(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0016】
[第1実施形態]
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の全体側面図である。空気入りタイヤ10は、トラック・バス用の空気入りラジアルタイヤ(重荷重用空気入りタイヤ)であり、特に、停留所での停止を繰り返す路線バスへの装着を意図したタイヤである。空気入りタイヤ10のサイズは、特に限定されないが、路線バスで用いられる一般的なサイズとしては、275/70R22.5、245/70R19.5、及び205/80R17.5が挙げられる。
【0017】
空気入りタイヤ10は、路面と接するトレッド部20と、ホイールリム(不図示)に組み付けられるビード部30とを備える。また、空気入りタイヤ10は、トレッド部20とビード部30との間に設けられるタイヤサイド部100を備える。
【0018】
なお、
図1などでは図示されていないが、空気入りタイヤ10は、一般的な重荷重用空気入りタイヤと同様に、空気入りタイヤ10の骨格を形成するカーカスプライ、及びトレッド部20のタイヤ径方向内側に設けられる一対の交錯ベルト層などを備える。
【0019】
トレッド部20には、空気入りタイヤ10が装着される車両(バス)の特性(例えば、低速走行主体または高速走行主体)及び要求される性能(例えば、低転がり抵抗、耐摩耗性)によって適切パターン(トレッドパターン)が形成される。
【0020】
タイヤサイド部100には、凸状部110が設けられる。凸状部110は、タイヤサイド部100の外側の壁面を構成するサイドウォール100a(
図1において不図示、
図5参照)の表面に設けられる。
【0021】
凸状部110は、サイドウォール100aの表面からタイヤ幅方向外側に凸となる。凸状部110は、車両が停留所に停止する際に、最初に縁石300(
図1において不図示、
図6参照)に接触し得る部分である。
【0022】
凸状部110は、第1凸状部分111と、第2凸状部分160とを含む。第1凸状部分111は、タイヤ周方向に沿って一周するように設けられる複数設けられる。第2凸状部分160は、タイヤ周方向において隣接する第1凸状部分111に連なり、隣接する第1凸状部分111の間に設けられる。
【0023】
このように、隣接する第1凸状部分111の間には第2凸状部分160が介在し、複数の第1凸状部分111が、タイヤ周方向において、所定の間隔を空けて複数設けられる。つまり、複数の第1凸状部分111は、所定の空隙を隔てて、タイヤ周方向に沿って一周するように設けられる。
【0024】
第1凸状部分111のタイヤ周方向サイズは、第2凸状部分160のタイヤ周方向サイズよりも大きい。また、後述するが、サイドウォール100aの表面から第1凸状部分111のタイヤ幅方向外側面までの高さH1は、サイドウォール100aの表面から第2凸状部分160のタイヤ幅方向外側面までの高さH2よりも高い。
【0025】
凸状部110は、タイヤサイド部100などと同様にゴム材料によって形成される。凸状部110は、タイヤサイド部100の他の部分よりも摩擦係数の低いゴムによって形成してもよい。
【0026】
例えば、凸状部110に用いるゴム組成物に、特定の配合範囲の充填材及び特定のアミド化合物を配合する。より具体的には、当該ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック30質量部以上、シリカ10質量部以下、及び脂肪酸アミド0.1〜10質量部を含有する。
【0027】
ゴム成分としては、ジエン系ゴムを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することが寄り好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0028】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンーブタジエン共重合体ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、及びアクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。
【0029】
ゴム組成物が含有するカーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、IISAF、N339、HAF、FEF、GPFグレードのカーボンブラックなどが用いられる。また、ゴム組成物が含有する脂肪酸アミドとしては、炭素数8〜22の脂肪酸アミドが好ましく、例えばカプリル酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミドなどが挙げられる。
【0030】
(2)凸状部110の構成
次に、凸状部110の具体的な構成について説明する。
図2は、凸状部110の一部拡大側面図である。
【0031】
図2に示すように、複数の第1凸状部分111は、第2凸状部分160を隔てて、タイヤ周方向に沿って一周するように設けられる。本実施形態では、8つの第1凸状部分111の間に設けられる第2凸状部分160の大きさは、全て同一である。つまり、複数の第1凸状部分111は、タイヤ周方向において等間隔で設けられる。但し、第2凸状部分160の大きさは、必ずしも全て同一でなくても構わない。
【0032】
第1凸状部分111のタイヤ周方向に沿ったサイズ(タイヤ周方向サイズS1)は、第1凸状部分111のタイヤ径方向における最大幅W1よりも大きい。つまり、タイヤ側面視において、第1凸状部分111は、タイヤ径方向において所定幅を有する円弧状である。言い換えると、第1凸状部分111は、タイヤ周方向に延びる円弧状の帯状体である。
【0033】
また、上述したように、第1凸状部分111のタイヤ周方向サイズS1は、第2凸状部分160のタイヤ周方向サイズS2よりも大きい。
【0034】
本実施形態では、タイヤ周上において、第1凸状部分111と第2凸状部分160とが占める比率、具体的には、S1/(S1+S2)は、0.909以上、0.980以下であることが好ましい。つまり、0.909≦S1/(S1+S2)≦0.980の関係を満たす。例えば、タイヤ周方向サイズS1を100とした場合、タイヤ周方向サイズS2は、2以上、10以下である。
【0035】
タイヤ側面視において、第1凸状部分111の表面110sには、タイヤ周方向に沿って延びる細溝部200が形成される。
【0036】
具体的には、細溝部200は、第1細溝210と、第2細溝220とを含む。第1細溝210は、タイヤ径方向内側に形成される。第2細溝220は、第1細溝210よりもタイヤ径方向外側に形成される。
【0037】
第1細溝210及び第2細溝220も、第1凸状部分111と同様に、タイヤ周方向に延びる円弧状である。
【0038】
図3は、第1凸状部分111及び第2凸状部分160の一部拡大側面図である。
図3に示すように、タイヤ側面視において、第1凸状部分111は、タイヤ径方向内側においてタイヤ周方向に沿って延びる内側側面部121と、内側側面部121よりもタイヤ径方向外側においてタイヤ周方向に沿って延びる外側側面部122とを有する。
【0039】
また、第1凸状部分111は、内側側面部121の一端と、外側側面部122の一端とに連なり、タイヤ径方向に延びる径方向側面部131を有する。
【0040】
本実施形態では、内側側面部121と径方向側面部131とが交差する第1凸状部分111の角部は、タイヤ側面視において、面取りされている。なお、タイヤ周方向における第1凸状部分111の他端部側も同様である(
図2参照)。具体的には、第1凸状部分111の当該角部には、面取り部132が形成される。
【0041】
また、本実施形態では、タイヤ側面視において、第1凸状部分111の表面110sの外周部分も面取りされている。具体的には、第1凸状部分111の表面110sと、内側側面部121とが交差する角部は面取りされている。
【0042】
より具体的には、第1凸状部分111の当該角部には、面取り部135が形成される。同様に、表面110sと、外側側面部122とが交差する角部、及び表面110sと径方向側面部131とが交差する角部も面取りされている。つまり、面取り部135は、第1凸状部分111の外周部分を一周するように形成される。
【0043】
細溝部200、つまり、第1細溝210及び第2細溝220は、第1凸状部分111のタイヤ周方向における端部に開口せずに、第1凸状部分111内において終端する。具体的には、第1細溝210及び第2細溝220は、径方向側面部131に開口せずに、第1凸状部分111内において終端する。
【0044】
また、タイヤ側面視において、細溝部200(第1細溝210及び第2細溝220)のタイヤ周方向端部は、角がなく丸く形成される。具体的には、第1細溝210の端部211は、タイヤ側面視において半円状に形成される。また、第2細溝220の端部221も、タイヤ側面視において半円状に形成される。つまり、端部211及び端部221は、曲率が付与された形状(ラウンド形状)を有する。
【0045】
図4は、
図2に示したF4-F4線に沿った凸状部110の断面図である。
図4に示すように、第1凸状部分111は、サイドウォール100aからタイヤ幅方向外側に向けて凸となっている。また、第2凸状部分160も、サイドウォール100aからタイヤ幅方向外側に向けて凸となっている。
【0046】
なお、第1凸状部分111は、突起部分と呼ばれてもよく、第2凸状部分160は、底上げ部と呼ばれてもよい。
【0047】
サイドウォール100aの表面から第1凸状部分111のタイヤ幅方向外側面、具体的には、表面110sまでの高さH1は、サイドウォール100aの表面から第2凸状部分160のタイヤ幅方向外側面、具体的には、表面160sまでの高さH2よりも高い。
【0048】
本実施形態では、高さH1は、3.0mm、高さH2は、1.0mmである。また、本実施形態では、高さH1及び高さH2は、タイヤ周方向において一定である。
【0049】
上述したように、第1凸状部分111は、タイヤ径方向に延びる径方向側面部131を有するため、隣接する第1凸状部分111の間には、凹部170が形成される。また、径方向側面部131と、第2凸状部分160との境界部分161は、曲率が付与された形状(ラウンド形状)を有する。
【0050】
本実施形態では、細溝部200、具体的には、第1細溝210の第1細溝210B、及び第2細溝220の溝底部分220btの位置(最深位置)は、タイヤ幅方向において、第2凸状部分160のタイヤ幅方向外側面、つまり、表面160sの位置と同一である。
【0051】
図5は、
図2に示したF5-F5線に沿った第1凸状部分111を含むタイヤサイド部100の一部断面図である。
図5に示すように、第1凸状部分111は、サイドウォール100aからタイヤ幅方向外側に向けて凸となっている。
【0052】
第1凸状部分111は、接着ゴム層150を介してサイドウォール100aに形成されている。本実施形態では、上述したように、タイヤ幅方向に沿った第1凸状部分111の厚み(つまり、
図4に示した高さH1と同様)は、3.0mm、タイヤ幅方向に沿った接着ゴム層150の厚みは、1.5mmである。
【0053】
接着ゴム層150の全部または一部は、摩耗した凸状部110(または第1凸状部分111のみ)を貼り替える(リサイド)する際に、凸状部110と一緒に除去されても構わない。また、本実施形態では、摩耗した凸状部110のみを貼り替えることを前提としているが、タイヤサイド部100(具体的には、サイドウォール100a)の一部を一緒に貼り替えても構わない。
【0054】
また、第1細溝210及び第2細溝220のタイヤ径方向に沿った溝幅は、3.5mmである。面取り部135の幅も3.5mmである。また、タイヤ幅方向に沿った内側側面部121及び外側側面部122の高さ(厚み)は、2.0mmである。つまり、面取り部135によって、内側側面部121及び外側側面部122の高さは、表面110sの位置のおける高さよりも1.0mm低くなっている。
【0055】
なお、タイヤ径方向における第1凸状部分111の位置は、特に限定されないが、縁石300(
図6参照)との接触を考慮すると、タイヤ幅方向における最大幅位置Wmaxを含む領域を占めるように設けることが考えられる。
【0056】
本実施形態では、第1凸状部分111のタイヤ径方向外側端(外側側面部122の位置)と、第2細溝220のタイヤ径方向外側端との距離D11は、第1細溝210のタイヤ径方向外側端と、第2細溝220のタイヤ径方向内側端との距離D21よりも長い。
【0057】
また、第1凸状部分111のタイヤ径方向内側端(内側側面部121の位置)と、第1細溝210のタイヤ径方向内側端との距離D12は、第1細溝210のタイヤ径方向外側端と、第2細溝220のタイヤ径方向内側端との距離D21よりも長い。
【0058】
つまり、第1凸状部分111のタイヤ径方向における端部から細溝部200の端部までの表面110s部分の長さは、第1細溝210と第2細溝220との間における表面110s部分の長さよりも長い。
【0059】
本実施形態では、
図5に示すように、つまり、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面視において、細溝部200の溝底部分は、角がなく丸く形成される。つまり、細溝部200の溝底部分は、曲率が付与された形状(ラウンド形状)を有する。
【0060】
具体的には、第1細溝210の溝底部分210btは半円状である。同様に、第2細溝220の溝底部分220btも半円状である。
【0061】
(3)作用・効果
次に、凸状部110が設けられた空気入りタイヤ10の効果について説明する。
図6は、車両(不図示)に装着された空気入りタイヤ10が縁石300に接触する状態を模式的に示す。
【0062】
図6に示すように、路面290を走行する車両が縁石300に接近すると、空気入りタイヤ10の凸状部110が、最初に縁石300の側面300aと接触する。これにより、タイヤサイド部100(サイドウォール100a表面)が直接縁石300に擦り付けられることによるタイヤサイド部100の摩耗、及び当該摩耗などに起因する故障を防止する。
【0063】
このように、凸状部110は、他の部分よりも先に摩耗する犠牲摩耗部として機能する。
【0064】
凸状部110は、複数の第1凸状部分111と第2凸状部分160によって構成され、複数の第1凸状部分111は、所定の空隙を隔てて、タイヤ周方向に沿って一周するように設けられる。このため、摩耗が進展した凸状部110のみ(具体的には、摩耗が進展した第1凸状部分111のみ)の貼り替え(リサイド)が可能である。なお、第2凸状部分160及び接着ゴム層150含めての貼り替え(リサイド)も可能である。
【0065】
さらに、隣接する第1凸状部分111間には、第1凸状部分111よりもタイヤ幅方向における突出量が少ない第2凸状部分160が設けられる。また、第1凸状部分111のタイヤ周方向サイズS1は、第2凸状部分160のタイヤ周方向サイズS2よりも大きい。
【0066】
このため、タイヤサイド部100を保護する凸状部110として必要な機能を確保しつつ、使用するゴム量を削減できる。これにより、空気入りタイヤ10の重量増を抑制でき、転がり抵抗の低減にも寄与する。
【0067】
また、第2凸状部分160は、隣接する第1凸状部分111に連なっているため、凸状部110が縁石300に接触した際に、第1凸状部分111のタイヤ周方向における端部、具体的には、径方向側面部131及び面取り部132の部分が大きく変形して動くことを抑制し得る。これにより、第1凸状部分111のタイヤ周方向における端部が摩耗核となって偏摩耗などが進展することを抑制し得る。
【0068】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、凸状部110が設けられたサイドウォール100aの貼り替えを前提としつつ、凸状部110の十分な耐久性と、高い環境性能とを両立し得る。
【0069】
本実施形態では、タイヤ側面視において、第1凸状部分111の表面110sには、タイヤ周方向に沿って延びる細溝部200が形成される。このため、第1凸状部分111が縁石300の側面300aに接触し、第1凸状部分111に対する応力が生じた場合でも、第1凸状部分111の特定部分に応力が集中し難く、第1凸状部分111の耐久性を向上し得る。
【0070】
本実施形態では、第1細溝210の第1細溝210B、及び第2細溝220の溝底部分220btの位置(最深位置)は、タイヤ幅方向において、第2凸状部分160のタイヤ幅方向外側面、つまり、表面160sの位置と同一である。
【0071】
このため、第1凸状部分111の摩耗が進展し、細溝部200が認識できなくなった場合には、凸状部110の貼り替え(リサイド)を促すウェアインジケータとして機能し得る。また、このように第1凸状部分111の摩耗が進展した場合でも、第1凸状部分111の残存部分及び第2凸状部分160によって、タイヤサイド部100を保護し得る。
【0072】
また、第1凸状部分111の摩耗が進展すると、第1凸状部分111の残存部分及び第2凸状部分160が、タイヤ周方向において、ほぼ平坦に連続的に繋がるような形状となる。このため、凸状部110の貼り替え(リサイド)をする際に、タイヤ周方向において凹凸がなく、作業を容易にし得る。
【0073】
本実施形態では、第1凸状部分111のタイヤ周方向サイズS1は、第1凸状部分111のタイヤ径方向における最大幅W1よりも大きい。このため、第1凸状部分111は、タイヤ周方向に長い帯状体となり、より確実に第1凸状部分111が縁石300と接触するようになる。これにより、凸状部110をより確実に犠牲摩耗部として機能させ得る。
【0074】
本実施形態では、第1凸状部分111と第2凸状部分160とは、0.909≦S1/(S1+S2)≦0.980の関係を満たす。このため、第1凸状部分111をより確実に犠牲摩耗部として機能させつつ、空気入りタイヤ10の重量増を抑制し得る。S1/(S1+S2)が0.909を下回ると、第1凸状部分111を犠牲摩耗部として十分に機能させることが難しくなる場合がある。一方、S1/(S1+S2)が0.980を上回ると、空気入りタイヤ10の重量増が著しくなるとともに、S2が極端に短くなるため、第1凸状部分111のみをリサイドする場合の作業性が悪化する。
【0075】
[第2実施形態]
(1)タイヤの全体概略構成
図7は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10Aの全体側面図である。以下、上述した空気入りタイヤ10と異なる部分について主に説明する。
【0076】
図7に示すように、空気入りタイヤ10Aのタイヤサイド部100には、凸状部110Aが設けられる。凸状部110Aは、第1凸状部分111Aと、第2凸状部分160Aとを含む。
【0077】
第1凸状部分111Aは、タイヤ周方向に沿って一周するように設けられる複数設けられる。第2凸状部分160Aは、タイヤ周方向において隣接する第1凸状部分111Aに連なり、隣接する第1凸状部分の間に設けられる。
【0078】
(2)凸状部110Aの構成
図8は、凸状部110Aの一部拡大側面図である。
図8に示すように、互いに隣接する第1凸状部分111Aは、第2凸状部分160Aを隔てて、タイヤ周方向に沿って一周するように設けられる。
【0079】
タイヤ側面視において、第1凸状部分111Aは、タイヤ径方向内側においてタイヤ周方向に沿って延びる内側側面部121Aと、内側側面部121Aよりもタイヤ径方向外側においてタイヤ周方向に沿って延びる外側側面部122Aとを有する。また、第1凸状部分111Aは、内側側面部121Aの一端と、外側側面部122Aの一端とに連なる第1径方向側面部141、及び内側側面部121Aの他端と、外側側面部122Aの他端とに連なる第2径方向側面部142とを有する。
【0080】
また、第1凸状部分111Aには、第1細溝210A及び第2細溝220Aが形成される。第1細溝210A及び第2細溝220Aは、タイヤ周方向に延びる円弧状である。
【0081】
第1径方向側面部141及び第2径方向側面部142は、タイヤ側面視において、タイヤ径方向に対して同方向に傾斜する。また、第1径方向側面部141のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ1は、第2径方向側面部142のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ2よりも小さい。つまり、第2径方向側面部142は、タイヤ径方向に対して、第1径方向側面部141よりも傾斜している。このため、第2凸状部分160Aの形状も、第1径方向側面部141及び第2径方向側面部142の形状に応じ、タイヤ径方向に対して傾斜した形状である。
【0082】
このように、第1凸状部分111Aは、第1凸状部分111と比較すると、第1径方向側面部141及び第2径方向側面部142のタイヤ径方向に対する傾斜角度が異なっている。
図2などに示したように、第1凸状部分111の径方向側面部131は、タイヤ径方向に沿って、つまり、タイヤ径方向と平行に延びる。一方、第1凸状部分111Aの第1径方向側面部141及び第2径方向側面部142は、タイヤ径方向と平行ではなく、傾斜して延びる。
【0083】
空気入りタイヤ10Aは、回転方向(
図8の矢印参照)が意図されており、縁石300との接近時には、第1径方向側面部141側から先に縁石300に接触し、第2径方向側面部142が後に縁石300に接触する。
【0084】
このような凸状部110Aによれば、第1径方向側面部141及び第2径方向側面部142は、第1凸状部分111Aのタイヤ周方向における先端と後端とが先細り状になるように、タイヤ径方向に対して傾斜しているため、当該先端及び後端において、実質的に縁石300と接触する第1凸状部分111Aの面積を低減でき、凸状部110Aの耐久性をさらに向上し得る。
【0085】
また、空気入りタイヤ10Aにおいても、第1凸状部分111Aと第2凸状部分160Aとは、0.909≦S1/(S1+S2)≦0.980の関係を満たす。なお、空気入りタイヤ10Aの場合、S1及びS2は、第1凸状部分111A及び第2凸状部分160Aのタイヤ径方向における中心部分を基準とした値とする。
【0086】
さらに、空気入りタイヤ10Aにおいても、第1細溝210Aの溝底部分、及び第2細溝220Aの溝底部分の位置(最深位置)は、タイヤ幅方向において、第2凸状部分160Aのタイヤ幅方向外側面の位置と同一である。
【0087】
(3)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0088】
例えば、上述した凸状部110は、さらに、次のように変更してもよい。
図9は、変更例に係る空気入りタイヤ10Bの全体側面図である。空気入りタイヤ10Bは、第1実施形態に係る空気入りタイヤ10の変更例である。以下、空気入りタイヤ10と異なる部分について主に説明する。
【0089】
図9に示すように、空気入りタイヤ10Bのタイヤサイド部100には、凸状部110Bが設けられる。凸状部110Bは、第1凸状部分111Bと、第2凸状部分160Bとを含む。
【0090】
第1凸状部分111Bには、細溝部200Bが形成される。細溝部200Bは、第1細溝210Bと、第2細溝220Bとを含む。
【0091】
第1細溝210B及び第2細溝220Bは、第1凸状部分111Bのタイヤ周方向における端部に開口する。
【0092】
図10は、タイヤ周方向に沿った凸状部110Bの断面図である。具体的には、
図10は、
図2と同様に、
図2に示すF4-F4線に沿った位置における凸状部110Bの断面図である。
【0093】
図10に示すように、凸状部110Bには、凸状部110の面取り部135(
図4参照)のような面取り部は形成されていない。凸状部110Bのタイヤ周方向における端部112は、丸く形成されている。つまり、端部112は、曲率が付与された形状(ラウンド形状)を有する。隣接する第1凸状部分111Bの間には、凹部170Bが形成される。
【0094】
また、凸状部110Bでも、細溝部200B、具体的には、第1細溝210Bの第1細溝210B、及び第2細溝220Bの溝底部分220btの位置(最深位置)は、タイヤ幅方向において、第2凸状部分160Bのタイヤ幅方向外側面、つまり、表面160sの位置と同一である。
【0095】
さらに、第1凸状部分111Bは、次のように変更してもよい。
図11は、第1凸状部分111Cの一部拡大側面図である。
図11に示すように、第1凸状部分111Cには、径方向側面部131に開口する第1細溝210C及び第2細溝220Cが形成される。
【0096】
具体的には、第1細溝210Cの端部211C、及び第2細溝220Cの端部221Cは、径方向側面部131に開口する。
【0097】
また、第1細溝210Cは、第1凸状部分111Cの表面110sに接続する部分が面取りされた面取り部212を有する。同様に、第2細溝220Cは、第1凸状部分111Cの表面110sに接続する部分が面取りされた面取り部222を有する。面取り部212(面取り部222)は、端部211C(端部221C)に向かうに連れて広くなる。
【0098】
第1凸状部分111Cによれば、端部211C及び端部221Cが径方向側面部131に開口するため、第1凸状部分111Cの変形に対する追従性が向上する。また、端部211C(端部221C)に向かうに連れて広くなる面取り部212(面取り部222)が形成されるため、第1細溝210C(第2細溝220C)が開口しても、径方向側面部131の特定部分に応力が集中することを低減できる。
【0099】
すなわち、第1凸状部分111Cによれば、耐久性を確保しつつ、第1凸状部分111Cの変形に対する追従性を向上させることができる。
【0100】
図12は、変更例に係る空気入りタイヤ10Dの全体側面図である。空気入りタイヤ10Dは、第2実施形態に係る空気入りタイヤ10Aの変更例である。以下、空気入りタイヤ10Aと異なる部分について主に説明する。
【0101】
図12に示すように、空気入りタイヤ10Dのタイヤサイド部100には、凸状部110Dが設けられる。凸状部110Dは、第1凸状部分111Dと、第2凸状部分160Dとを含む。
【0102】
第1凸状部分111Dには、細溝部200Dが形成される。細溝部200Dは、第1細溝210Dと、第2細溝220Dとを含む。
【0103】
凸状部110Dは、
図10及び
図11に示した凸状部110Bと同様に、第1細溝210D及び第2細溝220Dが、第1凸状部分111Dのタイヤ周方向における端部に開口する。
【0104】
図13は、変更例に係る空気入りタイヤ10Eの全体側面図である。空気入りタイヤ10Eは、第1実施形態に係る空気入りタイヤ10の変更例である。以下、空気入りタイヤ10と異なる部分について主に説明する。
【0105】
図13に示すように、空気入りタイヤ10Eのタイヤサイド部100には、凸状部110Eが設けられる。凸状部110Eは、第1凸状部分111Eと、第2凸状部分160Eとを含む。
【0106】
空気入りタイヤ10と比較すると、第1凸状部分111Eには、細溝部200が形成されていない。つまり、第1凸状部分111Eの表面には、細溝を含めた凹部などが形成されておらず、第1凸状部分111Eは、単純な円弧状の帯状体である。
【0107】
また、
図4などに示した凸状部のタイヤ周方向に沿った断面形状は、次のように変更してもよい。
【0108】
図14は、変更例に係る凸状部110Fの断面図である。具体的には、
図14は、タイヤ周方向に沿った凸状部110Fの断面図である。
【0109】
図14に示すように、凸状部110Fを構成する第1凸状部分111Fの断面は、タイヤ周方向における中央部に向かうに連れてタイヤ幅方向の厚みが徐々に増える円弧状である。つまり、第1凸状部分111Fの断面は、ドーム状であり、タイヤ周方向における中央部が端部よりも隆起している。
【0110】
図15は、変更例に係る凸状部110Gの断面図である。具体的には、
図15は、タイヤ周方向に沿った凸状部110Gの断面図である。
【0111】
図15に示すように、凸状部110Gを構成する第1凸状部分111Gの断面は、タイヤ周方向における中央部に向かうに連れてタイヤ幅方向の厚みが徐々に減る円弧状である。つまり、第1凸状部分111Gの断面は、逆ドーム状であり、タイヤ周方向における端部が中央部よりも隆起している。
【0112】
凸状部110Fまたは凸状部110Gのような形状を適用するか否かは、空気入りタイヤの使用環境または要求性能に応じて決定され得る。
【0113】
凸状部110Fは、タイヤ周方向における中央部が隆起しているため、当該中央部から縁石300に接触し易くなる。これにより、凸状部110Fのタイヤ周方向における端部の摩耗及び損傷を抑制し得る。
【0114】
凸状部110Gは、タイヤ周方向における端部が隆起しているため、当該端部から縁石300に接触し易くなる。これにより、当該端部を積極的に縁石300に接触させる一方、逆ドーム状の断面形状とすることによって、タイヤ周方向における中央部の厚みを抑制でき、ゴム使用量及び重量の低減に寄与し得る。
【0115】
また、上述した実施形態では、細溝部200の溝深さは一定であったが、当該溝深さは、タイヤ周方向において変化してもよい。例えば、上述した凸状部110Fであれば、第1凸状部分111Fの形状に合わせて、第1細溝210B及び溝底部分220bt(
図4参照)の断面形状も、タイヤ周方向における中央部が端部よりも隆起するような円弧状であってもよい。
【0116】
なお、上述した実施形態では、第1細溝210B及び溝底部分220btの位置(最深位置)は、タイヤ幅方向において、第2凸状部分160のタイヤ幅方向外側面、つまり、表面160sの位置と同一であったが、当該位置は、必ずしも同一でなくてもよい。つまり、タイヤ幅方向において、表面160sの位置は、第1細溝210B及び溝底部分220btよりも外側でもよいし、内側でもよい。
【0117】
さらに、
図4に示した第1凸状部分111には、面取り部135が形成されていたが、面取り部135を形成せずに、
図10に示した第1凸状部分111Bのように、ラウンド形状の端部112を設けるようにしてもよい。
【0118】
また、上述した第1実施形態(及び第2実施形態)では、凸状部110(凸状部110A)は、タイヤサイド部100の他の部分よりも摩擦係数の低いゴムによって形成してもよい旨記載したが、凸状部110に用いられるゴム組成物は、必ずしもタイヤサイド部100の他の部分よりも摩擦係数の低いゴムでなくても構わない。
【0119】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。