(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のヒートポンプにおいて、蒸発器(300)と圧縮機(302)とを備え、前記蒸発器(300)から前記圧縮機(302)に導かれる動作蒸気のための蒸気管路(102)が、少なくとも部分的に前記凝縮器(306)内に配置され、この動作蒸気のための蒸気管路(102)は、前記凝縮面(901a、901b)の前記一部(901b)とは別の部分(901a)となる壁(901a)を有する、ことを特徴とするヒートポンプ。
圧縮された動作蒸気を凝縮する凝縮器(306)を備え、この凝縮器(306)は、前記圧縮された動作蒸気の凝縮が行われる凝縮領域(904)と、前記動作蒸気とは異なるガスであって前記動作蒸気に混入している外来ガスを回収する外来ガス回収空間(900)と、を有し、前記外来ガス回収空間(900)には、凝縮面(901a、901b)が設けられ、前記凝縮器は、前記凝縮面(901a、901b)と前記凝縮領域(904)との間に配置された隔壁(902)を有し、前記凝縮器(306)はさらに、前記圧縮された動作蒸気の凝縮により加熱される液体であって前記圧縮された動作蒸気がその液体中に凝縮される液体を前記凝縮器(306)内に導く液体流入口デバイス(402)を有し、この液体流入口デバイス(402)は、前記凝縮面(901a,901b)の少なくとも一部(901b)となる壁(901b)とを有するヒートポンプの動作方法において、
前記凝縮面(901a、901b)が凝縮対象の前記動作蒸気の温度よりも低温となるように前記凝縮面(901a、901b)を冷却するステップと、
前記外来ガス回収空間(900)から前記外来ガス回収空間(900)内で凝縮されなかったガスを排気するステップと
を含むことを特徴とするヒートポンプの動作方法。
圧縮された動作蒸気を凝縮する凝縮器(306)を備え、この凝縮器(306)は、前記圧縮された動作蒸気の凝縮が行われる凝縮領域(904)と、前記動作蒸気とは異なるガスであって前記動作蒸気に混入している外来ガスを回収する外来ガス回収空間(900)と、を有し、前記外来ガス回収空間(900)に結合されて、前記外来ガス回収空間(900)から前記外来ガス回収空間(900)内で凝縮されなかったガスを排出する外来ガス排出装置(906)をさらに備えるヒートポンプを製造する方法において、
前記外来ガス回収空間(900)内に、前記ヒートポンプの動作中に凝縮対象の動作蒸気の温度よりも低温となる凝縮面(901a、901b)を配置するステップと、
前記凝縮器(306)の内部であって前記凝縮面(901a、901b)と前記凝縮領域(904)との間に隔壁(902)を配置するステップと、
前記凝縮器(306)内に、前記圧縮された動作蒸気の凝縮により加熱される液体であって前記圧縮された動作蒸気がその液体中に凝縮される液体を前記凝縮器(306)内に導く液体流入口デバイス(402)を配置し、この液体流入口デバイス(402)の壁(901b)を、前記凝縮面(901a,901b)の少なくとも一部(901b)とするステップと
を含むことを特徴とするヒートポンプの製造方法。
【背景技術】
【0002】
図8Aおよび
図8Bは、特許文献1に記載されるヒートポンプを説明する図である。このヒートポンプは、まず、動作液としての水を蒸発させる蒸発器10を備え、これにより、出力側の吸引蒸気ライン12内に蒸気を発生させる。この蒸発器は、蒸発空間(蒸発室)(
図8Aには図示せず)を備え、蒸発空間内で20hPa未満の蒸気圧を作り出すように構成され、15°C未満の温度で、蒸発空間内で水が蒸発する。水としては、例えば、地下水、ある種の塩を含有し地中または集水管内を自由に循環する塩水(brine)、河川水、湖水または海水が用いられる。任意の種類の水、すなわち、石灰水、石灰を含まない水、海水(salty water)または塩を含まない水、などを使用することができる。これは、どのような種類の水でも、すなわち上記の水材料の全てが、良好な水特性を有するという事実に基づく。水は、「R718」としても知られ、エンタルピー差比が6であり、ヒートポンププロセスに利用可能である。このエンタルピー差比6という値は、例えばR134aなどの典型的なエンタルピー差比の2倍以上である。
【0003】
吸引導管12を通して、水蒸気が、圧縮/凝縮システム14に供給される。縮機/凝縮システム14は、例えばターボ圧縮機型の遠心圧縮機のような、速度型機関(fluid flow engine)を備える。これを
図8Aに符号16で示す。この速度型機関は、動作蒸気を少なくとも25hPaより大きい蒸気圧に圧縮するように構成される。25hPaは約22°Cの凝縮温度に相当し、これだけでも、床下暖房システムにとって十分な加熱流動温度である。より高い流動温度を生成するため、30hPaより大きい圧力を速度型機関16によって生成することができる。30hPaの圧力は24°Cの凝縮温度を有し、60hPaの圧力は36°Cの凝縮温度を有し、100hPaの圧力は45°Cの凝縮温度を有する。床下暖房システムは、非常に寒い日でも、45°Cの流動温度で十分な暖房を提供できるように設計されている。
【0004】
速度型機関は、圧縮された動作水蒸気を液化するように構成された凝縮器18に連結される。凝縮プロセスによって、動作水蒸気内に含まれるエネルギーが凝縮器18に供給され、前進ライン20aを介して暖房システムに供給される。戻りライン20bを介して、動作液が凝縮器に流れ戻る。
【0005】
この発明によれば、高エネルギー水蒸気からより冷たい暖房回路水によって熱(エネルギー)を直接的に引き出し、熱を暖房回路水に吸収させて、その暖房回路水を加熱することが好ましい。このプロセスでは、十分な量のエネルギーが水蒸気から取り出され、その水蒸気は凝縮されて液化し、暖房回路水の一部となる。
【0006】
したがって、凝縮器および/または暖房システムへの材料の導入は、水蒸気およびその凝縮液の連続供給にもかかわらず凝縮器が凝縮空間内の水位を常に最大レベルより下に維持するように、排水管22によって調整される。
【0007】
既に説明したように、開回路を使用すること、すなわち、熱源であるところの水を熱交換器を使用することなく直接蒸発させること、が好ましい。また、代替的に、蒸発させるべき水を、最初に外部熱交換器により加熱しておくこともできる。さらに、凝縮器側に必然的に存在していた二次熱交換器の損失を避けるためにも、媒体を直接使用することもでき、また、例えば床下暖房システムを備える家を考えた場合、蒸発器からの水が直接、床下暖房システム内で循環させることができる。
【0008】
また、これとは別に、前進ライン20aを入力とし戻りライン20bを出力とする熱交換器を、凝縮器側に配置することもできる。この熱交換器は、凝縮器内に存在する水を冷却し、これにより、別個の床下暖房液(典型的には水)を加熱する。
【0009】
水が動作媒体として使用されるという事実、そして、蒸発した地下水のその部分だけが速度型機関に供給されるという事実により、水の純度は何ら差異を生じない。可能であれば直結される凝縮器と床下暖房システムと全く同様に、速度型機関には常に、蒸留水が供給される。このため、現在のシステムに比べて、メンテナンスの必要性が低減される。言い換えれば、システムには蒸留水が供給されるだけであり、このため排水管22内の水が汚染されることはないので、システムは自己洗浄型である。
【0010】
さらに、留意しておくべきことは、速度型機関は、飛行機のタービンと同様に、圧縮された媒体を油などの問題のある物質と接触させないという特性を示すことである。水蒸気は、単にタービンおよび/またはターボ圧縮機によって圧縮されるだけであり、純度を損なう油または他の媒体と接触することはなく、汚染されることはない。
【0011】
したがって、排水管を通って排出される蒸留水は、他の規制と対立しない限り、容易に地下水に再供給することができる。また、例えば庭やオープンスペースで流出させても良く、規制により要求されているのであれば、下水システムを経由して下水道に流しても良い。
【0012】
動作媒体としての水とエンタルピー差比との組み合わせにより、その使いやすさはR134aの2倍となる。また、システムの閉鎖性に課せられた要求が減少すること、そして、速度型機関の使用により清潔の観点から何らの問題もなく必要な圧縮係数が効率的に達成されることにより、効率的で環境的に優しいヒートポンププロセスが提供される。
【0013】
図8Bは、種々の圧力とその圧力に関連する蒸発温度を説明するテーブルを示す。このテーブルから、特に動作媒体としての水に対して、蒸発器内を比較的低圧力にすべきことがわかる。
【0014】
特許文献2は、軽量で大容量の高性能遠心圧縮機を備えるヒートポンプシステムを開示している。2段目の圧縮機から排出される蒸気は、周囲温度または利用可能な冷却水の温度を超える飽和温度を示し、これにより放熱が可能になる。圧縮された蒸気は、2段目の圧縮機から凝縮器ユニットに輸送される。凝縮器ユニットは、内部に設けられた粒子充填層と、上側に設けられ水循環ポンプから水が供給される冷却水噴霧手段とからなる。圧縮された水蒸気は、凝縮器内で粒子充填層を通って上昇し、そこで、下方に流れる冷却水と直接に接触する。蒸気は凝縮し、冷却水に吸収された凝縮液の潜熱が凝縮液と冷却水を介して大気中に放出され、凝縮液と冷却水はシステムから一緒に除去される。凝縮器は、導管を介して、真空ポンプにより、非凝縮性ガスで連続的に洗い流される。
【0015】
特許文献3は、凝縮される蒸気を動作液内に凝縮するための凝縮空間を有する凝縮器を開示している。凝縮空間は容積空間として構成され、凝縮空間の上端と下端との間に横方向の境界を有する。さらに、凝縮器は、蒸気導入領域を備える。この蒸気導入領域は、凝縮空間の側端に沿って延び、側方境界を介して凝縮空間に横方向に、凝縮対象となる蒸気を供給する構成である。このように、実際の凝縮は、凝縮器の容積の増加なしに、容積凝縮で行われる。その理由は、凝縮対象となる蒸気が、一方の側から凝縮容積内および/または凝縮空間内に正面から進入するだけでなく、横方向から、望ましくは全ての側面から、導入されるからである。これは、直接対向流凝縮と比較して、同一の外形寸法で、利用可能な凝縮容積が増加することを確実にするだけでなく、同時に凝縮器の効率も改善される。その理由は、凝縮空間内に存在する凝縮対象となる蒸気の流れの方向が、凝縮液の流れ方向を横切るからである。
【0016】
特に、ヒートポンプが比較的低圧力、すなわち大気圧より低い、または明らかに低い圧力で動作するとき、ヒートポンプを排気して、蒸発器内の圧力を、使用する動作媒体(例えば水)が、そのときの温度で蒸発を開始するのに十分に低くする必要がある。
【0017】
しかし、同時にこれは、低圧をヒートポンプの運転中にも維持しなければないないことを意味する。他方で、特に合理的なコストを伴う設計において、潜在的に、ヒートポンプ内に漏れが生じる可能がある。同時に、凝縮器内でもはや凝縮せず、したがってヒートポンプ内の圧力上昇をもたらす外来ガスについては、液体またはガス状の媒体から除去される。ヒートポンプ内の外来ガスの割合が増加するにつれて、効率がますます低くなることが判明している。
【0018】
外来ガスが存在するという事実にもかかわらず、一般には、それをガス空間内に存在する所望の動作蒸気であると仮定しなければならない。それゆえ、優勢な動作蒸気と比較的僅かな割合の外来ガスとを含む動作蒸気と外来ガスを含む混合気体が存在することになる。
【0019】
連続して排気すると、結果として、外来ガスが確かに除去されることになる。しかし、同時に、動作蒸気もヒートポンプから連続的に抜き出される。特に、凝縮器側で排気が行われるとき、抜き出された動作蒸気は既に加熱されている。しかし、圧縮および/または加熱された動作蒸気の抜き出しは、2つの点で不利である。ひとつは、未使用のエネルギーがシステムから除去され、通常は環境に放出されることである。もうひとつは、動作蒸気を連続的に加熱すると、特に閉鎖系内では、動作液のレベルが低下することである。したがって、動作液を補充しなければならない。さらに、真空ポンプは相当量のエネルギーを必要とする。特に、ヒートポンプ内の外来ガスの濃度が比較的低く、それでいて、すでに低濃度での効率損失があるため、実際には、ヒートポンプ内で必要とされる動作蒸気を抜き出すためにエネルギーが費やされる、という問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aは、ヒートポンプ100を示す。ヒートポンプ100は、蒸発空間102内で動作液を蒸発させる蒸発器を備える。このヒートポンプ100はさらに、蒸発した動作液を、凝縮器基部106によって囲まれた凝縮空間104内で凝縮させる凝縮器を備える。
図1Aは断面図と側面図の両方として見ることができるが、この
図1Aに示すように、蒸気空間102は、少なくとも部分的に凝縮空間104によって取り囲まれている。さらに、蒸気空間102は、凝縮器基部106によって凝縮空間104から分離される。さらに、凝縮器基部は、蒸発空間102を画定するように蒸発器基部108に接続される。ひとつの実装形態では、圧縮機110が、蒸発空間102の上方または異なる位置に設けられる。
図1Aでは詳細には説明されていないが、圧縮機110は、原則として、蒸発した動作液を圧縮し、圧縮蒸気112として凝縮空間104に導くように構成されている。凝縮空間は、凝縮器壁114によって外側と境界付けられている。凝縮器壁114はまた、凝縮器基部106と同様に、蒸発器基部108に取り付けられている。特に、蒸発器基部108との境界を形成する領域における凝縮器基部106の寸法は、
図1Aに示す実施形態において、凝縮器基部が凝縮器壁114により完全に取り囲まれるようになっている。これは、凝縮空間が
図1Aに示すように蒸発器基部まで直角に延びており、そして、蒸発器基部が同時に、遠方まで、典型的には凝縮空間104の全体に、延びていることを意味する。
【0036】
この凝縮器と蒸発器との「絡み合った」構成、すなわち凝縮器基部が蒸発器基部に接続されていることを特徴とする構成は、特に高いレベルのヒートポンプ効率を提供し、したがって、ヒートポンプの超小型設計を可能にする。大きさの程度として、例えば円筒形のヒートポンプの場合、凝縮器壁114を、直径30から90cm、高さ40から100cmの円筒とする。寸法は、ヒートポンプの要求出力クラスの関数として選択されるが、上述の寸法範囲内が好ましい。このように、非常に小型に設計することができ、さらに、低コストで容易に製造できる。その理由は、本発明の好ましい実施形態による蒸発器基部が液流入口および排出口の全てを備え、その結果、側部あるいは上部からの液供給および排出が無いように構成される場合、特にほぼ真空にさらされる蒸発空間に対して、界面数を容易に減らすことができるからである。
【0037】
さらに、留意しておくべきことは、ヒートポンプの動作方向が、
図1Aに示す通りであることである。これは、動作中、蒸発器基部がヒートポンプの下部となることを意味する。これは、このヒートポンプを他のヒートポンプまたは対応するポンプユニットに接続するラインとは関係ない。これは、次のことを意味する。すなわち、運転中には、蒸発空間内で生成された蒸気が上方に上昇し、モーターによって方向転換され、凝縮空間の上部から基部に供給されること、および、凝縮液が基部から頂部に向けられて、凝縮空間内を上方から凝縮空間内に供給され、次に、凝縮のため、凝縮空間内の個々の液滴または小さな液体流によって頂部から基部へ流れ、好ましくは横方向に供給される 圧縮蒸気と反応する。
【0038】
この構成は、蒸発器が凝縮器内にほぼ完全にまたは完全に配置されるという相互に「絡み合った」構成であり、最適な空間利用での非常に効率的な実装を可能にする。凝縮空間は蒸発器基部まで直角に延びているので、凝縮空間はヒートポンプの全体の高さ内に、または少なくともヒートポンプの大部分内に構成される。しかし、同時に、蒸発空間は、ヒートポンプの全高にわたって延びるので、可能なだけ大きくなる。相互に絡み合った構成により、蒸発器が凝縮器の下方に配置されている構成とは対照的に、空間が最適に利用される。これは、一方では、ヒートポンプの特に効率的な動作を可能にし、他方では、蒸発器と凝縮器の両方が高さ全体にわたって延在するので、特に省スペースでコンパクトな設計を可能にする。したがって、明らかに、蒸発空間および凝縮空間の「厚さ」のレベルは減少する。しかしながら、蒸発の大部分が、蒸発領域がほぼ全容積を満たす下側領域で起こるので、凝縮器内で先細になる蒸発空間の「厚さ」の減少は問題ないことがわかる。一方、凝縮空間の厚さの減少は、特に下部領域、すなわち蒸発空間が利用可能な領域のほぼ全体を占めている部分において、重要ではない。その理由は、凝縮が生じるのは大部分が上部、すなわち蒸発器の空間が既に比較的薄くなった部分であり、凝縮空間のための十分な空間が残っているからである。したがって、この相互に絡み合った構成は、各機能空間にその必要となる大きな容積が設けられている点で、理想的である。蒸発器の空間は基部に大きな容積を有し、凝縮器の空間は上部に大きな容積を有する。それにもかかわらず、他方の機能空間が大きな容積を有するそれぞれの機能空間のための対応する小さな容積は、例えば特許文献3に記載されている2つの機能要素が互いに上下に配置されるヒートポンプと比較して、効率の向上に寄与する。
【0039】
好ましい実施形態では、圧縮機が凝縮空間の上側に配置され、圧縮蒸気が圧縮機によって方向転換され、同時に、凝縮空間との間の隙間に供給される。したがって、下方へ流れる凝縮液に対する蒸気の交差流方向が達成されるので、特に高いレベルの効率での凝縮が達成される。この交差流を含む凝縮は、特に、蒸発器空間が大きい上部領域において有効であり、蒸発器空間の利益のために凝縮器空間が小さい下部領域には特に大きな領域を必要とせず、それでいて、その領域に到達した蒸気粒子の凝縮を可能にする。
【0040】
凝縮器基部に接続された蒸発器基部は、凝縮器の取込部および排出部、および蒸発器の取込部および排出部を収容するように構成されることが望ましく、可能であれば、付加的に、蒸発器内および/または凝縮器内のセンサのための通路が収容される。このようにして、ほぼ真空下にある蒸発器には、凝縮器の取込部および排出部を通す必要がなくなる。蒸発器を通過すると漏れの可能性があるが、それが無いので、ヒートポンプ全体として、欠陥が生じにくくなる。そして、凝縮器基部には、凝縮器の供給部/排出部が凝縮器基部により定義される蒸発空間内に延びることがないように、凝縮器の流入口/排出口が配置される位置にそれぞれ凹部が設けられる。
【0041】
凝縮空間は凝縮器の壁によって境界が定められており、この壁は蒸発器の基部に取り付けられていてもよい。したがって、蒸発器基部は、凝縮器壁および凝縮器基部の両方のための界面を有し、さらに、蒸発器および凝縮器の両方の液体流入口のすべてを有する。
【0042】
実施形態によっては、蒸発器基部は、各流入口の接続管を備える構成であり、それらの接続管の断面は、蒸発器基部の他方の側の開口の断面とは異なる。各接続管の形状は、その形状すなわち断面形状が接続管の長さに沿って変化するが、流速に関与する管径は、公差±10%である。このようにして、接続管を流れる水の泡立ちが防止される。したがって、接続管の成形によって得られる良好な流動条件により、対応する導管管/ラインを可能な限り短くすることができ、ひいては、ヒートポンプ全体の小型設計に寄与する。
【0043】
蒸発器基部の実施形態によっては、凝縮器の取込部は、ほぼ「眼鏡」の形状で、2つ以上の流れに分割する。これにより、凝縮器内の凝集液を凝縮器の上部の2以上の位置で同時に供給することができる。したがって、頂部から基部への強く、しかも特に均等な凝縮器流が達成され、そのうえ、頂部から凝縮器に導入される蒸気の高効率な凝縮を達成することが可能となる。
【0044】
ヒートポンプの圧縮機モーターに冷却液を供給するホースを接続するため、蒸発器内に、凝縮器の水のための直径のより小さい流入口を設けることもできる。冷却に使用されるのは、蒸発器に供給される冷たい液体ではなく、凝縮器に供給される暖かい液体であるが、典型的な運転状況では、ヒートポンプのモーターを冷却するには十分に冷たい。
【0045】
蒸発器基部は、組み合わされた機能を示すことを特徴とする。ひとつは、非常に低い圧力下にある蒸発器を通過する必要のある凝縮器の流入口がないことである。もうひとつは、外側に向かう界面を示すことであり、蒸発器表面積を最大にするのは円形なので、この界面は円形が望ましい。流入口/排出口は全て、ひとつの蒸発器基部を通り、そこから、蒸発空間内あるいは凝縮空間内のいずれかに延びる。蒸発器基部をプラスチック射出成形により製造することが特に有利である。その理由は、比較的複雑な形状の吸入/排出管をプラスチック射出成形で低コストに容易に実現できるからである。一方、蒸発器基部を容易に入手できる部品として実現するにより、蒸発器基部を十分な構造安定性をもつように製造することができ、これにより、特に低い蒸発器圧力に容易に耐えることができるようになる。
【0046】
本出願では、同一の参照番号は、機能が同一または同一の要素を表す。しかしながら、それらが複数回出現する場合には、すべての図面において参照番号の全てが繰り返されるわけではない。
【0047】
図1Bは、本発明の第一の実施形態に係るガストラップを備えたヒートポンプを示す。このヒートポンプは、蒸発器と凝縮器とが絡み合った構成であるが、蒸発器と凝縮器については、他のどのような配置でもよい。
【0048】
特に、ヒートポンプは、蒸発器300を備え、この蒸発器300が、圧縮機302に結合される。圧縮機302は、蒸気パイプ304を経由して、低温蒸気を吸引し、圧縮し、そして加熱する。加熱されて圧縮された動作蒸気は、凝縮器306に排出される。蒸発器300は、冷却対象領域308に結合される。具体的には、蒸発器300と冷却対象領域308は、蒸発器流入ライン310および蒸発器排出ライン312を経由して結合され、典型的にはそこに、ポンプ314を備える。さらに、加熱対象領域318が設けられ、凝縮器306に結合される。具体的には、加熱対象領域318と凝縮器306は、凝縮器流入ライン320および凝縮器排出ライン322を介して結合される。凝縮器306は、凝縮器流入導管305内の加熱された動作蒸気を凝縮するように構成される。
【0049】
さらに、外来ガス流入ライン325を介して凝縮器306に結合されるガストラップについて説明する。このガストラップは、特に、外来ガス流入口332と、場合によってはさらに別の外来ガス流入口334,336を備える。さらに、ハウジング330は、動作液流入口338および動作液排出口340を備える。ヒートポンプはさらに、ハウジング330からガスを排出するためのポンプ342を備える。特に、動作液流入口338、動作液排出口340およびハウジングは、動作中、動作液流入口338からハウジング330内の動作液排出口340まで動作液の流れ344が生じるように構成および配置される。
【0050】
加えて、動作液流入口338は、動作中、凝縮器内の凝縮対象の動作蒸気よりも低温の動作液、好ましくは凝縮器に入るか凝縮器から出る動作液、を供給する。この目的のために、動作液は、蒸発器排出ラインから分岐点350で取り出されることが好ましい。その理由は、その取り出される動作液が、システム内の最も低温の動作液だからである。分岐点350はポンプ314の下流(流動方向で)に配置されているので、ガストラップは、それ自身のポンプを必要としない。さらに、ガストラップからの逆流点、すなわち動作液排出口340を、ポンプ314の上流に配置された排出ラインの分岐点352に結合することが好ましい。
【0051】
実施形態によっては、ガストラップを通過する動作液の流れの体積は、ポンプ314によって達成される主たる流れの体積の1%よりも小さく、好ましくは、蒸発器から蒸発器排出ライン312を経由して冷却対象領域308、または冷却対象領域308が接続される熱交換機、に流入する主たる流れの0.5から2パーミルのオーダーである。
【0052】
図1Bは、動作液流がヒートポンプシステム内に収容された液体に由来することを示しているが、これはすべての実施形態では当てはまらない。代替的または追加的に、流れは、外部循環、すなわち外部冷却液体によって提供されてもよい。外部冷却液は、ガストラップを通って流れることができ、水の場合には何らの問題もない。しかし、循環が採用される場合、液体を冷却する冷却領域に液体が流入するのは、ガストラップの出口である。ここでは、例えばペルチェ素子による冷却が用いられ、ガストラップに入る液体がガストラップから出る液体よりも冷たくなるようにする。
【0053】
図1Bに示すように、動作蒸気と外来ガスとの混合気体は、凝縮器306から、外来ガス流入ライン325を経由して、ガストラップのハウジング330へと通過する。ガストラップのハウジング330内では、355に示すように、低温の動作液内で、ガス混合気体内の動作蒸気の凝縮が生じる。しかし、外来ガスは、凝縮によって除去することはできないが、同時に、357に示すように、ガストラップ内に蓄積する。蓄積された外来ガスのための空間を提供するため、ハウジングは、例えば上部に配置された、蓄積空間358を備える。
【0054】
ガストラップ内の圧力は、低温の動作液により、蒸発器の圧力と同程度のオーダーとなる。このため、凝縮器306内とガストラップ内とで圧力差が生じる。この圧力差により、凝縮器306からガストラップのハウジング330内への、外来ガス流入ライン325を通る流れが自動的に生じる。外来ガスと水蒸気の混合気体内に含まれ、外来ガス流入口332,334,336でハウジング内に入る水蒸気は、最も低温の場所に向かって流れる傾向がある。この最も低温の場所は、動作液がハウジングに入る場所、すなわち動作液流入口338である。したがって、水蒸気は、ハウジング330内を底部から上方に流れる。水蒸気の流れは外来ガス分子と共に運ばれ、357に示すように、ガストラップ内の頂部で集積する。その理由は、外来ガスは動作液と共には凝縮されないからである。したがって、ガストラップにより、凝縮器からハウジング内へのいわば自動的な流れを、その目的のためのポンプを必要とせずに生じさせ、また、外来ガスをガストラップ内で底部から上方に流れさせ、ハウジング330の上部領域に蓄積させ、ポンプ342によってそこから排出することができる。
【0055】
図1Bに示すように、動作液流入口338をポンプ314の排出、すなわち分岐点350に結合することが好ましい。しかしながら、実施形態によっては、他の比較的低温の液体を使用することもできる。例えば、温度レベルが凝縮器への還流320より低い蒸発器への還流、すなわち流入ライン310内のものを使用することもできる。ただし、システム内の最も低温の液体が、ガストラップの効率を最も高くする。ポンプ314の下流の分岐点350に結合された動作液流入口338の配置により、ガストラップへの動作液の供給のためのポンプが必要なくなる。しかし、専用の、または追加の機能として、ガストラップに作用するポンプが設けられている場合、動作液流入口338は、動作液の特定の流れをガストラップに向けるため、システム内の別の点に結合されてもよい。例えば
図4を参照して説明されているように、動作液を熱交換器の下流、すなわち「顧客」の側、で分岐してもよい。ただし、システムができるだけ顧客の影響をほとんど受けないようにすることを考えれば、このアプローチは好ましくはないが、原則的に可能である。
【0056】
図1Bに示すように、ポンプ342は、ハウジング330からガスを排出するように構成される。この目的のために、ポンプ342は、排気ライン371を介して蓄積空間358に連結される。ポンプ342は、排気側に、蓄積された外来ガスと残留水蒸気の混合気体を排出する排出ライン372を備える。実施形態によって、排出ライン372は、単に周囲に向かって開いていてもよく、容器に導き入れられてもよい。容器に導き入れられる場合、残留水蒸気はそこで凝縮し、最終的に排気されるか、あるいはシステムに再導入される。
【0057】
ポンプ342は、コントローラー373を介して制御される。ポンプの制御は、圧力差または圧力そのものにより、温度差または温度そのものにより、あるいは時系列制御または離散時間制御により行われる。可能な制御は、例えば、ガストラップ内の圧力Ptrap374を介して行われる。これとは別な制御として、動作液流入口338における流入温度Tin375または動作液排出口340における流出温度Tout376を介して行うこともできる。特に流出温度Tout376は、外来ガス流入ライン325から動作液中にどれだけ水蒸気が凝縮したかの目安になる。同時に、ガストラップ内の圧力Ptrap374は、どれだけ外来ガスが既に蓄積しているかの目安となる。外来ガスの蓄積量が増加すると、ハウジング330内の圧力が増加する。ハウジング330内の圧力が一旦特定の値を超えると、コントローラー373が起動し、例えば、圧力が所望の低い範囲になるまでの時間、ポンプ342をオンにする。その後、ポンプは再びオフされる。
【0058】
ポンプを制御するための代わりのパラメータとして、例えば、Tin375とTout376との差を用いることもできる。例えば、これらの2つの値の差が最小差より小さいことが判明した場合、それは、ガストラップ内の圧力の上昇により、水蒸気がほとんど凝縮しないことを意味する。そこで、特定の閾値を超える差に達するまでの時間、ポンプ342をオンにすることが有効である。その後、ポンプは再びオフにされる。
【0059】
したがって、測定可能な量は、圧力、温度(例えば凝縮点における)、動作液流入口と凝縮点との間の温度差、凝縮過程全体のための駆動圧力の増加、などである。ただし、最も簡単なのは、センサを全く必要としない温度差または時間間隔を介して制御を行うことである。これは、本実施形態では容易に可能である。その理由は、ガストラップは非常に効率的な外来ガス蓄積をもたらすからであり、その結果、ポンプが中断なく作動していないとき、システムからの動作蒸気の抜き出しが多すぎるという問題は生じないからである。
【0060】
図2A、
図2Bおよび
図3は、ガストラップの異なる実施形態を示す。
図2Aは、ガストラップの半開放変形例を示す。ここで、ガストラップは、好ましくは、動作液流入口338に連結された金属製のパイプ390を有する。動作液は下方に流れ、パイプ内および動作液排出部340内を流れる。流入口332によりガストラップ内に導入された動作媒体蒸気は、もはや動作液内に直接凝縮するのではなく、パイプ390の(低温の)表面に凝縮する。パイプ390の端部は動作液のレベル391内に配置され、パイプ表面に凝縮した水が、パイプに沿って下方に流れる。
【0061】
したがって、
図2Aは、低温表面、すなわちパイプ390という物体の表面に凝縮させる半開放型ガストラップを示す。
【0062】
図2Bは、層流的な流れを用いるさらなる変形例を示す。ここでは、ガストラップが斜めに配置され、および/またはハウジング330が斜めに形成されている。これにより、水は、流入口338から比較的穏やかに下方向に、乱流にはならずむしろ層流として、流入口332から排出口340に流れる。流入口332を通って供給された蒸気は、層流と共に凝縮し、外来ガスの蓄積空間358内には外来ガス成分357が蓄積する。凝縮が低温の液体内で直接に生じる開放システムではあるが、層流的な流れを用いている。
【0063】
図3は、開放構成を有するさらなる変形例を示す。この例では、動作液が頂部の流入口338から下側の排出口340へと直接にほぼ垂直に流れ、かなりの乱流が生じる。
図3はさらに、排出口340がサイホンの形態で構成されていることを示す。この構成により、ハウジングの底部で液体レベル391が維持されることが保証される。このようにして、流入口332から供給された動作媒体蒸気が、蒸発器の排出部、あるいは動作液流入口338が分岐される低温の流れに直接達することができない、ということを達成できる。直接達すると、外来ガスが分離されるのではなく、蒸発器側でシステム内に直接再導入されるからである。
【0064】
凝縮を改善するために、特に
図3に示す実施形態において、ハウジング330を乱流発生器で満たし、流入口338から排出口340への動作液の流れをできるだけ乱流とすることが有用である。
【0065】
したがって、
図2B、
図3および
図1Bは、凝縮が低温液体内で直接起こる開放型の変形例を示し、一方、
図2Aは、凝縮が、
図2Aで示したパイプのような、内部を低温の動作液が流入口338から排出口340に流れることにより低温の表面を有する仲介要素390の低温表面上で起こる変形例を示す。ただし、実施形態によっては、冷却を他の変形により実現することもでき、例えば、内部の液体/蒸気、または外部の冷却手段を使用する一方で、他の任意の手段を用いることにより実現することができ、ヒートポンプ内で、外来ガス流入ライン325を経由して凝縮器306に結合される有効なガストラップを有することができる。
【0066】
好ましくは、ハウジング330は、細長く構成され、具体的には、外来ガス蓄積空間328内の上部で50mm以上の直径を有し、底部すなわち凝縮領域内の直径が25mm以上を有するパイプとして構成される。さらに、凝縮領域および/または流れ面積、すなわち、吸気口338と排出口340との垂直方向の高さについて、少なくとも20cmの長さを有することが好ましい。さらに、ガストラップが斜めに配置されていても、流れが起こること、すなわちガストラップが少なくとも垂直成分を有することが好ましい。しかしながら、完全に水平なガストラップは好ましくはないが、動作中に動作液がハウジング内で動作液供給入口から動作液排出口まで流れる限り、可能である。
【0067】
図4は、2段構成のヒートポンプの実施形態を示す。1段目は、蒸発器300、圧縮機302および凝縮器306によって形成される。2段目は、蒸発器500、圧縮機502および凝縮器506によって形成される。蒸発器500は、蒸気吸入ライン504を経由して圧縮機502に接続され、圧縮機502は、圧縮蒸気用ライン505を経由して凝縮器506に接続される。2つ(またはそれ以上)の段を含むシステムは、排出口522および流入口520を有する。排出口522および流入口520は、加熱すべき領域に結合することができる熱交換器598に接続される。典型的には、これは顧客の側で行われ、加熱される領域は、典型的には、冷却用途の例における排気手段などのヒートシンク、または加熱用途の例における加熱手段である。
【0068】
さらに、システム300内に繋がる流入ライン310およびシステム300から出ている排出ライン312も、熱交換器398に接続される。熱交換器398は、通常、顧客の側で、冷却すべき領域308に結合することができる。ヒートポンプの冷却(冷房)用途の例として、冷却される領域は、コンピュータ室や処理室などの冷却されるべき空間である。ヒートポンプの加熱(暖房)用途の例として、冷却される領域は、例えば、空気ヒートポンプの場合の空気、地熱利用ヒートポンプの場合の地面、あるいは地下水/海水/塩水などの環境領域であり、そこから、加熱(暖房)処理のために熱が引き出される。
【0069】
2つのヒートポンプ段の結合は、実施形態の機能として行うことができる。ある段が「低温」段すなわち「低温領域」であるように結合が行われる場合、2段目は、「温暖」段すなわち「温暖領域」となる。この指定は、2つの段が動作しているとき、各部内の温度が、2段目より1段目がより低温であるという事実に由来する。
【0070】
本発明に関して特に有利なことは、2段目の凝縮器、およびさらに多くの段が存在する場合のそれぞれの段の凝縮器が、全て同一のガストラップに接続されてもよく、または同一のガストラップハウジング330に接続されてもよいことである。例えば、
図4は、第1の凝縮器306の外来ガス流入ライン325がハウジング330に結合されていることを示す。さらに、第2の凝縮器506からの別の外来ガス流入ライン525もまた、外来ガス流入口334に結合される。低温領域すなわち1段目の凝縮器、すなわち凝縮器306を、2段目すなわち温暖領域の凝縮器よりさらに前方の、ガストラップのハウジング330の頂部に結合することが望ましい。これにより、最大の外来ガス問題が発生する可能性がある場所では、凝縮および外来ガス蓄積のために、ガストラップ内に残る経路ができるだけ長いことが保証される。さらに、
図4は、ガストラップ用の動作液が、2つのヒートポンプ段からなる全システムの最低温度の位置、すなわち、熱交換機398に結合される1段目の蒸発器300の排出ライン312、で引き出されることを示す。これは
図4には示されていないが、
図1Bのポンプ314は、典型的には、分岐点352と分岐点350との間に配置される。代替の実施形態も選択することができる。
【0071】
ここで、動作液のガストラップへの分岐は、主たる流れ、すなわち蒸発器300から熱交換器398への全体の流れの、1%以下、好ましくは1パーミル以下である。
【0072】
同様のことが、外来ガス流入ライン325または525を経由する凝縮器からの蒸気の分岐にも当てはまる。凝縮器からハウジング330への導管の断面は、典型的には、主たるガス流の少なくとも1%が凝縮器に分岐されるか、好ましくは、1パーミル以下のガス流が凝縮器に分岐する。しかし、全体の閉ループ制御は、各凝縮器からガストラップへの圧力差に基づいて自動的に行われるので、ここでの正確な寸法は、適切に機能するためには重要ではない。
【0073】
図6は凝縮器を示す。この凝縮器は、凝縮空間100の全周を囲んで延びる蒸気導入ゾーン102を有する。特に、
図6は、凝縮器基部200を含む凝縮器の一部を示す。凝縮器基部200は、その上に配置された凝縮器ハウジング部202を有する。この凝縮器ハウジング部202は、
図6では透明に描かれているが、実際には必ずしも透明である必要はなく、プラスチック、ダイカストアルミニウムなどで形成される。縦型のハウジング部202はゴムシール210201上に置かれ、基部200と良好に封止される。さらに、凝縮器は、液体排出部203および液体取込部204、ならびに凝縮器内の中央に配置され
図6の基部から頂部に向かって先細になる蒸気流入口205を有する。留意しておくべきことは、
図6は、ヒートポンプおよびそのヒートポンプの凝縮器の実際に要求される設置方向を表し、
図6の設置方向では、ヒートポンプの蒸発器が凝縮器の下方に配置されることである。凝縮空間100は、籠状の境界部207によって外側と隔離されている。籠状の境界部207は、外側ハウジング部202と同様に透明に描かれ、通常、籠状に構成されている。
【0074】
さらに、グリッド209が配置され、
図6には示されていない充填材を支持するように構成される。
図6からわかるように、籠207は下向きにはある点までしか延びていない。籠207は蒸気を通すように設けられ、例えばポールリングのような充填剤を受け入れる。充填剤は凝縮空間に導入されるが、籠207内のみで、蒸気導入ゾーン102内には導入されない。しかし、充填材は、籠207の外側であっても、充填材の高さが籠の下側境界または僅かに上のいずれまでの高さのレベルまで充填される。
【0075】
図6の凝縮器は、動作液供給器を備える。この動作液供給器は、特に、動作液取込部204と、液体輸送領域210と、液体分配器212とによって形成される。動作液取込部204は、
図6に示すように、蒸気流入口の周りに上昇するように巻かれて配置される。液体分配器212は、好ましくは有孔板として構成される。特に、動作液供給器は、動作液を凝縮空間に供給するように構成されている。
【0076】
さらに、蒸気供給器が設けられる。この蒸気供給器は、
図6に示すように、漏斗状に先細になる供給領域205と上部蒸気誘導領域213とからなる蒸気供給領域が設けられている。蒸気誘導領域213内でラジアル形遠心式圧縮機(radial compressor)のホイール羽根車が使用されることが好ましく、遠心圧縮により蒸気が底から供給領域205を通って上方に吸引され、その後、羽根車(放射状ホイール)によって、90度外側に方向を変える。すなわち、蒸気誘導領域213に対して、
図6の下からの流れから、中央から外側への流れに変化させる。
【0077】
図6には、さらに方向を変えるユニットが示されていない。このユニットは、すでに方向転換された蒸気を別の90度方向に向け直し、上方から蒸気導入ゾーンの間隙215、すなわち凝縮空間の周囲に縦に延びる方向に蒸気を向ける。したがって、蒸気供給器は、リング状に構成され、蒸気の凝縮器に供給するためのリング状の間隙が設けられ、動作液流入口がリング状の間隙内に設けられることが好ましい。
【0078】
説明のために
図7を参照する。
図7は、
図6の凝縮器の蓋領域を下方から見た図である。特に、液体分配器212として機能する有孔板を以下に説明する。蒸気入口間隙215が概略的に描かれており、
図7は、蒸気入口間隙が単なるリング状に構成され、凝縮すべき蒸気が凝縮空間に上方からも下方からも直接には供給されず、全て周囲からのみ供給されることを示す。したがって、蒸気ではなく液体のみが、分配器212の孔を通って流れる。液体が液体分配器212としての有孔板を通過するので、蒸気のみが凝縮空間に吸い込まれる。液体分配器は、金属、プラスチックまたは類似の材料から形成され、種々の穴パターンで実施できる。
図6に示されているように、液体輸送領域210の外側を流れる液体に対する縦境界を設けることが望ましい。この縦境界を217で示す。このようにして、液体輸送領域210を出る液体は、湾曲した取込部204による角運動量を既にもっており、液体分配器で内側から外側に分配され、液体が以前に液体分配器の孔を通って落下し蒸気とともに凝縮されていなければ、液体が端部を越えて蒸気導入ゾーンに飛び散ることはない。
【0079】
図5は、蒸発器基部108および凝縮器基部106の双方を含むヒートポンプの全体を断面で示す図である。
図5または
図1Aに示すように、凝縮器基部106は、蒸発対象の動作液の吸気部から圧縮機110すなわちモーターに連結された排出開口115に向かって、先細になる断面を有している。好ましく使用されるモーターの羽根車が、蒸発空間102内で生成される蒸気を排出する。
【0080】
図5は、ヒートポンプ全体の断面図を示す。この図に示す通り、液滴分離器404が、凝縮器基部内に配置されている。この液滴分離器は、個別の羽根405を備える。液滴分離器がその位置に留まるように、羽根は、対応する溝406に挿入される。これらの溝は、凝縮器基部内の、蒸発器基部の向いた領域に配置される。さらに、凝縮器基部は、種々の誘導手段を備える。これらの誘導手段は、例えば、凝縮された水を誘導するために設けられ、対応する部分に配置され、凝縮水流入口402の流入点に連結される、ホースを保持する小さなロッドあるいは舌状部として構成される。凝縮流入口402は、
図6および
図7に参照番号102,207から250で示すような、実装に応じて構成される。さらに、凝縮器は、2以上の供給点を備える凝縮液分配手段を有することが好ましい。したがって、第1の供給点は、凝縮器取込部の第1の部分に接続される。第2の供給点は、凝縮器取込部の第2の部分に接続される。凝縮液分配手段のためのより多くの供給点があれば、凝縮器取込部はさらなる部分に分割される。
【0081】
したがって、
図5のヒートポンプの上部領域は、
図6の上部領域と同様に構成することができ、凝縮水の供給が
図6および
図7の多孔板を経由して行われ、これにより、滴り落ちる凝縮水408が得られ、そこに、動作蒸気112が好ましくは横方向に導入される。これにより、特に高レベルの効率を可能にする交差流凝縮が得られる。
図6にも示されているように、凝縮空間には、任意の充填材を設けることができ、エッジ207(409としても示す)には、充填材等は無いままである。これにより動作蒸気112は、上からだけでなく底でも、横方向に凝縮空間に流入する。想像上の境界線410を
図5に示す。しかしながら、
図5に示す実施形態では、凝縮器の全領域がそれ自身の凝縮器基部200と共に構成され、蒸発器基部の上方に配置される。
【0082】
図9を参照して以下に説明されるのは、第二の実施形態に係るヒートポンプであり、これまで説明した第一の実施形態とは、別個に、または追加的に使用することができる。第二の実施形態に係るヒートポンプは、凝縮器306を備える。この凝縮器306は、上述した凝縮器と同様の構成であり、加熱および/または圧縮された動作蒸気、すなわち加熱された蒸気のための流入ライン305を経由して凝縮器306に供給される動作蒸気、を凝縮する。凝縮器306は、第二の実施形態の場合は、凝縮器306内に配置された外来ガス回収空間900を有する。この外来ガス回収空間900は凝縮面901a、901bを有し、これらの凝縮面901a、901bは、動作中は、凝縮対象の動作蒸気の温度よりも低温である。また、外来ガス回収空間900は、凝縮器306内に、凝縮面901a、901bと凝縮領域904との間の配置された隔壁902を有する。また、外来ガス排出装置906が設けられており、外来ガス流入ライン325を介して外来ガス回収空間900に接続され、外来ガスを外来ガス排出空間900から排出する。外来ガス排出装置906は、例えば、ポンプ342と、吸引ライン371と、排出ライン372とを備える。ここで、外来ガス回収空間からの吸引は、そのまま外部に向かって行われる。
【0083】
代替的に、外来ガス排出装置906は、
図1B、
図2A、
図2B、
図3、
図4に関連して説明したような、ハウジングと流入口/排出口とを有するガストラップとして構成される。外来ガス排出装置906は、ポンプ342、吸引ライン371及び排出ライン372に加えて、ガストラップを有することもできる。これは、外気の「間接的な」排出を表す。この場合、外来ガス回収空間からの既に蓄積された外来ガスは、最初に、動作蒸気と共にガストラップに運ばれ、そのガストラップ内で、外来ガスの蓄積が、ポンプによる吸引が行われるまでの間に、動作蒸気のさらなる凝縮によって、さらに増加する。したがって、本発明の第一および第二の実施形態の組み合わせは、外来ガスを抜き出す前に、外来ガスの2段階蓄積、すなわち、外来ガス回収空間900内の第1の蓄積および
図1Bのガストラップの外来ガス蓄積空間358内での第2の蓄積、を提示する。代替的に、1段階の外来ガス蓄積を行うこともできる。すなわち、ガストラップハウジング330を有する中間ガストラップ無しに吸引が直接行われる
図9の外来ガス回収空間900を通して吸引が直接行われるか、あるいは、代替的に、例えば、
図1Bにより説明したように、外来ガス回収空間900無しで凝縮器306から吸引することによって行われる。
【0084】
しかし、最適な外来ガス蓄積とそれに関連する簡略化のために、抜き出した蒸気の再充填と処分の観点から、2段階構成、すなわち本発明の第一の実施形態と第二の実施形態との組み合わせを選択することが好ましい。
【0085】
図10は、例えば
図1および
図5に示されているような絡み合った構成を有するヒートポンプの概略構成を示す。特に、蒸発器空間102が、凝縮器空間104の内側に配置される。蒸気は、
図10には示していないモーターにより圧縮されて、蒸気流入口1000を経由して、112に示すように縦方向に凝縮領域904に供給される。さらに、
図10に示す実施形態ではほぼ円錐台形状の隔壁902が、断面で示される。この隔壁902は、凝縮領域904を、凝縮器基部により形成される凝縮面106から、そして水および/または凝縮器液流入口402により形成される追加凝縮面901bから分離する。したがって、外来ガス回収空間900は、凝縮領域904内の状況と比較して安定した領域であり、隔壁902
と図9の凝縮面901a
および水流入口402の上側領域901
bに相当する
表面106とによって形成される。
【0086】
凝縮器に面する側で、隔壁901aは、凝縮器内の飽和蒸気温度より低い温度を有する。また、蒸発器に面する側では、隔壁901aの飽和蒸気温度より高い温度を有する。したがって、流入または蒸気導管が乾燥しており、特に圧縮機モーターが作動していないときに、蒸気内に水滴が存在しないことが保証される。したがって、蒸気内に存在する液滴によって羽根車が損傷することが防止される。
【0087】
特に、水蒸気流入口は、水蒸気112を連続的に流入させる。水蒸気の流入量は、典型的には少なくとも1リットル/秒である。水蒸気の圧力は、流入口402から供給された凝縮器水の飽和蒸気圧以上であり、凝縮器水も
図10において1002で示されている。ここで、典型的には、凝縮器動作液1002のうちの少なくとも0.1リットル/sが流入する。凝縮液は、できるだけ乱流で流入または流下することが好ましく、流入水蒸気112は
、移動する水内に
ほとんどが凝縮する。水中の水蒸気は水中で消え、残っているのは外来ガスである。隔壁902は、凝縮水と底に向かって流入した水とを定常域を確保して排出するため、外来ガス回収空間900となる。この領域は、隔壁902の下方に形成されている。ここで、外来ガス蓄積が生じる。
【0088】
機能的な表現を
図11に示す。ここで示すのは、特に、水蒸気のほんの一部が、そこで凝縮するために、低温水蒸気流入口901bに流れることである。好ましくは、凝縮器内で加熱すべき動作液の流入口901bは、比較的低温の凝縮器内の場所であることが好ましい。動作液は水であるが、必ずしも水である必要はない。水蒸気流入口901bは、さらに、熱伝導率の高い金属で形成されているので、定常的な空間、すなわち外来ガス回収空間内、を上方に流れる少量の水蒸気1010が、「低温表面」に「会う」ことになる。しかし、同時に、901aで示される蒸発器吸引口の壁も、比較的低温である。この壁は、好ましくは、成型性を高めるために、熱伝導率が比較的低いプラスチックで形成されるが、
それでもなお、ヒートポンプ全体のうち最も低温
(減圧蒸発により気化熱が奪われる)の領域である蒸発器空間102
を形成する壁である。したがって、水蒸気1010は、通常は間隙1012を通って外来ガス回収空間に入り、縦壁901aでコールドシンクに会う。コールドシンクは、水蒸気を凝縮させるように働く。
図11の矢印1010で表されるように、水蒸気の流れによって、外来ガス原子も外来ガス回収空間に導入される。したがって、外来ガスは、一緒に運ばれ、凝縮することができないため、定常的な空間内全体で蓄積される。
【0089】
結露が止まると、外来ガスの割合すなわち分圧が高くなる。そのとき、すなわち凝縮が早くなるにつれて、外来ガス排出装置は、例えば定常領域すなわち外来ガス回収空間からの吸引を行うために接続された真空ポンプによって、外来ガスを排出する必要がある。この吸引は、閉ループ制御方式、連続方式、または開ループ制御方式で実施することができる。測定可能な量は、圧力、凝縮点での温度、給水と凝縮点との間の温度差、排水温度に向かう凝縮過程全体に対する駆動圧力上昇などである。量を閉ループ制御に使用することができる。なお、開ループ制御は、真空ポンプを特定の時間だけスイッチを投入し、その後再びスイッチを切る、時間間隔コントローラーによって簡単に実行することもできる。
【0090】
図12は、
図5の断面図に示されたヒートポンプによる、隔壁を含む凝縮器を有するヒートポンプのより詳細な図を示す。特に、隔壁902は断面図で示されており、凝縮領域408または904からの外来ガス回収収集空間900を提供し、残りの凝縮領域と比較して「定常状態」が優勢となる領域、すなわち外来ガス回収空間900が提供される。凝縮領域内に存在する異質ガスを同時に運ぶ水蒸気流1010が前記「定常状態」に入る。また、吸引手段としてホース325が設けられている。吸引ホース325は、好ましくは、1020に示すように、外来ガス回収空間内の上部に配置され、ホースの端部は、外来ガス回収空間内に配置される。外来ガス回収空間の壁は、一方側の凝縮面901aと、上側の給水部901bと、他方の側の隔壁902とによって形成されている。ホース325、すなわち外来ガス排出口は、好ましくは、蒸発器基部を通って導出されるが、ホースは蒸発器を通されないように配置され、特に低い圧力がかかるが、それを通過する。また、凝縮器は、あるレベルの凝縮液が存在するように構成されている。しかしながら、そのレベルは、その高さに関して、
図11の間隙1012によって隔壁902が離間し、水蒸気流1010が外来ガス回収空間に入るように設計されている。
【0091】
好ましくは、隔壁902は、
図1および2に示された実施形態においては、頂部に向かって封止される。
図9〜
図12に示すように、作動液体または「水」の流入口402は、凝縮領域904にのみ動作液を供給するが、定常領域には供給しない。他の実施形態では、前記の密封は特に厳密である必要はない。安定した領域の形成に役立つ緩い封止で十分である。凝縮空間と比較して安定している外来ガス回収空間内の領域は、凝縮領域よりも外来ガス回収空間内に供給される液体の量が少ないことによって既に形成され、周囲の環境は、隔壁の外側よりも乱流が小さい。したがって、給水入口は、1010で概略的に描かれているように、水蒸気の効率的な凝縮を達成するために、何らかの水が依然として外部ガス収集空間に供給されるように形成されてもよい。ただし、外来ガス回収空間は十分に安定しており、外来ガスが隔壁の下の流れ1010と反対方向に排出されて、凝縮器内に再び拡散してしまうのではなく、そこに蓄積する。
【0092】
さらに
図12に示すように、外来ガス排出装置906は、対応する開ループ/閉ループ制御変数1030によって動作し、外来ガス回収空間900に蓄積した外来ガスを、1040に示すように、外に、またはさらなるガストラップに、排出するように構成されている。