特許第6929369号(P6929369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6929369周囲に沿って実装するための障害物、周囲保護システム、船舶又は海洋施設、並びに、周囲を保護する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929369
(24)【登録日】2021年8月12日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】周囲に沿って実装するための障害物、周囲保護システム、船舶又は海洋施設、並びに、周囲を保護する方法
(51)【国際特許分類】
   B63G 13/00 20060101AFI20210823BHJP
   B63B 17/04 20060101ALI20210823BHJP
   F41H 11/00 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   B63G13/00
   B63B17/04
   F41H11/00
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-539229(P2019-539229)
(86)(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公表番号】特表2020-514170(P2020-514170A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2017060095
(87)【国際公開番号】WO2017121908
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2020年4月23日
(31)【優先権主張番号】1701050.5
(32)【優先日】2017年1月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518294937
【氏名又は名称】グレイ ページ マリーン システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ウィルクス ジェイムズ エドワード
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第202935562(CN,U)
【文献】 国際公開第2016/102929(WO,A1)
【文献】 米国特許第10046831(US,B2)
【文献】 米国特許第09359051(US,B2)
【文献】 国際公開第2016/016609(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第201472648(CN,U)
【文献】 英国特許出願公開第02533592(GB,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010052622(DE,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0005586(KR,A)
【文献】 国際公開第2016/156823(WO,A1)
【文献】 実開平01−157093(JP,U)
【文献】 特開2014−136450(JP,A)
【文献】 特開2001−191983(JP,A)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2013−0005714(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63G 13/00
B63B 17/04
B63B 59/02
F41H 11/00
F41H 13/00
E04H 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶又は海洋施設の周囲に沿って実装するための障害物(10)であって、前記船舶又は海洋施設は、周囲レール(20)を有するデッキ(51)と、前記デッキの縁部に沿った直立板(53)とを含み、前記障害物は細長ボディを有し、前記細長ボディは、
前記周囲レールの最下位列のレール(203)を受容するための縦溝(12)と、
前記直立板(53)の上にその船外即ち海側で突き出るための舌状部(14)であって、前記障害物(10)が前記船舶又は海洋施設の前記周囲に沿って実装されるときに船内方向に面するように意図された後面(142)を含む、舌状部とを含み、
前記舌状部の後面(142)と前記縦溝(12)の中心線(X−X’)との間の分離(s)は、30〜300mmであり、
前記縦溝(12)の前記中心線(X−X’)と前記分離(s)とは、前記舌状部の前記後面(142)に対する90度〜135度の角度(θ)を船内側に範囲決めする平面を共に規定する、障害物。
【請求項2】
前記舌状部(14)は、前記縦溝(12)から離れる方向に減っていく厚さ(t)を有する、請求項1に記載の障害物。
【請求項3】
前記縦溝(12)は、前記最下位列のレール(203)まわりの前記障害物(10)の回転に適合され、それによって、前記障害物は、デッキの縁部に沿って異なった高さの板(53a、53b)を収容することができる、請求項1又は2に記載の障害物。
【請求項4】
前記障害物(10)が前記船舶又は海洋施設の前記周囲に沿って実装されるときに上方に面するように意図された上面(16)を更に含み、前記上面は、前記障害物(10)の深さの方向(D−D’)に凸状に湾曲している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の障害物。
【請求項5】
前記上面(16)は、実質上滑らかである、請求項4に記載の障害物。
【請求項6】
前記舌状部(14)は、前記障害物(10)が前記船舶又は海洋施設の前記周囲に沿って実装されるときに海方向に面するように意図された前面(144)を含み、前記前面は、実質上滑らかである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の障害物。
【請求項7】
前記障害物(10)を前記最下位列のレール(203)に取り付けるための前記縦溝(12)に近位の取付け設備(11)を更に含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の障害物。
【請求項8】
前記取付け設備(11)は、前記障害物の1つ又は複数の貫通穴(112)を含む、請求項7に記載の障害物。
【請求項9】
前記最下位列のレール(203)まわりの前記障害物(10)の回転を妨げるための回転防止デバイス(13)を更に含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の障害物。
【請求項10】
前記回転防止デバイス(13)は、前記舌状部(14)の1つ又は複数の貫通穴(132)を含む、請求項9に記載の障害物。
【請求項11】
前記障害物(10)は、0.70〜1.50メートルの幅(w)を有する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の障害物。
【請求項12】
前記舌状部(14)は、200〜600mmの高さ(h)を有する、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の障害物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の複数の障害物(10a、10b)と、
前記障害物の上で、前記船舶又は海洋施設の前記周囲レール(20)に実装するための複数のセキュリティ防壁(1a、1b、1c)とを含む、周囲保護システム(100)。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の、前記船舶又は海洋施設の前記周囲に沿って並んで互いに隣接して配置される複数の障害物(10a、10b)と、
前記障害物の上で、前記船舶又は海洋施設の前記周囲レール(20)に沿って並んで互いに隣接して配置される複数のセキュリティ防壁(1a、1b、1c)とを含む、船舶又は海洋施設。
【請求項15】
前記複数の障害物(10a、10b)及び前記複数のセキュリティ防壁(1a、1b、1c)によって保護される積荷を更に含む、請求項14に記載の船舶又は海洋施設。
【請求項16】
船舶又は海洋施設の周囲を保護する方法であって、前記船舶又は海洋施設は、周囲レール(20)を有するデッキ(51)と、前記デッキの縁部に沿った直立板(53)とを含み、
請求項1から12のいずれか1項に記載の複数の障害物(10a、10b)を、前記船舶又は海洋施設の前記周囲に沿って並んで互いに隣接して位置決めするステップと、
前記周囲レールの最下位列のレール(203)を前記障害物の前記縦溝(12)に受容するステップと、
前記障害物の前記舌状部(14)をその船外即ち海側の前記直立板(53)の上に掛けるステップとを含む、方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記障害物(10a、10b)を前記周囲レール(20)に取り付けるステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記最下位列のレール(203)まわりの少なくとも1つの前記障害物(10a、10b)の回転を妨げるステップを更に含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
複数のセキュリティ防壁(1a、1b、1c)を、前記障害物の上で、前記船舶又は海洋施設の前記周囲レールに沿って並んで互いに隣接して位置決めするステップを更に含む、請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業船や軍艦などの船舶、或いは、油田採掘機や他の海洋プラットフォームなどの海洋施設の周囲に沿って実装するための障害物に関する。本発明は、海賊、密航者及び活動家などの無許可の潜在的搭乗者に対して船舶又は海洋施設の周囲を保護するためのシステム、並びに、そういったシステムを含む船舶又は海洋施設にも関し、また、船舶又は海洋施設の周囲を保護する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
海での犯罪の増加により、海上を航行する船舶及び海洋施設にとって、そういった無許可の潜在的搭乗者に対して保護されるべき必要性は、対応して増加してきた。無許可の潜在的搭乗者は、例えば、様々なラダー、クライミングポール、グラップリングフック及びロープを装備した1つ又は複数の小型高速のボートで、船やプラットフォームに接近することがある。彼らは、そういったボートを大きめの船やプラットフォームに横付けにして、ラダーやクライミングポールをボートから大きめの船やプラットフォームの側面の上に持ち上げて、船やプラットフォームのデッキへのアクセスを得るためにラダーやポールをよじ登ることによってそれに搭乗しようと試みることがある。彼らはまた、デッキに固定されたアイテムを捕捉してそれによってロープをよじ登るのを可能にする目的で、ロープに取り付けられたグラップリングフックをデッキに投げようと試みることがある。これは、そういった無許可の潜在的搭乗者を阻止するのを目標にすることで、船舶及び海洋施設の周囲を保護するための幾つかの異なったタイプのセキュリティ防壁の発展をもたらした。これらの公知のセキュリティ防壁は、船舶又は海洋施設のデッキの縁部に沿って延びる周囲レールの上に典型的に実装される。
【0003】
他方、多くの船舶及び海洋施設は、デッキの縁部に沿って延びる直立板を更に含む。そういった板は、フィッシュプレートと一般に呼ばれるが、船舶又は海洋施設の動きのせいでデッキが水平から逸脱する場合や、デッキが波で洗われるか、又は悪天候で衝撃を与えられる場合に、デッキ上の物体がデッキの縁部から滑落して船外に落ちるのを防止するように設計される。しかしながら、フィッシュプレートの上部縁部は、無許可の潜在的搭乗者が、船舶又は海洋施設に搭乗しようと試みる際に、フックを取り付けるため又はつかみ所を得るために、場所を提供する場合がある。また、フィッシュプレートは、周囲レールに沿ったセキュリティ防壁の実装を妨げる場合もある。これは、特に、セキュリティ防壁が、レールの底部縁部の近くか又はその下の位置で、周囲レールの実質上高さ全体に延びるか又はデッキの縁部を越えて海方向に延びる場合に、当てはまる。先行技術では、それらの課題の解決策は、殆ど考慮されてこなかったように見える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらや他の課題に取り組むことを意図している。同じく意図しているのは、船舶の周囲に沿って実装するための障害物と、複数のそういった障害物を含む船舶又は海洋施設のための周囲保護システムと、複数のそういった障害物を含む船舶又は海洋施設と、複数のそういった障害物を用いる船舶又は海洋施設の周囲を保護する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、第1の態様では、本発明は、船舶又は海洋施設の周囲に沿って実装するための障害物を提供し、船舶又は海洋施設は、周囲レールを有するデッキと、デッキの縁部に沿った直立板とを含む。障害物は、周囲レールの最下位列のレールを受容するための縦溝と、板の上にその船外即ち海側で突き出るための舌状部とを含む細長ボディを有する。舌状部は、障害物が船舶又は海洋施設の周囲に沿って実装されるときに船内方向に面するように意図された後面を含む。舌状部の後面と縦溝の中心線との間の分離sは、30〜300mmであり、縦溝の中心線と分離sとは、舌状部の後面に対する90度〜135度の角度θを範囲決めする平面を共に規定する。
【0006】
そういった障害物の場合、フィッシュプレートは、フックをフィッシュプレートに取り付けること又はフィッシュプレートの上部縁部においてつかみ所を得ることを試みる無許可の潜在的搭乗者から保護されることができる。上で説明されるような障害物の分離s及び角度θの特徴の組合せは、障害物が、多種多様の異なった可能な高さのフィッシュプレートやフィッシュプレートまでのデッキを横切る異なった可能な距離の周囲レールを、下で非常に詳細に説明されるやり方で保護するのを可能にする。
【0007】
その上、この障害物が提供するようなそういったフィッシュプレートプロテクタを使用する場合、複数のセキュリティ防壁は、船舶又は海洋施設に周囲保護システムを提供するために複数のそういった障害物の上で周囲レールに沿って実装されることがあり、周囲レールの高さ全体に実質上延びるか或いはレールの底部縁部の近くか又はその下の場所で海方向にデッキの縁部を越えるセキュリティ防壁を採用する必要性は、伴わない。例えば、セキュリティ防壁は、周囲レールの上部からその高さのほぼ3分の2又は4分の3だけ延びているが、代わりに使用されることがある。こうして、周囲レールに沿ったセキュリティ防壁の実装を妨げるフィッシュプレートのリスクは、回避される場合がある。
【0008】
好ましくは、障害物の舌状部は、縦溝から離れる方向に減っていく厚さtを有する。これは、障害物の使用時に舌状部が下方を指し示す方向にある障害物の配向を維持するのに役立つ。また、それは、障害物の使用時に障害物の重心がより船内方向にシフトするという利点も有し、悪天候や海の状況で障害物が誤って船外に失われる可能性を減少させる。
【0009】
好ましくは、縦溝は、最下位列のレールまわりの障害物の回転に適合され、したがって、障害物は、デッキの縁部に沿って異なった高さの板を収容することができる。
【0010】
好ましくは、障害物は、障害物が船舶又は海洋施設の周囲に沿って実装されるときに上方に面するように意図された上面を更に含み、上面は、障害物の深さの方向に凸状に湾曲する。これは、障害物が異なった高さのフィッシュプレートに適するように回転される場合に、上面がデッキの上で実質上一定の高さを維持するのを確実にするという利点を有し、それによって、その上で周囲レールに実装された任意のセキュリティ防壁を妨げる可能性を低くする。また、それは、障害物の上面が無許可の潜在的搭乗者によって、つかみ所のための場所として使用されるのを防止するのにも役立つ。
【0011】
そういった場合、上面は、また、実質上滑らかであることが好ましい。これは、障害物の上面にとって、無許可の潜在的搭乗者によってつかみ所のための場所として使用されるのをより困難にする。
【0012】
舌状部にとってまた好ましいことは、障害物が船舶又は海洋施設の周囲に沿って実装されるときに海方向に面するように意図された前面を含むことであり、前面は、実質上滑らかである。これは、無許可の潜在的搭乗者にとって前面でつかみ所又は足場を得るのをより困難にする。
【0013】
好ましくは、障害物は、障害物を最下位列のレールに取り付けるための縦溝に近位の取付け設備を更に含む。これは、障害物がたとえフィッシュプレートに容易に取り付けられることができなくても、障害物が周囲レールに固定式に締結されるのを可能にする。
【0014】
そういった場合、取付け設備は、好ましくは、障害物の1つ又は複数の貫通穴を含む。これは、結び付けることによって障害物が周囲レールに迅速に容易に取り付けられるのを可能にするという利点を有する。
【0015】
好ましくは、障害物は、最下位列のレールまわりの障害物の回転を妨げるための回転防止デバイスを更に含む。これは、例えば、フィッシュプレートの上部縁部に対するアクセスを試みてそれを得ると共につかみ所としてそれを利用する目的で、無許可の潜在的搭乗者が障害物の舌状部を跳ね上げることができるのを阻止するという利点を有する。
【0016】
そういった場合、回転防止デバイスは、好ましくは、舌状部の1つ又は複数の貫通穴を含む。これは、障害物が、例えば、別の隣接する類似の障害物に、或いは、周囲レールの1つ又は複数の鉛直支柱又は支持ステイに、結び付けられることを可能にする。
【0017】
障害物は、好ましくは、0.70〜1.50メートル、より好ましくは、0.80〜1.40メートル、最も好ましくは、0.90〜1.30メートル、の幅wを有する。そういった幅は、普通に出くわす周囲レールの隣接する鉛直支柱間のスペースに適合するのに最適であるという利点を有する。
【0018】
好ましくは、舌状部は、200〜600mm、より好ましくは、250〜500mm、最も好ましくは、300〜400mm、の高さhを有する。そういった高さは、普通に出くわすデッキを横切るフィッシュプレートからの周囲レールの異なった可能な距離に最適であるという利点を有する。
【0019】
好ましくは、障害物は、不活性プラスチック材料などの、天候及び海水に耐性のある1つ又は複数の材料で構成される。例えば、障害物は、高密度ポリエチレン(HDPE)及び/又はガラス強化ナイロンで作られることがあり、その両方は、良好な強度及び剛性も有する。
【0020】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る複数の障害物と、障害物の上で、船舶又は海洋施設の周囲レールに実装するための複数のセキュリティ防壁とを含む、周囲保護システムも提供する。セキュリティ防壁は、例えば、英国特許第GB2531232B号に、同じく本出願人の名義で、図示及び説明されたタイプであることがあり、その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る、船舶又は海洋施設の周囲に沿って並んで互いに隣接して配置される複数の障害物と、障害物の上で、船舶又は海洋施設の周囲レールに沿って並んで互いに隣接して配置される複数のセキュリティ防壁とを含む、船舶又は海洋施設を更に提供する。こうして、船舶又は海洋施設の周囲は、共に互いに作用する、複数のそういった障害物及び複数のそういったセキュリティ防壁によって保護されることができ、周囲レール及びフィッシュプレートの両方を無許可の潜在的搭乗者に対して保護する。
【0022】
船舶又は海洋施設は、複数の障害物及び複数のセキュリティ防壁によって保護される積荷を更に含むことがある。
【0023】
第4の態様では、本発明は、船舶又は海洋施設の周囲を保護する方法も提供し、船舶又は海洋施設は、周囲レールを有するデッキと、デッキの縁部に沿った直立板とを含む。方法は、本発明の第1の態様に係る複数の障害物を、船舶又は海洋施設の周囲に沿って並んで互いに隣接して位置決めすることと、周囲レールの最下位列のレールを障害物の縦溝に受容することと、障害物の舌状部をその船外即ち海側の板の上に掛けることとを含む。
【0024】
好ましくは、方法は、少なくとも1つの障害物を周囲レールに取り付けることを更に含む。これは、最も容易であるという理由で好ましい。しかしながら、代替の可能な実施形態では、障害物は、クリートやビットのようなデッキ上に永久的に位置する障害物などの、船舶又は海洋施設の他のアイテムに代わりに取り付けられることがある。
【0025】
好適な実施形態では、方法は、最下位列のレールまわりの少なくとも1つの障害物の回転を妨げることも含む。これは、障害物が跳ね上げられてフィッシュプレートの上部縁部が露出するのを防止するのに役立つという理由で有利である。
【0026】
好ましくは、方法は、複数のセキュリティ防壁を、障害物の上で、船舶又は海洋施設の周囲レールに沿って並んで互いに隣接して位置決めすることを更に含む。これは、フィッシュプレート及びレールの両方が無許可の潜在的搭乗者に対してその後に保護されることができるという理由で有利である。
【0027】
本発明の更なる特徴や利点については、添付の図面に関連して、一例として与えられる以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】船舶又は海洋施設の周囲レールの一部の外側即ち海側からの斜視図である。
図2図1に示された周囲レールの一部の内側即ちデッキ側からの斜視図である。
図3】障害物の実施形態の第1の斜視図である。
図4図3に示された障害物の第2の斜視図である。
図5図3及び4に示された障害物の側面プロファイル図である。
図6】周囲保護システムの実施形態の外側即ち海側からの斜視図である。
図7図6に示された周囲保護システムの内側即ちデッキ側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び2は、船舶又は海洋施設の周囲レール20の代表的部分の、外側即ち海側からの図と、内側即ちデッキ側からの図をそれぞれ示す。船舶又は海洋施設の側面の一部は、参照番号52がラベル付けされて見える場合がある。周囲レール20は、最上位置のハンドレール201と、中間列のレール202と、最下位列のレール203とを含む、複数列のレールを含む。周囲レール20に沿った一定の間隔には、複数の鉛直支柱204がある。規制は、鉛直支柱204が1.5mを超えないように離隔されることを要求する。周囲レール20は、船舶又は海洋施設のデッキ51に実装される。レール20の、デッキ51から最上位のハンドレール201までの全高gは、規制によって、少なくとも1メートルであることが要求される。また、最下位列のレール203の、デッキ51からの分離fは、規制によって、230mmを超えないことが要求される。中間列のレール202は、最上位置のハンドレール201と最下位列のレール203との間でほぼ等距離に位置決めされる。このように、最上位置のハンドレール201と中間列のレール202との間のギャップ、又は、中間列のレール202と最下位列のレール203との間のギャップは、(g−f)/2によって与えられ、そこからは、レールの列自体の厚さも差し引きされねばならない。したがって、各ギャップは、高さが通常500mmを超えることがなく、実際には、それよりもかなり小さい。
【0030】
デッキ51の縁部のレール20の外側には、フィッシュプレート53と呼ばれる鉛直リップがあり、その高さは、レール20が実装される船舶又は海洋施設のタイプに依存するが、一般に高さ約90〜約400mmである。周囲レール20のデッキ51を横切ってフィッシュプレート53からの距離は、規制によって規定されず、したがって、レール20が実装される船舶又は海洋施設のタイプに依存して変化することもある。しかしながら、典型的には、デッキ51を横切るその距離は、最長約300mmである。
【0031】
周囲レール20は、それらの1つが図2に見られることのできる複数の支持ステイ205によって、一定の間隔で支えられる。規制は、3つの鉛直支柱204毎に最低限1つの支持ステイ205がなければならないことを要求するが、そこには、全ての他の支柱204のために、支持ステイ205があることが一般的である。同じく図2に示されているのは、レール20の内側即ちデッキ側に恒久的に位置する障害物23の代表例である。そういった障害物は、アコモデーションラダー、クリート、及びビットを含む。
【0032】
図3、4及び5は、船舶又は海洋施設が、周囲レール20を有するデッキ51と、図1及び2に示されるようなものなどのデッキの縁部に沿った直立板53とを含むときに、船舶又は海洋施設の周囲に沿って実装するのに適した障害物10の実施形態を示す。障害物10は、周囲レール20の最下位列のレール203を受容するための縦溝12と、板の船外即ち海側で板53を突き出すための舌状部14とを含む細長ボディを有する。舌状部14は、後面142と、前面144とを含む。後面142は、障害物10がその周囲に沿って実装されるときに、船舶又は海洋施設の船内方向に面するように意図され、また、前面は、船外即ち海方向に面するように意図される。また、障害物10は、船舶又は海洋施設の周囲に沿って障害物10が実装されるときに上方に面するように意図される上面16と、それに対して反対側であり且つ縦溝12がそこに形成される下面18とを含む。舌状部14の後面142と(図4にX−X’とラベル付けされた)縦溝12の中心線との間の分離sは、30〜300mmである。縦溝12の中心線X−X’と分離sとは、図5に示されるように、舌状部の後面142に対する90度〜135度の角度θを範囲決めする平面を共に規定する。
【0033】
こうして、障害物10は、最下位列のレール203が縦溝12に受容され、舌状部14がフィッシュプレート53の上にその船外即ち海側で突き出るように配置されることができる。舌状部14は、フィッシュプレート53がデッキ51からの最下位列のレール203の分離fよりも著しく高くはないという条件で、下方を指し示すであろう。ここで「著しく高くはない」とは、フィッシュプレート53の高さが分離fよりも30mmを超えて大きくはないことを意味する。したがって、そういったケースでは、フィッシュプレート53の上部縁部は、舌状部14によってカバーされ、無許可の潜在的搭乗者に、船舶又は海洋施設に搭乗しようと試みる際にフックを取り付けるため又はつかみ所を得るための場所をもはや提供することができない。
【0034】
他方、フィッシュプレート53がデッキ51からの最下位列のレール203の分離fよりも著しく高い場合、最下位列のレール203が縦溝12に受容されて舌状部14がフィッシュプレート53の上に突き出るように、障害物10が仮に再度配置されるならば、舌状部14は、代わりにフィッシュプレート53の船外即ち海側で上方を指し示すであろう。次いで、舌状部14は、無許可の潜在的搭乗者がフックを取り付けるため又はつかみ所を得るための可能な場所をそれ自体が提供するであろう。しかしながら、そういったケースでは、障害物10を使用する必要性が全くなく、その理由は、フィッシュプレート53の上部縁部が、フィッシュプレート53の上の場所で周囲レール20に沿ってセキュリティ防壁を実装することによって、代わりに無許可の潜在的搭乗者をアクセス不可にできるからである。そういったケースでは、その船外即ち海側でのセキュリティ防壁の下側の突き出しは、フィッシュプレート53の上部縁部へのアクセスを防止する。その上、そういったケースでは、フィッシュプレート53が分離fよりも高いという理由で、フィッシュプレート自体は、最下位列のレール203とデッキ51との間のギャップを完全にカバーする。
【0035】
しかしながら、フィッシュプレート53が分離fよりも著しく高くはないケースでは、フィッシュプレート53から周囲レール20のデッキ51を横切る様々な異なった可能な距離と、フィッシュプレートの様々な異なった可能な高さとは、上で言及された障害物10の2つの特徴、即ち、縦溝12が舌状部の後面142から30〜300mmだけ離隔されること、及び、角度θが90〜135度の鈍角であること、の組合せによって、共に適応される。この特徴の組合せの場合、障害物10は、多種多様の、異なった可能な高さのフィッシュプレートや、デッキ51を横切るフィッシュプレート53からの異なった可能な距離の周囲レール20に関して、舌状部14の下方を指し示す配向を維持することができる。
【0036】
舌状部14の下方を指し示す配向を維持するための障害物10の能力は、障害物10のこの実施形態の別の特徴(舌状部14が、縦溝12から離れる方向に減っていく厚さtを有すること)によって更に促進される。こうして、舌状部の後面142が下方を指し示す配向を採用する場合、舌状部14の減っていく厚さtとは、前面144がその後面142よりも急角度に下方を指し示すことを意味する。
【0037】
縦溝12は、図5から最も良く理解され得るように、滑らかに湾曲した凹状のプロファイルを有する。こうして、縦溝12は、最下位列のレール203まわりの障害物10の回転に適合され、それによって、障害物10は、デッキの縁部に沿って異なった高さのフィッシュプレートを容易に収容することができる。対照的に、上面16は、障害物10の深さのD−D’方向に凸状に湾曲している。これは、次のように2つの利点を有する。第1に、障害物10が、フィッシュプレートの異なった高さと、デッキ51からの最下位列のレール203の異なった分離fと、に適するために、回転するときに、上面16が、デッキ51からの高さを実質上一定に維持することを確実にする。こうして、障害物10は、周囲レール20上のその上に実装されるセキュリティ防壁を妨げる可能性が低い。第2に、しかしながら、障害物10の上面16が、無許可の潜在的搭乗者によって、つかみ所のための場所として使用されるのを防止することにも役立つ。同じ理由から、上面16と前面144の両方は、実質上滑らかである。
【0038】
障害物10が周囲レール20に固定されるのを可能にするために、障害物10は、縦溝12に近位の取付け設備11を更に含む。この特定の実施形態では、取付け設備11は、障害物10に形成された複数の貫通穴112を含み、障害物10が、例えば、最下位列のレール203に及び/又は周囲レール20の1つ又は複数の鉛直支柱204に、結び付けられるのを可能にする。それは、図2に代表されるものなどの船舶又は海洋施設のデッキに恒久的に位置する障害物23に結び付けられることもある。しかしながら、障害物10の代替の可能な実施形態では、取付け設備11は、代わりに、障害物10を最下位列のレール203にクリッピングするための、例えば、1つ又は複数のクリップを含む場合がある。
【0039】
障害物10が周囲レール20に固定式に取り付けられても、最下位列のレール203まわりの障害物10の回転は、フィッシュプレート53の上部縁部を露出させるので、望ましくない。そういったケースでは、無許可の潜在的搭乗者は、例えば、フィッシュプレート53の上部縁部へのアクセスを得て、つかみ所としてそれを利用する目的で、障害物の舌状部14を跳ね上げようと試みることがある。したがって、障害物10は、最下位列のレール203まわりの障害物10の任意のそういった望ましくない回転を妨げるための回転防止デバイス13を更に含む。この特定の実施形態では、回転防止デバイス13は、舌状部14に形成された複数の貫通穴132を含む。それらは、障害物10が、例えば、別の隣接する類似の障害物に、或いは、1つ又は複数の鉛直支柱204又は支持ステイ205に、結び付けられることを可能にする。しかしながら、障害物10の他の代替の可能な実施形態では、回転防止装置13は、代わりに、フィッシュプレート53と係合するための舌状部14の後面142のタング、鉛直支柱204又は支持ステイ205と係合するための1つ又は複数のアーム、或いは、障害物10を隣接する類似の障害物にクリッピングするための1つ又は複数のクリップ、を含む場合がある。
【0040】
図3、4及び5に示される実施形態では、障害物10は、ほぼ980mmの幅wを有する。周囲レール20の鉛直支柱204は、1.5メートルを超えずに離隔され、また、多くの場合に1メートルで離隔されるので、障害物10は、したがって、通常、2つの隣接する支柱204間に快適に適合することができる。障害物が高密度ポリエチレン(HDPE)又はガラス強化ナイロンで作られる場合、小さなノッチは、容易にそれに切り込まれることがあり、障害物10が鉛直支柱204のうちの1つを横切る最下位列のレール203に実装されるのを可能にする。こうして、複数のそういった障害物は、鉛直支柱204の場所に対応する位置でノッチをそれらに切り込むことによって、船舶又は海洋施設の周囲に沿って並んで互いに隣接して配置されることがある。
【0041】
図3、4及び5に示される障害物10は、ほぼ300mmの高さhを有し、舌状部14の後面142と縦溝12の中心線X−X’との間の分離sは、ほぼ82mmである。これらの寸法は、障害物10が、デッキ51を超えてフィッシュプレート53までの周囲レール20の異なった可能な距離のために、フィッシュプレートの多種多様な異なった可能な高さから突き出るのを可能にするのに十分である。図3、4及び5に示される障害物10の実施形態では、角度θは、ほぼ103度である。
【0042】
図6及び7は、図1及び2に示されるものなどの船舶又は海洋施設の周囲レール20に実装される周囲保護システム100の実施形態の、外側即ち海側からの図と内側即ちデッキ側からの図をそれぞれ示す。周囲保護システム100は、図3、4及び5に関連して図示及び上述されたタイプの複数の障害物10a、10bと、障害物の上の、船舶又は海洋施設の周囲レール20に実装するための複数のセキュリティ防壁1a、1b、1cとを含む。セキュリティ防壁1a、1b、1cの個々は、例えば、英国特許第GB2531232B号に、同じく本出願人の名義で、図示及び説明されたタイプ(その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)であることがある。周囲保護システム100は、隣接するペアのセキュリティ防壁1a、1b間の溝に位置決めするための障害物の別のタイプ、及び、英国特許第GB2535681B号に、同じく本出願人の名義で、図示及び説明されたタイプ(その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)、の1つ又は複数を更に含むことがある。
【0043】
例証する目的のためだけに、船舶又は海洋施設は、53a、53bとそれぞれラベル付けされる2つの異なった高さのフィッシュプレートを有するように、図6及び7に示される。これは、障害物10a、10bの配向が、異なった高さのフィッシュプレートに適するように、どのように調整されるかを示すためである。しかしながら、現実には、船舶又は海洋施設は、通常そのデッキの縁部に沿った単一の高さだけであるフィッシュプレートを有する。実際には、フィッシュプレートが単一の高さだけを有するので、複数の障害物10a、10bは、船舶又は海洋施設の周囲に沿って並んで互いに隣接して配置される場合があり、複数のセキュリティ防壁1a、1b、1cは、障害物の上で、船舶又は海洋施設の周囲レール20に沿って並んで互いに隣接して配置される。
【0044】
複数の障害物10a、10b及び複数のセキュリティ防壁1a、1b、1cは、派手にカラー化されることがあり、周囲保護システム100の存在を無許可の潜在的搭乗者に対して宣伝して、彼らが船舶及び海洋施設に接近するのを抑止する。それらは、安全オレンジにカラー化されることが好ましい。
【0045】
船舶又は海洋施設は、周囲保護システム100の複数の障害物10a、10b及び複数のセキュリティ防壁1a、1b、1cによって保護される積荷を更に含むことがある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7