(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
<歯科用プライマー>
本実施形態の歯科用プライマーは、酸基を有する(メタ)アクリレートと、バナジウム化合物及び/又は銅化合物と、重合禁止剤と、水を含む。
【0012】
本実施形態の歯科用プライマーは、有機溶媒、酸基を有さない(メタ)アクリレート、フィラー、還元剤等をさらに含んでいてもよい。
【0013】
以下、歯科用プライマーを構成する成分について説明する。
【0014】
<酸基を有する(メタ)アクリレート>
本願明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各種モノマー、オリゴマーあるいはプレポリマーを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する。また、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基を意味する。
【0015】
本実施形態の歯科用プライマーは、酸基を有する(メタ)アクリレートを含むため、歯科用セメントの接着性を向上させることができる。
【0016】
酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、リン酸基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0017】
酸基を有する(メタ)アクリレートは、複数個の酸基を有していてもよい。
【0018】
リン酸基又はチオリン酸基は、カルボキシル基よりも強い酸性を示す。このため、歯科用プライマーは、リン酸基又はチオリン酸基を有する(メタ)アクリレートを含むと、歯面のスメアー層の溶解性や歯質脱灰性を向上させることができ、特に、歯科用セメントのエナメル質に対する接着性を向上させることができる。
【0019】
リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。中でも、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性及び(メタ)アクリレート自体の安定性の点から、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが特に好ましい。
【0020】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。中でも、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性の点から、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0021】
チオリン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデシルジハイドロジェンチオホスフェート、14−(メタ)アクリロイルオキシテトラデシルジハイドロジェンチオホスフェート、15−(メタ)アクリロイルオキシペンタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、17−(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、18−(メタ)アクリロイルオキシオクタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、19−(メタ)アクリロイルオキシノナデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられる。中でも、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性及び(メタ)アクリレート自体の安定性の点から、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェートが特に好ましい。
【0022】
歯科用プライマー中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、15〜60質量%であり、15〜30質量%であることが好ましい。歯科用プライマー中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量が15質量%未満であると、歯科用プライマーの保存安定性が低下し、60質量%を超えると、歯科用プライマーの均一性が低下する。
【0023】
<バナジウム化合物及び銅化合物>
バナジウム化合物及び銅化合物は、還元剤又は光重合促進剤として機能する。
【0024】
バナジウム化合物としては、特に限定されないが、バナジウム(III)トリアセチルアセトネート(V(acac)
3)、バナジルアセチルアセトネート(VO(acac)
2)、バナジルステアレート、ナフテン酸バナジウム(III)、バナジウム(III)ベンゾイルアセトネート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、バナジルアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0025】
銅化合物としては、特に限定されないが、アセチルアセトン銅(II)、4−シクロヘキシル酪酸銅(II)、酢酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、グルコン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅(II)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、アクリル酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、グルコン酸銅(II)が特に好ましい。
【0026】
歯科用プライマー中のバナジウム化合物及び銅化合物の総含有量は、0.25〜0.45質量%であり、0.3〜0.4質量%であることが好ましい。歯科用プライマー中のバナジウム化合物及び銅化合物の総含有量が0.25質量%未満であると、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性が低下し、0.45質量%を超えると、歯科用プライマーの保存安定性が低下する。
【0027】
なお、本実施形態の歯科用プライマーは、還元剤として機能するバナジウム化合物及び/又は銅化合物を含むため、化学重合開始剤として機能する酸化剤を含まないことが好ましい。これにより、歯科用プライマーの保存安定性が向上する。
【0028】
<重合禁止剤>
重合禁止剤としては、特に限定されないが、ジブチルヒドロキシトルエン、2,6−t−ブチル−2,4−キシレノール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0029】
歯科用プライマー中の重合禁止剤の含有量は、0.8〜3質量%であり、1〜2質量%であることが好ましい。歯科用プライマー中の重合禁止剤の含有量が0.8質量%未満であると、歯科用プライマーの保存安定性が低下し、3質量%を超えると、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性が低下する。
【0030】
<水>
本実施形態の歯科用プライマーは、水を含むため、酸基を有する(メタ)アクリレートの酸基が解離し、セルフエッチングプライマーとして機能し、その結果、歯面のスメアー層の溶解性、歯質脱灰性及び歯質への浸透性が向上する。このため、リン酸エッチング液等により、歯面を前処理しなくても、歯科用プライマーを使用することができる。また、予めリン酸エッチング液等により、歯面を前処理すると、歯質への浸透性が向上し、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性が向上する。
【0031】
歯科用プライマー中の水の含有量は、10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の水の含有量が10質量%以上であると、歯面のスメアー層の溶解性、歯質脱灰性及び歯質への浸透性が向上し、50質量%以下であると、歯科用プライマーの均一性が向上する。
【0032】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、エタノール、アセトンが特に好ましい。
【0033】
歯科用プライマー中の有機溶媒の含有量は、5〜70質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の有機溶媒の含有量が10質量%以上であることにより、歯科用プライマーの乾燥性が向上し、40質量%以下であることにより、歯科用プライマーの均一性が向上する。
【0034】
<酸基を有さない(メタ)アクリレート>
酸基を有さない(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン、N,N'−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンが特に好ましい。
【0035】
歯科用プライマー中の酸基を有さない(メタ)アクリレートの含有量は、0.5〜45質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の酸基を有さない(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性が向上し、45質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーの保存安定性が向上する。
【0036】
<フィラー>
フィラーは、有機フィラー及び無機フィラーのいずれであってもよいが、無機フィラーであることが好ましい。
【0037】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、シリカ粉末、ヒュームドシリカ、アルミナ粉末、ガラス粉末(例えば、バリウムガラス粉末、フルオロアルミノシリケートガラス粉末)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
無機フィラーは、必要に応じて、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0039】
歯科用プライマー中のフィラーの含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中のフィラーの含有量が0.1質量%以上20質量%以下であることにより、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性が向上する。
【0040】
<還元剤>
還元剤としては、特に限定されないが、アミン化合物、スルフィン酸類、チオ尿素類、システイン類、アスコルビン酸類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0041】
アミン化合物としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、トリエチルアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物、N−フェニルグリシン等が挙げられる。
【0042】
スルフィン酸類としては、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホニルフルオライド、o−トルエンスルホニルイソシアネート、p−アセトアミドベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
チオ尿素類としては、チオ尿素、エチレンチオ尿素、N−メチルチオ尿素、N−エチルチオ尿素、N−プロピルチオ尿素、N−ブチルチオ尿素、N−ラウリルチオ尿素、N−フェニルチオ尿素、N−シクロヘキシルチオ尿素、N,N−ジメチルチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、N,N−ジプロピルチオ尿素、N,N−ジ−ブチルチオ尿素、N,N−ジラウリルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N−アセチルチオ尿素、N−ベンゾイルチオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、1−(2−テトラヒドロフルフリル)−2−チオ尿素等が挙げられる。中でも、N−ベンゾイルチオ尿素が特に好ましい。
【0044】
システイン類としては、システイン及びシステインの誘導体が挙げられる。
【0045】
システインの誘導体としては、システインメチル、システインエチル、N−メチルシステイン、N−エチルシステイン、N−アセチルシステイン、N,N−ジメチルシステイン、N,N−ジエチルシステイン、N,N−ジアセチルシステイン、グルタチオン等が挙げられる。
【0046】
アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0047】
歯科用プライマー中の還元剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の還元剤の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であることにより、歯科用プライマー併用時の歯科用セメントの接着性が向上する。
【0048】
<歯科用補綴物接着用キット>
本実施形態の歯科用プライマーは、例えば、酸化剤を含み、必要に応じて、光重合開始剤をさらに含む歯科用セメントと組み合わせて使用することにより、歯科用補綴物を歯面に接着させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0049】
なお、歯科用セメントは、酸基を有する(メタ)アクリレートを含むセルフアドヒーシブ型レジンセメントであってもよいし、酸基を有する(メタ)アクリレートを含まないプライマー併用型レジンセメントであってもよい。
【0050】
歯科用補綴物を構成する材料としては、コンポジットレジン等のレジン、貴金属を含む合金、ジルコニア、アルミナ等のセラミックス等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1〜10、比較例1〜7>
表1に示す配合[質量%]で、有機溶媒、水、重合禁止剤、酸基を有するメタクリレート、酸基を有さないメタクリレート、バナジウム化合物、銅化合物、還元剤、フィラーを混合することにより、プライマーを作製した。
【0053】
なお、表1における略称の意味は、以下の通りである。
【0054】
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
IA:2,6−t−ブチル−2,4−キシレノール
MDTP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート
4−MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
GDMA:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタアクリロイルオキシプロパン
VAA:バナジルアセチルアセトネート
Cu(Glu)
2:グルコン酸銅(II)
NBTU:N−ベンゾイルチオ尿素
アルミナ粉末:アエロキサイド(登録商標)AluC(日本アエロジル社製)
シリカ粉末:アエロジル(登録商標)R812(日本アエロジル社製)
次に、プライマーの保存安定性及びプライマー併用時のレジンセメントの象牙質に対する接着性を評価した。
【0055】
<保存安定性>
高密度ポリエチレン製の容器にプライマーを入れて密封し、60℃の環境下で2週間放置した後、プライマーの状態を目視により確認し、プライマーの保存安定性を評価した。なお、保存安定性の判定基準は、以下の通りである。
【0056】
○:プライマーのゲル化及び変色の何れも確認されなかった場合
×:プライマーのゲル化又は変色が確認された場合
<プライマー併用時のレジンセメントの象牙質に対する接着性>
直径10mmのステンレス鋼製のロッドを#120耐水研磨紙で研磨した後、サンドブラスト処理し、引張試験用治具とした。
【0057】
牛歯の象牙質を#320耐水研磨紙で研磨し、平坦にした研磨面に、直径2.5mmの穴が開いている厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレン製のシールを貼り付け、被接着面の面積を規定した。
【0058】
牛歯の象牙質の被接着面にプライマーを塗布し、10秒間放置した後、エアーブローにより乾燥させた。
【0059】
セルフアドヒーシブ型レジンセメントとしての、ジーセムセラスマート(ジーシー社製)の練和物をロッドに適量塗布した後、牛歯の象牙質の被接着面に圧接した。次に、余剰のセメントを探針で除去し、37℃、95%RHの環境下で1時間放置した後、37℃の蒸留水中に23時間浸漬して、試験体とした。
【0060】
精密万能試験機オートグラフAG−I(島津製作所社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で、5個の試験体の引張試験を実施した後、引張接着強さの平均値を求め、プライマー併用時のレジンセメントの象牙質に対する接着性を評価した。なお、プライマー併用時のレジンセメントの象牙質に対する接着性の判定基準は、以下の通りである。
【0061】
◎:引張接着強さの平均値が15MPa以上である場合
○:引張接着強さの平均値が10MPa以上15MPa未満である場合
△:引張接着強さの平均値が6MPa以上10MPa未満である場合
×:引張接着強さの平均値が6MPa未満である場合
表1に、プライマーの保存安定性及びプライマー併用時のレジンセメントの象牙質に対する接着性の評価結果を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から、実施例1〜10のプライマーは、保存安定性が高いことがわかる。また、実施例1〜10のプライマーを併用すると、レジンセメントの象牙質に対する接着性が高くなる。
【0064】
これに対して、比較例1、6、7のプライマーは、酸基を有するメタクリレートの含有量が5〜11.1質量%であるため、保存安定性が低い。
【0065】
比較例2のプライマーは、バナジウム化合物の含有量が0.5質量%であるため、保存安定性が低い。
【0066】
比較例3のプライマーは、重合禁止剤の含有量が0.5質量%であるため、保存安定性が低い。
【0067】
比較例4のプライマーは、重合禁止剤の含有量が5質量%である。このため、比較例4のプライマーを併用すると、レジンセメントの象牙質に対する接着性が低くなる。
【0068】
比較例5のプライマーは、バナジウム化合物の含有量が0.15質量%である。このため、比較例5のプライマーを併用すると、レジンセメントの象牙質に対する接着性が低くなる。