【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃費向上のために、車両及びドアの軽量化が進められているが、ドアが軽くなると、ドアを閉じるときの惰性(モーメント)が小さくなるため、従来と同じ速度でドアを閉めても、ドアウェザストリップから受ける反発力が大きく、ドアが閉じ切らないという問題が発生した。
【0008】
その対策として、ドアウェザストリップの中空シール部の車内側若しくは/及び車外側の側壁の膜厚を薄くすることや、中空シール部の中空内部の断面積を小さくすることが考えられるが、ドアを閉めた時に、中空内部が圧縮され、ドアが閉まる力に反発するので上記問題の解決にならない。
【0009】
また、中空シール部の付け根部分を他の部分よりも肉薄とし、ドアを閉めるときの中空シール部の移動量を大きくすることが考えられるが、この場合は、ドアが閉じ切らないという問題はなくなるが、ドアを閉めた後の中空シール部の車体側アウタパネルに対する反発力が低下する。
【0010】
一方、エア抜き部の数を増やすことが考えられるが、エア抜き部形成のための余分な加工工数が発生し、それに伴いドアウェザストリップのコストが上昇する。また、見栄えも悪化する。
【0011】
そこで、本発明は、ドアウェザストリップの中空シール部の形状を工夫することにより、軽量化されたドアに対しても、ドアの閉まり性能を向上させることができ、さらに見栄えもよく、且つ余分な加工工数を発生することのないドアウェザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車のドア外周に取り付けられて自動車の車体とドアとの間をシールするドアウェザストリップであって、ドアウェザストリップは、ドアに取り付けられる取付基部と、車体に当接してドアとの間をシールする中空シール部
と、前記取付基部に連結し、前記取付基部及び前記中空シール部の車外側に形成されるリップ部を有し、中空シール部の内部の断面積は、車体との当接時には、車体との非当接時に比較して大きくなるように変形
し、前記中空シール部の内圧が減少することを特徴とするドアウェザストリップである。
【0013】
請求項1の本発明では、中空シール部の中空内部の断面積は、車体との当接時には、車体との非当接時に比較して増加するように変形するので、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0014】
請求項2の本発明は、中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、車外側に位置する第2周壁とを備える略三角形若しく略扇形状の断面形状を有し、底壁と第1周壁のなす角度は鈍角であり、第2周壁は底壁に対して凸状に湾曲しているドアウェザストリップである。ここで、「凸状に湾曲している」とは、底壁から見た時に、第2周壁が盛り上がるように弓形に曲がっていることをいい、第2周壁が全体的に盛り上がるように弓形に曲がっている場合、第2周壁内に弓形に盛り上がるように曲がっている部分を有している場合を含む。また、底壁は取付基部の一部であってもよく、取付基部とは別に形成してもよい。
【0015】
請求項2の本発明では、上記の構造を有することにより、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁が立ち上がり、すなわち、底壁と第1周壁のなす角度が小さくなり、底壁を基準にして、第1周壁の高さが高くなる、且つそれに伴い第2周壁は凸状の湾曲の度合いが大きくなるように変形する。
その結果、中空シール部の中空内部の断面積が車体との非当接時に比較して増加するので、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0016】
請求項3の本発明は、中空シール部の第2周壁の内面には、肉薄部を有するドアウェザストリップである。請求項3の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部の第2周壁の内面には、肉薄部を有しているので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁の立ち上がりに伴い、第2周壁では肉薄部を中心に凸状の湾曲の度合いが大きくなる、すなわち、第2周壁が肉薄部を中心に中空シール部外側に変形する。その結果、中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0017】
また、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第2周壁において、常に肉薄部を中心に凸状の湾曲の度合いが大きくなるので、ドアの閉め方の相違や温度、湿度等の環境変化、さらにはドアウェザストリップの経年時においても、ドアウェザストリップと車体との当接時及び当接後のドアウェザストリップの反発力を一定に維持することができる。
【0018】
なお、中空シール部が略三角形若しく略扇形状の断面形状の場合に、第1周壁が大きく立ち上がった場合には、肉薄部を中心にした中空シール部外側に大きく変形し、肉薄部において屈曲し、略三角形若しく略扇形状が略四角形に変形する場合があるが、中空シール部の断面積は増加するので、同様な効果を奏することに変わりはない。
【0019】
請求項4の本発明は、中空シール部の第2周壁の内面には、ノッチを有するドアウェザストリップである。ここで、「ノッチ」とは、V字形、U字形等の切込みや溝のことをいう。請求項4の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部の第2周壁の内面には、ノッチを有しているので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁が立ち上がり、第2周壁はノッチを中心に中空シール部外側に屈曲し、中空シール部が、略三角形若しく略扇形状から略四角形に変形する。その結果、中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0020】
また、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第2周壁において、常にノッチを中心に屈曲するので、ドアの閉め方の相違や温度、湿度等の環境変化、さらにはドアウェザストリップの経年時においても、ドアウェザストリップと車体との当接時及び当接後の車体に対するドアウェザストリップの反発力を一定に維持することができる。
【0021】
請求項5の本発明は、中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、第1周壁と連結し、車外側に位置する第2周壁と、第2周壁と連結し、第2周壁の車外側に位置する第3周壁を備える略四角形の断面形状を有し、底壁と第1周壁のなす角度は鈍角であるドアウェザストリップである。
【0022】
請求項5の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、第1周壁と連結し、車外側に位置する第2周壁と、第2周壁と連結し、第2周壁の車外側に位置する第3周壁を備える略四角形の断面形状を有し、底壁と第1周壁のなす角度は鈍角であるので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁が立ち上がることにより中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0023】
請求項6の本発明は、中空シール部は、略平行四辺形の断面形状を有するドアウェザストリップである。請求項6の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部は、略平行四辺形の断面形状を有しているので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、中空シール部は第1周壁が立ち上がると共に、略平行四辺形が略長方形に変形する方向に第2周壁と第3周壁が動く。
【0024】
その結果、中空シール部を形成する各壁の伸縮を抑えながら中空シール部を変形させることができ、各壁への負荷が最も少ない形で中空シール部の断面積を増加することができるので、中空シール部の内圧の減少により、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。また、中空シール部の耐久性も向上する。
【0025】
なお、底壁と第2周壁、第1周壁と第3周壁が同じ長さの場合は、ひし形になるが、ひし形は当然に平行四辺形に含まれる。また、上記の略長方形には略正方形が含まれる。
【0026】
請求項7の本発明は、中空シール部の第1周壁は、底壁に対して凹状に湾曲しているドアウェザストリップである。ここで、「凹状に湾曲している」とは、底壁から見た時に、第1周壁が底壁側にへこむように弓形に曲がっていることをいい、第1周壁が全体的に底壁側にへこむように弓形に曲がっている場合、第1周壁内に底壁側にへこむように弓形に曲がっている部分を有している場合を含む。
【0027】
また、中空シール部の第1周壁が底壁に対して凹状に湾曲している場合の、底壁と第1周壁とのなす角度とは、第1周壁と底壁との連結部と、第1周壁と第2周壁との連結部を結んだ直線と底壁とのなす角度をいう。
【0028】
請求項7の本発明では、中空シール部の第1周壁は、底壁に対して凹状に湾曲しているので、第1周壁が立ち上がる際に、凹状の湾曲の度合いが減少する方向に変形しても、底壁を基準にして第1周壁の高さは確実に高くなる方向に動く。
【0029】
その結果、中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0030】
請求項8の本発明は、中空シール部の第1周壁は、中空シール部を形成する他の周壁に比較して厚く形成されているドアウェザストリップである。請求項8の本発明では、第1周壁は、中空シール部を形成する他の周壁に比較して厚く形成されているので、中空シール部と車体が当接するときに、第1周壁は撓みの程度が非常に小さく立ち上がり、底壁を基準にして第1周壁の高さは確実に高くなる。その結果、中空シール部の断面積を確実に増加させることができ、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0031】
請求項9の本発明は、中空シール部の第1周壁と第2周壁の頂点部分には、車内側に突出する突起部を形成したドアウェザストリップである。請求項9の本発明では、第1周壁と第2周壁の頂点部分には、車内側に突出する突起部が形成されているので、中空シール部と車体が当接するときには、当接部が厚くなる。
【0032】
その結果、局所的な圧縮変形を抑制し、中空シール部の車体との接触面積を小さく保つことができ、中空シール部の面圧を高く保つことができるため、確実に車室内と車室外をシールすることができる。