(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929100
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】点呼システム、サーバ装置、および点呼プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20210823BHJP
G06Q 50/22 20180101ALI20210823BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
G06Q50/22
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-74120(P2017-74120)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-180609(P2018-180609A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】森田 久子
【審査官】
安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−058295(JP,A)
【文献】
特開2000−113347(JP,A)
【文献】
特開2009−238199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 −99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者に対する管理者による点呼業務を支援する点呼システムであって、
前記作業者が保有する作業者端末と、
前記管理者が使用する管理者端末と、
前記作業者端末および前記管理者端末と通信を行うサーバ装置と、を有し、
前記サーバ装置は、
前記作業者端末から、前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の識別情報と関連付けて作業者状態記録部に記録するバイタルデータ取得部と、
前記作業者端末から、前記作業者の発した音声を含む音声データを取得して、前記音声データについて音声病態分析エンジンにより行われた分析結果を取得して前記作業者状態記録部に記録する音声データ取得部と、
前記作業者端末もしくは前記管理者端末から前記作業者が点呼場所に所在するか否かの情報を取得して前記作業者状態記録部に記録し、前記作業者状態記録部に記録された前記作業者に係る情報を前記管理者端末に提示し、前記管理者端末から前記管理者によって入力された前記作業者に係る作業の可否の情報を受け付けて点呼履歴記録部に記録する点呼処理部と、を有する、点呼システム。
【請求項2】
請求項1に記載の点呼システムにおいて、
前記サーバ装置は、
前記バイタルデータ取得部と、前記音声データ取得部と、前記点呼処理部と、を備える第1サーバと、
前記音声病態分析エンジンを備え、前記第1サーバと通信を行う第2サーバと、を備え、
前記第2サーバは、前記音声病態分析エンジンにより行われた前記分析結果を前記第1サーバに送信する、点呼システム。
【請求項3】
請求項1に記載の点呼システムにおいて、
前記作業者端末は携帯型の端末である、
点呼システム。
【請求項4】
請求項1に記載の点呼システムにおいて、
前記サーバ装置の前記音声データ取得部は、前記音声データに前記作業者以外の者が発した音声が含まれている場合に、前記作業者に係る音声認識情報に基づいて前記作業者の発した音声の部分のみを抽出して前記音声データとする、点呼システム。
【請求項5】
請求項1に記載の点呼システムにおいて、
前記サーバ装置の前記音声データ取得部は、前記音声データに前記作業者以外の者が発した音声が含まれている場合に、前記作業者以外の者に係る音声認識情報に基づいて前記作業者以外の者が発した音声の部分を削除して前記音声データとする、点呼システム。
【請求項6】
作業者が保有する作業者端末および管理者が使用する管理者端末と通信を行い、前記作業者に対する前記管理者による点呼業務を支援するサーバ装置であって、
前記作業者端末から前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の識別情報と関連付けて作業者状態記録部に記録するバイタルデータ取得部と、
前記作業者端末から、前記作業者の発した音声を含む音声データを取得して、前記音声データについて音声病態分析エンジンにより行われた分析結果を取得して前記作業者状態記録部に記録する音声データ取得部と、
前記作業者端末もしくは前記管理者端末から前記作業者が点呼場所に所在するか否かの情報を取得して前記作業者状態記録部に記録し、前記作業者状態記録部に記録された前記作業者に係る情報を前記管理者端末に提示し、前記管理者端末から前記管理者によって入力された前記作業者に係る作業の可否の情報を受け付けて点呼履歴記録部に記録する点呼処理部と、
を有する、サーバ装置。
【請求項7】
作業者が保有する作業者端末および管理者が使用する管理者端末と通信を行うサーバ装置に、前記作業者に対する前記管理者による点呼業務を支援する点呼システムとして機能するよう、前記サーバ装置に処理を実行させる点呼プログラムであって、
前記作業者端末から、前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の識別情報と関連付けて作業者状態記録部に記録する処理と、
前記作業者端末から、前記作業者の発した音声を含む音声データを取得して、前記音声データについて音声病態分析エンジンにより行われた分析結果を取得して前記作業者状態記録部に記録する処理と、
前記作業者端末もしくは管理者端末から前記作業者が点呼場所に所在するか否かの情報を取得して前記作業者状態記録部に記録する処理と、
前記作業者状態記録部に記録された前記作業者に係る情報を前記管理者端末に提示する処理と、
前記管理者端末から前記管理者によって入力された前記作業者に係る作業の可否の情報を受け付けて点呼履歴記録部に記録する処理と、を前記サーバ装置に実行させるための、点呼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点呼の実施技術に関し、特に、安全が必須である作業を実施する者に係る事前・事後の点呼を行う点呼システムおよび点呼プログラムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年、バスやタクシー、トラック等の運輸業においては、車両を運転する乗務員の健康状態に起因する事故等が多く発生しており、乗務員に対するマネジメントの一つとして、運行業務の前後に行われる点呼の重要性が増している。この点呼業務は、単にその場に所在することの確認に留まらず、乗務員の健康状態(すなわち、病気の有無や体調に加えて飲酒や薬物使用の有無等、正常な運転に対する支障の有無)の確認も行われる。一般的に、点呼業務は、点呼実施者である管理者等と、被点呼者である各乗務員との対面によって行われる。
【0003】
これに対し、点呼業務をシステム化し、例えば、映像を介した遠隔での点呼を可能としたり、乗務員の体温や血圧、血糖値等、管理者が直接知覚・認識することができない、もしくは困難なバイタルデータを取得して参照可能としたりすることが検討されている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、各乗務員が保有するタブレット端末により、乗務前に測定された体温や血圧等の健康状態に係る測定値をICカードリーダを介して取得してデータセンターに送信し、保存するとともに、運行管理者がこれらの測定値を参照して客観的に乗務の可否を判断する点呼業務を可能とする点呼・健康管理システムが記載されている。
【0005】
また、特開2012−159959号公報(特許文献1)には、ドライバーが保有するドライバー裝置が、識別ID、呼気についてのアルコール検査データ、および医療用裝置から出力されたドライバーの健康状態データを含む点呼データを運送事業者裝置に送信し、運送事業者裝置が、点呼データから得られる情報とドライバーに関する情報とを含む点呼情報を出力する点呼管理システムが記載されている。
【0006】
一方で、人の健康状態については、上記のようなバイタルデータに加えて、近年特に、いわゆるメンタルヘルスも非常に重要な要素として考慮されるようになってきている。人の心の状態は常に変化し得るものであり、本人でも分かりづらいが、これを人が日常的に発する音声に基づいて把握するという音声病態分析技術がある。この技術では、人の声に含まれる、その人が自然に出してしまった不随意の成分(本音)と、自分が相手に伝えようとして出した随意の成分(建前)のうち、不随意の成分に基づいて感情の状態を数値化・可視化する。
【0007】
この技術を利用して、人が日常的に発する音声を収集・分析して心の状態をモニタリングし、分析結果を可視化することができるMIMOSYS(Mind Monitoring Systems、非特許文献2、登録商標(以下同様))というシステムも開発されている(詳細は、例えば、特開2015−128579号公報(特許文献2)を参照)。これによれば、心の状態が普通、上向き、活発である状態や、時には低調で休息が必要である状態等、ユーザのストレスや心の状態を計測して数値として表すことができる。そして、この技術を広く活用することにより、「うつ」状態等の心身の異常を本人が自覚する前に早期に検知し、適切な治療や対処を行うことで未然に疾病を防ぐことが可能になると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−159959号公報
【特許文献2】特開2015−128579号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“運輸安全マネージメント:点呼・健康管理システム”、[online]、株式会社リオス、[平成29年3月27日検索]、インターネット<URL:http://www.rios.co.jp/product_r105.html>
【非特許文献2】“MIMOSYS|音声病態分析技術のPST株式会社”、[online]、PST株式会社、[平成29年3月27日検索]、インターネット<URL:http://medical-pst.com/products-2/mimosys>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1や非特許文献1に記載されたような従来の点呼システムによれば、例えば、点呼業務を遠隔で行うこともできるとともに、体温や血圧等のバイタルデータやアルコール検査等に係る情報を取得・保存して、これらの情報に基づいて客観的な判断に基づく点呼を行うことができる。
【0011】
しかし、管理者はもちろん、乗務員自身によってもなかなか適切に判断できないメンタルヘルスの状態は、例えば、アンケートや質問等によるストレス診断のように自己申告により主観的に行われているのが現状である。これに対し、上述の特許文献2や非特許文献2に記載されたような音声病態分析技術を利用することで、メンタルヘルスの状態についても客観的な判断を行うことが可能である。
【0012】
一方で、音声病態分析技術を利用するには乗務員の音声を取得・収集する必要があるが、日常の点呼業務においてこのために特化した音声の取得手順や取得作業を設けることは、乗務員や管理者の負荷の増大につながるため適切ではない。したがって、乗務の際に必ず行われる点呼業務の中で自然な形で効率的に乗務員の音声を収集する仕組みが必要である。
【0013】
そこで本発明の目的は、点呼業務の中で自然な形で効率的に乗務員の音声を収集し、音声病態分析技術によりメンタルヘルスに係る客観的な判断を行うとともに、バイタルデータと併せて、乗務員の健康状態を客観的に判断できるようにする点呼システム
、サーバ装置、および点呼プログラムを提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態による点呼システムは、作業者に対する管理者による点呼業務を支援する点呼システムであって、前記作業者が保有する作業者端末から、前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の識別情報と関連付けて作業者状態記録部に記録するバイタルデータ取得部と、前記作業者端末から、前記作業者の発した音声を含む音声データを取得して、前記音声データについて音声病態分析エンジンにより行われた分析結果を取得して前記作業者状態記録部に記録する音声データ取得部と、前記作業者端末もしくは管理者端末から前記作業者が点呼場所に所在するか否かの情報を取得して前記作業者状態記録部に記録し、前記作業者状態記録部に記録された前記作業者に係る情報を前記管理者端末に提示し、前記管理者端末から前記管理者によって入力された前記作業者に係る作業の可否の情報を受け付けて点呼履歴記録部に記録する点呼処理部と、を有するものである。
【0017】
また、本発明は、コンピュータを上記のような点呼システムとして動作させる点呼プログラムにも適用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、点呼業務の中で自然な形で効率的に乗務員の音声を収集し、音声病態分析技術によりメンタルヘルスに係る客観的な判断を行うとともに、バイタルデータと併せて、乗務員の健康状態を客観的に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態である点呼システムの構成例について概要を示した図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における点呼業務に係る処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0022】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である点呼システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態の点呼システムは、例えば、バス等による運輸を行う運行会社において、管理者4による乗務員3に対する点呼業務を支援する機能を有する情報処理システムである。本実施の形態では車両による輸送を行う乗務員3の点呼を対象としているが、適用対象はこれに限られない。例えば、工場や現場の作業員等、危険が伴うために安全の確保が必須である作業を実施する者、すなわち健康状態の確認を事前・事後に行う必要がある作業者に対する点呼業務に広く適用することができる。
【0023】
点呼システム1は、例えば、乗務員管理サーバ10に対してインターネット等のネットワーク50を介して乗務員3が保有・使用する乗務員端末30および管理者4が保有・使用する管理者端末40が接続される構成を有する。そして、乗務員管理サーバ10は、図示しないLAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)等のネットワークを介して音声分析サーバ20と接続されている。本実施の形態では、乗務員管理サーバ10と音声分析サーバ20とを独立したサーバシステムとして構成しているが、同一のサーバシステムに共存する構成としてもよい。乗務員端末30および管理者端末40は、例えば、タブレット端末やスマートフォン等の汎用の携帯型情報処理端末により構成される。
【0024】
乗務員管理サーバ10および音声分析サーバ20は、例えば、サーバ機器もしくはクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成される。そして、それぞれ、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、点呼業務に係る後述する各種機能を実現する。
【0025】
乗務員管理サーバ10は、管理者4と乗務員3との間の点呼業務に係る処理を行うサーバシステムであり、例えば、ソフトウェアにより実装された認証部11、点呼処理部12、音声データ取得部13、およびバイタルデータ取得部14等の各部を有する。また、データベースやファイルテーブル等により実装された乗務員マスタデータベース(DB)15、乗務員状態DB16、および点呼履歴DB17等の各記録部を有する。
【0026】
認証部11は、乗務員マスタDB15に登録された各乗務員3や管理者4のアカウント情報に基づいて、各乗務員3や管理者4に対するユーザ認証を行う機能を有する。乗務員端末30や管理者端末40に対する端末認証を行うようにしてもよい。乗務員マスタDB15には、1つの運行会社に属する乗務員3や管理者4に限らず、点呼システム1を共同利用する複数の運行会社の乗務員3や管理者4の情報が登録されていてもよい。ユーザ認証の手段は特に限定されず、例えば、乗務員端末30や管理者端末40の画面上からユーザID/パスワードを入力する構成としてもよいし、運転免許証や社員証等の個人の識別情報を保持するICカードを、乗務員端末30や管理者端末40に接続された図示しないICカードリーダ等により読み取るようにしてもよい。
【0027】
点呼処理部12は、管理者4(管理者端末40)と乗務員3(乗務員端末30)との間の点呼業務に係る処理を行う機能を有する。例えば、点呼実施のタイミングを管理し、当該タイミング(もしくはその前の一定の時間帯)において、各乗務員端末30から乗務員3に係る点呼情報を取得する。なお、点呼実施のタイミングは、例えば、「毎朝9:00」等の定期的なタイミングや、管理者4からの要求に基づく随時のタイミング等適宜設定することができる。
【0028】
点呼情報には、例えば、各乗務員3が点呼場所(管理者4と対面する場所に限らず遠隔地でもよい)に所在する旨の情報が含まれる。この情報は、例えば、乗務員端末30を介して乗務員3からのその旨を入力を受け付けるようにしてもよいし、ユーザ認証の成功をもって点呼場所に所在するものとして取り扱ってもよい。また、遠隔地に所在する場合は、例えば、図示しないテレビ会議機能等を起動して動画像によりリアルタイムで点呼場所に所在する旨を管理者4に伝えることができるようにしてもよい。各乗務員3の所在に係る情報は、乗務員状態DB16に記録される。
【0029】
また、点呼情報には、例えば、体温計や血圧計、血糖値計等の医療機器から乗務員端末30に事前に取り込まれた乗務員3のバイタルデータ31が含まれる。このバイタルデータ31は、例えば、バイタルデータ取得部14により乗務員端末30から取得される。バイタルデータ取得部14は、取得したバイタルデータ31を乗務員3の識別情報と関連付けて乗務員状態DB16に記録する。バイタルデータ31の内容に基づいて健康状態の判定を自動的に行い、判定結果も併せて乗務員状態DB16に記録するようにしてもよい。このとき、乗務員マスタDB15に記録された各乗務員3の年齢や身長、体重等の属性情報を参照して、各乗務員3に即した判定を行ってもよい。
【0030】
なお、乗務員端末30へのバイタルデータ31の取り込みは、例えば、乗務員3が手動で入力してもよいし、バイタルデータ31を測定した医療機器がBluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等の近距離無線通信機能を有する場合には、乗務員端末30が有する近距離無線通信機能や、図示しないICカードリーダとの間の通信により、医療機器から直接読み取るようにしてもよい。
【0031】
また、点呼情報には、点呼実施時もしくは事前に乗務員端末30に取り込まれた、各乗務員3のメンタルヘルスの確認に用いるための音声データ32も含まれる。この音声データ32は、例えば、音声データ取得部13により乗務員端末30から取得される。
【0032】
取得した音声データ32に対象の乗務員3以外の発話に係る音声(例えば、点呼実施者である管理者4の音声等)が含まれている場合は、公知の音声処理技術を用いて対象の乗務員3の音声のみを抽出する処理を行う。例えば、予め乗務員マスタDB15等に登録されている各乗務員3の声紋等の音声識別情報と照合することで、対象の乗務員3の音声部分のみを抽出することができる。もしくは、音声データ32における対象の乗務員3の対話の相手方(通常は点呼実施者である管理者4)の声紋等と照合することで、相手方の音声部分のみを削除して、対象の乗務員3の音声部分のみを残すことができる。
【0033】
音声データ取得部13は、取得した音声データ32を音声分析サーバ20に送信するとともに、音声分析サーバ20による音声病態分析の結果を取得する。取得したメンタルヘルスに係る情報は、乗務員3の識別情報と関連付けて乗務員状態DB16に記録する。なお、乗務員端末30への音声データ32の取り込みは、例えば、乗務員端末30が内蔵するマイク機能を利用してもよいし、図示しない外付けのマイクを利用してもよい。デジタルボイスレコーダー等の音声録音機能を有する機器や裝置を利用し、録音した音声データ32を個別に乗務員管理サーバ10にアップロードするようにしてもよい。これらのマイクは、対象の乗務員3以外の者の発話を可能な限り拾わないよう、指向性の高いものを用いるのが望ましい。
【0034】
点呼処理部12が行う点呼業務に係る処理には、さらに、点呼実施のタイミングにおける管理者4による点呼の実施も含まれる。例えば、管理者端末40を介した管理者4からの要求に応じて、乗務員状態DB16に記録された各乗務員3の所在、および健康状態(メンタルヘルスの状態も含む)に係る情報を提示するとともに、管理者端末40を介して管理者4から各乗務員3に対する乗務可否の判断結果の入力を受け付ける。そして、所在の情報および乗務可否の判断結果の情報を含む点呼実施の結果の情報を点呼履歴DB17に記録する。
【0035】
音声分析サーバ20は、乗務員管理サーバ10から音声データ32を取得し、その内容を上述のMIMOSYS等の音声病態分析エンジンにより分析し、分析結果を応答するサーバシステムであり、例えば、ソフトウェアにより実装された外部インタフェース(IF)21、音声分析部22、および分析結果処理部23等の各部を有する。また、データベースやファイルテーブルにより実装された音声データDB24、および分析結果DB25等の各記録部を有する。
【0036】
外部IF21は、乗務員管理サーバ10等の外部のシステムに対して、分析対象となる音声データ32を送信し、分析結果を取得するためのインタフェース機能を提供する。乗務員管理サーバ10から取得した音声データ32は、乗務員3の識別情報と関連付けて音声データDB24に記録する。インタフェースの仕様は特に限定されず、ファイルを送受信するコマンドインタフェースや、API(Application Programming Interface)、図示しないWebサーバプログラムによる画面インタフェース等を適宜利用することができる。必要に応じて、取得した音声データ32に対するフォーマット変換や加工等の処理を行ってもよい。
【0037】
音声分析部22は、音声データDB24に記録された乗務員3毎の音声データ32について、音声病態分析を行なってメンタルヘルスの状態(現在の心の状態、および時系列での変化の状況)を数値として把握する機能を有する。本実施の形態では、上述のMIMOSYS等の音声病態分析エンジンを含んで実装される。分析は、例えば、音声データDB24に新たに音声データ32が記録されたことをトリガーとして(もしくは音声データ32を記録した外部IF21からの指示を受けて)、対象の音声データ32についてリアルタイムで行う。
【0038】
分析結果処理部23は、音声分析部22により音声病態分析が行われた結果を取得して、これを乗務員3毎に可視化して分析結果DB25に記録する機能を有する。可視化とは、例えば、音声分析部22による分析結果の出力データを、管理者4に提示できるような文字情報や数値情報、評価情報等に加工・編集等する処理を含む。管理者端末40上に表示できるような画面データや画像データを生成する処理を含んでいてもよい。分析結果DB25に記録された分析結果の情報は、外部IF21により乗務員管理サーバ10等の外部のシステムに応答される。管理者端末40や乗務員端末30から音声分析サーバ20に直接アクセスして、分析結果DB25の内容を参照できるようにしてもよい。
【0039】
<処理の流れ>
図2は、本実施の形態における点呼業務に係る処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。まず、被点呼者である各乗務員3や点呼実施者である管理者4が、それぞれ乗務員端末30や管理者端末40を利用して、乗務員管理サーバ10の認証部11によるユーザ認証(もしくは端末認証)処理を行う(S01)。ここでは、上述したように、例えば、ユーザID/パスワードによる認証や、免許証、社員証等のICカードに記録されている識別情報に基づく認証等を行うことができる。そして、各乗務員3は、点呼の実施に先立って、乗務員端末30を利用して自身のバイタルデータ31をバイタルデータ取得部14を介して事前に乗務員管理サーバ10に登録・アップロードしておく(S02)。
【0040】
その後、各乗務員3と管理者4との間で点呼処理が開始される。まず、管理者4は、各乗務員3が点呼場所に所在することを確認する(S03)。例えば、点呼場所において、管理者端末40を保有する管理者4が、乗務員3の所在を対面で実際に確認するようにしてもよい。このとき、管理者端末40は、乗務員マスタDB15から対象の乗務員3に係る情報を取得して表示するようにしてもよい。遠隔地の点呼場所に所在する乗務員3については、上述したように、例えば、乗務員端末30と管理者端末40との間でテレビ会議機能等を起動して動画像により所在確認を行うようにしてもよい。
【0041】
点呼の実施において所在確認を行う際に、併せて、乗務員3によって発せられた音声データ32を音声データ取得部13により取得し、音声分析サーバ20によってリアルタイムで音声病態分析を行う(S04)。なお、音声分析サーバ20においてMIMOSYS等の音声病態分析エンジンにより分析を行う場合、音声データ32の内容については何ら制限されないため、乗務員3による何らかの発話を取得できればよい。
【0042】
音声データ32の取得は、上述したように、乗務員3および管理者4に対して不要な作業や発話による負荷を与えないよう、通常の点呼業務の中で自然な形で行われるのが望ましい。例えば、定例的な点呼業務の中での挨拶や掛け声、報告等、乗務員3が必ず発する音声を乗務員端末30の内蔵マイクや外付けのマイク等により取得・録音して音声データ32を得る。乗務員端末30での録音は、乗務員3や管理者4の指示に基づいて手動で行ってもよいし、点呼実施中における乗務員3の発話の検知をトリガーとして自動で録音開始するようにしてもよい。
【0043】
その後、管理者4は、管理者端末40を利用して、乗務員状態DB16に記録された対象の乗務員3の健康状態(メンタルヘルスの状態を含む)の情報や、乗務員マスタDB15に記録された属性情報等を参照して、対象の乗務員3の状態を確認する(S05)。そして、対象の乗務員3が以降の乗務を行うことが可能か否かを判断し、管理者端末40を利用して判断結果を登録する(S06)。管理者4による人的な評価・判断に加えて、乗務員管理サーバ10においても対象の乗務員3の状態に係る情報に基づいて所定の判断手法により乗務可否の判断を行い、判断結果を管理者端末40を介して提示して推奨するようにしてもよい。
【0044】
その後、所在確認の結果や管理者4による乗務可否の判断結果の情報を点呼実施の履歴情報として点呼履歴DB17に登録して(S07)、点呼業務を終了する。被点呼者として複数の乗務員3がいる場合は、一連の処理全体を乗務員3毎に繰り返し実施してもよいし、各ステップの単位で乗務員3毎に繰り返し実施してもよい。
【0045】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である点呼システム1によれば、各乗務員3のバイタルデータ31に加えて、音声病態分析技術により音声データ32に基づいて分析されたメンタルヘルスの状態を参照可能とすることで、点呼業務の際に乗務員3の心身の健康状態を客観的に把握することが可能である。また、点呼業務において定例的に発せられる音声を取得して音声データ32とすることで、点呼業務の中で自然な形で効率的に音声データ32を取得することが可能である。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0047】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0048】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、安全が必須である作業を実施する者に係る事前・事後の点呼を行う点呼システムおよび点呼プログラムに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…点呼システム、3…乗務員、4…管理者、
10…乗務員管理サーバ、11…認証部、12…点呼処理部、13…音声データ取得部、14…バイタルデータ取得部、15…乗務員マスタDB、16…乗務員状態DB、17…点呼履歴DB、
20…音声分析サーバ、21…外部IF、22…音声分析部、23…分析結果処理部、24…音声データDB、25…分析結果DB、
30…乗務員端末、31…バイタルデータ、
40…管理者端末、
50…ネットワーク