(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929609
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】排気管保持構造
(51)【国際特許分類】
B60K 13/04 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
B60K13/04 C
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-242237(P2018-242237)
(22)【出願日】2018年12月26日
(65)【公開番号】特開2020-104537(P2020-104537A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2020年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 真央
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中上 麻里
【審査官】
田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−342753(JP,A)
【文献】
特開平10−212942(JP,A)
【文献】
実開平06−008043(JP,U)
【文献】
特開2013−203224(JP,A)
【文献】
特開平03−136924(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/027504(WO,A1)
【文献】
中国実用新案第204323041(CN,U)
【文献】
特開平06−127278(JP,A)
【文献】
特開2017−065286(JP,A)
【文献】
特開2011−093344(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104670002(CN,A)
【文献】
中国実用新案第206816337(CN,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0057144(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドメンバ側面に対して、棒状のハンガー部を車幅方向に延設した排気管保持構造において、
前記ハンガー部は、ブラケットを介してその一部が前記サイドメンバ側面に固定され、前記サイドメンバ側面に固定されていない部分が屈曲して車幅方向に延設しており、
前記ブラケットは折り返されて、前記サイドメンバとフロアとの結合面のキックアップ部に2面合わせで結合され、
前記ハンガー部が前記サイドメンバ側面に固定されている固定軸方向が、前記サイドメンバ側面を車両側方視した際に上下軸から角度を持っていることを特徴とする、排気管保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
排気管を自動車のボデーに保持する構造において、車両中央の燃料タンク付近で保持が必要となる場合がある。従来、このような構造の車両では、ボデー側に排気管保持用のハンガーを配設し、上下に二つの貫通穴を備えた厚肉のゴム部材(ハンガーゴム)を介して排気管側から延びるハンガーと結合して、排気管をボデーで保持している。ボデー側のハンガーは、剛性確保のため、直接またはブラケットを介してフロントフロアパネルRRの後面にまたはサイドメンバに結合されていることが一般的である。ボデー側のハンガーがサイドメンバに結合される場合は、サイドメンバ側面に対して、ハンガーを車幅方向に延設し、サイドメンバへの取付部を鉛直方向に形成していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3107083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気管保持用のハンガー先端には、車両走行時の車体振動や排気管からの排気振動が伝わる。排気管からボデーへの振動を低減するため、ハンガー取付部の剛性確保が必要であるが、以下の問題があった。ハンガーが、剛性が十分ではない部品(フロアパネル:t0.8)に結合しているため、剛性確保のために大きいブラケットや、添え木となるハンガーをさらに追加する必要がある。しかし、2WDの車両等では、ハンガー取付部が側突で潰されるエリアになっているため、衝突安全性能と剛性確保との両立は困難であった。さらに、排気管との結合位置が遠く、ハンガーを長く伸ばす必要があり、ハンガー長が長くなるほど、結合位置からのオフセットが大きくなり、支持剛性が低下する。そして、ハンガーが燃料タンクの方向に向いていると、衝突時に燃料タンク破れに繋がるおそれがあるため、ハンガーの向きには制約がある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するものであり、衝突安全性能と両立しつつ取付部の強度の確保を可能として、ハンガー部にかかる排気管からの振動を低減させ、ひいてはノイズを低減可能な排気管保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の排気管保持構造は、車両のサイドメンバ側面に対して、棒状のハンガー部を車幅方向に延設した排気管保持構造において、前記ハンガー部は、ブラケットを介してその一部が前記サイドメンバ側面に固定され、前記サイドメンバ側面に固定されていない部分が屈曲して車幅方向に延設しており、前記ブラケットは折り返されて、前記サイドメンバとフロアとの結合面のキックアップ部に2面合わせで結合され、前記ハンガー部が前記サイドメンバ側面に固定されている固定軸方向が、
前記サイドメンバ側面を車両側方視した際に上下軸から角度を持っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝突安全性能と両立しつつ取付部の強度の確保を可能として、ハンガー部にかかる排気管からの振動を低減させ、ひいてはノイズを低減可能な排気管保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の排気管保持構造の実施形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、従来の排気管の保持構造の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の排気管保持構造の実施形態の一例の側面視の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。なお、以下で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。
【0010】
図1は、本発明の排気管保持構造の実施形態の一例を示す斜視図である。
図3は、前記排気管保持構造の側面視の図である。本実施形態の排気管保持構造は、排気管を保持する棒状のハンガー部1が、ハンガー取付部(ブラケット)2を介して車両のサイドメンバ3側面に配設されている。ハンガー取付部2は、サイドメンバ3側面に溶接されて取り付けられている。本実施形態においては、ハンガー部1はハンガー取付部(ブラケット)2を介して車両のサイドメンバ3側面に配設されているが、これに限定されるものではなく、ハンガー部1を直接サイドメンバ3側面に取り付けてもよい。
【0011】
ハンガー部1は、その一部がサイドメンバ3側面に(ハンガー取付部2を介して)固定され、サイドメンバ3側面に固定されていない部分が屈曲して車幅方向に延設している。そして、ハンガー部1がサイドメンバ3側面に固定されている固定軸L方向が、鉛直方向に対して角度を持っている。ここで、ハンガー部1の固定軸L方向とは、(ハンガー取付部2を介して)サイドメンバ3側面に取り付けられている部分の棒状のハンガー部1の長さ方向を指す。また、鉛直方向とは、車両の上下軸方向である。
【0012】
比較のため、従来の排気管の保持構造の一例を示す斜視図を
図2に示す。従来構造では、Frフロアパネル4のRR後面に、ハンガー11が溶接されて取り付けられており、ハンガー11の取付け方向は、鉛直方向である。このような保持構造でハンガーにかかる力は、上下の入力を1とすると、取付部の溶接軸(固定軸)方向に1、溶接直交方向に0の力が作用する。前後の入力を1とすると、取付部の溶接軸方向に0、溶接直交方向に1の力が作用する。したがって、それぞれ最大で、溶接軸方向に1、溶接直交方向に1の力が溶接部に作用することとなる。この場合、排気管からボデーへの振動低減は、ハンガーおよび取付け部分での曲げの剛性に依存することとなり、十分ではなかった。
【0013】
これに対して、本発明の排気管保持構造では、固定軸L方向が鉛直方向(上下方向)に対して角度を持っているので、ハンガー部1の固定軸L方向にかかるせん断方向の入力はベクトル分解され、固定軸L方向と直交する方向(軸直方向)でも負担させることができる。そのため、ハンガー部1にかかる上下方向および前後方向の振動に対して、固定軸L方向と固定軸L直交方向とにかかる最大入力を小さくすることができる。また、軸方向以外にも軸直方向にも入力が入ることで、回転の動きも発生することとなる。回転の動きが発生すると、曲げの剛性に加えて捩じりの剛性の作用も加わるため、よりハンガー部1およびその取付け構造の支持剛性(強度)を確保でき、排気管を保持する部材のぐらつきを抑え、排気管の保持を安定にすることができる。これにより排気管からのボデー側への振動(脈動)をハンガー部1において低減させることができ、振動音(ノイズ)も低減可能とすることができる。前記角度は、鉛直方向に対して45°が最も好ましい。
【0014】
ハンガー部1はブラケット(ハンガー取付部)2を介してサイドメンバ3の側面に結合することが好ましい。
図1および
図3に示すように、本実施形態は、ハンガー部1はブラケット(ハンガー取付部)2を介して車両前後方向に伸びるRRサイドメンバ3の側面に結合する態様である。ここで、ブラケット2は上端を折り返し、サイドメンバ3と2面合わせで結合している。このように、サイドメンバ3とフロアとの結合面のキックアップ部に垂直にブラケットを結合することで、ブラケットの曲げ剛性も向上させることができる。また、多面合わせで結合させることで、結合剛性も向上させることができる。
【0015】
なお、本発明においては、ボデー側の排気管ハンガーをサイドメンバに結合することで、排気管側のハンガーに近いレイアウトにすることができる。このように、排気管側の支持位置に近づくため、ハンガー長を短縮でき、ハンガー部1自体の曲げ剛性を向上させることができる。
【0016】
また、ハンガー部1の取付箇所がフロアパネル(t0.8)ではなく、閉じ断面のサイドメンバ3(t1.4)にすると、剛性のある部材に結合によってハンガー部1自体の剛性を向上させることに加え、衝突(側突、後突)時の変形モードを阻害しないという利点がある。側突でモードコントロールするエリア外にハンガー部1を配設することで、ブラケット2を剛性のある形状に自由に変更することも可能となる。
【0017】
サイドメンバ3側面に固定されているハンガー部1の一部は、
図3では直線形状であるが、固定軸L方向の直線形状部分に連続して屈曲部を有していてもよい。前記固定されているハンガー部1が屈曲部を有している場合、原則としては、サイドメンバ3側面に固定されていない部分と連続して固定されている側(排気管を保持している側に近い側)の長さ方向を固定軸方向Lとする。ただし、サイドメンバ3側面に固定されていない部分と連続して固定されている側が、他の部分に比べて著しく短い場合等、せん断方向の入力のベクトル分解に寄与しない場合には、この短い部分に隣接する部分の長さ方向が固定軸方向Lとなる。本発明の目的である取付部の強度確保の観点から、せん断方向の入力がベクトル分解されるような作用を有する固定部分の方向を、固定軸方向Lとすべきである。
【符号の説明】
【0018】
1 …ハンガー部
2 …ハンガー取付部(ブラケット)
3 …サイドメンバ
4 …フロアパネル
11 …ハンガー