特許第6929518号(P6929518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐グループホールディングス株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929518
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】多孔質シリカ、及び、消臭剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20210823BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20210823BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20210823BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   C01B33/18 Z
   A61L9/01 B
   A61L9/014
   B01J20/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-8271(P2017-8271)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-132687(P2017-132687A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-9949(P2016-9949)
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】木村 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和彰
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249268(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/070116(WO,A1)
【文献】 特開2014−043381(JP,A)
【文献】 特表2008−544953(JP,A)
【文献】 特開2002−201380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/18
A61L 9/01
A61L 9/014
B01J 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次細孔が形成された1次粒子を含むシリカ粒子と、コバルトと、アルミニウムとを含み、明度が70以上であり、
前記一次細孔の細孔径は、1〜20nmであり、
前記アルミニウムの少なくとも一部は、前記シリカ粒子にドープされており、
前記コバルトは、前記一次細孔内に存在している、
多孔質シリカ。
【請求項2】
多孔質シリカ中のアルミニウム含有量が0.5wt%以上であり、
アルミニウム粒子率が、0.5%以下であり、
前記アルミニウム粒子率は、アルミニウムの全質量に対する、ドープされること無く前記シリカ粒子に担持されているアルミニウムの質量の割合である、請求項1に記載された多孔質シリカ。
【請求項3】
コバルトの少なくとも一部が、ドープされること無く、コバルト粒子として前記シリカ粒子に担持されている、請求項1又は2に記載の多孔質シリカ。
【請求項4】
多孔質シリカ中のコバルト含有量が0.5wt%以上であり、
コバルト粒子率が70%以上であり、
前記コバルト粒子率は、コバルトの全質量に対する、ドープされること無く前記シリカ粒子に担持されているコバルトの質量の割合である、請求項3に記載の多孔質シリカ。
【請求項5】
120℃で20分間の水熱処理後の比表面積が1000m2/g以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の多孔質シリカ。
【請求項6】
前記シリカ粒子が、前記1次粒子同士の結合による粒子間隔からなる2次細孔を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の多孔質シリカ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の多孔質シリカを含む、消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリカ、それを含む消臭剤、及び多孔質シリカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属含有多孔質シリカに関して、多くの研究が報告されている。たとえば、李賢英、上原雅人、榎本尚也、北條純一等の「J. Ceram. Soc. Japan, 109, [10], 818-822 (2001)」には、(1)塩酸を添加したポリオキシエチレン[23]ラウリルエーテル水溶液にテトラエトキシシランとテトラエトキシチタンを滴下することによって、シリカとチタンを含有する多孔質体が生成すること、および
(2)メソポーラスシリカと硝酸亜鉛を混合した後に焼成することで酸化亜鉛を含有する多孔質体が生成すること
が記載されている。
また、特開平4−313348号公報には、有機金属化合物の有機溶液に担体を浸漬して有機化合物を担体に担持し、担持した有機金属化合物を対応する金属又は金属酸化物に変換することを特徴とする、触媒の製造方法が記載されている。
さらに、特開2002−187712号公報には、水混和性有機溶媒、アルキルアミンおよびケイ酸エステルあるいはケイ酸エステルと水混和性有機溶媒に可溶な金属塩との組み合わせを含む混合液に、攪拌下に水あるいは酸性水溶液を添加し、生成するシリカ−アルキルアミン複合生成物を球状粒子に成長させ、球状粒子中のアルキルアミンを除去することを特徴とする球状多孔質シリカ及至シリカ金属複合体粒子の製造方法が記載されている。また、当該公報には、球状多孔質シリカ及至シリカ金属複合体粒子がメソ細孔内に悪臭物質を吸着することができるため、消臭剤としての機能を有することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−313348号公報
【特許文献2】特開2002−187712号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Xianying Li et al., J. Ceram. Soc. Japan, 109, [10], 818-822(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質シリカを消臭剤などとして用いる場合、外観の観点から、多孔質シリカを所望する色に着色できることが望まれる場合がある。所望する色に着色できるようにするため、多孔質シリカは高い白色度を有していることが望ましい。
しかしながら、金属を含有する多孔質シリカの場合、金属成分によって多孔質シリカが着色されてしまう場合があった。
そこで、本発明の課題は、金属成分による着色を抑制することができる、多孔質シリカ、消臭剤、及び多孔質シリカの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1次細孔が形成された1次粒子を含むシリカ粒子と、コバルトと、アルミニウムとを含み、明度が70以上である多孔質シリカを提供する。
また、本発明は、界面活性剤、第1金属塩、第2金属塩、及びシリカ源を水溶液中で混合し、ミセルを形成する工程と、前記ミセルを形成する工程の後に、前記水溶液に塩基性水溶液を添加する工程と、前記塩基性水溶液を添加する工程の後に、前記ミセルを回収する工程と、前記回収したミセルを焼成し、多孔質シリカを得る工程とを含み、前記第1金属塩の金属は、コバルト、亜鉛、銀、銅、及びマンガンからなる群から選ばれる1種以上であり、前記第2金属塩の金属は、アルミニウム、及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上である、多孔質シリカの製造方法を提供する。
また、本発明は、前記多孔質シリカを含む消臭剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属成分による着色を抑制することができる、多孔質シリカ、消臭剤、及び多孔質シリカの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.多孔質シリカ
本発明の多孔質シリカは、1次細孔が形成された1次粒子を含むシリカ粒子と、第1金属と、第2金属とを含む多孔質シリカである。
【0009】
シリカ粒子は、その表面に形成されるシラノール基によって、アンモニアなどの塩基性臭気、酢酸等の酸性臭気、及びアセトアルデヒド系臭気などを吸着する機能を有している。シリカ粒子の1次粒子に形成された1次細孔は、一般的には1から20nmの細孔径を有していると考えられる。また、シリカ粒子は、好ましくは、1次粒子同士の結合による粒子間隙からなる2次細孔を有している。粗大な二次細孔の存在により、内側に存在する一次細孔まで気体が急速に拡散する効果が期待でき、これが消臭容量と消臭速度の増加につながるためである。
【0010】
第1金属は、多孔質シリカの消臭能力を高めるために、多孔質シリカに含有されている。第1金属は、コバルト、亜鉛、銀、銅、及びマンガンからなる群から選ばれる1種以上であり、コバルトを含むことが好ましい。
本発明者らの知見によれば、多孔質シリカは、塩基性臭気及び酸性臭気については、高い吸着力を示すものの、アセトアルデヒド系臭気は、比較的多孔質シリカに吸着されにくい。これに対して、第1金属を含有させることにより、アセトアルデヒド系臭気を酸化分解させることができ、消臭能力を高めることができる。尚、アセトアルデヒドの酸化分解により生じる酢酸は、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基により吸着され、脱臭される。
【0011】
多孔質シリカ中の第1金属の含有量は、0.5wt%以上であることが好ましく、0.7wt%以上であることが好ましい。
また、第1金属の少なくとも一部は、シリカにドープされることなく、粒子の形態、(第1金属の酸化物の形態)で多孔質シリカに担持されていることが好ましい。ここで「ドープ」されるとは、金属がシリカのSiO4骨格内にSi元素と置換する形で組み込まれている状態を言う。コバルト等の第1金属がシリカにドープされていると、シリカが着色され、白色度が高い多孔質シリカが実現できない。
詳細には、多孔質シリカは、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の第1金属粒子率を有している。ここで、「第1金属粒子率」とは、第1金属の全質量に対する、ドープされること無くシリカ粒子に担持されている第1金属の質量の割合である。
第1金属の粒子の粒子径は、例えば、1〜100nmである。
【0012】
第2金属は、アルミニウム、及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上であり、アルミニウムを含むことが好ましい。第1金属に加えて第2金属を含有させることにより、多孔質シリカの着色が抑制され、白色度が高い多孔質シリカを得ることができる。加えて、第2金属を用いることにより、多孔質シリカの水熱耐久性を高めることができる。
多孔質シリカ中の第2金属の含有量は、0.5wt%以上であることが好ましく、1.0wt%以上であることがより好ましい。
また、第2金属の少なくとも一部は、シリカ粒子にドープされていることが好ましい。第2金属がシリカ粒子にドープされていると、シリカのシロキサン骨格の加水分解が抑制され、細孔構造が崩壊しにくくなり、水熱耐久性が高められる。更に、第2金属がシリカ粒子にドープされていると、多孔質シリカの着色がより抑制される。これは、第2金属がシリカ粒子にドープされていることにより、第1金属のシリカへの拡散が防止され、第1金属に基づく発色が抑制されるからであると考えられる。
詳細には、多孔質シリカは、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3wt%以下の第2金属粒子率を有している。ここで、第2金属粒子率とは、第2金属の全質量に対する、ドープされること無くシリカ粒子に担持されている第2金属の質量の割合である。
【0013】
また、本発明の多孔質シリカにおいては、比表面積が500m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは1000m2/g以上である。アンモニア、酢酸、アセトアルデヒドなどの臭気は、シリカ表面のシラノール基によって化学吸着することが知られているが、単位面積あたりのシラノール基数はほぼ一定であるため、単位重量あたりの消臭力を向上させるためには、比表面積を大きくする必要がある。
【0014】
以上説明したように、本発明の多孔質シリカによれば、第2金属を含有させることにより、第1金属による多孔質シリカの着色が抑制され、白色度が高い多孔質シリカを得ることができる。詳細には、本発明によれば、例えば明度が70以上の多孔質シリカを得ることができる。明度が大きいと、本多孔質シリカを樹脂などに混練して用いる場合の着色を少なくすることができ、また顔料を混合することで好みの色に着色が可能になる。
また、本発明によれば、例えば、彩度が10.0以下、好ましくは8.0以下の多孔質シリカを得ることができる。
【0015】
更に、上記のように、本発明によれば、第2金属を含有させることにより、高い水熱耐久性を有する多孔質シリカを得ることができる。例えば、本発明によれば、121℃で20分間の水熱処理後の比表面積が1000m2/g以上である、多孔質シリカを得ることができる。
【0016】
本発明の多孔質シリカは、樹脂と混合して使用することができる。前記樹脂としては、溶融成形が可能な熱可塑性樹脂であれば従来公知のものをすべて使用でき、例えば低−、中−、又は高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタエート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。前記樹脂としては、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルを用いることが好適である。
【0017】
本発明の消臭剤は前記多孔質シリカを含む。前記多孔質シリカと多孔質無機酸化物を混合して用いても構わない。多孔質無機酸化物としては、アルミニウム及び/又はケイ素酸化物であるゼオライトやシリカゲルやアルミナやセピオライトや球状シリカ、パーライト、活性炭(鉱物系活性炭など)などがある。前記ゼオライトは、合成ゼオライトであってもよく、天然ゼオライト(ホージャサイトなど)であってもよい。多孔質無機酸化物は、前記多孔質シリカの耐熱性が350℃以上であり、前記多孔質シリカの優れた耐熱性を損なわないように同温度域の耐熱性を有するものが好ましい。
本発明の消臭剤は、粉末であるので、このまま使用しても、これを加工して使用することもできる。例えば、消臭剤を懸濁状態、粒状体、抄紙体、ペレット体、シート状、またはフィルム状等の成型体としてもよく、またスプレー、多孔質体、または繊維などの形態とすることもできる。さらにそれらを塗料、不織布、発泡シート、紙、プラスチック、または無機質板などに加工することもできる。
本発明の消臭剤は、アセトアルデヒドおよびノネナールなどのアルデヒド系ガス、或いは、これらに加えてアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、インドール等の種々の悪臭に対する消臭効果に優れているので、活性炭などの従来の消臭剤が使用されている種々の分野、例えば、タバコ臭消臭、生活臭消臭、体臭消臭、糞尿臭消臭、ゴミ臭消臭などが問題となる製品において有効である。
本発明の消臭剤は、粉末あるいは顆粒、粒状の消臭剤を最終消臭製品として使用することができる。例えば消臭粉末、顆粒、粒状品をカートリッジに詰めて消臭製品とすることや、消臭剤粉末を分散させた液を用いたスプレー状の消臭剤とすることが可能である。
本発明の消臭剤を含む消臭繊維は、消臭性を必要とする各種の分野で利用可能であり、例えば、肌着やインナー、ストッキング、靴下、布団、布団カバー、座布団、毛布、じゅうたん、カーテン、ソファー、エアーフィルター、空気清浄器フィルター、マスク、おむつ、トイレシート、自動車のフロアマットや座席シート、カーエアコンフィルターなどの多くの繊維製品に使用できる。
また、本発明の消臭剤を含む消臭塗料は、消臭性を必要とする各種の分野で利用可能であり、例えば、建物の内壁、外壁、鉄道、車両の内壁や内装材、建物のフローリングワックス等で使用できる。
また、本発明の消臭剤を含む消臭性シートやフィルムは消臭性を必要とする各種の分野で利用可能であり、例えば、医療用包装紙・フィルム、食品用包装紙・フィルム、鮮度保持紙・フィルム、壁紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ゴミ袋等がある。
また、本発明の消臭剤を含む消臭性成形品は消臭性を必要とする各種の分野で利用可能であり、例えば、空気清浄器、冷蔵庫、電子レンジなどの家電製品や、ゴミ箱、水切りなどの一般家庭用品、ポータブルトイレなどの各種介護用品、ペット用品、包装容器、日常品がある。
【0018】
2.多孔質シリカの製造方法
本発明の多孔質シリカの製造方法は、以下の工程(A)乃至(D)を含んでいる。
(A)界面活性剤、第1金属塩、第2金属塩、及びシリカ源を水溶液中で混合し、ミセルを形成する工程
(B)ミセルを形成する工程の後に、水溶液に塩基性水溶液を添加する工程
(C)塩基性水溶液を添加する工程の後に、ミセルを回収する工程
(D)回収したミセルを焼成し、多孔質シリカを得る工程
【0019】
以下に、各工程について詳細に説明する。
(A)界面活性剤、第1金属塩、第2金属塩、及びシリカ源の混合
まず、水溶液中で、界面活性剤、第1金属塩、第2金属塩及びシリカ源を混合し、表面にシリカ源が集積したミセルを形成させる。例えば、界面活性剤、第1金属塩、第2金属塩を、室温以上200℃以下で攪拌混合した後、シリカ源を添加する。これにより、界面活性剤、第1金属塩、及び第2金属塩の混合ミセルと、シリカ源とが分散する。更に30分以上室温で撹拌することで、混合ミセル表面にシリカ源が集積した状態の分散液が得られる。水溶液は、水以外にエタノール、トルエンなどの有機溶媒を含んでいてもよい。
【0020】
第1金属塩は、第1金属の供給源となる物質である。第1金属塩としては、例えば脂肪酸金属塩又は金属塩化物を用いることができ、好ましくは脂肪酸金属塩である。脂肪酸金属塩は、好ましくは炭素原子数が8〜24、好ましくは8〜18、より好ましくは12〜18の脂肪酸金属塩である。脂肪酸金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクタン酸塩、ラウリン酸塩、ステアリン酸塩などが挙げられ、好ましくはステアリン酸塩である。これらの脂肪酸金属塩は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶液中の第1金属塩の濃度は、界面活性剤濃度よりも薄くすることが好ましく、0.2〜5mmol/Lがより好ましい。
尚、水溶液中の第1金属塩の濃度や、第1金属塩の種類(脂肪酸金属塩を用いる場合の炭素鎖など)をコントロールすることにより、最終的に得られる多孔質粒子中の第1金属粒子の粒子径をコントロールすることもできる。
【0021】
第2金属塩は、第2金属の供給源となる物質である。第2金属塩としては、水溶性の塩であればよく、例えば、第2金属の塩化物、硫酸塩が用いられる。
【0022】
界面活性剤は、好ましくは中性又は陽イオン性のものであり、より好ましくはアルキルアンモニウム塩である。アルキルアンモニウム塩は、炭素数が8以上のものであればよいが、工業的な入手の容易さを鑑みると、炭素数が12から18のものがより好ましい。アルキルアンモニウム塩としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶液中の界面活性剤の濃度は、好ましくは50〜400mmol/L、より好ましくは50〜150mmol/Lである。界面活性剤は、水中でミセルをつくり、その表面にシリカ源を静電気的に集積させる分子鋳型として機能する。界面活性剤は、最終的には焼成により消失して1次細孔を形成する。
【0023】
シリカ源は、好ましくはアルコキシシランである。ケイ素原子上の有機官能基は加水分解によって失われるため、合成物の構造に影響を与えない。ただし、有機官能基が嵩高いと加水分解速度が遅くなり、合成時間が長くかかってしまうので、好ましくはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。シリカ源は、より好ましくはテトラエトキシシランである。これらのシリカ源は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶液中のシリカ源の濃度は、好ましくは0.2〜1.8mol/Lであり、より好ましくは0.2〜0.9mol/Lである。シリカ源としてケイ酸ナトリウムを単独もしくは併用して用いる場合、水溶液中200℃以下で20〜2時間加熱還流する操作をする。シリカ源は、加水分解(酸性又は中性で加速)した後、後述する工程(B)で、脱水縮合反応(塩基性で加速)によって連なって、シリカの壁をつくる。
【0024】
尚、本工程においては、更に、第1金属に配位して水に不溶性の錯体を形成する配位子成分を添加してもよい。界面活性剤と第1金属塩とを混合してミセルを形成した場合、第1金属塩に含まれる金属の多くは、ミセルの表面の近傍に存在していると考えられる。これに対して、配位子成分を添加することによって第1金属に配位成分が配位した水に不溶性の錯体を形成すると、形成された錯体が、疎水環境であるミセルの内部に取り込まれやすくなる。すなわち、ミセルの表面近傍に存在していた第1金属を、ミセルの内部に移動させることができる。その結果、第1金属がシリカにドープされにくくなり、第1金属の粒子率を高めることができる。
また、第1金属塩が脂肪酸金属塩などである場合、後述する塩基性溶液の添加時に、脂肪酸金属塩が加水分解し、Siと脱水縮合して第1金属がシリカにドープされやすくなる。これに対して、水に不溶性の錯体を形成させると、加水分解を防止することができ、第1金属がシリカにドープされることを防ぐことができる。
また、配位子成分を添加することにより、ミセルの粒子径を小さくすることもできる。その結果、最終的に得られる多孔質シリカ中に含まれる第1金属含有粒子の粒子径を、小さくすることができる。
【0025】
配位子成分は、第1金属に配位して水に不溶性の錯体を形成する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、8−キノリノール構造を有する化合物が好ましく用いられる。8−キノリノール構造を有する化合物としては、例えば、8−キノリノール(オキシンともいう)、及び5−(オクチルオキシメチル)−8−キノリノールなどが挙げられる。
【0026】
例えば、化学便覧 基礎編 改訂5版、丸善(2004)によれば、オキシンコバルト(8−キノリノールとコバルトとの錯体)の錯生成定数の対数β1は、11.52、β2は22.82である。コバルトと5−(オクチルオキシメチル)−8−キノリノールとの錯体の錯生成定数の数値については、5−(オクチルオキシメチル)−8−キノリノールが8−キノリノールの5位にアルキル基がついた構造であり、アルキル基が配位基としては作用しない位置にあるため、金属キレートの安定性には本質的な影響を及ぼさないことから、8−キノリノールと同等の数値であると考えられる。なお、コバルトと酢酸との錯生成定数の対数β1は、0.60である。また、ステアリン酸コバルトの錯生成定数の対数β1については、配位基がカルボキシル基であることから、酢酸と同等程度と考えられる。 錯生成定数は、測定によって求めることができる。平衡状態において錯体濃度[MLn(a-nb)+]と、遊離状態の金属イオン濃度[Ma+]および配位子の濃度[Lb-]を測定し、以下の式から求めることができる。
Ma++nLb-→MLn(a-nb)+
βn=[MLn(a-nb)+]/[Ma+][Lb-]n
なお、金属イオンおよび配位子の全濃度は測定系において一定に保持されているため、錯体と遊離配位子あるいは錯体と遊離金属イオンの濃度はそれぞれ従属的関係にあり、3つの変数のうち2つを濃度として、あるいは濃度に比例する物理的量(光の吸収、電気伝導率、旋光度など)として測定すればよい。
【0027】
配位子成分の添加量は、第1金属イオンの配位数によって最適な範囲が異なる。第1金属イオンの配位数に対して、例えば1〜2.5モル当量、好ましくは1〜1.5モル当量となる量である。
【0028】
(B)塩基性水溶液の添加
続いて、塩基性水溶液を添加する。塩基性水溶液の添加により、ミセルの表面に集積したシリカ源が脱水縮合し、シリカの壁を形成する。
塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの水溶液が挙げられる。塩基性水溶液は、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。これらの塩基性水溶液は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基性水溶液は、好ましく分散液のpHが8〜14となるように、より好ましくは9〜11となるように添加する。塩基は、シリカ源の脱水縮合反応を加速させる。シリカ源が十分に加水分解した状態で、急激に溶液を塩基性にすることで、脱水縮合反応が一気に引き起される。これにより縮合部分の表面張力が上昇してシリカの壁が球状となり、さらに球体が幾重にも接合した形態となって、スピノーダル分解(相分離)が引き起こされる。化学架橋によってこれらの構造が凍結されて二次細孔が形成される。
【0029】
(E)ミセルの回収
続いて、ミセルを前駆体として回収する。例えば、ミセルを濾過して乾燥することにより、前駆体を回収できる。ミセルの濾過は、例えば吸引ろ過で行い、ろ液のpHが7となるまで水で繰り返し洗浄する。ミセルの乾燥は、例えば乾燥機、もしくは真空乾燥機で行い、十分に乾燥する。
(F)焼成
ミセルの回収後、前駆体の焼成を行う。焼成を行うことにより、前駆体中に含まれる有機成分が除去される。すなわち、界面活性剤が除去され、細孔を有する多孔質シリカが形成される。焼成は、界面活性剤の分解温度以上で行い、好ましくは500〜600℃である。
【0030】
本発明の多孔質シリカは球体が幾重にも接合した複雑な形態のため、樹脂に混練した際に細孔表面が均一に樹脂に覆われにくい。これは、不均一な粒子間隙の存在によって、迷路効果で樹脂が内部まで浸透しにくいためである。そのため、本発明の多孔質シリカを混練した樹脂成形体では、消臭剤への臭気の拡散速度が維持されやすく、樹脂混練後も消臭剤としての効果が維持されると期待できる。
【実施例】
【0031】
(試験方法)
(比表面積)
マイクロメリティックス社製フローソーブII2300形を使用し、1点法で液体窒素温度にて測定した。
(色)
スガ試験機株式会社製SMカラーコンピューター(SM−4)を用いてL*値、a*値、b*値を測定した。明度はL*値、彩度は√(a*2+b*2)で算出した。
(金属含有量)
試料約50mgを精確に量りとり、4mlの塩酸で溶解した後に、水溶液中のコバルト及びアルミニウム濃度をThermo Scientific社製のICP−OESにて測定した。塩酸で処理することにより、多孔質シリカに含まれるコバルト及びアルミニウムは、シリカの骨格内に取り込まれている成分(シリカにドープされた成分)を含め、全て塩酸に溶解するものと考えられる。そこで、測定結果に基づき、多孔質シリカ中に存在するコバルトの全含有量及びアルミニウムの全含有量を、それぞれ「コバルト含有量」及び「アルミニウム含有量」として算出した。
(金属粒子率)
焼成前のミセル(前駆体)約0.5gを量り取り、エタノール計約50mlで7回洗浄した。各洗浄操作としては、エタノール約7mlを試料に加えて5分間超音波洗浄した後、遠心分離により固形分を沈殿させ、上澄みを廃棄する方法をとった。これにより、ミセルに含まれるコバルト及びアルミニウムのうち、シリカにドープされていない成分を除去した。次いで、固形分を真空乾燥したのち、570℃で5時間焼成し、多孔質シリカを得た。得られた試料約50mgを精確に量りとり、4mlの塩酸で溶解した後に、水溶液中のコバルト及びアルミニウム濃度をThermo Scientific社製のICP−OESにて測定した。測定結果に基づき、多孔質シリカ中における「シリカにドープされたコバルトの含有量」及び「シリカにドープされたアルミニウムの含有量」を算出した。更に、下記式により、多孔質シリカ中におけるシリカにドープされていないコバルト及びアルミニウムの含有量を、それぞれ、「コバルト粒子量」及び「アルミニウム粒子量」として算出した。
(数式1):コバルト粒子量=コバルト含有量−シリカにドープされたコバルトの含有量(数式2):アルミニウム粒子量=アルミニウム含有量−シリカにドープされたアルミニウムの含有量
更に、下記式により、コバルト粒子率及びアルミニウム粒子率を算出した。
(数式3)コバルト粒子率(%)=コバルト粒子量/コバルト含有量×100
(数式4)アルミニウム粒子率(%)=アルミニウム粒子量/アルミニウム含有量×100
【0032】
(アセトアルデヒド消臭試験)
臭気は500ml用意した。アセトアルデヒドの初期濃度は750ppmとした。ここに水熱処理を1回行ったサンプル30mgを入れて24時間攪拌した後、ガステック製ガス検知管92L、92M、もしくは92を用いてアセトアルデヒドの残濃度を測定した。また、酢酸の濃度はガステック製ガス検知管81で測定した。酢酸はアセトアルデヒドの酸化分解反応で発生するもので、ここで測定している酢酸濃度は発生した酢酸のうち、サンプルに吸着できなかった酢酸の濃度を表している。同一の試料について消臭試験を2回実施し、1回目と2回目のそれぞれについて残存濃度を測定した。
(水熱処理)
試料約0.1gを量り取り、トミー精工製のLSX−500を用いて、121℃で20分間水熱処理をした。水熱処理後の試料は各種測定を行う前に160℃で2時間乾燥した。
【0033】
(実施例1)
300mlビーカーに、水、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリン酸コバルト、及び8−キノリノールを加えて攪拌し、ミセルを形成させた。その後、塩化アルミニウムを加えて100℃で1時間攪拌した。室温まで冷却した後、テトラエトキシシランを添加して、均一になるまで攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌子を1000rpmで回転させて20時間攪拌した。混合溶液のモル比は、合成物中のCoおよびAl量が1wt%となり、Coに対して8−キノリノールが3モル当量となるように、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:ステアリン酸コバルト:8−キノリノール::塩化アルミニウム:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0111:0.0332:0.0241:125:0.225とした。得られた懸濁液から固体生成物をろ別し、80℃で真空乾燥した後、570℃で5時間加熱して有機成分を除去した。
(実施例2)
ステアリン酸コバルトを塩化コバルトに変えた以外は、実施例1と同じ方法で合成した。混合溶液のモル比は、合成物中のCoおよびAl量が1wt%となり、Coに対して8−キノリノールが3モル当量となるように、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:塩化コバルト:8−キノリノール::塩化アルミニウム:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0111:0.0332:0.0241:125:0.225とした。
(実施例3)
8−キノリノールを加えず、かつその後の加熱攪拌1時間をしないこと以外は、実施例1と同じ方法で合成した。混合溶液のモル比は、合成物中のCo量が1wt%となるように、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:ステアリン酸コバルト:塩化アルミニウム:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0111:0.0241:125:0.225とした。
(実施例4)
8−キノリノールを加えず、かつその後の加熱攪拌1時間をしないこと以外は、実施例2と同じ方法で合成した。混合溶液のモル比は、合成物中のCo量が1wt%となるように、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:塩化コバルト:塩化アルミニウム:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0111:0.0241:125:0.225とした。
【0034】
(比較例1)
特許第4614196号に基づいて合成した。200mlビーカーに、テトラエトキシシラン加えて攪拌子を600rpmで回転させて攪拌し、エタノールに溶解した塩化コバルトを添加した。次いで、オクチルアミンを加えて10分間攪拌した後、塩酸水溶液を加え、さらにそのまま1時間攪拌した。混合溶液のモル比はテトラエトキシシラン:オクチルアミン:エタノール:塩化コバルト:塩酸:水=1:0.34:1.18:0.0105:0.034:38とした。得られた懸濁液から固体生成物をろ別し、100℃で真空乾燥後、600℃で1時間加熱して有機成分を除去した。
(比較例2)
塩化アルミニウムを加えず、かつその後の加熱攪拌1時間をしないこと以外は、実施例1と同じ方法で合成した。混合溶液のモル比は、合成物中のCo量が1wt%となり、Coに対して8−キノリノールが3モル当量となるように、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:ステアリン酸コバルト:8−キノリノール:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0106:0.0319:125:0.225とした。
(比較例3)
300mlビーカーに、水、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドを加えて、100℃で1時間攪拌した水溶液を調製した。室温まで冷却した後、テトラエトキシシランを添加して、均一になるまで攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌子を1000rpmで回転させて20時間攪拌した。混合溶液のモル比は、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:125:0.225とした。得られた懸濁液から固体生成物をろ別し、80℃で真空乾燥した後、570℃で5時間加熱して有機成分を除去した。
(比較例4)
ステアリン酸コバルト及び8−キノリノールを加えないこと以外は実施例1と同じ方法で合成した。混合溶液のモル比は、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:塩化アルミニウム:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0231:125:0.225とした。焼成して得られた粉末のうち0.396gを50mlビーカーに分取し、170mmol/Lの硝酸コバルト水溶液0.4mlと水8mlを加え、100℃で真空乾燥後、350℃で2時間焼成した。
(比較例5)
8−キノリノール及び塩化アルミニウムを加えず、かつその後の加熱攪拌1時間をしないこと以外は、実施例2と同じ方法で合成した。混合溶液のモル比は、合成物中のCo量が1wt%となるように、テトラエトキシシラン:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:塩化コバルト:水:水酸化ナトリウム=1:0.225:0.0106:125:0.225とした。
【0035】
表1に、実施例1乃至4及び比較例1乃至4の比表面積、コバルト含有量、コバルト粒子率、アルミニウム含有量、アルミニウム粒子率、明度及び彩度の測定結果を示す。
また、表2に、水熱処理の前後における比表面積の測定結果を示す。
更に、表3に、水熱処理後のアセトアルデヒド消臭率の測定結果を示す。
【0036】
表1および表3に示されるように、コバルトを含有する比較例1、2及び5は、コバルトを含有しない比較例3に対して、アセトアルデヒド残存濃度が低くかったが、明度が低く、彩度が高かった。すなわち、コバルトを含有させることにより、アセトアルデヒドの消臭率を高めることができるものの、明度が低くなり、彩度が高くなってしまうことが理解できる。
一方、表1に示されるように、実施例1乃至4は、比較例1、2及び5よりも、明度が高く、彩度が高い。すなわち、コバルトに加えてアルミニウムを多孔質シリカに含有させることにより、有色金属であるコバルトの使用による色彩の悪化を抑制できることが判る。これは、実施例1乃至4では、アルミニウムがシリカにドープされていることにより、シリカへのコバルトイオンの拡散が抑制され、コバルトイオン由来の発色が引き起こされなかったためであると考えられる。
他方、比較例4に係る多孔質シリカでは、彩度は良好(低い)であったものの、所望する明度(70以上)が得られなかった。
また、実施例1及び2に係る多孔質シリカは、高いコバルト粒子率を有している一方、アルミニウム粒子率は極めて低かった。すなわち、コバルトの大部分は粒子の形態で担持されており、アルミニウムの大部分はシリカにドープされていることが理解できる。一方、配位子成分を添加しなかった実施例3及び4は、実施例1及び2に比べて、コバルト粒子率は極めて低かった。すなわち、配位子成分の添加により、コバルト粒子率が高められることが判った。
【0037】
表2に示されるように、比較例1乃至3、および比較例5では、水熱処理を繰り返すたびに比表面積が低下した。これに対し、実施例1乃至4では、水熱処理を繰り返しても比表面積の低下が小さく、1000m2/g以上を保っていた。すなわち、アルミニウムを含有させることにより、水熱耐久性が向上することが確認された。尚、比表面積の低下は、比較例1乃至3、及び比較例5のそれぞれにおいてみられたことから、水熱処理による比表面積の低下は、コバルト粒子の存在によるものではないことが理解できる。
【0038】
表3に示されるように、実施例1、2、3、4は、比較例1乃至5と比較して、水熱処理後のアセトアルデヒド残存濃度が低かった。すなわち、多孔質シリカにコバルト及びアルミニウムを含有させることにより、消臭性能を高めることができ、水熱処理による消臭性能の低下も抑制できることが理解できる。
【0039】
表1:同定結果
【表1】
【0040】
表2:水熱処理による比表面積の変化
【表2】
【0041】
表3:水熱処理後試料を用いたアセトアルデヒド消臭試験での残存濃度
【表3】