特許第6929680号(P6929680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929680
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】X線CTシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/04 20060101AFI20210823BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   A61B6/04 332P
   A61B6/03 323D
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-62961(P2017-62961)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-196398(P2017-196398A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2020年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-88034(P2016-88034)
(32)【優先日】2016年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】田原 浩登
(72)【発明者】
【氏名】若原 正享
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−095513(JP,A)
【文献】 特開2004−147983(JP,A)
【文献】 特開2001−190535(JP,A)
【文献】 特開2009−028160(JP,A)
【文献】 特開2014−136053(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0281181(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104799880(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と、当該X線管より照射されるX線を検出するX線検出器と、操作者の操作に応じてチルト移動を指示する指示信号を発生する操作部とを有する架台と、
第1の部屋に配置される第1の寝台と、
第2の部屋に配置される第2の寝台と、
前記第1の部屋に前記架台を搬送する場合には前記架台の正面側と前記第1の寝台とが正対する向きに前記架台を配置し、前記第2の部屋に前記架台を搬送する場合には前記架台の背面側と前記第2の寝台とが正対する向きに前記架台を配置する搬送部と、
前記操作部による前記指示信号の発生中、前記架台が配置された部屋に応じて前記架台のチルト移動の方向を制御する制御手段と
を具備するX線CTシステム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記操作部に備えられた前記チルト移動の方向の正負表示、及び前記チルト移動の移動量の正負表示のうち、少なくとも一つの表示を、前記架台が配置された部屋に応じて切り替え制御する、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項3】
前記架台が配置される部屋と、前記チルト移動の方向とを関連付けて記憶するメモリを備え、
前記制御手段は、前記メモリの記憶内容に基づき、前記チルト移動の方向を制御する、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項4】
前記第1の部屋又は前記第2の部屋に向けて前記架台を搬送中であることを検出する架台検出器を備え、
前記制御手段は、前記架台検出器の検出結果をトリガとして、前記架台が搬送された部屋に対応する前記チルト移動の方向を切り替え、前記指示信号の発生中、前記切り替えた方向に基づいて、前記架台のチルト移動の方向を制御する、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項5】
X線管と、当該X線管より照射されるX線を検出するX線検出器と、操作者の操作に応じて相対的移動を指示する指示信号を発生する操作部とを有する架台と、
第1の部屋に配置される第1の寝台と、
第2の部屋に配置される第2の寝台と、
前記第1の部屋に前記架台を搬送する場合には前記架台の正面側と前記第1の寝台とが正対する向きに前記架台を配置し、前記第2の部屋に前記架台を搬送する場合には前記架台の背面側と前記第2の寝台とが正対する向きに前記架台を配置する搬送部と、
前記操作部による前記指示信号の発生中、前記架台が配置された部屋に応じて前記架台と前記第1の寝台又は前記第2の寝台との相対的移動の方向を制御する制御手段と
を具備するX線CTシステム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記操作部に備えられた前記相対的移動の方向の正負表示、及び前記相対的移動の移動量の正負表示のうち、少なくとも一つの表示を、前記架台が配置された部屋に応じて切り替え制御する、請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項7】
前記架台が配置される部屋と、前記相対的移動の方向とを関連付けて記憶するメモリを備え、
前記制御手段は、前記メモリの記憶内容に基づき、前記相対的移動の方向を制御する、請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項8】
前記第1の部屋又は前記第2の部屋に向けて前記架台を搬送中であることを検出する架台検出器を備え、
前記制御手段は、前記架台検出器の検出結果をトリガとして、前記架台が搬送された部屋に対応する前記相対的移動の方向を切り替え、前記指示信号の発生中、前記切り替えた方向に基づいて、前記相対的移動の方向を制御する、請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記架台に配置されている、請求項1又は請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項10】
前記第1の寝台の近傍に配置され、前記第1の部屋に配置された架台と前記架台に対する第1のコンソールとの間の接続を開状態又は閉状態に切り替える第1のスイッチと、
前記第2の寝台の近傍に配置され、前記第2の部屋に配置された架台と前記架台に対する第2のコンソールとの間の接続を開状態又は閉状態に切り替える第2のスイッチと
を備え、
前記制御手段は、前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチを介して、前記架台と、前記第1のコンソール又は前記第2のコンソールとが接続されることにより、前記架台が配置された部屋を検出する、請求項1又は請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項11】
前記第1の部屋に配置され、前記架台に対する第1のコンソールから延長された第1のケーブルと、
前記第1のケーブルの先端に設けられ、前記架台に接続可能な第1のコネクタと、
前記第2の部屋に配置され、前記架台に対する第2のコンソールから延長された第2のケーブルと、
前記第2のケーブルの先端に設けられ、前記架台に接続可能な第2のコネクタと
を備え、
前記制御手段は、前記第1のコネクタ又は前記第2のコネクタを介して、前記架台と、前記第1のコンソール又は前記第2のコンソールとが接続されることにより、前記架台が配置された部屋を検出する、請求項1又は請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項12】
前記架台に設けられた第0の無線通信手段と、
前記第1の部屋に配置された第1のコンソールに設けられ、前記第0の無線通信手段に無線通信可能な第1の無線通信手段と、
前記第2の部屋に配置された第2のコンソールに設けられ、前記第0の無線通信手段に無線通信可能な第2の無線通信手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記架台と、前記第1のコンソール又は前記第2のコンソールとが無線通信することにより、前記架台が配置された部屋を検出する、請求項1又は請求項5に記載のX線CTシステム。
【請求項13】
前記搬送部は、前記架台の向きを略一定にして搬送する、請求項1又は請求項5に記載のX線CTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CTシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(computed tomography)装置及びアンギオCT装置は、1つの検査室に一式のシステムとして設置される。X線CT装置は、架台(CTガントリ)、寝台及びコンソールを有する。アンギオCT装置は、Cアーム、架台(CTガントリ)、寝台及びコンソールを有する。この種のシステムにおいて、アンギオCT装置の架台は、稼働率が低く、稼働率の向上が求められている。
【0003】
これに対し、複数の検査室、すなわち、複数のシステムで架台を共有することにより、架台の稼働率の向上を図る方式として、架台が各検査室を移動するマルチルームソリューションが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−190535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方式は、通常は特に問題ないが、本発明者の検討によれば、架台の共有に伴い、各システムの寝台との位置関係や、各システムの組合せがそれぞれ異なっている。このため、架台の移動制御や、操作パネルとコンソールなどのユーザインタフェース(以下、UIという)表示に、それぞれ不整合が生じてしまう。この結果、UIである操作部の誤操作が生じ易くなっている。
【0006】
目的は、架台の操作部に対する誤操作を阻止し得るX線CTシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るX線CTシステムは、架台、第1の寝台、第2の寝台、搬送部及び制御手段を具備する。
【0008】
前記架台は、X線管と、当該X線管より照射されるX線を検出するX線検出器と、操作者の操作に応じてチルト移動を指示する指示信号を発生する操作部とを有する。
【0009】
前記第1の寝台は、第1の部屋に配置される。前記第2の寝台は、第2の部屋に配置される。
【0010】
前記搬送部は、前記第1の部屋に前記架台を搬送する場合には前記架台の正面側と前記第1の寝台とが正対する向きに前記架台を配置する。搬送部は、前記第2の部屋に前記架台を搬送する場合には前記架台の背面側と前記第2の寝台とが正対する向きに前記架台を配置する。
【0011】
前記制御手段は、前記操作部による前記指示信号の発生中、前記架台が配置された部屋に応じて前記架台のチルト移動の方向を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るX線CTシステムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示す検査室R2側から見たX線CTシステム1を示す外観図である。
図3】同実施形態におけるX線CTシステムに設けられるX線CT装置及びX線アンギオCT装置の構成を示すブロック図である。
図4】同実施形態における操作パネルPLを説明するための模式図である。
図5】同実施形態における検査室R1,R2間で、接近方向及び離反方向と、チルト方向とがそれぞれ逆向きになることを示す模式図である。
図6】同実施形態におけるセンサ出力を示す模式図である。
図7】同実施形態におけるメモリの記憶内容を示す模式図である。
図8】同実施形態における切り替え機能scの実装例を示す模式図である。
図9】同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係るX線CTシステムを4ルームソリューションに適用した場合のレイアウト構成を示す模式図である。
図11図10のX線CTシステムのネットワーク構成を示す模式図である。
図12】同実施形態におけるセンサ出力を示す模式図である。
図13】同実施形態におけるメモリの記憶内容を示す模式図である。
図14】同実施形態における第1変形例の概略構成を示す模式図である。
図15】同実施形態における第1変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
図16】同実施形態における第2変形例の概略構成を示す模式図である。
図17】同実施形態における第2変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
図18】同実施形態における第3変形例の概略構成を示す模式図である。
図19】同実施形態における第3変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係るX線CTシステムについて、図面を用いて説明する。このX線CTシステムは、例えば、それぞれ寝台を有する複数のモダリティ間で架台を共有し、架台が存在するモダリティの組合せに応じて、移動制御、UI表示を切り替えるものである。但し、これに限らず、X線CTシステムは、制御手段(制御回路)の制御により、架台の操作部に対する誤操作を阻止し得るものであればよい。例えば、制御手段が操作部のUI表示を固定して架台の移動方向を制御する構成としてもよく、制御手段が操作部のUI表示を切り替えてUI表示に沿った移動方向に制御する構成としてもよい。また、最終的に移動方向が制御されればよいので、移動方向を切り替えるタイミングは、架台の搬送中でもよく、架台の搬送後でもよく、指示信号の発生開始直後でもよい。このX線CTシステムにおいては、X線CT装置と、任意のモダリティとの組合せが可能である。組み合わせ可能なモダリティとしては、例えば、アンギオCT、手術寝台などの架台自走方式をとるものや、X線CT、PET(Positron Emission Tomography)−CTなどの寝台移動ベース機構をもつシステムなどがある。架台を共有する寝台の台数は、2,3,4,・・・といった任意の複数台である。始めに、X線CTシステムを2ルームソリューションに適用した例を第1の実施形態として説明する。なお、3ルーム以上の複数ルームソリューションに適用する場合、例えば、2ルームソリューションに適用した構成に対し、ルーム数に応じて、寝台の台数、搬送部による搬送先の部屋、制御手段の機能などを拡張してもよい。続いて、X線CTシステムを4ルームソリューションに適用した例を第2の実施形態として説明する。以下の各実施形態は、複数ルームソリューションにおいて、1台の寝台と1部屋の検査室とが1対1対応する場合を例に挙げて述べるが、これに限らず、複数台の寝台と1部屋の検査室とが対応する場合にも適用可能である。「検査室」は、単に、「部屋」と呼んでもよい。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るX線CTシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係るX線CTシステム1は、被検体に対してX線コンピュータ断層撮影(CT撮影)を実行するための架台(ガントリ:Gantry)2を複数の検査室それぞれに設けられた複数のモダリティ間で共有するものである。言い換えると、X線CTシステム1は、架台2を複数の検査室R1,R2間で共有するものであり、架台2を複数の寝台4,7間で共有するものでもある。検査室R1及び寝台4は、それぞれ第1の部屋及び第1の寝台と呼んでもよい。検査室R2及び寝台7は、それぞれ第2の部屋及び第2の寝台と呼んでもよい。架台2は、搬送装置や搬送用レールL1_2を用いて複数の検査室R1,R2間を移動可能に設けられる。なお、レールL1_2における異なる数字の添字“1_2”は、異なる数字に対応する異なる検査室“R1,R2”を示す。これは、他のレールの添字及びセンサの添字でも同様である。コンソール3,6は、寝台4,7に関して個別に設けられている。また、架台2の移動経路、かつ複数の検査室の間に開閉扉9を設け、架台2を移動する場合における移動経路を確保しつつ、各検査室の独立性を保っている。開閉扉9は、コンソール3,6又は架台2から架台2の搬送に応じて開閉制御してもよく、あるいは架台2の搬送に応じて自動的に開閉する自動ドアとしてもよい。これに加え、検査室間にセンサs1_2を設け、そのセンサ情報から架台2の存在する検査室を判別可能としている。具体的には例えば、架台2の移動経路と開閉扉9とが交差する位置の床にセンサs1_2を設け、搬送中の架台2を検出可能としている。なお、このセンサs1_2は、検査室R1又はR2に向けて架台2を搬送中であることを検出するので、架台検出器と呼んでもよい。センサs1_2としては、架台2を検出可能なものであればよく、例えば、フォトセンサ等が使用可能となっている。また、センサs1_2は必ずしも床に設置しなくてもよい。架台2を検出可能なセンサであればよいことは、後述する他のセンサでも同様である。また、センサs1_2を床に設置する場合、例えば、X線CT装置及びX線アンギオCT装置の据え付け時に設置すればよい。また、センサs1_2は、互いに離間して配置された寝台4,7の間に配置され、搬送中の架台2を検出可能であればよい。すなわち、センサs1_2は、必ずしも検査室の境界に配置されなくてもよい。
【0015】
図1には、当該架台2を2つのモダリティ間で共有する2ルームCTの構成を示している。例えば、一方の検査室R1には、断層面の静止画等を撮影可能なX線CT装置が設けられる。X線CT装置は、X線アンギオCT装置と共有する架台2、CTコンソール3、及び寝台4を備える。寝台4は、天板T1を含む。X線CT装置及びX線アンギオCT装置は、例えばCAN(Controller Area Network)通信等により、互いに通信可能となっている。これは以下の各実施形態でも同様である。X線CT装置の構成については、図3を参照して後ほど説明する。
【0016】
他方の検査室R2には、血管の平面動画等を撮影可能な血管造影(アンギオ:Angio)装置及び当該X線CT装置を組み合わせたX線アンギオCT装置が設けられる。X線アンギオCT装置は、X線CT装置と共有する架台2、X線撮影装置5、X線コンソール6、及び寝台7を備える。寝台7は天板T2を含む。X線アンギオCT装置の構成については、図3を参照して後ほど説明する。
【0017】
図2は、図1に示す検査室R2側から見たX線CTシステム1を示す外観図である。本実施形態に係るX線CTシステム1の各構成は、図2に示すように配置される。検査室R2において、架台2の初期位置検出用のセンサs2_2は、例えば、搬送用レールL1_2が寝台7に接近する位置の床に配置される。なお、センサs2_2における同じ数字の添字“2_2”は、同じ数字に対応する検査室“R2”のみを示す。これは他のセンサの添字及びレールの添字でも同様である。また、検査室R1において、架台2の初期位置検出用のセンサs1_1は、搬送用レールL1_2が寝台4に接近する位置の床に配置されている。X線撮影装置5は、架台2の移動経路とは直交する方向に沿って天井に設けられたレールL2_2を介して、寝台7に対して進入及び退避可能に配置される。架台2は、寝台4側に対向する正面の左右側に操作パネル(図示せず)を有し、寝台7側に対向する背面の左右側に操作パネルPL,PRを有する。各操作パネルPL,PRは互いに同一構成であり、架台2の正面の左右側、架台2の背面の左右側のどこからも操作できるように、複数箇所に設けられている。図2に示す各構成の配置は、使用するモダリティの種類や設置環境に応じて、適宜、変更可能である。例えば、搬送用レールL1_2は、任意の付加的事項であり、省略してもよい。これは、図示しない搬送部が、モータの駆動力により架台2を搬送できる構成であればよく、必ずしも搬送用レールL1_2上を走行しなくてもよいためである。また、天井走行式のX線撮影装置5に代えて、床面走行式のX線撮影装置を設けることにより、天井のレールL2_2を省略してもよい。また、検査室R1,R2間のセンサs1_2に代えて、寝台4,7の近傍に配置されたセンサs1_1,s2_2により、架台2が配置された検査室又は寝台を検出してもよい。
【0018】
図3は、実施形態に係るX線CTシステム1に設けられるX線CT装置及びX線アンギオCT装置の構成を示すブロック図である。X線CT装置、X線アンギオCT装置、開閉扉9及びセンサs1_1,s1_2,s2_2は、互いにネットワークを介して通信可能となっている。まず、X線CT装置について説明する。
【0019】
図3に示すように、X線CT装置は、架台2、CTコンソール3及び寝台4を備える。架台2は、スリップリング(slip ring)21、管電圧発生装置22、X線管23、X線検出器24、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)25、非接触データ伝送回路26、搬送装置27、操作部28a及び架台制御回路28を有している。架台2は、回転リング29、被検体の体軸(Z軸)を回転軸として回転自在に回転リング29を支持するリング支持機構、及び回転リング29を回転駆動させる回転駆動装置(電動機)30等を有する。回転リング29の開口部には、被検体Pを載置可能な天板T1が挿入される。天板T1は、回転リング29の中心軸に沿って移動可能に寝台4に支持される。ここで、天板T1に載置された被検体Pの体軸が回転リング29の中心軸に一致するように、天板T1が位置決めされる。回転リング29には、管電圧発生装置22、X線管23、X線検出器24、DAS25、非接触データ伝送回路26、図示しない冷却装置等が搭載される。管電圧発生装置22は、架台制御回路28を介したCTコンソール3による制御の下で、X線管23に印加する管電圧と、X線管23に供給するフィラメント電流(Filament current)とを発生する。
【0020】
X線管23は、スリップリング21を介して、管電圧発生装置22からの管電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受ける。X線管23は、X線の焦点から天板T1に載置された被検体PへX線を放射する。X線管23は、管電圧発生装置22により印加される管電圧に対応するエネルギースペクトルを有するX線を発生する。X線の放射範囲は、図3の二点鎖線に示す。
【0021】
X線検出器24は、回転軸を挟んでX線管23に対峙する位置及び角度で、回転リング29に取り付けられる。X線検出器24は、X線管23より照射されるX線を検出するための複数の受光帯を有する。ここでは、単一の受光帯が単一のチャンネルを構成しているものとして説明する。複数のチャンネルは、回転軸に直交し、かつ放射されるX線の焦点を中心として、この中心から1チャンネル分の受光帯の中心までの距離を半径とする円弧方向(チャンネル方向)とZ方向(スライス方向)との2方向に関して二次元状に配列される。X線検出器24の出力側には、DAS25が接続される。X線検出器24は、複数の受光帯を1列に配列する。このとき、複数の受光帯各々は、上記チャンネル方向に沿って略円弧方向に一次元状に配列される。また、複数の受光帯は、チャンネル方向とスライス方向との2方向に関して二次元状に配列してもよい。すなわち、二次元状の配列は、上記チャンネル方向に沿って一次元状に配列された複数のチャンネルを、スライス方向に関して複数列並べて構成してもよい。
【0022】
DAS25は、X線検出器24の各チャンネルの電流信号を電圧に変換するIV変換器と、この電圧信号をX線の曝射周期に同期して周期的に積分する積分器と、この積分器の出力信号を増幅するアンプと、このアンプの出力信号をディジタル信号変換するアナログ・ディジタル・コンバータとを、チャンネル毎に取り付けている。DAS25は、出力したデータ(純生データ(pure raw data))を磁気送受信又は光送受信を用いた非接触データ伝送回路26を経由して、CTコンソール3に伝送する。
【0023】
搬送装置27は、モータを有し、複数の寝台4,7の各々に対して架台2を搬送可能な装置である。搬送装置27は、例えば、検査室に設けられる搬送用レールL1_2を用いて、架台2を複数の検査室R1,R2間で搬送可能としている。搬送装置27は、検査室R1に架台2を搬送する場合には、架台2の正面側と寝台4とが正対する向きに架台2を配置する。搬送装置27は、検査室R2に架台2を搬送する場合には架台2の背面側と寝台7とが正対する向きに架台2を配置する。このような搬送装置27は、架台2の向きを略一定にして搬送してもよい。すなわち、検査室R1に配置した架台2の向きと、検査室R2に配置した架台2の向きとが略同一であればよく、搬送中の架台2の向きは略一定でなくてもよい。
【0024】
操作部28aは、操作者による操作パネルPL,PRの操作に応じて、各種の移動指示を発生し、発生中の移動指示を架台制御回路28に入力する。各種の移動指示としては、例えば、チルト移動指示(チルト移動を指示する指示信号)や、ある方向に移動する移動指示(架台2と寝台4(又は7)との相対的移動を指示する指示信号)などがある。このような操作部28aは、チルト移動の方向の正負表示、及びチルト移動の移動量の正負表示を備えている。このような操作部28aは、これらチルト移動に関する正負表示のうち、少なくとも一つの表示が架台制御回路28により切り替え制御される。同様に、操作部28aは、架台2と寝台4(又は7)との相対的移動の方向の正負表示、及び当該相対的移動の移動量の正負表示を備えている。このような操作部28aは、これら相対的移動に関する正負表示のうち、少なくとも一つの表示が架台制御回路28により切り替え制御される。なお、方向の正負表示は、例えば、方向の正逆表示と呼んでもよい。操作部28aの各操作パネルPL,PRは、互いに同一構成のため、ここでは左側の操作パネルPLを例に挙げて説明する。
【0025】
図4は、検査室R1,R2における操作パネルPLを説明するための模式図であり、図5は、検査室R1,R2間で、架台と寝台との間の接近方向・離反方向と、架台のチルト方向とがそれぞれ逆向きになることを示す模式図である。例えば、検査室R1における寝台4の接近方向(紙面右方向)は、検査室R2における寝台7の離反方向(紙面右方向)に相当する。また、検査室R1における寝台4の離反方向(紙面左方向)は、検査室R2における寝台7の接近方向(紙面左方向)に相当する。
【0026】
同様に、検査室R1における架台2の接近方向(紙面左方向)は、検査室R2における架台2の離反方向(紙面左方向)に相当する。また、検査室R1における架台2の離反方向(紙面右方向)は、検査室R2における架台2の接近方向(紙面右方向)に相当する。
【0027】
また同様に、検査室R1における架台2の上昇チルト方向(紙面時計回り方向)は、検査室R2における架台2の下降チルト方向(紙面時計回り方向)に相当する。また、検査室R1における架台2の下降チルト方向(紙面反時計回り方向)は、検査室R2における架台2の上昇チルト方向(紙面反時計回り方向)に相当する。
【0028】
ここで、操作パネルPLは、上述した検査室R1,R2間での方向の違いに起因してUI表示に不整合を生じないように、架台制御回路28から表示制御されている。具体的には、操作パネルPLの各ボタンは、天板及び架台の絵文字(pictogram)を有し、様々なパターンに対応できるハードウェアとして実装される。各ボタン近傍には、互いに逆向きの1組又は2組の矢印形状のランプが配置される。この1組又は2組のランプのうち、いずれかを表示(点灯)することにより、表示した矢印近傍に位置する天板又は架台のピクト(pictogram)によって移動対象を表し、表示した矢印の向きによって移動方向を表している。
【0029】
このような操作パネルPLは、不整合を阻止する観点から、ボタンの解釈と、表示する矢印の向きとのうちの少なくとも一方が切り替え制御される。例えば、同一の移動対象で移動方向が不整合となる場合、ボタン操作と移動方向との不整合を阻止する観点から、ボタンの解釈を切り替えれば、不整合を生じるボタンが押し操作されても、ボタンの解釈の変更により、不整合を生じない。あるいは、表示する矢印の向きを切り替えれば、矢印の案内に従って、不整合を生じないボタンが押し操作されるので、不整合を生じない。また、異なる移動対象で移動方向が不整合となる場合には、移動対象のピクトの近傍に矢印の表示位置を切り替えることに加え、前述同様に移動方向に応じて、ボタンの解釈又は矢印の向きを切り替えればよい。
【0030】
操作パネルPLは、それぞれチルト方向を示す矢印が近傍に表示された第1及び第2チルト移動ボタンbt1,bt2と、チルト移動量の正負表示部(図中、±0°)とを備えている。ここで、矢印の表示は、例えば、ボタン毎に配置された互いに逆向きの2つの矢印形状のランプのうち、一方のランプを点灯したことを意味している。チルト移動量の正負表示部は、例えば、架台2の開口部を寝台に対して上方に傾ける移動量が正に表示され、下方に傾ける移動量が負に表示される。また、操作パネルPLは、第1及び第2移動ボタンbc1,bc2、紙面左向き矢印形状の天板離反ランプTF、紙面右向き矢印形状の天板接近ランプTN、紙面右向き矢印形状の架台接近ランプGN、紙面左向き矢印形状の架台離反ランプGF、移動方向の移動量の正負表示部(図中、±0mm)を備えている。移動方向の移動量の正負表示部は、例えば、寝台と架台とが接近する方向の移動量が正に表示され、離反する方向の移動量が負に表示される。また、操作パネルPLは、天板上昇ボタンbc3及び天板下降ボタンbc4を備えている。
【0031】
検査室R1,R2において、第1及び第2チルト移動ボタンbt1,bt2は共通であるが、各ボタンbt1,bt2近傍に表示された基準方向の矢印は消去(消灯)され、逆方向の矢印が表示(点灯)されている。
【0032】
すなわち、検査室R1において、第1チルト移動ボタンbt1は、操作者の押し操作により、架台2の開口部を寝台に対して上方に傾けるチルト移動指示を架台制御回路28に入力する。第2チルト移動ボタンbt2は、操作者の押し操作により、架台2の開口部を寝台に対して下方に傾けるチルト移動指示を架台制御回路28に入力する。
【0033】
検査室R2において、第1チルト移動ボタンbt1は、操作者の押し操作により、架台2の開口部を寝台に対して下方に傾けるチルト移動指示を架台制御回路28に入力する。第2チルト移動ボタンbt2は、操作者の押し操作により、架台2の開口部を寝台に対して上方に傾けるチルト移動指示を架台制御回路28に入力する。
【0034】
検査室R1においては、X線CTにおける天板スライド制御が実行されるため、架台制御回路28の制御により、第1移動ボタンbc1近傍に天板離反ランプTFが表示(点灯)され、第2移動ボタンbc2近傍に天板接近ランプTNが表示(点灯)される。このとき、第1移動ボタンbc1は、操作者の押し操作により、架台2に対して天板を離反させる方向に移動する移動指示を架台制御回路28に入力する。第2移動ボタンbc2は、操作者の押し操作により、架台2に対して天板を接近させる方向に移動する移動指示を架台制御回路28に入力する。
【0035】
検査室R2においては、X線アンギオCTにおける架台自走制御が実行されるため、架台制御回路28の制御により、第1移動ボタンbc1近傍に架台接近ランプGNが表示(点灯)され、第2移動ボタンbc2近傍に架台離反ランプGFが表示(点灯)される。このとき、第1移動ボタンbc1は、操作者の押し操作により、寝台に対して架台2を接近させる方向に移動する移動指示を架台制御回路28に入力する。第2移動ボタンbc2は、操作者の押し操作により、寝台に対して架台2を離反させる方向に移動する移動指示を架台制御回路28に入力する。
【0036】
検査室R1,R2において、天板上昇ボタンbc3及び天板下降ボタンbc4は共通である。
【0037】
架台制御回路28は、CTコンソール3から出力される制御信号、センサs1_2,s1_1,s2_2の出力信号、操作部28aから入力される移動指示に応じて、管電圧発生装置22、搬送装置27、操作部28a及び回転駆動装置30等を制御する。架台制御回路28は、ハードウェア資源として、CPUやMPU等の処理装置(プロセッサ)とROMやRAM等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御回路28は、ASICやFPGA、CPLD、SPLD等により実現されても良い。当該処理装置は、当該記憶装置に保存されたプログラムを読み出して実現することで上記機能を実現する。なお、当該記憶装置にプログラムを保存する代わりに、当該処理装置の回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、当該処理装置は、当該回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記機能を実現する。
【0038】
ここで、センサs1_2は、各々の寝台4,7の間に配置され、搬送中の架台2を検出する。この例では、センサs1_2は、検査室R1,R2の境界に配置され、図6に示すように、検査室R1から検査室R2に向けて搬送中の架台2を検出すると、出力信号“0”に代えて、出力信号“1”を架台制御回路28に送信している。架台制御回路28は、この出力信号の値“1”をセンサ情報としてメモリに保持する。この保持したセンサ情報は、後述する制御情報の読み出しに用いられる。
【0039】
メモリは、予めセンサ情報に対して想定されるシステム組合せを対応させたテーブルを記憶してもよく、例えば、架台2の搬送先、搬送後の架台2の向き、架台2又は天板の移動方向及び架台2のチルト方向を関連付けて記憶してもよい。例えば、メモリは、図7に示すように、センサs1_2の出力信号の値を示すセンサ情報、寝台に対する架台2の向き、寝台、検査室、及び制御情報を関連付けて記憶してもよい。このとき、上記保持したセンサ情報に基づいて、予めセンサ情報に関連付けられた架台2の向き、寝台、検査室及び制御情報が読み出し可能となる。制御情報は、センサ情報“0”に対応する検査室R1の場合、基準方向の天板スライド制御と、基準方向のチルト移動制御とを示している。また、制御情報は、センサ情報“1”に対応する検査室R2の場合、逆方向の架台自走制御と、逆方向のチルト移動制御とを示している。なお、この例では、検査室R1,R2に基準方向及び逆方向を関連付けたが、これに限らず、検査室R1,R2に逆方向及び基準方向を関連付けてもよい。また、CT寝台に天板スライド制御を関連付けたが、これに限らず、CT寝台に架台自走制御を関連付けてもよい。同様に、アンギオ寝台に架台自走制御を関連付けたが、これに限らず、アンギオ寝台に天板スライド制御を関連付けてもよい。また、メモリは、必ずしも図7に示した全ての情報を関連付けて記憶する必要はない。例えば、チルト移動の方向を制御したい場合、メモリは、架台2が配置される部屋と、チルト移動の方向とを関連付けて記憶しておけばよい。あるいは、メモリは、相対的移動を制御したい場合、架台2が配置される部屋と、相対的移動の方向とを関連付けて記憶しておけばよい。すなわち、メモリは、架台2の搬送先と、制御情報とを関連付けて記憶しておけばよい。この搬送先としては、検査室及び寝台のいずれを用いてもよい。また、メモリは、センサ情報と、制御情報とを関連付けて記憶しておけばよい。
【0040】
メモリは、外部から架台制御プログラムがインストールされる場合には、当該架台制御プログラムを記憶する。架台制御プログラムは、例えば、架台2が有するコンピュータとしての架台制御回路28に、以下の各制御機能(f1),(f2)を実現させるためのプログラムである。なお、各制御機能(f1),(f2)は、切り替え機能(sc)のように実現してもよい。
【0041】
(f1)操作部28aによるチルト移動指示(チルト移動を指示する指示信号)の発生中、架台2が配置された部屋に応じて架台2のチルト移動の方向を制御する第1の制御機能。なお、第1の制御機能f1は、例えば、メモリの記憶内容に基づき、チルト移動の方向を制御してもよい。また、第1の制御機能f1は、例えば、センサs1_2の検出結果をトリガとして、架台2が搬送された部屋に対応するチルト移動の方向を切り替え、指示信号の発生中、切り替えた方向に基づいて、架台のチルト移動の方向を制御してもよい。
【0042】
(f2)操作部28aによる、ある方向への移動指示(相対的移動を指示する指示信号)の発生中、架台2が配置された部屋に応じて架台2と寝台4(又は7)との相対的移動の方向を制御する第2の制御機能。なお、架台2と寝台4(又は7)との相対的移動に関し、寝台4を天板T1と読み替えてもよく、寝台7を天板T2と読み替えてもよい。また、第2の制御機能f2は、例えば、メモリの記憶内容に基づき、相対的移動の方向を制御してもよい。また、第2の制御機能f2は、センサs1_2の検出結果をトリガとして、架台2が搬送された部屋に対応する相対的移動の方向を切り替え、指示信号の発生中、当該切り替えた方向に基づいて、相対的移動の方向を制御してもよい。
【0043】
(sc)架台2の搬送中に、架台2の搬送先及び搬送後の架台2の向きに応じて、搬送後の架台2又は天板T1の移動方向と、当該移動方向の表示とのうちの少なくとも一方を切り替え制御する切り替え機能。切り替え機能scは架台制御回路28にある場合、例えば、同一の制御信号(例、図5の正面方向への移動指示)をコンソールから受けたとしても、架台2の搬送先及び搬送後の架台2の向きに応じて、移動方向を正面方向又は背面方向に切り替える機能として実現してもよい。すなわち、切り替え機能scは、受信した制御信号を解釈し、不整合を生じさせる制御信号の場合には、不整合を生じさせない制御信号に変換して搬送装置27に出力する解釈機能として実現してもよい。また、切り替え機能scは、予め不整合を生じさせない制御信号が入力されるように移動方向の表示を切り替える表示切り替え機能として実現してもよい。また、切り替え機能scは、解釈機能又は表示切り替え機能に加え、移動対象に応じて、移動方向の表示位置を切り替える機能として実現してもよい。切り替え機能scは、前述したメモリの記憶内容(搬送先、架台の向き及び移動方向)に基づき、切り替え制御を実行してもよい。切り替え機能scは、搬送後の架台2の向きに応じて、搬送後の架台2のチルト方向を切り替え制御してもよい。切り替え機能scは、前述したメモリの記憶内容(搬送先、架台の向き、移動方向及びチルト方向)に基づき、架台2のチルト方向を切り替え制御を実行してもよい。切り替え機能scは、センサs1_2の検出結果(例、出力信号“0”から“1”への変化)をトリガとして、切り替え制御を実行してもよい。
【0044】
また、切り替え機能scは、前述した操作パネルPL,PRの表示内容を切り替え制御する際に、移動方向の移動量の正負表示、チルト方向の表示、及びチルト方向の移動量の正負表示、のいずれかの表示を切り替え制御してもよい。また、前述した通り、切り替え機能scは、移動方向の表示を切り替えてもよい。このように、切り替え機能scは、操作部28aに備えられたチルト移動の方向の正負表示、及びチルト移動の移動量の正負表示のうち、少なくとも一つの表示を、架台2が配置された部屋に応じて切り替え制御してもよい。同様に、切り替え機能scは、操作部28aに備えられた相対的移動の方向の正負表示、及び当該相対的移動の移動量の正負表示のうち、少なくとも一つの表示を、架台2が配置された部屋に応じて切り替え制御してもよい。
【0045】
なお、図8に示すように、切り替え機能scは、前述した架台2内に限らず、CTコンソール3のシステム制御回路37内、X線コンソール6のシステム制御回路66内、又は架台2とコンソール3,6との間に配置された装置内というように、コンソール3,6内から架台2内に伝送される制御信号の経路上であれば、任意の場所に配置可能である。また、架台2とコンソールとの間に配置された装置内に切り替え機能scを実装する場合、複数台の装置ではなく、複数ルームソリューションを統括する1台の装置に実装してもよい。これに加え、この切り替え機能scは、コンピュータに当該機能を実現させるためのプログラムとして実装してもよく、当該機能を実行するハードウェアの制御回路として架台又はコンソールに実装してもよい。以上の切り替え機能scの配置や実装に関する説明は、各制御機能f1,f2、並びに以下の各実施形態でも同様である。
【0046】
CTコンソール3は、前処理回路31、再構成回路32、入力インターフェース(I/F)回路33、通信インターフェース(I/F)回路34、ディスプレイ35、記憶回路36及びシステム制御回路37を備える。
【0047】
前処理回路31は、非接触データ伝送回路26から出力された純生データに対して前処理を施す。前処理には、例えば、純生データに対する対数変換処理、チャンネル間の感度不均一補正処理、X線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正する処理等が含まれる。前処理回路31は、前処理を施した再構成処理直前のデータ(生データ(raw data)又は、投影データと称される、ここでは投影データという)を、データ収集したときにビュー角を表すデータと関連付けて、再構成回路32及び記憶回路36へ伝送する。なお、前処理を施した再構成処理直前のデータは、生データ(raw data)又は投影データと称される。本実施形態では、再構成処理直前のデータを投影データという。
【0048】
ここで、投影データとは、被検体Pを透過したX線の強度に応じたデータ値の集合である。ここでは説明の便宜上、ワンショットで略同時に収集したビュー角が同一である全チャンネルにわたる一揃いの投影データを、投影データセットと称する。また、ビュー角は、X線管23が回転軸を中心として周回する円軌道の各位置を、回転軸から鉛直上向きにおける円軌道の最上部を0°として360°の範囲の角度で表したものである。なお、投影データセットの各チャンネルに対する投影データは、ビュー角、コーン角、チャンネル番号によって識別される。
【0049】
再構成回路32は、例えば、前処理回路31から伝送された、ビュー角が360°又は180°+ファン角の範囲内の投影データセットに基づいて、フェルドカンプ法又はコーンビーム再構成法により、略円柱形のボリュームデータを再構成するものである。再構成回路32は、例えば、メモリと所定のプロセッサによって実現される。また、再構成回路32は、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、フィルタ補正逆投影法(FBP:Filtered Back Projection)又は逐次近似再構成法等により、上記投影データセットから2次元CT画像(断層画像、以降、単にCT画像という)を再構成する。フェルドカンプ法は、コーンビームのように再構成面に対して投影レイが交差する場合の再構成法であり、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法である。コーンビーム再構成法は、フェルドカンプ法よりもコーン角のエラーが抑えられる方法として、再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正する再構成法である。再構成回路32は、再構成されたボリュームデータを記憶回路36へ伝送する。再構成回路32は、再構成されたCT画像を記憶回路36へ伝送する。
【0050】
入力インターフェース回路33は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インターフェース回路33は、システム制御回路37に接続されている。入力インターフェース回路33は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換しシステム制御回路37へ出力する。なお、本実施形態において、入力インターフェース回路33は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御回路37へ出力する電気信号の処理回路も、入力インターフェース回路33の例に含まれる。
【0051】
通信インターフェース回路34は、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、例えば、モダリティ、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)及びPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等である。
【0052】
ディスプレイ35は、システム制御回路37による制御に従い、種々のデータ、上記CT画像及び上記3次元画像等を表示機器に表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイ(Cathode Ray Tube Display)、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜、利用可能である。
【0053】
記憶回路36は、比較的大容量のデータを記憶可能なHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等である。記憶回路36は、再構成回路32により再構成されたCT画像を記憶する。記憶回路36は、前処理回路31から伝送された投影データ及び再構成回路32で再構成されたボリュームデータを記憶する。記憶回路は、管電圧をX線管23に印加するタイミングを制御する制御プログラムを記憶する。
【0054】
なお、記憶回路36は、HDD等の磁気ディスク以外にも、光磁気ディスクやCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクを利用してもよい。また、記憶回路36の保存領域は、X線CTシステム1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0055】
システム制御回路37は、ハードウェア資源として、上記の処理装置と記憶装置とを有する。システム制御回路37は、X線CT装置の中枢として機能する。具体的には、システム制御回路37は、主記憶回路59に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置の各部を制御する。
【0056】
次に、X線アンギオCT装置について説明する。図3に示すように、X線アンギオCT装置は、X線CT装置と共有する架台2、X線撮影装置5、X線コンソール6、及び寝台7を備える。
【0057】
X線撮影装置5は、管電圧発生装置51、X線管52、X線検出器53、支持機構54、駆動装置55及び撮影制御回路56を備える。
【0058】
管電圧発生装置51は、X線管52に供給する管電流と、X線管52に印加する管電圧とを発生する。管電圧発生装置51は、撮影制御回路56を介したX線コンソール6による制御の下で、X線撮影条件に従って、管電流をX線管52に供給し、管電圧をX線管52に印加する。
【0059】
X線管52は、管電圧発生装置51から供給された管電流と、管電圧発生装置51により印加された管電圧とに基づいて、X線焦点においてX線を発生する。X線焦点から発生されたX線は、X線管52の前面に設けられたX線放射窓を介して、被検体Pに照射される。
【0060】
X線検出器53は、X線管52から発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示しないアナログディジタル変換器(ADC:Analog to Digital Convertor)に出力される。ADCは、電気信号をディジタルデータに変換する。ADCは、ディジタルデータを画像発生回路61に出力する。なお、X線検出器53として、イメージインテンシファイア(Image-intensifier)が用いられてもよい。
【0061】
支持機構54は、X線管52とX線検出器53とを移動可能に支持する。具体的には、支持機構54は、例えば図示しないCアームとCアーム支持部とを有する。Cアームは、X線管52とX線検出器53とを、互いに向き合うように搭載する。Cアーム支持部は、CアームのC形状に沿う方向(以下、C方向と呼称する)に、Cアームをスライド可能に支持する。また、Cアーム支持部は、天井に設けられたレールL2_2に沿って移動可能に設置される。レールL2_2は、例えば、天板T2の長軸方向とは直交する方向に沿って天井に設けられる。Cアーム支持部は、CアームとCアーム支持部とを接続する接続部を略中心として、C方向に直交する方向(以下、C直交方向と呼称する)に回転可能にCアームを支持する。なお、Cアーム支持部は、天板T2の短軸方向と長軸方向とに平行して移動可能にCアームを支持することも可能である。また、Cアームは、X線焦点とX線検出器53との距離(線源受像面間距離(SID:Source Image Distance)を変更可能に、X線管52とX線検出器53とを支持する。
【0062】
なお、支持機構54は、Cアームによる構造に限定されない。支持機構54は、例えば、X線管52、X線検出器53をそれぞれ支持する2つのアーム(例えば、ロボットアーム等)により、任意の方向に移動可能に支持されてもよい。また、支持機構54は、Cアームの代わりに天井からつり下げられたΩアームであってもよい。また、支持機構54は、バイプレーン構造を有していてもよい。また、支持機構54は、オーバーチューブ方式(Over tube system)及びアンダーチューブ方式(under tube system)等に限定されず、任意の形態に適用可能である。
【0063】
駆動装置55は、X線コンソール6の制御の下で寝台7及び支持機構54を駆動する。具体的には、駆動装置55は、システム制御回路66からの制御信号に応じた駆動信号をCアーム支持部に供給して、CアームをC方向にスライド、C直交方向に回転させる。X線撮影時においては、X線管52とX線検出器53との間に、天板T2に載置された被検体Pが配置される。
【0064】
駆動装置55は、システム制御回路66の制御の下で、寝台7を駆動することにより、天板T2を移動させる。具体的には、駆動装置55は、システム制御回路66の制御信号に基づいて、天板T2の短軸方向又は長軸方向に、天板T2をスライドさせる。また、駆動装置55は、鉛直方向に関して、天板を昇降する。加えて、駆動装置55は、長軸方向と短軸方向とのうち、少なくとも一つの方向を回転軸として、天板T2を傾けるために天板T2を回転してもよい。
【0065】
撮影制御回路56は、操作者の指示、X線撮影方向、X線照射範囲、X線照射条件等に基づくシステム制御回路66からの制御に従って、管電圧発生装置51、X線検出器53、駆動装置55等を制御する。
【0066】
X線コンソール6は、画像発生回路61、入力インターフェース回路62、通信インターフェース回路63、ディスプレイ64、記憶回路65及びシステム制御回路66を備える。
【0067】
画像発生回路61は、X線検出器53から出力されたディジタルデータに対して前処理を施す。前処理とは、例えば、X線検出器53におけるチャンネル間の感度不均一の補正、及び金属等のX線強吸収体による極端な信号強度の低下又はデータの脱落に関する補正等である。画像発生回路61は、前処理されたディジタルデータに基づいて、X線画像を発生する。画像発生回路61は、発生したX線画像を、ディスプレイ64及び記憶回路65に出力する。
【0068】
入力インターフェース回路62は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インターフェース回路62は、システム制御回路66に接続されている。入力インターフェース回路62は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換しシステム制御回路66へ出力する。なお、本実施形態において、入力インターフェース回路62は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御回路66へ出力する電気信号の処理回路も、入力インターフェース回路62の例に含まれる。
【0069】
通信インターフェース回路63は、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、例えば、モダリティ、放射線部門情報管理システム(RIS)、病院情報システム(HIS)及びPACS等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等である。
【0070】
ディスプレイ64は、システム制御回路66による制御に従い、種々のデータ、上記X線画像等を表示機器に表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、プラズマディスプレイ又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜、利用可能である。
【0071】
記憶回路65は、画像発生回路61で発生されたX線画像、X線撮影装置5の制御プログラム、診断プロトコル、入力インターフェース回路62から入力された操作者の指示、X線撮影に関する撮影条件及び透視条件等の各種データ群、X線線量等を記憶する。
【0072】
システム制御回路66は、図示しないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。システム制御回路66は、入力インターフェース回路62から送られてくる操作者の指示、X線撮影位置、X線管52によるX線撮影方向、X線照射範囲、X線照射条件等の情報を、図示しないメモリに一時的に記憶する。システム制御回路66は、メモリに記憶された操作者の指示、X線撮影方向、X線照射範囲、X線照射条件等に従って、X線撮影を実行するために、撮影制御回路56を介して管電圧発生装置51、X線検出器53、駆動装置55等を制御する。また、システム制御回路66は、ディスプレイ64等を制御する。
【0073】
次に、以上のように構成されたX線CTシステムの動作について図9のフローチャートを用いて説明する。以下の説明は、主にCT検査前の架台2の移動について述べる。このことは、以下の各実施形態でも同様である。
【0074】
始めに、2ルームソリューションの検査室R1,R2のうち、基準となる検査室R1に架台2が配置されているとする。このとき、架台2を検査室R1の寝台4から検査室R2の寝台7に移動させるとする。
【0075】
検査室R1のCTコンソール3では、操作者の操作に応じて、システム制御回路66が架台移動要求を架台2に送出する(ステップST1)。
【0076】
架台2では、この架台移動要求に基づいて、架台制御回路28が搬送装置27を制御する。搬送装置27は、架台制御回路28からの制御により、架台2の搬送を開始する。これにより、架台2が移動する(ステップST2)。搬送装置27による架台の搬送中、架台制御回路28は、コンソール3,6及び操作パネルPL,PRからの操作者の操作を禁止する(ステップST3)。但し、ステップST3で禁止される操作は、架台2を用いたCT検査に関する操作であり、架台2の搬送又は停止に関する操作ではない。例えば、架台2の搬送を緊急停止させるための操作は禁止されない。また、架台2の搬送中、コンソール3,6又はユーザナビゲーションシステム(図示せず)上に、移動中の警告画面表示や警告音などを出力し、操作者に通知することが好ましい。なお、検査室R1,R2内の安全が確保されている場合(例、不要被ばくがなく、架台との接触事故の可能性も場合)は、コンソール3,6からの動作制御を操作者により解除しても良い。この間、管球ウォームアップ、キャリブレーション、架台ローテーションなどを実施し、検査スループットを向上させるようにしてもよい。また、検査スループットを向上させるため、各寝台4,7は、被検体セット用の機能(寝台上下動限定)のように、架台2の移動に応じた移動方向の切り替え制御が不要な機能については、単独使用を可能としてもよい。
【0077】
続いて、架台制御回路28は、検査室R1,R2間のセンサs1_2の出力信号に基づくセンサ情報が更新されたか否かを判定し(ステップST4)、否の場合には、移動の制限時間内か否かを判定する(ステップST5)。制限時間内であれば、ステップST2〜ST4の処理を継続する。制限時間外であれば、エラーを検出し(ステップST6)、例えば、CTコンソール3からの設定によりセンサ情報を更新して(ステップST7)、ステップST1からの処理を再実行する。なお、ステップST4は、センサs1_2の検出結果をトリガとして、センサ情報の更新を検出する処理としてもよい。
【0078】
一方、ステップST4の判定の結果、センサ情報が更新されると、架台制御回路28は、更新後のセンサ情報及びメモリの記憶内容に基づいて、搬送後の移動制御及びUI表示の切り替え制御を実行する(ステップST8)。この場合、検査室R1における移動制御及びUI表示は、検査室R2における移動制御及びUI表示に切り替えられる。具体的には、例えば図7に示すように、基準方向の天板スライド制御が逆方向の架台自走制御に切り替えられると共に、基準方向のチルト移動制御が逆方向のチルト移動制御に切り替えられる。これに伴い、例えば図4に示すように、検査室R1におけるUI表示は、検査室R2におけるUI表示に切り替えられる。図4中、チルト移動量の正負表示部は、±0°であるが、検査室R2において、第1チルト移動ボタンbt1の押し操作によりチルト移動量が負(−)表示され、第2チルト移動ボタンbt2の押し操作によりチルト移動量が正(+)表示されるように切り替えられている。同様に、移動方向の移動量の正負表示部は、±0mmであるが、検査室R2において、第1移動ボタンbc1の押し操作により架台移動量が正(+)表示され、第2移動ボタンbc2の押し操作により架台移動量が負(−)表示されるように切り替えられている。なお、このステップST8は、センサs1_2の検出結果をトリガとして、実行してもよい。また、ステップST8は、架台2の搬送中に代えて、架台2の搬送後に実行してもよい。いずれにしても架台2の搬送後、架台2が配置された部屋に応じて、UI表示を切り替えた状態であればよい。
【0079】
続いて、架台制御回路28は、搬送先の初期位置へ移動するように搬送装置27を制御する。搬送装置27は、架台制御回路28からの制御により、架台2を初期位置へ移動させる(ステップST9)。
【0080】
一方、検査室R2のX線コンソール6では、システム制御回路66が、初期位置検出用のセンサs2_2からの出力信号に基づいて、架台2が初期位置に到着したか否かを判定し(ステップST10)、否の場合には、移動の制限時間内か否かを判定する(ステップST11)。制限時間内であれば、ステップST9〜ST11の処理を継続する。制限時間外であれば、ステップST6に戻る。なお、ステップST10の判定は、架台制御回路28が実行してもよい。
【0081】
また、ステップST10の判定の結果、架台2が初期位置に到着した場合には、X線コンソール6では、システム制御回路66が、架台移動完了を架台2に通知する(ステップST12)。これにより、架台2では、架台制御回路28が搬送装置27を停止させる。
【0082】
しかる後、架台制御回路28は、現在位置のIDを確認する(ステップST13)。具体的には、架台制御回路28は、検査室IDとしてメモリに保持するセンサ情報と、検査室R2のX線コンソール6から受けた検査室IDとが一致するか否かを判定する(ステップST14)。否の場合には、エラーを検出し(ステップST15)、現在位置を再取得するため、例えば、架台2がセンサs1_2を踏み直してセンサ情報を更新する(ステップST16)。しかる後、ステップST1からの処理が再実行される。あるいは、ステップST15でエラーを検出した場合、例えば、正しい初期位置に到着しており、安全が確保されているといった条件によっては、X線コンソール6から操作者の操作による強制エラーリセット(強制設定)を実行し、ステップST18に進んでもよい。
【0083】
一方、ステップST14の判定の結果、両者が一致した場合、架台制御回路28は、操作パネルPL,PR及びX線コンソール6からの操作者の操作を許可する(ステップST18)。このとき、架台制御回路28は、この操作の許可を含む移動報告メッセージをX線コンソール6に出力することにより、X線コンソール6のディスプレイ64から表示出力するようにしてもよい。
【0084】
検査室R2では、操作者によるX線コンソール6及び操作パネルPL,PRの操作により、架台2を用いたX線アンギオCT装置による被検体Pの検査が実施可能となる。例えば、架台制御回路28は、操作部28aによるチルト移動指示の発生中、架台2が配置された検査室R2に応じて、架台2のチルト移動の方向を制御する。あるいは、架台制御回路28は、操作部28aによる、架台2又は寝台7に対するある方向への移動指示の発生中、架台2が配置された検査室R2に応じて、架台2と寝台7との相対的移動の方向を制御する。
【0085】
また、検査室R2での検査の後、検査室R2から検査室R1に架台2を移動させる場合についても、適宜、検査室R1,R2間の対応する構成要素を読み替えることにより、ステップST1〜ST18の処理を同様に実行できることが分かる。また、検査室R1でも同様に、架台制御回路28は、操作部28aによる移動指示の発生中、架台2が配置された検査室R1に応じて、チルト移動の方向や相対的移動の方向を制御することができる。
【0086】
上述したように本実施形態によれば、操作部による指示信号の発生中、架台が配置された部屋に応じて架台のチルト移動の方向を制御する。あるいは、操作部による指示信号の発生中、架台が配置された部屋に応じて架台と第1の寝台又は第2の寝台との相対的移動の方向を制御する。従って、架台の操作部に対する誤動作を阻止することができる。
【0087】
このとき、操作部に備えられたチルト移動の方向の正負表示、及びチルト移動の移動量の正負表示のうち、少なくとも一つの表示を、架台が配置された部屋に応じて切り替え制御してもよい。あるいは、操作部に備えられた相対的移動の方向の正負表示、及び相対的移動の移動量の正負表示のうち、少なくとも一つの表示を、架台が配置された部屋に応じて切り替え制御してもよい。これにより、架台のUI表示における不整合を阻止することができる。
【0088】
また、架台検出器の検出結果をトリガとして、架台が搬送された部屋に対応するチルト移動の方向を切り替え、指示信号の発生中、当該切り替えた方向に基づいて、架台のチルト移動の方向を制御してもよい。あるいは、架台検出器の検出結果をトリガとして、架台が搬送された部屋に対応する上記相対的移動の方向を切り替え、指示信号の発生中、切り替えた方向に基づいて、相対的移動の方向を制御してもよい。これにより、架台の移動制御における不整合を阻止することができる。
【0089】
補足すると、従来は、複数ルームソリューションにおける架台の移動制御や操作パネルのUI表示が固定である。これに対し、本実施形態では、移動制御やUI表示を複数パターン用意し、架台の搬送先や搬送後の架台の向きに応じて各パターンを切り替えるようにしたので、共有する架台と、複数のシステム組合せや寝台位置との不整合を解消することができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、センサ情報から自動的に制御を切り替え、操作者に対して移動報告を明示できるため、操作者が違和感なく安全に架台を扱うことができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、架台制御回路28のメモリが、架台2が配置される部屋と、チルト移動の方向とを関連付けて記憶し、架台が配置される部屋と、相対的移動の方向とを関連付けて記憶する。これにより、架台制御回路28がメモリの記憶内容に基づき、チルト移動の方向や相対的移動の方向を制御するので、切り替え制御の内容をメモリに容易に設定することができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、切り替え制御を実行する切り替え機能scが架台2に配置される場合、X線CTシステムの切り替え機能scを一カ所に集約することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、切り替え機能scが各々のコンソールに配置される場合、切り替え制御に関するコンソールの構成を共通化することができる。補足すると、架台2の向き等に応じて、各コンソールに特化した別々の切り替え機能scを各コンソールに搭載するのではなく、共通の切り替え機能scを各コンソールに搭載する。従って、切り替え制御に関するコンソールの構成を共通化することができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、搬送先に向けて架台2を搬送中であることをセンサ等の架台検出器が検出し、切り替え機能scがこの検出結果をトリガとして、切り替え制御を実行するので、切り替え制御のトリガを生じさせる架台2の位置を容易に設定することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、複数のセンサがそれぞれ各々の寝台の間に配置され、搬送中の架台2を検出するので、各々の寝台が別々の検査室にあるか同一の検査室にあるかによらず、切り替え制御のトリガを生じさせる架台2の位置を容易に設定することができる。
【0096】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態に係るX線CTシステムを4ルームソリューションに適用した場合のレイアウト構成を示す模式図であり、図11は、図10のX線CTシステムのネットワーク構成を示す模式図であって、前述した各図と略同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは異なる部分について主に述べる。以下の各実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
【0097】
すなわち、第2の実施形態は、第1の実施形態の2ルームソリューションに適用した構成を、4ルームソリューションに適用した構成に変形したものである。これに伴い、2部屋の検査室R1,R2が、4部屋の第1乃至第4検査室R1〜R4に拡張されている。詳しくは、第1の実施形態の検査室R1,R2は、それぞれ第2の実施形態の第1検査室(A)R1及び第4検査室(D)R4に対応する。第2検査室(B)R2及び第3検査室(C)R3は、新たに付加されている。第1乃至第4検査室R1〜R4は、例えば、略十字形の隔壁を介して分割された4つの部屋であり、第1検査室R1を基準にして、上方から見て反時計回り方向に、第2検査室R2、第3検査室R3及び第4検査室R4が順次、配置されている。但し、4部屋の配置は、これに限らず、上から見て略L字形や略T字形の配置など、任意の配置が適用可能となっている。
【0098】
ここで図10に示すように、第1検査室(A)R1は、架台2を共有するX線CT装置として、CTコンソール3A、寝台4A及び初期位置検出用のセンサs1_1が配置されている。CTコンソール3A、寝台4A及びセンサs1_1は、図3に示したCTコンソール3、寝台4及びセンサs1_1と同様の構成である。
【0099】
第2検査室(B)R2は、架台2を共有するX線アンギオCT装置として、X線撮影装置5B、X線コンソール6B、寝台7B、初期位置検出用のセンサs2_2、及び天井に設けられたレールL2_2が配置されている。X線撮影装置5B、X線コンソール6B、寝台7B、センサs2_2及びレールL2_2は、図2及び図3に示したX線撮影装置5、X線コンソール6、寝台7、センサs2_2及びレールL2_2と同様の構成である。
【0100】
第3検査室(C)R3は、架台2を共有するX線CT装置として、CTコンソール3C、寝台4C及び初期位置検出用のセンサs3_3が配置されている。CTコンソール3C、寝台4C及びセンサs3_3は、図3に示したCTコンソール3、寝台4及びセンサs1_1と同様の構成である。
【0101】
第4検査室(D)R4は、架台2を共有するX線アンギオCT装置として、X線撮影装置5D、X線コンソール6D、寝台7D、初期位置検出用のセンサs4_4、及び天井に設けられたレールL4_4が配置されている。X線撮影装置5D、X線コンソール6D、寝台7D、センサs4_4及びレールL4_4は、図2及び図3に示したX線撮影装置5、X線コンソール6、寝台7、センサs2_2及びレールL2_2と同様の構成である。
【0102】
第1検査室(A)R1内の寝台4A近傍の初期位置と、第2検査室(B)R2内の寝台7B近傍の初期位置との間には搬送用レールL1_2が敷設されている。第1検査室(A)R1と第2検査室(B)R2との境界には、図示しない開閉扉9及びセンサs1_2が配置されている。架台2は、正面が寝台4Aに対向した状態から、搬送用レール上L1_2上を横方向に搬送される。このため、架台2の正面が寝台7Bに対向する。
【0103】
第2検査室(B)R2内の寝台7B近傍の初期位置と、第3検査室(C)R3内の寝台4C近傍の初期位置との間には搬送用レールL2_3が敷設されている。第2検査室(B)R2と第3検査室(C)R3との境界には、図示しない開閉扉9及びセンサs2_3が配置されている。架台2は、正面が寝台7Bに対向した状態から、搬送用レール上L2_3上を背面方向に搬送される。このため、架台2の背面が寝台4Cに対向する。
【0104】
第3検査室(C)R3内の寝台4C近傍の初期位置と、第4検査室(D)R4内の寝台7D近傍の初期位置との間には搬送用レールL3_4が敷設されている。第3検査室(C)R3と第4検査室(D)R4との境界には、図示しない開閉扉9及びセンサs3_4が配置されている。架台2は、背面が寝台4Cに対向した状態から、搬送用レール上L3_4上を横方向に搬送される。このため、架台2の背面が寝台7Dに対向する。
【0105】
第4検査室(D)R4内の寝台7D近傍の初期位置と、第1検査室(A)R1内の寝台4A近傍の初期位置との間には搬送用レールL4_1が敷設されている。第4検査室(D)R4と第1検査室(A)R1との境界には、図示しない開閉扉9及びセンサs4_1が配置されている。架台2は、背面が寝台7Dに対向した状態から、搬送用レール上L4_1上を正面方向に搬送される。このため、架台2の正面が寝台4Aに対向する。
【0106】
また、図11に示すように、架台2、CTコンソール3A,3C、X線コンソール6B,6D、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1は、例えばCAN通信等により、ネットワークを介して通信可能となっている。
【0107】
CTコンソール3Aは、寝台4A及び初期位置検出用のセンサs1_1に通信可能となっている。X線コンソール6Bは、寝台7B及び初期位置検出用のセンサs2_2に通信可能となっている。CTコンソール3Cは、寝台4C及び初期位置検出用のセンサs3_3に通信可能となっている。X線コンソール6Dは、寝台7D及び初期位置検出用のセンサs4_4に通信可能となっている。なお、これに限らず、寝台4A,7B,4C,7D及び初期位置検出用のセンサs1_1,s2_2,s3_3,s4_4も、例えばCAN通信等により、ネットワークを介して架台2等に通信可能としてもよい。
【0108】
各検査室R1〜R4の境界に配置された4つのセンサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1は、搬送中の架台2を検出すると、図12に示すように、それぞれ出力信号“0”に代えて、出力信号“1”を架台制御回路28に送信する。なお、出力信号“0”と出力信号“1”とは逆にしてもよい。
【0109】
架台制御回路28は、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1からの出力信号の値をセンサ情報としてメモリに保持する。この場合、センサ情報は、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1からの値を各桁に配置した4桁の値(s4_1の値,s3_4の値,s2_3の値,s1_2の値)となる。例えば、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1にセンサ番号を割り当て、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1から出力信号の値とセンサ番号とを架台制御回路28に出力する。架台制御回路28では、出力信号の値とセンサ番号とに基づいて、センサ情報を更新する。これにより、センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1と、センサ情報とを容易に管理可能である。なお、センサ情報内の各桁の配置は一例であり、他の配置にしてもよい。すなわち、複数のセンサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1がオン状態に遷移した順番に基づいて架台2の位置を推定する構成に限らず、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1からの値の組合せに応じて、架台2の位置が推定可能であればよい。また、架台制御回路28は、センサ情報の値が“1111”になると、メモリ内のセンサ情報及び各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1をリセットする。
【0110】
これに加え、架台制御回路28のメモリは、図13に示すように、各センサs1_2〜s4_1の出力信号の値を示すセンサ情報、寝台に対する架台2の向き、寝台、検査室、及び制御情報を関連付けて記憶してもよい。このとき、上記保持したセンサ情報に基づいて、予めセンサ情報に関連付けられた架台2の向き、寝台、検査室及び制御情報が読み出し可能となる。制御情報は、センサ情報“0x0”(=0000)に対応する検査室(A)R1の場合、基準方向の天板スライド制御と、基準方向のチルト移動制御とを示している。また、制御情報は、センサ情報“0x1”(=0001)に対応する検査室(B)R2の場合、基準方向の架台自走制御と、基準方向のチルト移動制御とを示している。また、制御情報は、センサ情報“0x3”(=0011)に対応する検査室(C)R3の場合、逆方向の天板スライド制御と、逆方向のチルト移動制御とを示している。また、制御情報は、センサ情報“0x7”(=0111)に対応する検査室(D)R4の場合、逆方向の架台自走制御と、逆方向のチルト移動制御とを示している。
【0111】
以上のような構成によれば、搬送前に架台2が位置した検査室のコンソールと、架台2と、搬送先の検査室のコンソールとの間で、前述したステップST1〜ST18と同様の動作が実行される。
【0112】
ここで、ステップST1〜ST18のうち、ステップST4,ST8の動作について詳しく述べる。本実施形態のステップST4では、第1の実施形態とは異なり、4つのセンサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1の出力信号の値からなるセンサ情報が更新された否かを判定する。
【0113】
また、ステップST4の判定の結果、このセンサ情報が更新されると、架台制御回路28は、更新後のセンサ情報及びメモリの記憶内容に基づいて、搬送後の移動制御及びUI表示の切り替え制御を実行する(ステップST8)。
【0114】
ステップST8では、搬送中の架台2が各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1に検出される毎に、架台制御回路28が移動制御及びUI表示を切り替える。架台制御回路28は、架台2が移動した際に、どの検査室のシステムと組み合わされたのか、その際にUI表示に変更はないのかを判定して制御する。
【0115】
例えば、検査室AのX線CT装置を基準とするとき、検査室Bでは、架台2がX線アンギオCT装置に組み合わされるため、架台制御回路28は、天板スライド制御から架台自走制御へ切り替える。詳しくは、第1検査室(A)R1から第2検査室(B)R2に架台2を搬送する場合、第1検査室(A)R1における移動制御及びUI表示は、第2検査室(B)R2における移動制御及びUI表示に切り替えられる。具体的には、例えば図13に示すように、基準方向の天板スライド制御が逆方向の架台自走制御に切り替えられる。基準方向のチルト移動制御は、第2検査室(B)R2でも同じである。これに伴い、第1検査室(A)R1におけるUI表示は、第2検査室(B)R2におけるUI表示に切り替えられる。UI表示は図示しないが、第1検査室(A)R1及び第2検査室(B)R2における接近方向、離反方向及びチルト方向は、図5の左側(R1側)と同様である。これは、図5に示す検査室R1での各方向が第2の実施形態の第1検査室(A)R1及び第2検査室(B)R2での各方向に対応するためである。
【0116】
また、検査室Cでは、架台2の向きが逆のため、架台制御回路28は、天板スライド方向とチルト移動方向をそれぞれ逆転させる。例えば、ステップST8において、第2検査室(B)R2から第3検査室(C)R3に架台2を搬送する場合、第2検査室(B)R2における移動制御及びUI表示は、第3検査室(C)R3における移動制御及びUI表示に切り替えられる。具体的には、例えば図13に示すように、基準方向の架台自走制御が逆方向の天板スライド制御に切り替えられる。基準方向のチルト移動制御は、逆方向のチルト移動制御に切り替えられる。これに伴い、第2検査室(B)R2におけるUI表示は、第3検査室(C)R3におけるUI表示に切り替えられる。UI表示は図示しないが、第2検査室(B)R2及び第3検査室(C)R3における接近方向、離反方向及びチルト方向は、図5と同様である。これは、図5に示す検査室R1での各方向が第2検査室(B)R2での各方向に対応し、図5に示す検査室R2での各方向が第3検査室(C)R3での各方向に対応するためである。
【0117】
また、検査室Dでは、架台制御回路28は、架台自走制御への切り替えとチルト移動方向の逆転を行う。例えば、ステップST8において、第3検査室(C)R3から第4検査室(D)R4に架台2を搬送する場合、第3検査室(C)R3における移動制御及びUI表示は、第4検査室(D)R4における移動制御及びUI表示に切り替えられる。具体的には、例えば図13に示すように、逆方向の天板スライド制御が逆方向の架台自走制御に切り替えられる。逆方向のチルト移動制御は、第4検査室(D)R4でも同じである。これに伴い、第3検査室(C)R3におけるUI表示は、第4検査室(D)R4におけるUI表示に切り替えられる。UI表示は図示しないが、第3検査室(C)R3及び第4検査室(D)R4における接近方向、離反方向及びチルト方向は、図5の右側(R2側)と同様である。これは、図5に示す検査室R2での各方向がそれぞれ第2の実施形態の第3検査室(C)R3及び第4検査室(C)R4での各方向に対応するためである。
【0118】
以上がステップST4,ST8の動作である。
【0119】
このようなX線CTシステムは、架台2が他の検査室に移動する毎に、上述したステップST4,ST8の動作を含むように、図9に示すステップST1〜ST18の動作を実行する。
【0120】
上述したように本実施形態によれば、X線CTシステムを4ルームソリューションに適用した場合でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
なお、第2の実施形態は、以下の第1乃至第4変形例のように変形してもよい。すなわち、架台2の位置を推定する方法は、検査室の境界に配置された各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1からのセンサ情報に基づく方法に限らず、以下の第1乃至第4変形例、又はこれらの変形例に準ずるものとしてもよい。補足すると、第1乃至第4変形例では、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1及びセンサ情報を使用しない。第1乃至第4変形例では、図示しない初期位置検出用の各センサs1_1〜s4_4又はその代替手段を用いる。代替手段としては、例えば、搬送装置27にエンコーダを設け、搬送装置27の移動量を検出することにより、架台2を搬送する搬送装置27が初期位置に到着したことを検出する手段等が適宜、使用可能となっている。
【0122】
始めに、第1変形例について述べる。第1変形例はメカスイッチに関する例である。
すなわち、第1変形例は、図14に示すように、それぞれ各々の寝台4A,7B,4C,7Dの近傍に配置され、第1乃至第4検査室R1〜R4のいずれかに配置された架台2と当該架台2に対するコンソール3A,6B,3C,6Dとの間の接続を開状態又は閉状態に切り替える第1乃至第4のスイッチとして、メカスイッチsw1〜sw4を備えている。各メカスイッチsw1〜sw4は、一端が各コンソール3A,6B,3C,6Dに電気的に接続され、他端が寝台近傍に配置された電極el1〜el4に電気的に接続されている。この電極el1〜el4は、例えば、搬送用レールL1_2、L3_4の両端側に配置され、それぞれ当該両端側と初期位置とを結ぶ長尺形状を有している。例えば図14に示すように、寝台7B近傍に配置された電極el2は、架台2が寝台7B近傍に到着すると、架台2の図示しない電極に接触することにより、架台2をメカスイッチsw2に電気的に接続する。ここで、メカスイッチsw2をオン状態に操作すると、架台2とX線コンソール6Bとが電気的に接続される。例えば、X線コンソール6Bから基準電源と基準抵抗を介して電流がメカスイッチsw2に出力され、当該電流がメカスイッチsw2を介して架台2に供給されたとする。基準抵抗は、コンソール毎に異なる抵抗値とする。続いて、架台2内で当該電流が所定抵抗を介して接地側に流れたとする。架台2では、当該所定抵抗の両端の電圧値を計測することにより、センサ情報に代えて、搬送先毎の固有値(電圧値)を取得できる。すなわち、架台制御回路28のメモリには、図13に示すセンサ情報に代えて、この固有値を設定しておけばよい。従って、メカスイッチsw2のオン状態により、架台2が搬送先の寝台7B近傍に到着したことを架台2及びX線コンソール6Bの双方で判定できる。他の電極el1,el3,el4も同様に機能する。
【0123】
従って、例えば図15に示すように、前述した各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1とは関係の無いステップST1〜3,ST5,ST6,ST8〜15,ST17,ST18は前述同様に実行される。また、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1に関するステップST4,ST7,ST16は、それぞれ次のステップST4a,ST7a,ST16aに示すように実行される。
【0124】
始めに、ステップST4aについて述べる。ステップST1(架台移動要求)〜ST3(CT検査に関する操作禁止)を実行し、架台2の搬送中に、架台制御回路28は、メカスイッチsw2が接続されたか否かを判定する(ステップST4a)。否の場合、前述同様に、制限時間内において(ステップST5:Yes)、ステップST2〜ST5の処理が繰り返し実行される。ここで、架台2が搬送先の寝台7B近傍に到着したとする。このとき、架台2は、例えば操作部28aの操作により、移動を停止する。また、寝台7B近傍に配置された電極el2は、架台2の図示しない電極を介して架台2をメカスイッチsw2に電気的に接続する。続いて、操作者がメカスイッチsw2をオン状態に操作すると、ステップST4aにおいて、架台制御回路28は、メカスイッチsw2が接続されたことを判定する。以下、同様にステップST8以降の処理が実行される。
【0125】
また、ステップST7aについて述べる。ステップST4aの判定結果が否であり、制限時間外の場合(ステップST5:No)、エラーが検出される(ステップST6)。その後、例えば、CTコンソール3からの設定により搬送元のメカスイッチsw1が接続された状態を架台2に通知して(ステップST7a)、ステップST1からの処理を再実行する。
【0126】
また、スイッチST16aについて述べる。ステップST14の判定結果が否の場合、エラーが検出される(ステップST15)。その後、現在位置を再取得するため、例えば、搬送先のメカスイッチsw2を接続し直して接続状態を更新する(ステップST16a)。しかる後、ステップST1からの処理が再実行される。
【0127】
このような第1変形例によれば、検査室の境界の各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1及びそのセンサ情報を省略した場合でも、架台2と搬送先のコンソールとをメカスイッチで接続する構成により、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。ここで、理解を容易にするため、2つの検査室R1,R2に注目して述べる。例えば、制御手段としての制御回路は、第1のスイッチ(sw1)又は第2のスイッチ(sw2)を介して、架台2と、第1のコンソール(3A)又は第2のコンソール(6B)とが接続されることにより、架台2が配置された部屋(R1又はR2)を検出する。このような検出手法を用いる場合でも、制御回路は、架台2が配置された部屋に応じて、チルト移動の方向又は相対的移動の方向を制御することができる。
【0128】
次に、第2変形例について述べる。第2変形例は、スキャン系コンソールが複数ある場合において、架台2と各コンソールとの間の接続ケーブルの物理的な切り替えに関する例である。
具体的には、第2変形例は、図16に示すように、第1乃至第4検査室R1〜R4のいずれかに配置され、それぞれ架台2に対する第1乃至第4のコンソール3A,6B,3C,6Dから延長された第1乃至第4のケーブルca1〜ca4と、第1乃至第4のケーブルca1〜ca4の先端に設けられ、架台2に接続可能な第1乃至第4のコネクタcn1〜cn4とを備える。詳しくは各ケーブルca1〜ca4は、一端が各コンソール3A,6B,3C,6Dに接続され、他端にコネクタcn1〜cn4を有している。各コネクタcn1〜cn4は、架台2が寝台近傍に到着すると、架台2の図示しないコネクタに接続されることにより、架台2を各コンソール3A,6B,3C,6Dに電気的に接続する。このような第2変形例は、コネクタcn2を架台2に接続した場合と、第1変形例のメカスイッチsw2をオン状態にした場合とが同様に機能する。
【0129】
このため、第2変形例は、第1変形例と同様に、コネクタ(を介してケーブル)が接続された架台2では、センサ情報に代えて、搬送先毎の固有値(電圧値)を取得できる。すなわち、架台制御回路28のメモリには、図13に示すセンサ情報に代えて、この固有値を設定しておけばよい。よって、コネクタcn2(を介したケーブル)の接続により、架台2が搬送先の寝台7B近傍に到着したことを架台2及びX線コンソール6Bの双方で判定できる。他のコネクタcn1,cn3,cn4も同様に機能する。
【0130】
従って、例えば図17に示すように、前述した各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1とは関係の無いステップST1〜3,ST5,ST6,ST8〜15,ST17,ST18は前述同様に実行される。また、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1に関するステップST4,ST7,ST16は、それぞれ次のステップST4b,ST7b,ST16bに示すように実行される。
【0131】
始めに、ステップST4bについて述べる。ステップST1(架台移動要求)〜ST3(CT検査に関する操作禁止)を実行し、架台2の搬送中に、架台制御回路28は、コネクタcn2を介してケーブルca2が接続されたか否かを判定する(ステップST4b)。否の場合、前述同様に、制限時間内において(ステップST5:Yes)、ステップST2〜ST5の処理が繰り返し実行される。ここで、架台2が搬送先の寝台7B近傍に到着したとする。このとき、架台2は、例えば操作部28aの操作により、移動を停止する。また、X線コンソール6Bに接続されたケーブルca2は、先端のコネクタcn2が架台2の図示しないコネクタに接続されることにより、架台2をX線コンソール6Bに電気的に接続する。これにより、ステップST4bにおいて、架台制御回路28は、X線コンソール6Bのケーブルcn2に接続されたことを判定する。以下、同様にステップST8以降の処理が実行される。
【0132】
また、ステップST7bについて述べる。ステップST4bの判定結果が否であり、制限時間外の場合(ステップST5:No)、エラーが検出される(ステップST6)。その後、例えば、CTコンソール3からの設定により搬送元のケーブルca1が接続された状態を架台2に通知して(ステップST7b)、ステップST1からの処理を再実行する。
【0133】
また、スイッチST16bについて述べる。ステップST14の判定結果が否の場合、エラーが検出される(ステップST15)。その後、現在位置を再取得するため、例えば、搬送先のケーブルca2を接続し直して接続状態を更新する(ステップST16b)。しかる後、ステップST1からの処理が再実行される。
【0134】
このような第2変形例によれば、検査室の境界の各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1及びそのセンサ情報を省略した場合でも、架台2と搬送先のコンソールとをケーブルで接続する構成により、上記各実施形態及び上記第1変形例と同様の効果を得ることができる。ここで、理解を容易にするため、2つの検査室R1,R2に注目して述べる。例えば、制御手段としての制御回路は、第1のコネクタ(cn1)又は第2のコネクタ(cn2)を介して、架台2と、第1のコンソール(3A)又は第2のコンソール(6B)とが接続されることにより、架台2が配置された部屋(R1又はR2)を検出する。このような検出手法を用いる場合でも、制御回路は、架台2が配置された部屋に応じて、チルト移動の方向又は相対的移動の方向を制御することができる。
【0135】
次に、第3変形例について述べる。第3変形例は、無線通信によるコンソール(又は検査室)と架台2との間の空間距離(通信範囲内か否か)の判定による切り替えに関する。
【0136】
具体的には、第3変形例は、図18に示すように、各検査室R1,R2,R3,R4に配置された各コンソール3A,6B,3C,6Dの通信インターフェース回路34,63が無線信号を寝台近傍の通信範囲rg1,rg2,rg3,rg4内に送信する第1乃至第4の無線通信回路を有する。架台2は、通信範囲rg1,rg2,rg3,rg4内の無線信号を受信する第0の無線通信回路28bを備える。すなわち、第0の無線通信回路28bは、通信範囲rg1,rg2,rg3,rg4内に位置することにより、第1乃至第4の無線通信回路に無線通信可能となっている。無線通信回路28bは、架台制御回路28に接続されている。
【0137】
架台2の無線通信回路28bは、架台2が寝台近傍の通信範囲rg1,rg2,rg3,rg4に到着すると、通信範囲rg1,rg2,rg3,rg4内の無線信号を受信し、コンソール3A,6B,3C,6Dに無線通信可能となる。このような第3変形例は、例えば、コネクタcn2を架台2に接続した場合や、第1変形例のメカスイッチsw2をオン状態にした場合と同様に機能する。
【0138】
このため、第3変形例は、第1及び第2変形例と同様に、通信範囲内に到着した架台2では、センサ情報に代えて、搬送先毎の固有値(無線信号内の設定値)を取得できる。すなわち、架台制御回路28のメモリには、図13に示すセンサ情報に代えて、この固有値を設定しておけばよい。よって、通信範囲rg2内の架台2及びX線コンソール6Bが互いに無線通信可能なことにより、架台2が搬送先の寝台7B近傍に到着したことを架台2及びX線コンソール6Bの双方で判定できる。他の通信範囲rg1,rg3,rg4も同様に機能する。
【0139】
従って、例えば図19に示すように、前述した各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1とは関係の無いステップST1〜3,ST5,ST6,ST8〜15,ST17,ST18は前述同様に実行される。また、各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1に関するステップST4,ST7,ST16は、それぞれ次のステップST4c,ST7c,ST16cに示すように実行される。
【0140】
始めに、ステップST4cについて述べる。ステップST1(架台移動要求)〜ST3(CT検査に関する操作禁止)を実行し、架台2の搬送中に、架台制御回路28は、無線通信回路28bを介して通信範囲rg2内に到着したか否かを判定する(ステップST4c)。否の場合、前述同様に、制限時間内において(ステップST5:Yes)、ステップST2〜ST5の処理が繰り返し実行される。ここで、架台2が搬送先の寝台7B近傍の通信範囲rg2に到着したとする。このとき、架台2の無線通信回路28bは、X線コンソール6Bから送信された無線信号を受信することにより、X線コンソール6Bと無線通信可能となる。これにより、ステップST4cにおいて、架台制御回路28は、無線通信回路28bを介してX線コンソール6Bの通信範囲内に到着したことを判定する。以下、同様にステップST8以降の処理が実行される。
【0141】
また、ステップST7cについて述べる。ステップST4cの判定結果が否であり、制限時間外の場合(ステップST5:No)、エラーが検出される(ステップST6)。その後、例えば、CTコンソール3からの無線信号の送信により搬送元の固有値を架台2に通知して無線通信を終了し(ステップST7c)、ステップST1からの処理を再実行する。
【0142】
また、スイッチST16cについて述べる。ステップST14の判定結果が否の場合、エラーが検出される(ステップST15)。その後、現在位置を再取得するため、例えば、X線コンソール6bから搬送先の固有値を含む無線信号を送信し直して固有値を更新し、無線通信を終了する(ステップST16c)。しかる後、ステップST1からの処理が再実行される。
【0143】
このような第3変形例によれば、検査室の境界の各センサs1_2,s2_3,s3_4,s4_1及びそのセンサ情報を省略した場合でも、架台2と搬送先のコンソールとが無線通信する構成により、上記各実施形態及び上記各変形例と同様の効果を得ることができる。ここで、理解を容易にするため、2つの検査室R1,R2に注目して述べる。例えば、制御手段としての制御回路は、架台2と、第1のコンソール(3A)又は第2のコンソール(6B)とが無線通信することにより、架台2が配置された部屋(R1又はR2)を検出する。このような検出手法を用いる場合でも、制御回路は、架台2が配置された部屋に応じて、チルト移動の方向又は相対的移動の方向を制御することができる。
【0144】
次に、第4変形例について述べる。第4変形例は、同一検査室内で架台2を他の寝台に搬送する場合に、センサ類を搬送レールLに沿った範囲で適切に配置することに関する。補足すると、第4変形例は、同じ検査室に別のシステム(寝台)が存在する場合、センサの位置によって架台がいずれのシステムにつながるかを認識可能とする。具体的には、第4変形例は、上記各実施形態及び上記各変形例において、各検査室間の隔壁及び開閉扉9を省略した構成に対応する。このような第4変形例によれば、同一検査室内で架台2を他の寝台に搬送する場合でも、上記各実施形態及び上記各変形例と同様の効果を得ることができる。
【0145】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、架台の搬送中に、架台の搬送先及び搬送後の架台の向きに応じて、架台又は天板の移動方向を切り替え制御し、この切り替え制御に応じて、当該移動方向の表示を切り替え制御する構成により、架台の移動制御やUI表示における不整合を阻止することができる。
【0146】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0147】
1…X線CTシステム、2…架台、3,3A,3C…CTコンソール、4,4A,4C,7,7B,7D…寝台、5,5B,5D…X線撮影装置、6,6B,6D…X線コンソール、9…開閉扉、21…スリップリング、22,51…管電圧発生装置、23,52…X線管、24,53…X線検出器、25…データ収集回路、26…非接触データ伝送回路、27…搬送装置、28…架台制御回路、28a…操作部、28b…無線通信回路、29…回転リング、30…回転駆動装置、31…前処理回路、32…再構成回路、33,62…入力インターフェース回路、34,63…通信インターフェース回路、35,64…ディスプレイ、36,65…記憶回路、37,66…システム制御回路、54…支持機構、55…駆動装置、56…撮影制御回路、61…画像発生回路、s1_2,s2_3,s3_4,s4_1,s1_1,s2_2,s3_3,s4_4…センサ、T1,T2…天板、R1〜R4…検査室、L1_2,L2_3,L3_4,L4_1,L2_2,L4_4…レール、sw1〜sw4…メカスイッチ、el1〜el4…電極、ca1〜ca4…ケーブル、cn1〜cn4…コネクタ、rg1〜rg4…通信範囲。
図1
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