【実施例】
【0039】
実施例1
オゾン含有混合酸溶液(溶液A)は、400mL/Lの硫酸96重量%(7.2M硫酸)及び550mL/Lのメタンスルホン酸70重量%(5.4Mメタンスルホン酸)の溶液にオゾンを通すことによって調製した。オゾンは、純酸素から4.99g/時(5.87g/L/時)のオゾンガスのオゾン発生速度でOZONETECH ICT−10
TMオゾン発生器(Ozone Tech Systems OTS ABから入手可能)を使って製造した。オゾン/酸素ガス混合物(11.2重量%のオゾン)を、混合酸溶液の0.85L溶液に0.5L/分の速度で10分間通した(0.83gのO
3)。水性酸溶液のpHは1未満であった。溶液を通ってのオゾンガスの移動長さが10cmであるように、オゾンを、1リットルのガラス瓶中の0.5mm直径の4つの穴付きのPTFEガス分配器を通して水性酸溶液と接触させた。オゾンをこの溶液に通した後、溶液に溶解したオゾンの濃度を、259nmでのUV吸光度によって測定した。オゾン化混合酸溶液のオゾン濃度は、0.296ミリモル/L(14.21mg/L)であった。
【0040】
400mL/Lの硫酸96重量%(7.2M硫酸)、550mL/Lのメタンスルホン酸70重量%(5.4Mメタンスルホン酸)、73mL/Lの水、4.22g/Lの硫酸マンガン(II)一水和物(25.0ミリモル/L)を含有する混合酸Mn(II)溶液(溶液B)を調製した。
【0041】
10mLのオゾン含有混合酸溶液Aを速い撹拌下に40mLの混合酸Mn(II)溶液Bに添加した。2つの溶液の混合後直ちに(5秒未満内に)、オゾンとMn(II)との反応によって生成したMn(III)からのわずかな紫色が現れた。反応後の溶液のUVスペクトルは、Mn(III)の基準スペクトルと一致した(
図1)。259nmでのオゾンのUV吸光度ピークは、反応後の溶液中に完全に不在であり、オゾンが全て反応してしまい、水性オゾンはもはや存在しないことを示した。282nmでの吸光度から、0.0999ミリモル/LのMn(III)濃度が測定された。2つの溶液を混合することによる水性オゾンとMn(II)との反応のMn(III)形成効率(オゾンの量を基準としての収率)は、したがって:
効率=0.0999ミリモル/L×50mL/(0.296ミリモル/L×10mL×2)=84.4%
であった。
この実施例は、水性オゾンが混合酸溶液中でMn(II)と非常に速く反応して80%超の効率でMn(III)を形成することを示した。このように、オゾンガスが、Mn(II)を含有する硫酸及びメタンスルホン酸の混合酸溶液と接触させられる場合、オゾンは、溶液の大半にオゾンが存在しないように気体/液体界面でMn(II)と反応してMn(III)を形成する。
【0042】
実施例2
OZONETECH ICT−10
TMオゾン発生器(Ozone Tech Systems OTS ABから入手可能)を用いて純酸素から5.22g/時(4.35g/L/時)のオゾンガスを生成した。オゾン/酸素ガス混合物(11.7重量%のオゾン)を、400mL/Lの硫酸96重量%(7.2M硫酸)、550mL/Lのメタンスルホン酸70重量%(5.4Mメタンスルホン酸)、73mL/Lの水、11g/Lの硫酸マンガン(II)一水和物(65.1ミリモル/L)及び470mg/Lのメタンスルホン酸銀(2.31ミリモル/L)の1.2L溶液に60℃で、0.5L/分で18分間通した(1.57gのO
3)。水性酸エッチ液のpHは1未満であった。溶液を通ってのオゾンガスの移動長さが75cmであるように、オゾンを、4.3cm内径の垂直管中の3μm細孔径のPTFEフリットを通して水性酸エッチ液と接触させた。気泡が75cmの溶液を移動するために要する時間は、約6秒であった。
【0043】
水性酸エッチ液へのオゾン注入中に、色は、わずかに黄色っぽい色から紫色に変化し、それは、525nmに吸光度最大を示す溶液のUV/VISスペクトル(HITACHI U−2910分光光度計で記録された)によって確認されるようにMn(III)イオンの形成を示唆した。次の方程式は、起こった反応を例示する:
1)オゾンの溶解:O
3(ガス)→O
3(水性酸溶液に溶解)。
2)溶解オゾンは、水性酸溶液中で、以下の化学方程式によって示されるように5秒以内でMn(II)イオンと反応する。
O
3(水性酸溶液に溶解)+2Mn
2++2H
+→2Mn
3++H
2O+O
2(ガス)
【0044】
Mn(III)の濃度は、0から(方程式1に従って計算される)78.3%のMn(III)生成効率に相当する、2.34g/L(42.6ミリモル/L)になった。Mn(III)が、525nmでのUV/VIS吸光度によって測定されるように42.6ミリモル/Lの濃度に達したときに、オゾン注入を停止した。オゾン注入を停止した時点での硫酸マンガン(II)一水和物としての未反応Mn(II)の濃度は、1.23g/Lであった。
生成したエッチング化学種の量=42.6ミリモル/L×1.2L=51.12ミリモル
水性酸溶液と接触させられたオゾンの量=5.22g/時×18分/48g/モル=32.63ミリモル(48g/モル=オゾンのモル質量)
オゾン転化効率=(51.12ミリモル)/32.63ミリモル×2)×100%=78.3%。
【0045】
実施例3(比較)
OZONETECH ICT−10
TMオゾン発生器(Ozone Tech Systems OTS ABから入手可能)を用いて純酸素から6.75g/時(4.21g/L/時)のオゾンガスを生成した。オゾン/酸素ガス混合物(12.7重量%のオゾン)を、400mL/Lの硫酸96重量%(7.2M硫酸)、550mL/Lのメタンスルホン酸70重量%(5.4Mメタンスルホン酸)、73mL/Lの水、11g/Lの硫酸マンガン(II)一水和物(65.1ミリモル/L)及び470mg/Lのメタンスルホン酸銀(2.31ミリモル/L)の1.6L溶液に60℃で、0.6L/分で15分間通した(1.68gのO
3)。水性酸エッチ液のpHは1未満であった。溶液を通ってのオゾンガスの移動長さが12cmであるように、オゾンを、2Lガス洗浄瓶中の3μm細孔径のPTFEフリットを通して水性酸エッチ液と接触させた。気泡が12cmの溶液を移動するために要する時間は、約1秒であった。水性酸エッチ液へのオゾン注入中に、色は、わずかに黄色っぽい色から紫色に変化し、それは、525nmに吸光度最大を示す溶液のUV/VISスペクトル(HITACHI U−2910分光光度計で記録された)によって確認されるようにMn(III)イオンの形成を示唆した。
Mn(III)の濃度は、0から(方程式1に従って計算される)30.9%のMn(III)生成効率に相当する、0.747g/L(13.6ミリモル/L)になった。オゾン注入が停止された時点での硫酸マンガン(II)一水和物としての未反応Mn(II)の濃度は、2.82g/Lであった。
生成したエッチング化学種の量=13.6ミリモル/L×1.6L=21.76ミリモル
水性酸溶液と接触させられたオゾンの量=6.75g/時×15分/48g/モル=35.16ミリモル(48g/モル=オゾンのモル質量)
Mn(III)生成効率=(21.76ミリモル)/(35.16ミリモル×2)×100%=30.9%。
【0046】
実施例4(比較)
実施例2に記載されたようなオゾン注入中に、Mn(III)が、UV/VIS分光法によって実証され、及び
図2に示されるように水性酸溶液中の最高酸化化学種であった。
図2の点線は、2mmキュベットを用いる400〜700nmの間の18分のオゾン注入後の水性酸溶液のUV/VISスペクトルを示し、そして一方、実線UV/VISスペクトルは、10ミリモル/Lの過マンガン酸カリウムを、実施例2に開示されるような濃度を有する酸マトリックスに溶解させることに由来するMn(VII)化学種を示す。2つの化学種は、可視領域におけるそれらの異なる吸光度最大(525nm:Mn(III)、480nm:Mn(VII))によって区別された。
【0047】
図3は、(UV領域においてもまたピークのより良好な分解能のために)20倍希釈された実施例2の水性酸溶液のUV/VISスペクトルと、商業的に入手可能な酢酸Mn(III)(Sigma−Aldrichから入手した)を酸マトリックスに溶解させることによって調製されたMn(III)の基準スペクトルとの比較を示す。各試料を2mmキュベットに入れた。実施例2の水性酸溶液のUV/VISスペクトルを点線で示す。実線は、実施例2の酸マトリックスに溶解させられた商業的に入手可能な酢酸Mn(III)のUV/VISスペクトルである。両スペクトルは、220〜700nmの全体スペクトル範囲にわたって実質的に一致する。スペクトルの一致は、オゾン酸化で生成した水性酸エッチ液中に形成されたMn(VII)が存在しないことを示した。
【0048】
実施例5
ABS試験プラークを、従来の、商業的に入手可能なCleaner PM−900(Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能)を45℃で3分間使用して洗浄した。その後、ABSプラスチック部品を、65℃で水性酸エッチング液へ10分間浸漬し、次に室温で脱イオン水でリンスした。乾燥後に試料を、25,000倍でのSEM調査にかけた。それを
図4に示す。
図4に示されるように、Mn(III)を含有する水性酸エッチ液は、多数の細孔によって証明されるようにABS表面を著しく粗化した。
【0049】
別のABS試験プラークを、Cleaner PM−900を45℃で3分間使用して洗浄した。クリーナー処理は、表面から固形分及び指紋を除去したが、表面を非改質又は非変化及び疎水性のままにした。その後、ABSプラークを、60℃で上述のエッチング液へ7分間浸漬し、次に室温で脱イオン水でリンスした。ABSの表面は、実質的に
図4に示されるように見えた。
【0050】
ABSを次に、30℃で3分間CATAPOSIT
TM PM−957コロイド状パラジウム−スズ触媒の活性剤溶液(Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能)で処理した。触媒処理されたABSを次に、45℃で3分間ACCELERATOR
TM PM−964溶液(Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能)で処理し、次にNIPOSIT
TM PM−988無電解ニッケルめっき液(Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能)を使用する無電解ニッケルでめっきした。無電解ニッケルめっきは、33℃で行って0.3μmのニッケル層を堆積させた。その後、ニッケルめっきしたABSを、42℃で1A/dm
2で6分間ピロリン酸銅ベースの電気めっき浴を使用するアルカリ性銅ストライクで電気めっきしてその後の工程のための十分な導電性を確保した。次に、部品を、ECOPOSIT
TM 950銅電気めっき浴(Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能)を使用する酸銅めっきにかけた。酸銅めっきは、3A/dm
2で40μm銅層が堆積するまで室温で行った。ニッケル及び銅めっきされたABSを次に、70℃で1時間加熱した。
【0051】
ASTM B533−85に類似の、アドバンスドフォースゲージMecmesin AFG−100Nを使ったMecmesin Versa Testを用いて剥離強度を測定した。金属堆積物の剥離強度は、25mm/分の剥離速度での1cm剥離ストリップで測定した。剥離強度は10N/cmであると測定された。
【0052】
実施例6
PC−ABS試験プラークを、Cleaner PM−900を45℃で3分間使用して洗浄した。次に、PC−ABSプラークを、30℃で溶媒膨張溶液Conditioner PM−920へ2分間浸漬した。リンスした後PC−ABSプラークを65℃で実施例2の水性酸エッチ液へ20分間浸漬し、次に脱イオン水でリンスした。乾燥後にPC−ABSを10,000倍でのSEM調査にかけた。それを
図5に示す。
図5に示されるように、Mn(III)を含有する水性酸エッチ液は、多数の細孔によって証明されるようにPC−ABS表面を著しく粗化した。
【0053】
第2のPC−ABSプラークを、Cleaner PM−900を45℃で3分間使用して洗浄した。クリーナー処理は、表面から固形分及び指紋を除去したが、表面を非改質及び疎水性のままにした。次に、PC−ABSプラークを、30℃で溶媒膨張溶液Conditioner PM−920へ2分間浸漬した。リンスした後、PC−ABSプラークを65℃で実施例2のエッチング液へ20分間浸漬し、次に室温で脱イオン水でリンスした。PC−ABSを次に、30℃で3分間CATAPOSIT
TM PM−957コロイド状スズ/パラジウム触媒の活性剤溶液で処理した。触媒処理されたPC−ABSを次に、45℃で3分間ACCELERATOR
TM PM−964溶液で処理し、次にNIPOSIT
TM PM−988無電解ニッケルめっき液を使用する無電解ニッケルでめっきした。無電解ニッケルめっきは、33℃で行って0.3μmのニッケル層を堆積させた。その後、ニッケルめっきしたPC−ABSを、42℃で1A/dm
2で6分間ピロリン酸銅ベースの電気めっき浴を使用するアルカリ性銅ストライクで電気めっきしてその後の工程のための十分な導電性を確保した。次に、部品を、ECOPOSITTM 950銅電気めっき浴(Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能)を使用する酸銅めっきにかけた。酸銅めっきは、3A/dm
2で40μm銅層が堆積するまで室温で行った。ニッケル及び銅めっきされたPC−ABSを次に、70℃で1時間加熱した。
【0054】
ASTM B533−85に類似の、アドバンスドフォースゲージMecmesin AFG−100Nを使ったMecmesin Versa Testを用いて剥離強度を測定した。金属堆積物の剥離強度は、25mm/分の剥離速度での1cm剥離ストリップで測定した。剥離強度は7N/cmであると測定された。
【0055】
実施例7(比較)
従来の過マンガン酸塩ベースのクロムを含まないエッチ組成物を調製するための従来のオゾンプロセスを用いるMn(II)イオンから過マンガン酸イオン(Mn(VII))の生成の効率を以下に記載する。表1に示される量で成分を含有する試験液を調製した。
【0056】
【表1】
【0057】
商業的に入手可能なオゾン発生デバイスを用いて、オゾンガスを、1時間試験液(1L)へ吹き込み、浴中で生成した過マンガン酸イオンの濃度を、アスコルビン酸滴定によって得た。オゾンガスの収量は、200mg/h又は1000mg/hであり、吹き込み量は2L/分であった。
【0058】
オゾンガスを、次の方法のいずれかを用いることによって吹き込んだ:1.5mmの先端径のガラス管を使用することによってオゾンガスを吹き込む方法(一般的なバブリング)又は約30μmの直径を有する軽石入りのガラス管の末端を提供することによってマイクロバブルの形態でオゾンガスを吹き込む方法(マイクロバブリング)。結果を表2に開示する。
【0059】
【表2】
【0060】
オゾンによる過マンガン酸塩生成の効率は、次の方程式を用いて求めた:
効率=(生成した過マンガン酸塩の量×5(移動した電子))/(溶液を通過したオゾンの量×2(移動した電子)×100%。
【0061】
効率データを下の表3に開示する。
【0062】
【表3】
【0063】
前述の従来法のオゾンプロセスは、7.57% という高さの効率を有するにすぎなかった。対照的に、上記の実施例2に開示されたような本発明の方法は、78.3%の効率を有した。
本発明の好ましい態様を以下に示す。
(1)a)1種以上の有機ポリマーを含む基材を提供する工程と;
b)硫酸、1種以上のアルカンスルホン酸並びにMn(II)イオン及び対アニオンを含む水性酸溶液を提供する工程と;
c)オゾンガスを前記水性酸溶液に注入してオゾンで前記Mn(II)イオンを酸化して少なくとも15ミリモル/LのMn(III)イオンを生成する工程であって、Mn(II)イオンをオゾンで酸化して前記少なくとも15ミリモル/LのMn(III)イオンを生成する効率が少なくとも60%である工程と;
d)前記1種以上の有機ポリマーを含む前記基材を、前記少なくとも15ミリモル/LのMn(III)イオンを含有する水性酸溶液と接触させて前記基材の前記1種以上のポリマーをエッチする工程と
を含む方法。
(2)前記効率が少なくとも70%である、(1)に記載の方法。
(3)前記効率が80%〜95%である、(2)に記載の方法。
(4)オゾンガスが、少なくとも0.05g/L/時の速度で前記水性酸溶液に注入される、(1)に記載の方法。
(5)前記オゾンガスが、0.1g/L/時〜10g/L/時の速度で前記水性酸溶液に注入される、(4)に記載の方法。
(6)前記オゾンガスが、0.2g/L/時〜7g/L/時の速度で前記水性酸溶液に注入される、(5)に記載の方法。
(7)前記Mn(III)イオンの濃度が15〜70ミリモル/Lである、(1)に記載の方法。
(8)前記Mn(III)イオンの濃度が30〜60ミリモル/Lである、(7)に記載の方法。
(9)前記Mn(III)イオンの濃度が35〜55ミリモル/Lである、(8)に記載の方法。
(10)前記水性酸溶液が金属イオンの1種以上の源を更に含む、(1)に記載の方法。