(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929103
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/023 20210101AFI20210823BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
H01S5/023
H01S5/026 610
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-75093(P2017-75093)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-181927(P2018-181927A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇功
(72)【発明者】
【氏名】田中 滋久
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−081071(JP,A)
【文献】
特開2004−235182(JP,A)
【文献】
特開2010−003883(JP,A)
【文献】
特開昭60−079786(JP,A)
【文献】
特開2005−268737(JP,A)
【文献】
特表2015−524579(JP,A)
【文献】
特開2008−292641(JP,A)
【文献】
特開2010−147315(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/130345(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0033535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
G02B 6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の一方の面である第1面に偏って位置する活性層と、前記活性層から前記第1面に沿って出射する光を前記第1面とは反対の第2面へ向けて反射させる反射鏡と、がモノリシック集積されて、前記第2面から前記光を出射するよう構成された半導体レーザと、
厚み方向の一方の面である第3面に前記光が入射するように前記半導体レーザが搭載され、前記光を透過する材料から構成されて、前記第3面とは反対の第4面にレンズを一体的に有し、前記第3面及び前記第4面を有する本体部を含み、前記本体部にスペーサ部を一体的に有し、配線パターンを前記第3面に有するキャリアと、
前記第1面及び前記配線パターンを接続するワイヤと、
光導波路及び前記光導波路に前記光を導入するための光結合器が作り込まれた基板と、
を有することを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載された光モジュールであって、
前記半導体レーザは、インジウムリン系化合物半導体を母材とし、
前記キャリアは、シリコンを母材とすることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光モジュールであって、
前記半導体レーザは、前記光を集光させる機能を有しないことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記光結合器は、グレーティングカプラであることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記半導体レーザと前記キャリアは、はんだ、ろう材及び接着剤のいずれか1つによって接合されていることを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザの発振光の伝達に、光ファイバに直接光結合するのではなく、グレーティングカプラを介してシリコン導波路にて伝達する技術が使われ始めている。特許文献1には、水平方向に発振した光を裏面側に向けるための反射鏡と、その反射光を集光するためのレンズが半導体基板に一体成形されている半導体レーザが開示されている。この半導体レーザは、レンズ面とは反対側の面でサブマウントに搭載されている。
【0003】
グレーティングカプラと良好な光結合を得るためには、レンズにより絞られた光が所望のビームウェストとなっている必要がある。高効率な光結合(すなわち、グレーティングカプラ面で所望のビームウェスト)を得るためには、レンズ形状やレンズと反射鏡の相対的な位置関係を高精度に実現することが重要となる。レンズおよび反射鏡が同一の半導体基板に一体成形されている場合は、レンズと反射鏡の位置は製造精度で決まる。またレンズの形状も半導体基板を加工して作成するため、その加工精度で決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−110257号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0006784号明細書
【特許文献3】特開2017−041618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される半導体レーザは、反射鏡とレンズの位置が所望の位置関係とならずに製造された場合には、半導体レーザからの出射光の出射角度が所望の角度と異なるため、良好な光結合が得られない。更に製造後に反射鏡とレンズの位置を変更できないために、最悪その半導体レーザは使用できず、半導体レーザの製造歩留りに影響する恐れがある。
【0006】
特許文献2には、半導体レーザとレンズ、そして反射鏡はそれぞれ別体となっている例が開示されている。この例では、各部品を後から位置決めしながら配置できるために、光軸調整の位置合わせが可能だが、逆に3つの部品それぞれを精度よく配置する必要があると共に、部品点数が多くなり、製造工程が増加する、ひいてはコストアップというデメリットがある。
【0007】
本発明は、部品点数が少なく、また光軸調整が容易な光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光モジュールは、厚み方向の一方の面である第1面に偏って位置する活性層と、前記活性層から前記第1面に沿って出射する光を前記第1面に沿った向きとは異なる方向へ向けて反射させる反射鏡と、がモノリシック集積されて、前記第1面又は前記第1面とは反対の第2面から前記光を出射するよう構成された半導体レーザと、厚み方向の一方の面である第3面に前記光が入射するように前記半導体レーザが搭載され、前記光を透過する材料から構成されて、前記第3面とは反対の第4面にレンズを一体的に有するキャリアと、光導波路及び前記光導波路に前記光を導入するための光結合器が作り込まれた基板と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、反射鏡が半導体レーザにモノリシック集積されているので、部品点数を減らすことができる。また、レンズが半導体レーザとは別部材になっているので、例えば光の送受信を実際に行いながら位置決めをする方法などで、容易に光軸調整をすることができる。
【0010】
(2)(1)に記載された光モジュールであって、前記反射鏡は、前記第1面に沿って出射される光を、前記第2面へ向けて出射させることを特徴としてもよい。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載された光モジュールであって、前記半導体レーザは、インジウムリン系化合物半導体を母材とし、前記キャリアは、シリコンを母材とすることを特徴としてもよい。
【0012】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記半導体レーザは、前記光を集光させる機能を有しないことを特徴としてもよい。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記光結合器は、グレーティングカプラであることを特徴としてもよい。
【0014】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記キャリアは、前記第3面及び前記第4面を有する本体部と、前記本体部に一体的したスペーサ部と、を含むことを特徴としてもよい。
【0015】
(7)(1)から(5)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記キャリアと前記基板との間に介在するスペーサをさらに有することを特徴としてもよい。
【0016】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記半導体レーザと前記キャリアは、はんだ、ろう材及び接着剤のいずれか1つによって接合されていることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る光モジュールの縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る光モジュールの半導体レーザの詳細を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例に係る光モジュールの縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の他の変形例に係る光モジュールの半導体レーザの詳細を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る光モジュールの縦断面図である。光モジュールは、半導体レーザ10を有する。半導体レーザ10は、分布帰還型(Distributed Feedback: DFB)レーザであり、単一波長(例えば1.3μm)の光を出射する。DFBレーザは、単一モードで発振するため長距離及び大容量の光通信の信号源に適している。なお、半導体レーザ10はDFBレーザに限らず、DBRレーザなどであっても構わないし、レーザ部の出射光を変調する変調器が集積された変調器集積型半導体レーザであっても構わない。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る光モジュールの半導体レーザ10の詳細を示す縦断面図である。半導体レーザ10は、厚み方向の両側に第1面12及び第2面14を有する。第1面12には電極16が設けられている。半導体レーザ10は、第1面12に偏った位置に活性層18を有する。活性層18は、第1面12に沿った方向に延び、この方向にレーザ発振が起きる。また、第1面12の側において、活性層18とクラッド層20の間に回折格子21が形成されて、特定の波長の光が強められる。
【0021】
半導体レーザ10は、反射鏡22を有する。第1面12に凹部24があり、凹部24の内面(界面)が反射鏡22である。反射鏡22は、例えば、活性層18から出射される光の光軸に対して45度で傾斜する平面を有する。反射鏡22は、活性層18から第1面12に沿って出射する光を第2面14へ向けて反射させる。光は第2面14から光を出射するようになっている。つまり、半導体レーザ10は、水平共振器面出射型レーザである。
【0022】
活性層18及び反射鏡22は、半導体レーザ10にモノリシック集積されている。半導体レーザ10は、インジウムリン系化合物半導体を母材としている。反射鏡22の形成には、ウェットエッチングを適用する。半導体レーザ10は、レンズなどの光を集光させる機能を有しない。
【0023】
図1に示すように、光モジュールは、キャリア26を有する。キャリア26は光を透過する材料から構成されている。キャリア26は、厚み方向の両側に第3面28及び第4面30を有する。第3面28には、配線パターン32が形成されている。キャリア26の第3面28に、光が入射するように半導体レーザ10が搭載されている。つまり、半導体レーザ10の第2面14が、キャリア26の第3面28に対向する。
【0024】
半導体レーザ10の電極16とキャリア26の配線パターン32は、ワイヤ34によって接続されている。半導体レーザ10とキャリア26は、はんだ36、ろう材及び接着剤のいずれか1つによって接合されている。半導体レーザ10(詳しくはその第2面14)は、キャリア26の配線パターン32(ワイヤ34に接続する部分とは異なる部分)に載っている。はんだ36などの導電材料で接合されていれば、半導体レーザ10と配線パターン32の電気的接続を図ることができる。
【0025】
キャリア26は、第4面30にレンズ38(例えば凸レンズ)を一体的に有する。キャリア26は、単結晶シリコンを母材としている。単結晶シリコンは、ドライエッチングや面方位による異方性エッチング(ウェットエッチング)を適用することができるので、インジウムリン系化合物半導体よりも精密な加工が可能である。つまり、レンズ38は、半導体レーザ10に作り込むよりも高い精度で形成されている。なお、基板の母材は単結晶シリコンに限らず、主となる母材がシリコンであり、一部の層がSiNOやSiNで形成されている場合であってもよい。
【0026】
キャリア26は、第3面28及び第4面30を有する本体部40と、本体部40に一体的に形成したスペーサ部42と、を含む。スペーサ部42は、レンズ38の周囲にあって、レンズ38が下方の部材に当たらないようにしている。なお、半導体レーザ10を覆うように、キャリア26には蓋44が取り付けられている。
【0027】
光モジュールは、シリコンなどからなる基板46を有する。基板46の表層には光導波路48が作りこまれている。また、基板46の表層には光導波路48に光を導入するための光結合器50が作り込まれている。光結合器50は、グレーティングカプラである。半導体レーザ10から出射される光が、レンズ38を通って、光結合器50に照射されることによって、光導波路48に結合される。結合効率を向上する観点では、光結合器50は基板46の表面に形成されるのが望ましいが、光結合器50の上に他の部材があってもよい。例えば、光導波路48及び光結合器50の上には、シリコン酸化膜などからクラッド層52が形成されている。
【0028】
本実施形態によれば、反射鏡22が半導体レーザ10にモノリシック集積されているので、部品点数を減らすことができる。また、レンズ38が半導体レーザ10とは別部材になっているので、光の送受信を実際に行いながら位置決めをすれば、容易に光軸調整をすることができる。例えば、アクティブ調芯(レーザ部を発振させながら結合を最適化する方法)を適用する。光軸調整は、半導体レーザ10とキャリア26との位置合わせに適用することができ、さらに、半導体レーザ10が固定されたキャリア26を基板46に固定するときにも適用することができる。なお、各部品の配置はアクティブアライメントに限らずパッシブアライメントでも可能である。例えば、各部品に設けた合わせマークをもとに高精度ダイボンディングにより位置合わせを行い配置しても良い。
【0029】
図3は、本発明の実施形態の変形例に係る光モジュールの縦断面図である。この例では、キャリア126はスペーサ部を有していない。その代わりに、キャリア126と基板146との間にスペーサ154が介在している。スペーサ154は、キャリア126を搭載するための支持部品であり、基板146に固定される。搭載及び固定には、図示しないはんだ、ろう材及び接着剤のいずれか1つを適用する。スペーサ154は、光結合器150との重複を避けて基板146に搭載される。キャリア126は、第3面128にある第1配線パターン156と第4面130にある第2配線パターン158を有し、第3面128から第4面130に貫通する導電部160によって、第1配線パターン156と第2配線パターン158が導通する。第2配線パターン158は、スペーサ154の配線パターン162に電気的に接続されている。その他の構造及び作用効果は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0030】
図4は、本発明を適用した実施形態の他の変形例に係る光モジュールの半導体レーザ210の詳細を示す縦断面図である。半導体レーザ210の反射鏡222は、活性層218から第1面212に沿って出射する光を同じ面である第1面212へ向けて反射させる。キャリア126への搭載は第1面側212を向けて搭載される(ジャンクションダウン搭載)。その他の内容は実施形態で説明した内容が該当する。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0032】
10、210 半導体レーザ、12、212 第1面、14 第2面、16 電極、18、218 活性層、20 クラッド層、21、回折格子、22、222 反射鏡、24 凹部、26 キャリア、28 第3面、30 第4面、32 配線パターン、34 ワイヤ、36 はんだ、38 レンズ、40 本体部、42 スペーサ部、44 蓋、46 基板、48 光導波路、50 光結合器、52 クラッド層、126 キャリア、128 第3面、130 第4面、146 基板、150 光結合器、154 スペーサ、156 第1配線パターン、158 第2配線パターン、160 導電部、162 配線パターン。