特許第6929138号(P6929138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929138
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】布類展張装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 67/04 20060101AFI20210823BHJP
   D06C 3/00 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   D06F67/04
   D06C3/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-111607(P2017-111607)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-201895(P2018-201895A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502407130
【氏名又は名称】株式会社プレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林田 誉生
(72)【発明者】
【氏名】出上 弘幸
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−268571(JP,A)
【文献】 特開平07−054262(JP,A)
【文献】 実開平06−036600(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 67/04
D06C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された布類の隣り合う角部を把持して少なくともそれらの角部間の上辺部を左右方向に展張する一対の展張クランプを有する展張部と、
前記展張された布類の上辺部を受け取って後方へ引き込むとともにその布類の中間部から下辺部までの残り部分も順次に引き上げて布類全体を後方に搬出するベルトコンベヤを有する搬出部と、
を備える布類展張装置において、
前記ベルトコンベヤが前記布類の中間部から下辺部までの残り部分を引き上げている間にその残り部分の皺を取る皺取り部をさらに備え、
前記皺取り部は、
前記ベルトコンベヤが引き上げている前記布類の残り部分の左右方向側部をそれぞれ挟持する一対の皺取りクランプと、
前記ベルトコンベヤでの布類の残り部分の引き上げに伴って、その布類の残り部分の左右方向両側部を挟持している前記一対の皺取りクランプをそれぞれ上昇移動させつつ左右方向に互いに離間移動させる皺取りクランプ移動機構と、
を有することを特徴とする布類展張装置。
【請求項2】
前記皺取り部はさらに、前記皺取りクランプ移動機構による前記一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動との移動速度を互いに関連させて制御する制御装置を有していることを特徴とする、請求項1記載の布類展張装置。
【請求項3】
前記皺取りクランプ移動機構は、前記一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動とのうち少なくとも上昇移動を、前記一対の皺取りクランプから得た前記ベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げる力によって駆動することを特徴とする、請求項1または2記載の布類展張装置。
【請求項4】
前記一対の皺取りクランプは各々、前記布類の左右方向側部を摺動可能に緩く挟持するとともにその左右方向側部の側端の表裏布縫合わせ部を掛止することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載の布類展張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布類洗濯工場等において洗濯された布類を次工程のアイロンローラ等への投入のために一枚ずつ展張する布類展張装置に関し、特には布団を包むために袋状をなすいわゆる包布の展張に適した布類展張装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の布類展張装置としては、例えば本願出願人が先に開示した特許文献1記載のものが知られており、この布類展張装置は、衣類の投入部と、衣類を左右に展張させる展張部と、布類の展張を補助する補助展張部と、展張させた布類を搬出する搬出部とを備えている。ここで、投入部は、投入位置で布類の隣り合う角部を把持する一対の投入クランプと、その一対の投入クランプを投入位置とそれより上方の受渡し位置との間で昇降移動させる昇降装置とを有している。展張部は、投入クランプの受渡し位置でその一対の投入クランプから布類の隣り合う角部を受け取って把持する一対の展張クランプと、その一対の展張クランプを横行させて布類を左右方向に広げる横行装置とを有している。補助展張部は、横行装置が左右方向に広げた布類の中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部をそれぞれ緩く挟んでその残り部分を左右方向に広げる、前後方向に互いに向き合って水平方向に延在する二組で一対の無端ベルトを有している。そして搬出部は、左右方向に広げた布類の上辺部を前進位置で展張クランプから受け取って吸着保持しつつ後退移動する中間移動体と、その中間移動体が後退移動中に解放した布類の上辺部を受け取って後方へ引き込むとともに布類の中間部から下辺部までの残り部分も引き上げて布類全体を後方に搬出するベルトコンベヤとを有している。
【0003】
かかる従来の布類展張装置にあっては、作業者が洗濯後の布類の隣り合う角部を摘んで投入位置の一対の投入クランプにそれぞれ把持させると、昇降装置がその一対の投入クランプを受渡し位置に上昇させ、一対の展張クランプがその受渡し位置の一対の投入クランプから布類の隣り合う角部を受け取って把持し、横行装置がその一対の展張クランプを互いの離間方向へ横行させて布類を左右方向に広げ、中間移動体がその左右方向に広げた布類の上辺部を前進位置で展張クランプから受け取って吸着保持しつつ後退移動し、ベルトコンベヤが、中間移動体が後退移動中に解放した布類の上辺部を受け取って後方へ引き込むとともに布類の中間部から下辺部までの残り部分も順次に引き上げて、布類全体を後方に搬出する。
【0004】
そして、ベルトコンベヤが上記のように布類の残り部分を引き上げている間、補助展張部は、前後方向に互いに向き合って水平方向に延在する二組で一対の無端ベルトで布類の残り部分の左右方向側部をそれぞれ摺動可能なように緩く挟み、ベルトコンベヤでの布類の引き上げを許容しつつその残り部分を左右方向に広げることで、その残り部分の皺取りを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−268571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の布類展張装置では、補助展張部が布類の中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部を摺動可能なように緩く挟んでその残り部分を左右方向に広げることで皺取りを行っているので、布類の状態や布類の品種、例えば表布と裏布とが袋状に縫い合わされているため二枚の布がずれて重なりやすい包布等の場合には、ベルトコンベヤで引き上げている布類の中間部から下辺までの残り部分を充分に広げることができず、それゆえ図5(a),(b)に示すように、布類Cの中間部から下辺までの部分で表布FCまたは裏布BC(図示例では裏布BC)に皺Wが取りきれず残ってしまう場合があり、未だ改良の余地があった。
【0007】
そして補助展張装置で取りきれず残ってしまった布類の皺は、作業員が布類展張装置内に手を入れて、ベルトコンベヤが引き上げている布類の残り部分の左右方向側部を左右方向に引っ張ることで除去する必要があり、このような皺取り作業を行うと、投入作業用の作業員の他に皺取り作業専任の補助作業員が必要になって、作業員の人件費が嵩むとともに、その補助作業員に危険な作業を行わせることになるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上述の如き従来の布類展張装置の課題を解決するものであり、この発明の布類展張装置は、
投入された布類の隣り合う角部を把持して少なくともそれらの角部間の上辺部を左右方向に展張する一対の展張クランプを有する展張部と、
前記展張された布類の上辺部を受け取って後方へ引き込むとともにその布類の中間部から下辺部までの残り部分も順次に引き上げて布類全体を後方に搬出するベルトコンベヤを有する搬出部と、
を備える布類展張装置において、
前記ベルトコンベヤが前記布類の中間部から下辺部までの残り部分を引き上げている間にその残り部分の皺を取る皺取り部をさらに備え、
前記皺取り部は、
前記ベルトコンベヤが引き上げている前記布類の残り部分の左右方向側部をそれぞれ挟持する一対の皺取りクランプと、
前記ベルトコンベヤでの布類の残り部分の引き上げに伴って、その布類の残り部分の左右方向両側部を挟持している前記一対の皺取りクランプをそれぞれ上昇移動させつつ左右方向に互いに離間移動させる皺取りクランプ移動機構と、
を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の布類展張装置にあっては、洗濯後の布類が作業者等によって当該装置に投入されると、展張部が一対の展張クランプで、投入された布類の隣り合う角部を把持して少なくともそれらの角部間の上辺部を左右方向に展張し、搬出部がベルトコンベヤで、前記展張された布類の上辺部を受け取って後方へ引き込むとともにその布類の中間部から下辺部までの残り部分も順次に引き上げて布類全体を後方に搬出する。
【0010】
そしてこの発明の布類展張装置にあっては、ベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げている間、皺取り部が、その布類の残り部分の左右方向側部を、その布類の残り部分の引き上げに伴って、それぞれ皺取りクランプ移動機構により上昇移動しつつ互いに離間移動する一対の皺取りクランプで挟持して左右方向に引っ張り、その布類の残り部分を左右方向に広げることにより、その残り部分の皺取りを行う。
【0011】
従って、この発明の布類展張装置によれば、一対の皺取りクランプで布類の中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部を確実に挟持してその残り部分を左右方向に広げるので、布類の状態や布類の品種によらず布類の残り部分を充分に広げて皺を取りきることができ、しかも皺取り作業専任の補助作業員を必要としないので、作業員の人件費を削減できるとともに危険な皺取り作業も削減することができる。
【0012】
なお、この発明の布類展張装置においては、前記皺取り部はさらに、前記皺取りクランプ移動機構による前記一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動との移動速度を互いに独立させて制御する制御装置を有していても良いが、それらの移動速度を互いに関連させて制御する制御装置を有していても良い。このように皺取りクランプ移動機構による一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動との移動速度を互いに関連させて制御する制御装置を有していれば、一対の皺取りクランプをベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げる速度に同期させて上昇移動させながら互いに離間移動させることで、布類の残り部分に皺取りクランプから上下方向の張力を加えることなく皺取りを行うこともでき、また、一対の皺取りクランプをベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げる速度よりも多少遅く上昇移動させながら互いに離間移動させることで、布類の残り部分に皺取りクランプから上下方向の張力を加えてその残り部分を上下方向にも展ばしながら皺取りを行うこともできる。
【0013】
また、この発明の布類展張装置においては、前記皺取りクランプ移動機構は、前記一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動とのそれぞれのための駆動機構を有していても良いが、前記一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動とのうち少なくとも上昇移動を、前記一対の皺取りクランプから得た前記ベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げる力によって駆動することとしても良い。このようにベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げる力を一対の皺取りクランプの駆動に利用することとすれば、皺取りクランプのための駆動機構を減らすかもしくは無くすことができるので、皺取りクランプ移動機構を安価に構成することができる。ここで、前記一対の皺取りクランプの上昇移動と左右方向への互いの離間移動との両方を、前記一対の皺取りクランプから得た前記ベルトコンベヤが布類の残り部分を引き上げる力によって駆動することとすれば、例えば斜め上下方向に延在する案内機構で一対の皺取りクランプの斜め上下方向への移動をそれぞれ案内するとともに布類の大きさに応じてストッパで移動範囲を定めるだけで済むので、皺取りクランプ移動機構を極めて安価に構成することができる。
【0014】
さらに、この発明の布類展張装置においては、前記一対の皺取りクランプは各々、前記布類の左右方向側部をしっかりと挟持するものでも良いが、前記布類の左右方向側部を摺動可能に緩く挟持するとともにその左右方向側部の側端の表裏布縫合わせ部を掛止するものでも良い。このように一対の皺取りクランプが各々、布類の左右方向側部を摺動可能に緩く挟持するとともにその左右方向側部の側端の表裏布縫合わせ部を掛止すると、皺取りクランプの左右方向への互いの離間移動による布類の表裏布の一方の皺取りに伴い皺取りクランプでの表裏布縫合わせ部の掛止によってその表裏布の他方の、皺取りクランプ内で余っている部分が皺取りクランプ内から引き出されるので、布類に過大な張力を与えずに皺取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】この発明の布類展張装置の一実施形態の構成を透視して示す平面図である。
図1B】上記実施形態の布類展張装置の構成を透視して示す正面図である。
図1C】上記実施形態の布類展張装置の構成を透視して示す側面図である。
図2】(a)および(b)は、上記実施形態の布類展張装置の皺取りクランプおよび皺取りクランプ移動機構の構成を透視して示す平面図および正面図である。
図3】(a),(b)および(c)は、上記実施形態の布類展張装置の皺取りクランプおよび皺取りクランプ移動機構の動作を順次に示す説明図である。
図4】(a)および(b)は、上記実施形態の布類展張装置の皺取りクランプの一変形例の動作を順次に示す説明図である。
図5】(a)および(b)は、布類展張装置での展張の際に生じる、布類としての包布の皺の例を示す平面図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1A図1Bおよび図1Cは、この発明の布類展張装置の一実施形態の構成を透視してそれぞれ示す平面図、正面図および側面図、図2(a)および図2(b)は、上記実施形態の布類展張装置の皺取りクランプおよび皺取りクランプ移動機構の構成を透視して示す平面図および正面図、図3(a),図3(b)および図3(c)は、上記実施形態の布類展張装置の皺取りクランプおよび皺取りクランプ移動機構の動作を順次に示す説明図であり、図中符号1は布類展張装置の装置本体、2は衣類の投入部、3は衣類を左右に展張させる展張部、4は展張させた布類を搬出する搬出部をそれぞれ示す。
【0017】
この実施形態の布類展張装置も前述した従来の布類展張装置と同様、布類洗濯工場等において、洗濯された布類をアイロンローラに投入するために一枚ずつ展張するもので、装置本体1の前面には複数の投入部2が左右方向に並んで設けられており、各投入部2は、布類Cの隣り合う角部としての長辺等所定の一辺の両端角部を把持する二組四個で一対の投入クランプ2aと、それら四個の投入クランプ2aが左右方向に二個ずつ組になるように並んで固定されたクランプベース2bと、そのクランプベース2bを昇降移動させる昇降装置2cとを有している。昇降装置2cは、例えば斜め上下方向に延在するとともにクランプベース2bを結合された無端のタイミングベルトをサーボモータやステップモータ等で駆動する駆動機構と、そのタイミングベルトの延在方向に沿って斜め上下方向に延在してクランプベース2bの昇降移動を案内する案内機構とを有し、案内機構での案内下で駆動機構によりクランプベース2bを昇降駆動することで、一対の投入クランプ2aを、作業者の作業負担軽減のために設定された図1A図1Bおよび図1Cに実線で示す概ね作業者Pの胸の高さの投入位置と、布類の展張の際にその下辺部を引き摺らないように設定された、投入位置より高い受渡し位置との間で昇降移動させることができる。なお、駆動機構はサーボモータやステップモータ等に代えてエアシリンダやリニアモータ等のアクチュエータを用いて構成しても良い。
【0018】
装置本体1の上部には展張部3が設けられており、展張部3は、エアシリンダで開閉されて布類Cの上記一辺の両端角部を把持する一対の展張クランプ3aと、それらの展張クランプ3aがそれぞれ固定された一対のキャリッジ3bと、装置本体1の上部で左右方向へ延在してそれらのキャリッジ3bの左右方向への水平移動を案内するレール3cと、各キャリッジ3bを個別に動かすことができる横行装置3dとを有している。横行装置3dは、例えばレール3cに沿って延在する無端のタイミングベルトと、そのタイミングベルトを駆動するサーボモータやステップモータ等との組み合わせで構成され、レール3cでの案内下でサーボモータやステップモータ等によりタイミングベルトを介して各キャリッジ3bを駆動することで、一対の展張クランプ3aを個別にあるいは互いに連携させて左右方向に移動させて、布類Cの上辺部となる一辺の両端角部を一対の投入クランプ2aから受け取って把持するとともに左右方向に引っ張り、布類Cを展張することができる。なお、横行装置3dもサーボモータやステップモータ等に代えて他の速度・位置制御可能なアクチュエータを用いてキャリッジ3bを駆動するようにしても良い。
【0019】
展張部3の下方には搬出部4が配置されており、搬出部4は、内部に導入される負圧の作用で布類Cの上辺部を吸着保持する、中間移動体としてのキャッチベース4aと、そのキャッチベース4aを進退移動させるエアシリンダ4bとを有するとともに、そのキャッチベース4aの下方にベルトコンベヤとしての一次コンベヤ5を有し、さらにその一次コンベヤ5の後方にこれもベルトコンベヤとしての二次コンベヤ6を有している。ここで、一次コンベヤ5および二次コンベヤ6は何れも、前後方向に延在する無端のコンベヤベルトが左右方向に多数並んで構成されている。
【0020】
キャッチベース4aは、前進位置で展張クランプ3aから左右方向に広げた布類Cの上辺部を受け取って多数の小孔を有する上面上に負圧で吸着保持しつつ後退移動し、その後退移動中に負圧を止めて布類Cの上辺部を解放することでその布類Cの上辺部を一次コンベヤ5上に移載し、一次コンベヤ5は、多数の小孔を有するコンベヤベルト5aと、その搬送面の下方に配置されたバキュームボックス5bとを有して、コンベヤベルト5aで布類Cの上辺部を受け取ってバキュームボックス5bからの負圧で吸着保持しつつ後方へ引き込むとともに布類Cの中間部から下辺部までの残り部分も順次に引き上げて布類C全体を後方に送り出すことができ、二次コンベヤ6は、その布類Cを後方に搬出して次工程のアイロンローラに投入することができる。
【0021】
装置本体1の正面下方部分には、上下方向に延在するとともに上端が開放された通路状の上下方向展張部7が設けられており、上下方向展張部7の下部はダクト8を通じてブロワ9に接続されている。上下方向展張部7の背面には第2のダクト10が形成されており、この第2のダクト10は、一次コンベヤ5のバキュームボックス5bとブロワ9とを連通させるように構成されている。ダクト8,10とブロワ9との間には開閉板11が配置されており、この開閉板11は、ダクト8の開口とダクト10の開口とを選択的に開閉することで、装置本体1の前面から空気を上下方向展張部7内に吸引する状態と、一次コンベヤ5のバキュームボックス5bを作動させる状態とを切り替えることができる。
【0022】
この実施形態の布類展張装置はさらに制御装置12を備えており、この制御装置12は、中央処理ユニット(CPU)やメモリ等を有する通常のコンピュータで構成されていて、あらかじめ与えられたプログラムに基づき、昇降装置2cおよび横行装置3dの動作、展張クランプ3aの開閉、キャッチベース4aの進退移動、キャッチベース4a内の負圧の発生および解除、ブロワ9および開閉板11の動作、そして一次コンベヤ5および二次コンベヤ6の動作を制御する。この制御装置12により昇降装置2cおよび横行装置3dの動作を制御することで、投入クランプ2aと展張クランプ3aとを同期させて移動させて、布類Cの上辺部となる一辺の両端角部の受渡し動作をさせることができる。
【0023】
この実施形態の布類展張装置にあっては、何れかの投入部2において作業者Pが洗濯後の布類Cの隣り合う角部を摘んで投入位置の一対の投入クランプ2aにそれぞれ把持させると、その投入部2の昇降装置2cがその一対の投入クランプ2aを受渡し位置まで上昇させ、その際、一対の展張クランプ3aがあらかじめその投入部の受渡し位置に移動して待っており、投入クランプ2aの二個ずつの各組が、その受渡し位置の各展張クランプ3aの両脇を通過しながらカムの動作によって開放されて布類Cの角部を展張クランプ3aに引渡し、それと同時に各展張クランプ3aが閉じることで布類Cの角部を受け取って把持し、横行装置3dがその一対の展張クランプ3aを互いの離間方向へ横行させることでその一対の展張クランプ3aが布類Cの少なくとも上辺部を左右方向に広げ、キャッチベース4aがその左右方向に広げられた布類Cの上辺部を前進位置で展張クランプ3aから受け取って保持しつつ後退移動する。なお、一対の展張クランプ3aの互いの離間方向への横行は、一対の展張クランプ3aの一方を固定しておいて他方の展張クランプ3aのみをその一方の展張クランプ3aからの離間方向へ横行させるものでも良い。
【0024】
そして、一次コンベヤ5が、キャッチベース4aが後退移動中に解放した布類Cの上辺部をコンベヤベルト5a上に受け取ってバキュームボックス5b内の負圧で吸着保持しつつ後方へ引き込むとともに、その布類Cの中間部から下辺部までの残り部分も順次に引き上げて布類C全体を後方に送り出し、一次コンベヤ5がその布類Cの残り部分を引き上げている間、上下方向展張部7はその上端から布類Cの残り部分を負圧で内部に引き込んで布類Cを上下方向にも展張し、その後、二次コンベヤ6が、その布類Cを一次コンベヤ5から受け取って後方に搬出して図示しない次工程のアイロンローラに投入する。
【0025】
この実施形態の布類展張装置はさらに、図1A図1Cに示すと共に図2(a),(b)に示すように、装置本体1の前面の上下方向中央部分の、一次コンベヤ5の前端と上下方向展張部7の上端との間の位置に皺取り部13を備え、皺取り部13は、一次コンベヤ5の前端から垂れ下がっている布類Cの中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部をそれぞれ挟持する一対の皺取りクランプ13aと、それらの皺取りクランプ13aをそれぞれ開閉動作させるエアシリンダ13bと、皺取りクランプ移動機構を構成してそれら一対の皺取りクランプ13aをそれぞれエアシリンダ13bと一緒に、矢印で示す如く上下方向へ昇降移動させる、例えば各々エアシリンダ駆動のリニアアクチュエータで構成された一対の皺取りクランプ昇降機構13cと、それら皺取りクランプ13aの基部とエアシリンダ13bと皺取りクランプ昇降機構13cの昇降部分とを覆うように皺取りクランプ昇降機構13cの昇降部分に固定されたカバー13dと、これも皺取りクランプ移動機構を構成してそれら一対の皺取りクランプ13aおよびエアシリンダ13bを皺取りクランプ昇降機構13cおよびカバー13dと一緒に、矢印で示す如く装置本体1の左右方向へ水平移動させる、例えば各々モータ駆動のベルト式リニアアクチュエータで構成されて装置本体1に固定された皺取りクランプ横行機構13eと、を有しており、これらエアシリンダ13b、皺取りクランプ昇降機構13cおよび皺取りクランプ横行機構13eの動作もまた上記制御装置12が制御する。なお、エアシリンダ13bに代えて電磁ソレノイド等の他のアクチュエータを用いることもでき、また皺取りクランプ昇降機構13cや皺取りクランプ横行機構13eのリニアアクチュエータに、リニアモータを用いることもできる。
【0026】
この皺取り部13にあっては、一次コンベヤ5が布類Cの上辺部をキャッチベース4aから受け取ってその布類Cの中間部から下辺部までの残り部分を順次に引き上げ、それととともに上下方向展張部7が負圧でその布類Cの残り部分を内部に引き込んで上下方向へも展張している間に、一次コンベヤ5が引き上げている布類Cの、一次コンベヤ5の前端から垂れ下がるとともに下辺部が上下方向展張部7の内部に引き込まれている、中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部を一対の皺取りクランプ13aがエアシリンダ13bの動作でそれぞれ挟持し、その挟持状態で、皺取りクランプ昇降機構13cおよび皺取りクランプ横行機構13eの動作によって、図1Bに矢印で示すように、一対の皺取りクランプ13aを互いに離間するように移動させて、布類Cの中間部を左右方向に引っ張り、その中間部から下辺部にかけての皺Wを展ばす。
【0027】
すなわち、皺取り部13では具体的には、先ず、図3(a)に示すように、一次コンベヤ5が矢印A0で示す如く布類Cの中間部から下辺部までの残り部分を上方に引き上げている間に、先ず、エアシリンダ13bの動作で開いた皺取りクランプ13aを、皺取りクランプ昇降機構13cが下降させてから皺取りクランプ横行機構13eが矢印A1で示す如く布類Cの上記残り部分の左右方向側端部へ向けて水平移動させ、次いで、皺取りクランプ13aに併設された例えば光センサ等の図示しないセンサが布類Cの上記残り部分の左右方向側端部を検出すると、エアシリンダ13bの動作で皺取りクランプ13aが閉じて布類Cの上記残り部分の左右方向側端部を挟持し、次に、図3(b)に示すように、その皺取りクランプ13aを、皺取りクランプ昇降機構13cが矢印A2で示す如く上昇させながら皺取りクランプ横行機構13eが矢印A3で示す如く装置中心から離れる方向に水平移動させ、これにより布類Cの上記残り部分の上昇に伴って皺取りクランプ13aが矢印A4で示す如く斜め方向に上昇して、その布類Cの残り部分を左右方向に広げ、布類Cの皺Wの少なくとも上部を展ばす。
【0028】
そしてその後、図3(c)に示すように、引き続き一次コンベヤ5が矢印A0で示す如く布類Cの中間部から下辺部までの残り部分を上方に引き上げている間に、エアシリンダ13bの動作で開いて布類Cの上記残り部分の左右方向側端部を一旦解放し、次いでその皺取りクランプ13aを、皺取りクランプ昇降機構13cが矢印A5で示す如く下降させるとともに皺取りクランプ横行機構13eが矢印A6で示す如く布類Cの上記残り部分の左右方向側端部へ向けて水平移動させ、これにより皺取りクランプ13aが矢印A7で示す如く斜め方向に下降し、次いで、エアシリンダ13bの動作で皺取りクランプ13aが閉じて布類Cの上記残り部分の左右方向側端部のうち先に挟持した位置の少し下の位置を挟持し、その後は図3(b)および図3(c)に示す動作を布類Cの下辺部付近まで繰り返すことで、布類Cの皺Wの下端まで順次に展ばして皺取りを行う。
【0029】
従って、この実施形態の布類展張装置によれば、皺取りクランプ13aで布類Cの中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部をしっかりと挟持してその残り部分を左右方向に広げるので、布類Cの状態や布類の品種によらず布類Cの残り部分を充分に広げて皺を取りきることができ、しかも皺取り作業専任の補助作業員を必要としないので、作業員の人件費を削減できるとともに危険な皺取り作業も削減することができる。
【0030】
そしてその皺取りの際、一対の皺取りクランプ13aを一次コンベヤ5が布類Cの残り部分を引き上げる速度に同期させて上昇移動させながら互いに離間移動させることで、布類Cの残り部分に皺取りクランプ13aから上下方向の張力を加えることなく皺取りを行うこともでき、また、一対の皺取りクランプ13aを一次コンベヤ5が布類Cの残り部分を引き上げる速度よりも多少遅く上昇移動させながら互いに離間移動させることで、布類Cの残り部分に皺取りクランプ13aから上下方向の張力を加えてその残り部分を上下方向にも展ばしながら皺取りを行うこともできる。
【0031】
図4(a)および図4(b)は、上記実施形態の布類展張装置の皺取りクランプの一変形例の動作を順次に示す説明図であり、上述した皺取りクランプ13aは、閉じた状態で布類Cの左右方向側端部を滑らないようにしっかりと挟持するものであったのに対し、この変形例の皺取りクランプ13aは、図では上側に位置する固定腕と図では下側に位置する揺動腕とにそれぞれ設けられた挟持ブロック13f、13gが、図4(a)に実線で示すように皺取りクランプ13aが閉じた状態で布類Cの摺動を許容する隙間を持つとともに、奥の位置に挟持ブロック13fでは手前の部分より突出し、挟持ブロック13gでは手前の部分より凹陥した段差部を有していて、皺取りクランプ13aが閉じた状態で布類Cの左右方向側部の側端の厚くなった表裏布縫合わせ部Sを突出した段差部が凹陥した段差部に押し込んで掛止するようになっている。
【0032】
従って、この変形例の皺取りクランプ13aによれば、図4(b)に示すように、裏布BCの皺Wが取れるまで、表布FCを挟持ブロック13f、13gの隙間から引き出しながら布類Cの残り部分を展張することができるので、布類Cが例えば表布の中央部に大きな開口をもつ額縁包布や表布の中央部に開口を持たない通常の包布等の二枚重ねのものでも、確実に皺取りを行うことができる。
【0033】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば上記実施形態の布類展張装置では展張部3と皺取り部13とで布類Cの左右方向の展張を行っているが、この発明の布類展張装置においては、さらに、例えば特許文献1に記載した従来の布類展張装置のものと同様の、前後方向に互いに向き合って水平方向に延在する二組で一対の無端ベルトで、一次コンベヤ5が上辺部を保持して引き込んでいる布類Cの残り部分の左右方向側部をそれぞれ摺動可能なように緩く挟んで、一次コンベヤ5での布類Cの引き上げを許容しつつその残り部分を左右方向に広げる補助展張装置を、例えば皺取り部13の直近上部に配置して、それらを併用しても良い。
【0034】
また、この発明の布類展張装置においては、例えば皺取りクランプ昇降機構13cを、皺取りクランプ13aの昇降移動の案内のみ行い駆動機構を省略した構成とし、皺取りクランプ13aは自重で下降するようにしても良く、あるいは、例えば斜め上下方向へ延在して上方に行くほど互いに離間する一対の案内機構で一対の皺取りクランプの斜め上下方向への移動を案内することで、皺取りクランプを移動させる駆動機構を全て省略するようにしても良く、それらの場合に、展張する布類の幅に応じて皺取りクランプの下降限位置を設定するストッパを設けても良い。
【0035】
さらに、この発明の布類展張装置においては、皺取りクランプ昇降機構13cと皺取りクランプ横行機構13eとの一方または両方のそれぞれを、直線移動機構から例えばサーボモータやステップモータで駆動する旋回機構に替え、あるいはそれら皺取りクランプ昇降機構13cと皺取りクランプ横行機構13eとの両方を、それら皺取りクランプ昇降機構13cと皺取りクランプ横行機構13eとの動作を組み合わせた動作またはそれに近い動作を行う単一の例えば上記の如き構成の旋回機構に替えて、その旋回機構で皺取りクランプを旋回移動させても良く、その場合に例えば平行リンク等を組み合わせて旋回移動中の皺取りクランプを布類Cの左右方向側部に向け続けるようにしても良い。
【0036】
そして、この発明の布類展張装置は、上記実施態様や上記特許文献1に記載した装置のように装置本体1の前面に複数の投入部2が左右方向に並んで設けられているものに限られず、例えば本願出願人が先に別途特開2011−036312号公報にて開示した布類展張装置のように、装置本体の両側部にそれぞれ投入部が設けられるとともに、装置本体の上部に予備展張機構が設けられ、作業者によって投入された布類を投入部がそれぞれ装置本体の上部の予備展張機構に供給し、その予備展張機構が布類をある程度広げてその布類の上辺部を展張部の一対の展張チャックに引渡すものでも良い。また、この発明の布類展張装置の適用対象の布類Cは、上述した表布の中央部に大きな開口をもつ額縁包布や表布の中央部に開口を持たない通常の包布等の二枚重ねで比較的大きいものに限られず、二枚重ねでも比較的小さいピロケース(枕カバー)や、タオル、シーツ、テーブルクロス等の一枚ものの布類であっても良く、この発明の布類展張装置によれば、これらの布類の皺取りも確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
かくしてこの発明の布類展張装置によれば、皺取りクランプで布類の中間部から下辺部までの残り部分の左右方向側部を確実に挟持してその残り部分を左右方向に広げるので、布類の状態や布類の品種によらず布類の残り部分を充分に広げて皺を取りきることができ、しかも皺取り作業専任の補助作業員を必要としないので、作業員の人件費を削減できるとともに危険な皺取り作業も削減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 装置本体
2 投入部
2a 投入クランプ
2b クランプベース
2c 昇降装置
3 展張部
3a 展張クランプ
3b キャリッジ
3c レール
3d 横行装置
4 搬出部
4a キャッチベース
4b エアシリンダ
5 一次コンベヤ
5a コンベヤベルト
5b バキュームボックス
6 二次コンベヤ
7 上下方向展張部
8,10 ダクト
9 ブロワ
11 開閉板
12 制御装置
13 皺取り部
13a 皺取りクランプ
13b エアシリンダ
13c 皺取りクランプ昇降機構
13d カバー
13e 皺取りクランプ横行機構
13f,13g 挟持ブロック
C 布類
FC 表布
BC 裏布
S 表裏布縫合わせ部
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5