特許第6929056号(P6929056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒ飲料株式会社の特許一覧

特許6929056飲料、容器詰め飲料、飲料の製造方法および飲料の保存安定性の向上方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929056
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】飲料、容器詰め飲料、飲料の製造方法および飲料の保存安定性の向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20210823BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20210823BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20210823BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20210823BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/00 K
   A23L2/00 N
   A23L2/00 T
   A23L2/38 A
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-252515(P2016-252515)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-102224(P2018-102224A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山口 航
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−515440(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101347155(CN,A)
【文献】 特開2014−113113(JP,A)
【文献】 J. Japan Soc. Hort. Sci.,1989年,Vol.58, No.3,p.587-594,特に、表1
【文献】 '透明なのに「カルピス」の乳酸菌が入っている新しい健康水『アサヒ おいしいプラス 「カルピス」の乳酸菌』’,07-06-2016 uploaded, [Retrieved on 20-05-2020], Retrieved from the Internet:<URL: https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2016/pick_0607_2.html>
【文献】 '「サントリー 南アルプスの天然&ヨーグリーナ」新発売’,26-02-2015 uploaded, [Retrieved on 20-05-2020], Retrieved from the Internet:<URL: https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/d/sbf0246.html#>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23C
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含み、
成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)が、0.25以上であって、
飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度が75%以下であり、pHが3.0〜4.5である、ヨーグルト様の香味を有する飲料。
【請求項2】
成分(A)の含有量(質量%)が、0.1質量%以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
成分(B)の含有量(質量%)が、0.037質量%以上である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料が炭酸飲料である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
波長650nmにおける吸光度が0.06以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
ヨーグルトフレーバーを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の飲料が容器に充填されている容器詰め飲料。
【請求項8】
前記容器が、透明である、請求項に記載の容器詰め飲料。
【請求項9】
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、pHが3.0〜4.5の飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する前記工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製する、ヨーグルト様の香味を有する飲料の製造方法。
【請求項10】
前記飲料を調製する前記工程の後、さらに前記飲料中に炭酸ガスを圧入する工程を含む、請求項に記載の飲料の製造方法。
【請求項11】
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、pHが3.0〜4.5の飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する前記工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製する、ヨーグルト様の香味を有する飲料の保存安定性の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、容器詰め飲料、容器詰め飲料の流通方法、飲料の製造方法および飲料の保存安定性の向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性の向上、飲料の多様化などに伴い、ニアウォーターなどと呼ばれる透明飲料の開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、果実フレーバーとバニリンなどの香気成分を有する透明飲料が開示されている。特許文献1によれば、果実フレーバーの劣化による異味や異臭を感じさせにくくする観点から、透明飲料には、バニリンなどの香気成分が特定量含まれている。具体的には、果糖ブドウ糖、クエン酸、乳酸、レモン香料、バニリンなどを含む透明飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−127818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、ヨーグルト様の香味を有する飲料における乳性感を得る点で充分ではなかった。また、本発明者がさらに検討を進めたところ、乳性感の劣化の観点からも改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記のような課題について鋭意検討を行った結果、クエン酸に特定の有機酸を特定の比率で組み合わせ、かつ飲料全体の酸度に対するクエン酸由来の酸度を調整することが課題を解決する指針として有効であるといった知見を初めて見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含み、
成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)が、0.25以上であって、
飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度が75%以下であり、pHが3.0〜4.5である、ヨーグルト様の香味を有する飲料が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記飲料が容器に充填されている容器詰め飲料が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、pHが3.0〜4.5の飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する前記工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製する、ヨーグルト様の香味を有する飲料の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、pHが3.0〜4.5の飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する前記工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製する、ヨーグルト様の香味を有する飲料の保存安定性の向上方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
ヨーグルト様の香味を有する飲料における乳性感を向上し、適度な乳性感を有しつつ、乳性感の劣化が抑制された飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<飲料>
本発明の飲料は、(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含み、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)が、0.25以上であって、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度が75%以下であり、ヨーグルト様の香味を有するものである。
【0013】
ヨーグルト様の香味を有する飲料とは、ヨーグルトの様な乳性感やシトラス感を感じさせる飲料をいう。従来、このような風味を有する飲料を実現するためには、ヨーグルトのように多量の乳性分を含ませることや保存安定性を向上させるような原料を含ませることが困難であるといった課題を有する。本発明の飲料は、このような課題を解決した上で、ヨーグルト様の風味を有する飲料を実現させるものである。
【0014】
成分(A)のクエン酸とは、カルボキシル基を3個有する弱酸である。一般に、飲食品に爽やかな酸味を付与できるものとして広く知られているものである。
【0015】
成分(A)の含有量は、適度な酸味に伴う乳性感、及び適度なシトラス感を得る観点から、飲料全体に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.025質量%以上であることがさらに好ましい。一方、成分(A)の含有量は、乳性感を得つつ、さらに乳性感及びシトラス感の劣化を抑制する観点から、飲料全体に対して、0.10質量%以下であることが好ましく、0.095質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
成分(B)は、乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なかでも、より乳性感を得る観点からは、乳酸、および酒石酸であることが好ましく、乳酸であることがより好ましい。また、乳性感を得つつ、さらに乳性感及びシトラス感の劣化を抑制する観点から、乳酸、およびリンゴ酸であることが好ましく、リンゴ酸であることがより好ましい。
なお、酒石酸は、DL−酒石酸、L−酒石酸のいずれも含むものである。
【0017】
成分(B)の含有量は、乳性感を得つつ、さらに乳性感及びシトラス感の劣化を抑制する観点から、飲料全体に対して、0.02質量%以上であることが好ましく、0.037質量%以上であることがより好ましく、0.04質量%以上であることがさらに好ましく、0.045質量%以上であることが特に好ましい。一方、成分(B)の含有量は、適度な酸味に伴う乳性感、及び適度なシトラス感を得る観点から、飲料全体に対して、0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明の飲料において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)が、0.25以上であり、0.3以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましい。下限値以上とすることで、乳性感を得つつ、さらに乳性感及びシトラス感の劣化を抑制することができ、上限値以下とすることで、適度なシトラス感を得つつ、適度な酸味に伴う乳性感とシトラス感とのバランスを良好にできる。
【0019】
本発明の飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度は75%以下であり、好ましくは72%以下である。これにより、乳性感の劣化を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明のヨーグルト様の香味を有する飲料によれば、上記(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下に調製するといった構成により、乳性感を得つつ、乳化感の劣化を効果的に抑制できる。また、乳性感とはヨーグルト様香味の一つであり、牛乳や乳製品等に特有のコクを感じさせる香味であって、乳感とも呼ばれる。乳性感は、飲料の製造後時間経過と共に失われたり、変化してしまうものである。本発明の飲料は、製造後、時間が経過しても、かかる乳性感を維持できるものである。
【0021】
本発明の飲料のpHは、pH2.5〜5.5であることが好ましく、pH3.0〜4.5であることがより好ましい。下限値以上とすることにより、酸味による刺激を軽減でき、上限値以下とすることにより、適度な酸味を付与しつつ、乳性感を得ることができる。
【0022】
本発明の飲料のブリックス値は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、2.5質量%以上8質量%以下である。
なお、「ブリックス値」は、例えば、糖用屈折計示度「RX−5000α」株式会社アタゴ製を用い、液温20℃で測定することができる。
【0023】
本発明の飲料の酸度は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.05%以上0.4%以下であり、より好ましくは、0.1%以上0.3%以下、特に好ましくは0.1%以上0.2%である。
なお、「酸度」とは、本発明の飲料に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(%)として表した数値を指す。
【0024】
本発明の飲料は、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、ミネラル水飲料、各種の機能性飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター、乳酸飲料などとしてもよい。ヨーグルト様の乳性感を効果的に付与できる観点から、ニアウォーターであることが好ましい。
【0025】
本発明の飲料は、炭酸入りの飲料とすることが好ましい。炭酸飲料とすることにより、乳性感の保存安定性をより向上させることができる。
炭酸ガスの圧力は、嗜好性にあわせて適宜調整できるが、1〜5ガスボリュームであることが好ましく、1.5〜3.5ガスボリュームであることがより好ましい。なお、炭酸ガス圧力(ガスボリューム)は、標準状態(1気圧、0℃)において、飲料全体の体積に対して、飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0026】
また本発明の飲料は、透明であることが好ましい。透明とは、白濁や果汁による混濁といった濁りが低減され、外観が透き通っていることをいう。具体的には、本発明の飲料は、波長650nmにおける吸光度が0.06以下であることが好ましい。なお、止渇飲料の1種として市場に流通している従来のスポーツドリンクの波長650nmにおける吸光度は、通常、0.2程度である。
従来の透明飲料では、使用できる原料が限定されるため、乳性感の付与及び乳性感の劣化を抑制することが困難であった。これに対し、本発明の飲料の外観を透明とすることにより、見た目のすっきり感を得つつも、ヨーグルト様の香味が得られるという従来にはない新たな飲料が実現できる。
【0027】
波長650nmにおける吸光度は、例えば、紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製))を用いて測定することができる。
【0028】
また、本発明の飲料の色は、無色透明である場合に限られず、有色であってもよい。
【0029】
本発明の飲料は、上記成分(A)、(B)にくわえ、ヨーグルト様の香味を損なわない範囲で、通常の飲料に用いられる甘味料、酸味料、香料(フレーバー)、果汁、酸化防止剤、塩類などのミネラル、香料、苦味料、栄養強化剤、pH調整剤などを含んでもよい。
また、本発明の飲料は、乳性分を含まないものとしてもよく、また、透明な状態を維持できる範囲内において、乳性分を含んでもよい。
【0030】
甘味料は、甘みを付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、砂糖(ショ糖やグラニュー糖を含む)、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
これら甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0031】
酸味料は、酸味を付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
酸味料としては、例えば、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、フマル酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
香料は、嗜好性を高めるために用いられる。
香料としては、天然香料または合成香料であって、例えば、ヨーグルトフレーバー、フルーツフレーバー、植物フレーバー、またはこれらの混合物である。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」としては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚およびライム等の柑橘類、苺、桃、葡萄、林檎、パイナップル、マンゴー、メロン、およびバナナ等が挙げられる。
これら香料のうち、良好なヨーグルト様の香味を得る観点から、ヨーグルトフレーバー、および柑橘類のフレーバー、なかでもレモン系のフレーバーが好ましく、ヨーグルトフレーバーがより好ましい。
なお、ヨーグルトフレーバーとしては、例えば、最新香料辞典(2010年5月10日)P319に記載の発酵乳のフレーバーが挙げられる。
【0033】
<容器詰め飲料>
本発明の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰飲料としてもよい。容器としては、例えば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。本発明の飲料を外観から観察し、透明性、色などを確認できる観点から、透明な容器であることが好ましく、具体的には透明性に優れたペットボトルが挙げられる。また、耐圧性、耐久性、取扱性、流通性、携帯性等の観点から、ペットボトルであることが好ましい。
【0034】
加熱殺菌の手法は、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、95℃で瞬間殺菌してもよい。
【0035】
<飲料の製造方法>
本発明のヨーグルト様の香味を有する飲料の製造方法は、(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、飲料を調製する工程を含み、前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製するものである。
本発明のヨーグルト様の香味を有する飲料の製造方法によれば、(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下に調製することにより、乳性感を得つつ、乳化感の劣化を効果的に抑制できる。
また、上記混合する方法は、公知の方法を用いることができ、混合の順序、温度、時間などは特に限定されない。
また、飲料を調製する工程の後、さらに飲料中に炭酸ガスを圧入する工程を含んでもよい。これにより簡便な方法で、乳化感の劣化をより効果的に抑制できる。なお、炭酸ガスの圧入は、公知の方法を用いることができる。
【0036】
<飲料の保存安定性の向上方法>
本発明の飲料の保存安定性の向上方法は、(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、飲料を調製する工程を含み、前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製するものである。
本発明の飲料の保存安定性の向上方法によれば、(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下に調製することにより、乳化感の劣化を効果的に抑制できる。
また、飲料を調製する工程の後、さらに飲料中に炭酸ガスを圧入する工程を含んでもよい。これにより簡便な方法で、乳化感の劣化をより効果的に抑制できる。なお、炭酸ガスの圧入は、公知の方法を用いることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含み、
成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)が、0.25以上であって、
飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度が75%以下である、ヨーグルト様の香味を有する飲料。
<2>
成分(A)の含有量(質量%)が、0.1質量%以下である、<1>に記載の飲料。
<3>
成分(B)の含有量(質量%)が、0.037質量%以上である、<1>または<2>に記載の飲料。
<4>
前記飲料が炭酸飲料である、<1>乃至<3>のいずれか一つに記載の飲料。
<5>
波長650nmにおける吸光度が0.06以下である、<1>乃至<4>のいずれか一つに記載の飲料。
<6>
<1>乃至<5>のいずれか一つに記載の飲料が容器に充填されている容器詰め飲料。
<7>
前記容器が、透明である、<6>に記載の容器詰め飲料。
<8>
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製する、ヨーグルト様の香味を有する飲料の製造方法。
<9>
前記飲料を調製する工程の後、さらに前記飲料中に炭酸ガスを圧入する工程を含む、<8>に記載の飲料の製造方法。
<10>
(A)クエン酸と、(B)乳酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量(質量%)に対する成分(B)の含有量(質量%)(B/A)を0.25以上、飲料全体の酸度に対する(A)クエン酸由来の酸度を75%以下となるように調製する、ヨーグルト様の香味を有する飲料の保存安定性の向上方法。
<11>
前記飲料を調製する工程の後、さらに前記飲料中に炭酸ガスを圧入する工程を含む、<10>に記載の飲料の保存安定性の向上方法。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<実施例1〜6および比較例1>
表1に示す組成(g/L)、pH、酸度(%)となるように、公知の方法で、飲料を作製した。得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、20℃に冷却後、炭酸ガスを封入し、容器詰め飲料を得た。なお、酸度(%)は客観的に評価できるよう、同じ値となるように調製し、香料はいずれも同量とした。
次に、得られた容器詰め飲料について以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0040】
<実施例7および比較例2>
表2に示す組成(g/L)となるように、公知の方法で、飲料を作製した。得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、そのまま容器に充填し、容器詰め飲料を得た。なお、酸度(%)は客観的に評価できるよう、同じ値となるように調製し、香料はいずれも同量とした。
次に、得られた容器詰め飲料について以下の評価を行い、結果を表2に示した。
【0041】
<評価>
・ブリックス値:糖用屈折計示度「RX−5000α」株式会社アタゴ製を用いてブリックス値を測定した。飲料の液温は20℃とした。
【0042】
・波長650nmにおける吸光度:紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製))を用いて、各容器詰め飲料の波長650nmにおける吸光度を測定した。なお、吸光度測定は、20℃の温度条件下、石英セルを用いて実施した。
【0043】
・官能評価−1:得られた容器詰め飲料について、飲料を4℃にして摂取したときの「乳性感」、「シトラス感」について、熟練した3人のパネリストにより評価した。分量評定法を用い、比較例1を評点4とし、評点1〜7の7段階で評価した。なお、数値が大きいほど、嗜好性が高いことを表す。評点の平均値をとり、結果を表1に示した。
【0044】
・官能評価−2(保存安定性):得られた容器詰め飲料を、「4℃」、「60℃」の環境下にそれぞれおき、2日間保存した。その後、飲料を4℃にして摂取したときの「乳性感」、「シトラス感」について、熟練した3人のパネリストにより評価した。分量評定法を用い、「4℃」の環境下で保存したものを評点7とし、「60℃」の環境下で保存したものについて、評点1〜7の7段階で評価した。なお、数値が大きいほど、嗜好性が高いことを表す。評点の平均値をとり、結果を表1,2に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】