。これらの上部接続部同士を接合させることで最外セル20aと内部セル80bとを電気的に接続する。接合は溶接によって行ってもよい。なお図2中でも隔壁51のうち、ケース50の底面から延びる部分しか表されていない。本実施形態において隔壁51がケース50の上面まで延びているのは先に述べたとおりである。図6において同様である。
【0025】
図2に示すように側壁55と内部セル80bとの間には最外セル20aが配置されている。内部セル80bは最外セル20aを間に挟んで側壁55と対向している。側壁55には孔56が設けられている。最外集電板21は孔56を境にしてケース50の内側にて外部端子57に接合される。
【0026】
図2に示すように最外集電板21は上部構造として外部接続部22を有する。外部接続部22は極板群70aとは接合していない。外部接続部22は外部端子57に対向している。外部端子57はケース50の内外を電気的に連絡する。外部端子57は極柱とも呼ばれる。外部端子57は孔56を通っている。外部接続部22と外部端子57とは互いに接合されている。
【0027】
図2に示すように最外集電板21において外部接続部22と内部接続部24との間には屈曲部25a及び屈曲部25bがある。屈曲部25a及び屈曲部25bは互いに逆向きに屈曲している。図の見た目を基準にすると屈曲部25aが逆S字に、屈曲部25bがS字に屈曲している。S字と逆S字の表現は相対的なものでありまた便宜的なものである。図を裏側から見ればS字と逆S字が入れ替わる。屈曲部25aにおいて最外集電板21は外部接続部22が極板群70aに近づくように屈曲している。
【0028】
図2に示すように外部接続部22と内部接続部24との間には突出部23が形成されている。詳細には屈曲部25a及び屈曲部25bの間に突出部23がある。あるいは屈曲部25a及び屈曲部25bによって突出部23が形成されている。屈曲部25bにおいて最外集電板21は突出部23が極板群70aから遠ざかるように屈曲している。突出部23は側壁55に向かって突出する。
【0029】
図2に示すように外部端子57はフランジ58を有する。フランジ58は外部端子57と一体に成形されていてもよい。フランジ58は孔56を境にしてケース50の外側に配置されている。孔56はフランジ58で塞がれている。フランジ58と側壁55との間にガスケットを設けることでケース50を密閉してもよい。最外集電板21内に生じた外部端子57をケース50の内側に引きずり込む力、いわゆる応力に基づいてケース50を密閉することが好ましい。
【0030】
図2に示すように突出部23が側壁55に接触している。このため突出部23は側壁55で支持されている。突出部23が支点となることで、外部接続部22が孔56の周辺の部分から浮くものとなっている。孔56の周辺は平らであってもよい。
【0031】
図2に示すように最外集電板21はさらに脚部28及び屈曲部25cを備えていてもよい。脚部28は外部接続部22のさらに外側に位置する。図中では脚部28は外部接続部22のさらに上方に位置する。ケース50内において外部端子57は突出部23及び脚部28の間に位置する。屈曲部25cは屈曲部25aとは逆向きのS字にカーブしている。
【0032】
図2に示すように脚部28と突出部23とで外部接続部22を支えるとともに、外部接続部22を孔56の周辺の部分から浮かせている。このように外部接続部22を浮かせることが以下に述べるような応力を得るのに有効である。
【0033】
図3は最外集電板21の上部に設けられた接合部を示す断面図である。突出部23、屈曲部25a、外部接続部22、屈曲部25c及び脚部28によっていわゆる板バネ型構造が形成されている。側壁55の内表面には脚部28と突出部23とが接する。板バネ型構造は突出部23、屈曲部25a及び外部接続部22のみによって形成されていてもよい。
【0034】
図3において、最外集電板21が孔56の方向に押し込まれることで最外集電板21の板バネ型構造内に応力を生じる。図は最外集電板21が塑性変形したところも含めて表している。最外集電板21の有する応力は可能な限り元の位置に外部接続部22を戻そうとする力である。応力は右向きの矢印で示したように外部端子57をケース50の内側に引きずり込むように強く働く。したがってフランジ58とケース50との密着を強くすることができる。
【0035】
図3において、外部端子57を引きずり込む力に対する反作用として、最外集電板21を側壁55に向かって引っ張る力が働く。これに対抗するように最外集電板21は突出部23及び脚部28で自身を支えている。結果として突出部23及び脚部28は側壁55を押している。左向きの矢印で示したような力が側壁55に対して加わっている。
【0036】
図3において外部接続部22と外部端子57とを接合する際、接合面59にて外部接続部22の側よりスポット溶接することでこれらを接合してもよい。この時、図に示すように浮いていた外部接続部22を予め外部端子57に向かって押し込んでおくことが好ましい。外部接続部22を押し込みながら溶接することで、接合後において外部端子57に働く応力を生成することが出来る。外部端子57においてフランジ58から接合面59までの長さを適宜短めに調節することで発生する応力の大きさを調整してもよい。上記では板バネ型構造は塑性変形するものとして説明したが、板バネ型構造が弾性変形して応力としてのバネ力を発揮してもよい。
【0037】
図2に戻る。ケース50の上部は側壁55等とは別体の蓋としてもよい。外部接続部22と外部端子57とを接合した後、側壁55を含む側壁の上端にかかる蓋を取り付けることでケース50を完成させてもよい。
【0038】
図2に示すように内部接続部24は側壁55には接触していない。突出部23が支点となることで内部接続部24も側壁55から浮いている。これにより極板群70aを側壁55から離間させることができる。側壁55の内部接続部24と対向する部分は平らでもよい。内部接続部24と側壁55との間には空間35が形成される。空間35は空気で満たされた空気層となる。空間35に電解液が進入してもよい。空気は空気以外の気体に置き換えてよい。空間35の働きは実施例で説明する。
【0039】
図4には図2に示す断面IV−IVにおけるバッテリー30の断面が示されている。Y軸を示す記号(ドット)は紙面の裏から表に抜ける方向を表している。最外セル20aは極板群70aと最外集電板21と内部集電板71aとを有する。図中では最外集電板21は、基礎集電板31と構造板32の二体からなるものとして描かれている。この詳細は実施例で説明する。
【0040】
図4に示すように極板群70aは複数の平らな極板が積層されたものである。ここでは正極板61及び負極板62が交互に積層されている。正極板61及び負極板62の間にはセパレータ65が配置されている。極板群70a中の外表面は負極板62となっている。これらの負極板62はセパレータ65で覆われている。
【0041】
図4に示すように最外集電板21は正極板61及び負極板62のいずれかの群の端面と接合される。図中では最外集電板21は正極板61の群の有する端面77に接合されている。正極板61はリード部63を有する。端面77は正極板61中のリード部63の側に位置する。
【0042】
図4に示すように内部集電板71aは端面77とは反対側の端面78に接合されている。図に示すように端面78は負極板62の群の端面である。負極板62はリード部64を有する。端面78は負極板62中のリード部64の側に位置する。
【0043】
図4に示すようにケース50は断面において長方形である。長方形においてX軸方向が長手方向となっている。側壁55は特に端面77と対向する側壁を指す。ケース50は+Z方向に側壁54aを、−Z方向に側壁54bを有する。側壁55は側壁54a及び54bの間に位置する。側壁55が長方形の短辺に、側壁54a及び54bが長方形の長辺にそれぞれ相当する。これらの側壁54a及び54bが極板群70aの外表面のうち、正極板61や負極板62と平行な外表面と対向する。
【0044】
図4において側壁54a及び54bと極板群70aとの間が離間している。これは図示の便宜のためであり、実際はこれらの間隔は小さくともよい。間隔を小さくすることで側壁54a及び54bを、最外セル20aを初めとする各セルに対するヒートシンクとして効率的に機能させてもよい。
【0045】
ケース50を作製するために側壁55と側壁54aと54bを含む側壁が一体に成型されていてもよい。これらの側壁及び上述の隔壁によってセルは四方を囲まれる。ケース50は絶縁体からなる。絶縁体は樹脂でもよい。
【0046】
なお図4において各正極板61の間で同一のハッチングを用いているが、これらの部材が一体の部材であることを示すものではない。各負極板62において同様である。またセパレータ65のハッチングを省略している。
【実施例】
【0047】
<1.実施例のバッテリーの構成>
【0048】
図5の左側には実施例に係る最外集電板21の正面図が示されている。図5の右側には最外集電板21の左側面図が示されている。内部集電板71a及び71bも示されている。バッテリーの他の構成要素が一点鎖線で表されている。最外集電板21は図4にも示した通り二体に分離していてもよい。
【0049】
図5に示すように最外集電板21は基礎集電板31と構造板32とを有する。構造板32は導体である。基礎集電板31は内部接続部24を構成する一部である。基礎集電板31は端面77に接合されている。構造板32は基礎集電板31に貼り付けられている。構造板32と基礎集電板31とは溶接により接合されていてもよい。基礎集電板31を介して構造板32と極板群70aとの間の導通が行われる。
【0050】
図5に示すように構造板32は外部接続部22、突出部23、屈曲部25a及び25bを有する。構造板32は外部接続部22及び突出部23としての機能を有する。構造板32はさらに脚部28及び屈曲部25cを備える。
【0051】
図5に示すように構造板32は腕部27を備える。腕部27には基礎集電板31が貼り付けられる。腕部27と基礎集電板31とは溶接により接合されていてもよい。腕部27は内部接続部24を構成する一部である。腕部27と基礎集電板31とが内部接続部24として機能する。屈曲部25bにより腕部27の表面と、側壁55の内表面との間に段差が生じる。
【0052】
図5に示すように腕部27の下端と基礎集電板31の下端とは高さを揃えなくてもよい。腕部27の下端が基礎集電板31の下端よりも高い位置にあってもよい。これによりインサートナット用の穴48と腕部27との間の立体的な干渉を回避してもよい。穴48は側壁55の下端に設けてもよい。穴48は所定の外部構造材にバッテリーを固定するのに役立つ。一方、基礎集電板31の下端は内部集電板71aの下部接続部74aの下端に揃えてもよい。
【0053】
図5に示すように構造板32は基礎集電板31よりも厚い。構造板32は基礎集電板31よりもたわみが少ない。したがって構造板32はセル20aのケース50内での位置を固定するのにより役立つ。構造板32はセル20aと側壁55との間に空間35を設けるのに役立つ。
【0054】
図5に示すように突出部23、屈曲部25a及び屈曲部25bはいずれも基礎集電板31よりも厚い。したがって極板群70a、基礎集電板31、構造板32及び外部端子57の順に電流が流れる場合、当該区間での電気抵抗は相対的に小さい。例えば構造板を用いず、基礎集電板31と同様の厚さを有する集電板のみを最外集電板として利用した場合よりも電気抵抗を小さくすることができる。
【0055】
<2.構造板の製造>
【0056】
図5に示すように構造板32が厚いため、これを製造するための材料加工方法に工夫をしてもよい。一例として次のように構造板32を作成してもよい。外部接続部22と突出部23との間には屈曲部25aが位置している。そこで所定の幅と長さを有する平板(1.2mm厚)をS字に折り曲げて屈曲部25aを形成する。
【0057】
図5に示すように内部接続部24あるいは腕部27と突出部23との間には屈曲部25bが位置している。そこで上記の通り折り曲げた平板をさらにS字に折り曲げて屈曲部25bを形成する。これにより空間35を空気層(0.6mm厚)として形成してもよい。
【0058】
図5に示すように脚部28と外部接続部22との間には屈曲部25cが位置している。そこで上記の通り折り曲げた平板をさらにS字に折り曲げて屈曲部25cを形成する。これらの折り曲げの順序は問わない。これらの折り曲げを金型等で一斉に行ってもよい。
【0059】
上記工程により、図5に示すように突出部23を形成する。屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲で構造板32の断面積が変化しないことが好ましい。ただし折り曲げ加工による材料の多少の伸展はあってもよい。
【0060】
<3.比較例のバッテリーの構成>
【0061】
図6に示す本比較例のバッテリー90は、実施例のバッテリーと以下の点が異なる。バッテリー90は外部端子−最外セル間の接続構造を有する。最外セル80aにおいて極板群70aに最外集電板91が接続されている。最外集電板91の内部接続部94が極板群70aの側面に接合されている。最外集電板91は上部構造として外部接続部92を備える。外部接続部92は外部端子57と接合する。
【0062】
図6に示すように外部接続部92と内部接続部94との間には屈曲部95がある。フランジ58とケース50との密着を強力にするために屈曲部95の応力を利用することができることは実施例と同様である。最外集電板91も屈曲部95においてS字に屈曲している。最外集電板91は外部接続部92が極板群70aに近づくように屈曲している。
【0063】
図6において最外集電板91の生ずる応力がフランジ58をケース50の内側に引きずり込むように強く働く点は実施例と同じである。一方、実施例と異なり内部接続部94は屈曲部95を支えるようにケース50の内面にくっ付いている。このため内部接続部94は極板群70aに対する強力なヒートシンクとして働く。
【0064】
図7の左側には比較例に係る最外集電板91の正面図が示されている。図7の右側には最外集電板91の左側面図が示されている。最外集電板91は基礎集電板31と構造板97との二体からなる構造を有する。基礎集電板31は端面77に接合されている。構造板97は基礎集電板31に貼り付けられている。
【0065】
図7に示すように構造板97は延在部93を備える。延在部93には基礎集電板31が貼り付けられる。延在部93は内部接続部94を構成する一部である。構造板97は基礎集電板31よりも厚い。
【0066】
図7に示すように延在部93は屈曲部95から真っ直ぐに下方に延在している。したがって延在部93は側壁55に面で接触している。端面77と側壁55との間に空間はない。このように空間が設けられないことに合わせて構造板97は上述の構造板32(図5)よりも厚くなっている。
【0067】
図7において、次のように構造板97を作成する。外部接続部22と延在部93との間には屈曲部95が位置している。やや厚めの平板(1.8mm厚)をS字に折り曲げて屈曲部95を形成する。脚部98と外部接続部92との間には屈曲部96が位置している。そこで上記の通り折り曲げた平板をさらにS字に折り曲げて屈曲部96を形成する。
【0068】
図7に示すように、屈曲部95及び96での折り曲げを容易にするため平板の側部に予め切欠き99a−99dを設ける。切欠き99a及び99bは構造板97を側壁55側から正面視した時、屈曲部95の両側部に位置する。切欠き99c及び99dは屈曲部96の両側部に位置する。
【0069】
<4.外部端子−最外セル間の接続構造における電気抵抗>
【0070】
図7に示すように屈曲部95に切欠きが設けられているので、屈曲部95の断面は他の部分の断面よりも小さくなっている。このため極板群70aから外部端子57に向かって電流が流れる場合、電気抵抗が大きい。これは切欠き99a及び99bに挟まれたくびれ部分に電流が集中することを表している。
【0071】
図5に戻る。実施例に係る構造板32では、屈曲部25a及び25bに切欠きを設けないことが好ましい。屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲で構造板32の断面積を変化させるくびれのないことが好ましい。構造板32は構造板97よりも薄いので比較的折り曲げ加工が容易である。したがって切欠きは必須ではない。なお屈曲部25cには切欠きを設けてもよい。
【0072】
図5に示すように実施例では屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲で構造板32の断面積が変化しない。構造板32の電気抵抗は構造板97よりも小さいことが好ましい。このようにして外部端子−最外セル間の接続構造における電気抵抗を小さくすることが出来る。屈曲部25bのS字から、屈曲部25aの逆向きのS字までの範囲での電気抵抗を低減することでジュール熱の発生を抑制する。
【0073】
図5において外部端子−最外セル間の接続構造における電気抵抗を低減することはバッテリーの密閉に良い影響を与える。孔56の周囲にガスケットとして用いられるシールリング49が設けられる。バッテリーはフランジ58とシールリング49との密着によって密閉される。外部端子−最外セル間で生じたジュール熱はシールリング49まで伝わるとともにシールリング49を損耗する。しかしながら本実施例ではジュール熱が抑えられているのでシールリング49は損耗しにくい。
【0074】
<5.セル間の電気抵抗>
【0075】
図5において構造板32における電気抵抗の低減に合わせて、さらに最外セル20aと内部セル80bとの間の電気抵抗を小さくしてもよい。内部集電板71aは基礎集電板31とは正負が反対である。内部集電板71aは構造板32よりも薄くてもよい。上述の通り内部集電板71aにおいて上部接続部72aは極板群70aとは接合していない。上部接続部72aは内部セル80bと接合される。上部接続部72aは上部接続部72bと接合されている。
【0076】
図5に示すように下部接続部74aは端面78に接合される。端面78は端面77とは正負が反対である。下部接続部74aはさらに導通部73を介して内部セル80bと接合されている。下部接続部74aは導通部73を介して下部接続部74bと接合されている。接合は溶接によって行ってもよい。
【0077】
図5に示すように内部集電板71aは上部接続部72a及び72bの間のみならず、下部接続部74a及び74bの間でも電気的に接続されている。したがって最外セル20aと内部セル80bとの間の電気抵抗を小さくすることが出来る。内部セル同士の間での電気抵抗も同様の手法で小さくすることができる。
【0078】
以上により外部端子−最外セル間のみならず、最外セル−内部セル間及び内部セル−内部セル間のいずれにおいても電気抵抗を小さくすることが出来る。これに合わせて各セルの出力を大きくしてもよい。各所の電気抵抗が小さいのでセルの出力が大きくてもバッテリー内の局所的な発熱を抑制することが出来る。
【0079】
<6.セルごとの温度のバラつきとセルの充電容量>
【0080】
図8には実施例に係るバッテリーにおける熱移動の模式図が示されている。最外セルで発生した熱はルート41を通じて熱伝導により基礎集電板31、さらに腕部27に伝わる。図中には最外セル内の各部材を代表して正極板61が示されている。腕部27の熱はルート42を通じてケースの側壁55に伝わる。しかしながら空間35が熱伝導を妨げる。このため側壁55における昇温は比較的小さい。また側壁55から放射される熱は比較的少ない。腕部27の熱の一部はルート44を通じて熱伝導により最外セルに戻るように伝わる。結果として最外セルの温度は比較的に高く保たれる。
【0081】
図9には実施例に係るバッテリーにおけるセル位置ごとの温度とSOCとのグラフが示されている。図9に示すセル位置I〜IIIは図1の記載に基づいている。図1に示すようにセル位置Iには最外セル20aが配置されている。セル位置IIはセル位置Iに隣接する。セル位置IIには内部セル80bが配置されている。セル位置IIIはセル位置IIに隣接する。セル位置IIIには内部セル80cが配置されている。
【0082】
図9に示すようにセル位置I〜IIIにおけるセルの温度は一様である。したがってセル位置I〜IIIにおけるSOC、いわゆる充電容量は一定である。このためバッテリー内でのセルごとの充電容量のバラつきが少ない。実施例のバッテリーでは充放電の制御が比較的容易である。
【0083】
図10には比較例に係るバッテリーにおける熱移動の模式図が示されている。最外セルで発生した熱はルート46を通じて熱伝導により基礎集電板31、さらに延在部93、さらに側壁55に伝わる。これは各部材が面で接触しているからである。図中には最外セルを代表して正極板61が示されている。側壁55から放射される熱は比較的多い。したがって側壁55は最外セルに対するヒートシンクとして効率的に機能する。
【0084】
図11には比較例に係るバッテリーにおけるセル位置ごとの温度とSOCとのグラフが示されている。セルの配置順序において図1と違いはない。セル位置Iにおけるセルの温度はセル位置II及びセル位置IIIにおけるセルの温度よりも低い。したがってセル位置IにおけるSOCはセル位置II及びセル位置IIIにおけるSOCよりも高い。このためバッテリー内でセルごとの充電容量にバラつきが生じる。比較例のバッテリーでは充放電の制御が比較的難しい。
【0085】
<7.バッテリー群への応用>
【0086】
図1に戻る。各バッテリー30の有する側壁55がバッテリー群40の外縁に面一に配置されている。各バッテリー30において側壁55と対向する最外セルが冷却されやすいという上述の問題が残る。したがってバッテリー群又はバッテリーパックにおいても、本実施形態の外部端子−最外セル間の接続構造を用いることが好適である。
【符号の説明】
【0087】
20a 最外セル、 20z 最外セル、 21 最外集電板、 22 外部接続部、 23 突出部、 24 内部接続部、 25a−c 屈曲部、 27 腕部、 28 脚部、 30 バッテリー、 31 基礎集電板、 32 構造板、 35 空間、40 バッテリー群、 41 ルート、 42 ルート、 44 ルート、 46 ルート、 48 穴、 49 シールリング、 50 ケース、 51 隔壁、 54a−b 側壁、 55 側壁、 56 孔、 57 外部端子、 58 フランジ、59 接合面、 61 正極板、 62 負極板、 63 リード部、 64 リード部、 65 セパレータ、 70a−b 極板群、 71a−b 内部集電板、 72a−b 上部接続部、 73 導通部、 74a−b 下部接続部、 75a−b 屈曲部、 77 端面、 78 端面、 80a 最外セル、 80b−80e 内部セル、 90 バッテリー、 91 最外集電板、 92 外部接続部、 93 延在部、 94 内部接続部、 95 屈曲部、 96 屈曲部、 97 構造板、 98 脚部、 99a−99d 切欠き、 I−III セル位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11