(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929307
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】真空ポンプを駆動するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20210823BHJP
F04D 19/04 20060101ALI20210823BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20210823BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F04D19/04 H
H02K11/33
【請求項の数】10
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-564346(P2018-564346)
(86)(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公表番号】特表2019-522454(P2019-522454A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2017063528
(87)【国際公開番号】WO2017211735
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年5月7日
(31)【優先権主張番号】102016209983.3
(32)【優先日】2016年6月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508206070
【氏名又は名称】レイボルド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】リースマン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツェル,セバスチャン
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−231268(JP,A)
【文献】
特開2001−012359(JP,A)
【文献】
特開2011−050204(JP,A)
【文献】
特開平07−063883(JP,A)
【文献】
実開平02−141992(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
F04D 19/04
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、前記電気モータに電気的に接続されて前記電気モータから離れて配置された周波数変換器とを備えた真空ポンプ駆動装置であって、
前記周波数変換器と前記電気モータとの間の給電線に変圧器が配置されており、
前記周波数変換器と前記変圧器との間の前記給電線の第1の部分が、前記変圧器と前記電気モータとの間の前記給電線の第2の部分より著しく長く、
前記周波数変換器と前記変圧器との間の前記第1の部分を介して送出される第1の電圧が、前記変圧器と前記電気モータとの間の前記第2の部分を介して送出される電圧より少なくとも2倍大きいことを特徴とする真空ポンプ駆動装置。
【請求項2】
前記第1の部分は、前記変圧器と前記電気モータとの間の前記給電線の第2の部分より少なくとも2倍長く、好ましくは約10倍長いことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項3】
前記第1の電圧は、前記変圧器と前記電気モータとの間の前記第2の部分を介して送出される電圧より少なくとも8倍大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項4】
前記周波数変換器は、前記電気モータから少なくとも100 m、好ましくは少なくとも500 m離れて配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項5】
前記変圧器は、前記周波数変換器より前記電気モータの近くに配置されていることを特徴とする請求項4に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項6】
前記周波数変換器と前記変圧器との間の前記給電線の第1の部分の電気ケーブルの小断面が、約1.5 mm2 であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項7】
前記周波数変換器と前記変圧器との間の前記給電線の第1の部分の電気ケーブルの容量が、約100 pF/m未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項8】
前記周波数変換器と前記変圧器との間の前記給電線の第1の部分の電気ケーブルが、前記変圧器と前記電気モータとの間の前記給電線の第2の部分の電気ケーブルより細く、より小さい容量を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の真空ポンプ駆動装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の真空ポンプ駆動装置を備えた真空ポンプを駆動する方法であって、
周波数変換器と変圧器との間の給電線の第1の部分を介して、前記変圧器と電気モータとの間の給電線の第2の部分を介して送出される電圧及び電流より高い電圧及びより低い電流を送出することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1の部分の電圧は、前記第2の部分の電圧より少なくとも5倍、好ましくは少なくとも8倍大きいことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプを駆動するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧が周波数変換器から給電線を介して供給される電気モータを使用して真空ポンプを駆動することが一般的な方法である。周波数変換器は、周波数及び/又は振幅とは無関係に電気モータを作動させるために可変周波数及び/又は振幅の電圧を生成する。
【0003】
駆動変換器とも称されるこのような周波数変換器は、電圧及び周波数に関して可変な単相電圧又は多相電圧を生成する。
【0004】
通常、このような変換器には、例えば230 V若しくは400 Vの交流電圧、又は例えば24V若しくは48Vの直流電圧のいずれかが電圧供給本線から供給される。交流電圧を供給する場合、交流電圧を整流して駆動変換器の直流電圧中間回路に供給する。直流電圧を供給する場合、直流電圧を直流電圧中間回路に直接供給する。その後、直流電圧中間回路の直流電圧を、可変電圧の振幅及び/又は周波数を有する合成した単相交流電圧又は多相交流電圧に変換して、真空ポンプを駆動する電気モータに供給すべく使用される。直流電圧中間回路の電圧及び電気モータの定格電圧は通常、約1.5 対1の比率を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動変換器が、例えば放射性環境、高温環境又は爆発性環境での作動に適していないので、例えば放射性環境、高温環境、爆発性環境に曝される真空ポンプ、又は大型の加速器システムで使用される真空ポンプのような一部の真空ポンプを駆動変換器から、例えば1000m遠く離して配置しなければならない。
【0006】
加えて、絶縁強度(パッシェンの法則)、防爆及び安全性の理由で、真空ポンプに低電圧を供給しなければならない。例えば、ターボ分子ポンプ(TMP )に24V又は48Vの電圧を供給する。
【0007】
このような低供給電圧は比較的高い電流を必要とするため、給電線が長い場合には補償されなければならない損失が増加する。更に、高電流のための給電線は大きな自己容量を有し、電気モータの動作中、自己容量の電荷は絶えず移されなければならない。このため、長い給電線の電流の値が更に増加する。
【0008】
本発明の目的は、電気モータから離れて配置された周波数変換器を用いて、真空ポンプ駆動装置の線路損失を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る真空ポンプ駆動装置は、請求項1の特徴によって定義されている。本発明に係る方法は、請求項9の特徴によって定義されている。
【0010】
本発明は、駆動変換器によって供給される電気モータに供給するための電圧を、例えば400 V〜48Vの様々な電圧レベルに変換するために、周波数変換器と真空ポンプ駆動装置の電気モータとの間の給電線
に変圧器を設けるという基本構想に基づいている。
【0011】
この相互接続によって、真空ポンプの駆動モータに供給するために駆動変換器を使用することが可能になり、この駆動変換器は、モータ電圧に対してかなり高い中間回路電圧、ひいてはモータ出力電圧(例えば、約200 V又は400 V)を有する。
【0012】
逆変換、ひいては定格モータ電圧に対してかなり低い中間回路電圧を有する駆動変換器の使用が可能である。従って、例えば比較的高い定格モータ電圧で高い回転フィールド周波数を生成することが可能である。
【0013】
変圧器は単相変圧器又は多相変圧器であってもよく、多相システムの場合、複数の単相変圧器を使用することができる。更に、段階的調節のために複数の変圧器の直列の相互接続が可能である。
【0014】
本発明は、真空ポンプに供給するための変換器の使用を提案しており、この変換器は、モータ電圧よりかなり高い出力電圧を有し、例えば230 V又は400 Vの本線供給の標準的な変換器である。
【0015】
この場合、変圧器が、真空ポンプのすぐ近くで変換器と真空ポンプとの間に設置される。この変圧器は、230 V又は400 Vの電圧を、モータに必要なレベル、例えば48Vの電圧に変換する。モータの線の大部分で、より高い電圧及びより低い電流が存在するため、給電線の損失が更に減少する。加えて、変圧器に繋がる給電線は、より細くなり、ひいてはより小さい容量を有することが可能である。
【0016】
変圧器は、汚染又はフラッシュオーバー電圧の危険性がないように完全に包まれるか、又は絶縁材に埋め込まれてもよい。更に、変圧器は温度又は放射線の影響を受けにくい。
【0017】
本発明の例示的な実施形態を、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
3つの図示された例示的な実施形態の全てに、真空ポンプ14を駆動するための電気モータ12が設けられている。電気モータ12には、周波数変換器16から給電線18を介して可変周波数及び振幅の電圧が供給される。電気モータ12のトルクが、周波数変換器16を介して振幅及び周波数に応じて生成される。
【0020】
周波数変換器16は、安全性の必要条件のため、電気駆動モータ12及び真空ポンプ14から少なくとも800 m、好ましくは1km離れて配置されている。長い給電線18での駆動電圧の送出中の電気的な損失を減少させるために
、電気変圧器20が給電線18に設けられている。給電線18の第1の部分18a が、周波数変換器16と変圧器20との間の給電線部分である。給電線18の第2の部分18b が、変圧器20と電気モータ12との間の給電線部分である。第1の給電線部分18a は第2の給電線部分18b よりかなり長いことが、3つの例示的な実施形態全てに共通している。第2の給電線部分18b の長さがほんの数メートルである一方、第1の給電線部分18a の長さは数百メートルである。
【0021】
周波数変換器16及び変圧器20は、第1の給電線部分18a を介して数百ボルト、例えば400 Vの電圧を送出するように構成されている一方、第2の給電線部分18b を介してほんの数十ボルト、例えば48Vの電圧が送出される。48Vの交流電圧が第2の給電線部分18b に使用されるとき、例えば放射性環境、高温環境、爆発性環境又は大型の加速器システムのための安全性の必要条件が満たされる一方、かなり高い交流電圧をかなり小さい損失で送出する、可能な限り長い第1の給電線部分18a によって、周波数変換器16から電気モータ12への送出中の線路損失が減少する。
【0022】
第1の給電線部分18a に使用される線の断面は、第2の給電線部分18b に使用される線の断面より小さく、最大1.5 mm
2 になる。第1の給電線部分18a に使用される線の容量も、第2の給電線部分18b に使用される線の容量より小さく、約100 pF/m未満になる。
【0023】
従って、第1の給電線部分18a を介して、高電圧及び低電流が、小さい容量及び低い損失の細径ケーブルを通して長く送出される一方、短い第2の給電線部分18b を介して高電流及び低電圧が送出される。
【0024】
本発明の本質的な利点は、給電線18内の変圧器20の位置に応じて、給電線18の大部分の電流負荷が大幅に減少するということである。従って、線路損失が実質的に最小限度に抑えられる。加えて、給電線18の導電性断面を大幅に減少させることができる。従って、コストが節約され、加えて給電線の電気容量、ひいては駆動変換器16の電荷移動電流又は無効電流が減少する。
【0025】
図1の例示的な実施形態では、三相変圧器が三相給電線18内で作動する。
【0026】
図2の例示的な実施形態では、二相変圧器が二相給電線18で作動する。
【0027】
図3の例示的な実施形態では、2つの並列に接続された二相変圧器20が、三相給電線18で作動する。