(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記静電フィルターは、入口電極、及び前記入口電極の下流に配置された出口電極を備え、前記停止エレメントは、前記入口電極と前記出口電極の中間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のイオンビーム装置内の汚染制御用の装置。
前記静電フィルターは、入口電極、及び前記入口電極の下流に配置された出口電極を備え、前記停止エレメントは、前記入口電極と前記出口電極の中間に配置されることを特徴とする、請求項4に記載のイオンビーム装置内の汚染制御用のシステム。
前記停止エレメントと前記基板ステージの間に配置されたプラズマ源をさらに備え、前記制御コンポーネントは、前記停止電圧が前記停止エレメントに印加されると、前記プラズマ源内にプラズマを発生させるための信号を送るロジックを含み、前記停止電圧は前記停止エレメントに印加され、第2のイオンビームが前記プラズマ源から引き出され、前記静電フィルターに向けられることを特徴とする、請求項4に記載のイオンビーム装置内の汚染制御用のシステム。
前記静電フィルターは、入口電極、及び入口電極の下流に配置された出口電極を備え、前記停止エレメントは、前記入口電極と前記出口電極の中間に配置されたことを特徴とする、請求項10に記載のイオンビーム装置内の汚染制御用の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面は、必ずしも縮尺通りではない。図面は、代表にすぎず、本開示の特定のパラメータを表現することを意図していない。本図面は、本開示の典型的な実施形態を表すことを意図しており、そのため、発明の範囲を限定するとはみなされない。図面において、類似の符号は類似のエレメントを示す。
【0010】
本開示によるシステム、装置、及び方法は、本システム、装置、及び方法の実施形態を示す添付の図面を参照して、以降において十分に説明される。本システム、本装置、及び本方法は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で説明される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。代わりに、これらの実施形態が提供されるため、本開示は完成し、完全となり、当業者に本システム及び方法の範囲を十分に伝える。
【0011】
単数で記載され、「1つの(”a” or “an”)」という用語に続くエレメント又は動作は、本明細書で用いられるとき、除外されることが明確に述べられていない限り、複数のエレメント又は動作を含むと理解されるべきである。さらに、本開示の「一実施形態」の参照によって限定することを意図していない。追加の実施形態も、記載された特徴を組み込むことができる。
【0012】
様々な実施形態において、システム、装置、及び方法は、新規のやり方でイオンビームの軌道を制御するために提供され、イオンビーム装置内のコンポーネントのクリーニングが容易になる。
【0013】
図1A及び
図1Bは、本開示の実施形態による装置1のブロック図を表す。装置1を「イオンビーム装置」ということがあり、通常、ビームイオン注入機又はイオンビーム発生小型装置と表す。したがって、明確性のために、イオンビーム装置における様々な公知のコンポーネントを省略することがある。示されているように、装置1は、イオン源2として示されるイオンビーム源を含む。イオン源2は、電源、及びイオン源2のチャンバー近傍に配置された引出し電極アセンブリ(不図示)を備えることもできる。
【0014】
イオン源2は、電力発生器、プラズマエキサイター(plasma exciter)、プラズマチャンバー、及びプラズマそのものを含むことができる。プラズマ源は、誘導結合プラズマ(ICP)源、トロイダル型結合プラズマ源(TCP)、容量結合プラズマ(CCP)源、ヘリコン源、電子サイクロトロン共鳴(ECR)源、傍熱型陰極(IHC)源、グロー放電源、イオン源で発生する電子ビーム、又は当業者に知られている他のプラズマ源とすることができる。
【0015】
イオン源2は、基板10を処理するためにイオンビーム6を発生させることができる。様々な実施形態において、(断面での)イオンビームは、従来、知られているようなスポットビーム又はリボンビームなどのようにターゲット形状を有することができる。示されたデカルト座標系において、イオンビームの伝播方向は、Z軸に平行に表すことができ、イオンビーム6でのイオンの実際の軌道は変化することができる。基板10を処理するために、イオン源2と基板10との間の電圧(電位)差を形成することによってターゲットエネルギーを得るようにイオンビーム6を加速することができる。
図1Aに示すように、イオン源2は、V
Tとして示すようなターゲット電圧に連結することができ、V
Tは、電圧源4によって供給され、基板10の処理中に、ターゲットイオンエネルギーをイオンに発生させるよう設計される。特に、イオンビーム6において、基板10に衝突するときのイオンのイオンエネルギーは、V
Tと、基板電位であるV
Sの間の差によって決定することができる。基板の処理でのイオンエネルギーの例は、数百eVから数十万eVの範囲とすることができる。実施形態は、本文脈に限定されない。
【0016】
動作の処理モードにおいて、装置1は、イオン源2内にプラズマを形成し、イオン源2に電圧V
Tを印加し、基板が基板電位V
Sに維持されている間にイオンビームを引き出すことによって、基板10を処理するために用いることができる。これによって、
図1Aに示すように、イオンビーム6は基板10に向かって加速される。イオンビーム6が物質をドープ又は蓄積する注入のために用いられる例において、イオンビーム6は、処理モード中にイオンビーム装置1内の様々な表面に凝縮しやすい種を含むことがある。これらは、イオンビーム6に衝突しない表面を含むことがあり、この結果、それらの表面での蓄積に至る。例えば、処理モード中に、装置1内の任意のコンポーネントを表すコンポーネント8、特にイオンビーム6に直接、露光されない表面に、ドーパント物質が蓄積されることがある。
【0017】
ここで
図1Bをみると、装置1は、動作のクリーニングモードにて示されている。本例において、V1として示される第1の電圧は、イオン源2に連結され、V1は、イオン源2に接続されたときに電圧源4によって発生する。したがって、公知の引出しコンポーネント(不図示)を用いて、イオンビーム6Aは、イオン源2から引き出され、本例では図面のZ軸に平行で右に向いている初期の軌道に沿って基板10の方へ加速することができる。続く実施形態で詳細に述べられるように、電圧V1の大きさ及び符号の選択は、イオンビーム装置内のコンポーネントのクリーニングに合わせて調整することができる。いくつかの例では、イオンビーム6Aは、イオンビーム6とは組成が異なっていてよい。例えば、イオンビーム6は、ドーパント種を含むことができるが、イオンビーム6Aは、不活性ガスイオン(Ar、He、Ne、Kr等)を含むことができる。他の実施形態において、イオンビーム6Aは、表面から堆積物をクリーニングするために有用な、フッ素、NF
3を含むフッ素化合物、塩素、塩素化合物、酸素等のような反応性イオンを含むことができる。加えて、示されるように、装置1は、停止エレメント12と、停止エレメント12に連結した停止電圧源14とを含む。装置1は、停止電圧源14に、V
STとして示される停止電圧を停止エレメント12に印加させる制御コンポーネント20をさらに含むことができる。制御コンポーネント20は、メモリと同様にロジックにおいて具体化することができ、電圧源4と同様に停止電圧源14によって供給される電圧を調整するためのハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを含むことができる。制御コンポーネント20は、例えば、コントローラと、実行されると、イオンビーム装置の様々なコンポーネントを本明細書に開示されているように動作させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体とを含む半導体回路を含むことができる。この方法において、イオン源2及び停止エレメント12に形成された電圧は変更され、動作におけるクリーニングモードから動作における処理モードに切り替えることができる。
【0018】
本開示の実施形態によれば、停止電圧は、第1の電圧V1と等しいか、第1の電圧V1より高く正とすることができる。電圧(電位)について本明細書で用いられる「より高く正である」又は「より低く正である」という用語は、2つの異なるエンティティの相対的な電圧を指すことができる。したがって、0Vは−5kV「より高く正」であり、+10kVは0V「より高く正」である。さらに、−10kVは、−5kV「より低く正」である。「より低く負である」又は「より高く負である」という用語は、相対的な電圧を指すこともできる。例えば、0kVは、+5kVより高く負であるということができ、+10kVは+5kVより低く負である。
【0019】
停止電圧が第1の電圧と等しいか、第1の電圧V1より高く正である状況において、停止電圧が停止エレメント12に印加されると、イオンビーム6Aの少なくとも一部は、偏向イオン16として初期の軌道から後方に偏向することができる。イオンビーム6Aの後方への偏向イオンの一部は、イオン16として示される。有利なことに、イオン16の軌道によって、イオン16は、イオンビーム6A、すなわちイオンビーム6に露光されていない表面に衝突することができる。これらの表面は、明確性のために、
図2Bにおいて、影面領域19として示される。上述したように、このような領域には、
図1Bに堆積物18として示したように、動作の処理モード中に物質が蓄積しやすい。適切な軌道でイオン16を発生させることによって、堆積物18は、十分なドーズ量のイオン16の露光後に除去され、外部クリーニングのために装置1からコンポーネント8を取り外す必要がなくなる。
【0020】
ここで
図2を参照するに、本開示によるシステム30を説明する例示的な実施形態が示されている。システム30は、他のコンポーネントの間に、イオンビーム6を製造するためのイオン源2と、ビームラインコンポーネントを収容するビームラインイオン注入システムとして構成することができる。イオン源2は、ガスのフロ
ーを受け、イオンを発生させるためのチャンバーを備えることができる。イオン源2は、電源、及びチャンバー(不図示)近傍に配置された引出し電極アセンブリも備えることができる。ビームラインコンポーネントは、例えば、質量分析器34と、第1の加速又は減速ステージ36と、コリメーター38と、イオンビーム6を加速又は減速するための静電フィルター(EF)40と、イオンビーム6を中性化するためのプラズマフラッド源42とを含むことができる。ガス源17、いくつかの実施形態では反応性ガス源は、ガスをプラズマフラッド源42に供給することができる。加えて、制御コンポーネント20は、停止電圧が停止エレメント12に印加されると、プラズマフラッド源42内でプラズマを発生させる信号を送信するためのロジックを含むことができる。
【0021】
例示的な実施形態において、ビームラインコンポーネントは、所望の種、形状、軌道、エネルギー、および他の性質を有するように、イオンビーム6をフィルタリングし、当て、操作する。イオンビーム6は、少なくとも1つのビームラインコンポーネントによって、基板チャンバー、又は基板ステージ、
図2の特定の例においては、基板ステージ46として示される、プラテン又はクランプに取り付けられた基板48に向けることができる。基板48は、1以上の次元で動く(例えば、変位、回転、及び傾転)ことができる。
【0022】
示されるように、イオン源2のチャンバーに連結された、源52、源54、及び源56として示される1つ以上の供給源があってもよい。いくつかの実施形態において、供給源から提供される物質は、注入、堆積、又はクリーニングのための原料物質を含むことができる。原料物質は、イオンの形成において基板に導入されるドーパント種を含むことができる。クリーニング物質は、イオン源2のチャンバーに導入されるクリーニング剤(例えば、エッチングガス又は反応性ガス)も含み、イオンビーム6の一部を形成して1つ以上のビームラインコンポーネントをクリーニングすることができる。
【0023】
上述したように、
停止電圧源14は、クリーニングモードにおいて、イオンビーム6の少なくとも一部を向け直すように停止コンポーネント(不図示)に電圧を印加するために用いることができ、この結果、選択したビームラインコンポーネントをその場でクリーニングする。停止コンポーネントは、例えば、位置Rに位置付けられると、位置Rの上流に位置付けられた、プラズマフラッド源42又は静電フィルター40などのコンポーネントの影面をクリーニングするのに有効である。
【0024】
様々な実施形態において、停止エレメントは、静電フィルター内に配置された第1の一対のロッドとして構成された電極を備えることができる。ロッドは、電気的に伝導性である。静電フィルターは、第2の一対のロッドを有し、停止エレメントの上流に配置された少なくとも1つの追加電極を含むことができる。少なくとも1つの追加電極は、主ビームに露光される影面領域を含むことができる。以下に説明するように、停止エレメントの適切な動作によって、少なくとも1つの追加電極における影面領域は停止エレメントによって発生した偏向イオンを遮ることができる。
【0025】
ここで
図3を参照するに、さらなる実施形態による装置100の側面図が示されている。装置100は、より詳細に説明されるように、
図2に示すシステム30の静電フィルター40を含むことができる。様々な実施形態において、以下で開示される、静電フィルター40、及び静電フィルターの類似の実施形態は、Y軸に沿うとともに、Z軸及びX軸に沿って数十センチメートル延在することができる。本実施形態はこの文脈に限定されない。例示的な実施形態において、静電フィルター40は、イオンビーム72の偏向、減速、及び焦点を独立して制御するように構成されたビームラインコンポーネントである。以下でより詳細に説明されるように、静電フィルター40は、イオンビーム72の上に配置される上部電極のセットと、イオンビーム72の下に配置される下部電極のセットとを有する静電エレメント(例えば、イオンビーム光学)の構成を含むことができる。上部電極のセット及び下部電極のセットは静的であってよく、固定の位置にあってよい。上部電極のセット及び下部電極のセットの間の電位の差は、中心イオンビーム軌道に沿って変化し、イオンビームの偏向、減速、及び/又は焦点を独立して制御するように、中心イオンビーム軌道に沿った各点でイオンビームのエネルギーを反射することができる。
【0026】
示されるように、静電フィルター40は、複数のビームライン電極(例えば、グラファイト電極ロッド)に相当する、静電エレメント70−Aから70−Nとして示される複数の伝導性静電エレメント(電極)を含む。一実施形態において、静電エレメント70−Aから70−Nは、示されるように、イオンビームラインに沿って配置された伝導性ビーム光学である。本実施形態において、静電エレメント70−Aから70−Nは、対照的な構成に配置され、静電エレメント70−A及び70−Bは入口電極のセットを表し、静電エレメント70−C及び70−Dは出口電極のセットを表し、残りの静電エレメント70−Eから70−Nは、数セットの抑制電極/集束電極を表す。示されるように、電極対の各セットは、イオンビーム72(例えば、リボンビーム)を通過させる空間/ギャップを提供する。例示的な実施形態において、静電エレメント70−Aから70−Nは、チャンバー74内に提供される。
【0027】
一実施形態において、静電エレメント70−Aから70−Nは、電気的に互いに連結される対となる伝導性部品を含む。代わりに、静電エレメント70−Aから70−Nは、イオンビームが通過する孔をそれぞれ含む、連続した一体構造とすることができる。示された実施形態において、各電極対の上部及び下部は、通過するイオンビームを偏向するために(例えば、別々の伝導性部品において)異なる電位を有することができる。静電エレメント70−Aから70−Nは、(例えば、5セットの抑制/集束電極を用いる)7つの一対として記載されているが、任意数のエレメント(すなわち、電極)を様々な実施形態において利用することができる。例えば、静電エレメント70−Aから70−Nの構成は、3から10の範囲の電極セットを利用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、処理モードにおいて、イオンビームラインに沿って静電エレメント70−Aから70−Nを通過するイオンビーム72は、基板への注入あるいは基板10上での濃縮のためのホウ素又は他の元素を含むことができる。これによって、
図1Bを参照して上記で示され、説明された堆積物18が形成されることがある。クリーニングモードにおいて、通常、
図3に示すように、いくつかの実施形態において、イオンビーム72は、反応性イオン、不活性ガスイオン、又は2つの組み合わせを含むことができる。クリーニングモード中に、停止電圧は、停止エレメントに印加され、示されるようにイオンビーム72の方向を変える。特に、イオンビーム72の少なくとも一部は、(Z軸に沿って右を差す)初期軌道から離れて後方に向けることができる。この結果は、イオン76にみられ、イオン76の軌道は、特に、影面領域19に、静電エレメント70−Aから70−Nの様々なエレメントによって遮られる。この方法において、静電フィルター40から取り外すことなく、静電エレメント70−Aから70−Nをクリーニングすることができる。
図3の特定の実施形態において、静電エレメント70−C及び静電エレメント70−Dは、上述したように停止エレメントを構成することができる。静電エレメント70−C及び静電エレメント70−Dは、電気的に互いに接続することができ、停止電圧源14に連結して停止電圧V
STを受けることができ、停止電圧は、第1の電圧V1と等しいか、第1の電圧より高く正である。これによって、イオンビーム72内のイオンは減速することができ、示されるようにそれらの軌道を反転する。
図3の実施形態は、クリーニングモード中の停止エレメントとしての、エネルギーフィルターの出口電極の使用を例示しているが、他の実施形態では、専用の停止エレメントを含むことができ、専用の停止エレメントは、通常、処理モード中にイオンビームを調整するためには用いられない。
【0029】
ここで
図4Aをみると、イオン注入システム150として示されている、本実施形態に合致するビームラインイオン注入システムの動作の1つの概要が示される。
図4Aにも、イオンビーム182と、イオン注入システム150のビームラインの様々な位置での電位を表す例示的な電圧曲線180とが示されている。示されているように、イオン注入システム150は、ガスボックス162と、イオン源164と、分析器166と、質量分析スリット(MRS)と、コリメーター168と、静電フィルター40と、プラズマフラッド源170と、基板10とを含む公知のコンポーネントを含むことができる。例示を目的として、コンポーネントは線形に配置されて示されているが、コンポーネントの相対位置のより正確な表示は、例えば
図2に示されている。
図4Aの実施形態において、イオン源164は、+5kVの電位にバイアスされ、一方、分析器166及びコリメーター168のような、ビームラインの中間領域でのビームラインコンポーネントは、−10kVにバイアスされている。静電フィルター40の静電エレメントの少なくともいくつかも負にバイアスされるが、正の電圧は停止エレメントに印加される。本例において、停止エレメント12に印加される停止電圧は、+10kVから+30kVまでの範囲とすることができる。実施形態は、本文脈に限定されない。最後に、基板10は、本例では0Vの電位である。
【0030】
ここで
図4B及び
図4Cをみると、
図4Aの一般的な概要のもとでの、停止エレメント12の動作のシミュレーションの結果が示されている。
図4Bの特定の例において、停止エレメントは、静電フィルター40内で具体化され、10kVの停止電圧が印加される。示されるように、静電エレメント70−C及び静電エレメント70−Dは、一般的に上述されたように達成するが、本変形では、停止エレメント80といわれる停止エレメントとして振る舞う。本実施形態及び様々な他の実施形態において、停止エレメント80を除いて、静電フィルター40の電極に印加される電圧は、ビーム処理モードで用いられるこれらの電圧に類似してよく、これによりイオンビームは静電フィルター40を通過して伝播することができる。例えば、複数の別々の電圧源(別々には示されていない)を有する電圧源アセンブリ122は、停止エレメント80とは別に、静電フィルター40の電極に個別に電圧を供給することができる。電圧は、負の電圧とすることができ、公知の静電フィルター内でのように異なる電極間で変更することができる。電圧源アセンブリ122によって印加される電圧は、特に停止電圧に対して負とすることができる。停止エレメント80に印加される10kVの電圧は、他の電極に印加される電圧と同じように、連続した等電位曲線120によって表される電界を発生させる。これらの等電位曲線は、そのため、静電フィルター40の様々な電極に印加された異なる電圧に関する。例えば、約−26kVの電位は、静電エレメント70−Eの近傍の領域を囲み、静電エレメント70−Eに印加される電圧を示す。電位は、右に向かって正に増加する。停止エレメント80に印加された+10kVの電圧は、静電エレメント70−Cと静電エレメント70−Dの間の領域112に延在する数千ボルトの正の電位を発生させる効果を有する。
【0031】
ここで
図4Cをみると、
図4Aの概要において発生することができるような、
図4Bに示す静電フィルター40の状態下で静電フィルター40を通って伝播する5kVのアルゴンイオンビームのシミュレーションの結果が示されている。示されているように、アルゴンイオンビーム102は、静電フィルター40内に伝播する。停止エレメント80によって発生する電界は、イオンビーム102の一部を止めて、イオン110を静電フィルター40の他の電極の方に後方に向けるのに十分である。イオン110は、示されているように、順次、静電フィルター40の他の静電エレメントに引き付けられるようになる。とりわけ、イオン110の軌道は、静電フィルター内の異なる電極に印加された異なる電位の集合によって発生した電界の形状にしたがって曲がることができる。下流の位置から上流の方向における、後方への、及び通常の、イオンの偏向は、イオンビーム102が基板10の方に伝播するときにイオンビーム102に露光されない静電エレメントの影面領域をクリーニングする効果を有する。
図4Cに示すように、イオンビーム102の一部は、本概要において、基板10に伝播もする。
【0032】
静電フィルターが、例えば、入口電極、及び入口電極の下流に配置された出口電極を含む場合の様々な追加の実施形態において、停止エレメントは、は、入口電極と出口電極との中間に配置することができる。例えば、
図4Bにおいて、停止エレメントは、静電フィルター40の出口の前の最後の電極対で具体化されるが、他の実施形態において、静電フィルター40内の他の電極を停止エレメントとして用いることができる。
【0033】
図4Dに示すシミュレーションにおいて、
図4Aの一般的な概要は同じままであるが、+30kVの電圧が、この場合では、静電エレメント70−N及び静電エレメント70−Mで形成される停止エレメント90に印加される。
図4Eに示すように、この高電圧は、静電エレメント70N及び静電エレメント70−Mの間の、イオンビームが伝播することができる近くの領域に約10kVの電界を発生させる。
【0034】
ここで
図4Eをみると、
図4Aの概要において発生することのできる、
図4Dに示す静電フィルター40の状態下で静電フィルター40を通って伝播する5kVのアルゴンイオンビームのシミュレーションの結果が示されている。示されているように、イオンビーム、この場合のアルゴンイオンビーム200は、静電フィルター40内に伝播する。停止エレメント90によって発生する電界は、アルゴンイオンビーム200の一部を止め、静電フィルターの他の電極の方へ後方にイオン210を向けるのに十分である。イオン210は、示されるように、順次、静電フィルター40の他の静電エレメントに引き付けられるようになる。これによって、静電エレメントの影の部分をクリーニングする効果を有することができる。示されているように、アルゴンイオンビーム200のより小さい部分は、この概要においては基板10に伝播することができる。
図4C及び
図4Eの結果によって示唆されているように、十分に高い正の電圧が停止エレメントに印加される場合、十分に高い電位が、停止電極間の中心領域に発生することができ、そのため、イオンビームの全体を停止することができる。
【0035】
静電フィルターが入口電極、及び入口電極の下流に配置された出口電極とともに構成される追加の実施形態において、停止エレメントを、入口電極及び出口電極の中間の任意の位置に配置することができる。
【0036】
本開示のさらなる実施形態において、ビームラインイオン注入システムは、様々なビームラインコンポーネントに印加される電圧が従来のビームライン注入システムとは異なるよう構成することができる。ここで
図5Aをみると、イオン注入システム150として示されるビームラインイオン注入システムがブロック形式で示されている。
図5Aには、イオン注入システム150のビームラインの様々な位置での電位を表す例示的な電圧曲線250も示されている。本例において、公知のビームラインイオン注入処理におけるように、イオン源を正の電位でバイアスする代わりに、−5kVの電位がイオン源164に印加され、一方、ビームラインの中間領域における、分析器166及びコリメーター169などのビームラインコンポーネントは、−20kVにバイアスされる。静電フィルター40の静電エレメントの少なくともいくつかも負にバイアスされ、一方、0Vの停止電圧が停止エレメント12に印加される。とりわけ、イオン源164は、(停止エレメント12だけでなく)基板10より高く負にバイアスされるため、イオンビーム252は、停止エレメント12の近傍を横切ると、完全に停止することができる。これによって、クリーニング処理中に、任意の不所望のイオンが、基板領域に入るのを防ぐという利点を与えることができる。
【0037】
ここで
図5Bをみると、イオン注入システム150のビームラインの様々な位置での電位を表す他の例示的な電圧曲線260が示されている。本例において、公知のビームラインイオン注入処理におけるようにイオン源を正の電位でバイアスする代わりに、イオン源164に0kV(接地)電位が印加され、ビームラインの中間領域で、分析器166及びコリメーター168のようなビームラインコンポーネントが−20kVにバイアスされる。静電フィルター40の静電エレメントの少なくともいくつかも負にバイアスされ、0Vの停止電圧が停止エレメント12に印加される。とりわけ、イオン源164は、基板10と同じ電位にバイアスされるため、イオンビーム262も、停止エレメント12の近くを横切ると完全に停止することができる。これによって、イオン源164に電圧を印加する必要なく、クリーニング処理中に、任意の不所望のイオンが、基板領域に入るのを防ぐという利点を与えることができる。
【0038】
図5Aの状態下で処理されたイオンビーム270のシミュレーションが
図6に示されている。例示されているように、イオンビーム270は、図の右の方へ伝播し、停止エレメント12(0V)の位置で停止し、イオン272を発生させ、イオン272は、示されるように後方に向けられる。イオンビーム270は、ほとんど、あるいはまったく基板10に伝播しない。
【0039】
追加の実施形態によれば、停止エレメントは、基板ホルダーとすることができる。この方法において、基板ホルダー、又は基板ホルダーに位置する基板は、近づいてくるイオンビームを停止させ、イオンビームを後方に偏向させることができる。したがって、基板ホルダーの近傍を横切るイオンビームから生成された偏向イオンは、イオン源と基板ホルダーとの間に位置する少なくとも1つのコンポーネントに衝突することができる。これによって、基板の上流に位置する領域でのクリーニングが容易になり、このような領域は、通常、処理モード中に、イオンビームによって衝突されない。
【0040】
他の実施形態において、停止エレメントは、小型のイオンビームシステム内に配置することができる。
図7は、イオンビームシステム300が、プラズマ304を発生させるプラズマチャンバー302を用いる場合のイオンビームシステム300の実施形態を表す。プラズマチャンバー302は、任意の公知の設計とすることができ、プラズマ304は、任意の公知のプラズマ装置によって発生することができる。
図7に示すように、引き出しアセンブリ306は、プラズマチャンバー302に隣接して提供され、イオンビーム308を引き出すプラズマチャンバーに対して負にバイアスすることができる。一実施において、プラズマチャンバー302は、基板を処理する動作中に、接地(電圧
源4によって0Vを印加)してもよい。加えて、停止エレメント318は、処理チャンバー320内に位置付けられてもよい。動作の処理モードにおいて、基板ホルダー(別々には示されていない)は、負にバイアスされ、プラズマ304から正イオンを引き付けることができる。動作のクリーニングモード下において、いくつかの実施形態では基板ホルダーと同じ停止エレメント318は、プラズマチャンバー302に対して正にバイアスすることができる。このバイアスは、イオンビーム308を止めることができ、偏向イオン310を発生させ、ゼロ電圧面312から引き出しアセンブリ306に向かう後方に向けることができる。このモードにおいて、通常はイオンビーム308に露光されない引き出しアセンブリ306及び他の部分は、スパッタエッチング、リアクティブエッチング、又は偏向イオン310によって生じる他のエッチングによってクリーニングすることができる。
【0041】
追加の実施形態において、停止電圧は、異なる方法で静電フィルターの電極に印加することができる。例えば、停止エレメントが一対のロッドからなる電極として構成される静電フィルターにおいて、静電フィルターは、第2の一対のロッドを含む第2の電極と、第3の一対のロッドを含む第3の電極とを有することができる。この構成において、一実施形態によれば、停止電極に印加される停止電圧に加えて、第2の電極に第2の電圧を印加することができ、第3の電極に第2の電圧とは異なる第3の電圧を印加することができる。第2の電圧及び第3の電圧は、停止電圧より低く正とすることができ、負の電位を有することができ、偏向イオンを引き付ける。異なる電圧のために、第2の電極によって遮られた偏向イオンの第1のフラックスは、第3の電極によって遮られた偏向イオンの第2フラックスとは異なっていてもよい。この方法において、静電フィルターの第2の電極、第3の電極、及び他の電極の電圧を調整することによって、静電フィルター内で異なる電極に向けられたイオンの量は、所与の電極でクリーニングするターゲット量によって合わせることができる。
【0042】
追加の実施形態において、プラズマフラッド源170のようなプラズマフラッド源に反応性ガスを流すことができ、プラズマフッド源は、停止電極と基板の位置の間に配置される。この方法において、プラズマフラッド源からの反応種は、クリーニングでは停止エレメントとして用いられない少なくとも1つの追加の電極に衝突することができる。これによって、影面領域に向かって後方に向きを変えたイオンによって生じたエッチングに加えて、電極から物質を除去するのを助ける。スパッタクリーニングと反応性イオンエッチングのバランスは、プラズマフラッド源を流れる反応性ガスの量に応じて調整することができる。
【0043】
ふたたび
図2を参照するに、さらなる実施形態において、停止エレメントの下流に配置された、プラズマフラッド源42のようなプラズマ源を用いて第2のイオンビームが発生することができる。この方法において、第2のイオンビームと、加えて、停止エレメントによって生じる偏向イオンとは、クリーニングされる電極又は他の表面に向かうことができる。
【0044】
さらなる実施形態において、クリーニングイオンビームを、静電エレメントだけでなく、既に存在するマグネット又は追加のマグネットによっても、ビームをビームラインの見通し外の(又は他の)領域に向けるために操作することができる。
【0045】
他の追加の実施形態において、本明細書の以上で概して開示された装置及び技術は、その場でのクリーニングを行うために、負のイオンとともに用いることができる。これらの追加の実施形態において、イオン源は、負のイオンを有するイオンビームを発生させることができ、第1の電圧がイオン源に印加される。停止電圧源に、停止電圧を停止エレメントに印加させることができ、停止電圧は、第1の電圧と等しいか、第1の電圧より高く負である。
【0046】
図8をみると、本開示の実施形態による例示的な処理フロー800が示されている。ブロック802で、イオンはイオン源内で発生する。イオン源は、例えば、ビームラインイオン注入機内のイオン源、又は小型イオンビーム装置内のプラズマチャンバーとすることができる。実施形態は本文脈に限定されない。ブロック804で、第1の電圧がイオン源に印加される。ブロック806で、イオンはイオン源から引き出され、主イオンビームとして所与のイオンビーム装置内の基板の位置に向けられる。ブロック808で、クリーニング期間中に、停止電圧がイオン源と基板の位置の間に配置された停止エレメントに印加され、停止エレメントは、第1の電圧と等しいか、第1の電圧より高く正である。様々な実施形態において、停止エレメントは、静電フィルターの電極、基板ホルダー、又は基板のようなビームラインのコンポーネントとすることができる。実施形態は、本文脈に限定されない。この方法において、主イオンビームの少なくとも一部を偏向イオンとして初期の軌道から後方に偏向することができる。
【0047】
上記に照らして、本明細書に開示された実施形態によって、少なくとも次の利点が達成される。第一に、停止エレメントを提供することによって、処理中に物質が蓄積しやすい、イオンビーム装置内の表面のその場でのクリーニングが容易になる。第二に、いくつかの実施形態は、イオンビーム装置内にある電極又はコンポーネントを利用し、ビームラインイオン注入システムのような装置の内側に過度の再設計又はコンポーネントの追加を要することなく、その場でクリーニングを行うことができる。第三に、様々な実施形態は、クリーニングモード中にクリーニングイオンビームが基板の位置に衝突するのを防ぐ、停止エレメントの能力を提供し、クリーニング中に不所望なイオン露光から基板ホルダー及び基板を保護する。
【0048】
本開示は、発明の範囲において本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されない。実際に、本開示の他の様々な実施形態および変形例は、本明細書に記載された実施形態に加えて、上記の説明及び添付の図面から当業者にとって明らかである。そのため、このような他の実施形態及び変形例は、本開示の範囲内にあることを意図している。さらに、本開示は、本明細書では、特定の目的のために特定の環境における特定の実施の文脈において記載されているが、当業者には、本実施形態の有用性がこれらに限定されず、本実施形態は任意数の目的のために任意数の環境で有益に実施することができることを理解されるであろう。そのため、以降の請求項は、本明細書に記載された本開示に照らして十分に広く解釈されるべきである。