特許第6929162号(P6929162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6929162観測設定管理システム及び観測設定管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929162
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】観測設定管理システム及び観測設定管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
   H04Q9/00 311H
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-159088(P2017-159088)
(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公開番号】特開2019-41137(P2019-41137A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593199471
【氏名又は名称】株式会社オサシ・テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】古島 広明
【審査官】 佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−128012(JP,A)
【文献】 特開2011−071772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置されたセンサにより観測される観測データを記録する記録装置と、
前記記録装置が設置された設置位置において、前記記録装置の動作条件を設定し、前記設置位置の位置情報を取得すると共に、前記動作条件及び前記位置情報からなる複合情報を通信回線を介して送信する携帯端末と、
前記携帯端末から前記複合情報を受信し、前記複合情報を保存するサーバ装置と、を備え、
前記携帯端末は、前記動作条件を設定したことを条件として、前記複合情報を前記サーバ装置へ自動的に送信し、
前記サーバ装置は、前記携帯端末から受信した前記複合情報に基づいて、前記観測データを管理するデータベースを生成及び更新し、
前記携帯端末は、前記通信回線が切断状態である場合に前記複合情報の送信を保留し、前記通信回線が復旧したことを条件として、前記複合情報を自動的に送信する、観測設定管理システム。
【請求項2】
前記携帯端末は、前記複合情報の送信前に前記携帯端末の電源がOFFとなる場合に、前記携帯端末の電源がONに復帰したことを条件として前記複合情報を自動的に送信する、請求項に記載の観測設定管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外環境で観測データを収集する観測機器の動作条件を設定する観測設定管理システム及び観測設定管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水位計、雨量計、傾斜計、又は伸縮計等の観測機器を屋外に設置することにより、当該観測機器で観測される観測データを収集し、防災対策、環境調査、又は人工構造物の維持管理等が行われている。このような観測機器は、山間部や河川付近、道路の整備されていない辺鄙な場所に設置されることが多く、保守・点検作業を行うための作業負担が問題になることがある。このような作業負担を軽減するために、例えば特許文献1に開示された計測器管理システムでは、汎用携帯端末を使用して観測機器の点検を行うと共に、拡張現実感技術により利便性を向上させている。
【0003】
特許文献1に開示された計測器管理システムは、より具体的には、汎用携帯端末が備えるカメラにより観測機器を撮影し、その撮像方向に基づいて汎用携帯端末に表示する観測機器の保守情報を選択している。また、特許文献1には、観測機器により取得された観測データを、ネットワークを介して接続されたサーバ装置に蓄積するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−123873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような観測機器を現場に設置して初期設定を行う場合においては、観測機器の設定に加えて、観測機器自体の設置作業を行うことから、保守・点検作業よりも更に作業負担が生じることになる。例えば、土砂崩れを監視するために伸縮計や傾斜計を設置する場合、作業者は、山の斜面における亀裂の兆候が見られる場所など、現場の状況を確認しながら観測機器の設置位置を決めなければならないことが多い。また、地下水の水圧を監視する水位計を設置する場合、形成したボーリング孔の内部に流入する地下水の状況を確認した上で、観測機器の設定を行う必要がある。このとき、観測機器の設置場所は、足場の悪い環境であることも多く、また、夏場の暑さや冬場の寒さによる影響も含めて作業者にとって作業環境が良好であるとは限らない。しかし、観測機器の設置位置が過酷な作業環境であっても、作業者は、観測機器の設置作業、観測機器の動作条件の設定、当該動作条件の記録、及び設置位置の記録等の一連の手順をミス無く行わなければならない。また、観測機器の初期設定は、観測機器の設置位置が通信電波の届かない場所である場合には、通信機器を用いた遠隔操作による設定作業を行うことができず、やはり現場において作業せざるを得ないことになる。そのため、特に観測機器の初期設定においては、作業負担に伴う作業ミスの発生リスクが増加する虞が生じる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、観測機器の設定における作業者の負担を軽減する観測設定管理システム及び観測設定管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、屋外に設置されたセンサにより観測される観測データを記録する記録装置と、前記記録装置が設置された設置位置において、前記記録装置の動作条件を設定し、前記設置位置の位置情報を取得すると共に、前記動作条件及び前記位置情報からなる複合情報を通信回線を介して送信する携帯端末と、前記携帯端末から前記複合情報を受信し、前記複合情報を保存するサーバ装置と、を備え、前記携帯端末は、前記動作条件を設定したことを条件として、前記複合情報を前記サーバ装置へ自動的に送信し、前記サーバ装置は、前記携帯端末から受信した前記複合情報に基づいて、前記観測データを管理するデータベースを生成及び更新する、観測設定管理システムである。
【0008】
観測設定管理システムは、屋外の例えば山間部において、観測データを収集するための記録装置及びセンサを設置する場合の初期設定を携帯端末で行う。このとき、携帯端末は、観測データの収集に係る動作条件を記録装置へ設定すると共に、記録装置の設定位置における位置情報を取得する。また、携帯端末は、当該動作条件と位置情報からなる複合情報を通信回線を介してサーバ装置に送信する。そして、複合情報を取得したサーバ装置は、当該複合情報に基づいて、記録装置が収集する観測データを管理するためのデータベースを生成する。尚、携帯端末が設定更新を行う場合には、初期設定と同様の手順によりデータベースを更新する。
【0009】
ここで、観測設定管理システムは、記録装置へ上記した動作条件を設定したことを条件として、複合情報をサーバ装置に自動的に送信する。このため、記録装置の初期設定を行う作業者は、記録装置の設置位置において記録装置の設定操作を行うだけで、意識することなく観測データを管理するためのデータベースをサーバ装置に生成することができる。これにより本発明の第1の態様によれば、作業者がサーバ装置におけるデータベースの構築を意識することなく現場での作業に集中することができ、観測機器の設定における作業者の負担を軽減することができる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記携帯端末は、前記通信回線が切断状態である場合に前記複合情報の送信を保留し、前記通信回線が復旧したことを条件として、前記複合情報を自動的に送信する、観測設定管理システムである。
【0011】
観測設定管理システムは、携帯端末からサーバ装置への複合情報の送信において、携帯端末が通信回線の圏外に位置することにより通信回線が切断状態である場合に、複合情報の送信を一時的に保留する。また、観測設定管理システムは、携帯端末が通信回線の圏内に移動することにより通信回線が復旧した場合に、携帯端末からサーバ装置へ複合情報を自動的に送信する。これにより本発明の第2の態様によれば、作業者が通信回線の通信状態を意識することなく、サーバ装置におけるデータベースの生成及び更新が可能になり、観測機器の設定における作業者の負担を軽減することができる。
【0012】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1又は2の態様において、前記携帯端末は、前記複合情報の送信前に前記携帯端末の電源がOFFとなる場合に、前記携帯端末の電源がONに復帰したことを条件として前記複合情報を自動的に送信する、請求項1又は2に記載の観測設定管理システムである。
【0013】
観測設定管理システムは、記録装置に動作条件を設定した後、携帯端末からサーバ装置へ複合情報を送信する前に、携帯端末の電源がOFFとなった場合であっても、携帯端末の電源がONに復帰しときに携帯端末からサーバ装置へ複合情報を自動的に送信する。これにより本発明の第3の態様によれば、例えば山間部における記録装置の設置作業に長時間を要したことにより携帯端末のバッテリ切れが生じた場合であっても、充電後に作業者が操作することなくサーバ装置におけるデータベースの生成及び更新が可能になり、観測機器の設定における作業者の負担を軽減することができる。
【0014】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、観測データを記録する記録装置が設置された屋外において、汎用携帯端末により前記記録装置の設定を行う設定ステップと、前記記録装置の設置位置における位置情報を携帯端末により取得する位置情報取得ステップと、前記記録装置に設定する設定情報と前記位置情報とからなる複合情報を送信する複合情報送信ステップと、受信した前記複合情報をサーバ装置で保存する複合情報保存ステップと、を含み、前記複合情報送信ステップにおいて、前記携帯端末は、前記記録装置の設定を行なったことを条件として、前記複合情報を前記サーバ装置へ自動的に送信する、観測設定管理方法である。
【0015】
観測設定管理方法によれば、屋外に設置された記録装置に対して携帯端末により設定を行い、設定情報と取得した位置情報とからなる複合情報をサーバ装置に送信することにより、サーバ装置で当該複合情報を保存する。このとき、サーバ装置への複合情報の送信は、記録装置の設定を行なったことを条件として自動的に行われる。これにより本発明の第4の態様によれば、作業者がサーバ装置におけるデータベースの構築を意識することなく現場での作業に集中することができ、観測機器の設定における作業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、観測機器の設定における作業者の負担を軽減する観測設定管理システム及び観測設定管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る観測設定管理システムの概略図である。
図2】観測設定管理システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】観測設定管理方法の初期設定処理を示すシーケンス図である。
図4】本発明の変形例に係る観測設定管理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0019】
図1は、本発明に係る観測設定管理システム1の概略図である。観測設定管理システム1は、記録装置2、「携帯端末」としての汎用携帯端末3、及びサーバ装置4からなる。
【0020】
記録装置2は、観測データを記録するためのロガーであり、観測データを取得するセンサ20が接続されると共に、センサ20により観測される観測データを後述する動作条件に基づいて記録する。本実施形態においては、センサ20は、地下水の水位を観測するための水位計であり、水中に配置することにより水位データを観測する。
【0021】
記録装置2及びセンサ20の設置時において、作業者は、屋外における例えば山間部や河川付近、道路の整備されていない自然環境において、地下水を観測するために事前に形成しておいたボーリング孔にセンサ20を配置し、センサ20に接続された記録装置2を設置する。ここで、センサ20は、ボーリング孔の内部に流入した地下水の内部において、ボーリング孔の底部から離間した位置に配置される。
【0022】
汎用携帯端末3は、スマートフォンやタブレット端末であり、記録装置2及びサーバ装置4との通信が可能である他、GPS(Global Positioning System)機能により位置情報を取得することができ、また、詳細を後述するように、設定管理アプリケーションの実行により記録装置2の動作条件を設定することができる。尚、本実施形態の説明においては「携帯端末」として汎用携帯端末3を例示しているが、専用携帯端末を使用してもよい。また、本実施形態の説明においては、GPSによる位置情報の取得を例示しているが、準天頂衛星などの他のGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。
【0023】
サーバ装置4は、例えば市街地におけるデータセンター内に設けられるクラウドサーバであり、汎用携帯端末3が通信可能な圏内にある場合に、通信回線Nを介して汎用携帯端末3との間で情報の授受を行う。このとき、サーバ装置4は、記録装置2に設定された動作条件を汎用携帯端末3から受信し、データベースを作成・更新することにより記録装置2を管理する。サーバ装置4の構成及び動作についても詳細を後述する。
【0024】
次に、観測設定管理システム1が備える記録装置2、汎用携帯端末3、及びサーバ装置4の構成について説明する。図2は、観測設定管理システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
記録装置2は、ロガー制御部21、ロガー通信部22、計測設定部23、記録設定部24、計測部25、及び記憶部26を備える。
【0026】
ロガー制御部21は、記録装置2の全体の動作を制御する。ロガー通信部22は、汎用携帯端末3との間において、公知の近距離無線通信又は有線通信により情報の送受信を行う。計測設定部23は、本実施形態の水位観測においては、上記したボーリング孔の深さ、配置したセンサ20からボーリング孔の底部までの距離、及び精度補正のためのセンサ係数などのように、センサ20の設置形態に係る計測条件が保存される設定情報の格納部である。記録設定部24は、観測データを記録する周期や、記録する観測データの項目等、データ取得に係る記録条件が保存される設定情報の格納部である。計測部25は、計測設定部23及び記録設定部24に格納された設定情報に基づいて、センサ20から観測データとしての水位情報を計測する。記憶部26は、例えば不揮発性半導体メモリであり、計測部25が取得する観測データを保存する。この他、記録装置2は、警報設定部及び警報出力部(いずれも図示せず)を備えることにより、観測データに基づいて警報を出力することができる構成としてもよい。
【0027】
ロガー通信部22は、記録装置2の初期設定及び設定変更の際に、計測設定部23及び記録設定部24に格納すべき設定情報を汎用携帯端末3から受信する。そして、記録装置2は、ロガー制御部21による制御のもと、計測設定部23及び記録設定部24に格納された設定情報に基づいて、接続されたセンサ20から計測部25が観測データとしての水位情報を取得して継続的に記憶部26に蓄積する。
【0028】
汎用携帯端末3は、端末制御部31、端末通信部32、GPS管理部33、入出力部34、及び複合情報生成部35を備える。
【0029】
端末制御部31は、汎用携帯端末3の全体の動作を制御する。端末通信部32は、上記した記録装置2のロガー通信部22との通信に加え、サーバ装置4との間において、携帯通信網又はインターネット等からなる通信回線Nを介して情報の送受信を行う。GPS管理部33は、汎用携帯端末3が備える図示しないGPSアンテナにより汎用携帯端末3のGPS情報を取得する。入出力部34は、例えばタッチパネルからなるインターフェースであり、汎用携帯端末3の操作者による入力操作を受け付ける他、汎用携帯端末3が実行する各種アプリケーションの情報を操作者に画面を通して視覚的に提示する。複合情報生成部35は、記録装置2の動作条件、及びGPS管理部33が取得したGPS情報を纏めて複合情報を生成し、当該複合情報を一時的に保持する。尚、汎用携帯端末3は、上記の構成要素以外にも例えば音声入出力機構や通話機能等、一般的なスマートフォンに搭載される機能を備えてもよいが、本実施形態の説明においては説明を省略する。
【0030】
汎用携帯端末3は、本実施形態においては、記録装置2の設置位置において、記録装置2の初期設定、設定変更、及び観測データの回収に使用され、また、通信回線Nを介する通信圏内にある場合において、複合情報生成部35に保持された記録装置2の動作条件及びGPS情報をサーバ装置4へアップロードする。
【0031】
サーバ装置4は、サーバ制御部41、サーバ通信部42、入出力部43、複合情報保存部44、及びストレージ45を備える。
【0032】
サーバ制御部41は、サーバ装置4の全体の動作を制御する。サーバ通信部42は、汎用携帯端末3から通信回線Nを介して記録装置2の複合情報を受信し、また、汎用携帯端末3からの要求に応じてサーバ装置4が記憶する観測データ、又は観測データがサーバ制御部41により加工された加工データを汎用携帯端末3に送信する。入出力部43は、例えばキーボード及びディスプレイからなる入出力インターフェースであり、操作者の入力操作に応じてサーバ装置4に記憶されたデータを編集することができる他、記録装置2から回収された観測データが設定された閾値を跨いで変動した場合に警報を出力することができる。複合情報保存部44は、汎用携帯端末3から受信した記録装置2についての複合情報を保存する。ストレージ45は、複合情報保存部44が保存する複合情報に基づいて作成されるデータベースにおいて、記録装置2が取得する観測データを蓄積する。
【0033】
続いて、記録装置2及びセンサ20を設置した場合の初期設定について説明する。図3は、観測設定管理方法の初期設定処理を示すシーケンス図である。
【0034】
作業者は、観測データを収集すべき場所に記録装置2及びセンサ20を設置した後、ステップS1において、汎用携帯端末3から記録装置2へ動作条件を設定するための記録装置2側の通信準備を行う。具体的には、記録装置2の近距離無線通信をONにすることにより、汎用携帯端末3との通信を確立できる状態にする。
【0035】
作業者は、記録装置2側の通信準備が完了したことを確認し、汎用携帯端末3を使用して記録装置2の初期設定を開始する。当該初期設定は、記録装置2の動作条件を設定するために汎用携帯端末3にインストールされた設定管理アプリケーション上で実行される。
【0036】
作業者はまず、汎用携帯端末3の設定管理アプリケーションを起動させ、記録装置2との通信を確立するため、ステップS2において汎用携帯端末3から記録装置2へ呼出を行う。これに対し、記録装置2は、ステップS3において、自身の機種情報、すなわち水位観測用ロガーであることを示す情報や識別番号を送信することにより、汎用携帯端末3からの呼出に対する応答を行う。これにより、記録装置2と汎用携帯端末3との通信が確立される。このとき、汎用携帯端末3の設定管理アプリケーションは、記録装置2から受信した機種情報に基づいて、初期設定の設定項目を入力するための入力画面を入出力部34に表示する。尚、通信確立方法は、上記した手順に限られず様々な方法が可能である。例えば記録装置2が自身の機種情報を定期的に出力する仕様であれば、汎用携帯端末3が当該機種情報を読み取って認識することにより通信を確立してもよい。このとき、複数の記録装置2がそれぞれの機種情報を出力している場合には、作業者は、通信を確立したい記録装置2を汎用携帯端末3で選択することになる。
【0037】
次に作業者は、入出力部34を操作することにより、設定管理アプリケーションの入力画面に従って記録装置2の動作条件を入力する。ここで、動作条件とは、計測設定部23及び記録設定部24について上記説明したように、センサ20の設置形態に係る計測条件とデータ取得に係る記録条件とを含む。動作条件の中には、予め設定管理アプリケーションに保存しておくことができる項目もあれば、現場での状況や記録装置2の設置作業後に決定される項目もある。
【0038】
また、ステップS5において、汎用携帯端末3の設定管理アプリケーションは、GPS管理部33からGPS情報を取得する(位置情報取得ステップ)。このGPS情報は、近距離無線通信又は有線通信で接続される記録装置2の付近で取得されるため、記録装置2の設置位置を示す位置情報と見做すことができる。記録装置2の設置位置は、設置作業のし易さにより選択できるとは限らず、観測対象の位置によって決まることが多いため、例えば作業者の背丈ほどの草木が生い茂る場所において作業者が自身の位置を把握できないまま設置作業を行うことも少なくない。そのため、設定管理アプリケーションは、作業者による確認操作を待つことなく記録装置2の設置位置を特定することにより作業者の負担を軽減することができる。
【0039】
作業者は、ステップS6において、設定管理アプリケーションに入力した動作条件を記録装置2へ送信する設定操作を実行する(設定ステップ)。これにより、汎用携帯端末3は、ステップS7において、記録装置2に動作条件を送信する。
【0040】
記録装置2は、設定される動作条件を汎用携帯端末3から受信し、ステップS8において設定制御を実行する。より具体的には、記録装置2は、ロガー通信部22を介して受信した動作条件のうち、センサ20の設置形態に係る計測条件を計測設定部23に格納し、データ取得に係る記録条件を記録設定部24に格納する。これにより、計測部25は、計測設定部23及び記録設定部24に格納された動作条件に基づいてセンサ20で観測される観測データを取得し、記憶部26に蓄積する一連のロギング動作を開始する。
【0041】
汎用携帯端末3は、ステップS7にて記録装置2に送信した動作条件、及びステップS2にて取得したGPS情報とからなる複合情報をサーバ装置4へ自動的に送信する準備をステップS9にて行う。具体的には、汎用携帯端末3は、設定管理アプリケーションにおいて記録装置2の動作条件とGPS情報とを複合情報生成部35で1つのデータとして纏めて保持する。ここで、複合情報生成部35は、サーバ装置4へ複合情報が送信されるまでの間、一時的に複合情報を保持する。
【0042】
次に、設定管理アプリケーションは、ステップS10において、汎用携帯端末3の通信状態を確認し、仮に記録装置2の設置位置が通信回線Nの通信圏内である場合には、複合情報生成部35に保持された複合情報をサーバ装置4にアップロードする。ただし、本実施形態のように、記録装置2の設置位置は、通信回線Nの通信圏外である場合が多い。そのため、汎用携帯端末3は、ステップS10において、通信状態を確認して通信回線Nが切断状態である場合に、当該複合情報の送信を保留する。
【0043】
汎用携帯端末3は、作業者が記録装置2の設置作業を終えて市街地に戻る過程において、ステップS11として示すように、通信回線Nの通信状態を定期的に繰り返し監視する。そして、汎用携帯端末3は、通信回線Nの通信圏内に入ったときに、ステップS12において通信が復旧したことを確認する。
【0044】
汎用携帯端末3は、通信が復旧したことを条件として、ステップS13において複合情報生成部35に保持された複合情報をサーバ装置4に自動的に送信する(複合情報送信ステップ)。すなわち、汎用携帯端末3は、ステップS6において作業者が記録装置2に対して設定操作を行なった後は、作業者が複合情報の送信操作を行うことなく、通信回線Nの復旧と共に自動的に複合情報を送信する。これにより、作業者は、通信回線Nの通信状態を確認することなく、また、サーバ装置4への複合情報の送信自体を意識することなく、記録装置2を管理する上で必要な情報をサーバ装置4へ送信することができる。
【0045】
図3のステップS10からステップS12においては、通信状態の観点から複合情報を自動送信する方法を示しているが、汎用携帯端末3にバッテリ切れが生じた場合であっても同様の手順により複合情報を自動送信してもよい。すなわち、ステップS9において自動送信準備を行なった後で複合情報を自動送信する前に汎用携帯端末3の電源がOFFとなった場合、汎用携帯端末3が通信圏内において充電され、電源がONに復帰したことを条件として、サーバ装置4へ複合情報が自動送信される。
【0046】
サーバ装置4は、ステップS14において、汎用携帯端末3から受信した複合情報を複合情報保存部44に保存し(複合情報保存ステップ)、当該複合情報に基づいて、記録装置2が収集する観測データを管理するためのデータベースをストレージ45に生成する(ステップS15)。これにより、観測設定管理システム1は、記録装置2の動作条件及び観測データをクラウドとしてのサーバ装置4で管理することができ、例えば過去の観測データを汎用携帯端末3の要求に応じて通信回線Nを介して提供することができる。
【0047】
上記したように、記録装置2の設置時における初期設定においては、記録装置2を管理するための情報を汎用携帯端末3を介してサーバ装置4へアップロードする手順について主に説明した。一方、記録装置2の動作条件を変更する場合や、記録装置2から観測データを回収する場合においても初期設定と同様に、記録装置2と汎用携帯端末3との通信、及び汎用携帯端末3とサーバ装置4との通信により、各種情報をサーバ装置4へアップロードする。これによりサーバ装置4は、データベースにおける記録装置2の動作条件及び観測データを更新することができる。
【0048】
以上のように、観測設定管理システム1は、記録装置2の動作条件を汎用携帯端末3により設定すると共に、記録装置2の設置位置におけるGPS情報と記録装置2の動作条件とからなる複合情報をサーバ装置4に自動的に送信し、サーバ装置4におけるデータベース上で記録装置2の動作条件及び観測データを管理することができる。これにより、観測設定管理システム1は、特に記録装置2の設置時において、記録装置2の設定作業を簡素化することができ、観測機器の設定における作業者の負担を軽減することができる。
【0049】
続いて、本発明の変形例について説明する。図4は、本発明の変形例に係る観測設定管理システム10の概略図である。観測設定管理システム10は、上記した観測設定管理システム1の構成において通信機5をさらに備え、観測データがサーバ装置4へ自動的に送信される点が上記した観測設定管理システム1と異なる。以下、上記した実施形態と異なる部分について説明することとし、上記の実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
観測設定管理システム10は、記録装置2及びセンサ20の設置時において、記録装置2に接続される通信機5も併せて設置される。通信機5は、山間部であっても通信回線Nにアクセスすることが可能であり、記録装置2の情報をサーバ装置4に送信することができる。通信機5は、例えば記録装置2の記憶部26に逐次蓄積される観測データを、所定の時間間隔でサーバ装置4のデータベースにアップロードする。これにより、サーバ装置4は、記録装置2に逐次記録される観測データによりデータベースが自動的に更新され、記録装置2の初期設定の後に速やかに観測データの収集が可能となる他、観測データに異変が生じた場合に速やかに警報を出力することができる。
【0051】
以上のように、本発明の変形例に係る観測設定管理システム10によれば、例えば山間部のようなサーバ装置4から遠く離れた場所に記録装置2が設置された場合であっても、初期設定の後に速やかに観測データの収集が開始できる。これにより、観測設定管理システム10は、例えば土砂崩れ等の自然災害が発生した場所に記録装置2を設置して二次災害を防止する警報システムの構築において、観測データの監視を速やかに開始することができ、二次災害のリスクを効果的に低減することができる。
【0052】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば上記の実施形態においては、センサ20は、地下水を観測する水位計として例示したが、観測対象が河川や湖、天然ダムの水位を観測する水位計であってもよく、また、降水量を観測する雨量計、山の斜面や法面の傾斜を観測する傾斜計、又は地表面の変位量を観測する伸縮計等、観測対象に応じた他の観測機器であってもよい。
【0053】
特に、土砂崩れの発生が疑われる場所、既に土砂崩れが発生し二次災害の危険性がある場所、山の斜面における亀裂の兆候が見られる場所の監視においては緊急性が高い場合が多く、傾斜計又は伸縮計の設置と初期設定とを速やかに完了して観測データの取得を早急に開始することが重要となる。このような場合においても、本発明によれば、作業者が現場において観測機器の設置及び初期設定を行なった後、現場を監視するシステム環境を可及的速やかにサーバ装置4に構築することができる。
【符号の説明】
【0054】
1、10 観測設定管理システム
2 記録装置
20 センサ
3 汎用携帯端末
4 サーバ装置
N 通信回線
図1
図2
図3
図4