特許第6928900号(P6928900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6928900
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ドアウェザストリップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/24 20160101AFI20210823BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20210823BHJP
   B60J 10/277 20160101ALI20210823BHJP
【FI】
   B60J10/24
   B60J10/86
   B60J10/277
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-59398(P2018-59398)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-171928(P2019-171928A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】井村 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 仁志
(72)【発明者】
【氏名】須川 浩志
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−065312(JP,U)
【文献】 米国特許第05361542(US,A)
【文献】 実開昭58−018818(JP,U)
【文献】 実開昭59−093918(JP,U)
【文献】 実開昭59−006517(JP,U)
【文献】 特開2012−011908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00−10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドア外周に取り付けられて自動車の車体とドアとの間をシールするドアウェザストリップであって、
前記ドアウェザストリップは、前記ドアに取り付けられる取付基部と、
前記車体に当接してドアとの間をシールする中空シール部と、
前記取付基部に連結し、前記取付基部及び前記中空シール部の車外側に形成されるリップ部を有し、
前記中空シール部の内部の断面積は、前記車体との当接時には、前記車体との非当接時に比較して増加するように変形し、前記中空シール部の内圧が減少することを特徴とするドアウェザストリップ。
【請求項2】
前記中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、車外側に位置する第2周壁とを備える略三角形若しく略扇形状の断面形状を有し、
前記底壁と前記第1周壁のなす角度は鈍角であり、
前記第2周壁は前記底壁に対して凸状に湾曲している請求項1に記載のドアウェザストリップ。
【請求項3】
前記中空シール部の前記第2周壁の内面には、肉薄部を有する請求項2に記載のドアウェザストリップ。
【請求項4】
前記中空シール部の前記第2周壁の内面には、ノッチを有する請求項2に記載のドアウェザストリップ。
【請求項5】
前記中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、該第1周壁と連結し、車外側に位置する第2周壁と、該第2周壁と連結し、前記第2周壁の車外側に位置する第3周壁を備える略四角形の断面形状を有し、
前記底壁と前記第1周壁のなす角度は鈍角である請求項1に記載のドアウェザストリップ。
【請求項6】
前記中空シール部は、略平行四辺形の断面形状を有する請求項5に記載のドアウェザストリップ。
【請求項7】
前記中空シール部の前記第1周壁は、前記底壁に対して凹状に湾曲している請求項2乃至請求項6に記載のドアウェザストリップ。
【請求項8】
前記中空シール部の前記第1周壁は、前記中空シール部を形成する他の周壁に比較して厚く形成されている請求項2乃至請求項7に記載のドアウェザストリップ。
【請求項9】
前記中空シール部の前記第1周壁と前記第2周壁の頂点部分には、車内側に突出する突起部を形成した請求項2乃至請求項8に記載のドアウェザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア閉時に弾接して自動車の車体とドアとの隙間をシールする自動車用のウェザストリップに関し、特に、ドアの外周に取り付けられるドアウェザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、ドアウェザストリップ10は、基底部11Aと、中空シール部12と、リップ部13とを備えている。ドアウェザストリップ10は、自動車のサイドドア(以下、「ドア」という)の外周部全域に沿って延在する環状の長尺体として構成され、ドアが閉じた状態ではドア開口部の内周部とドアの外周部との間に設けられる。なお、リップ部13は、ルーフ部のみに配設される。ここで、ドアウェザストリップ10に関し、実線はドアウェザストリップ10と車体側アウタパネル4との当接前、破線は車体側アウタパネル4との当接後、すなわち、ドア1を閉じたときの形状を示す。
【0003】
中空シール部12は、基底部11Aの車室内側からドア開口部21の内周部へ向けて延出されると共に、ドア閉時にドア開口部21の内周部に接して車室内と車室外との間をシールする構成とされている。
中空シール部12はドアウェザストリップ10の長手方向と同一方向を長手方向とする中空状で形成されている。中空シール部12の断面はリング状である。
【0004】
中空シール部12の車室内側壁12Aにはそれを貫通するエア抜き部12Hが設けられている。エア抜き部12Hは、中空シール部12の中空内部12Bと車室内とを連通し、ドアウェザストリップ10が車体側アウタパネル4に当接して弾性変形したときに、中空内部12Bから車室内へ空気を抜く構成とされている。エア抜き部12Hは、例えば直径2mm〜4mmの貫通穴により形成されており、1個又はドアウェザストリップ10の長手方向に沿って一定の間隔で複数個配設されている。
【0005】
リップ部13は、基底部11Aの中空シール部12よりも車室外側からドア開口部21の内周部へ向けて延出されると共に、中空シール部12の車室外側壁12Cと対向して配設され、ドア1を閉じた時に車体側アウタパネル4に弾性変形した状態で接する構成とされている。リップ部13は、ドアウェザストリップ10の長手方向と同一方向を長手方向とし、中空シール部12とは異なって中実かつヒレ状で形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-96394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃費向上のために、車両及びドアの軽量化が進められているが、ドアが軽くなると、ドアを閉じるときの惰性(モーメント)が小さくなるため、従来と同じ速度でドアを閉めても、ドアウェザストリップから受ける反発力が大きく、ドアが閉じ切らないという問題が発生した。
【0008】
その対策として、ドアウェザストリップの中空シール部の車内側若しくは/及び車外側の側壁の膜厚を薄くすることや、中空シール部の中空内部の断面積を小さくすることが考えられるが、ドアを閉めた時に、中空内部が圧縮され、ドアが閉まる力に反発するので上記問題の解決にならない。
【0009】
また、中空シール部の付け根部分を他の部分よりも肉薄とし、ドアを閉めるときの中空シール部の移動量を大きくすることが考えられるが、この場合は、ドアが閉じ切らないという問題はなくなるが、ドアを閉めた後の中空シール部の車体側アウタパネルに対する反発力が低下する。
【0010】
一方、エア抜き部の数を増やすことが考えられるが、エア抜き部形成のための余分な加工工数が発生し、それに伴いドアウェザストリップのコストが上昇する。また、見栄えも悪化する。
【0011】
そこで、本発明は、ドアウェザストリップの中空シール部の形状を工夫することにより、軽量化されたドアに対しても、ドアの閉まり性能を向上させることができ、さらに見栄えもよく、且つ余分な加工工数を発生することのないドアウェザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車のドア外周に取り付けられて自動車の車体とドアとの間をシールするドアウェザストリップであって、ドアウェザストリップは、ドアに取り付けられる取付基部と、車体に当接してドアとの間をシールする中空シール部と、前記取付基部に連結し、前記取付基部及び前記中空シール部の車外側に形成されるリップ部を有し、中空シール部の内部の断面積は、車体との当接時には、車体との非当接時に比較して大きくなるように変形し、前記中空シール部の内圧が減少することを特徴とするドアウェザストリップである。
【0013】
請求項1の本発明では、中空シール部の中空内部の断面積は、車体との当接時には、車体との非当接時に比較して増加するように変形するので、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0014】
請求項2の本発明は、中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、車外側に位置する第2周壁とを備える略三角形若しく略扇形状の断面形状を有し、底壁と第1周壁のなす角度は鈍角であり、第2周壁は底壁に対して凸状に湾曲しているドアウェザストリップである。ここで、「凸状に湾曲している」とは、底壁から見た時に、第2周壁が盛り上がるように弓形に曲がっていることをいい、第2周壁が全体的に盛り上がるように弓形に曲がっている場合、第2周壁内に弓形に盛り上がるように曲がっている部分を有している場合を含む。また、底壁は取付基部の一部であってもよく、取付基部とは別に形成してもよい。
【0015】
請求項2の本発明では、上記の構造を有することにより、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁が立ち上がり、すなわち、底壁と第1周壁のなす角度が小さくなり、底壁を基準にして、第1周壁の高さが高くなる、且つそれに伴い第2周壁は凸状の湾曲の度合いが大きくなるように変形する。
その結果、中空シール部の中空内部の断面積が車体との非当接時に比較して増加するので、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0016】
請求項3の本発明は、中空シール部の第2周壁の内面には、肉薄部を有するドアウェザストリップである。請求項3の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部の第2周壁の内面には、肉薄部を有しているので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁の立ち上がりに伴い、第2周壁では肉薄部を中心に凸状の湾曲の度合いが大きくなる、すなわち、第2周壁が肉薄部を中心に中空シール部外側に変形する。その結果、中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0017】
また、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第2周壁において、常に肉薄部を中心に凸状の湾曲の度合いが大きくなるので、ドアの閉め方の相違や温度、湿度等の環境変化、さらにはドアウェザストリップの経年時においても、ドアウェザストリップと車体との当接時及び当接後のドアウェザストリップの反発力を一定に維持することができる。
【0018】
なお、中空シール部が略三角形若しく略扇形状の断面形状の場合に、第1周壁が大きく立ち上がった場合には、肉薄部を中心にした中空シール部外側に大きく変形し、肉薄部において屈曲し、略三角形若しく略扇形状が略四角形に変形する場合があるが、中空シール部の断面積は増加するので、同様な効果を奏することに変わりはない。
【0019】
請求項4の本発明は、中空シール部の第2周壁の内面には、ノッチを有するドアウェザストリップである。ここで、「ノッチ」とは、V字形、U字形等の切込みや溝のことをいう。請求項4の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部の第2周壁の内面には、ノッチを有しているので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁が立ち上がり、第2周壁はノッチを中心に中空シール部外側に屈曲し、中空シール部が、略三角形若しく略扇形状から略四角形に変形する。その結果、中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0020】
また、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第2周壁において、常にノッチを中心に屈曲するので、ドアの閉め方の相違や温度、湿度等の環境変化、さらにはドアウェザストリップの経年時においても、ドアウェザストリップと車体との当接時及び当接後の車体に対するドアウェザストリップの反発力を一定に維持することができる。
【0021】
請求項5の本発明は、中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、第1周壁と連結し、車外側に位置する第2周壁と、第2周壁と連結し、第2周壁の車外側に位置する第3周壁を備える略四角形の断面形状を有し、底壁と第1周壁のなす角度は鈍角であるドアウェザストリップである。
【0022】
請求項5の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部は、底壁と、車内側に位置する第1周壁と、第1周壁と連結し、車外側に位置する第2周壁と、第2周壁と連結し、第2周壁の車外側に位置する第3周壁を備える略四角形の断面形状を有し、底壁と第1周壁のなす角度は鈍角であるので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、第1周壁が立ち上がることにより中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0023】
請求項6の本発明は、中空シール部は、略平行四辺形の断面形状を有するドアウェザストリップである。請求項6の本発明では、ドアウェザストリップの中空シール部は、略平行四辺形の断面形状を有しているので、ドアウェザストリップと車体との当接時には、中空シール部は第1周壁が立ち上がると共に、略平行四辺形が略長方形に変形する方向に第2周壁と第3周壁が動く。
【0024】
その結果、中空シール部を形成する各壁の伸縮を抑えながら中空シール部を変形させることができ、各壁への負荷が最も少ない形で中空シール部の断面積を増加することができるので、中空シール部の内圧の減少により、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。また、中空シール部の耐久性も向上する。
【0025】
なお、底壁と第2周壁、第1周壁と第3周壁が同じ長さの場合は、ひし形になるが、ひし形は当然に平行四辺形に含まれる。また、上記の略長方形には略正方形が含まれる。
【0026】
請求項7の本発明は、中空シール部の第1周壁は、底壁に対して凹状に湾曲しているドアウェザストリップである。ここで、「凹状に湾曲している」とは、底壁から見た時に、第1周壁が底壁側にへこむように弓形に曲がっていることをいい、第1周壁が全体的に底壁側にへこむように弓形に曲がっている場合、第1周壁内に底壁側にへこむように弓形に曲がっている部分を有している場合を含む。
【0027】
また、中空シール部の第1周壁が底壁に対して凹状に湾曲している場合の、底壁と第1周壁とのなす角度とは、第1周壁と底壁との連結部と、第1周壁と第2周壁との連結部を結んだ直線と底壁とのなす角度をいう。
【0028】
請求項7の本発明では、中空シール部の第1周壁は、底壁に対して凹状に湾曲しているので、第1周壁が立ち上がる際に、凹状の湾曲の度合いが減少する方向に変形しても、底壁を基準にして第1周壁の高さは確実に高くなる方向に動く。
【0029】
その結果、中空シール部の断面積が増加し、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0030】
請求項8の本発明は、中空シール部の第1周壁は、中空シール部を形成する他の周壁に比較して厚く形成されているドアウェザストリップである。請求項8の本発明では、第1周壁は、中空シール部を形成する他の周壁に比較して厚く形成されているので、中空シール部と車体が当接するときに、第1周壁は撓みの程度が非常に小さく立ち上がり、底壁を基準にして第1周壁の高さは確実に高くなる。その結果、中空シール部の断面積を確実に増加させることができ、中空シール部の内圧が減少し、車体に対するドアウェザストリップの反発力が低減され、ドアを確実に閉めることができる。
【0031】
請求項9の本発明は、中空シール部の第1周壁と第2周壁の頂点部分には、車内側に突出する突起部を形成したドアウェザストリップである。請求項9の本発明では、第1周壁と第2周壁の頂点部分には、車内側に突出する突起部が形成されているので、中空シール部と車体が当接するときには、当接部が厚くなる。
【0032】
その結果、局所的な圧縮変形を抑制し、中空シール部の車体との接触面積を小さく保つことができ、中空シール部の面圧を高く保つことができるため、確実に車室内と車室外をシールすることができる。
【発明の効果】
【0033】
ドア閉まりにより中空シール部の断面積が増加するため、中空シール部の内圧が減少し、ドア閉まりに対する車体への中空シール部の反発力が低減されるので、軽量化されたドアに対しても、確実にドアを閉めることができ、ドア閉まり性能が向上する。
【0034】
また、エア抜きの穴の必要もないので見栄えがよい。さらに、エア抜きの穴加工など余分な加工工数が不要になり、ドアウェザストリップのコストダウンにも貢献する。
【0035】
さらに、中空シール部の第1周壁と第2周壁の頂点部分には、車内側に突出する突起部を形成し、中空シール部の車体との当接部を厚くすることで、局所的な圧縮変形を抑制することができるので、中空シール部の面圧を高く保つことができるため、確実に車室内と車室外をシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1の実施形態に係るドアウェザストリップが適用される車両の側面図である。
図2】車両のドア閉時における図1のA−A断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る車両のドア閉時における図1のA−A断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る車両のドア閉時における図1のA−A断面図である。
図5】従来のドアウェザストリップと自動車のドア及び車体との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係るドアウェザストリップ10について説明する。なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
(車両の概略構成)
図1で示される自動車は、4ドアタイプである。なお、このタイプに限定されるものではない。また、本実施形態は、自動車の左側前部ドアへの適用例であるが、他のドアであってもよい。
【0038】
自動車のドア1と車体開口部周縁との間のシールは、ドアフレーム2等の外周部全域に沿って設けられる環状の長尺体であるドアウェザストリップ10及び/又は、車体開口部周縁のフランジに取付けられる図示しないオープニングトリムウェザストリップによりなされる。なお、ドアガラス3とドア1との間のシールは、ドアフレーム2の内周のチャンネルに取付けられる図示しないガラスランによってなされる。
【0039】
(ドアウェザストリップ10とドア1及び車体側アウタパネル4)
図2に示すように、ドアウェザストリップ10は、取付基部11B、中空シール部12、リップ部13から構成されている。中空シール部12は、底壁14、車内側に位置する第1周壁15と車外側に位置する第2周壁16から構成されている。なお、ドアウェザストリップ10に関し、実線は車体側アウタパネル4との当接前、破線は車体側アウタパネル4との当接後、すなわち、ドア1が閉じたときの形状を示す。
【0040】
取付基部11Bには、2か所の中空部110Aと中空部110Bが設けられ、中空部110Aには、孔部11Cが設けられている。また、取付基部11Bの中空シール部12との反対側の面には、3か所の突状部19が設けられている。ドアウェザストリップ10は、クリップ20によりドアフレーム2のドア側インナパネル2Bに固定される。このとき、取付基部11Bの3か所の突状部19がドア側インナパネル2Bに当接する。中空部110Bは軽量化のために設けられている。
【0041】
中空シール部12は、底壁14、車内側に位置する第1周壁15と車外側に位置する第2周壁16から構成され、第2周壁16は底壁14に対して凸状に湾曲しており、中空シール部12は、略扇形の断面形状になっている。なお、第2周壁16の凸状の湾曲の度合いが小さい場合は、中空シール部12は、略三角形の断面形状になる。中空シール部12はドアウェザストリップ10の長手方向と同一方向を長手方向とする中空状で形成されている。
【0042】
第2周壁16は、その内面に肉薄部16Aを有している。底壁14と第1周壁15のなす角度αは鈍角である。なお、第2周壁16の肉薄部16Aを除き、第1周壁15と第2周壁16は同じ肉厚である。
【0043】
リップ部13は、車体側アウタパネル4に当接するリップ13A、ドアフレーム2のドア側アウタパネル2Aに当接するリップ13Bとドアフレーム2のドア側インナパネル2Bに当接するリップ13Cから構成される。リップ部13は、ドアウェザストリップ10の長手方向と同一方向を長手方向とし、中空シール部12とは異なって中実かつヒレ状で形成されている。
【0044】
本実施形態において、ドアウェザストリップ10はEPDMのソリッド材を用い、中空シール部12の第1周壁15と第2周壁16はEPDMのスポンジ材を用いた。なお、第1周壁15と第2周壁16もソリッド材を用い、第1周壁15と第2周壁16の車体側アウタパネル4側のみにEPDMのスポンジ材を用いてもよい。また、他のゴム部材でもよく、熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0045】
図2から明らかなように、ドア1を閉める場合、ドアウェザストリップ10は実線から破線へと断面形状が変化する。このとき、中空シール部12においては、第1周壁15の頂部近辺が車体側アウタパネル4に当接すると、第1周壁15が立ち上がる、すなわち、底壁14と第1周壁15のなす角度αが小さくなるように第1周壁15が動く。つまり、底壁14を基準にすれば、第1周壁15の高さが高くなる。また、それに連動して、第2周壁16において、肉薄部16Aを中心に凸状の湾曲の度合いが大きくなるように、断面形状が略四角形に変形する。
【0046】
その結果、中空シール部12の中空内部12Bの断面積は、車体側アウタパネル4との非当接時に比較して増加するので、中空内部12Bの内圧が車体側アウタパネル4との非当接時に比較して減少する。したがって、車体側アウタパネル4に対するドアウェザストリップ10の反発力が低減され、ドア1が軽量化された場合であっても、ドア1を確実に閉めることができる。
【0047】
また、エア抜きの穴の必要もないので見栄えがよい。さらに、エア抜きの穴加工など余分な加工工数が不要になり、ドアウェザストリップ10のコストダウンにも貢献する。
【0048】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るドアウェザストリップ10である。第1の実施形態との相違点は、第1に、第1周壁15に関し、第1の実施形態では直線状であったものが、本第2の実施形態では、凹状に湾曲していることである。第2に、第2周壁16に関し、第1の実施形態ではその内面に肉薄部16Aを有していたが、本第2の実施形態では、肉厚はほぼ均一であり、その内面に断面V字状のノッチ16Bを有していることである。なお、第1周壁15と第2周壁16は同じ肉厚である。
【0049】
図3から明らかなように、ドア1を閉める場合、ドアウェザストリップ10は実線から破線へと断面形状が変化する。このとき、中空シール部12においては、第1周壁15の頂部近辺が車体側アウタパネル4に当接すると、第1周壁15は、立ち上がる、すなわち、底壁14と第1周壁15のなす角度αが小さくなるように動く。また、第1周壁15の凹状の湾曲の度合いが減少する方向にも変形する。つまり、底壁14を基準にすれば、第1周壁15の高さが高くなる。
【0050】
一方、第1周壁15の動きに連動して、第2周壁16においても、ノッチ16Bを中心に中空シール部12外側に屈曲し、中空シール部12が、略三角形若しく略扇形から略四角形に変形する。
【0051】
その結果、中空シール部12の中空内部12Bの断面積は、車体側アウタパネル4との非当接時に比較して増加するので、中空内部12Bの内圧が車体側アウタパネル4との非当接時に比較して減少する。したがって、車体側アウタパネル4に対するドアウェザストリップ10の反発力が低減され、ドア1が軽量化された場合であっても、ドア1を確実に閉めることができる。
【0052】
なお、断面V字状のノッチ16BのV字の開きの程度は、ドア1が完全に閉じたときに、V字がちょうど閉じる若しくは依然として若干の空間を有していることがよい。ノッチ16BのV字の開きが少ない場合は、ドア1が完全に閉じたときに、ノッチ16B部分に過大な負荷がかかるからである。また、これは、ノッチがV字状以外の形状の場合も同様である。
【0053】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るドアウェザストリップ10である。第3の実施形態では、中空シール部12は、底壁14、車内側に位置する第1周壁15、第1周壁と連結し、車外側に位置する第2周壁16と第2周壁と連結し、第2周壁の車外側に位置する第3周壁17で構成されている。第1周壁15、第2周壁16と第3周壁17は直線形状であり、断面形状は略平行四辺形になっている。
【0054】
そして、第1周壁15は、第2周壁16と第3周壁17に比較して肉厚になっている。なお、第1周壁15の肉厚は、底壁14との連結部分から第2周壁16との連結部分に至る壁内において均一である。また、第2周壁16と第3周壁17の肉厚は同じであり、且つ壁内の肉厚は均一である。
【0055】
さらに、中空シール部12の第1周壁15と第2周壁16の連結部分の頂点部分には、車内側に突出する突起部18が形成されている。なお、リップ部13については、第1の実施形態と同じである。
【0056】
図4から明らかなように、ドア1を閉める場合、ドアウェザストリップ10は実線から破線へと断面形状が変化する。このとき、中空シール部12においては、第1周壁15と第2周壁16の頂点部分に形成された突起部18が車体側アウタパネル4に当接し、第1周壁15が立ち上がる、すなわち、底壁14と第1周壁15のなす角度αが小さくなるように第1周壁15が動く。なお、第1周壁15は他の周壁に比較して肉厚になっているので、撓む程度は非常に小さい。
【0057】
このとき、突起部18により中空シール部12の車体側アウタパネル4との当接部が厚くなるので、局所的な圧縮変形を抑制することができ、中空シール部12の面圧を高く保つことができるため、確実に車室内と車室外をシールすることができる。
【0058】
また、第1周壁15の動きに連動し、第2周壁16と第3周壁17も動くが、中空シール部12は略平行四辺形をしているので、中空シール部12は略長方形に向けて変形する。その際、中空シール部12を形成する各壁の伸縮を抑えながら中空シール部12を変形させることができるので、各壁への負荷が最も少ない形で中空シール部12を変形させることができ、中空シール部12の耐久性向上にもつながる。
【0059】
その結果、中空シール部12の中空内部12Bの断面積は、車体側アウタパネル4との非当接時に比較して増加するので、中空シール部12の中空内部12Bの内圧が車体側アウタパネル4との非当接時に比較して減少する。したがって、車体側アウタパネル4に対するドアウェザストリップ10の反発力が低減され、ドア1が軽量化された場合であっても、ドア1を確実に閉めることができる。
【0060】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、取付基部11Bと中空シール部12の底壁14が分離され、取付基部11Bに中空部110Aと中空部110Bを設けたが、中空部110Aと中空部110Bを省き、取付基部11Bと中空シール部12の底壁14を一体化してもよい。この場合は、中空シール部12の底壁14に孔部11Cを設け、中空内部12Bからクリップ20によりドアフレーム2のドア側インナパネル2Bに固定されることになる。
【0062】
また、例えば、中空シール部12を構成する第1周壁、第2周壁、第3周壁の厚さについては、第1の実施形態及び第2の実施形態では、第1周壁、第2周壁で同じ(第1の実施形態の肉薄部16Aを除く)であったが、第3の実施形態と同じく第1周壁を厚くしてもよい。また、第3の実施形態においては、第1周壁を厚く形成したが、第1周壁を第2周壁、第3周壁と同じ厚さにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ドア
2 ドアフレーム
2A ドア側アウタパネル
2B ドア側インナパネル
3 ドアガラス
4 車体側アウタパネル
10 ドアウェザストリップ
11A 基底部
11B 取付基部
11C 孔部
12 中空シール部
12B 中空内部
12H エア抜き部
13 リップ部
14 底壁
15 第1周壁
16 第2周壁
16A 肉薄部
16B ノッチ部
17 第3周壁
18 突起部
19 突状部
図1
図2
図3
図4
図5