(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929600
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】注出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/24 20060101AFI20210823BHJP
B65D 47/12 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
B65D47/24 200
B65D47/12 200
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-210765(P2017-210765)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-81586(P2019-81586A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】古原 裕嗣
【審査官】
武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−155333(JP,A)
【文献】
実開昭51−40636(JP,U)
【文献】
特開2008−87809(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/168244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口筒部(2)を備えた容器本体(1)と、前記口筒部(2)内に装着される弁部材(10)と、前記口筒部(2)を被冠するオーバーキャップ(30)と、該オーバーキャップ(30)の下端部と前記容器本体(1)との間に除去可能に設けられたストッパー部材(36)と、を有する注出容器であって、
前記弁部材(10)は、前記口筒部(2)内を移動して密嵌合される嵌合筒部(11)と、前記口筒部(2)に形成された流出口(6)をシールする弁体(14)とを備えると共に、前記嵌合筒部(11)と前記弁体(14)との間が、切断可能に構成された弱化部(12a)を介して連結された連結柱部(12)と弾性変形可能に構成された連結片(13)とにより接続されており、
前記ストッパー部材(36)を除去し、前記オーバーキャップ(30)を前記容器本体(1)側に移動させると、それに伴って前記弱化部(12a)が切断されると共に前記嵌合筒部(11)が前記口筒部(2)内に移動不能に密嵌合され、前記嵌合筒部(11)内では前記連結片(13)で接続された前記弁体(14)による前記流出口(6)の開閉が可能に設定されることを特徴とする注出容器。
【請求項2】
弱化部(12a)が、連結柱部(12)の上端部と嵌合筒部(11)の内周面(11A)との接続部分に設けられている請求項1記載の注出容器。
【請求項3】
連結片(13)が弁体(14)に対して傾斜するように配設されている請求項1又は2に記載の注出容器。
【請求項4】
嵌合筒部(11)の上端に、オーバーキャップ(30)の頂壁(31)の下面に当接可能な注出ノズル(20)を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の注出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用時には容器本体の口筒部を密閉してシール状態を維持し、使用時にはシール状態を容易に開放して内容物の注出を可能とする弁体を備えた注出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の注出口を閉鎖、開放する弁体を設けた従来技術として、例えば以下の特許文献1の第3図には、口頭部10の口腔12の底部に注出口を構成する円孔21が形成された弁座20と、口腔12の壁19に形成された蝶番部18と、この蝶番部18と共に一体成形された円盤状の弁体15とを有して構成された、所謂一点弁を有する押出しチューブ式の容器が記載されている。この容器では、弁体15が蝶番部18を支点に開閉可能に支持されており、弁体15を弁座20の上面22上に水平に設置することで円孔(流出口)21がシールされるという構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭56−044679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の容器では、単に弁体15を弁座20の上面22上に水平に設置するという簡単な構成であるため、未使用時の流通段階等において容器に外的な振動が加わったり、あるいは容器自体が横に倒れたりすると、弁体15が位置ずれし又は傾斜して円孔(流出口)21が開口状態に設定されてしまう虞があり、確実にシール状態を維持することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、未使用時の特に流通段階におけるシール状態を確実に維持することで内容物の注出を防止すると共に、使用時にはシール状態を容易に開放して内容物の注出を可能とする弁体を備えた注出容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
口筒部を備えた容器本体と、口筒部内に装着される弁部材と、口筒部を被冠するオーバーキャップと、オーバーキャップの下端部
と容器本体との間に除去可能に設けられたストッパー部材と、を有する注出容器であって、
弁部材は、口筒部内を移動して密嵌合される嵌合筒部と、口筒部の下端に形成された流出口をシールする弁体とを備えると共に、嵌合筒部と弁体との間が、
切断可能に構成された弱化部を介して
連結された連結柱部と弾性変形可能に構成された連結片とにより接続され
ており、
ストッパー部材を除去し、オーバーキャップを容器本体側に移動させると、それに伴って弱化部が切断されると共に嵌合筒部が口筒部内に移動不能に密嵌合され、嵌合筒部内では連結片で接続された弁体による流出口の開閉が可能に設定されることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、開封前の未使用状態(流通状態)においては弁体が口筒部内の流出口を確実にシールして密閉状態を維持することができ、開封時の使用状態においては開閉可能な弁体として機能させることができる。
【0007】
また本発明の他の手段は、主たる手段に、弱化部が、連結柱部の上端部と嵌合筒部の内周面との接続部分に設けられている、との手段を加えたものである。
上記手段では、使用時に、オーバーキャップを回して口筒部内の嵌合筒部を下方に移動させることにより、容易に嵌合筒部と連結柱部との接続部分(弱化部)を切断することができ、弁体を開閉可能な状態に設定することができる。
【0008】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、連結片が弁体に対して傾斜するように配設されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、連結柱部に切断が生じる際に、連結片が一緒に切断してしまうことを防止し、さらには弁体を弾性的に支持することによる一点弁としての開閉機能を維持することができる。
【0009】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、嵌合筒部の上端に、オーバーキャップの頂壁の下面に当接可能な注出ノズルを備える、との手段を加えたものである。
上記手段では、注出ノズルを介した内容物の注出を達成できる。また注出ノズルはオーバーキャップの頂壁下面と嵌合筒部との間に配置されるため、オーバーキャップをねじ込むことにより、注出ノズルを介して嵌合筒部を下方に移動させ、弱化部での切断を容易に達成できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
流通段階等の未使用状態においては、弁部材が一点弁の構造であってもシール状態を維持することができるため、流通時に容器に外的な振動が加わったり、あるいは容器自体が横に倒れたりしても内容物の注出を確実に防止することができる。
また使用時にはオーバーキャップを回すという簡単な操作を行うことにより、弁体が開閉可能な状態に設定されて内容物の注出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例として開封前の未使用状態(流通段階)を示す注出容器の断面図である。
【
図2】開封後の使用状態を示す注出容器の断面図である。
【
図3】Aは弁部材の平面図、Bは弁部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例として開封前の未使用状態(流通段階)を示す注出容器の断面図、
図2は開封後の使用状態を示す注出容器の断面図、
図3Aは弁部材の平面図、
図3Bは弁部材の正面図である。
【0013】
先ず注出容器の構成について説明する。
図1乃至
図3に示す注出容器は、化粧用クリーム等の比較的粘度の高い内容物、特に水分等と分離してしまうような内容物を収容する容器本体1と、容器本体1の口筒部2内に設けられた流出口6を開閉して内容物を通過させる弁部材10と、弁部材10の先端部に組み付けられる注出ノズル20、及び注出ノズル20を被冠するオーバーキャップ30を有して構成され、これらはすべて合成樹脂材料によって形成されている。
【0014】
容器本体1は、図示しない底部の上に円筒状の胴部4、肩部3が順に連設されると共に肩部3の上に円筒状の口筒部2が一体に立設された、例えばチューブ容器やスクイズ容器などである。口筒部2の外周面に雄ネジ2aが形成され、口筒部2の内側下端には肩部3から容器軸O側に水平に延出する台座部5が形成されている。そして、この台座部5の中央には容器軸Oに沿って鉛直に貫通する流出口6が形成されている。
【0015】
弁部材10は、外径寸法が上端側よりも下端側が若干小さいテーパー状に形成された円筒状の嵌合筒部11の下端部に円板状の弁体14を備えた部材であり、嵌合筒部11と弁体14とは複数(本実施例では3本)の連結柱部12と弾性変形可能に構成された連結片13を介して接続されている。
【0016】
より詳しくは、連結柱部12は弁体14の外周縁から上方に延出されると共に、その上端が嵌合筒部11の下端部側の内周面11Aに対して切断可能な状態で一体に形成されている。連結柱部12の上端と嵌合筒部11の内周面11Aとの接続部分は切断可能な弱化部12aであり、例えば連結柱部12の上端面と嵌合筒部11の内周面11Aとの接合面積を小さくすることで弱化部12aとしての機能を備えている。また連結片13は細棒状に形成され、その上端13aが嵌合筒部11の内周面11Aに接続され且つ下端13bが弁体14の上面に接続された状態で、
図3Aに示すように嵌合筒部11の内周面に沿うように円弧状に配設されると共に、
図3Bに示すように弁部材14に対して傾斜する状態で配設されており、弾性変形可能な状態で嵌合筒部11と弁体14との間を接続している。また嵌合筒部11の上端側の内周面には係止凹部15が周設されている。尚、嵌合筒部11の内周面11Aで且つ連結片13の上端13aの下部位置には段差部11aが形成されている。
このような弁部材10は、嵌合筒部11の外周面が口筒部2の内周面に嵌合した状態で装着されており、弁体14が台座部5の上面に当接することにより、流出口6をシールすることが可能となっている。
【0017】
注出ノズル20は、下部側に設けられた円筒状の基端部21と、上部側に縮径状に形成されたノズル部22とを有し、これらの間に形成されたフランジ部23を介して連結された部材であり、ノズル部22上端には注出口24が形成され、基端部21の外周面には係止凸部25が周設されている。注出ノズル20は基端部21が弁部材10の嵌合筒部11の上端部に挿入され、係止凸部25と係止凹部15とを係合させることによって容易に分離しない状態で組み付けられている。
【0018】
オーバーキャップ30は、円板状からなる頂壁31の外周部に円筒状の側壁32が設けられた有頂筒状の部材であり、口筒部2やこの口筒部2に組み付けられた注出ノズル20を被冠する。オーバーキャップ30の側壁32の内周面には、容器本体1側の口筒部2に形成されている雄ネジ2aに螺合可能な雌ネジ33が形成され、側壁32の下端部にはストッパー部材36が形成されている。
【0019】
ストッパー部材36はリング状のストッパーであり、側壁32と容器本体1との間に形成されたものである。また、ストッパー部材はC字状の形態としてもよく、摘み部を設けてもよい。さらに、図示しないが、側壁32の下端部に易切断性の切断部を設け、口筒部2に嵌合可能な係止片を側壁32の内周面に形成してもよい。オーバーキャップ30の開放時、口筒部2に係止片が引っ掛かることで切断部が破断し、ストッパー部材36を取り去ることが可能であればよい。
【0020】
次に注出容器の使用について説明する。
図1に示す開封前の未使用状態では、弁体14によって流出口6がシールされている。このため、上述の従来例の一点弁に比較してシール状態を確実に維持することができるため、容器本体1内に収容されている比較的粘度の高い内容物、特に水分等と分離してしまうような内容物の水分等が一点弁から注出されて弁部材10内や注出ノズル20の流路26内に流れ込むことを防止することが可能となっている。
【0021】
オーバーキャップ30を回転させて開放し、ストッパー部材36を除去した後、ストッパー部材36が除去された高さ分だけ下方にオーバーキャップ30をネジ送りする。この際、頂壁31下面の環状凸部34がノズル部22の上端に当接し、注出ノズル20及びその下端に連結されている嵌合筒部11を下方に移動させる。
【0022】
弁体14は台座部5に当接してこれ以上の下方への移動が不可能な状態にある。
このため、更にオーバーキャップ30が下方にネジ送りされると、
図2に示すように連結柱部12の上端部と嵌合筒部11の内周面11Aとの間を接続していた弱化部12aが切断され、嵌合筒部11のみが下方に移動する。
【0023】
弁部材10及び注出ノズル20の下方への移動は、注出ノズル20のフランジ部23が口筒部2の上端に当接するまで行われるが、嵌合筒部11の外形形状はテーパー状であるため、この当接位置では嵌合筒部11が口筒部2内に密嵌合して移動不能な状態に設定される。
【0024】
また弁体14は嵌合筒部11のみが下方に移動するため、連結片13は上端13aと下端13bとの高さ方向の距離(連結片13の鉛直方向の長さ)が短くなる分だけ連結片13の弁部材10に対する傾き角度が緩くなる状態に弾性変形するものの、切断されることなく嵌合筒部11の内周面11Aと弁部材10との間の接続を維持し、所謂いわゆる一点弁として機能する。
【0025】
次に、オーバーキャップ30を螺脱させて注出ノズル20を外部に露出させ、続いて容器本体1の胴部4を押圧して容器本体1内の内圧を高める。すると、弁体14が持ち上げられて台座部5から離れ流出口6が開放される。そして、内容物は流出口6を通じて口筒部2内の弁体14の周囲に入り込み、続いて隣接する連結柱部12間の隙間S、又は連結柱部12と連結片13との間の隙間Sを介して弁部材10を構成する嵌合筒部11の内部に流れ込み、更に注出ノズル20の流路26に流れ込むため、ノズル部22上端の注出口24を介して内容物を外部に注出させることができる。
また胴部4に対する押圧を解除して容器本体1内の内圧を低下させると、弁体14が下がり流出口6を再びシールするため、内容物の注出を停止させることができる。
【0026】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0027】
また上記実施例では、オーバーキャップ30が螺合により下方にネジ送りされる構成を示して説明したが、オーバーキャップ30はスライドにより下方に移動する構成であっても良い。
【0028】
また上記実施例では、嵌合筒部11の上端にノズル部22が組み付く構成を示して説明したが、嵌合筒部11の上端がオーバーキャップ30の頂壁31の下面に当接可能とし、頂壁31が嵌合筒部11を直接下方に移動させる場合には、ノズル部22を有しない構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の注出容器は、弁体を有する注出容器の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 : 容器本体
2 : 口筒部
2a : 雄ネジ
3 : 肩部
4 : 胴部
5 : 台座部
6 : 流出口
10 : 弁部材
11 : 嵌合筒部
11A: 内周面
11a: 段差部
12 : 連結柱部
12a: 弱化部
13 : 連結片
13a: 連結片の上端
13b: 連結片の下端
14 : 弁体
15 : 係止凹部
20 : 注出ノズル
21 : 基端部
22 : ノズル部
23 : フランジ部
24 : 注出口
25 : 係止凸部
26 : 流路
30 : オーバーキャップ
31 : 頂壁
32 : 側壁
33 : 雌ネジ
34 : 環状凸部
36 : ストッパー部材
S : 隙間