(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929170
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】鋼管杭の接合構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20210823BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20210823BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20210823BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20210823BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
E02D27/12 Z
E02D5/28
E04B1/24 G
E04B1/58 507S
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-169311(P2017-169311)
(22)【出願日】2017年9月4日
(65)【公開番号】特開2019-44486(P2019-44486A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】村田 祥一
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
【審査官】
彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−045337(JP,A)
【文献】
特開2000−220152(JP,A)
【文献】
特開2017−008543(JP,A)
【文献】
実開昭59−163609(JP,U)
【文献】
特開2004−183266(JP,A)
【文献】
特開2013−221255(JP,A)
【文献】
特開2016−070047(JP,A)
【文献】
特開2008−045342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/12
E02D 5/28
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭と、
前記鋼管杭の杭頭部の内側に、前記杭頭部の上端面と面一に設けられた内プレートと、
前記杭頭部の内周面と前記内プレートの外縁部とを接合する溶接部と、
前記内プレートの上面に載置及び溶接されて前記杭頭部に接合された鋼製の梁部材と、
を有する鋼管杭の接合構造。
【請求項2】
前記梁部材に作用する上向きの力を前記鋼管杭に伝達する力伝達手段が設けられている請求項1に記載の鋼管杭の接合構造。
【請求項3】
前記力伝達手段は、
前記杭頭部の外側に、前記杭頭部の上端面と面一に設けられ、上面に前記梁部材が溶接された外プレートと、
前記外プレートの下面に設けられた複数のスタッドと、
コンクリートにより形成されて前記杭頭部を取り囲み、前記複数のスタッドが埋設されたコンクリート部と、
を有する請求項2に記載の鋼管杭の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の杭頭部に鋼製の梁部材を接合する鋼管杭の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭の杭頭部に、この杭頭部上に載置された鋼製の梁部材を接合する鋼管杭の接合構造がある。例えば、特許文献1には、鋼管杭の杭頭部の上面に取り付けられたトッププレート上にH形鋼からなる水平梁を載置し、トッププレートに水平梁をボルト接合することにより、鋼管杭の杭頭部に水平梁を接合する杭基礎構造が開示されている。
【0003】
トッププレートは、トッププレートの下面に取り付けられたリブを鋼管杭の杭頭部外周面に現場溶接することによって、鋼管杭の杭頭部に取り付けられている。リブは、予め工場で溶接によりトッププレートの下面に取り付けられている。
【0004】
しかし、この鋼管杭の接合構造では、予め工場で溶接によりトッププレートにリブを取り付けなければならない。また、例えば、現場で、鋼管杭の杭頭部上面にトッププレートを載置した状態でトッププレートの下面にリブを現場溶接しようとすると、現場溶接を上向きの溶接作業により行わなければならないので、この溶接作業が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−45342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、鋼管杭の杭頭部に鋼製の梁部材を接合するために用いられるプレートを鋼管杭の杭頭部へ接合する作業手間を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様の発明は、鋼管杭と、前記鋼管杭の杭頭部の内側に、前記杭頭部の上端面と面一に設けられた内プレートと、前記杭頭部の内周面と前記内プレートの外縁部とを接合する溶接部と、前記内プレートの上面に載置
及び溶接されて前記杭頭部に接合された鋼製の梁部材と、を有する鋼管杭の接合構造である。
【0008】
第1態様の発明では、鋼管杭の杭頭部の内側に設けられた内プレートの上面に、鋼製の梁部材を載置することによって、鋼管杭の杭頭部に鋼製の梁部材を力伝達可能に接合することができる。
【0009】
また、鋼管杭の杭頭部の内側に内プレートを設けることによって、杭頭部の内周面と内プレートの外縁部とを接合する溶接部を下向きの溶接作業によって形成することができる。これにより、鋼管杭の杭頭部に鋼製の梁部材を接合するために用いられるプレート(内プレート)を鋼管杭の杭頭部へ接合する作業手間を低減することができる。
【0010】
さらに、鋼管杭の杭頭部の内側に内プレートを設けることにより、鋼管杭内への雨水等の水の進入を防ぐことができ、鋼管杭の内部が錆びるのを抑制することができる。
【0011】
第2態様の発明は、第1態様の鋼管杭の接合構造において、前記梁部材に作用する上向きの力を前記鋼管杭に伝達する力伝達手段が設けられている。
【0012】
第2態様の発明では、力伝達手段によって、梁部材が上方へ引き上げられるのを防ぐことができる。
【0013】
第3態様の発明は、第2態様の鋼管杭の接合構造において、前記力伝達手段は、前記杭頭部の外側に、前記杭頭部の上端面と面一に設けられ
、上面に前記梁部材が溶接された外プレートと、前記外プレートの下面に設けられた複数のスタッドと、コンクリートにより形成されて前記杭頭部を取り囲み、前記複数のスタッドが埋設されたコンクリート部と、を有する。
【0014】
第3態様の発明では、コンクリート部に埋設された複数のスタッドによって、梁部材が上方へ引き上げられるのを防ぐことができる。
【0015】
また、コンクリート部によって、鋼管杭の杭頭部の圧縮、引張及び曲げ耐力を高めることができる。
【0016】
さらに、コンクリート部によって、鋼製杭の杭頭部の外周面が錆びるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成としたので、鋼管杭の杭頭部に鋼製の梁部材を接合するために用いられるプレートを鋼管杭の杭頭部へ接合する作業手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る柱構造体を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鋼管杭の接合構造を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る鋼管杭の接合構造を示す側面図である。
【
図6】従来の鋼管杭の接合構造を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る力伝達手段のバリエーションを示す側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る力伝達手段のバリエーションを示す側面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る鋼管杭の接合構造の適用例を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る鋼管杭の接合構造の適用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る鋼管杭の接合構造について説明する。
【0020】
図1の正面図には、改修工事により補強構造10を設けることによって耐震補強が施された柱構造体12が示されている。柱構造体12は、地盤14中に埋設された基礎16に支持されて、地盤14上に立設されている。また、柱構造体12には、配管18やケーブル20等が敷設されたラック22が架設されている。
【0021】
補強構造10は、柱構造体12の外側へ張り出すようにして柱構造体12の下部に設けられたH形鋼からなる鋼製の梁部材24と、地盤14中に埋設された円筒状の鋼管杭26とを有して構成されている。
【0022】
図2の正面図、
図3の側面図、及び
図3のA−A断面図である
図4に示すように、鋼管杭の接合構造28は、鋼管杭26、内プレート30、外プレート32、溶接部34、36、梁部材24、及び力伝達手段38を有して構成され、鋼管杭26の杭頭部40に梁部材24を接合している。
【0023】
図2及び
図3に示すように、内プレート30は、鋼管杭26の杭頭部40の内側に、杭頭部40の上端面と面一となるようにして設けられている。また、杭頭部40の内周面と内プレート30の外縁部とは、開先溶接によって接合されている。すなわち、杭頭部40の内周面と内プレート30の外縁部とは、開先溶接によって形成された溶接部34によって接合されている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、外プレート32は、鋼管杭26の杭頭部40の外側に、杭頭部40の上端面と面一となるようにして設けられている。また、杭頭部40の外周面と外プレート32の内縁部とは、開先溶接によって接合されている。すなわち、杭頭部40の外周面と外プレート32の内縁部とは、開先溶接によって形成された溶接部36によって接合されている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、梁部材24は、内プレート30の上面と外プレート32の上面とに載置されている。また、梁部材24の下フランジ42の側面と内プレート30の上面とは、開先溶接によって接合されている。すなわち、梁部材24の下フランジ42の側面と内プレート30の上面とは、開先溶接によって形成された溶接部44によって接合されている。さらに、梁部材24の下フランジ42の側面と外プレート32の上面とは、開先溶接によって接合されている。すなわち、梁部材24の下フランジ42の側面と外プレート32の上面とは、開先溶接によって形成された溶接部46によって接合されている。そして、梁部材24は、内プレート30と外プレート32とに溶接接合されることによって、鋼管杭26の杭頭部40に接合されている。
【0026】
図2、
図3及び
図4に示すように、力伝達手段38は、外プレート32、スタッド48、及びコンクリート部50を有して構成され、梁部材24に作用する上向きの力を鋼管杭26に伝達する。
【0027】
外プレート32の下面には、スタッド48が複数(本例では、4つ)設けられている。
図2、
図3、及び
図3のB−B断面図である
図5に示すように、コンクリート部50は、鋼管杭26の杭頭部40を取り囲むようにして鉄筋コンクリートにより角柱状に形成されており、スタッド48が埋設されている。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る鋼管杭の接合構造の作用と効果について説明する。
【0029】
本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、鋼管杭26の杭頭部40の内側に設けられた内プレート30の上面に、鋼製の梁部材24を載置することによって、鋼管杭26の杭頭部40に鋼製の梁部材24を力伝達可能に接合することができる。
【0030】
また、本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、鋼管杭26の杭頭部40の内側に内プレート30を設けることによって、杭頭部40の内周面と内プレート30の外縁部とを接合する溶接部34を下向きの溶接作業によって形成することができる。これにより、鋼管杭26の杭頭部40に鋼製の梁部材24を接合するために用いられるプレート(内プレート30)を鋼管杭26の杭頭部40へ接合する作業手間を低減することができる。
【0031】
例えば、
図6の正面図に示すように、従来の鋼管杭の接合構造52では、鋼管杭54の杭頭部56の上面に取り付けられたトッププレート58に鋼製の梁部材60を載置し、トッププレート58に梁部材60を溶接やボルト接合等によって接合することにより、梁部材60が鋼管杭54の杭頭部56に接合されているが、現場で、トッププレート58を溶接部62により鋼管杭54の杭頭部56に接合する溶接作業を上向きで行わなければならないので、この溶接作業が煩雑となる。
【0032】
さらに、本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、鋼管杭26の杭頭部40の内側に内プレート30を設けることにより、鋼管杭26内への雨水等の水の進入を防ぐことができ、鋼管杭26の内部が錆びるのを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、コンクリート部50に埋設された複数のスタッド48によって、梁部材24が上方へ引き上げられるのを防ぐことができる。すなわち、力伝達手段38によって、梁部材24が上方へ引き上げられるのを防ぐことができる。さらに、コンクリート部50によって、鋼管杭26の杭頭部40の圧縮、引張及び曲げ耐力を高めることができる。また、コンクリート部50によって、鋼管杭26の杭頭部40の外周面が錆びるのを抑制することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0035】
なお、本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、梁部材24と内プレート30、及び梁部材24と外プレート32とを、開先溶接により接合した例を示したが、梁部材24と内プレート30、及び梁部材24と外プレート32とは、隅肉溶接等の他の溶接方法で接合してもよいし、ボルト接合等の他の接合方法で接合してもよい。
【0036】
また、本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、内プレート30と外プレート32との両方に梁部材24を接合した例を示したが、梁部材24は、梁部材24から鋼管杭26へ力が伝達されるように鋼管杭26に梁部材24が接合されればよく、内プレート30のみに梁部材24を接合(外プレート32に梁部材24は接合されない)してもよいし、外プレート32のみに梁部材24を接合(内プレート30に梁部材24は接合されない)してもよい。また、外プレート32は無くてもよい。
【0037】
さらに、本実施形態の鋼管杭の接合構造28では、
図2及び
図3に示すように、力伝達手段38を、外プレート32、スタッド48、及びコンクリート部50を有して構成した例を示したが、
図7の側面図に示す力伝達手段64、及び
図8の側面図に示す力伝達手段66のように、梁部材24と鋼管杭26の杭頭部40とを繋ぐ鋼製の鉛直プレート68、70を有して力伝達手段を構成するようにしてもよい。このようにすれば、梁部材24に作用する上向きの鉛直力を鋼管杭26へ確実に伝達させることができる。
【0038】
図7の力伝達手段64においては、梁部材24から左右に張り出すようにして一対の鉛直プレート68が配置されている。また、鉛直プレート68の下部が鋼管杭26の杭頭部40の外周面に溶接接合されており、鉛直プレート68の上部が梁部材24の上フランジ72、ウェブ74及び下フランジ42に溶接接合されている。
【0039】
図8の力伝達手段66においては、梁部材24から左右に張り出すようにして一対の鉛直プレート70が配置されている。また、鉛直プレート70の下部が鋼管杭26の杭頭部40の外周面に溶接接合されており、鉛直プレート70の上部が梁部材24の上フランジ72、ウェブ74及び下フランジ42に溶接接合されている。さらに、鉛直プレート70には切欠き78が形成されており、この切り欠き78によって外プレート32が鉛直プレート70に干渉するのを防いでいる。
【0040】
なお、力伝達手段64、66において、鉛直プレート68、70の数や配置は、適宜決めればよい。
【0041】
また、本実施形態では、
図1に示すように、柱構造体12に設けられた補強構造10を構成する梁部材24と鋼管杭26の杭頭部40との接合構造に鋼管杭の接合構造28を適用した例を示したが、この鋼管杭の接合構造28は、新築される構造物に適用してもよいし、改修される構造物に適用してもよい。
【0042】
さらに、この鋼管杭の接合構造28は、さまざまな用途の鋼製の梁部材の鋼管杭への接合に対して適用することができる。例えば、
図9の正面図、及び
図10の側面図に示す耐震補強用架構80に、鋼管杭の接合構造28を適用してもよい。
【0043】
耐震補強用架構80は、建物82に隣り合って構築されて建物82の耐震補強をしている。耐震補強用架構80は、柱部材84、耐震壁88、基礎梁部材90、96、及び梁部材92を有して構成され、地盤94中に埋設された鋼管杭26、86に支持されている。基礎梁部材96は、基礎梁部材90と平面視にて略直交するように配置されている。
【0044】
また、柱部材84、基礎梁部材90、及び梁部材92によって、柱梁架構100が形成され、この柱梁架構100の架構内に耐震壁88が設けられている。柱部材84、基礎梁部材90、96、及び梁部材92は、鉄骨鉄筋コンクリートによって形成されており、耐震壁88は、鉄筋コンクリートによって形成されている。
【0045】
そして、基礎梁部材90を構成するH形鋼からなる梁部材24と鋼管杭26の杭頭部40、及び基礎梁部材96を構成するH形鋼からなる梁部材24と鋼管杭26の杭頭部40とが、鋼管杭の接合構造28によって接合されている。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
24 梁部材
26 鋼管杭
28 鋼管杭の接合構造
30 内プレート
32 外プレート
34 溶接部
38、64、66 力伝達手段
40 杭頭部
48 スタッド
50 コンクリート部