(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929323
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ルアー固定デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/02 20060101AFI20210823BHJP
A61M 39/06 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
A61M25/02 500
A61M39/06 110
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-104839(P2019-104839)
(22)【出願日】2019年6月4日
(62)【分割の表示】特願2015-532002(P2015-532002)の分割
【原出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2019-177158(P2019-177158A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】13/614,481
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ボルンホフト
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0106014(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0197204(US,A1)
【文献】
特表2009−545341(JP,A)
【文献】
特表平08−500983(JP,A)
【文献】
特表平09−508037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/02
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の表面に付くように構成されたベースを有する可撓性フードと、
可撓性フードに結合されたルアーアダプタであって、前記ルアーアダプタの内面に形成されたチャネルが、カテーテルのベースを流体密封に保持するくさびシールを備えるルアーアダプタと、
前記ルアーアダプタの中に配置された隔壁と
を備えることを特徴とするルアー固定デバイス。
【請求項2】
前記可撓性フードの近位端部に結合された遠位端部を有し、かつ前記ルアーアダプタに結合された近位端部を有するフードアダプタをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記可撓性フードは、前記デバイスが前記患者の表面に取り付けられるときに前記可撓性フードと前記患者の間に置かれている粘着フィルムをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記くさびシールは、カテーテルを受けるように構成されている内径を有する環状シールを備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記カテーテルのベース部分は、前記くさびシールの中に収まって流体密封シールを形成することを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ルアーアダプタの近位端部に配置されたねじ山のセットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記隔壁は、セルフシールスリットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記可撓性フードはベースおよび側壁を備え、前記ベースは前記側壁に対しておおよそ30°からおおよそ90°までの角度が付けられていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ベースは、前記側壁に対しておおよそ90°の角度が付けられていることを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記カテーテルは、カテーテル挿入器を介して前記くさびシールの中に設置されることを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項11】
前記カテーテル挿入器は、前記ルアーアダプタに結合されることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
ルアー固定デバイスを製造する方法であって、
患者の表面に付くように構成されたベースを有する可撓性フードを提供するステップと、
前記可撓性フードをルアーアダプタに結合するステップと、
前記ルアーアダプタの内面に形成されたチャネルに、カテーテルのベースを流体密封に保持するくさびシールを挿入するステップと、
前記ルアーアダプタの中に隔壁を配置するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
近位端部および遠位端部を有するフードアダプタを提供するステップと、
前記可撓性フードを前記フードアダプタの前記遠位端部に結合するステップと、
前記フードアダプタの前記近位端部を前記ルアーアダプタの遠位端部に結合するステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記可撓性フードの前記ベースに粘着フィルムを取り付けるステップさらに含み、前記粘着フィルムは前記可撓性フードの内部環境を密閉することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記くさびシールは、カテーテルを受けるように構成されている内径を有する環状シールを備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記カテーテルのベース部分は、前記くさびシールの中に収まって流体密封シールを形成することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ルアーアダプタの近位端部にねじ山のセットを備えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記隔壁は、セルフシールスリットをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記可撓性フードの側壁に対して前記可撓性フードの前記ベースにおおよそ30°からおおよそ90°までの角度を付けるステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
患者の表面に付くように構成されたベースを有する可撓性フードと、
前記ベースに取り付けられ、前記可撓性フードの内部環境を密閉する粘着フィルムと、
前記可撓性フードに結合されたルアーアダプタであって、前記ルアーアダプタの内面に形成されたチャネルは、カテーテルのベースを流体密封に保持する環状くさびシールを備えるルアーアダプタと、
前記ルアーアダプタの中に配置された隔壁と、
前記粘着フィルム上に、前記隔壁および前記環状くさびシールと同心の配列で形成された挿入標的と
を備えることを特徴とするルアー固定デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にカテーテルおよびルアーデバイスに関する。より詳細には、本開示は、くさびシールが配置されているルアーアダプタに結合された可撓性フードを備えるルアー固定デバイスについて論述し、この可撓性フードは患者に取り付けられ、また、カテーテル処置手順中に、カテーテルが患者に挿入され、同時にカテーテルがくさびシールの中に設置される。
【0002】
本明細書では、用語「ルアー」は、医療デバイスおよび/または医療機器においてオステーパ固定具とその嵌合メス部分の間に漏れのない接合部を作るために使用される、小型流体固定具の任意のルアーテーパまたは他のシステムを記述し、かつ含むと理解される。本発明によるルアーデバイスはさらに一体化隔壁を含み、それによって、ルアー固定接続部を介して相互連結された2つのデバイスの間の選択的アクセスを提供することができる。ルアー固定具の非限定的な例は、Becton Dickenson,Inc.によって製造された「Luer−Lok」、「Luer−Slip」および「Nexiva Closed IV Catheter」システムを含む。
【背景技術】
【0003】
注入療法は、針またはカテーテルによる患者への流体の投与を含む。それは一般に、患者の治療が経口薬剤によっては効果的に治療されることができない場合に処方される。通常、「注入療法」は、薬物または他の流体が静脈内に投与される手順を指す。しかし、この用語はまた、流体が筋肉内注射、皮下注射、および硬膜外経路などの他の非経口経路を通って供給される状態も指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第13/615,201号明細書
【特許文献2】米国特許出願第13/615,012号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
注入療法は一般に、患者に対して流体を導入または除去するために使用される。注入プロセスは一般に、患者の傷害を回避または最小限にしながら適切なアクセスを確実にするための、カテーテルおよび針の安定した制御を必要とする。動いている救急車の後部などの緊急状態では、医師または他の介護者は、患者の周囲の過度の動きにより患者にカテーテルを挿入することができない場合がある。そのため救急車は、カテーテルを挿入するための安定した環境を介護者に与えるために、停止することが要求される。これは、介護者の不便を招き、患者の生命を救うために必要とされ得る貴重な時間を浪費する。したがって、当技術分野には、現在利用可能な技術に付随する困難および短所を克服するデバイスの必要性がある。本開示では、このようなデバイスについて論述する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はルアー固定デバイスを提供し、これは、患者の表面に付くように構成されたベースを有する可撓性フードを含み、それによって、患者との固定された境界面を形成する。可撓性フードはルアーアダプタに取り付けられる。ルアーアダプタは、ルアーアダプタの内面に配置されたくさびシールを含む。ルアーアダプタはさらに、ルアーアダプタの中に配置された隔壁を含み、内側ルーメン(管腔)がくさびシールと隔壁の間に形成される。
【0007】
いくつかの例では、ルアー固定デバイスはさらに、可撓性フードの近位端部に結合された遠位端部を有するフードアダプタを備え、このフードアダプタはさらに、ルアーアダプタに結合された近位端部を有する。可撓性フードのベースはさらに、外部環境から可撓性フードの内側または内部環境を分離する粘着フィルムを含むことができる。
【0008】
くさびシールは一般に、カテーテルのベース部分を受けるように構成されている内径を有する環状シールを備える。カテーテルのベース部分は、カテーテル挿入プロセスの一部としてくさびシールの中に設置される。いくつかの実施態様では、くさびシールの内径は、流体密封シールを形成するようにカテーテルのベースの外面を受ける。
【0009】
ルアー固定デバイスのルアーアダプタ部分はさらに、カテーテル挿入器を適合して受けるねじ山のセットを備える。カテーテル挿入器は、カテーテル挿入プロセスの一部としてカテーテルをルアー固定デバイスの中に送達し挿入する、任意のデバイスまたはデバイスの組合せを含むことができる。例えば、カテーテル挿入器は、カテーテルのベース部分がくさびシールの中に設置されるように、カテーテルのベース部分に接触してカテーテルを、ルアーアダプタの隔壁を貫通して患者の中に進めるプローブを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施態様では、可撓性フードのベースは、所望の角度でのカテーテルの挿入を容易にするために、可撓性フードの側壁に対して角度が付けられている。例えば、いくつかの例では、ベースはおおよそ30°からおおよそ90°の角度が付けられている。
【0011】
本発明はさらに、ルアー固定デバイスを製造するための1または複数の方法を含む。いくつかの実施態様では、ルアー固定デバイスを製造する方法は、1)患者の表面に付くように構成されたベースを有する可撓性フードを提供するステップと、2)可撓性フードをルアーアダプタに結合するステップと、3)ルアーアダプタの内面にくさびシールを挿入するステップと、4)ルアーアダプタに隔壁を配置するステップとを含む。本発明の方法はさらに、フードアダプタを提供するステップを含むことができ、フードアダプタは、可撓性フードの近位端部およびルアーアダプタの遠位端部と結合される。可撓性フードのベースに粘着フィルムを取り付けるステップがさらに提供されることができ、粘着フィルムは可撓性フードの内部環境を密閉する。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様はさらに、患者の表面に付くように構成されたベースを有する可撓性フードを有するルアー固定デバイスと、ベースに取り付けられ、可撓性フードの内部環境を密閉する粘着フィルムと、可撓性フードに結合されたルアーアダプタであって、ルアーアダプタの内面は環状くさびシールを備えるルアーアダプタと、ルアーアダプタの中に配置された隔壁と、粘着フィルム上に、隔壁および環状くさびシールと同心の配列で形成された挿入標的とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の上記およびその他の特徴および利点が得られる方法が容易に理解されるようにするために、上で簡潔に説明した本発明についてのより具体的な説明が、添付の図面に示される本発明の特定の実施形態を参照することによって行われる。これらの図面が、本発明の典型的な諸実施形態のみを描写しており、したがってその範囲を限定するものと考えられるべきではないと理解して、本発明は、さらなる特殊性および細部について添付の図面の使用によって記述および説明される。
【
図1】本発明の代表的な実施形態による患者の表面に結合されたルアー固定デバイスの側面透視図である。
【
図2】本発明の代表的な実施形態による
図1のルアー固定デバイスの断面図である。
【
図3A】本発明の代表的な実施形態によるカテーテルを受ける前のルアー固定デバイスの断面図である。
【
図3B】本発明の代表的な実施形態によるカテーテルを受ける前のルアー固定デバイスの断面図である。
【
図4A】本発明の代表的な実施形態によるカテーテル挿入プロセス中の様々な位置におけるルアー固定デバイスの断面図である。
【
図4B】本発明の代表的な実施形態によるカテーテル挿入プロセス中の様々な位置におけるルアー固定デバイスの断面図である。
【
図4C】本発明の代表的な実施形態によるカテーテル挿入プロセス中の様々な位置におけるルアー固定デバイスの断面図である。
【
図4D】本発明の代表的な実施形態によるカテーテル挿入プロセス中の様々な位置におけるルアー固定デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
説明される発明の現在好ましい実施形態は、全体を通して同じ部分が同じ数字で示されている図を参照することによって最もよく理解されよう。本発明の構成要素が、添付の図に全体的に描写され示されるように、多種多様の異なる構成で配置および設計され得ることは容易に理解されよう。したがって、図に表されている、本発明のいくつかの実施形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではなく、本発明のいくつかの現在好ましい実施形態を表すものにすぎない。
【0015】
一般に、本発明は、カテーテルおよびルアーアクセスポートまたはカプラを患者に固定するための一体化ルアー固定デバイスに関する。詳細には、本発明のいくつかの実施形態は、患者に取り付けられ、次いで患者に挿入されるカテーテルを受ける、ルアー固定デバイスを提供する。カテーテルをルアー固定デバイスに結合するプロセスは、患者内のカテーテルの位置を固定および維持する一体化ユニットを提供する。さらに、この一体化デバイスは、カテーテルの挿入部位を保護および遮蔽し、それによって介護者に対する感染および望ましくない血液露出を防止する。
【0016】
いくつかの例では、ルアー固定デバイスは、患者の体表面との境界面を形成するように構成されたベースを備える、可撓性ポリマー材料で作られたフードを備える。いくつかの実施形態では、ルアーアダプタのベースはさらに、患者のルアー固定デバイスの場所を固定および定着させるための粘着剤を備える。ルアー固定デバイスはさらに、カテーテル挿入器が一時的に結合されるルアーアダプタを備える。カテーテル挿入器はカテーテルを、ルアー固定デバイスを通って患者の中へ進めるように構成される。患者の中への挿入が完了すると、カテーテルのベース部分がルアー固定デバイスのくさびシールの中に設置され、それによって一体化デバイスを提供する。くさびシールは、カテーテルのベースとルアーアダプタの間に流体密封シールを提供し、それによって、挿入部位を取り囲む領域を外部環境から分離する。患者へのカテーテルの挿入に続いて、カテーテル挿入器はルアーアダプタから選択的に除去され廃棄される。ルアーアダプタは所定の位置に残り、それによって患者への流体アクセスを可能にする。
【0017】
本発明の実施形態は、さらにカテーテルを含む。本発明のカテーテルは、生体外使用に適合する任意のタイプまたは形式のカテーテルを含むことができる。例えば、いくつかの例では、本発明は静脈内カテーテル、または皮下もしくは筋肉内カテーテルを含む。したがって、本発明に適合するカテーテルは、可撓性のポリマーカテーテルまたは剛性ポリマーもしくは金属カテーテルを含むことができる。
【0018】
カテーテル挿入器は、患者のカテーテル挿入と、ルアー固定デバイスのくさびシールの中へのカテーテルのベースの配置とを、同時に容易にするための、任意のデバイスまたはデバイスの組合せを含むことができる。適合するカテーテル挿入器の非限定的な例は、Stephen Bornhoftの2012年9月13日出願の特許文献1、名称「INTEGRATED CATHETER SECUREMENT AND LUER ACCESS DEVICE」、およびStephen Bornhoftの2012年9月13日出願の特許文献2、名称「INTRAVENOUS CATHETER INSERTER」で教示されており、これらのそれぞれが、その全体で本明細書に組み込まれる。いくつかの例では、カテーテル挿入器は、カテーテルをルアー固定デバイスの隔壁を通って患者の中へ進めるように構成されたプローブを備える。カテーテル挿入器はさらに、患者にカテーテルを挿入する助けになるようにカテーテル挿入器のプローブを通りカテーテルを通って延びる針を含む。カテーテルが患者の中に挿入された後、カテーテル挿入器および針は後退させられ、挿入されたカテーテルはルアー固定デバイスから除去される。
【0019】
ルアー固定デバイスとカテーテル挿入器の間の相互連結された関係は、カテーテルと患者の表面の間の架橋連結部を提供する。詳細には、ルアー固定デバイスのフードは、患者とカテーテルの間の安定した不変の連結部を提供し、それによって、不安定な周囲または条件において患者のカテーテル挿入を可能にする。言い換えると、ルアー固定デバイスのフードは、カテーテル挿入中に使用者の手と患者の間の距離が不変のままであるように、ルアー固定デバイスと患者の表面の間に不変の連結部を提供する。ルアー固定デバイスについてのより良い理解を提供するために、デバイスの様々な一体化構成要素が以下でより詳細に説明される。
【0020】
ここで
図1を参照すると、患者100に固定された、組み立てられたルアー固定デバイス10の透視図が示されている。一般に、ルアー固定デバイス10は、粘着層またはフィルム16に結合されているベース14を有する可撓性フード12を備える。患者100のルアー固定デバイス10の位置を固定し保持するために、粘着フィルム16が患者100に貼られる。いくつかの実施形態では、粘着面はさらに、ルアー固定デバイス10を患者100に取り付ける前に粘着面を露出するために除去される、保護ラップまたはカバー17を備える(例えば、
図3B参照)。
【0021】
可撓性フード12は、ルアー連結器すなわちルアーアダプタ20に固定される。いくつかの実施形態では、可撓性フード12は、フードアダプタ30によってルアーアダプタ20に固定される。例えば、いくつかの実施形態では、可撓性フード12の近位端部すなわち上方リップ部分18が、フードアダプタ30の遠位端部すなわち環状チャネル32に挿入される。フードアダプタ30の近位端部はさらに、ルアーアダプタ20の遠位端部に結合される。ルアーアダプタ20はさらに、カテーテル挿入器および/またはシリンジもしくは流体ラインなどの流体送達装置を受けるためのねじ山のセット32を備える。ルアー固定デバイス10はさらに、ルアーアダプタ20の中に収容されている隔壁40を備える。
【0022】
次に
図2を参照すると、ルアー固定デバイス10の断面図が示されている。いくつかの実施形態では、隔壁40がルアーアダプタ20の中に収容され、またルアーアダプタ20とフードアダプタ30の間に噛合わされている。そのため、隔壁40の位置は、デバイス10の使用中維持される。隔壁40はさらに、スリット42を含むことができる。スリット42は、事前切り込みされることができ、あるいはカテーテル挿入プロセス中にカテーテル挿入器の針によって提供されることができる。いくつかの例では、スリット42はセルフシールである。閉鎖または封止された位置において、隔壁40およびスリット42は、挿入部位86と外部環境102の間の流体連通を防止し、それによって血液に対する使用者露出を防止し、可撓性フード12の中の無菌環境を保存する。
【0023】
フードアダプタ30はさらに、くさびシール50を備える。くさびシール50は一般に、アダプタ30の内面に形成されたチャネルすなわち溝34の中に設置されている、環状ポリマーシールを備える。くさびシール50はさらに、図示のように、カテーテル90のベース92を適合して受け、流体密封にして保持するように構成されている内径を備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、カテーテル90は、隔壁40のスリット42を通って患者100の中に、カテーテル90のベース92が完全にくさびシール50の中に設置される深さまで進められる。したがって、カテーテル90の所望の挿入の深さは、カテーテル90の先端部94とベース92の間の長さを増大または減少させることによって選択されることができる。くさびシール50の中の、ベース92の完全に設置された位置では、挿入部位86を外部環境102からさらに分離する流体密封シールを提供する。さらに、ベース92とくさびシール50の間の流体密封シールは、ルーメン(管腔)36と可撓性フード12内の無菌環境との間の流体の漏れを防止する。
【0025】
次に
図3Aを参照すると、カテーテル挿入前のルアー固定デバイス10が示されている。いくつかの実施形態では、可撓性フード12は側壁13およびベース14を備える。いくつかの例では、可撓性フード12のベース14は、所望の角度での患者へのカテーテルの挿入を容易にするために、側壁13に対して角度が付けられている。ベース14の角度は、カテーテルの挿入の最適角度に基づいて選択されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、フード12のベース14は、おおよそ30〜45°の角度θを備える。他の実施形態では、角度θは、
図3Bに示されるようにおおよそ90°を備える。
【0026】
粘着フィルム16はさらに、くさびシール50および隔壁40のスリット42と同軸の配列で配置されている印すなわち挿入標的19を含むことができる。いくつかの実施形態では、挿入標的19は、フィルム16上に印刷または別の方法で提供されている対照的な色またはデザインを備える。他の実施形態では、挿入標的19は、物理的な孔を備える。挿入標的19は、ルアー固定デバイス10を患者の上に正確に配置して所望の場所にカテーテル挿入を実現するのに有用である。例えば、介護者は、黒子を穿刺すること、または患者の神経もしくは他の解剖学的特徴を針およびカテーテルで打つことを回避するよう、挿入標的19を使用してルアー固定デバイス10を患者の上に配置することができる。したがって、カテーテル挿入器のカテーテルおよび針が隔壁40およびフード12を通って進められるとき、針およびカテーテルの先端部分が挿入標的19を貫通し、患者100の所望の場所に入る。いくつかの実施形態では、フード12の可撓性の性質が、カテーテル挿入プロセス中に、針およびカテーテルの軌道のわずかな調整を可能にする。したがって、針およびカテーテルの挿入は、挿入標的19によって制限されない。むしろ、挿入標的19は、カテーテル挿入のおおよその場所を測るための視覚インジケータとして使用されることができる。
【0027】
前に論述されたように、いくつかの実施形態では、粘着フィルム16はさらに、保護層17すなわち裏張りを備える。保護層17は、粘着特性を損なわずに粘着フィルム16に対し粘着することおよび除去されることができる任意の材料を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、保護層は、当技術分野で一般に使用されているように、ワックスまたはプラスチックコーティングを有する紙を備える。
【0028】
次に、
図4A〜4Dを参照すると、カテーテル挿入手順中の様々な位置におけるルアー固定デバイス10の断面図が示されている。前に論述したように、ルアー固定デバイス10は、カテーテル挿入器120と組み合わせて使用される。カテーテル挿入器120はカテーテル90を、ルアー固定デバイス10を通って患者の中へ送達し進めるために必要な任意のデバイスまたはデバイスの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、カテーテル挿入器120は、患者の中への挿入の最大深さまでカテーテル90を進めるように構成され、この最大深さの挿入により、ベース部分92が完全にくさびシール50の中に設置されることになる。他の実施形態では、フードアダプタ30は、患者へのカテーテル90の挿入しすぎを防止する物理的特徴を備える。
【0029】
図4Aを参照すると、ねじでカテーテル挿入器120に結合されたルアー固定デバイス10が示されている。いくつかの例では、ルアー固定デバイス10に結合するねじ山のセットを備えるハウジング122を有する、カテーテル挿入器120が提供される。カテーテル挿入器120はさらに、カテーテル90がカテーテル挿入の前に収容されている、ルーメン(管腔)124を含む。適合するカテーテル挿入器120はさらに、カテーテル90を、ルーメン(管腔)124を通り隔壁40を貫通して患者の中へ、カテーテル90のベース92がくさびシール50内に完全に設置される深さまで進めるように構成されている、プローブ130を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、カテーテル90は、鋭利にされた遠位端部94を有する剛性材料を備える。そのため、カテーテル90は、プローブ130によってルアー固定デバイス10を通って患者の中に進められることができる。例えば、カテーテル90は、鋭利にされた勾配付き遠位端部94を有する金属または剛性ポリマー材料を備えることができる。別の例では、カテーテル90は、患者の皮膚を穿孔することができない可撓性または半可撓性材料を備える。したがって、いくつかの実施形態では、適合するカテーテル挿入器120はさらに、針140の鋭利にされた遠位先端部144がカテーテル90の遠位先端部94を越えて露出されるように、カテーテル90を通って延びる針140を備える。カテーテル挿入中、鋭利にされた遠位先端部144は、患者と接触し、またカテーテル90が挿入され進められる開口を提供する。針140がカテーテル90のルーメン(管腔)の中に配置され、それによって、患者へのカテーテル90の挿入を容易にするための剛性をカテーテル90に提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、カテーテル挿入器120がルアー固定デバイス10に結合されると、カテーテル挿入プロセスが開始する。プローブ130(または、その同等の変形物)はカテーテル90および針140を、隔壁40を貫通して進める。いくつかの実施形態では、針140の鋭利にされた先端部144が、隔壁40を貫通する経路を提供するために、隔壁40を穿孔する。他の例では、隔壁40は、鋭利にされた先端部144およびカテーテル90が貫通して進められる、セルフシールスリット42を備える。
【0032】
さらに進められると、鋭利にされた先端部144は、
図4Bに示されるように、おおよそ挿入標的19のところで粘着フィルム16を穿孔する。針先端部144およびカテーテル先端部94は、
図4Cに示されるように、カテーテル90のベース92がくさびシール50の中に設置されるまで、粘着フィルム16の開孔を通って患者の中に進められる。いくつかの実施形態では、フードアダプタ30は、患者へのカテーテル90の挿入しすぎを防止する特徴を備える。例えば、いくつかの実施形態では、開口33は、ベース92の外径より小さい直径を有する。そのため、ベース92は、開口33を通過することが防止される。他の実施形態では、開口33は、ベース92のテーパ付き面を反映する面取りされた面を備える。そのため、ベース92は、ベース92がくさびシール50の中に完全に設置される深さで開口33の中に収まる。
【0033】
カテーテル挿入に続いて、カテーテル挿入器120がルアー固定デバイス10から取り外される。いくつかの実施形態では、プローブ130および針140は、カテーテル挿入器120をルアー固定デバイス10から取り外す前に、ルーメン(管腔)124の中に引っ込められる。隔壁40からプローブ130および針140が引っ込むと、スリット43は自己封止し、それによってカテーテル90およびルーメン(管腔)36からの流体の漏れを防止する。
【0034】
カテーテル挿入器120の取外しに続いて、ルアー固定デバイス10はさらに、
図4Dに示されるように、ルアー連結器152を介して流体ライン150などの流体供給源に結合されることができる。いくつかの実施形態では、流体ライン150は、隔壁40を貫通してルーメン(管腔)36の中に入るプローブすなわちノズル154を備える。そのため、患者と流体ライン150の間の流体連通は、カテーテル90を介して容易にされる。
【0035】
本発明は、本明細書で大まかに説明され、添付の特許請求の範囲に記載されたその構造物、方法、または他の本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されることができる。説明された実施形態および例のすべては、どんな点においても例示的なものにすぎず、限定的なものではないと考えられるものである。したがって本発明の範囲は、上記の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と同等の意味および範囲の中に入るすべての変更は、特許請求の範囲に包含されるものである。