【実施例】
【0053】
(例1)
操作されたエフェクター細胞系の確立
FcγRIIIa受容体(CD16)のライゲーションに対して最適に応答するレポーター−遺伝子構築物を確立するために、異なるスペーシング配列と共に、NFAT、NFkB、AP1、CREB、及びSTAT認識配列(4〜6)のバリアントからなる一連の構築物をin silicoで開発した。これらの構築物に対応するオリゴヌクレオチドを合成し、ヒトT細胞系Jurkatを使用して、インターフェロンアルファ及びガンマ(100IU/ml)、TNFα(100ng/ml)、ジブチリルcAMP(100μM)、ロノマイシン(500mM)、及びPMA(10ng/ml)の単独又は組合せによる誘導の後、最小SV40プロモーターからホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子の転写を駆動するそれらの能力について、一過性トランスフェクション実験において試験した。次いで、これらの機能的レポーター遺伝子構築物を、1:1の比のJurkat及びRaji細胞並びにリツキシマブ(500ng/ml)の存在下で、ADCC反応において試験した。これらの実験の結果を使用して、FLレポーター遺伝子構築物(
図2)の発現を調節するために使用される合成キメラプロモーター配列(
図1)を設計した。次いで、薬物に誘導されるFL活性がRLの構成的発現に関して正規化されるのを可能とする構成的プロモーターの制御下で、FLレポーター遺伝子構築物、FcRγIIIa(vバリアント)に対する発現ベクター、及びウミシイタケルシフェラーゼ(RL)レポーター遺伝子を、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、Jurkat細胞に順次トランスフェクトした(
図3)。安定なクローンを単離し、所与の治療用抗体及び適当な標的細胞の存在下で、ADCC活性について特徴付けた。適切なクローンを単離し、特徴付け、次いで、サブクローニングし、特徴付け、増殖させて、クローンのiLite(登録商標)エフェクター細胞系をもたらした。
【0054】
(例2.1)
細胞表面で高い一定レベルのCD20を発現する操作された標的細胞系の確立
CD20をコードする遺伝子を、CRISPR−Cas9ゲノム編集(7)を使用して、B細胞系Raji(ATCC(登録商標)CCL−86)において無効化した。簡潔には、ガイドRNA配列(
図4)を設計し、合成し、Cas9二重鎖DNAエンドヌクレアーゼをCD20遺伝子のエクソン1内の特異的部位にガイドして、CD20−/−Raji細胞を単離するために、ヌクレアーゼベクターGeneArt CRISPR(Invivogen、カタログ番号:A21174)にクローニングした(
図5)。
【0055】
次いで、CD20−/−Raji細胞に、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、CD20発現ベクター(pUNO1−CD20)をトランスフェクトした。蛍光活性化細胞選別及びFITC標識抗CD20モノクローナル抗体(FAB4225F、R&D Systems)を使用して陽性クローンを濃縮した。安定なクローンを単離し、エフェクター細胞及びリツキシマブの存在下でADCC活性について特徴付け、次いで、サブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特徴付け、増殖させて、CD20++標的細胞系をもたらした(
図5)。
【0056】
(例2.2)
最適なE:T比の確立
様々な濃度のiLite(登録商標)エフェクター細胞(E)を、様々な濃度のCD20++標的細胞(T)とインキュベートして、リツキシマブのADCC活性の定量のために最適なエフェクター標的細胞比(E:T)を決定した(
図6A及び6B)。培養物中のエフェクター細胞及びRAV2.1S8標的細胞に対する最適なE:T比は、容易に測定可能なレベルのFL活性を与える(
図6A)一方、同時に、濃度の増加するリツキシマブの存在下で、エフェクター細胞及び標的細胞の4時間のインキュベーション後に、最適なダイナミックレンジをもたらす(
図6B)、3:1であることが判明した。
【0057】
iLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアルとCD20++標的細胞のバイアルを、標準的技法を使用して別々に凍結させた。解凍する際に、エフェクター細胞と標的細胞を、24:1から2:1の範囲のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地及び10%ウシ胎仔血清(FBS)中で、濃度の増加するリツキシマブの存在下で、96ウェルの白色面を有するマイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で4時間インキュベートした。次いで、FL活性を、Dual Glo(Promega 22920)というデュアルルシフェラーゼ基質を使用して決定し、発光をルミノメーター(GloMax、Promega)で定量し、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表現した。結果を、
図6及び7に示すように、4つのパラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で表す。
図6及び7に関連付けた表は、異なるE:T比のiLite(登録商標)エフェクター細胞及びCD20++標的細胞に対する主要な4PLパラメータを概説する(
図6及び7)。E:T比3:1が、エフェクター及び標的細胞の4時間のインキュベーション後に最適であることが判明した(
図6及び7)。発現レベルは、E:T比の関数として増加しなかったため(
図8)、正規化遺伝子として使用することができる。さらに、治療用抗体のADCC活性を定量する便利で費用効果的な手段を提供することに対して、凍結した使用準備済みのエフェクター及び標的細胞はまた、4PLプロットの主要なパラメータを示す
図9及び関連付けた表で例証するように、バイアル間及びロット間での変動度合いが低い、精度が高く、再現性の高いアッセイの確立の基礎を提供する。
【0058】
(例2.3)
ヒト血清の存在下でのリツキシマブのADCC活性の定量
ADCCアッセイにおいてヒト血清が存在することは、ヒト血清中に存在するIgGの標的細胞表面への非特異的結合による、治療用抗体の非存在下でのエフェクター細胞のレポーター遺伝子活性の濃度依存的増加をもたらす。特異的薬物標的がゲノム編集によって無効化されている相同な標的細胞のアベイラビリティによって、同じ濃度のヒト血清の存在下で特異的薬物標的を発現する相同な細胞に関して実測したものから減算することができる、標的陰性細胞及び所与の濃度のヒト血清の存在下での非特異的活性のレベルを推定する手段が提供される。ヒト血清の標的細胞との非特異的相互作用は、治療用抗体と特異的標的細胞との相互作用に関して観測した4PL曲線の傾きを有意に変化させない低い親和性のものである(
図10及び関連付けた表)。
【0059】
iLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアルとCD20++標的細胞のバイアルを解凍し、エフェクター細胞と標的細胞をE:T比3:1で混合し、正常なヒト血清(NHS)のプールの最終的に1/20の希釈の有無のいずれかで、RPMI 1640培養培地及び10%のウシ胎仔血清(FBS)中で、濃度の増加するリツキシマブの存在下で、96ウェルの白色面を有するマイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で4時間インキュベートした。次いで、FL活性を、Dual Glo(Promega 22920)というデュアルルシフェラーゼ基質を使用して決定し、発光をルミノメーター(GloMax、Promega)で定量し、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表現した。結果を、
図10に示すように、4つのパラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で表す。
図10に関連付けた表は、正常なヒト血清の存在下及び非存在下で、iLite(登録商標)/CD20++及びNFAT/WT Rajiアッセイの両方に対する主要な4PLパラメータを概説する。エフェクター細胞及びCD20++標的細胞の応答(リツキシマブを含まない対照試料に対する誘導倍率として表される)は、
図10に示すように、NFATエフェクター細胞と野生型CD20+Raji細胞のものより有意に大きいことが判明した。したがって、ヒト血清の非存在下で、NFATエフェクター細胞及びWT Raji細胞に関するおよそ10倍に対して、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びCD20++標的細胞に関しておよそ150倍のダイナミックレンジが得られた。アッセイのEC50は、ヒト血清の非存在下で、NFAT/WT Raji細胞アッセイに対する1.2μg/mlと比較して、およそ2.0ng/mlであった。iLite(登録商標)/CD20++アッセイの応答はまた、NFAT/WT Rajiアッセイと比較して、ヒト血清の存在によって著しく及ぼされる影響が少なかった(
図10)。濃度の増加するリツキシマブの存在に対して、E:T比3:1におけるiLite(登録商標)エフェクター細胞とRaji−/−標的細胞の応答は、
図10に示すように、リツキシマブを含まない対照試料の応答と有意に異ならなかった。
【0060】
所与の濃度のヒト血清の存在下でレポーター遺伝子の非特異的活性を補うために、式[(E+T++薬物+NHS)−(E+T−+NHS)+(E+T+)]/E+T+、又は[(E+T++NHS)−(E+T−+NHS)+(E+T+)]/E+T+[式中、(E)=エフェクター細胞、(T+)=抗原陽性標的細胞、(T−)=抗原陰性標的細胞、NHS=正常なヒト血清試料]に従って、所与のリツキシマブ濃度においてCD20−/−陰性標的細胞の存在下で実測したエフェクター細胞シグナルを、同じリツキシマブ濃度においてエフェクター細胞及びCD20++標的細胞の存在下で実測したシグナルから減算して、リツキシマブのADCC活性に対する正規化した薬物応答曲線を得た(
図11A及び11B)。
【0061】
別々に凍結したエフェクター及び標的細胞と同じ条件下で、解凍及びリツキシマブと共にインキュベートした場合、最適なE:T比が3:1の単一のバイアル中で、一緒に凍結したエフェクター細胞及び標的細胞は、別々に凍結した細胞に関して得られたものと同様の結果を与え、したがって、かなりの時間の節約を付与するより便利な形式を提供する。
【0062】
(例3)
細胞表面で高い一定レベルのerbB2を発現する操作された標的細胞系の確立
erbB2をコードする遺伝子を、CRISPR−Cas9ゲノム編集(7)を使用して、HEK293細胞(ATCC(登録商標)CRL−1573)及びSKBR3細胞(ATCC(登録商標)HTB−30)中で無効化した。簡潔には、ガイドRNA配列(
図12)を設計し、合成し、Cas9二重鎖DNAエンドヌクレアーゼをERBB2遺伝子のエクソン6内の特異的部位にガイドして、erbB2−/−HEK293細胞及びerbB2−/−SKBR3細胞を単離するために、ヌクレアーゼベクターGeneArt CRISPR(Invivogen、:A21174)にクローニングした。
【0063】
次いで、HEK293−/−細胞及びSKBR3−/−細胞に、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、ERBB2発現ベクター(pUNO1−ERBB2)をトランスフェクトした。陽性のクローンを、蛍光活性化細胞選別及びFITC標識抗erbB2モノクローナル抗体(Abcam、ab31891)を使用して濃縮した。安定なクローンを単離し、
iLite(登録商標)エフェクター細胞及びハーセプチンの存在下でADCC活性について特徴付け、次いで、サブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特徴付け、増殖させて、erbB2++KEK293及びerbB2++SKBR3標的細胞系をもたらした。
【0064】
iLite(登録商標)エフェクター細胞及びerbB2++HEK293標的細胞の応答(ハーセプチンを含まない対照試料に対する誘導倍率として表される)は、NFATエフェクター細胞及び野生型SKBR3標的細胞のものより有意に大きいことが判明した(
図13)。iLite(登録商標)エフェクター細胞及び野生型SKBR3標的細胞の応答は、erbB2 HEK293++標的細胞に関して実測したものよりも少ないが、それにもかかわらず、NFATエフェクター細胞と野生型SKBR3標的細胞に関して実測したものよりは有意に大きかった(
図14)。iLite(登録商標)エフェクター細胞及びerbB2−/−標的細胞の応答は、erbB2++標的細胞に対して使用したものと同じE:T比で、濃度の増加するハーセプチンの存在に対して、Herceptinを含まない対照試料の応答と有意に異ならなかった。
【0065】
iLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアル並びにerbB2++HEK293及びerbB2++SKBR3標的細胞のバイアルを、標準的技法を使用して別々に凍結させた。解凍する際に、エフェクター細胞及び標的細胞を、24:1から2:1の範囲のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地及び10%ウシ胎仔血清(FBS)中で、濃度の増加するハーセプチンの存在下で、96ウェルの白色面を有するマイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で6時間インキュベートした。次いで、FL活性を、デュアルルシフェラーゼ基質を使用して決定し、発光をルミノメーター(GloMax、Promega)で定量し、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表現した。結果を、
図15A及び15Bに示すように、4つのパラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で表す。
図15Aに関連付けた表は、異なるE:T比のiLite(登録商標)エフェクター細胞及びerbB2++HEK293標的細胞に対する主要な4PLパラメータを概説し、
図16A及び16B並びに関連付けた表は、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びerbB2++SKBR3標的細胞に関して実測したデータを示す。E:T比1.5:1が、iLite(登録商標)エフェクター並びにHEK293 erbB2++標的細胞(
図15A及び15B)及びSKBR3 erbB2++標的細胞(
図16A及び16B)の両方の6時間のインキュベーション後に最適であることが判明した。iLite(登録商標)エフェクター細胞におけるウミシイタケルシフェラーゼの発現レベルは、erbB2++HEK293標的細胞(
図15C)又はerbB2SKBR3標的細胞のいずれかを使用するE:T比の関数として増加しなかったため、正規化遺伝子として使用することができる。
【0066】
(例4)
細胞表面で高い一定レベルのmTNFαを発現する操作された標的細胞系の確立
TNFαアンタゴニストのADCC活性の定量には、膜結合型TNFαを発現する標的細胞を必要とする。TNFαは、最初に膜結合するが、次に、ADAM17(TACE)プロテアーゼによって切断される。したがって、膜結合型の、非切断性TNFαを発現する細胞系を確立するために、部位特異的突然変異誘発を使用して、プロテアーゼ切断部位を突然変異させ、ヒトTNFαをコードする遺伝子の76〜77位におけるアミノ酸AVをLLに変化させた(
図17)。
【0067】
しかし、細胞表面に発現した非切断性TNFαは、隣接細胞の表面に存在するTNFαRII受容体に結合し、細胞死をもたらし、永続的な細胞系の確立を困難にすることになる。したがって、又はこのような困難を取り除くために、TNFαRII受容体を、ゲノム編集を使用して無効化した。
【0068】
TNFαRII受容体をコードする遺伝子を、CRISPR−Cas9ゲノム編集(7)を使用して、HEK293細胞(ATCC(登録商標)CRL−1573)において無効化した。簡潔には、2つのガイドRNA配列(
図18)を設計し、合成し、Cas9二重鎖DNAエンドヌクレアーゼを、第12染色体上に位置するTNFαRII遺伝子のエクソン2及び第1染色体上に位置するTNFαRII遺伝子のエクソン2内の特異的部位にガイドして、TNFαRII−/−HEK293細胞を単離するために、ヌクレアーゼベクターGeneArt CRISPR(Invivogen、:A21174)にクローニングした。
【0069】
安定なクローンを単離し、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びレミケード(インフリキシマブ)の存在下で、ADCC活性について特徴付け、次いで、サブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特徴付け、増殖させて、mTNFα標的細胞系mTNF6.10をもたらした(
図19)。次いで、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びmTNF++標的細胞を使用し、
図19の培養物中の細胞について示すように、レミケード(インフリキシマブ)のADCC活性を定量した。iLite(登録商標)エフェクター細胞及びmTNF−/−標的細胞は、6時間のインキュベーション後に、1.0μg/mlまでのインフリキシマブの濃度で、検出可能なADCC活性を示さなかった(
図19)。
【0070】
iLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアルとmTNF++標的細胞のバイアルを、標準的技法を使用して別々に凍結させた。解凍する際に、エフェクター細胞と標的細胞を、24:1から2:1の範囲のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地及び10%ウシ胎仔血清(FBS)中で、濃度の増加するレミケードの存在下で、96ウェルの白色面を有するマイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で6時間インキュベートした。次いで、FL活性を、デュアルルシフェラーゼ基質を使用して決定し、発光をルミノメーター(GloMax、Promega)で定量し、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表現した。結果を、
図20A及び20Bに示すように、4つのパラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で表す。
図20A及び20Bに関連付けた表は、異なるE:T比のiLite(登録商標)エフェクター細胞及びmTNF++標的細胞に対する主要な4PLパラメータを概説する(
図20A及び20B)。E:T比3:1が、エフェクター及び標的細胞の6時間のインキュベーション後に最適であることが判明した(
図20A及び20B)。RL発現レベルは、E:T比の関数として増加しなかったため(
図21)、正規化遺伝子として使用することができる。
【0071】
治療用抗体で処置した患者は、治療に対して異なる方式で応答することが多く、一部の患者では、治療に応答するその能力に負の影響を及ぼし得る抗薬物抗体(ADA)も生じる。したがって、治療用抗体の循環レベルと抗薬物抗体の両方について、経時的に、個々の患者を監視する必要がある。さらに、いくつかの治療用抗体の活性は、部分的に、抗体依存性細胞傷害によって媒介されるため、治療用抗体のADCC活性について、患者を監視する必要がある。しかし、得られる結果を混乱させ得るエフェクター細胞の活性の非特異的増加をもたらす標的細胞の表面に結合することができるヒト血清中に存在するIgGの濃度が高いことにより、これは困難となる。
【0072】
特異的薬物標的がゲノム編集によって無効化されている、相同な標的陰性細胞の使用によって、以下の式:[(E+T++薬物+NHS)−(E+T−+NHS)+(E+T+)]/E+T+、又は[(E+T++NHS)−(E+T−+NHS)+(E+T+)]/E+T+[式中、(E)=エフェクター細胞、(T+)=抗原陽性標的細胞、(T−)=抗原陰性標的細胞、NHS=正常なヒト血清試料]を使用して、同じ濃度のヒト血清の存在下で、特異的薬物標的を発現する相同な細胞に関して実測したものから減算することができる、標的陰性細胞及び所与の濃度のヒト血清の存在下での非特異的活性のレベルを推定する手段が提供される。この技術は、クローン病を有する患者由来の血清試料におけるTNFαアンタゴニストであるインフリキシマブのADCC活性を定量するために使用されている(表1)。5.0以上の標的++/標的−/−細胞に対する読み出しは、正常なヒト血清の1/20の最終希釈の有り及び無しにおいて、対照試料から得た結果から陽性であると考えられた(表1)。したがって、試料1、3、及び9は、この技法を使用してADCC活性を示すことが判明した(表1)。試料1、3、及び9は、ELISA(Matriks Bioteck、TR−QS−INF)又は以前に記載したバイオアッセイ(8)のいずれかを使用して、検出可能なレベルのインフリキシマブを含有することも判明した(表1)。
【表1】
【0073】
市販のELISA(Matriks Bioteck 参照TR−ATIv4)を使用して決定した抗インフリキシマブ抗体を含有することが判明した試料7、8、14及び20では、ADCC活性は検出されなかった。さらに、ELISAによって検出された抗インフリキシマブ抗体は、バイオアッセイ(8)を使用して中和していることが示された。
【0074】
アダリムマブ及びエタネルセプトのADCC活性も、関節リウマチを有する患者由来の血清試料において定量した(表2)。したがって、エタネルセプトで処置した患者由来の試料7から11及び試料17は、容易に検出可能なADCC活性を含有することが判明した(表2)。同様に、アダリムマブで処置した患者由来の試料4、5、8、12、13、14、17、及び19は、容易に検出可能なADCC活性を含有することが判明した(表2)。
【表2】
【0075】
(例5)
細胞表面で高い一定レベルのEGFRを発現する操作された標的細胞系の確立
EGFR陰性HEK293細胞(ATCC(登録商標)CRL−1573)の細胞に、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、ヒトEGFRa発現ベクター(pUNO1−hefgr、Invivogen)をトランスフェクトした。陽性のクローンを、蛍光活性化細胞選別及びFITC標識抗EGFRモノクローナル抗体(R&D Systems、FAB10951P)を使用して濃縮した。安定なクローンを単離し、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びセツキシマブを使用して、ADCC活性について特徴付け、次いで、サブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特徴付け、増殖させて、EGFR++標的細胞系をもたらした(
図21)。
【0076】
iLite(登録商標)エフェクター細胞及びEGFR++HEK293標的細胞の応答(セツキシマブを含まない対照試料に対する誘導倍率として表される)は、
図21に示すように、セツキシマブの存在下での6時間のインキュベーション後に決定したNFATエフェクター細胞とEGFR++HEK293標的細胞のものより有意に大きいことが判明した。したがって、NFATエフェクター細胞及びEGFR++HEK293標的細胞に関するおよそ2倍に対して、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びEGFR++HEK293標的細胞に関しておよそ60倍のダイナミックレンジが得られた(
図21及び関連付けた表)。
【0077】
iLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアルとEGFR++標的細胞のバイアルを、標準的技法を使用して別々に凍結させた。解凍する際に、エフェクター細胞と標的細胞を、24:1から2:1の範囲のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地及び10%ウシ胎仔血清(FBS)中で、濃度の増加するレミケードの存在下で、96ウェルの白色面を有するマイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で6時間インキュベートした。次いで、FL活性を、デュアルルシフェラーゼ基質を使用して決定し、発光をルミノメーター(GloMax、Promega)で定量し、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表現した。結果を、
図22A及び22Bに示すように、4つのパラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で表す。
図22A及び22Bに関連付けた表は、異なるE:T比のiLite(登録商標)エフェクター細胞及びEGFR++標的細胞に対する主要な4PLパラメータを概説する(
図22A及び22B)。E:T比6:1が、エフェクター及び標的細胞の6時間のインキュベーション後に最適であることが判明した(
図22A及び22B)。RL発現レベルは、E:T比の関数として増加しなかったため、正規化遺伝子として使用することができる。
【0078】
特定の実施形態では、本発明は、以下の項目にも関する:
項目:
1.NF−AT、AP1、NFkB、及びSTAT5によって活性化される組換えレポーター遺伝子又は構築物を有するエフェクター細胞。
2.抗体が特異的である内因性標的が無効化された組換え標的細胞。
3.抗体が特異的である標的の発現が増強された組換え標的細胞。
4.配列番号1のヌクレオチド配列を含む、NF−AT、AP1、NFkB、及びSTAT5に結合する調節配列。
5.
NF−AT、AP1、NFkB、CREB、及びSTAT5によって活性化される組換えレポーター遺伝子アッセイ又は構築物を有するエフェクター細胞と;
抗体が特異的である内因性標的が無効化された組換え標的細胞(従属請求項、CD20、mTNFα、erbB2(SKBR3及びHEK293)、EGFR)と;
抗体が特異的である標的の発現が増強された組換え標的細胞と
を含むキット。(従属請求項、CD20、mTNFα、erbB2(SKBR3及びHEK293)、EGFR)
6.エフェクター細胞及び薬物標的が無効化されている標的細胞の存在下で得たシグナルを、エフェクター細胞及び薬物標的を発現する標的細胞の存在下で得たシグナルから減算することによって、ヒト血清の存在下でレポーター遺伝子シグナルの非特異的増加を補うための方法。
7.治療用抗体で処置した患者由来の臨床試料のex vivoでのADCC活性を定量するための方法。
【0079】
さらに、さらに具体的な実施形態では、本発明は、以下の項にも関する:
1.下流プロモーターに作動可能に連結したシス作用調節配列を含むポリヌクレオチドであって、NF−AT、AP1、NFkB、STAT1、STAT3及びSTAT5のうちの1つ又は複数が、前記シス作用調節配列に結合することができる上記ポリヌクレオチド。
2.NF−AT、AP1、NFkB、及びSTAT5がすべて、前記シス作用調節配列に結合することができることを特徴とする、項1に記載のポリヌクレオチド。
3.プロモーターが、第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレーム配列に作動可能に連結している、項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
4.レポーターが酵素である、項1から3までのいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
5.酵素が、例えば、ルシフェラーゼである、項1から4までのいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
6.酵素が、蛍光タンパク質である、項1から5までのいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
7.配列番号1と少なくとも約70%の配列同一性、例えば、少なくとも約75%の配列同一性など、例えば、少なくとも約80%の配列同一性など、例えば、少なくとも約85%の配列同一性など、例えば、少なくとも約90%の配列同一性など、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などを有するヌクレオチド配列又は配列番号1と同一のDNA配列を含む、項1から6までのいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
8.項1から7までのいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
9.前記ベクターが、プラスミド又はウイルスベクターである、項8に記載のベクター。
10.項8又は9に記載のベクターを含む細胞。
11.哺乳動物細胞である、項10に記載の細胞。
12.前記ベクターが、エピソーム性であるか又は前記細胞のゲノムに組み込まれている、項10又は11に記載の細胞。
13.細胞が、第1のレポータータンパク質と異なる第2のレポータータンパク質をさらに発現する、項10から12までのいずれか一項に記載の細胞。
14.細胞が、Jurkat、SKBR3、又はHEK293細胞である、項10から13までのいずれか一項に記載の細胞。
15.
i)請求項10から14までのいずれか一項に記載の細胞と;
ii)抗体が特異的である内因性標的が無効化された(突然変異した)細胞と;
iii)抗体が特異的である標的の発現が増強された細胞と
を含むキット。
16.ii)で標的細胞において無効化された標的が、CD20、mTNFα、erbB2、EGFRのうちの1つ又は複数を含む、項15に記載のキット。
17.iii)で標的細胞において増強された標的が、CD20、mTNFα、erbB2、EGFRのうちの1つ又は複数を含む、項15に記載のキット。
18.2つのバイアルを含む、項15から17までのいずれか一項に記載のキット。
19.i)及びiii)の細胞が、最適なE:T比で、1つの同じバイアルに存在する、項15から18までのいずれか一項に記載のキット。
20.i)の細胞とiii)の標的細胞との間の比が、約24:1から約2:1、又は例えば約6:1、又は例えば約3:1、又は例えば約1.5:1の範囲内である、項15から19までのいずれか一項に記載のキット。
21.治療用抗体で処置した患者由来の臨床試料のex vivoでのADCC活性を定量するための方法であって、
a)抗体の投与を含む処置を受けている患者から得た試料を、項15の標的細胞ii)と接触させるステップと、
b)薬物標的が無効化されている細胞i)の存在下で得たシグナルを、エフェクター細胞i)及び標的細胞iii)の存在下で得たシグナルから減算するステップと、
c)a)及びb)で測定したシグナルの関係に基づいて、ADCC活性を決定するステップと
を含む上記方法。
22.血清試料に対する陽性の結果(すなわち、検出可能なADCC活性)は、エフェクター細胞i)及び標的++細胞iii)/エフェクター細胞i)及び標的−/−細胞ii)に対するシグナルの関係が≧1である場合に存在し、血清試料に対する陰性の結果(すなわち、検出不可能なADCC活性)は、エフェクター細胞i)及び標的++細胞iii)に関する値/エフェクター細胞i)及び標的−/−細胞ii)に関する値が≦1である場合に存在する、項21に記載の方法。
23.ヒト血清の存在下で、レポーター遺伝子シグナルの非特異的増加を補うための方法であって、細胞i)の存在下で得たシグナルを、項15のエフェクター細胞i)及び薬物標的を発現する標的細胞iii)の存在下で得たシグナルから減算するステップを含む上記方法。
24.エフェクター細胞及び標的陰性細胞が>1である場合に、調査下の抗体に特異的なADCC活性に関連しない活性を示す血清試料を排除するための、項23に記載の方法。
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(参考文献)